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2013年06月政治165: ● 日本の風、亜細亜の雨、世界の風雨 ● (111)
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【推進派】メルトダウン【原発利権】Part6 (603)
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【推進派】メルトダウン【原発利権】Part6 (603)
● 日本の風、亜細亜の雨、世界の風雨 ●
- 1 :2012/10/19 〜 最終レス :2013/06/03
- 日本に吹く風は、アジアに吹く風の一部である。
亜細亜に降る雨は、地球に降る雨の中の一部だ。
昨日、日本を抜けた風は、明日はどこに流れていくのか?
明後日はいったい、世界のどこに雨が降り注いでいるのか?
- 2 :
- タイフーン、発生中!
- 3 :
- 尖閣は日本の領土。
- 4 :
- 竹島も日本の領土。
- 5 :
-
/// まえがき 1 ////////////
堺屋 太一著 「日本とは何か」1991年 講談社発行より
まえがき
「日本とは何か」
これはわれわれが日本人である限り、永久に追い求めなければならないテーマであろう。とくに
いま、この一九九〇年代においては、これが重要な問題である。外には国際情勢の抜本的な変化が
あり、内には史上はじめての「豊かな社会」と高齢化の急進展がある。
これまでにも「日本論」または「日本人論」は、さまざまに論じられてきた。戦後における
その系譜を略述すれば、日本後進国論から出発し、やがて日本特殊論に傾き、最近では日本式経営や
日本型官民協調体制への礼讃論が擡頭する一方、知日外国人からは新たな日本特殊論ともいうべき
議論も出はじめている。
//////// 日本とは何か ///
- 6 :
-
/// まえがき 2 ////////////
いうまでもなくこの変遷は、日本の経済的発展と並行している。そしてそれは、明治から昭和初期、
太平洋戦争の敗北に至るまでの「日本論」の変化とも類似している。明治中期までは、もっぱら
「欧米列強に立ち遅れた日本」が強調され、それまでの日本的特色を否定するものが多かった。
いわゆる「脱亜入欧」論である。
ところが、日露戦争の戦勝後は、日本文化の独自性を強調する日本主義が擡頭、「古きよき日本」
への憧憬が強まる。それがさらに昭和に入ると、「日本よい国、強い国」式の自信過剰が生まれ、
やがては欧米近代文明に対する批判へと発展する。ここでいう「よい国」とは、正義の国、つまり
自国の倫理を世界に拡げるべき国という意味であり、「強い国」とは軍事力の優れた国という
意味である。
////////// 堺屋太一著 ///
- 7 :
-
/// まえがき 3 ////////////
この二つを重ね合わせると、武力を以てしても日本的倫理を世界に拡げてもよいという
「日本神国論」に行きついてしまう。戦前の日本が、相手の意向を無視した侵略行為を、
「王道楽土の建設」「大東亜共栄圏の新秩序」と称してはばからなかったのも、こうした
自国評価、つまり「日本論」があったからである。
明治から昭和初期にかけての日本における「日本論」の変化の背景には、日本の軍事的成功が
あった。第一次世界大戦後は、日本人の大多数が、軍事的に成功していると信じていたのだ。
当時の日本人が心から「軍事大国」となることを願っていたとはいえないが、「外国に蔑まれない
国づくり」から出発した明治の近代化は、軍事力を基準とする国際比較を、唯一の成功の尺度
とする風潮を生んでいたのである。
//////////// 1991年刊 ///
- 8 :
- 宇宙のニュートリノ
- 9 :
-
/// まえがき 4 //////////
経済を尺度とすることが一般化した今日から見ると奇妙にさえ思えるのだが、一九三〇年代の
日本人には、はるかに豊かなアメリカやイギリスに対しても、日本文化の優越性と日本的社会体制の
良好さに見習うように説いた者も少なくない。それは大川周明(経済学者)や荒木貞夫(陸軍大将)
のような右翼的国粋主義者に限ったことではない。いまは五千円札の肖像に納まっている新渡戸稲造
(国際連盟事務次長)のような「国際人」でさえも、その必要性を大いに強調している。外国生活の
経験がある外国語上手に、自国礼賛論者が多いのは、後発国に多い現象である。日清・日露、
第一次大戦と、幸運にめぐまれて勝ちつづけただけで、たちまちこの国には、日本は欧米近代文明の
利点と伝統的精神文化のよさを合わせ持った社会、という自画自賛がはじまったわけだ。
//////// 講談社発行 ///
- 10 :
-
/// まえがき 5 ////////
こうした「日本強国論」、日本こそ正義とする「日本神国論」が、日本を国際的孤立に
向かわせ、やがて太平洋戦争へと突進したことを思えば、今日の「日本論」の風潮も、ある種の
危険を孕んでいるといえなくもない。
それぞれの国、それぞれの民族は、みな独自の文化を持っている。その意味では、日本文化が
特殊なのは当然であろう。問題は、この文化の特殊性を肯定するあまり、政策や経営の特殊性擁護に
利用し過ぎてはならない、ということである。ましてや、それを一部集団の利益擁護や特定官庁の
権限保持に多用してはならない。国際社会とは、それぞれに特殊な文化を持つ国や民族が、
ある程度の気色悪さに耐えながらも、妥協し協調しながら一般的ルールを形成する場だからである。
///// 日本とは何か ///
- 11 :
-
/// まえがき 6 /////////
この場合重要なのは、日本にとって変えられる特殊性と変えやすい特殊性とを見きわめる
ことであろう。変えやすいものなら、一部の抵抗を排しても国際協調のためには変えなければ
ならない。幸いにして日本人は、多くの面を変えることのできる文化(それこそ日本文化の
特殊性の一つ)を持っているのである。
そして、変え難いものなら、その由来と理由を世界に説き、理解と納得を求めるべきだ。
たとえそれによって、日本と日本人の利益と評判が損なわれたとしても、破滅的な衝突よりは
ましなはずである。
本書は、そうした観点から、歴史に遡って日本の由来と現実を見つめた日本の姿を描こう
とする試みである。
・・・・・
////// 堺屋太一著 ///
- 12 :
-
/// 1991年 講談社発行 ///////
堺屋太一著 「日本とは何か」, 1991年 講談社発行
講談社文庫, 税込価格:\580, ISBNコード: 4061855948
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061855948
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9940084056
http://books.rakuten.co.jp/RBOOKS/0000497890/
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=18956766
///////////// 堺屋太一著 ///
- 13 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 1 //////
堺屋 太一著 「日本とは何か」1991年 講談社発行より
第一章 平成の日本
「天国」日本の実態 - 工業モノカルチャー社会
効率の悪い「経済大国」
・・・・
経済環境や社会的地位が急激に上昇した場合人間は自己評価の両極分解に陥りやすい。
一つは、経済的社会的上昇を成し得た自分の能力に対する過大評価であり、もうひとつは
周囲の扱いや冷たい視線から生まれる自己嫌悪だ。
この心理が、ときには下品な富の顕示や強引な権力の乱用を招き、ときには過剰な被害者
意識を募らす。それでいて内心では、「みんなに好かれたい」という渇望が絶えない。いわゆる
「成金心理」である。今日、国際社会における日本には、これに似た心理があることは否定
できないだろう。
//////////// 1991年刊 ///
- 14 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 2 //////
日本の自己過大評価は、行政機関や一部の産業界、言論人によって組織的に宣伝され、
広く日本人自身が信じ込むようになった「偉大な経済大国・日本」の自己イメージであり、
「勤勉で有能で規律正しい日本人」の自画像である。そしてそれを裏づける統計数値や
評価尺度が、官僚機構から発表され、マスコミ等を通じて流され、一部言論人によって
増幅されている。
たとえば、最初に並べた「経済大国」を示す諸数字だが、これ自体は正確であり何の
作為も含まれていない。しかし、このことから日本は「経済効率のよい国」、「世界に
広めるべき優れた経済体制をつくり上げた社会」という印象まで植えつけたのには、
数値の選択と報道の仕方に依存するところが少なくない。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 15 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 3 //////
今日、自動車や電気製品などに代表される規格大量生産型工業の分野では、日本製品が
きわめて強い国際競争力を持っているのは事実だ。価格が安いだけではなく、製品の品質も
優秀だし納期も確実だ。不良品の率はきわめて低く故障の回数も少ない。二十年前までは
日本の工業製品は、もっぱら価格の安さで世界に売り込んでいたため、低賃金だのダンピング
だのといった非難が激しかったが、いまではそんないいがかりをつけられることは滅多にない。
何しろ日本の工場は、極度に合理化されハイテクで管理されているため、製品はすべて自動的に
高級化してしまう。この国では、家庭用ドアの滑車に使うボールベアリングまで、宇宙ロケット用と
同じ超精度の良質品が使われている。ミクロン単位の精度の自動制御工作機械を設置した
工場では、そんな製品ばかりが安価に大量に生産されるのである。
//////////////// 1991年刊 ///
- 16 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 4 /////
こうしたことは、工業の各分野で見られ、そしてそれが「日本の経済力と技術力は世界一」
という自負を生み、「日本こそ効率のよい優れた社会」という自己評価を定着させている。
しかし、それは日本の一面に過ぎない。もう一度、元に戻って日本の全体像を見ると、
また違った「実態」が見えてくる。
現在の為替レートで換算した一人当たり国民総生産では、日本は世界第一流の高さだが、
それぞれの国の生活費などを加味した「実質国民総生産」で見ると、日本と旧西ドイツと
アメリカとはほぼ同じだ。日本銀行の国際比較統計などでは、日本よりも旧西ドイツやアメリカ
のほうがわずかながら高く、イギリスやフランスはやや低いといった数値になっている。
為替換算よりもずっと差は少ないのである。
///////////// 講談社発行 ///
- 17 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 5 //////
ところが、一九九一年九月の日本生産性本部の調査によれば、勤労者一人当たりの生産性は、
日本は主要先進国のなかではスウェーデンに次いで二番目に低い。この国の就業率は四九パーセント、
先進諸国のなかでも断然高いのだ。
しかし、日本の労働時間は一九九〇年で年間二千四十四時間、アメリカに比べて一割、イギリス、
フランスより二割、旧西ドイツと比べれば何と三割以上も長い。長い時間働いているのに、
勤労者一人当たりの生産性はいたって低いのである。
通勤などに費やされる時間を加えた労働拘束時間で見ると、この差はさらに大きく、日米の差は
二割、日独では四割以上にもなる。大雑把にいえば、日本人が一年かかって行う生産を、同じ
時間ずつ働けば西ドイツ人は八ヵ月、アメリカ人は十ヵ月で仕上げる勘定だ。
//////////////// 日本とは何か ///
- 18 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 6 //////
このため、勤労者が自由に使える「可処分時間」は、ドイツ人のほうが日本人よりも三倍も多い。
とくに東京都市圏では通勤時間の延長で、一般勤労者の「可処分時間」は極端に少なく、七〇年代
から八〇年代にかけての十年間に、睡眠時間さえ十八分も減少している。
日本が一人当たり国民総生産が多いのは、この国の社会と企業が効率的だからではなく、大勢が
長時間働いているからに過ぎない。文学的な誇張を交えていえば、「日本人はみんなが夜も眠らないで
働いて、やっと欧米並みの生産を上げている」のである。
/////////////// 堺屋太一著 ///
- 19 :
- ハリケーン・サンディの大きさは、想像を絶してる。
日本列島を包み込む大きさだ。
こんなハリケーンがなぜ育つのか、アメリカ国民に教育しないと、
地球はとんでもないことになる。
→地球温暖化が原因。
オバマが今回のハリケーンにうまく対処したとか、そういう問題ではない。
原因を立たなきゃまた来るだけだ!。馬鹿者が。
- 20 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 7 //////
巨大な無駄を生む日本の体制
日本は技術水準の高い国だといわれる。ファクトリー・オートメーションは断然世界一だし、
オフィス・オートメーションも世界一流だ。いまでは各家庭にまでファクシミリが入り、
中学生がファミコンを操り、主婦がワード・プロセッサーを叩いて手紙を書く。生産面での
技術ばかりでなく、日常生活での電子技術の普及も著しい。
日本は経済以外に資金と労働力を費やさない国である。防衛費はGNPの一パーセント、アメリカの
六分の一、西欧諸国の四分の一以下だ。軍務に服する人の数も全就業者の○.三九パーセント、
欧米に比べて全国民に占める比率は二分の一から五分の一に過ぎない。宗教関係の支出も人員も
少ない。この国では僧侶も神官も大半が副業として行われており、宗教が経済活動に支障を
きたすことはごく少ない。そのうえ、ボランティア活動も低調で、それによって企業の運営が
妨げられることもない。要するに日本は、防衛も宗教も顧みず、ただひたすらに経済のために
資金と人材を集中しているのである。
//////////////// 1991年刊 ///
- 21 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 8 //////
また日本は、労働の質のよい国だ、ともいわれている。教育が普及しているのは前述の通りだが、
それぞれの生徒学生も、じつにまじめだ。それだけに平均的な勤労者の技能と知識は、欧米先進国に
比べてもかなり高いといわれている。そのうえ、圧倒的多数の勤労者は、哀しいまでの責任感と
組織忠誠心を持っており、欠勤も労働争議もきわめて少ない。
加えて現在の日本は、「世界史上空前」といわれるほどに有利な人口構造になっている。六十五歳
以上の高齢者の比率こそ一二.五パーセントと上昇した(一九九一年)が、それ以上の速度で
十四歳未満の年少者が減少したため、労働適齢人口が全体の六九.六パーセントを占めるに至った。
高齢者率の高い西欧諸国や子供の多いアメリカに比べて、国民一人当たリの生産効率を高めるには
有利な状況である。
////////////////// 講談社発行 ///
- 22 :
- /// 工業モノカルチャー社会 9 //////
今日の日本は技術が優れ労働の質がよく、国民全体がよく教育され、近代機器に親しんでいる。
経済以外にはお金も人も使わず、大勢の人々が働き盛りの年齢で実際にも就業しているといる
という、このうえもなく恵まれた条件にある。それにもかかわらず、労働拘束時間当たりの
実質生産額でいえばアメリカや旧西ドイツよりはるかに低い。フランス、イギリス、スペイン
よりも下なのである。これはいったいどういうことだろうか。
一方では、日本の工業製品は、高度に自動化された工場で忠誠心あふれる勤労者によって
つくられるため、コストも安く品質もよいといわれながら、国全体として見れば、これほどまでに
効率が悪いのは何故か。それは、この国の工場は効率的であっても、それ以外の面に巨大な
無駄があるからに違いない。
//////////////// 日本とは何か ///
- 23 :
- /// 工業モノカルチャー社会 10 //////
実際、日本は工業製品の国際競争力の強さとは裏腹に、その他の分野は著しくコストが高い。
日本の農業の規模の小ささと生産性の低さは、すでによく知られている。農業所得のうちで
価格保証と政府補助に依存する部分が七五パーセントにも達しているのだ。
流通業もまた非効率だ。「アメりカでは二人がつくった自動車を一人が売っているが、
日本では一人がつくった車を二人が売っている」といわれるように、日本の流通業はきわめて
無駄が多い。工業製品の工場蔵出し価格と末端小売価格を比べると、アメリカは一.七倍、
西欧諸国も二倍以下なのに、日本だけは三.○倍だという調査結果もある。同じ値段のものを
売るのに、日本は欧米の二、三倍も費用がかかるのである。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 24 :
- /// 工業モノカルチャー社会 11 //////
もっとも、日本の流通業とりわけ小売業におけるサービスの質が高いことも無視できない。
日本の小売業は営業時間も長いし、品切れも少ない。配達も無料ならアフターサービスも徹底
している。何より誇るべき点は包装のよさで、包み紙や容器の豪華さは「断然」を三度くり返し
たくなるほど諸外国を上回っている。日本の消費者は、概してそうした高級な流通サービスを
求めているのである。
しかし、この点を加味したとしても、なお日本の流通業が不合理非能率を多く抱えていることは
否定できないだろう。
飲食店やホテルなどのサービスも割高だ。ニューヨークやパリで最高級のディナーを食べても
三百ドルになることはないが、赤坂や新橋の料亭なら千ドルも珍しくない。銀座や北新地の
クラブは水割数杯で三百ドルを請求する。そしてそこにサラリーマンが大勢通っている。
企業交際費という独特の制度が、個人消費とはかけ離れた高価なサービスヘの需要を生み出して
いるからだ。
///////////// 1991年刊 ///
- 25 :
- /// 工業モノカルチャー社会 12 //////
金融や情報関係のコストも諸外国より高い。損失補損の発覚で明らかになったように、日本の
証券取引の手数料は欧米に比べて平均して二倍ほどもかかる。加えて最近目立つのは調査企画、
デザイン、編集テレビ番組づくりなど、いわゆる「知恵の値打ち(知価)」のコスト高だ。
土地価格のべら棒に高い東京のオフィスに、大勢が寄り集まって議論と親睦を積み重ねなければ、
何事も進まないシステムになっているからである。
要するに日本は、「経済大国」とはいうものの、本当に量質ともに誇り得るほどの生産力と
競争力を持っているのは製造工業、それも自動車や電気製品に代表される規格大量生産型の
工業製品だけである。日本の実態は、経済活動全般が優れた「経済大国」ではなく、多くの面で
非効率と無駄を抱えながらも、規格大量生産型の工業だけがとび抜けて発展した「規格大量生産大国」
なのである。
///////////// 講談社発行 ///
- 26 :
- /// 工業モノカルチャー社会 13 /////
「歪な繁栄」を生んだ「最適工業社会」
世界を圧する生産量と競争力を誇る規格大量生産型工業と、非効率と無駄を抱える流通・情報・
知価創造 − この極度の不均衡こそ、今日の日本を解く鍵といってよい。前者を重視すれば、
日本は世界に冠たる「経済大国」、人類の模範ともいえる「天国に最も近い国」だが、後者の
ほうを主に見れば、日本は非効率で楽しみのない社会、「豊かさの実感できない国」である。
/////////// 日本とは何か ///
- 27 :
- /// 工業モノカルチャー社会 14 //////
しかし、この不均衡は、人材の偏りや組織の大小で生じたものではない。自然条件に左右される
農業はともかく、流通業や情報産業がとくに不利になる条件が今日の日本にあるわけではない。
昭和初期から戦後の二十年間ほどの間は、政府が製造業に優先的な資金誘導を行ったこともあったが、
少なくとも最近の二十年間は、そんなこともほとんどなくなっている。また、若者の希望する
就職先としても、製造工業がとくに人気がよく、有能優秀な人材が集中しているわけでもない。
むしろ、最近では、若者の希望は製造工業よりも金融や情報産業のほうに傾斜し、それがやがて
製造工業の衰退を招くのではないか、と危倶されているほどである。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 28 :
- 韓国の幼稚なRサギに騙される自民党の河野
韓国の幼稚なRサギに騙される自民党の河野
- 29 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 15 //////
また、企業規模などの点から、この落差を説明することも難しい。概していえば、流通業には
中小零細規模の事業所が多く、それを保護しようとする「大規模小売店舗規制法」等の存在が
流通合理化を妨げているのは、ある程度事実だろう。しかし、それがすべての原因とは考え難いし、
非効率が小売業にだけあるわけでもない。規制の少ない卸売でも不可解なまでの迂回とコスト高が
存在する。金融業や情報産業の規模は諸外国に優るとも劣らぬものになっているし、知価創造分野にも
少なからぬ数の大企業がある。それにもかかわらず、いやむしろそれ故にこそ、日本のコストは
割高になっているのである。
///////////// 1991年刊 ///
- 30 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 16 //////
要するに、この国では、同じような水準の人材が、同じような原理で組織された企業体によって、
同じように熱心かつ勤勉に働いているにもかかわらず、規格大量生産型の製造工業は世界を圧する
ほどの生産力と競争力を持ち、流通業や情報産業などはひどく非効率な状況にあるわけだ。この
大きな落差は何故か。一言にしていえば、日本社会全般に広まっているすべてのものが、規格
大量生産型の製造業には適しているが、それ以外の産業や社会活動には適していない、ということである。
////////////// 講談社発行 ///
- 31 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 17 //////
実際、日本の政治行政は、規格大量生産の普及拡大のために多大の努力を払っている。
たとえば、工業製品には行政によって「JISマーク」なるものが制定されており、ネジやビスから
鋼材や電気製品にまでそれに適合するよう求められる。建築基準法も消防法もきわめて厳格で、建物の
デザインも内部空間もこれによって著しく限定される。「建物を設計するのは建築家ではなくて、
建築基準法だ」といわれるほどだ。道路基準、公園基準、電気施設基準などの厳重さはいうまでもない。
そのうえ、それぞれの施設運営についても、道路交通法や公園管理規則などがあリ、自由な使用はほとんど
認められていない。日本の都市には公園が少ないといわれるが、その少ない公園がますます使い難く
されているのだ。人間に対する医療でさえも「標準医療」によって規格化され、差額ベッドは罪悪視
されている。
/////////// 日本とは何か ///
- 32 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 18 //////
こうした各種の商品や施設・サービスの規格基準化は、商品サービスの種類を少なくし、
消費者の選択の自由を狭めるが、規格大量生産には有利な環境をつくり出す。八○年代から
はじまった商品やサービスの多様化が、容器の色や形を多様化する、「目先を変える」小手先仕事に
ならざるを得なかったのはこのためである。
////////////// 堺屋太一著 ///
- 33 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 19 //////
教育も情報も規格化
教育に対する官僚統制も徹底している。この国では、昭和十六年の「国民学校令」以来
半世紀にわたって、初等教育においては私立学校の新設を事実上禁止する「初等教育公立主義」が
採られている。そしてその公立学校においては、一通学区域一学校の「強制入学制度」が厳格に
実行されている。このため、教育の需要者たる生徒と父兄の側には学校選択の余地がない。
日本の子供たちは、自分の好みも個性も無視され、官僚の定めた学校に強制的に入学させられる
のである。
//////////////// 1991年刊 ///
- 34 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 20 //////
そのうえ、こうして強制入学させられた学校では、官僚の定めた教科が機械的に教え込まれ、
年月とともに押し出される。しかもそこでは、官僚の定めた指導要綱によって、不出来な科目ほど
長く厳しく教え込む「欠点除去型」の教育が徹底されている。恐ろしいことに最近では、
それでもまだいささかの好みと個性を発揮する「悪質な生徒」がいるというので、服装・髪型から
挙手歩行の姿勢に至るまでを共通化する「校則」なるものがつくられ、その厳守が強制されている。
校則とは、生徒にわずかな個性と自己表現をも許さぬ管理規制なのだ。
///////////// 講談社発行 ///
- 35 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 21 //////
こうした画一化教育は、学校生活から楽しさをなくし、生徒の創造力と個性を破壊するが、
その半面では、共通の知識と技能を付与し、苦痛に満ちた時間に耐える習慣を叩き込む点では
効果を発揮する。そしてそれは、規格大量生産の現場で働くのにふさわしい労働力の養成には
じつに効率的である。
さらに、この国では各種産業団体や職能者の団体が、官僚の主導のもとにつくられ、その本部を
東京に置き、事務局長や専務理事に役人OBを採用する慣例ができ上がっている。これらの
産業別職能別団体が、直接的にも事務局内の官僚OBを通じても、官僚機構の指導を徹底させる
機能を果たしている。このことは企業や職業人の競争を抑制し、消費者物価をつり上げる結果にも
なるが、半面、工業製品の規格化を徹底し、産業界や各種業界の過当競争を防止するのにも
役立っている。
///////////// 日本とは何か ///
- 36 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 22 //////
また、放送や書籍の流通を、東京一極に集中させる制度も半世紀間つづいている。これによって
日本全国の情報環境は均一化し、地方の特色と誇りは失われてしまったが、同一規格の商品や
サービスが全国で販売使用しやすい統一市場をつくり上げたことも見逃せない。
加えて日本では、「行政指導」の名のもとに、法律によって付与されている以上の行政介入を、
官僚たちが無制限に行うことも容認されている。官僚たちは、企業や地方自治体を従わせるためなら、
目的や趣旨のまったく異なる権限を利用することもはばからない。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 37 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 23 //////
たとえば、薬局の出店開設を制限することは、憲法で認められた「職業選択の自由」に反するとの
最高裁判所判例があるにもかかわらず、製薬会社に対して薬の卸売をしないように指導することで、
官僚が好ましくないと考える薬局の新設を妨げている。もし製薬会社がこの指導に従わなければ、
当該製薬会社の新薬は何十年も許可されない恐れがあるのだ。
一九九一年夏に発覚した証券業界における大口投資家への損失補填も、こうした環境のなかで
起こった事件だ。日本の証券業界は、大蔵省の免許制によって競争が制限され、大蔵省の定めた
高率の手数料を得ることができる。これによって膨大な利益が保証された証券会社は、有利な
大口取引を勧誘するために、損失補填という条件を持ち出した。結果としては、一般投資家の
犠牲によって、特定の企業が利益を得ていたことになるだろう。
//////////////// 1991年刊 ///
- 38 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 24 //////
こうした行政指導は、多くの場合、産業界の競争を抑制し、消費者価格をつり上げ、供給者を
保護する効果を上げる。したがってそれは、企業の資本蓄積を厚くし、先行投資と技術改革に
役立っている、といえる。
要するに今日の日本は、官僚の主導のもとに供給者が業界ごとに協調して競争を抑制し、
規格大量生産を拡大発展させるのに有利な社会体制をつくり上げているのだ。昭和十六年以来
半世紀にわたって、こうした「官僚主導型業界協調体制(官導体制)」をつづけてきた結果、
日本では消費者の選択の自由は狭くなったし、消費者物価も上昇した。生徒が個性と独創性を
伸ばすことも、地域が特色を出すことも難しくなった。さまざまな情報に接することも、自由に
営業することもでき難い。その代わりに、規格大量生産型の工業には最も適した社会を形成する
ことはできたのである。
//////////// 講談社発行 ///
- 39 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 25 //////
今日の日本は、そのようにしてつくられた「最適工業社会」、いわば「工業モノカルチャー国家」
なのだ。自動車や電気製品に代表される規格大量生産型の工業において、日本が量質ともに
優れた能力を誇っているのは、その結果であり、規格大量生産型工業以外の分野に多くの非効率と
無駄を抱えているのもまた、このためである。
///////////// 日本とは何か ///
- 40 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 26 //////
日本式経営の利点と欠点
今日、日本人が自慢としている多くの特色は、この「最適工業社会」において養われたものだ。
したがって、日本が誇りとする「優れた特長」は、「規格大量生産型の工業に適している」という
意味に他ならない。たとえば、いまや多くの日本人が「世界に広めるべき日本文化」とさえ
いっている「日本式経営」なるものも、その典型である。
「日本式経営」の特色は、次の三点に集約できるだろう。第一に終身雇用制と年功序列賃金体系と
企業内組合の三つを柱とする閉鎖的な労使慣行、第二は決定権の下部分散と事前根回しに象徴される
集団主義、第三は極端に低い配当性向と極端に多い交際費が示している企業の従業員共同体化である。
この三つは相互に関連がある。終身雇用的労使慣行があるために企業は従業員共同体化し、共同体
であるが故に権限は下位に分散する集団主義になる。そしてその結果、従業員は共同体から離れ難くなり、
終身雇用にしがみつくわけである。
////////////// 堺屋太一著 ///
- 41 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 27 //////
こうした「日本式経営」は、従業員の企業忠誠心を強めるとともに、企業の内部留保を厚くし、
先行投資を活発にする。同時に、下位者に至るまで決定権が分散しているため、企業としての
意思決定に時間がかかるが、いったん社内合意が生まれれば浸透力が強く全従業員の協力が
得られやすい。日本の企業が成長力が高く、労働争議が少なく、しばしば全社一丸となって
技術革新や経営強化に励めるのはこのためだ。そして、そんな企業の集積こそが、日本経済全体の
成長力となり生産力となり国際競争力となっているのである。
以上のような事実を見れば、日本の経営者や官僚や評論家が、「日本式経営こそ、世界に
広めるべき日本文化」と鼻をうごめかすのもうなずけなくもない。しかし、同じ「日本式経営」で
行われている流通や情報や知価創造が、諸外国に比べて著しく割高である事実も見逃してはならない。
///////////////// 1991年刊 ///
- 42 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 28 //////
終身雇用制では過剰雇用(社内失業)を招きやすく、決定権が下位に分散した集団主義では
意思決定が遅く、配当性向を低くする共同体化した企業では仲間擁護になり経費負担が大きい。
操業率が比較的安定している製造業では有利な終身雇用が、変動の大きい情報や知価創造では
不利になる。規格大量生産では利点の多い集団主義が、創造と決断の機会の多い流通情報では
欠点になる。そして投資の多い製造業では優位を得る共同体化が、流通情報では交際費の多い
利権体質となって経費をかさませるのである。
///////////// 講談社発行 ///
- 43 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 29 /////
「日本式経営」なるものは、企業規模が拡大する成長過程で、意思決定の機会の少ない
規格大量生産型工業が、内部志向的発想に徹している場合にのみ、大きな利点を発揮する
経営方式なのだ。これが低成長(または縮小傾向)の企業に適用されると、たちまちにして
過剰雇用になる。かつての国鉄や現在の農林関係団体はその典型だ。また、意思決定の回数の
多い多種少量生産型産業で実行されると、やたらとコストと時間がかかる。日本の情報産業や
知価創造が非常に高価なのはこのためだ。そしてそれが外国と接触すればさまざまな摩擦を呼び、
ときとして倫理的非難も浴びる。この国での談合体質はその現れである。
/////////// 日本とは何か ///
- 44 :
-
/// 講談社 //////////////////
堺屋太一著 「日本とは何か」
1991年 講談社発行
http://www.amazon.co.jp/dp/4061855948/
http://www.amazon.co.jp/dp/4062037599/
///////////// 堺屋太一著 ///
- 45 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 30 //////
限りなく均質化する内志向
十年前、一九八〇年代のはじめには、欧米でもアジア諸国でも、「日本式経営」が高く
評価されたことがある。世界経済を混乱に陥れた二度の石油危機を乗り切って経済を安定させ、
いち早くエレクトロニクス技術を導入して世界の工業をリードするようになった日本経済の
成功に注目した外国人のなかには、その基礎としての「日本式経営」に着目、これを「人間資本主義
(人本主義)」と呼んだ学者もいる。
「日本式経営は、国民経済に発展をもたらし、社会全般に技術革新を広め、企業を成長させ、
従業員を安心させる素晴らしい方式だ。ここでは人間こそ企業の資産という考えがあり、
長期計画で人材の育成と技術の習得が行われている」などといわれたものだ。マレーシアでは
「ルック・イースト」が唱えられ、国民に日本や韓国の企業経営のよさと勤労者の勤勉を
見習うよう呼びかけられたほどである。
/////////// 堺屋太一著 ///
- 46 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 31 //////
しかし、八○年代も末になると、こうした「日本式経営」に対する賛美は影を潜め、むしろ
批判のほうが強まってきた。九〇年代初頭のいまは、欧米でもアジア諸国でも、「日本式経営」の
閉鎖性に対する非難のほうがはるかに強い。
それは単に、日本経済が一段と発展し、日本の企業がアメリカの映画会社や不動産を大量に
買収しているためとか、アジアにおける存在感過剰とかいったことだけではない。より本質的には
「日本式経営」がよりよく知られるようになった結果、それが規格大量生産型工業以外では
非効率的であり、企業規模の拡大を前提としなければ成り立たないことが明確になったためだ。
//////////////// 1991年刊 ///
- 47 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 32 //////
実際、終身雇用的労使慣行と集団主義と共同体化を特色とする「日本式経営」のなかでは、
すべての従業員は共通の倫理と美意識を持つことが強いられる。誰もが自分の勤める企業の
発展こそが「社会正義」と考え、職場で与えられた仕事の完成成就が「社会的目的」と信じて
疑わない。「会社のため」とさえいえば、相手の予定を無視することも、法規に違反することも、
すべて容認されると思っている。「仕事だから」とことわれば、親類の葬祭も家族との約束も、
全部免除されると信じている。いや、そう考えなければ「よき従業員」と認められない仕組みと
雰囲気が「日本式経営」にはつきまとっている。
///////////// 講談社発行 ///
- 48 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 33 //////
このため、日本人の目はつねに職場共同体の内部へと志向し、価値基準は職場共同体の
利害によって測られてしまう。このことは、個人の個性や創造力を麻痺させるだけではなく、
職場共同体の価値基準に従わない者を排除することにもなる。つまり「日本式経営」のなかで
「よき従業員」であるためには、思想の自由と家族や地域社会への帰属意識を放棄し、
職場共同体にのみ従順な「職場単属人間」でなければならないのだ。
/////////// 日本とは何か ///
- 49 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 34 //////
企業にとっては、従業員が強い忠誠心と帰属意識を持つことは、経営上有利であろう。だが、
各企業の従業員が、自分の帰属する企業の利益のみを「正義」と信じることは、社会的負担を
大きくし、国際摩擦を激しくする。「日本式経営」の成果の一つとされてきた「カンバン方式」が、
道路などの公共負担を大きくするとして、さすがの通産省さえ規制に乗り出さざるを得なく
なったのは、いかにも象徴的な出来事である。
///////////// 堺屋太一著 ///
- 50 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 35 //////
「省益あって国益なし」の官僚共同体
しかし、民間企業の場合はまだしも許容できる範囲があるが、それが官公庁になると、はるかに
深刻な問題を生む。日本の官僚たちが忠誠心を持つのは、その官僚が終身雇用的に帰属する
それぞれの省庁であって、日本国または日本政府ではない。
日本の官僚は、自分の属する省庁の利益、とりわけその権限の拡大と慣例の厳守にこそ情熱を
燃やす。権限と慣例こそは官公庁の資本、それぞれの省庁の組織を拡大し予算を増大する基本要素
である。官僚が自分の官公庁に忠誠とは、それぞれの省庁の権限拡大と慣例擁護に熱心だという
意味である。
そしてその結果は、官僚の目は必然的にその所管業種に集中し、発想は所管業種の保護育成に
向かう。所管業種を保護育成し、規模の拡大と官庁依存を強化すれば、おのずからその官庁の
権限が拡大し、慣例は厳守されるからである。
////////// 1991年刊 ///
- 51 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 36 //////
「日本の官僚は優秀だ」とよくいわれる。仕事の熱心さと専門分野での知識の深さでは、おそらく
世界一だろう。しかし、彼らの視野はそれぞれの省庁とその所管業種の枠を出ることがない。
彼らの価値基準には、省庁とそれに帰属している官僚共同体の利益以外の尺度は入り得ない。
このため、各官庁の政策や行政が日本国または日本社会全体に有利か不利かを考える余裕など
まったくないし、あってはならない。
官僚が自己の属する省庁の権限と慣例に忠実であり、所管業種の利益を図るのは、ある意味では
当然のことだ。しかし、そればかりが重視されると、国家としての基本方針も立たないし、
政治行政としての総合調整に服することができない。
////////////// 講談社発行 ///
- 52 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 37 //////
本来、国家の基本方針の策定と政策の総合調整は政治の仕事だ。しかし、政治家が大所高所からの
調整機能を発揮しようとすれば、官僚機構は「外音勢力による権限と慣例の破壊」と見なして
強く反発する。そのことが、官僚たちと結合したマスコミによって支援されるこの国で、各省大臣や
国会の各委員長の手腕も、それぞれの関係する省庁の官僚たちの意向をどれだけ忠実に押し通し得たか
によって決める、という評価基準を確立してしまった。そしてその意味での「よき政治家」には、
各省官僚の熱心な支援が約束され、各省所管の業界からの助力が期待できるのである。
//////////////// 日本とは何か ///
- 53 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 38 //////
このため、個々の官僚はきわめて熱心であり専門的知識に長けているにもかかわらず、全体としての
日本の行政はきわめて非能率であり、不整合でもある。一つの官庁がある方向への施策を打ち出すと、
他の官庁はその独走を恐れて対抗案を出す。各官庁間の権限範囲が複雑に入り組んでいるため、
一つの官庁が新しい政策を展開することで権限範囲を拡げるのを、他の官庁は警戒し妨害する。
今日、国際問題に関する日本の対応の遅さがしばしば問題になるが、その主たる原因も官庁間の
調整に手間取るためだ。
官僚としての優劣が、国家または国民の総合的利益を実現する判断の正確さと実行の迅速さによって
測られるとすれば、日本の官僚はけっして優秀とはいえないだろう。
///////////// 堺屋太一著 ///
- 54 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 39 //////
官僚と教師のための教育制度
日本で「優秀」と信じられているもののなかには、「日本式経営」や「日本的官僚」のように、
日本的尺度 − つまり規格大量生産の拡大発展こそ正義とする尺度 − においてのみ「優秀」な
ものが少なくない。日本が世界に誇る学校教育もまた、その一つである。
今日、日本の学校教育に対してはさまざまな批判がある。とくに生徒の暴力事件や教師の
不祥事が露見したときにはそれが高まる。しかし全体としては「日本の初等教育は優秀だ」との
見方はいまだに根強い。「日本の教育は上に行くほど悪くなる。小・中学校は規律も正しいし、
成績も優秀だが、大学生は勉強もしないし個性もない。独創的な学説や研究が大学から発表される
ことも少ない」というのが大方の評価だろう。
/////////////// 1991年刊 ///
- 55 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 40 //////
日本の大学が欧米に比べて創造的な研究が乏しいのは、おそらく事実だろう。だが、小・中学校が
優秀だというのは疑わしい。教育学者や文部官僚が挙げるその根拠は三つ、就学率の高さと、
教室での規律の正しさと、数学や理科・地理の試験結果が諸外国に比べてよいことだ。しかし、
これで日本の初等教育が優れていると結論できるだろうか。
就学率の高さは、学校教育の内容や制度のよさによるのではなく、日本の伝統である。明治維新の
年(一八六八年)、日本ではすでに成人男子の四〇パーセント、女子の二五パーセントが寺子屋等の
教育機関に通った経験を持ち、読み書きソロバンができた。同じ年、世界で最も進んだ工業国であった
イギリスでも、教育機関に通った経験者は男子の二五パーセントに過ぎなかった。その当時、女子の
入学を認める学校はヨーロッパにはなかったのである。このことを考えれば、豊かで子供が少ないいま、
日本人の就学率が高いのは当然だ。この国には衣食を削っても子弟を学校に通わせる慣習が古くから
あったのだ。
/////////////// 講談社発行 ///
- 56 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 41 //////
教室における規律の正しさも、それが生徒の自覚によるものでなく、教師の厳重な監視の結果
だとしたら、教育の良否を決める尺度とはなり得ない。どこの国でも軍隊と監獄は規律正しい。
だからといって、軍隊や監獄の仕組みが最良の教育方法とはいえない。指導要綱と校則に縛られた
日本の学校は、それに近い状況といえなくもない。このことが生徒の個性と独創性を抑圧している
マイナスも無視できない。
数学や理科の国際共通試験で、日本の中学生や高校生が、韓国、イスラエルと並んで優れた成績を
収めているというのも、必ずしも学校教育の優秀さを示すとは限らない。日本特有の入試用受験技術が
教え込まれた結果とする見方も有力だからだ。現にドイツの中学生に日本式の受験技術を三時間ほど
講義したところ、たちまちその学校だけは日本以上の試験結果になったという例もある。もし、
試験の成績のよいことが教育の優秀さの尺度だとすれば、その功績は学校よりも学習塾に
帰すべきであろう。
//////////// 日本とは何か ///
- 57 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 42 //////
数学や理科の国際共通試験で、日本の中学生や高校生が、韓国、イスラエルと並んで優れた
成績を収めているというのも、必ずしも学校教育の優秀さを示すとは限らない。日本特有の
入試用受験技術が教え込まれた結果とする見方も有力だからだ。現にドイツの中学生に日本式の
受験技術を三時間ほど講義したところ、たちまちその学校だけは日本以上の試験結果になった
という例もある。もし、試験の成績のよいことが教育の優秀さの尺度だとすれば、その功績は
学校よりも学習塾に帰すべきであろう。
要するに、国民全員が初等教育を受け、規律正しく教師の管理に服し、数学や理科などの
基礎知識と基本技能を身につけることが、教育の善悪を測る尺度とする考え方は、規格大量生産の
現場で働く人間として使いやすく役に立つ人材をつくることこそ教育の目的、という発想に
立ってのことである。
/////////// 堺屋太一著 ///
- 58 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 43 //////
より大きな視野で見るならば、教育の良否は、第一にその教育を受けた人間が幸せな人生を
送り得るかであり、第二には人類の繁栄と進歩とに貢献し得るかである。そして第三には同じ
成果を上げるのに、本人の苦痛と父兄の負担が少なく効率的に行っているかどうかである。
今日の日本の学校教育が、こうした尺度から見たときに、優れたものといえるだろうか。
現に諸外国での評価はけっして高くない。少なくとも日本の学校教育が、楽しいものではないこと、
人類の進歩に役立つ創造力に富んだ個性を育てるものでないこと、そして本人の苦痛と父兄の
負担の大きいものであることは確かである。
日本という社会を考える場合に重要なことは、こうした全人生的全社会的な見地からの
学校教育に対する評価や批判が、日本の教育界や文部官僚からほとんど出ない点である。つまり、
この国では、教育もまた教育官僚と教師の仲間内の評価に固まる内志向に徹しているのである。
/////////////// 1991年刊 ///
- 59 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 44 //////
他人の負担を顧みない日本の組織
これに似たことは、もう一つの日本の自慢、治安についてもいえる。日本が犯罪の少ない国であり、
犯人逮捕率も非常に高いことは前述した。しかし、それが日本の警察制度の優秀さという説には
疑問が残る。日本は徳川時代以来、きわめて治安のよい社会であり、公的な警察機関がごく小規模
だった大坂の町や僻地の農山村でも、犯罪率は非常に低かった。日本は古くから被統治能力の高い
社会なのだ。今日の治安のよさもその伝統に負うところが大きい。
他方、現在の日本の警察は、安全性を重視するあまり、人々の自由な行動を規制するのに躊躇
することがない。このため、重要国賓や国家行事となれば東京中が交通規制で大渋滞、市民生活と
経済活動が著しく妨げられる。だが、警察当局がそれによる市民の負担に配慮する気配はまったくない。
警備の観点からの完備を期するあまり、社会全体の利便や生活の楽しみが破壊されている現実を
直視しないのである。
////////// 講談社発行 ///
- 60 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 45 //////
同様のことは、建築物の安全基準や公園の管理にも現れている。日本の建築費は諸外国に比べて
著しく高い。その原因の一部は、あまりにも厳格な建築基準法や消防法にある。建物の安全性に
責任を持つ建設省や消防庁は、自己の責任を果たすためには建物の建設と利用にかかわる不便や
費用を顧みない。それでいて日本の火災件数当たり焼死者数は欧米に比べて十二倍以上である。
公園の管理が杓子定規で使い難いことは前述したが、施設の面でも管理重視の基準制度が
できている。都市内の公園は、規模によって都市公園と児童公園とに分かれているが、そのそれぞれに
面積当たりの植樹や施設が定められている。それも、「一〇〇平米当り上木×本、中木×本、
下木×本」という厳格なものだ。小規模な児童公園の場合は、ブランコと古タイヤの遊具などを
つくることも、「例示」という形で指導されている。
/////////// 日本とは何か ///
- 61 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 46 //////
こうした基準を厳格にすれば、つくるのには知恵が要らず管理するのも容易だ。公園空間の
供給者たる自治体職員は有難いだろう。しかし利用者にとってはおもしろみがなく、街には
特色がなくなってしまう。本来、市民のためのはずの公園が、建設管理者の安易さを優先させる
結果になっているといっても過言ではない。だが、この国の官僚機構では、そんな規格基準が
問題にされることさえ滅多にない。官僚の目は、官僚機構内部の責任回避と仕事のやりやすさにのみ
向けられ、それによって引き起こされている外部の不便と負担の大きさに向けられることはない。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 62 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 47 //////
落差の激しい同心円的帰属意識
こうした内志向は、各人の帰属意識に応じて、ときにはさらに細分化され、ときには大きく
拡大する。同じ企業のなかでも、自分の属する部課や支店が優先され他の部課や支店と厳しく
区別する。そのため、ときには同一企業の部課や支店が顧客の取り合いに血道を上げることもある。
しかし、いったん共通の「外敵」が現れれは、相対的共通性を求めて結束する。税制や行政の
問題では各業界が団結する。外国からの新規参入には、業界こぞって反対する。業界への帰属意識を
持つ企業経営者同士は強い連帯感で結ばれている。ふだんは過当なまでの競争をくり返している
同業各社が、政府への対応や外国との競争で「業界のため」となれば、不思議なほどにまとまりが
よくなるのである。
/////////////// 1991年刊 ///
- 63 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 48 //////
要するに、日本人の多くは、各段階ごとに他と区別する落差の激しい同心円的帰属意識を
持っている。
当然、この心理状況では、外国は最も外側に置かれる。このため、日本人の思考のなかで、
強く意識する国内とそうではない外国との間には、天地の落差がある。世界のどこかで航空事故が
あれば、まず「日本人旅客」が問題となり、「いませんでした」といえば急に記事も小さくなる。
「いた」となれば、それ以降の報道は、その日本人のことばかりになる。いずれにしても、
「外国人」は無視ないし極度に軽視されるのである。
////////////////// 講談社発行 ///
- 64 :
- 日本は朝鮮人がルーツじゃないさ 顔見ればわかるだろ
明らかに違う、日本人の顔は多種多様 これだけ多様性に富む人種はない。
日本は太平洋の最前線に位置してる
朝鮮ルートは、大陸からの1ルートに過ぎない
太平洋ルート、南方ルート、中国経由の大陸ルートもある 完全な混血地帯
この混血性こそ日本人の優秀性の源泉だった
モンゴルルートで大陸の外れの吹き溜りで、
外部からの血の流入がなく、同族相姦で血脈が混濁した 朝鮮と
島国転じて、世界に血脈の門戸が開かれ、血の源流が解放されていた
海上の日本とは明らかに素性が違う
朝鮮人はルーツではなく、ルーツのうちのワンオブゼムに過ぎない
なぜ、孤立国家だった孤島の日本が、アジアで 一番手で
最速の近代化、工業化、文明開化を独自でできたのか
それは、アジア全血流の混血だったからこそ
他民族の多様な混血によって民族の優秀性がはぐくまれたから
今の日本人は、この科学的事実、歴史的事実を忘却してしまったのだろうか
朝鮮がルーツなんてとんでもない大間違い、言いがかり
源流は、中国種、東南アジア種、太平洋種、アメリカ大陸種、インド・中東種
そしてモンゴル〜朝鮮種の混合で形成されたルーツ的には混血国家
それが日本、そして動物科学的に優位性の形成要因だ! 日本人は自身のルーツをしっかり自覚把握しろ
中韓の工業化だって、日本が明治以降、西洋諸国の侵略なしで、独学で洋楽を翻訳し、自力で試行錯誤して、裸一貫から
工業化に励んだ日本人の歴史がアジアで成功したからこそ アジア地区の近代化があったわけだ
もし日本が明治以来の近代化に失敗してたらアジア地区の繁栄は、ありえなかった、あり得ても数倍遅れていた
これに対する自尊も他国からの評価もないのが本当はおかしい 欧米からの方が、冷静に事実がみれるかもしれない。
- 65 :
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/// 工業モノカルチャー社会 49 //////
人命にかかわる航空事故でさえこれだから、経済や習慣のことになれば、外国人無視はより
著しい。貿易摩擦の問題でも、外国からの輸入で日本の産業が被害を受ければ大騒ぎになるが、
日本の輸出で被害を受ける外国の産業や労働者にはきわめて鈍感だ。というよりも、外国の事情に
対する想像力が、ほとんどの日本人には欠けている。そしてそのことを、日本人は冷酷とも
異常とも思わない。世界中がそんなものだと思い込んでいるからである。
//////////////// 日本とは何か ///
- 66 :
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/// 工業モノカルチャー社会 50 //////
一九九〇年代に入って、ようやく批判されるようになった「一国平和主義」も、その延長線上の
問題といえるだろう。戦後の日本人は、自国が戦争に巻き込まれることを恐れるあまり、世界の
平和がいかにして保たれているかを考えようともしなかった。「狭くない海」で隔てられた
この島国と同様の国々ばかりが、全世界に拡がっていると信じたがってきた。そしてそのなかでは、
わずか半世紀前に犯した侵略戦争当時の日本自体の社会心理さえも忘却してしまっている。このため、
多くの日本人は、平和と反戦を叫んでいれば平和が自動的に生まれると思い込むことで、世界の
平和を守るために払われている努力と負担に想像力を及ぼさない。内志向の日本人は、あらゆる面で、
外延的な想像力を働かせる習慣がないのである。
///////////// 堺屋太一著 ///
- 67 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 51 //////
「顔」のない経済大国
外国で、「日本について何を知っているか」と質問すると、返ってくるのはたいてい商品名
だけである。「トヨタ、ニッサン、ホンダ、ソニー、パナソニック、キャノン……」といった
類なら、十や二十はすぐにも並べられる外国人は多い。しかし、日本の文化や制度、風習について
いえる外国人はごく少ない。せいぜい「スシ」や「ヤキトリ」に代表される料理名と柔道空手
などの武道系スポーツが思い出される程度だ。
とくに稀少なのは個人名、比較的日本とのかかわりが深いアメリカでも、個人的知人以外の
日本の人名を一つでも咄嗟にいえる人は五人に一人以下である。日本のテレビ局が一九八七年に
行った調査では、アメリカで最も知られた日本人は「テンノウ・ヒロヒト」だが、それでもやっと
七パーセントである。
///////////////// 1991年刊 ///
- 68 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 52 //////
「国名から何が思い浮かぶか」 − この調査を、日本以外の国について行うと、結果はまったく
逆になる。アメリカでもヨーロッパでも、日本自身においても、出てくるのはまず人名、次いで
文化が多い。たとえば、アメリカといえばまず「ワシントン、リンカーン、チャップリン、ケネディ、
マリリン・モンロー」であり、次いで「野球、ジャズ、ハンバーガー」といった類だ。イギリス
といえば「シェイクスピア、チャーチル、エリザベス女王」であリ、次に「競馬、二階建バス、
ウィスキー」、ドイツといえば「べートーベン、ゲーテ、ヒトラー」と「音楽、ビール」、
中国といえば「孔子、楊貴妃、孫悟空、毛沢東」と「中華料理、漢詩、書道」である。
////////////////// 講談社発行 ///
- 69 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 53 ////////
もちろん、日本でも外国でも、人名や文化の内容がまったく知られていない国は多い。セイシェルや
ベリーズの国名から何かを思い浮かべることのできる人は、特別の関係者かよほどの物識りであろう。
だが、そういった国は、商品名もまったく知られていない。
日本のように商品名だけは知れ渡りながら、人名も文化の内容も知られていない国は、ほかに
どこがあるだろうか。思い浮かぶのはスリランカの紅茶とサウジアラビアの石油ぐらいだ。おそらく、
たいていの外国人が十も商品名が並べられるのに人名は一つも思い浮かばない国は、世界中で日本だけ
ではないだろうか。つまり、日本は「顔のない経済大国」または「工業製品だけを吐き出すブラック・
ボックス」なのである。
////////////// 日本とは何か ///
- 70 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 54 //////
いま、日本は「特殊な国」か、「特殊ではないのか」という議論も盛んだが、少なくとも、
この点ではきわめて「特殊」だ。そしてそのことこそ、日本を考えるうえで最も重要な鍵でもある。
そこに、今日の日本と日本人の特色が集約されているからである。
権限が下部にまで分散している日本では、工業製品の設計や企業の経営を、特定の個人の名前と
責任に帰すことは難しい。もし、あえてそれをする者があれば、嫉妬深い仲間から大いに非難
されるだろう。そしてそれこそ、内志向の日本人の最も恐れるところである。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 71 :
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/// 工業モノカルチャー社会 55 //////
政治家や芸能人など知名度が職業的に必要な人々を除けば、圧倒的多数の日本人は、外国や
世間一般の著名度よりも仲間内の評判をたいせつにする。学者や芸術家でさえも、世間での
作品業績の評価と著名度よりも、学界や文壇、画壇の人格的評判を気にするし、そうすることが
「利口な生き方」になっている。
この国では。外国にも個人名の知られるような独創的個性は、それぞれの専門分野の人脈には
入り難い。むしろ自らの個性と自己主張を抑え、それぞれの属する企業、官庁、学界、文壇、
画壇等において、当たり障りのない世話好きとして生きるほうが、はるかに生きやすく成功率も高い。
なかには、ただそれだけを何十年間かつづけたことで、学界や文壇、画壇の「重鎮」となった
人も多い。斯界の最高位とされる学者や文人が、学術的業績や著名な作品が皆無に等しい例も
けっして珍しくない。
////////////// 1991年刊 ///
- 72 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 56 //////
日本国内の、それもそれぞれの専門家集団のなかでしか知られない世話役的人脈ほど普遍性の
ないものはない。それがきわめて重要だという日本社会の評価基準は、完全に国際性を欠いている。
日本人の海外旅行が一般化し、海外駐在が増えた今日でも、この点ばかりは改まる気配がない。
むしろ若年層ほど人脈的思考が強まっている。
日本文化が他の国々のそれに比べて特別の伝統と微妙さを持っていることも、日本語が翻訳し難い
ニュアンスを含んでいることも事実だが、日本の文化的孤立性はそうした「過去」にばかり起因する
わけではない。現在ただいまの日本と日本人の持つ強い内志向的発想と仲間内評価の重視もまた、
日本をして「顔のない経済大国」にしている大きな − おそらくは最大の − 要因であろう。
/////// 講談社発行 ///
- 73 :
- ★皆が「空気を読み、流れに乗って」ばかりいたらこの国は沈む 1
Life is beautiful 2013.02.18
先日の「日本の大学生はなぜ勉強しないのか」というエントリーには、賛否両論、数多くの意見を
いただいた。その中のでも、旧来型の日本人の考え方を表す典型的な例がこのコメントだ。
「大学のとき、周囲には真面目に勉強している人も結構いたけど、えてして勉強せずにサークル
・飲み会etcで普通の大学生していた人のほうが大企業入って出世していて、勉強していた人には
レールから外れて苦労している人が多い。社会に出てから、なるほど人付き合いや飲み会は
勉強よりも重要だったんだな、と遅まきながら気がついた。日本て、皆がやっていることを
その流れに乗って同じようにできる人が求められている社会で、なまじ大学の図書館にこもって
勉強ばかりしている異質な大学生は社会に出た後レールから外れる傾向にあるのだと思う。」
欧米に追いつくことだけを考えれば良かったころは、創造性よりも調整能力、専門性よりも汎用性、
知恵や知識よりもコミュニケーション能力が重視された。高度成長期に学校・社会がそんな「ゼネラリスト」を
育み、優遇するように作られて来たのは当然の結果である。このコメントにある通り、「ちゃんと
予習をして来る、教室の前の方に座る、質問で授業を長引かせる」ような連中は「異質」であり、
「皆がやっていることをその流れに乗って同じようにできる人」が重宝されて来た。
- 74 :
- ★皆が「空気を読み、流れに乗って」ばかりいたらこの国は沈む 2
しかし、今の時代はもう違う。これからは、「正解が決まった問題をすばやく解ける」ゼネラリストではなく、
「誰も解こうともしなかった新しい問題を自ら見つけ出して正解を探す」イノベーターが必要なのだ。
「出る杭は打たれる」「空気を読め」「長い物には巻かれろ」という言葉に萎縮し、「皆がやっていることを
その流れに乗って同じようにできる人」ばかりの国には未来はない。
イノベーションには、人と違うことを失敗を恐れずに出来る「出る杭」が必須だ。「そんなもの誰も
使わないよ」「そんなもの誰も作ってないよ」「絶対儲かるわけないよ」と回りの人に批判されても、
信念を持って、何度失敗してもへこたれずに前に進み続けることの出来るガッツが必要だ。
この件に関して、Dave McClure が日本人のために素晴らしいメッセージを熱く語ってくれているので、
ぜひとも下のビデオを見ていただきたい。特に冒頭の4分目〜6分目あたりが良いので時間のない人は
そこだけでも見て欲しい。
Life is beautiful 2013.02.18
http://satoshi.blogs.com/life/2013/02/col2.html
- 75 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 57 //////
工業モノカルチャー大国
平成の日本社会全般に広まった内志向と仲間評価の優先は、日本式経営の精神的基盤にも
つながっている。内志向は職場単属型の人間を育て、閉鎖的労使慣行を生みやすい。仲間評価の
優先は、権限の下部分散による集団主義をつくりやすい。そしてその二つが永年つづけば、
企業全体が従業員共同体と化すことにもなるだろう。同じことは、政府官僚組織にも、政治家、
学界、文壇、画壇にも拡がっている。平成の日本は、日本式経営の原理と心情が全面的に
拡がった社会ということができる。
日本式経営は、規格大量生産の製造業に適した組織原理であるとすれば、それが全社会的に
広まった平成の日本は、規格大量生産に適切な社会、つまり最適工業社会である。
//////////////// 日本とは何か ///
- 76 :
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/// 工業モノカルチャー社会 58 //////
だからこそ、規格大量生産型工業においては、日本は世界に冠たる生産力と競争力を誇っている。
トランジスターも自動車も、電卓もICも、規格大量生産段階になれば、必ず日本が最大の生産力と
競争力を発揮した。コンピュータでさえも、多品種少量生産の大型化時代にはアメリカにかなわなかったが、
大量生産の小型化が進むにつれて日本が優位に立つようになっている。パソコン、ファミコンに
至っては圧倒的だ。日本社全が、規格大量生産に適した心情と組織原理を持つ限り、この状況は
つづくだろう。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 77 :
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/// 工業モノカルチャー社会 59 //////
しかし、より迅速な決断と多様な創造を要求される多品種少量生産の超大型技術分野や情報や
流通などの面では、日本式経営の持つ雇用硬直性と集団主義は少なからぬマイナスになるし、
行政機構に持ち込まれれば総合調整不能な供給者優先行政になってしまう。ましてや、決断と
創造そのものである政治や学術・芸術になれば、「密室の停滞」以外の何ものも生まれない。
要するに今日の日本は、すべてが規格大量生産型工業に適するようにつくられた「最適工業社会」
であり、そのための心情と組織原理だけが全社会的に定着した「工業モノカルチャー国家」なのだ。
/////991年刊 ///
- 78 :
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/// 工業モノカルチャー社会 60 //////
かつてスリランカやキューバのような典型的なモノカルチャー国では、すべての土地が
紅茶や砂糖の生産に適するように改造された。優れた労働者とは茶畑、砂糖きび畑で働ける
人材のことを指した。政府官僚は紅茶や砂糖に関する知識と技能によって組織されたし、
情報機構はそれに関する報道に適するように組織されていた。このため、極端なモノカルチャー
社会では、当該産業(スリランカの紅茶やキューバの砂糖)の生産はきわめて効率的に行われたが、
それ以外では不合理と非効率と無知無策が著しかった。このため、いったんモノカルチャー体制に
陥った社会は、それから脱出することが容易ではない。
/////////// 講談社発行 ///
- 79 :
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/// 工業モノカルチャー社会 61 ////
この例は、「工業モノカルチャー国」日本にも当てはまる。近代工業の拡大発展を目指して、
制度、組織、教育、市場構造、地域構造等から人間の評価や行動基準までを、規格大量生産型の
製造工業に適合させてきたため、それ以外の分野には不合理と非能率と無知無策が積み重なっている。
だがそれが、規格大量生産に適合してつくり上げられた社会体制と価値判断の結果であることに
気づく者は少ない。このため、多くの日本人は、この国に渦巻くようになった不安と不満を、
根本的な社会の質の問題としてではなく、ごく個別的な部分的手直しや担当者の変更ないしは
再教育程度で改善しようとしているのである。前述した一九八○年代の「貧しさ探し」は、
その典型といえるだろう。
///////// 日本とは何か ///
- 80 :
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/// 講談社 //////////////////
堺屋太一著 「日本とは何か」
1991年 講談社発行
http://www.amazon.co.jp/dp/4061855948/
http://www.amazon.co.jp/dp/4062037599/
///////////// 堺屋太一著 ///
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-
/// 工業モノカルチャー社会 62 //////
「豊かさ」とは好みが満たされることだ
もっとも、工業は紅茶や砂糖のような単一商品ではないし、そこで利用される技術も多様である。
何よりも新製品の開発を通じて、ほとんど無限に需要が伸びる。したがって、規格大量生産型工業
への特化は、日本に経済発展をもたらしたばかりではなく、全社会的な近代工業化を促した。
また、特定農産物に依存するモノカルチャー経済のように、国際市況の変動に国民経済が左右される
危険も少ない。つまり、経済的に見る限りでは、きわめて有利な分野への特化であった、といえる。
しかし、たとえそれが、技術的基盤の広い需要拡大率の高い工業製品群であったとしても、
特定産業への特化は、社会全般の多様性と選択性を乏しくする点では、モノカルチャー社会的特色を
まぬがれない。今日の日本が「顔のない経済大国」なのはそのためだ。そしてそのことが、統計的な
数値の「豊かさ」にもかかわらず実感としての「豊かさ」が乏しいという結果にもつながっている。
/////屋太一著 ///
- 82 :
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/// 工業モノカルチャー社会 63 //////
人間が本当に「豊かさ」を実感するのは、自らの「好み」が満たされた場合である。生活水準が
きわめて低い場合なら、何よりも「生きる糧」がたいせつだが、それに必要な物的需要はさほど
多くはない。ある研究家の調査によれば、もし今日の日本で、一九四九年(昭和二十四年)頃の
平均的な生活をするとすれば、持ち家が前提なら東京でも四人家族で月七万四千円もあれば十分
だという。昭和二十四年といえば、餓死する人はいなくなり、子供の出生率が最高になった年である。
つまり、単に生物として生命を保ち子孫を絶やさぬだけなら、その程度でも可能なのだ。人間が
それ以上の所得を求め、より多くを消費するのは、感覚的心情的社会的な「好み」を満たしたい
からである。
////////////// 1991年刊 ///
- 83 :
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/// 工業モノカルチャー社会 64 //////
ところが、人間がそれぞれの「好み」を満たすためには、ただお金があればよい、というもの
ではない。お金があること(つまり所得の高さ)は、「好み」を満たすための経済的可能性を
与えるという点できわめて重要な必要条件には違いないが、けっして十分条件ではない。本当に
「好み」が実現されるためには、もう二つ、「好み」に適した選択を可能にする多様な供給が
つねに継続していることと、それを実現するための時間的余裕のあることが伴わなければならない。
//// 講談社発行 ///
- 84 :
-
/// 工業モノカルチャー社会 65 //////
すべてを規格大量生産型工業に適するように仕組んだ日本社会には、あらゆる面で供給の
多様性が乏しく、それぞれの「好み」を満たすだけの選択の自由がない。初等教育は没個性的
均質教育に統一されているし、病院医療は標準医療制度によって規制されている。商店街の
つくりも公園の造作も似たようなものだ。そのうえ、東京一極集中政策によって頭脳機能に
たずさわる職業を選べば、東京における狭小な住居と長距離通勤を強いられるし、地方での
生活を求めれば、規格大量生産の現場か創造性の乏しい地域サービス業務にしか就業の場がない。
この国では、職業と生活とを、ともに「好み」に合わせて選ぶことは不可能に近い。
/////////// 日本とは何か ///
- 85 :
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/// 工業モノカルチャー社会 66 //////
日本が、本当に「豊かさ」を実感できる国になるためには、より多様な供給を許し、より
多くの選択の自由を可能にしなければならない。だが、それは、工業モノカルチャー社会
としての利点、「最適工業社会」をある程度放棄することをも意味している。規格大量生産型
工業の発展拡大によって経済的に成功を収めた日本が、あえてそれに踏み切れるか否かは、
「平成の日本」の重大な課題である。日本がいま、この二十世紀の末に、そのような
「最適工業社会」を形成しているのは、日本国土の風土、そこに生きた日本人の歴史、
そしてそれらが生み育てた日本文化の長い伝統に由来することだからである。
////////////// 堺屋太一著 ///
- 86 :
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/// 工業モノカルチャー社会 67 //////
未来を考えるときには、まず現在を知らなければならない。現在を知るためには過去を
探らなければならない。日本の未来を考えるためには、この国の由来を見きわめるべきだ。
国際的な位置づけにおいても国内的な体制改革においても、きわめて重大な時期にさしかかった
いまこそ、「日本とは何か」を、われわれ日本人は見つめ直してみるべき秋だろう。
・・・・
//////////////////// 1991年刊 ///
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/// 講談社 //////////////////
堺屋太一著 「日本とは何か」
1991年 講談社発行
http://www.amazon.co.jp/dp/4061855948/
http://www.amazon.co.jp/dp/4062037599/
///////////// 堺屋太一著 ///
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/// 日本における「文明の犯人」 1 ////
堺屋太一著 「日本とは何か」 講談社 1991年刊 講談社文庫,
税込価格:\580, ISBNコード:4061855948 より
第五章 文明を左右してきた資源と人口
・・・・・
日本における「文明の犯人」
外国文化を取捨選択する習慣
・・・・・始代から中世に至る世界の文明の能様を追ってみたのは、ほかでもない。
日本の文化、日本人の性格を考えるうえで、この国の「文明の犯人」、資源環境と
人口と技術の関係を整理してみたい、と考えたからである。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 89 :
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/// 日本における「文明の犯人」 2 ////
何度も指摘しているように、日本は島国だ。それも周辺の地域とは「狭くない海」で
隔てられた「半孤島」である。だから、文化や文明、技術、情報、それに少数の
人々が入ってくることは古くから可能だったが、資源を大量に運ぶことも、大人数の
集団が一挙に移動してくることもなかった。絹糸や陶磁器を持ってきたり、銅や銀を
持ち出したりすることはできても、大量の燃料や食糧を輸出入することは明治以前の
日本ではあり得なかった。つまり、資源環境でも人口動態でも、ほぼ日本列島の
内部で完結していたわけである。その意味で日本は、一種の実験室的な国だった
といえるだろう。
////////////// 「日本とは何か」 ///
- 90 :
-
/// 日本における「文明の犯人」 3 ////
ただ技術や思想だけは、他の諸国以上に外国に依存していた。したがって
日本は、資源環境と人口動態の異なる場で生まれた技術や思想を利用する
ことになる。そのことが、日本の発展を特殊なものにした。
日本に大陸の進んだ技術や文化が入り出したのは、この国の歴史がはじまる
以前のことらしいが、本格的な流入は四世紀頃はじまったと見てよいだろう。
灌漑、農耕、冶金、工芸、建築などの新しい技術が、仏教や儒教などの思想
とともに、帰化人によってもたらされ、土地と資源の開発が急速に進み古代国家が
形成される。これによって日本は、遅ればせながら始代から古代に転換する
農業革命を経験したのだ。
/////////////////// 1991年刊 ///
- 91 :
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/// 日本における「文明の犯人」 4 ////
それまでの日本にも、いくつかの小地域的な「政権」があった。最近の発掘で
「大和王朝」の形成は三世紀に遡ると見られるようになったが、統治力が及んで
いたのは河内平野と大和盆地ぐらいで、その周囲はまだ未開といってよい状態だった。
そしてそれとは別に北九州や出雲にも小勢力があり、越前あたりにも何らかの
政治勢力があったらしい。自然の水流によって米作を行っていた程度では、
いずれの政権でも資源の量も限られ人口も少なかったことであろう。
そこへ中国から朝鮮半島を経由してどんどん新しい技術が入ってくる。新技術を
持った人々が帰化人として流入する。このため、飛鳥時代後半から土地開発が進み、
関東以西が統一された。この結果、日本は人口の割には物財の豊富な時期を
経験することになる。それが頂点に達したのは、おそらく奈良時代の初期であろう。
///////////////// 講談社文庫 ///
- 92 :
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/// 日本における「文明の犯人」 5 ////
このため、奈良時代には華やかな大型文化が花開いた。西暦七四七年に
着工された世界最大の銅溶着像・奈良大仏は、その成果をいまに伝えている。
大仏建立時の東大寺は、現在見るものよりもはるかに大きかった。大仏殿は
いまの二倍ほどの容積だったし、その左右には九十メートルを超える七重の塔が
あったという。全国の人口が五百万人以下だった当時としては、何とも凄いものを
つくったものだ。しかもそれは、日本古来の文化とは正反対に、建物は朱塗り
仏像は金箔貼りというきらびやかなものだった。奈良時代の日本人は、いかにも
古代文明的な物財誇示の好みを持っていたのである。
//////// 講談社より絶賛発売中! ///
- 93 :
-
/// 日本における「文明の犯人」 6 ////
しかし、この頃すでに先進国の中国では古代文明が衰退して久しく、宗教的な
社会主観の社会、つまり中世が完成していた。このため、日本への技術の流入も
一通りのことがすむと中断する。そのうえ、これと一緒に流入した思想はいかにも
中世的で、古代文明にあこがれる日本人には受容し難いものが多かった。
素晴らしい先進国で普及しているのだから、よいはずだと思ってみても、どうにも
納得ができない。ごく一部の外国かぶれが感心するだけで、一般庶民にはなじめ
なかった。
このことから日本人は、外国文化のある部分を受容し、他の部分を峻拒する
選択の習慣を身につけた。古代の日本人は、中国文化の熱心な模倣者であり、
多くのことを中国に学んだが、同時に、他の国々には例を見ないほどの頑固な
拒否者でもあった。
////////////////// 堺屋太一著 ///
- 94 :
-
/// 日本における「文明の犯人」 7 ///////
たとえば「宦官」は中国文化の重要な一部であり、朝鮮や西域はもちろん、遠く
ペルシャやビザンチンにまで拡がった。しかし、日本だけはこの制度をついに
入れなかった。遊牧社会の経験がない日本には去勢の技術がなかったからだという
説もあるが、それだけとは思えない。銅の溶着技術を学んで四十年間で世界最大の
大仏をつくったほど技術習得力の高い日本人が、去勢の技術だけは学べなかった
はずがない。日本人はその習慣を真似ること自体を拒否したのだ。
日本人が拒否した中国文化のなかには、道教思想や易姓革命、同姓不婚、
科挙の制度、北宋画および肉食の習慣などがある。もし日本が、もう五百年早く、
中国において古代文明が栄えていた漢代に農業革命を起こす状況になっていたと
すれば、より多くのことを中国に模倣したかも知れない。
////////////// 「日本とは何か」 ///
- 95 :
- 甚大な津波被害を受けた宮城県石巻(いしのまき)市で、まもなく震災後初の首長選
が行なわれる。
http://www.excite.co.jp/News/column_g/20130418/Shueishapn_20130418_18530.html
- 96 :
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/// 日本における「文明の犯人」 8 ////
短かった日本の「古代」
日本が農業革命を進めたとき、先進国・中国は既に中世に入っていた。この時期的
ズレは、日本人に外来文化を取捨選択する習慣を身につけさせただけではなく、
外来文化の「日本化」をも義務づけた。物財が多いことに幸せを感じる古代的発想に
立っていた飛鳥・奈良時代の日本人には、神仙思想や仏教思想にどっぶりと浸った
隋・唐の中国思想は、そのままでは受け入れられなかったからだ。
このため、奈良時代も末期になると、中国文化のなかから受け入れやすいものを
選んで日本化する動きが強まり、独自の日本文化へと昇華していく。日本人が漢字で
日本語の発音を書き写すことに満足せず、これを簡略化して表音化する仮名文字を
早々とつくり出したのは、その現れである。
////////// 1991年刊 ///
- 97 :
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/// 日本における「文明の犯人」 9 ////
しかし、その半面では、中国と日本との文化発展時期の大きなズレは、日本の
古代を急激で短いものにもした。学ぶべき師・中国が新しい技術開発を停止
していたため、蓄積された技術群を学び終えると、それ以上の新技術が入らなく
なってしまったからだ。その頃、中国で発達していたのは、日本人には分かり難い
社会主観、つまり宗教的思想の深化だったのである。
八九四年、菅原道真の提議によって、日本は遣唐船を廃止する。このとき、
菅原道真は、「もはや中国へ行っても買うものがない」といっている。「学ぶべき
新しい文化が生まれていない」という意味だ。それからの三百年間に、中国から
もたらされた主要な文化は、禅に代表される非生産的宗教思想であった。
///////////////// 講談社文庫 ///
- 98 :
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/// 日本における「文明の犯人」 10 ///////
だが、その間にも日本の人口は急増、平安時代初期には八百万人近くになっていた
と見られている。奈良時代初期の四百万人に比べると、ほぼ一世紀の間に二倍になっ
たわけだ。このため、技術の進歩が止まり、開発可能な土地と資源が限界に達すると、
日本は資源不足社会になっていく。平安の世は、時が進むにつれて文化が小型化する
のはこのためである。
平安時代には華やかな王朝文化が花開いたとはされているが、そこで展開されたのは、
きめ細やかな人間関係を中心とする小型文化だった。平安貴族は、物財に興味を示さず、
その生産量を拡大するための施策も採らなかった。彼らの多くは、整った律令制政府
機関の高官だったが、その関心はもっぱら主観的美意識の世界に注がれていた。
//////// 講談社より絶賛発売中! ///
- 99 :
- /// 日本における「文明の犯人」 11 //////
『源氏物語』の主人公光源氏は、この時期の典型的な貴族像であったろう。
右大臣の要職にありながら、ただただ美意識の世界に耽溺した光源氏の生き様は、
清談にうつつを抜かした晋の司徒(首相)王衍を思わすものがある。「古代」と「中世」
とを、文化の態様と人々の意識によって分けるならば、少なくとも平安時代前半には
日本の中世がはじまっていたというべきである。
つぎにこの国で資源が豊富になり、モノ余りの社会が実現するのは十六世紀の
戦国時代だ。室町時代の中頃、十五世紀後半になると、また中国から新しい技術が
入ってきた。それは中国の「亜近代」ともいうべき宋代に完成された技術群である。
///////////////////// 堺屋太一著 ///
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