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2013年06月ニュー速VIP+184: 産まれて初めてのナンパで人生狂った (333) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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産まれて初めてのナンパで人生狂った


1 :2013/06/10 〜 最終レス :2013/06/24
というような妄想をしていたんだ

2 :
マジか
大変だったな
俺でよければ聞くぞ

3 :
さぁ話してくれや!これは期待!

4 :
良スレの予感

5 :
ありがとう、聞いてくれるのか
長い長い話になるぞ
三日三晩かかっても話しきれないような超大作になるぞ
スペック

18歳
高卒就職組(建築業)
フツメンになれないブサメン
身長170あると言い張ってる
頭悪い
足臭い

6 :
簡単な自己紹介だけしておく
スペックの通り俺は頭も悪く顔も多分良くない上に足が臭くて経済力も糞
初任給18万の職人建築業に就職した俺
煙草は吸うわパチンコはするわ酒は飲むわろくな物件じゃない
だけど信じられんかもしれんが俺は不良のお決まりコースを進みたくなかったんだ
そのへんのヤン姉とできちゃった婚での流れな
でもど底辺な俺はどうしようもないアホだから
向上心()を持ってパチンコに行くノータリン
よし、次から妄想話をしていく

7 :
>>6
あ、もういいです

8 :
応援してる!

9 :
足が臭くても読むぞ
だから足が臭くても最後まで頑張れよ

10 :
高校を卒業して初めての夏
太陽と戦いながらも現場仕事な俺はえっさらほいさと仕事していた
そんな時、友達から電話が来た
「今週末海いかん?」
「いいけど面子は?」
「俺とお前と○○と××」
「男しかおらんの?」
「当たり前やん、ナンパすんのに」
「ナンパ……? いやいやいや無理無理無理」
「お前いっつもそれやな」
実際ナンパとか無理だった
いくら不良グループとツルんでようとなんだろうと
Rの俺がナンパなんてするのは百年早い
Rなのは友達には嘘付いて、とっくに卒業してると言ってたけど
だって不良ってR卒業が早いのが唯一の取り柄だぞ?
18歳だったら卒業率100%だよ(俺が知る限り)
そんな俺と友達のやり取りを親方が聞いていた
ずんずんと近寄ってくる強面のヤクザにしか見えない親方
電話で怒られることはないのでなんだろうと思っていると
「お前ナンパもできんのか。そんなんで俺の弟子が務まるか! 行ってこい!」
親方のわけわからん理屈で俺はナンパに行くことになったんだ
しかも証拠として成功写真を持ってこいだと
無茶言うなって話じゃね?

11 :
妄想だからな…どこまで続くかなんて…
やれるだけやってみるわ

12 :
妄想?現実さ!

13 :
週末
約束通り海に来た俺と友と○と×
乗ってきた車は友のシーマ 当たり前のようにドシャコタンw
その乗り心地の悪さから若干の吐き気を覚えつつ
人生初ナンパに繰り出した……という体裁を保つため、いかにナンパをしないかを考えていた
まじで無理だからナンパとか
大体さ、ナンパって好みの子に話しかけるわけじゃん
そんな好みの子がちょっと夏に浮かれてR揺らして遊んでんだよ?
「そのRでビーチボールしない?」とか声かけりゃいいの?
こんな場所じゃお決まりの「ちょっとお茶でも」が「ちょっとかき氷でも」になっちゃうぞ
決まらないだろ?
うだうだと考え込む俺をよそに友が
「いい子いるかなー」と乗り気である
○は天然入ってるからゴムボートを借りに行こうとしてる
でもあいつは天然でナンパするため一緒に遊べない
×は友と同じく女好きなためナンパに乗り気
いつもなら遊びの誘い断るけどその日はもう来てしまっているから逃げ場がない
「さて、まずは>>1の鳴らしと行くか」
などとはた迷惑なことを友が言う。すると×も○も友達想いなので乗ってきた
絶対楽しんでやがる
「で、どの子がいい?」
「ん、んー」
ちょっと遠泳してきていいですか?
とマジで俺は言いたくて仕方なかった

14 :
「あの子とかどうよ」
友が黒く肌の焼けたいかにもなギャルを指す
「ギャルギャルしてるのはちょっと……」
「じゃああれは?」
×がRもお尻もでかいのを指す
「あれ横にいるの彼氏だろ」
「ナンパなんて成功したもん勝ちだろ?」
ちょっと思考についていけないかな
「あの子可愛いよ。俺行ってくる」
○がすたこらと行ってしまう
うん、お前はそういう奴だよ
なかなか決まらない俺に業を煮やしてついに二人はナンパロードを歩いて行った
傍から見てると凄まじい
声をかけて駄目だったら次のスパンが早すぎる
どんな会話してんだろと思って耳を傾けると
「その水着エロすぎやろ」
「この辺の子? ここの海の家で一番いいのってどこか知らん?」
などなど
なにが凄いってごく自然に話しかけるのが凄いんだよな
なんでそんなフレンドリーなんだよ
失敗しても「そかそか。ごめんな〜」とめっちゃ余裕
ぽんぽんとよくもまあ誘い文句が出てくるもんだ
俺はそんな二人の後ろから静かにフェードアウト
離れて行って軽く過疎気味の海の家に逃げ込んで
イチゴシロップのかき氷を買って中(といっても屋根があって畳と机があるだけ)に入った
一人寂しく頭をきいんとさせながら、どうやって写真を捏造しようか考える

15 :
いくら考えようが写真を捏造する手段が思い浮かばない
いや、一個だけあるんだけどそれはなるべくなら後回しにしたい
でも考えても考えてもなにもないもんで
かき氷が溶けて甘ったるいジュースになったところで諦めた
「正々堂々と一緒に写真を撮ってくれる人を探そう」
今にして考えてみればそれはナンパでしかないんだが
その時の俺は写真を一緒に撮ってもらうということに正当性を見出して
自分でも不思議なくらいに考えが纏まったんだよ

16 :
続きはよぅ

17 :
頭悪い割にはええ文章書くやんけ

18 :
写真はナンパの証拠。つまり、親方に見せなければならない写真だ
となると見栄を張りたい部分もある
ブサイクはお断りだ。できれば可愛い子がいい
ブサメンの癖に何様だとか思わないでくれ
これは妄想だからな
妄想でぐらい夢見させてくれよ
ってなわけで可愛い子を探して首を回す
外で探すより先に中にいればいいな、と甘いことを考えていると
いたんだわ。めっちゃ好みのタイプの子
俺さ、ギャルは苦手なんだよ本当に
不良グループで遊んでたからいた女子なんてギャルかジャージなんだけどさ
だから余計に清楚系ってのに憧れたんだよな
俺みたいな存在とは対極にいる感じの子
それがいた
思わず胸がときめいたとか書くとアホらしいけど
一目惚れなんだろうな。ドキドキすると本当に解るもんなんか、って
俺は暫くその子を眺めてた

19 :
みてるぞ

20 :
その子の第一印象はあれだ
儚いってやつだった
不良とは対極だろ? 不良に儚さなんてないぞ
元気がいいのだけが取り柄なんだから
でもその子は儚かった。どうして海に来てんだろ? ってくらいに、海と似合ってなかった
麦わら帽子してて、白のカーディガン着てて、だから水着が見えなくて
黒髪が肩の上ぐらいまであって、風でさらさらと踊ってて
俺は釘付けだよ
席は離れてた
俺が友から姿を隠すために奥にいたんだけど、その子は表側にいたから
といっても、それは狭い海の家
歩いて十秒かかるはずもない
でも十秒を埋める勇気が湧いてこない
どうせ駄目なんだ、砕けてこい
そんなことを親方が言っていた
失礼じゃね? とか思ったけど、後押しになったのも嘘じゃない
写真を……
そうだ、俺はなにを思い違いをしてたんだ
ナンパをするんじゃない
写真を一緒に撮ってもらうんだ
初心を思い出した俺の足は途端に軽くなったから
ロボット歩行よろしくその子にぎくしゃくと近づいていった

21 :
畳を踏む音が耳に届いたのか、その子が俺の方を向く
近くで見るとより可愛い
だけど俺はブサメンで、更にこの時はキモメンでもあっただろう
緊張して、喉が渇いて、石になって
精一杯の勇気を振り絞って、正当性(笑)のあるお願いをした
「写真を撮らせてください!」
どこの変態だ俺は

22 :
みてるよー

23 :
一緒に写真を撮らせてくださいってのも充分な変態臭さがあるが
それは理由を話せば解ってもらえるかもしれないという甘い考えがあった
けど、写真を撮らせてくださいだけじゃ逃げ場がない
芸術のために! と言い訳したくても
すまんがスマフォしか持ってない
彼女はなんというか、きょとんとしていた
俺は言葉を言い直そうと思うことすらできなかった
間違えてしまったという想いが罪悪感だとか喪失感だとか色々絡めて
息苦しさで唾も飲み込めない
しかしまあ、産まれて初めてのナンパで人生狂ったと銘打った通り
ちょっとやそっとじゃ終わらない
「私……ですか?」
意外なことに、彼女は拒否反応を示すわけでもなく、食いついてくれたのだった

24 :
読みやすい文書ですな〜

25 :
見てくれてる人らありがとう
しかし最初に言ったが長い目でどうぞな
今から俺は飯に風呂にと時間を開けるよ

26 :
続きまってるわ

27 :
パンツ砂浜に埋めた

28 :
「は、はい」
彼女は陽に焼けていない頬を赤らめて照れ隠しか俯いた
まさか会話が続くと思ってなかったもんで心臓がばっくんばっくん騒がしい
「どうして、私?」
やや見上げながら尋ねてきたそれはチワワ的な子犬を彷彿とさせてたまらん抱きしめたい! となったが犯罪を止める理性が働いて一息挟む
聞かれて考えて、俺はアホだからこう答えた
「綺麗、だったんで」
どこのキザ野郎だ刻まれてしまえ
しかし言っておくが頭の中では
一緒に写真を取る相手が必要→どうせなら綺麗な子がいい→綺麗な人がいた→あんたを選んだのは綺麗が理由
という理にかなった順序があったと自己弁護
言われて彼女は目をぱちくりとさせて慌てていた
そう言われたのが初めてだったのだろうか。俺がよっぽどのブサイク専門審美眼でなければ彼女は綺麗な部類だと思う
照れながらも彼女は少しばかり頬を綻ばせて
「恥ずかしいです」
と呟いたもんだからもうね、もうねっ!
たまらんですよ

29 :
 

「写真、好きなんですか?」
聞かれながらも、いつまでも突っ立ってたら不審者だよなと思ったから、彼女の対面に座り込む
そんな問いにはイエスと答えるしかないだろう
「私も、好きなんです」
とても困ったことになってしまった
残念ながら俺は写真が別に好きじゃない。アルバムとかプリクラとか、まあそういうのは思い出として嫌いじゃないんだが、写真家だとか戦場カメラマンだとか名前なんて一人しか知らない
と考えてみて、唯一知っていた戦場カメラマンの名前が思い出せないことに気づいて一人も知らないになってしまう
「へ、へえ、どういうのが」
「空とか、山とか、海とか……自然の風景が、好きです」
「お、俺もなんですよ」
へえそうだったんだ、と自分に相槌を打つ
どうせえっての
「そ、それでですね、貴方を海と一緒に撮ったら綺麗だろうなって……」
勢いづいて出た言葉に俺が一番驚いた
女好きの×が乗り移ってるかの如く流暢だった
多分
「いえいえ、そんな」
そんな風に否定する彼女には不良にはない可憐とやらがあったもんだから興奮度MAXだ

30 :
 

「それで、その、写真、いいですか?」
ここまで来たら撮っておきたい。スマフォしかないけど連射したい
段々と写真のことなんか知りもしないのに彼女と海が最高のシチュエーションに思えてきたし、なによりもそんな素敵画像をフォルダに入れておきたい
「ここじゃ、ちょっと……」
彼女は意外に乗り気のようだ!
考えてみれば人通りの激しいこんな場所で、スマフォとはいえ撮っていたら確かに恥ずかしいだろう
そう考えて、何度か遊びに来たことがあるので知ってなんたら他人の土地
「浜辺の端に人気の少ない場所がありますよ」
と今にして考えてみれば不審者極まりない台詞で見事彼女を海の家から連れ出すことに成功したのだった

31 :
今のとこ人生狂う兆候なし

32 :
 

ビーチサンダルを履いて砂浜を共に歩いていく
彼女は俺よりもずっと背が低くて歩幅も小さい
ぷるぷると震える子犬を連想させるけど、背筋は伸びていて綺麗な立ち姿だった
猫背で育った俺もつられて胸を張ってしまう
先導する形で俺が前を歩いているが、離れないようにか彼女は割かし近くで付いてくる
砂を焼く日照りに汗をかきながらも、心持ちは幸せいっぱいだった
これから彼女を写真に撮れるんだと思うと胸が高鳴る
高鳴るが、どう撮ればいいんだろう、っていうより
そうだこれは先に言っておこうと口を開く
「今日は遊びだったもので、カメラを持ってきてないんですよ」
「そうなんですか」
「すみません」
「気になさらないでください。私が被写体なだけでも、光栄なことですから」
彼女は俺のことを勘違いしているような気がした
もしかしたらプロのカメラマンだと思ってるんじゃないだろうか
写真が好きですと言った手前失敗できない
どんな写真を撮ればいいんだろう
そうこうしている内に目的の浜に到着する
そこは今日も人気が少ない、岩盤を挟んだ場所
人気が少ない理由はわかめが大量に浮いているからだ

33 :
「海を背にして立ってもらえますか?」
言うと、彼女はこくりと頷いて離れていく
素人目に見ても緊張して硬い
それでいいのか悪いのか、よくわからんが、悪い気がする
とりあえずそれっぽいことでもしておこうかと手でファインダーを作って構図を練ってる臭いことをしてみる
これでなにがわかるのかなにもわからん
角度? いいですよーそのアングル、ぐっときますねーとでも言えばいいんだろうか
それってどこのAV撮影だよ
スマフォを取り出して何枚か撮ってみる
どう撮っても普通に彼女を写真におさめてるだけだ
それはそれで嬉しいんだが
だけど一枚くらい彼女が納得するものを撮る必要があるだろう
でないと俺はただの変態だ
警察を呼ばれても言い逃れできない
角度を変えて、ちょっと寝転んだりして、色々なところから撮っていく
上手くいかなくて気持ちが焦る
「緊張してます?」
いい画が撮れないのを人の所為にしてる俺はなかなか最低だろ?
まあなんかしらの口実が欲しかったんだ
会話をするためのな

34 :
 

「はい、わかります?」
「そりゃもう。いいんですよ、いつも通りで」
「難しいですよ。自分が写真に撮られるなんて、滅多にないものですから」
彼女の言ってることがよくわからない
そりゃ写真なんて毎日撮られるものじゃないけど、だからってそこまで稀なことじゃないだろ?
「それじゃあ、友達と遊んでる気持ちでどうです?」
「友達と……んんっ……難しいです」
「え、あの、失礼ですが、今日は一人で海に来たんですか?」
「いえ、付き添いの者がいますよ」
付き添いの者!?
俺は一歩後退る
もしかして、この女の子不良と対極とかそういう問題の前に、次元さえも違っちゃってるような、金持ちとかお嬢様って奴なのか?
「こ、高貴な育ちなんですね」
産まれて初めて高貴なんて言葉を使った。使い方間違ってんじゃね?
「そんないい育ちじゃありませんよ」
視線を逸した彼女は物憂げで儚い
俺が一目惚れした淡い雰囲気の彼女を、無意識に指が動いて写真におさめていた
撮れた写真を見て惚れ惚れした
なんというか、彼女の美しさが凝縮されたような一枚だったから
儚げで、消え入りそうで、淡くて、切ない
そんな言葉を並べてみてわかった
彼女は海が似合わないんじゃなくて、彼女そのものが景色のようなんだな、って

35 :
 

「こんなん撮れました」
これ以上のものは撮れないだろうと、一番気に入った最後に撮った写真を彼女に見せる
「うわっ……これ、私、ですか」
「ですね」
「凄い……」
自分が自分じゃないように見えるらしいその写真は、確かに凄い
彼女が彼女というよりも、彼女が人間じゃないようにすら見える
ビギナーズラックここに極まれり
「さっき言ってた付き添いの人、あまり遅いと心配しますよね?」
もしも高貴な家柄だとして、俺が敵認定されたらどんな報復をされるのだろうと少しばかり臆病になっての質問だ
「大丈夫ですよ。今もどこかで見守ってくれていますから」
聞くが否や挙動不審に辺りを見回す俺はどう見たって変質者だ
後ろから拳銃を突きつけられてもおかしくない
「くすっ」
初めて俺は彼女の笑顔を見る
よほど俺がおかしかったのか、くすくすと笑みを零す姿は可愛らしくて
年相応の女の子だった
といっても年を知らないか。俺と同じか下くらいだろうけど
 

36 :
共有した時間は本当に短かったけど、好みのタイプの子と遊べた気がして充実感はあった
でも、写真という名目で連れ出しただけに長く引き止められなくて、彼女の「そろそろ帰りますね」という言葉にしょんぼりと眉を落とす
俺みたいなブサメンがこんな可愛い子と話せて充分じゃないか
と負け思考で考えてみるも、もっと話したいなという想いが尽きることもなく
声をかけた時と同じくらいの勇気を振り絞って、俺は携帯番号のアドレスを聞いた
「すみません、携帯、持ってないもので」
ふられた
今時いないだろ、携帯持ってない女の子
いつの時代の子だよ
「残念です」
そう言うしかない。いや、言えただけ褒めてくれ。頑張ったよ
しかしそこに思わぬぼた餅が降ってきた
「あの、よかったら、また……撮ってくれますか?」
「喜んで! 次はマイカメラ持ってきます!」
「ふふっ、楽しみです」
もうマイカメラとか言っちゃってる時点で素人感バリバリなわけだが
有頂天になった俺は来月の第二日曜日にこの浜辺でと伝えて走り去った
いやあ、嬉しくて飛び跳ねたんだってマジで
 

37 :
>>1のスペックはクソなのに何この良スレ

38 :
 

友○×を探して浜辺を走っていると三人で焼きそば食ってるのを発見
今日は不調だったのか、或いは既に約束を取り付けたかだ
「どこ行ってたん?」
「へっへっへ」
「キモ」
「キモ」
「キモ」
凄く友達想いな奴らだろ?
気持ち悪い時は気持ち悪いって言ってくれるんだぜ?
へこむわ
「ナンパ成功した」
「おお、やるやん」
「どんな子?」
「こんな子」
写メを見せると三人はなぜか拍手した
綺麗な子だろ? と聞くと、お前にはもったいないなと言っていたから、やっぱり俺の審美眼は狂ってなかったらしい

39 :
 

「今度いつ遊ぶん?」
「来月の第二日曜」
「もう約束とりつけたん? 携帯聞いたんやろ?」
「携帯持ってないらしくてさ」
「……ああ」
友も○×も思い思いに納得したように首を降る
おいちょっと待てなんだその哀れな者を見る目は
「まあ、話せただけでも、な?」
「え、俺ってからかわれてんの?」
「来月の第二日曜が楽しみだねー」
>>1が大人になる日やな」
「おいこらちょっと待ってまじで?」
友達がいのある奴らのせいで先行き不安な来月だった
 

40 :
次に会う日の期間をぐっと開けたのには理由がある
それはもちろん、マイキャメラを買うためだ
俺の取り柄なんて社会人であるということくらいだから、月末を越えればカメラの一台や二台余裕で買える
なんて思っていた時期が俺にもありました
高いのな、カメラって
パチンコも酒も我慢して金使わずにいたけどほんっとに高いな
ということで、初心者でも扱いやすく初心者に手頃な価格らしい(BY店員)カメラを購入
それでも八万円は流石に胸が張り裂けそうな想いだったが
しかしここまで準備して友達が言うように彼女が来なかったら……
その時は速攻で質屋に行ってカメラを売ってパチンコに行こう
俺は泣きながらパチンコしているだろう

そうそう、親方にナンパ成功しましたよって例の写メを見せたんだ
そしたら好評でな。今度連れてこいってさ
無理だっての

41 :
 
約束の日、なんてもんは待ってると長く感じるのに迫ると一気に近づいてくるのはなんでだろうな
第二日曜日がやってきた
九月ということもあり風は涼しくなり、照りつけも優しくなっていた
人気のない海は寂しさも漂っていて、なぜか彼女が好みそうな気がした
昼前に着いた俺は例の海の家で待っていた
といっても海の家自体はもうやっていないので、その母体となっていたプレハブの影で涼んでいた
電車に揺られてがたんごとんと、遠路はるばるよく来たよな
そんなことを思い返したのは着いてから一時間が経過した頃だ
よくよく考えてみれば時間指定というものをしてなかったので、俺はいつ来るか解らない彼女を待っている
からかわれているとかいうまえに、アホだろ俺
来ないのかな、彼女。と半ば諦めかけたのはどっかの学校か工場か知らんけどチャイムを鳴らした時
時間は一時丁度
それでもこっちが勝手に約束したわけで、俺は五時頃まではいようと決めていたんだけど、そんな必要がなくなった
俯いて砂にアンパンマンとドラえもんが潰れてごちゃまぜになったような絵を書いていたら、影ができた
見上げてみると、彼女がいた
腰を低くしてかがむように覗き込みながら
「お待たせしました」
と麦わら帽子を手で抑える彼女は、もう、まじ天使

42 :
ってなわけで寝るわ
こんな感じで妄想書いていくけど付き合ってくれるならありがとな
おやすみ

43 :
ありがとな
また続きよろしく〜
おやすみ

44 :
おやす

45 :
続き楽しみ

46 :
結構楽しかった!
また待ってるぞ!!

47 :
おもしろい!
待ってるぞー!

48 :
これは支援(^O^)

49 :
はよ

50 :
続き

51 :
面白いぞ。
続きはよー。

52 :
少し書き溜められたから投下するわ
三日三晩とか仕事してるから実際無理だもんで、もうちょい長引くかもしれん
では投下する

53 :
 

ま、待ってませんよ
と俺は言ったつもりだったけど、実際にはなにも言えなくて呆然としていたらしい
数秒後、彼女がどうかしました? と聞いてきた
見とれてました、なんて言えるはずがない
「待ってませんよ。じゃあ行きましょうか」
「あ、どこかに行くんですか?」
「え、えと、そうですね、ちょっと軽く移動を」
「でしたら車でどうですか? 付き添いの者が心配してしまいますので」
出た! 付き添いの者!
真っ黒なスーツを着てシュワちゃんみたいなSPが現れたらどうしようとか思いながら、断れないので付いていくと待っていた車は黒塗りベンツ
半端ない威圧感があるこの車種、いつもなら背を向けて知らんぷりの対象だ
一気に手が震えだす
もしかしてこの女の子、ヤのつくご令嬢かもしれないのか?
怯えながら誘われるままに車の中へ
運転席に座っている男はちらっと見た限りでは線も細いしスーツも着ていない
ただ、明らかにその視線は俺を敵視していて身震いした
こんなにはっきりと敵視されたの高校二年以来だと目を逸らす
あの時俺を敵視したのは、確か天然の○がトチ狂った時だったかな
いい思い出だ
現実逃避も束の間、"付き添いの者"が「どこに向かわれますか?」と聞いてきた
移動をするつもりだったけれど車で移動は考えてなかった
でもどの道、移動できる範囲は限られている
写真を撮るための場所で、彼女が好きな自然のある場所
「緑地公園で」
それは近場の自然溢れる大きな公園だ
あの場所なら彼女もきっと喜んでくれるはず、と思っていたんだけど
表情を覗うにそこまででもなかったらしい
女性を喜ばせるってのは難しいもんだな

54 :
 

沈黙重苦しい車内で流れるゆったりとしたBGMは運転手の趣味なのか彼女の趣味なのか
少なくともお前らが嫌うような中身のないJ-POPしか聞かん俺にはちんぷんかんぷんな雰囲気音楽だ
「その腰のポーチに入れてあるのがマイカメラですか?」
「はい」
「見せて貰ってもいいですか?」
「どうぞ」
後部座席の隣同士に座っていて、俺は彼女に取りだしたカメラを渡す
車の揺れもあって渡す時にふと指が当たったのだが、彼女はそんな小さなことは気にかからない様子
俺だけドキドキしてなんか恥ずかしい
「結構本格的なカメラなんですね」
「まだまだ使いこなせてないんですけどね」
自分へのフォローは忘れない
「今日も宜しくお願いします」
「上手く撮れるかわかりませんが、こちらこそ」
小さな距離で頭を下げ合う
これで運転手がいなければ完璧なんだがな、鬱陶しい
さて、俺の目的はもちろん、彼女を写真に撮ることじゃない
そんなものは会うための口実だ
会うために八万も金をかけたと思うと俺の将来が不安にもなるが(貢ぐ的な意味で)、大切なのは仲良くなること
そして、次のデートも取りつけること
できるなら付き添いの者抜きで! だけど難しそうだな
そのためには今日という日を成功させなければならない
会うのが二度目ということもあり、俺の人見知りスキルもなりを潜めている気がする

55 :
 
緑地公園の入口で下ろされた俺と彼女は、大池の周りを散歩がてらポイントを探す
日曜日の昼間ということもあって、飼い犬がフリスビーを追っていたり家族が仲睦まじく遊んでいたり、雰囲気は良好だった
こんな場所でデートなんてしたことがない
少なくとも不良のデートスポットには載っていないプランだ
「風が気持ちいいですね」
「ですねえ」
会話がない!
これがイケメンだったりすれば会話がなくてもいいんだろうけど、ブサメンでコミュ力が低いって彼氏候補から外れるに決まってる
意を決して喋ろうと努力するも頭の中は真っ白だ
俺って不良の数少ない特技であるコミュ力さえもないなんて、本当にろくな物件じゃないな
「こうしてのんびりと歩いてると、なんだか楽しくなってきますよね」
と同意を求められた
俺は貴方と歩いてるだけで楽しいんですけど、とは流石に言えなかった
「ほんと、そうですね」
とりあえず合わせとく
彼女は第一印象で見る限り、景色と同化しちゃう系女子だ
どんな女子かは解らんが、ようは雰囲気を好む人だ、多分きっと。だといいなあ
「そこのベンチで休憩しましょうか」
暫く歩いてそう促して、ここらで写真も撮っておこうかと腰からカメラを取りだした
 

56 :
 

そこはバックが大きな池になっていて、木で組まれたベンチがいい味を出している気がする。あくまで俺の印象だ
彼女を中心に撮ってみるけど、どうにも旅行写真を撮っているだけに留まってしまう
彼女が気に入りそうな写真はこういうのじゃなくて、多分、自分が風景と一体化しているような印象的な画のはずだ
考えて、ピントを彼女にではなく池の奥に浮かんでいるボートに合わせて撮ってみた
あまりにも彼女がぼやけすぎていて、これではあまり綺麗ではない
上手い場所を探しつつ、中心をボートに合わせて光量を落として
「写真、本当に好きなんですね」
四苦八苦している俺を見て彼女が微笑んでいる
好きなように見えたんだろう
これはただの口実なんだけどな、と頭を掻きながら、その割に一所懸命だなと思った
「かもしれませんね」
だとすればそれは、写真が好きなんじゃなくて
そうだとしても彼女が原因に他ならなくて
でも、どちらかというと俺が好きなのは写真じゃなくて、写真に写っている彼女が好きなんだろう
 

57 :
読んでないけど続けろや

58 :
 

ビギナーズラックが連発することはなくて上手く撮れず、集中力が切れてきたので俺もベンチに座った
もちろん、彼女との間に隙間はある
そこまで図々しくはなかなかなれないからな
「写真以外に好きな物ってあります?」
なんだかお見合いの場でご趣味は? と聞いているようだけど、こういう基本的な情報を知っとかないと次に繋げない、というのは女好きの×の言葉だ
「そうですね……よく、解りません」
「解らない?」
「私、ここ最近まで外にでる機会がとても少なかったものですから。こうして街まで出てきたのも先月の海が初めてでしたし」
「箱入り娘ってやつですか」
「ああ、そうですね。そうかもしれません」
流石最低でも黒塗りベンツを従える財力を持ったお嬢様
ずっとラリパッパで部屋から出てこずそのまま病院送りになった箱入り娘しか知らない俺には別世界の話を聞いているようだ
「両親に愛されてるんですね」
「だといいんですけど……」
自嘲気味に視線を落とした彼女を見て、金持ちには金持ちなりの苦悩ってのがあるんだろうな、としか思わなかった
まさか彼女と関わりを持ったことで俺の人生がああも狂うなんて思ってなかったから
それが良い方向に狂ったのか、悪い方向に狂ったのか、底辺暮らしの俺には計ることができないんだけどな

59 :
読んでないけど面白そう
今から読む

60 :
 

結局、写真は最後までいいのが撮れなかった
何枚か彼女に見せたら喜んでくれたように思うけど、俺としてはイマイチだ
海で撮ったような鳥肌の立つ出来栄えを得られることなく、撮影は幕を閉じた
「また誘ってもいいですか?」
聞くと彼女は「もちろん」と頷いてくれる
「街の方でも構いませんか?」
なにせ街に出ないことには遊べない
映画館もゲーセンも飯を食うにも、自然だけの場所には存在しない
「街ですか……楽しみです」
「そっか。外に出られたのが最近なら、街は全然知らないんですよね? 行ってみたい場所とかあれば、案内しますよ?」
「本当ですか?」
ずずいと、淡い雰囲気の彼女には珍しいほど前に出て食いついてくる
箱入り娘でよかった……こんな釣り針にもかかってくれる
「それじゃあ、行きたい場所、纏めておきますね」
「はい」
彼女と黒塗りベンツに乗って元いた海まで乗せてってくれた
「それじゃあまた、来月の第二日曜日に」
「はい、十二時ですね」
今度は時間指定も抜かりない
俺って失敗を教訓にすることができるアホだろ? 
車から降りて見送ろうとすると、運転席から"付き添いの者"が降りてきた
何事かと思い身構える。彼女はこちらに興味を示してないから、危険な臭いはないのだろうか
 

61 :
 

「今日はありがとうございました」
そこは内心びくつきながらも先制攻撃をしておく
近くで見るとそいつはやっぱり線が細い。けど、なんだろうな
元不良の勘が危険信号を発していた
因みに不良はこの勘が働かないと何度も何度も痛い目を見ることになるんだぜ
「どういうつもりでお嬢様に近づいている」
思ったよりもずっと直球な質問だった
やっぱり俺みたいなどう見ても凡人以下には厳しい目も向けるのだろうか
金持ちってのは凄いもんだ
「仲良くなりたいからです」
それ以外に言えないだろう? 好みのタイプでできれば交際したいなんて、いくら俺が馬鹿でも恥知らずじゃないんだから
そりゃRだしR繰りたいですなんて思ってるけど? それを言っちゃおしまいだろ
すると黒服のそいつは驚くべきことを口にする
 

62 :
 
「○○町□□3丁目18ー2。現在一人暮らし、家族構成もお前の過去も調べは済んでいる」
当たり前にぞっとした
お嬢様とか、金持ちとか、そういうのに耐性がない俺は背筋が凍ったよ
本当にそういうの調べるんだな、金持ちって
「俺がなにを言いたいか解るか?」
「……脅しですか?」
「違う」
脅しじゃないならなんだって言うんだ
なにせ俺は頭が悪いからな。思いついたことを否定されたら次なんてそうそう考えつかない
「お嬢様に近づきたいのなら、生半可な覚悟で近づくんじゃない。解ったか?」
「……それって」
俺が聞きたいことを言い終える前に黒服は運転席に戻っていった
俺の聞き間違いや思い違いじゃなけりゃ、それって俺に忠告してくれたってことだよな?
そう思うと黒服への印象がガラリと変わって、いい人なのかな、って
それ以上に"付き添いの者"と呼ばれる身近な関係らしき人物に認めてもらえた気がして、単純な俺は頑張るぞ、なんて大きく手を振って彼女を見送ったんだ
 

63 :
 

「来たん? ほんまに?」
「来た来た。からかわれてるわけじゃなくてよかったわ」
仕事終わりに友と大手チェーンの焼き鳥屋で酒を飲みつつ話は自然に彼女のことになった
運ばれてきた生ビールを片手にくっちゃくっちゃとずりを食べる俺達はどっから見てもおっさん臭い
話が思いっきり逸れるが学生で酒はやめとけ
成人しててもおおっぴらには辞めとけ
このご時勢ろくなことにならん
「しかもどうやら金持ちらしい。オプション付き黒塗りベンツに乗って移動してきた」
「どこのやーさんやねん」
「わからん……ヤクザの娘だったらどうしようかな。箱入り娘だっつってたし」
「うわっ、リアルやな。頭に死亡フラグ立っとるんちゃん?」
「見える?」
「すっかすかな頭が見えるわ」
「お前と変わらんだろ」
いつも通りの流れで笑っていると、友が急に真面目な顔をして言ってきた
「でもまあ、お前やったらどの道一緒なんやろな」
「なにが?」
「ヤクザの娘でも、警察の娘でも。関係ないやろ?」
「いやいや俺そんなにかっこいい奴じゃないだろ」
「かっこいいってより、アホやからな、お前は」
「褒めてねえのかよ謙遜して損したわ」
「お前が損しとんのに俺が得してないんは気に食わんな」
「やかんなやかんな」(やかんなって意味通じるか?)
そんな具合で話は飛んだり跳ねたりして、平常運転で楽しんで、途中から○や×も混じってきて、多分こいつらは将来でも一緒に飲んでんだろうなって思うよ

64 :
書き溜めこんだけだけども
今日も足が順調に臭いから風呂入ってくるわwww
また後で投下できたらする

65 :
これは良スレ
続き期待

66 :
面白い
続き、はよ

67 :
待ってるよー

68 :
静岡県民か…

69 :
気がついたらこんな時間になってたから今日は寝るわ、すまんw
静岡県民ではないけど、似た方言でもあったんかな
ではまた

70 :
おつかれ、今日も楽しく読ませてもらったぜ!
やかんな=やっかむな、かな…?
好きな人に会うために興味の無いカメラを八万で買う
俺なら、アリだな

71 :
すごいかっこいいな。
出来れば、恋敗れたとしても、そのカメラを獲っといて欲しいわ。
いい思い出になりそう。

72 :
何気なくきましたが、オモロー

73 :
面白い。
楽しみにしてます。

74 :
うむ紫煙

75 :
パンツが困ってる

76 :
>>70
やっぱ"やかんな"って解りづらいよな
俺の暮らす地方では"理屈の通ってない事柄で相手に因縁を吹っかける人間"のことを"やから"って言うんだ
だから"やから"がそれをする行為を"やかる"と言う
"やかるな"は非定型で、"やかんな"はそれが崩れた言葉になんのかな
かといってこっちの地方が全員知ってるかと問われたらなんとも言えんけどw

九時以降に投下するから読んでくれてる人はもうちょい待ってな、ありがとう

77 :
×非定型
○否定形
だなww

78 :
 

待ち遠しくて堪らない第二日曜日
その間、俺は煙草を辞めた。だって彼女、どう見ても煙草が好きそうには見えないし
ついでにパチンコも行かなくなった
どうすりゃカメラ使っていい画が撮れるのか考えてたら休日なんて終わっちまう
だからといって低収入のクズ物件なことに変わりはないんだがな
そんなこんなで第二日曜日
待ち合わせ場所は街の駅前だ
ここからなら歩行である程度の場所に遊びに行けるし、少し遠いくらいなら金出してタクシー使えばいい
前回よりもややおとなしめの服を身につけて、約束の十二時前に到着し彼女を待っていると、予想通りというかなんというか、ロータリーに見覚えのある黒塗りベンツが入ってきた
運転席から黒服が降りてきて後部座席を開ける様は人の目を引く
更に降りてきた彼女が俺の方に来るもんだから通行人は何者だこいつと言わんばかりの目で見ようとしている気がした
実際、黒塗りベンツの関係者をガン見できんわな
「また後に着いてしまいました」
風の中にひんやりとした空気も感じ始めるこの季節、彼女はふわふわの帽子に変えて軽く服を着込んでいた
「気にしないでください。ところで、帽子好きなんですね」
「ああ、これは……帽子がないと、恥ずかしいので」
「? なにがです?」
「なんででしょうね、恥ずかしいんですよ」
金持ち独特の、というよりは。箱入り娘独特の感性だろうか
人目に慣れていないということ?
考えてもわからん、ここはスルーでいこう。どうせ気の利いた言葉なんて出てこない
「行きましょう」
「はい」
すっと彼女は自然に俺の袖を掴んだ
なぜに!? びくっと肩を震わせて距離を取ってしまったが後の祭りだ
 

79 :
 

「すいません、はぐれてしまったらと思うと、恐くて」
ここで友や×なら気さくに「ほなら手繋いだ方が安心するやろ?」とか言えるんだろうけど、俺はなあ。俺はRなんだよ
「いえ……その、どうぞ?」
離れてしまった手を差しだすも一度気にしたからか彼女は掴んでこない
なにやってんだ俺はアホかアホだそうだアホだった
「……行きましょう」
「は、はい」
なんとも微妙な空気で始まった三度目のデート
いや、まともなデートは今日が初めてだ
彼女の小さな歩幅に合わせてゆっくりと歩くものの、ちらりと目を寄越せば華奢な手に後悔が募る
チャンスが再来すればいいんだけど、一度逃すと来ないのがチャンスだ
諦めよう、と思った矢先に彼女が通行人とぶつかって、弾かれたのを引っ張ろうと手をしっかりと握ってしまった
時が止まったような気がした
彼女の冷えた体温が手から伝わってきて、感触をより鮮明にしていく
「危ないから、繋いでいましょう」
「……」
彼女はなにも言わずに俯いて、こくりと首を振る
もしかして――今日の占い、一位だったんじゃね?

80 :
 

俺よりもずっと小さな手を壊さないように握り締めて、ひとまず近場の喫茶店に向かっていた。昼時で彼女も御飯を食べていないというなら、腹ごしらえは必要だろう
真っ白な肌を紅潮させて秋に馴染む彼女は筆舌しがたいほどに可愛らしいのだが、ビルのウインドウに写る俺はいかんせんゆでダコも真っ青な具合で耳まで赤くなっていたから、迂闊に彼女の方を向けない
遠慮がちな肩幅の距離感が俺と彼女の親密度を物語っている。きっとまだ、手を繋ぐには早かったんだ
だけどこれは大成功と言っていいだろ? ドッキリと書かれたプラカードはいらないけど
落ち着いた雰囲気の喫茶店に入って窓際の二人席に座った
彼女は喫茶店でさえも初めてなのか、店内をきょろきょろと見回している
「綺麗な場所ですね」
「でしょ?」
彼女に喜んでもらえたみたいで一安心
先週末、足を棒にして喫茶店巡りをした甲斐があったというものだ
もちろん、俺には素晴らしい友人が三人もいるので「男二人で喫茶店巡り? 悪いけど俺は女好きやねん」と断られて一人で探索した
俺って人徳があるだろ? 泣けてくるぐらいにさ
 

81 :
 

現在の店内BGMは曲名までは解らんがジャズだった
ジャズなんて単語しか知らんかった俺だが、あの車内で聞いたことのないような雰囲気音楽を聞いたからちょっとだけ勉強してみたわけだ
「こういうジャズは好きですか?」
「……ジャズ?」
もしかしてあの雰囲気音楽は彼女の好みじゃなかったのだろうか。今流れている音楽のことですよ、と教えると、彼女はああと手を打つ
「はい、好きですよ」
「よく聞くのはどんな音楽です?」
こういう基本情報のリサーチが後々(略
「えっと……琴や三味線等ですかね。あれはなんて名前の音楽なんでしょう」
琴や三味線をやってる人間を初めて目の当たりにした俺に聞かないでほしい
「わ……和音楽?」
それっぽい言葉を口にしてみた。でも絶対に間違ってる気がする
「ですかね?」
小首を傾げて笑んだ彼女につられて苦笑した
どうやら音楽もろくに聞かずに育ったようで、徹底した箱入りっぷりに困惑する

82 :
 

彼女は事あるごとに驚いて、喜んで、それらはありありと表情に出ていて見ているだけで面白い
例えば注文したクリームパスタをフォークで突き刺して食べようとしていたから、こうするんですよとくるくるとフォークを回して見本を示すと、彼女は感嘆の息を漏らす
食事を終えてデザートにケーキを食べれば、こんなに甘くて美味しい物があったんですねと無邪気に笑った
喫茶店を出て映画館に向かう途中で、以前から興味を持っていましたと語る彼女は、映画館ではなく映画そのものが初体験だったようで、大画面のスクリーンに映しだされた映像を食い入るように見詰めていた
興奮冷めやらぬ彼女とゲームセンターに向かって、面白半分でダンレボを薦めてみれば、よほどの運動音痴なのか踏むタイミングがばらばらで、それでも精一杯にクリアしようとする彼女にほっこりと頬が緩む
 

83 :
 
UFOキャッチャーで二千円使い、なんとか手に入れたぬいぐるみをプレゼントしたら一生大事にしますなんて言ってくれる
彼女は今までどうやって生きてきたんだろうと、遅ればせながら考えた俺は、黒服が言っていた言葉を思い出した
生半可な覚悟でお嬢様に近づくな
もしかしたらあの言葉は予想以上に中身の詰まった、手放しで喜んでいいような類の忠告ではなかったのかもしれない
でも、こんなふうに一般的なデートをして、彼女が笑うたびに嬉しくなって、彼女をもっと喜ばせたくなって、調子に乗ってダンレボで滑ってコケて笑われたりして――
自分の気持ちを思い知った
一目惚れがとっくに終わって、本当に彼女を好きになっているということを
 

84 :
「次はどこに行くのですか?」
自然に繋げた手を引いて人気の少ない路地に入っていく。俺を信用してくれているのか怯えることもなく、目的のビルに入り込んで非常階段を上っていく
「こういうゴミゴミとした街でも自然を味わえる場所ですよ」
そのビルは高校時代に友と○と×と四人で、自分達だけの居場所を探そうという陳腐な企画で見つけた
普通に雑居のオフィスが入り組むビルだが、この辺りでは一頭高く、屋上も開放されている
緑の非常扉を開くと景色は丁度いい頃合で、夕暮れが街を焼いていた
「うわぁ」
映画のスクリーンにも負けない視界いっぱいの太陽が地に沈んでいく
彼女は感動の表れなのか両腕を広げて光を浴びた

85 :
「凄いです、凄いですよっ」
殆ど無意識に手が自分の腰に伸びていて、今では日常的に持ち歩いているカメラを取り出す
赤に染まる彼女をファインダー越しに捉えて、光量を軽く弄って気づかれない内に何枚か撮り収めた
夕焼けに埋まる黒い影の淵は淡く陽に吸い込まれて、美麗さよりも不安や恐怖が先立つようなその一枚を彼女に見せる
「ありがとう、ございます」
にこりと微笑んだ頬に一雫の涙が伝っていく
俺が撮った世界は彼女にどう写ったんだろうな

86 :
 

「今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
「それはよかったです」
夜も近いのでお開きとなって、駅で待っていた黒服の元に彼女を送り届けた
後部座席に乗り込んだ彼女はウインドウを下げて顔を出す
「あの、よかったらなんですけど……今度は私の好きな物を紹介させてくれませんか?」
「構いませんけど、それはどういう?」
「ですので、私の家に」
「お嬢様、それは」
運転席の黒服から静止の声がかかる
俺を家に連れて行くというのは簡単な話じゃないのかもしれない
彼女はそんな黒服に目配せをして、お願い、と小さく呟いた
黒服は諦めたように頭を振って溜息を吐く
「庇いきれませんよ、それは」
「うん」
「あの、そんなに大変そうなら別に……」
「是非、是非私の好きな物も、貴方に知ってほしいんです」
 

87 :
 

天にも舞い上がる気持ちとはこのことだ
喜びを隠せなくて自然とブサイクな面になった気がするよ。元々か、うるせえほっとけ
「それじゃあ来月の第二日曜日。車で近くまで迎えに行きます。どの辺りがいいですか?」
「じゃあ、○○駅で」
「わかりました。少し時間がかかりますから、十一時に待ち合わせということで」
「はい」
いつもの黒塗りベンツがロータリーをぐるりと回って大通りに出る
彼女は見えなくなるまで後ろを向いて、俺に手を振ってくれていた
これで期待するなって言う方が難しいよな?
手放しで喜んだって罰は当たらないよな?
だから俺は一目散に友に電話して、今日のことを自慢してやろうと飲みに誘った
あいつは俺の自慢話をうざったそうに流しながらも、でも聞いてくれて、最後に頑張れよと肩を叩いてくれた
ほんと、ありがたい奴らだよ
 

88 :
ここまで
また書き溜めておく

89 :
なんという良スレ

90 :
いいねいいね。

91 :
C

92 :
おう
楽しみにしてるぞ

93 :
良い
よいよ

94 :
おもしろい

95 :
やっぱいいな
友達もいいヤツばっかり

96 :
待っていた甲斐があった
明日も待ってるぞ

97 :
読みやすい文章書くね

98 :
鶴見緑地か?
明日もまってますで

99 :
おはよう
wktk

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