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PandoraHeartsでエロパロ


1 :2011/02/04 〜 最終レス :2012/10/21
久々に来てみたら落ちていたので、立ててみました
供給は少ないが需要はあると思うんだ…
SSからネタ系までまったりやらないか

前スレ
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1244342224/

2 :
保守

3 :
職人がくるまで持ちこたえられるよう祈っておく

4 :
ギルアリ来い!

5 :
シャロンのエロいのが見たい
(ヴィンス+エコー)×シャロン
ヴィンスとエコーが横で見守ってる羞恥プレイなブレシャロ
エクエス×シャロン
再教育×シャロン
なんでもいい、誰か…!

6 :
期待保守

7 :
再教育はオチがおばちゃんの最強ハリセンになりそうだな

8 :
↑ミスった「おばあちゃん」な

9 :
ブレイク×ロッティ

10 :
この世界観だとバレンタインはないのかな・・・

11 :
ないかもしれないがそこは普通に捏造ありだろ
チョコプレイ美味しいです

12 :
ヴィンエコバレンタイン小ネタ


「ヴィンセント様」
メイドたちに恐れられるヴィンセント様の部屋に入る。埃っぽい、暗い部屋。
「なんだい?エコー。特に呼んだ覚えはないよ」
言外に大した用がないなら入ってくるななと言っている。いつもなら退くところが、今日は特別だ。
何故なら今日は“バレンタインデー”。
「今日は感謝をしている方に、チョコレートをお渡しする日なのだそうです」
ですからコレを、とヴィンセント様にチョコレートの入った可愛らしくラッピングされた箱を渡す。
街の少女達は手作りするらしいが、自分にはそんなスキルはないしそんなものを主人に渡せない。貴族達も利用する高級洋菓子店で買って来たものだ。
「へえー…。君が僕に感謝してるの?」
ヴィンセント様が少しだけ驚いたような顔でエコーを見る。
「ハイ。エコーが存在していられるのはヴィンセント様のお陰です。どんなに虐げられて辱められても……」
ですから、と続けようとすると
「もしかして、ギルやオズ君にも渡しに行くのかな?」
と唐突に遮られた。
少しだけ、不機嫌そうに声が低くなる。
「おいでエコー。今日はずっとこの部屋から出ちゃダメだよ?
僕は今日1日外に出られないんだ。貴族の女どもに追い掛けられるのは目に見えているし。
……だからさ、今日はずーっと一緒に“遊ぼう”よ」
くつくつと喉の奥で笑いながら、膝に座らせたエコーの服に手を掛ける。
お菓子業界の策略により、世間では本来の感謝の意味から“恋人と過ごす日”に変わっているのだが、この方は知っているのだろうか。
まあ、いいか。オズ様達に用意したチョコレートがムダになってしまうけれど、いつもより少しだけ、エコーに触れる手が優しい気がするから。

13 :
以上終了です
バレンタイン間に合わなかったorz

14 :
黒魔術と称してヴィンセントを襲うエイダはないのか

15 :
レイムさんのチェインの元ネタって発情期のウサギだっけか
よりによって一番エロに無関心そうな人に来たな…
いや、むっつりか

16 :
レイムさんはリリィをパァンしたところから見て、その気になった時は
ヤれる人だと思う
リリィ相手だと幼すぎてちょっと見た目が犯罪wだけど
>>12
お互い相手に興味薄いくせに、独占欲があったり優しくされると少し
嬉しそうだったりするのに萌え

17 :
この作品ロッティ以外に犯罪にならない人がいないんじゃなかろうか……

18 :
エイダとシェリル様はいける
あとシャロンちゃんも中身23なので無問題
ロッティも見た目はエイダと同年代か少し年上ぐらいじゃないのか

19 :
中身の事を言ったらアリスとアヴィスの意志とリリィだって百歳だから問題ない
全員大丈夫

20 :
アリスギル見たい
アリスは堂々としててギルが逆に恥じらいそう

21 :
シェリル様のエロはバルマ公以外需要皆無な気がする
やっぱりハリセンプレイかなw

22 :
どう想像してもバルマ公がド変態になるwww

23 :
新刊でたな
小説の方は汎用性の高そうなネタがゴロゴロしてて嬉しい
ヴィンエコのパパ呼びのプレイを希望

24 :
バルマ公をずっと女だとおもってた

25 :
>>24
だよな。ずっとではないけど最初はきつめの女秘書的なのかと思ったら、ジジイかよっ?!みたいな
ところで女キャラでできそうなのってこんな感じだと思う。異論は認める
ところで使えそうなキャラって
アリス、シャロン、エイダ、エコー、ロッティ、リリィ、アヴィスの意志、マリーさん、ヴァネッサ、シェリル様
ぐらいかな?
シェリー様とレイシーにも期待したい

26 :
>>25 良いと思う。バルマ女体化って有りかな?

27 :
女体化は…好み割れるからなあ
TS系総合とかの専スレに落として、こっちでリンクして誘導、あたりが無難かも
しかしヴァネッサ好きだけど相手が思いうかばん
ヴィンスとかw?

28 :
こっちに書くなら注意書きが必要だと思う。でも誘導が無難かなあ
ヴァネッサならエリオットとか?ヴィンスやギルバートでもできないことはないと思う。鬼畜なのがいい

29 :
保守

30 :
ほしゅ

31 :
ヴァネッサはアーネストとも組めそうな気がするな
リーオ従者にする時にエリオットとリーオでヴァネッサ口説き落とすとか…駄目か

32 :
>>31
体を説得

33 :
保守

34 :
てっきり落ちたままかと思ってた。
建てた人ありがとう。
ギルアリを途中まで書いてたけどスレも落ちたしと
書くのを止めたけどまた掘り起こすか

35 :
職人さん一人戻ってきたか、嬉しい、待ってるよ!
ギルアリは本誌でも小説でもどんどん絡み増えてきてるな
11巻まではこんなに距離近くなるとは思ってなかった

36 :
職人さんお帰り!
しかもギルアリだと?!
wktk

37 :
保守
職人さんが投下するまで持ちこたえてー

38 :
小説の方で、アリスの見た目自体は悪くないと思ってる感じだったし、童貞だからこそギルバートには何かできると思ってる

39 :
あのスペックでチェリーって悲しいよな
弟は巨乳からロリまでよりどりみどりだと言うのにw

40 :
こういう場所で無双するためにいるような奴だしなww
主人公が少年だからあの辺かモブが頑張ってくれないとかな

41 :
エイダヴィンスで性的エロイムエッサイム

42 :
ヴィンスはもうエイダに恐怖してるんじゃないか?ww

43 :
怖がってるというか引いてるよねw
落としてやる計画もパーンしたしどうなるんだろう
今の展開見てるとヴィンスにも幸せになってほしいんだけど

44 :
ギルバートの本命によっては昼ドラ展開かな?

45 :
誰かいる?

46 :
いるぞ!

47 :
超の付くくらいの微エロで、ついでに長いけど投下OKですか?
あ、ギルアリ(アリギルかも)です。

48 :
オケオケ!
待ってるよ!

49 :
「…………何してるんだ、お前は」
――今日は何て日だ。
勘弁してくれ、と男は小さく呟いた。
・・・
夜。
深まった闇に溶ける漆黒のコートを身に纏い、歩く男が一人。
コートと同じ黒の帽子から覗く眼は鋭く、かつ特徴的な金色の光を放つ。コートの男は手に持った袋に手を当て、温かな感触に僅かに頬を緩めた。――それにしても今日は、本当に疲れた。
男は軋む脚を引きずるようにして家までの道を急いだ。
今日追った違法契約者はやたらと逃げ足が早く、一緒に行動していた仲間三人と連携しても、中々捉え切れなかったのだ。
漸く違法契約者を包囲し、その身を拘束した時には既にたっぷりと夜が更けていた。
三人に違法契約者を任せ、今はこうして凍えながら家に帰っている途中である。
――ここまで手こずるとは、オズを連れて来なくて良かったな。
男は年若い主人を思い、白い息を吐き出した。
怜悧な印象を与える外見とは裏腹に、自身の主人の事となると、途端に心配性になるのが男の性格である。
尤も、この冷え込み具合では、たとえ15歳の少年でなくとも参ってしまう。――現に自分がそうだ。
男はもう一度紙袋に手を当て、階段を上っていった。
この階段を上り切れば、漸く自宅に到着だ。
早く風呂でも浴びて、暖かい紅茶を淹れて安らぎたい。
男は走り回って棒のようになっている足を何とか引き上げ、そして最後の段を乗り越えた。――瞬間。
「…………」
思わず絶句した。
そこに――つまりは自宅のドアの前に、居るはずの無い人物が膝を抱えてうずくまっていたからだ。
「……何してるんだ、お前は」
そして、話は冒頭に戻り。
ギルバート・ナイトレイは頭を抱えたいのを堪えながらそう言った。

・・・

帽子を取ると、黒い癖毛が広がる。
ギルバートは目に掛かった髪を払い、少女を見つめた。
帽子も髪も無い、開けた視界に映るのは一人の少女しか居ない。
赤いコートにタイトスカート、そして三つ編みを両サイドから一筋ずつ作った特徴的な黒髪。
見間違いを期待していたギルバートは、大きく溜め息を吐いた。
何故なら少女――名をアリスと言う――は、ギルバートが最近避けていた相手だからである。

50 :
「何をボーっとしている。このアリス様がお前の家の前に居るのだ、光栄だと泣いて喜んでいいんだぞ?」
得意げに言うアリスは、ギルバートに不遜な笑みを向けた。
ギルバートはそれに溜め息で応え、腕を組んだ。
「……いいから答えろ。何でここに居る」
現在、チェインである少女はパンドラで常に監視されている筈なのだ。
パンドラから外出許可が出たとしても、まさか一人では行かせまい。
色々な意味で『特別』な存在だとしても――少女の本質は人を食らう異形、チェインである。
ギルバートが顔をしかめながら言うと、少女は明らかに不機嫌な表情になった。
「……偶々お前の家を見付けて、何となく座っていたら、偶然お前が帰って来ただけだ」
「……供の奴らは」
「知らん。どいつもこいつも、勝手に居なくなるなと言うのに何故私から離れるんだ!」
――離れているのはお前だ。
ギルバートはげんなりした気分で頭痛のしてきた額に手を当てた。
少女の放浪癖は、初めて街を案内した時から把握済みだ。
注意力散漫なのは自分だと言うのに、それを周りの所為にするのだから質が悪い。
つまりは、アリスが勝手に迷子になっただけである。
「早く帰れ。今頃レイムあたりが血眼になってお前を探してるぞ」
「帰り道が分からん。送っていけ」
「適当に馬車でも拾えばいいだろう」
「なら、馬車賃を寄越せ。金はもう無い」
「……ッこんの、バカウサギ……! 後先考えずに金を使うからだろうが!」
終わりの見えない応酬に、ギルバートはイライラと吐き捨てた。
上から物を言う態度は相変わらずで、疲れた体をグサグサと突き刺してくる。
気が長い方ではないギルバートは、アリスの首根っこを掴んで玄関前から放り出そうとした。
――その瞬間。
「! お前……」
触れた首筋のあまりの冷たさに、ギルバートは思わず絶句する。
アリスはギルバートに持ち上げられた状態で、激しく暴れながら唸った。
「な、何だ! 離せワカメ頭!」
「煩い、静かにしろ。お前……いつからここに居たんだ?」
ギルバートの問いに、アリスは暴れるのを止め、あからさまに目を逸らした。
よく見れば頬は青白く、華奢な身体は小刻みに震えている。
相当な長時間夜風に晒されていなければ、ここまで身体が冷える事は無い。
「ここを見付けた直後に、お前が偶然帰って来て――」
「嘘吐くな、だったらこんなになる訳が無い。……ったく、世話の焼ける」

51 :
ギルバートはアリスを下ろし、自分のコートのボタンを外しに掛かった。
震えながら膝を抱え、自分の帰りを待つアリスを想像すると、流石に胸が痛む。
少々煙草の匂いが染みているコートだが、この少女なら気にしないだろう。
「だ、だから! 私は別に」
「我慢するな。震えてるのがバレバレだ」
両の拳を握り締め主張するアリスを、ギルバートはバッサリと切って捨てた。
変な所で意地を張る奴だ、等と思いながら最後のボタンを外す。
そうしてアリスに被せてやろうとした瞬間、少女は急に顔を上げた。
「……なら、我慢しないぞ」
「は?」
そう言うや否や、アリスはギルバートに思い切り抱き付いた。
年頃の少女らしい、未成熟だが柔らかい感触が、腰から胸元にかけてを包む。
一瞬放心状態になってしまったギルバートは、慌てて意識を覚醒させた。
「何を……!?」
「ほら、早くボタンを留めろ。私は寒いんだッ!」
言いながらアリスは器用にギルバートのコートの前を閉じていく。
茫然自失するギルバートを尻目に、着々とボタンは留められ、遂には全てが留まった。
二人が一つのコートにくるまっているような滑稽な状態で、二人は立っていた。
「ふぅ……お前が我慢するなと言ったのだからな、ワカメ頭。今更拒むのは無しだぞ!」
「いや……さっきのは、お前に掛けてやろうと……」
至近距離から上目遣いで見上げてくる勝ち気な瞳から、ギルバートは慌てて顔を逸らした。
自分のシャツを握り締める小さな掌や、脚に絡み付く剥き出しの太腿がやけに艶めかしい。
しどろもどろなギルバートと裏腹に、アリスは上手くやり込めた事にご機嫌だった。
「……ふふっ。暖かいな、ワカメ頭」
「……この状況で、その呼び方は無いだろう」
吐き出した悪態にすら、ほんの三分前の勢いは皆無である。
珍しく自然に頬を緩めるアリスから、ギルバートは目が離せなくなっていた。
――くそ、何でこんなに――。
「何だ? 緊張しているのか、『ギルバート』?」
「――ッ!」
考えを見透かしたようなタイミングで、アリスがニヤリと笑う。
その言葉に偽りは無く、ギルバートの心臓は平生より早い鼓動を刻んでいた。
おまけに、一度も呼ばれた事の無かった名前をこの状況で言われた事で、一段と鼓動が加速する。
思わず閉口するギルバートを余所に、アリスは更に密着し、その胸元に頬を寄せた。

52 :
「早鐘のようだ。ワカメのクセに、何かいかがわしい事でも考えているのか?」
ニヤニヤと見上げてくるアリスの視線が、ギルバートを捉えて逃がさない。
勿論、ギルバートにそんな考えは無い――が、このままでは理性を保っていられるのも長くはないと分かるのだ。
ギルバートは意を決して顔をアリスに向ける。
絡まった視線に一瞬たじろぐが、ここで退く訳にはいかない。
いつものように喧嘩腰で突き放してしまえばいいのだ――と、ギルバートは息を吸い込んだ。
「――だったら、どうする?」
言った。
大人を舐めるなよ、という挑発的な視線も上手く出来た。
ギルバートは密かな達成感に小さく拳を握った。
因みに、含みの有るような返事をしたものの、ギルバート自身にそういう類の『経験』は皆無である。
要するに先の発言は、完全にハッタリだ。
「…………」
「フン……まぁ、バカウサギには早いって事だな」
アリスは下を向いてしまい、表情が窺えない。
ギルバートは、それを言葉に詰まっているのだと解釈し、更に畳み掛けた。
「分かったらそろそろ帰れ、ガキは寝る時間だろう?」
「…………」
「ああ、一人で帰れないのか。全く――」
子供だな、と言おうとした瞬間、アリスがいきなり顔を上げた。
その表情にギルバートは驚愕し、目を見開く。
頬は仄かに色付き、目は心なしか潤んでいるように見える。
少女とは思えない『媚』を含んだ表情に、ギルバートは言葉を失った。
同時に、冷や汗が流れ出し、収まりかけていた鼓動が復活する。
――もしかしなくても、俺は地雷を踏んだのかッ!?
ギルバートは自身の軽率な言動に激しく後悔しながらも、アリス潤んだ瞳を見詰め返していた。
形の良い薄ピンクの唇が開き、言葉を紡ぐ。
「……肉の匂いだ」

「……………………は?」
アリスは素早くしゃがむとコートの下から這い出し、ポケットを探り始めた。
「あった……! この匂い、肉だぁぁあっ!!」
紙袋を取り出すと、アリスはその中身を確認する。
確かにそれには、いつかも買った露店の肉が入っていた。
あまりの疲れに、自炊する気力が無かったので、出来合いを先程買ったのだ。
「ワカメ、食べていいか!? と言うか、食べさせろ! 拒否権は無いッ!」
爛々と目を輝かせるアリスに、ギルバートは肩の力が抜けるのを感じた。
何の事は無い。
先程の表情は、ギルバートに向けたものではなかったのだ。

53 :
急に馬鹿らしくなったギルバートは、紙袋を取り上げると、苦笑いした。
そして、今にも噛み付きそうなアリスに、手を差し伸べる。
「食事は、落ち着いてする物だろう?」

・・・

食事を済ませたギルバートは、自室のベッドで本を読んでいた。
アリスは自分よりも随分早くに食べ終えると、風呂に入ると言って出て行った。
量もさることながら、アリスは食べるスピードも凄まじかった。
ぼんやりとアリスの食べっぷりを思い出していると、先程からページを捲る手が止まっているのに気付く。
流石に疲れも限界か、とギルバートは本を綴じた。
欠伸をしながらギルバートが本をベッドの脇に置いた、その時。
急に視界が反転し、ギルバートはベッドに引き倒された。
「ふふん、まだまだ甘いなワカメ。隙だらけだぞ」
上から降ってきた声に、ギルバートは犯人がアリスなのだと理解した。
咄嗟に傍らの銃に伸ばしていた手を引っ込め、ギルバートは顔をしかめる。
しかし――どういうつもりだ、と言おうとして開いた口は、そのまま閉じなくなってしまった。
「……何だ、その格好は」
「何って、お前のシャツだ。あの服のままでは寝苦しいからな」
平然と答えながら、アリスはベッドに飛び乗る。
ギシギシと不穏な音を立てたスプリングにさえ意識が向かない。
何せ、アリスはギルバートのYシャツを羽織ったのみの格好だったのだ。
「……そんなに服を貸すのが嫌か。小さい奴だな」
呆然としているギルバートをどう解釈したのか、アリスはやれやれと首を振った。
しっとりと濡れた髪が艶やかに流れ、シャンプーの匂いが仄かに漂う。
ギルバートは我に返ると、高速で目を背けた。
――なんで、コイツはこんなに無防備なんだッ!!
目を瞑っても、アリスの姿が脳裏から離れない。
シャツから覗く肉付きの薄い太腿や、普段はスカーフで隠れている鎖骨等が、鮮明に焼き付いてしまっていた。
半分眠りかけていた意識が一瞬で覚醒する程に、その姿は衝撃的だったのだ。
「しかし、相変わらず妙に小綺麗な部屋だな。マメに掃除でもしているのか」
「ま、まあな。週に四度――って、オイ! 何してるんだお前は!?」
自分の腰辺りに座り込んだアリスに、ギルバートは慌てて言った。
アリスは首を小さく傾げながら、長い髪をかき上げる。
その仕草に、ギルバートは自身の頬がカッと熱くなるのを感じた。

54 :
「優しい私は、下僕にマッサージをしてやろうと思ったのだ。
さぁ、うつ伏せになれ!」
アリスが前屈みになると、大き過ぎるシャツから災いして、肌の大部分が露わになる。
ギルバートは目を逸らしたが、幸か不幸か間に合わなかった。
――しっ、下着も付けていないのか!? このバカ、本当に何て格好してるんだ!
バッチリと見えてしまった『突起』に、ギルバートの頭は最早沸騰寸前であった。
小ぶりだが形の良いそれは、少女のと言えど十分に扇情的である。
チラチラと覗く胸に、身体を滑るようにして絡み付く黒髪が、何とも艶めかしい。
「心配はいらん。ちゃんとシャロンから習ったのだ、素人ではない」
「――シャロンが?」
ギルバートは何とか意識を逸らそうと、必でアリスの言葉に飛び付いた。
「『マッサージ』と言えば、健全な目的で堂々と下僕を脚で踏む事が出来る、と言っていたな」
「……」
ギルバートは、嬉々として相手を踏み付けるシャロンを想像して身震いした。
大層可愛がっているのはいいが、おかしな事を吹き込み過ぎである。
「……おい、俺は脚では御免だぞ」
「私も、流石にそうしようとは思わなかった。普通のマッサージを習ったぞ」
アリスは何とも言えない表情で言うと、『いいからうつ伏せになれ』とギルバートを小突いた。
他愛の無い会話を交わして少々落ち着いたギルバートは、一瞬迷った末にうつ伏せになった。
本音を言えば、仕事で疲労した身体に、マッサージはとても有り難い。
しかし、やはり不安である。
それがシャロンから習ったものと言えば、更に不安も二割増しだ。
「……よし。いくぞ!」
気合いの入った声と同時に、アリスの指がギルバートの肩胛骨に当たる。
思わず身構えたギルバートを尻目に、アリスの指に力が入った。
「なあ、ワカメ。私はいつまでパンドラに収監されていなければならないんだ?」
「……さあ、な」
短く返事をしながら、ギルバートは考える。
最初は主人を苦しめる敵としか認識していなかったが――今では『ただの敵』とは到底見られない。
下手をすれば、このまま一生パンドラに監視されて過ごすかもしれない少女。
ギルバートは、そんな未来を想像して後悔した。
「……まあいい。それより、私の腕はどうだ? 感動に泣き叫びたい気分だろう?」
「誰が泣き叫ぶか、バカ」
元々大した答えを期待していなかったのか、アリスはすんなりと話題を変えた。

55 :
ギルバートは悪態を吐きながら目を綴じる。
予想に反して、アリスのマッサージは、実際かなり気持ちの良いものだったのだ。
仕事で張り詰めていた筋肉が、どんどん解れていくのが分かる。
心地よさに身を委ねれば、直ぐに眠ってしまいそうだ。
「……ふぅ。こんなものか」
アリスはそう言うと、ギルバートの腰から離れた。
起き上がってみると、体中の関節が驚く程軽快に動く。
ギルバートは肩を回しながら、スッキリした気分で息を吐き出した。
「おい」
「ん?」
不意に声を掛けられて我に返ると、いつの間にかアリスが隣に座っていた。
軽く頭を突き出す少女に、ギルバートはつい笑いをこぼす。
「なっ――何が可笑しいっ!」
「いや、別に……クッ、何でもない」
ギルバートは弛む口元を隠しつつ、詰め寄ってくるアリスに視線を向けた。
ギルバートが最近少女を避けていた理由が、これだ。
過度な触れ合いは情を生み、ただでさえ宙ぶらりんな気持ちを更に掻き乱す。
相手はチェインだ。
敵だ、主に近付く厄だ。
最近アリスにじゃれつかれる度、ギルバート自分にそう言い聞かせてきた。
しかし、今日は――。
「……気持ち良かった。有難うな」
これだけ触れ合っておいて、今更敵も何も無い。
そう判断したギルバートは自然な笑みを浮かべ、アリスの頭に手を乗せた。
艶やかな髪に指を通すと、甘い香りが鼻先を擽る。
途端に大人しくなったアリスは、目を瞑りギルバートの手の感覚に身を委ねているようだった。
「当然だ。私を誰だと思っている」
自信満々な物言いは相変わらずだが、アリスの口調は穏やかである。
ギルバートはまた少し笑って、指先で髪を弄んだ。
「オズやブレイクには、してやらないのか?」
「……お前だから、だ。光栄に思え」
アリスの頭が、ギルバートの胸に当たる。
いつの間にかお互いが近付いていたらしく、今はほぼ密着状態だった。
視線が絡み合う。
お互いの吐息が混じり、無意識に手が重なる。
引き寄せられたように、二人の唇が触れた。
「バカウサギ」
「何だ、ワカメ」
「……せめて、下着は着ろ」
「いいのか? これからの事の『言い訳』が出来なくなるぞ?」
不敵に笑うアリスの頬は、微かに朱がさしている。
――アリスが、こんな格好をしているのが悪い。
頭の隅では確かにそう言い訳していた。

56 :
そうして自分を正当化しようとしている時点で、理性は事切れていたのかもしれない。
「……誘ったつもりかよ」
「気遣いだ。感謝するんだな、ヘタレ」
ムッとしたギルバートは、腹いせに少々乱暴にアリスをベッドに押し倒す。
しかし、幼い肢体を横たわる瞬間に、僅かに躊躇してしまうのが、ギルバートのギルバートたる所以である。
「……抵抗、しないのか?」
「して欲しいのか?」
その質問は反則だろう、とギルバートは顔をしかめる。
身体は既に臨戦態勢だ。早く休みたい、等と思う気持ちは、最早微塵も無い。
少女を、愛しいと思う気持ちはある。
しかし、それは本物か?
一夜限りの都合の良い物ではないのか――。
ギルバートは、自信が持てずにいた。
「……全く。それだから、お前はワカメなんだ」
クスリと笑い、アリスは平然と毒を吐く。
反論しようとしたギルバートは、手を握られる感覚に一切の動きを止めた。
「そうやって迷って、気遣ってくれるだけで……私は嬉しい」
目を細めるアリスは、本当に嬉しそうに言った。
「誰も居ない。記憶も無い。そんな状況で、唯一近くに居る者達から、害虫のように扱われるのは……嫌、だった」
ギルバートは、アリスに敵意を剥き出しにしていた自身を思い出す。
思い返せば、あんまりな態度だったかもしれない――。最近、少しだけそう思うようになっていた。
「だからこそ、お前が私を想ってくれるようになったのが嬉しい。嬉しくて……切ない」
アリスはギルバートの手を導き、胸元に重ねさせた。
「もう、あんな扱いを受けるのは堪えられそうにない。だから、お前を感じたい」
アリスはギルバートの手ごと、小さな胸に指を這わす。
ギルバートは目を見開くと共に、眼前の淫らな光景に鼓動を早めた。
「でないと……ぁっ、切なく、て……っ」
ギルバートはアリスの唇に自身のそれを重ね、言葉を遮った。
「容赦は、しないからな」
再び唇を重ねると、アリスの目尻から涙が一筋、落ちる。
――切なさなんて、感じさせるか。
ギルバートは意を決して、アリスの唇を舌で割る。
しかし、積極的に求められ、誓った傍からペースを崩された。
ギルバートは内心で畜生と毒づき、そう言えば一度も口にしていなかった一言を口にした。
「――――アリス」
end.

57 :
以上です。長々とすいませんでした。
誰か明るい話の作り方を教えてくれー!

58 :
GJ!
ギルよりアリスの方が男らしいww
2人の距離感が好きだ

59 :
GJ、萌えたよ!
アリスがギルのコートに潜り込むところ、好きだ!

60 :
GJ!
雰囲気がいいねw

61 :
GJ!!!
続いて申し訳ないのですが・・・
アリス→オズ前提
ギルアリを投下します。
・エロ無
・イメージとしては初期の伐していた頃二人
ギル視点

62 :
ことの始まりはソファでうたた寝をしたアリスを
見つけた時のことだった。
「おい。バカうさぎ。こんな所で寝てると風邪ひくぞ」
果たして人間ではなくチェインのアリスが風邪など
ひいたりするのだろうか。
そもそもこいつは自分の主人であるオズの命を脅かす存在だ。
それなのにまるでアリスの身を気遣う言葉をかける自分に
矛盾を感じつつもアリスを起こさぬよう横抱きにして寝室へ移動した。
辿り着いた寝室で抱いたアリスをゆっくりとベッドに降ろす。
スプリングの揺れを感じたのか気付くと
アリスはうっすら目を空けていた
「ん…」
「起こしたか…。おまえ・・・」
言葉を遮るように一瞬でギルバートの口は塞がれた。
「!!!」
予想外の展開にギルバートは意識が空へと飛んだ。
わずかに口と口の隙間があいた時、
「オズ…」
かすかにアリスの口からもれた言葉に意識を取り戻しアリスの体を引きはがした。
「やめろ俺だ!オズじゃない!」
「お前はわかめ頭…か」
「お前・・・俺をオズと間違えたがまさかいつもこんなことを?」
「フン 下衆の勘ぐりだな。そんなわけ無いだろうかこのヘタレワカメ頭」
「ヘタレとはなんだ!」
「キスごときでそれほどうろたえるヤツがヘタレじゃないなら誰がヘタレだ」
「この・・ヘタレヘタレ言うな。別にキスでうろたえたわけじゃない」
「じゃあなぜ?」
確かにアリスの言うとおりオズとアリスが契約者以上の関係があるのではと考えたのは事実だった。
「結局誰でもいいんだろうおまえは」

「…っ違う!!」

63 :
さっきまで妖しく不敵な表情を浮かべたアリスが一辺して表情を曇らせた。
いつも子どものような無邪気さとは一辺して切なげな愁いを帯びた表情をたまにこいつはするのだ。
その時、微かに俺の心を揺さぶるのだ。


ギルバートはアリスを勢いよくベッドに押し倒し、勢いよくシャツ引きはがす。アリスのシャツのボタンが床に転げ落ちる。
「何を…!」
アリスはのしかかるギルバートを見る。
狂気の光が目に宿っていた。
「やめろ!!!」
アリスの平手は右頬に命中した。
「オレは…」
「一体どうした。さっきのお前はおかしかったぞ」
怪訝そうな顔でアリスは見つめた。
(俺はこいつに何をしようとした?)
自分とは別の意志が勝手に働く恐怖。
それを感じた時、一気に冷水を被せられた気分に陥った。
そして目の前の少女にとんでもないことをしようとしたことに気が付いた。
「おい。わかめ・・・」
「触るな!!」
その時
アリスはそっといまだ焦点の定まらないギルバートに口付けた。
「な…!」
「今度は間違えてないぞ。お前にキスしたんだ」
「おまえって…やつは」
さっきまで顔面蒼白だったギルバートは一気に赤く染まった。
一方のアリスは照れくさそうに背をむけて横になった。
「というわけで私は寝る。もう起こすなよ」
「何がというわけだよ。このバカウサギ」
アリスはすぐに気持ち良さそうな寝息を立てている。
その寝息を聞き薄く笑った。

終わり

64 :
乙。
そろそろブレシャロが来ないかね。

65 :
乙!
シャロンのエロも見たいけど、ギルアリ好きなんで短いスパンで
投下が続いて嬉しい
ただキスの仕方とかどう見てもアリスのほうが男前です、本当にry
ギルアリでアリスが男前なのは仕様なのかw

66 :
レイム×シャロンも考えたけど・・・
ブレイクも混ざって3Pになる展開しか浮かばなかったw

67 :
素晴らしいじゃないか、是非書いてくれ
でもあの三人で3Pってシャロンが肉体的に大変そうだw

68 :
レイムさんはたぶん最後の方引っ込んでるから問題無い

69 :
レイムさんのエロが想像できない。
お嬢様の意外に豊満なボディを丁寧に撫で回したり
モミモミしたり舐め舐めしたりとかしか思い浮かばないyo!

70 :
それが思い浮かぶなら正直充分だと思うw
ただ撫で回りしたり前戯だけしてそれでやめるなら、逆にレイムさんの
変態度数があがる気がw
以下今月バレなんで少しスクロール







まだ読めてないけど、ブレシャロ的な展開があったみたいで楽しみだ

71 :
眼鏡に真面目に幼女との絡みに三月兎とそろってて変態じゃなかったらおかしいレベル
その辺を弄るのもエロパロの醍醐味じゃないかWW

72 :
保守

73 :
ここのせいでレイムさんのイメージが変わってきたw
人畜無害っぽい人だと思ってたんだけどな

74 :
レイムさんはシャロンのザクスお兄ちゃん呼び(オズの入れ知恵)に
言われた当人差し置いて胸キュンしちゃう人だから問題ない

75 :
レイムさんも男だったのさ

76 :
妹萌えの人か
レイムさんとは良い酒が飲めそうだ

77 :
空気を読まずにブレイク×シャロンを投下します。
レイムさん需要が高いみたいだけど、私の想像力では無理ですよこん畜生!!
・相変わらず暗い
・相変わらず長い(それもかなり)
・時系列はシャロンがチェインと契約して直ぐ
となっています。
いくぜ。

78 :
巨大な鏡は磨き上げられ、一点の曇りも無い。
仄かに香る入浴剤の匂いは、薔薇の物だ。
四大公爵家の一つ、レインズワース家の浴室。
シャロン=レインズワースは、体重計を睨んでいた。
使用人達を追い出し、一人となった彼女は、溜め息を吐く。
額には年齢に似つかわしくない皺を寄せていた。
「…………やっぱり」
表示された数字は、三ヶ月前と全く変わらない。
一般的な女性にとっては喜ぶべき事なのだろう――しかし、シャロンは喜べなかった。
「お嬢様、どうされました? 随分と難しい表情をされていますネェ」
「はぁ。……否定すべくもありませんわ」
シャロンはもう一度、大きく溜め息を吐き出した。
予兆はあった。
シャロンは、自身の食事には相当に気を配っていた。
自分が燃費が悪いのか皆そうなのかは知らないが、油断すると直ぐに体型に変化が現れるのだ。
しかし、三ヶ月前からどうにも妙だった。
あれほど慎重にしていた事が嘘のように、どんな食事をしても体型の変化がまるで無い。
思い切ってケーキを三つも食べてみたが、それでも変わらなかったのだ。
恨めしそうに体重計を睨み、シャロンはアップにしていた髪を解く。
鬱々しい気分を払うようにして首を振ると、細かい滴が飛んだ。
「ダイエットですカ? 女性というのは大変ですネェ」
「ええ……本当に。ですが私は――え?」
シャロンは、今更ながらに気付いた。
――自分は誰と会話しているのだろう。
顔を上げると、予想通りの赤い右目が有り。
シャロンは燃え上がるように一瞬で真っ赤になると、叫びながらハリセンを振りかざした。
・・・
「……はぁ、はぁ……それで、何故貴方が、ここに居たのですかっ」
シャロンはハリセンを暗黒化して消し、自分を辱めてくれた男に詰め寄る。
男は散々殴られた頬を押さえながら、シャロンの剣幕にも動じず軽く笑った。
「実は、最近瞬間移動という物に挑戦し始めまシテ」
「また手品ですか……なら、現れる場所くらい選んで下さい!」
真っ赤になって怒るシャロンにまた笑い、男はポケットから飴を取り出す。
道化師のような格好のこの男が、仮にも貴族の使用人だと誰が信じるだろう。

79 :
「浴室に侵入するなんて、最低です! ブレイク、反省していますか!?」
「えー……でも、お風呂当番の皆さんが、廊下で世間話をしていたものですカラ。お嬢様もとっくに上がって、誰も居ないものだと」
飴を口に放り込みながら、男がモゴモゴと言った。
そう言われると、シャロンにも非があるのを認めざるを得ない。
使用人を追い出したのは自分なのだ。
「それに、まさかお嬢様が下着姿で体重計と睨み合いしているなんて、露とも……」
「い、言わないで下さいっ!」
面白がるように言うブレイクに、シャロンは再び赤面する。
殆ど裸に近い格好をああして数分間も見られ続けていたとは、考えるだけでも恥ずかしい。
シャロンは火照った頬に手を当て、ブレイクを睨んだ。
「しかし、お嬢様も存外……。ドレスでも見せないので、自信が無いのか勝手に思っていましたガ」
「何の話ですかっ! ……もう」
言いたい事はまだまだあったが、シャロンは諦めて口を噤んだ。
この男――ザークシーズ=ブレイクの性格は、昔から一緒に居た自分が一番良く知っているからだ。
「しかし、お嬢様と違って私は瞬間移動の初心者ですヨ? 場所を選ぶなんて高等技術、チェインの力が無いと出来まセン」
「――!」
床を――正確には影を靴の爪先でつつきながら、ブレイクは言う。
シャロンは思わず絶句し、ブレイクを呆然と見詰めた。
チェインの力――そう言われて思い付くのは、三ヶ月前の事のみである。
三ヶ月前、シャロンは『契約者』となった。
手に入れたチェインの能力の一つは――影を使った、瞬間移動。
「……成長が、止まりましたカ?」
ブレイクは感情の籠もっていない声で呟く。
シャロンはブレイクから目を背け、唇を噛んだ。
契約の影響が出るか否かは、運次第と言う他に無い。偶々『そうなった』だけなのだ。
シャロンの肉体の成長は、十三歳を以て止まった。
身長も体重も、あらゆる面から調べたが、それは覆す事の出来ない事実であった。
「お嬢様」
「……っ」
ブレイクの言葉に相変わらず色は無く、つい先程までふざけていた男とは別人のように静かである。
シャロンはブレイクに背を向け、目を瞑った。
やめて。――やめて!
聴きたくない。
「申し訳ありません」
他人行儀な程に丁寧な言葉が部屋に反響する。
ブレイクは脱衣場のドアを開けると、一言も発さずに出て行った。

80 :
イイヨイイヨー
ここで続く?それとも連投規制かかった?一応支援してみる

81 :
急に力が抜け、シャロンは床に座り込んでしまった。
得も言われぬ孤独感が、無防備な身体に襲い掛かる。
堪え切れなかった涙が、床に落ちた。
・・・
ブレイクは、シャロンに過酷な道を強いてしまったと、己を責めている。
ブレイクの唯一の友人と、シャロンの意見はそれで一致した。
あの日以来、ブレイクはシャロンと碌に目も合わせなくなり、どこか蟠りのある状態が続いている。
聞けば、仕事場に入り浸っているらしい。
あのブレイクが進んで書類整理を、と周りも驚いていた。
『彼奴は、シャロン様の事を常に一番に考えています。どうか、怒らないであげて下さい』
彼は穏やかに微笑みながら、そう言った。
シャロンが彼の背中の、『眼鏡こそ我が人生』という張り紙の存在を教えると、言った傍から激怒していたが。
(そうは言っても、今の状況では……)
シャロンは沈んだ気分で溜め息を吐いた。
会ってくれないのに、何をどうすればいいのだ。
(私と会うのが、そんなに嫌なのでしょうか……)
普段は適当にあしらっている仕事に没頭してまで。
そう思うと、シャロンの気分は更に落ち込んだ。
ずっと一緒に過ごしてきたブレイクの不在は、シャロンに暗い影を落としていた。
「――シャロンちゃん。どうしたの?」
「え?」
祖母の声で、シャロンは初めて食事中だった事を思い出した。
見れば、皆は既に食べ終わっているのに、シャロンの皿は料理がまだ残っている。
と言うよりは、全く手付かずの状態だった。
「食欲が無いの?」
「いえ。……平気です」
シェリルはシャロンに心配そうな表情を向けた。
祖母に見詰められると、自分の内面を見透かされているようで落ち着かない。
シャロンは食事に集中しようとするも、結局フォークを置いてしまった。
「顔色が悪いわ。今日はもうお休みなさいね?」
「……すみません」
シャロンは小さく頭を下げると、席を立った。
頑張って食事を作ってくれた料理人には申し訳ないが、今は本当に食欲が無い。
祖母の気遣う視線に見送られ、シャロンは部屋から出た。
「シェリル様、バルマ公がご到着のようです」
「あら。ルー君ったら早いわね〜」
部屋の中からは、祖母と使用人の話声が聞こえた。
シャロンはそそくさと部屋を後にし、自室へ急いだ。
このままでは、皆に気付かれてしまう。
自分一人の為に気を遣わせるのは忍び無いだろう。――もっと、しっかりしなくては。

82 :
毅然として振る舞っていれば、ブレイクも見直してくれるかもしれない。
未練がましくそう思いながら、シャロンは自室のドアを開けた。
「……え?」
シャロンは、思わず息を呑んだ。
理由の一つは、そこに『先客』が居た事。
そして、二つ目は。
「やぁ、どうも。今回は上手く移動出来まシタ」
平然とシャロンのベッドに腰掛けているのが、ブレイクその人だった事だ。
「ど――どうして」
シャロンはやっとそれだけ言うと、ベッドに近付いた。
言いたい事は山ほどもあった筈が、全て言葉にならずに消えていく。
ブレイクは微笑み、いつものように飴を取り出した。
涙が、出そうになる。
会わなかったのは数日だと言うのに、今こうして向かい合っている事が懐かしい。
シャロンは胸の高鳴りを抑えつつ、ブレイクを見詰めた。
「お別れを告げに参りまシタ」
飴を手で弄びながら、ブレイクは軽い口調で言う。
剰りに自然な態度に、シャロンは反応が遅れた。
「明日からバルマ公に仕える事になりまシタ。全く荷造りが面倒ですヨ」
世間話でもするかのように、ブレイクは笑った。
高鳴っていた鼓動は止み、額に汗が浮かぶ。
――嘘。そんな筈無い。貴方はバルマ公を嫌っていたのに。
「どうして……ですか」
「向こうの『環境』が良いからですヨ」
シャロンを見る赤い瞳は冷たく、一切の容赦が無い。
言外に自分が原因だと言うブレイクに、シャロンは言葉を失った。
やはり、自分は子供だったのだ。
半端な覚悟で契約し、迷い、周りに心配を掛け、ブレイクには失望された。
『見直してくれるかもしれない』とは、笑わせる。
ブレイクの袖を握り締め、この世の終わりのような顔をしている自分は、限りなく子供だった。
「お願い、します。どんな事でもします……だから……っ」
嫌わないで。
そう言おうとした唇を手で塞がれ、シャロンはブレイクを上目遣いに見詰めた。
そして、絶句した。
赤の眼差しには何の感情も無く、人間のそれと思えない程に怜悧だったのだ。
シャロンの瞳から涙が溢れた瞬間、ブレイクは動いた。
「なら、好きにさせて頂きましょうカ」
背中に、固い床が触れる感覚がした。

83 :
ブレイクは、忍び足で屋敷の裏手を歩いていた。
何故正面ではなく、と言えば、理由は至って簡単である。
ブレイクは、ルーファス=バルマと会いたくないのだ。
(アホ公爵め)
帰りたくない所を渋々帰って来ていると言うのに、何故こんな時に限って訪問してくれるのか。
迷惑極まりない話である。
ブレイクは苦虫を噛み潰したような思いで部屋へ急ぐ。
最近お気に入りの飴を噛み砕いた所で、その脚が止まった。
「……」
目の前にある窓は、主の部屋の物だ。
ブレイクはキリキリと痛む胸を押さえ、静かに目を綴じた。
自分を慕う少女を避けて逃げ回る等、我ながら最低だとは思う。
しかし、シャロンにこれ以上何かを失わせる訳にはいかない、とも思うのだ。
自分の役に立ちたいと言う彼女が震えながらもチェインと契約を結んだ時――ブレイクは、素直に嬉しかった。
大罪を犯したこの身を受け入れてくれ、更には慕ってくれるシャロンを愛しいと思った。
だが、あの夜のシャロンを見て、ブレイクは思い知った。
一人の少女に犠牲を強いてしまった事を。
自分とこれ以上関われば、再び何かを失わせてしまう事を。
失わせた物が、もしも『命』だったら。
(これでいいんだ)
ブレイクは独りごちて、ゆっくりと目を開ける。
後悔を振り払うように首を振り、窓に背を向けた。
しかし、その時――小さな音が聞こえ、ブレイクは思わず脚を止めた。
「……どんな事でも……から……っ」
耳に届いた声はか細く――否、悲痛と表現した方が正しいか。
ただならぬ気配に、ブレイクは脚を方向転換させた。
今にも泣き出しそうなシャロンの声が聴こえる。
何かが変だ――そう思い杖を取った瞬間、ドサリという音と、息を呑むような悲鳴が洩れた。
「ッ!」
一瞬にして、頭に血が昇る。
考えるより早く、ブレイクは窓を割り、部屋に飛び込んでいた。
「貴様……ッ」
電気の消えた暗い部屋で、シャロンが男に押し倒されている。
怒りに身を任せ剣を抜いたブレイクは、躊躇い無く男に突き付けた。
此方を向いた顔に、流石のブレイクも狼狽する。
何せ、シャロンを押し倒していたのは、自分と瓜二つの影だったのだ。
「……兄……さん?」
シャロンの声が、頭を素通りする。
ブレイクはもう一人の自分を警戒しながら、必に頭を回転させた。
そして、思い至った。

84 :
ブレイクは二人を引き剥がすと、偽の自身を突き飛ばして距離を取る。
主の無事を確認するや否や、有りっ丈の気を相手に叩き付けた。
「下衆な幻を差し向けてくれる」
一言毒づいて、ブレイクは一気に距離を詰めた。
素早く剣を構え、懐に入った瞬間に相手を斬り上げる。
切り裂かれた影は、苦悶の呻き声を上げて消滅した。
「兄さ……」「来なさい」
シャロンの言葉を遮り、ブレイクは細い腕を乱暴に掴む。
部屋を飛び出すと、引き摺るように廊下を歩いた。
頭に昇った血は、未だ煮え滾っている。
主の無事に安堵すべき時の筈が、ブレイクの内心では怒りの炎が燃えていた。
自室のドアを突き破るように開け、シャロンを引き摺り込んだ。
「どういうつもりです?」
シャロンは応えない。
顔を俯け、視線から逃れようとする彼女に、怒りは更に燃え上がった。
「私と偽物の区別もつかず、その上無抵抗で押し倒されていたんですか?」
酷い嫌味だ。
只の嫉妬でしかない事は、ブレイク自身が分かっていた。
――自分から離れておいて虫の良い言い草だな。
幻影とは違う自分が、内心でブレイクを嘲った。
「私が止めに入らなければ、今頃……」
「――兄、さん」
漸くシャロンが発した言葉は小さく、夢のように儚かった。
ブレイクは反射的に口を噤み、シャロンを見下ろす。
怒り心頭の状態でも、主を気遣うような視線で見ている自分が居た。
「本当の、兄さん……?」
シャロンが顔を上げた瞬間、ブレイクの怒りは一瞬で消えた。
その瞳に浮かぶのは、恐怖。
蒼白になったシャロンの頬は病的な程に白かった。
当然だ――怖くない筈が無い。
無抵抗だったのではなく、『抵抗が出来なかった』のだろう。
握り締められたスカートは、皺になっていた。
「……はい。本物です」
伐としていた心が落ち着いていく。
ブレイクは無意識の内にシャロンの頭に手をやり、柔らかな髪を撫でていた。
「……っ。兄さん……っ」
シャロンの瞳から涙が溢れ、白い頬を伝う。
ブレイクは唇を噛むとシャロンを抱き寄せ、不器用に背中を撫でた。
「すみません。……ごめん、シャロン。もう大丈夫だよ」
精一杯優しく、ブレイクはシャロンの華奢な体躯を抱き締めた。

85 :
恐怖から抜け出したばかりの彼女に苛立ちをぶつける等、無神経にも程がある。
更に言えばアホ毛の襲撃は、自分が傍に居れば防げた筈だ。
子供なのは私の方だ。――ブレイクは何度も謝りながら思った。
「……怖かった……っ。体が、うごかなくて……っ」
シャロンはブレイクの服を握り、彼の肩に顔を埋めて泣いた。
小さく体を震わせるシャロンの姿に、ブレイクの胸が熱くなった。
この人の涙を見たくない。
ブレイクは堪えきれず、感情のままシャロンをきつく抱き寄せた。
(私もヤキが回りましたネェ)
シャロンの体温を感じながら、ブレイクは密かに苦笑いした。
・・・
漸く泣き止んだシャロンは、目尻の涙を指で拭った。
ブレイクが居なければ、と考えるとゾッとする。本当に怖かったのだ。
「お嬢様。一つ、謝りたい事が」
神妙な様子のブレイクに、シャロンは顔を上げる。
先程の偽物の話が頭に過ぎり、思わず手を握り締めた。
まさか、本当にバルマ公に――。
「窓を割ってすみませんでシタ。瞬間移動している時間が無くテ」
違った。しかも、些細過ぎて忘れていた事だった。
シャロンは安堵し、同時に小さく笑った。
普段なら窓を百枚割っても平気そうな彼が、珍しく殊勝である。
「許します。その位、慌てていたのでしょう?」
「……まあ……そうなりマス」
歯切れの悪いブレイクにクスクス笑いつつ、シャロンは少し固い胸に頬を預ける。
普段は飄々としている分、貴重な光景だ。
「お話しするのも久しぶりですね。兄さん」
「……そうだね。シャロン」
名前を呼ばれた瞬間、胸元が熱くなる。
その熱さをそのままに、シャロンは意を決して頬を胸から離すと、ブレイクを正面から見詰めた。
赤い目も、白い髪も、ふざけているようで真剣な眼差しも、微かな飴の匂いも――怖くない。
(怖く、ない)
幻影とは違う、暖かさが確かにあった。
「兄さん、大好き」
口にした途端に恥ずかしさが込み上げたが、我慢してブレイクを見詰め続ける。
暫しの間が空き――予想外な事に、ブレイクが先に目を逸らした。
「距離を置こうなんてした、私が馬鹿だったのか」
「?」
ブレイクの独白はシャロンには届かずに、闇に消える。
シャロンは首を傾げて、ブレイクの様子を窺った。

86 :
「兄さん――?」
問い掛けようとした言葉は、文字通りブレイクに飲み込まれた。
塞がれた唇から伝わる熱が全身に染み渡り、頬が火照る。
ブレイクの唇は仄かに甘く、飴の味がした。
熱い。――甘い。
シャロンは唇を離したブレイクに自分から口付け、首に手を回した。
もっと欲しい。もっと愛して欲しい。もっと、この熱を感じたい。
「……は……ぁっ」
「意外に積極的だね、シャロン」
長いキスを終え、息を荒くするシャロンに、ブレイクが茶化すように言う。
「兄さんの唇……甘い、から」
「……ッ。反則だよ」
ブレイクはシャロンを抱き上げ、簡素な寝台に運ぶ。
無機質な冷たさに、火照った身体が震えた。
「あ……」
纏めていた髪を解かれ、ベッドに優しく横たえられる。
先程とは全く違った感覚に、シャロンは戸惑った。
嫌ではない。寧ろ、期待している。
「シャロン」
「はっ、はい!」
ブレイクの熱っぽく掠れた声が、耳を熱くする。
緊張で声を上擦らせたシャロンに、ブレイクは小さく笑った。
「有難う。私を愛してくれて」
ブレイクの唇がシャロンの額に落とされる。
増していく胸の熱さに、シャロンは泣きそうになった。
「……っ」
服の上から胸を優しく撫でられ、シャロンは思わず身を強張らせる。
緊張で固まっているシャロンに構わず、ブレイクは手を滑らせた。
「……やっぱり、意外とある」
「そ、そんな事、言わないでいいですっ」
大きさを確かめるように撫でるブレイクは、妙に感慨深げだった。
シャロンは頬を染め、抗議の視線を送るも、簡単にかわされた。
歳の割にシャロンは発育の良い方なので、ブレイクの測定は正しいのだが。
「『今』は、重要な事さ」
「〜っ!! ん、んん……っ」
唇を塞がれたシャロンは、衣服がはだけられていくのを感じた。
ブレイクの言葉で、今になって羞恥心が一気に押し寄せる。
(私、今……いっ、いやらしい事を……)
数秒で上半身を剥かれ、火照った体が外気に触れた。
入浴を済ませていた故に薄着だったのは、幸か不幸か。

87 :
「み、見ないで……っ」
シャロンは胸元を隠し、ブレイクの視線から逃れようとする。
しかし、ブレイクの方が数枚上手だった。
彼は静かに手の位置を下げると、不意に太股に触れたのだ。
「ゃ……っ」
「甘いよ、シャロン」
咄嗟に意識が下半身に向いた瞬間、ブレイクは目にも留まらぬ速さでシャロンの両手を捕まえる。
遂に胸を直に見られてしまった事に、シャロンは羞恥から消えてしまいたかった。
形は歪ではない、と思う。
頂の蕾の色も大きさも、普通の筈だ。
しかし、ボリュームの面では圧倒的に迫力不足。
歳の割には大きめとは言え、とても魅力的とは言い難い。子供の胸だ。
「兄さん……見ないで」
「……どうして?」
涙を浮かべるシャロンに構わず、ブレイクは尚もシャロンの胸を見詰めた。
「私には、魅力的過ぎるよ」
ブレイクは呟き、シャロンの胸に触れた。
大きな手が、優しく、解すように胸を揉む。
時折、指が頂を掠める度、シャロンは必で声を抑えた。
「……ぁ、やっ……」
嬉しい。
自信が無かった胸を、魅力的だと言ってくれた。
シャロンの頬が火照りを増し、声にも艶が混じり始めた。
「に、にい……きゃうっ!」
突然胸元に吸い付かれ、一際高い声が上がる。
ブレイクが唇を離した時には、右の胸に赤い跡が付いていた。
「飴よりも、よっぽど甘い」
ブレイクは薄く笑って、シャロンの胸を愛撫する。
右手で桜色の突起を弄りながら、左手はゆるゆるとシャロンのヒップを撫でていた。
「に、兄さ……ぁっ、むね、いじめ……ないっ、で……っ」
聴いた事の無い程高い声が、自分の喉から上がる。
今や身体は燃えるように熱く、シャロンはブレイクに触れられる度に反応を示した。
「ごめん、シャロン。脱がすよ」
ブレイクはシャロンのスカートを取り払い、自身も上着を脱いだ。
最早、身に着けているのは下着一枚のみだ。

88 :
この先は、まだ誰にも見られた事の無い領域だ。
「……っ、はぁ……っ」
漸く愛撫の手を止められたシャロンは、息も絶え絶えな状態だった。
全身が熱く、身悶えするような甘い疼きが腰から下にのし掛かっている。
その疼きがどこから発せられる物かは、シャロンにも分かった。
「身体は大丈夫かい?」
「……何、とか……」
実際は、大丈夫でないのは疼きの所為で、身体的負担は寧ろ少ない。早く続きを、と望む身体と、はしたない真似は出来ないと諫める理性が、せめぎ合っていた。
「これから先は、もう後には退けない行為だ」
「……はい」
「後悔、しないかい?」
ブレイクの真剣な瞳が、シャロンを真っ直ぐに射抜く。
汗を浮かべるブレイクの表情は、今まで見た事の無い程に艶やかだ。
シャロンの好きな赤い眼差しが、手を伸ばせば触れられる距離にある。
愛しい気持ちが溢れ、シャロンはブレイクの頬に手を当てた。
(後になんて、退けなくていい)
先程のブレイクを真似るように、口付けで返事をする。
シャロンの答えに、ブレイクも情熱的に応じた。
「……ふぁ……ん」
舌を絡ませ、手を握り、お互いを激しく求め合う。
ブレイクの手が最後の一枚を脱がし、シャロンはとうとう一糸纏わぬ姿を晒していた。
「……あ……ん」
唇が離れた途端、無意識に名残惜しむような声が洩れる。
ブレイクの視線を身体の末端に感じながら、シャロンは唇を震わせた。
(濡れて……る)
ひんやりとした感覚から、シャロンは自身が反応していた事を改めて自覚する。
ブレイクも同じように思っていたのか、短く息を吐いた。
「……参考までに聞くけど、初めてかい?」
「あっ、当たり前ですっ!」
何の参考だ。
ブレイクの質問の意図が分からないシャロンは、顔を赤らめて言った。
「光栄だね」
クスリと微笑んだブレイクが、シャロンの下腹部に指を這わす。
溶け出しそうに熱を帯びたそこは、指の動きに合わせて音を立てた。
「……っ! あ、や、ダメです……っ、ん」
下腹部からの刺激を受ける度、電流が流れているような感覚に陥る。
今までとは比べ物にならない快楽に、シャロンの背中が仰け反った。

89 :
「可愛い声が聞けるようになったね」
「知っ……らな、やぁっ!」
そう言いながら、シャロン自身も驚いていた。
押し寄せる快楽が、大き過ぎる。
初めてでこの順応振りは、喜ぶべきか悲しむべきか。
「にいっ、さんの……ぁ、お気に、召しますか……っ?」
シャロンが苦しい呼吸の中で問うと、ブレイクは無言で唇を重ねる。
柔らかい白髪が頬を擽り、シャロンは堪らなくなった。
息が苦しいのも忘れて、夢中でキスに応える。
その時、急に頭の中で閃光が走った。
「あ……変、です……っ。何か、来る……っ!」
淫らな水音が部屋中に反響し、シャロンは羞恥心から顔を隠す。
初めは小さかった光は、頭の中で肥大化していった。
ブレイクが首筋に吸い付き、声が上がる。
自分の中に指が沈み込み――その瞬間、光が炸裂した。
「あ、ダメ……兄、さーーーーっっ!!」
咄嗟にブレイクな頭を抱き締めて、シャロンは達した。
頭が真っ白になり、勝手に腰がガクガクと震える。
初めて味わう絶頂に、シャロンは快楽で気絶しそうだった。
「大丈夫?」
「は……い」
余韻に身体を震わせながら、シャロンは何とか答える。
薄目を開けると、ブレイクがスカーフに手を掛けているのが見えた。
「……兄さん?」
ブレイクは、そのまま姿勢で固まっていた。
俯いているので表情は窺えず、言葉も発さない。
息を整えつつ、シャロンは白髪を優しく撫でる。
数秒の後、漸くブレイクは顔を上げた。
「……ごめん」
「きゃっ!?」
一言呟き、スカーフを一気に取り去ると、ブレイクはシャロンの脚を開いた。
突然の事に驚き、シャロンは声を上げる。
事態に追い付いた頭に、遅れて羞恥心が生じた。
「や……兄さん、そんなに、開いたら……」
己の其処が、口を開けている感覚に、シャロンは真っ赤になった。
疼きは消えておらず、刺激を求めて震えているのが分かる。
触れられてもいないのに溢れ出てくる蜜が、シーツに伝った。
「シャロン」
言葉が聞こえたと同時に、粘膜に熱い塊が触れた。
それが何なのか分からない程初ではない。
シャロンは動悸がする胸を押さえた。

90 :
(熱い)
初めて見るそれは大きく、シャロンの身体にも劣らぬ熱を帯びていた。
(兄さんも……?)
自分と同じく、快楽を欲して疼いているのか。
そっと手で触れると、激しく脈打っていた。
早く、この疼きが無くなるなら――。
「……来て、下さい。兄さん」
シャロンは微笑み、手を伸ばす。
意図を察したブレイクがその手を握ると、暖かな安心感が胸に落ちた。
指を絡め、お互いがしっかりと握り合うと、ブレイクは腰を進め始めた。
「責任は、ちゃんと取って下さいね?」
シャロンがそう言うと、ブレイクはシャロンの頬を撫で、曖昧に微笑んだ。
赤い瞳が僅かに揺らいだ気がしたが、次の瞬間には何も考えられなくなった。
侵入してくる異物感に、シャロンは息が詰まる思いで耐えた。
十分に出来上がっていたお陰で最初はスムーズに進んでいたのだが、途中から進行が鈍る。
シャロンが不思議に思った瞬間、激痛が走った。
「!! 痛……っ!!」
今更ながら、シャロンは膜が破れたのだと理解する。
何も考えられない程の痛みに、必で悲鳴を抑えた。
二人の体格差の所為か、受け入れるのは簡単ではなかった。
「シャロン……ッ、力を、抜いて」
ブレイクが、苦しそうな声で言う。
いつになく余裕の無い姿に、シャロンは目を見開いた。
「っ……ザクス、兄……さ……っ!!」
シャロンはブレイクの手を固く握り締めた。
強請るように引き寄せると、貪るようにキスをされた。
「ゃ……ふぁ、あん」
舌が絡まり、混ざり合った唾液が零れる。
シャロンはキスに集中し、痛みを忘れようと夢中でブレイクを求めた。
「は……ッ。……入ったよ」
唇を離したブレイクが、息を乱しながら微笑んだ。
シャロンはきつく綴じていた目を開け、恐る恐る下腹部を覗き込んだ。――本当に、入っている。
シャロンは呆然と結合部を見詰め、そこでシーツに飛んだ赤い色に気付いた。
「……初めてを、頂きました」
視線に気付いたブレイクが、冗談めかして言う。
シャロンは破瓜の証とブレイクの顔を交互に見比べた。
「い――頂かれ、ました」

91 :
支援

92 :
「まだ痛い?」
「……はい、少し」
強がっても簡単に見抜かれると思い、シャロンは正直に答えた。
下腹部が重く、鈍痛が引かない。
だが――。
「嬉しいです。兄さん」
心からそう言うと、ふわりと抱き締められた。
優しく髪を梳かれると、愛おしい気持ちが溢れて止まらなくなる。
無意識の内に泣いていた事に気付き、シャロンは小さく笑った。
初めてを捧げた時ではなく、抱き締められて涙する自分が、何やら可笑しかった。
「シャロン?」
泣きながら笑っている自分は、何とも奇妙だろうとシャロンは思う。
不思議そうなブレイクの耳元に、シャロンは唇を寄せた。
「動いて下さい。好きな様に……」
耳に口付けて囁くと、凄まじい速さで視界が反転する。
押し倒されたのだと気付いた時には、ブレイクの腰が動き出していた。
「んっ……あんっ!」
出し入れを繰り返される度、鈍い痛みが走る。
しかし、それすらも甘い快楽としてシャロンに襲い掛かり、嬌声が上がった。
「兄、さん……おかしく、私、おかしくなって……やぁっ!」
胸の頂を口に含んで転がされ、シャロンは身体を逸らした。
淫猥な水音が絶え間なく響き、寝台のバネが軋む。
茹だった体は、今やシーツが擦れる感覚にすら快感を覚えていた。
「シャロン……そろそろ、限界……ッ」
ブレイクは掠れた声で告げると、動きを早める。
露出した陰核に触れられた瞬間、シャロンの頭の中で星が弾けた。
「いや、あっ、駄目で……んっ! それ、ダメ……っ!!」
強烈な刺激に、シャロンは最早声を抑えていられなくなった。
高まっていく自分に気付きつつ、ブレイクの手を握り締める。
大声で喘ぎ、反応し、唇を求め――。
(私……こんなに、いやらしいなんて……)

93 :
シャロンの目尻から、涙が一筋流れる。
ブレイク自身が最も深い部分にコツンと触れた瞬間、シャロンの身体は限界に達した。
「だ……め……っ、兄さん、あっ、私――――っっ!!」
「シャロン……くッ!!」
瞼の裏で閃光が炸裂し、シャロンは今までで一番高い声を上げる。
一瞬遅れて、中にあるモノが波打ち、精が吐き出されたのが分かった。
「はぁ……ぁっ」
シャロンは熱の覚めやらぬ肢体を投げ出し、荒い息を吐く。
最後に見たのは、何故か泣きそうな表情のブレイクだった。
・・・
ブレイクはシャワーを浴びると、新しい服に袖を通す。
必要最低限に身形を整え、ブレイクは部屋のドアを開けた。
「あら、ザッ君。早起きね」
急に開けたにも関わらず、全く動じた様子が無い。
扉の向こうに立っていたシェリルを、ブレイクは溜め息混じりで迎え入れた。
「全く……。選りに選って、バルマ公に頼らずともいいでしょう」
「ふふ。本当に、ザッ君はルー君が嫌いなのねぇ」
笑い事ではない。
ブレイクは悪びれないシェリルに頭を抱えた。
一歩間違えれば孫娘の貞操が危なかったと言うのに、大した図太さだ。
「私が帰って来るのを見計らって、あの幻影を差し向けたのでしょう? 正面入口でバルマ公を出迎えたのも、私が裏に回ると踏んで」
「追加すれば、貴方に割り当てられる仕事の量を調整したのも私――じゃなくてルー君よ」
道理で、友人が泣きながら大量の仕事をこなしていると思った。
ブレイクは苦い気持ちで、内心友人に合掌した。
「ああでもしないと、シャロンちゃんを本気で一生遠ざける積もりだったでしょう? 仲直り出来たなら、結果オーライね〜」
「……」
そこを突かれると、閉口する他無い。
主の気遣いとなると突っぱねる訳にもいかず、ブレイクは目を背けるだけに留まった。
「……刻印は、見せたの?」
シェリルは、すやすやと眠るシャロンに視線を投げつつ、静かに聞いた。
――バレてましたか、と呟き、ブレイクは胸に手を当てた。
「私は、答えられませんでした」
責任を取って下さい、と言った、シャロンに。
ブレイクは左胸に当てた手を握り締めた。

94 :
「話せなかったのです。刻印の事も、私の命が長くない事も――」
服に手を掛けた所で迷っていた自分に、シャロンは気付いただろうか。
「私がシャロンを遠ざけた、本当の理由も」
にゆく自分が何を馬鹿な事をと、何度も忘れようとした。
それでも無理だった。
『貴方の役に立ちたい』と言ったシャロンの決意を知った時には、もう誤魔化せない所に来ていた。
――彼女を、愛してしまった。
「ザッ君……」
「……すみません。今は……」
最後まで言わぬ内に、シェリルは立ち上がっていた。
流石に長い付き合いなだけに、言葉を交わさずとも分かっている。
シェリルはシャロンの髪を撫でると、振り返らずにドアに手を掛けた。
「……シャロンは、あれで鋭い子だわ」
ドアが閉まる寸前に、シェリルが凛とした口調で言う。
反射的に背筋を伸ばしたブレイクは、威厳に満ち溢れた言葉に息を呑んだ。
「――気付いていないから隠し通そうなんて、過信しちゃ駄目よ」
シェリルはそう言い残し、部屋から出て行った。
残されたブレイクは、呆然としながら瞬きを繰り返した。
身体中を動揺が駆け巡る。
何時だ。そして、何にだ。
あの物言いでは、シャロンは自分の隠している事の何かに気付いているらしい。
まさか、やはりあの状況で服を脱がないのは不自然だったのか――。
(……ん?)
視界の隅で何かが動いた気がして、ブレイクは視線を向けた。
ベッドのシャロンは、安らかな寝息を立てている。
――と、思っていたら、小さく動いた。
「……起きてる?」
呆然と呟くと、シャロンが今度こそギクリとする。
ブレイクは嘆息し、額に手を当てた。
(成る程――それで、『気付いている』か)
合点が行くと共に、急に笑いが込み上げて来た。
まだ子供だと思っていたら、自分は彼女の狸寝入りにまんまと騙されたのだ。
ブレイクは苦笑いしながら、ベッドに近付き腰掛けた。

95 :
「いつから起きていたんだい?」
「……刻印が、と話している所からです」
ブレイクが問い掛けると、シャロンは恐る恐ると言った風に答えた。
狸寝入りを責められると思ったのだろうか、その瞳はブレイクを不安げに上目遣いで見詰めた。
「いいよ。話そう」
ブレイクが苦笑いしながら言うと、シャロンは呆気に取られた様子で口を開けた。
そう来るとは思わなかったのだろう。
そんなシャロンが可笑しくて、ブレイクはまた笑った。
「でも、少し眠るよ。話は……その後にしよう」
「え、あ、はいっ。私ももう少し休みます」
ベッドに倒れ込み、ブレイクは目を綴じた。
柔らかい布地が心地良く、直ぐに意識を持っていかれそうになる。
早くも微睡み始めたブレイクの腕に、細い腕が絡まった。
「……お休みなさい、兄さん」
ブレイクの半身が、暖かい感覚に包まれる。
全身で抱き付いてくるシャロンに、ブレイクは頬を緩ませた。
(全て話したら――君は、泣くかな)
シャロンの滑らかな髪に顔を埋めて、ブレイクは意識を闇に預けた。
せめて夢の中だけは、何も無い左胸があればいいなと願いながら。
end.

96 :
以上です。
駄文、長文で申し訳無いしブレイクのキャラが何か変だしエロの持って行き方が強引だし、
何より途中で寝落ちして、すいませんでしたッ!!
私が書いたら、シャロンが可愛くない……。
では。

97 :
乙でした
水を差すようで悪いけど、ブレイクってベッドの下とか戸棚の中とか暗い所出入りしてるから一角獣の能力じゃないの?

98 :
GJ、あなたの文章、読みやすくて好きだ
要所要所に挟まる小ネタ、張り紙されるレイムさんや幻影ブレシャロも萌えた…!

99 :
GJ!読みやすくてよかった!
やっぱりブレシャロは王道って感じがして好きだな


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