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2013年02月歴史難民216: 夜 闌 香 焚 き 天 を 夢 む (230)
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夜 闌 香 焚 き 天 を 夢 む
- 1 :2012/02/05 〜 最終レス :2012/03/25
- 「夜闌《ヤラン》 香焚き 天を夢む」へようこそ。
このスレは架空の王朝『呉王朝』を舞台にした参加型のネタスレです。
※呉王朝ってどんな国?(これまでのあらすじ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9102/1328123978/
【現在の状況】
六部尚書と大宦官・李畢嵐によって皇帝白牡丹は廃立され、京師広陵では皇弟白如月が即位
白牡丹は洞庭湖の辺、岳州の君山で再起
【地図】
※しばらくお待ちください
【勢力紹介】
白如月:三省を廃止し、六部を皇帝に直属させた。中央集権指向
白牡丹:湖南の刺史、藩鎮を糾合した。地方分権指向
【中断前に参加されていた方へ】
領地、官職は今日から30日間(〜3月6日いっぱいまで)維持します。
期間中の復帰がない場合は、展開によっては部分継承or移転いたします。
それでは、どうぞ、お気軽にご参加ください。
過去ログ
http://logsoku.com/thread/gimpo.2ch.net/nanminhis/1261757311/
http://logsoku.com/thread/toki.2ch.net/nanminhis/1273187469/
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/study/9102/1295669911/
- 2 :
- ──洞庭湖、ある漁父が語る。
わしは気ままな漁師のおやじ。今日も洞庭湖に漕ぎ出でる。
でっかい湖、広い空。
わしはぽっつり、小さな舟に、酒を一瓶、竿一本。
お天とさまが沈む頃にゃ、こんな景色はあるめえよ。
いつも変わらぬ気ままな暮らし。
ところがその日……おい、どうしたと思う?
びっくりすんじゃねえぞ。何と天子様に会ったんだ!
洞庭に、ぽっつり浮かぶ、島ひとつ。
君山っていってよ、そっから綺麗な音楽が聞こえてくる。
わしはいーい気分になって、舟ですいすい向かったわけよ。
天子様は若え兄さんだったよ。兄さん上手だねえと声かけりゃ、
こりゃまあ何と顔いっぺえに笑いなさる。
おっと、天子様っていうからって、綺麗な着物なんか着てるの想像すんなよ。
わしらと大して変わらない服でよ。顔は真っ黒に日焼けしてんのよ。
え、じゃあ何で天子様ってわかるのかって?
そりゃ、そう言いなさるからよ。最初はわしも笑い飛ばしたね。
馬鹿言ってんじゃねえ、天子様は都にいてよ、
綺麗な着物着てでっかい宮殿に居りなさるんだってよ、てえな。
そしたら天子様はこう言いなさるのよ。
「でっかい宮殿! だったらここも負けてない。空は時間で色が変わる極上の広い天井。
山々は味のある柱。風は錦の衣なんだ」とよ。
何ともしゃれたことを言われる方よ。
んで、天子様はまた一曲弾いてくだすった。これが何とも好い調べでよ。
わしがそん時思ったのは、あーあ、このお人は言葉なんかより、楽器でお話になる人なんだってことよ。
あん? さっきから柄にもなく詩みてえなこと抜かして気持ち悪いって?
うるせえや、話の腰を折るんじゃねえ。
それから天子様はお茶を淹れてくだすった。
畑のあぜ道を通ってお住まいに向かってよ。俺たちんと変わらねえ家に住んでらした。
いかにもそっけなく淹れるもんだと思ったが、おめえ、杯に鼻近づけたとき、
こんないーい気分があるんだってびっくりしたね。
こんな風に、言葉の外に言い知れぬもんを表現されるお人が、
いってえ今までどんな人生を歩んでこられたのか、わしは知りたいと思ったが、
天子様は過去のこととなると、何もお話にならねえのよ。
だがわしは、そのお人がそのお人だからこそ、天子様とお呼びするのさ。
おい、笑ってんじゃねえ。ほらじゃねえよ。
何だったら今からみんなで行くかよ?
いつでも来ていいって言いなすったからよ。
- 3 :
- ──洞庭湖 北東岸 岳州岳陽、岳州刺史は語る。
もう一年か。何がって、ここに赴任してからのことさ。
進士及第したのも、未来の宰相とおだてられたのも、昔の話。
出世に血道を上げることもなく、
煩わしい上役への付け届けも怠っていたら、
いつの間にかこんな所で刺史をやっていたってわけ。
今の生活は、実は結構、気に入っていたりする。
仕事にも慣れたし、同僚とのソリも合う。
洞庭湖を見に、ときどきは都の旧友も来るから退屈しない。
飯店に行けば、岳陽楼を見に来た風流人が、即興の詩会を開いていたりするしね。
メシも美味けりゃ、水も美味い。てことは酒も美味いわけで、
言うことなしとは、このことだ。
飯店にはいろんな奴が来る。あそこで騒いでいるのは、仕事を上げた漁師たちだろう。
平民と官吏が一つ所で、互いを気にせず騒げるようになったのは、
先帝の治世になってからだ。
私が官吏になったばかりの、叡宗様(先々代)の終わり頃の京師では、
あり得ない光景だった。
先帝があんな事になって、弟君が立たれてからは京師は元の木阿弥らしい。
とはいえ、地方の締め付けはまだそんなにきつくない。
私にはこっちの方が合っているから、できれば変わらないでもらいたいが……。
おっ、来た来た! ここの干鍋鶏は最高だ。
官吏の身で、口が裂けても言えないが 京師の皇上より、美味い物食ってる自信がある。
見るからに辛そうな真っ赤な鶏鍋。見てるだけで涎が出てくる。
箸を入れ、ハフッと掻っ込めば、く〜〜う、美味い。この一皿の為に生きてるわ。
顔中汗だらけにしながら半分ほど食べる。
その時ぐらいだな、漁師たちがかわるがわる謡を歌いだした。
好い好い。ここの民謡は、京師のより情熱的だ。自然と身体が揺れてくる。
歌い手が交代し、交代し、次に立ち上がった若者が歌い始めた。
あ、何だこれ。
音のうねりが綺麗に身体に入ってくる。特徴的なのに、全然嫌な感じがしない。
いくらでも聴いていたくなる。
すると、漁師たちが「天子様、天子様」と盛り上がってるのに気付く。
そういえば、近頃漁師たちが「君山の天子様」とか騒いでるって通報を受けたな。
「よいよい、放っておけ」そう軽くあしらった。
京師であったら極刑だろうが、岳陽のこの雰囲気がなせるわざだろうか、
私はそんなことでいちいち処罰したくなかった。
もう、そんな時代でもないだろうに……。
どれどれ、あの郎君が噂の「君山の天子様」か。少し顔を見てやろうかい。
その時、生きていてこんなに驚いたことはなかったね。何があったと思う。
いらしたのは、廃されたはずの先帝陛下じゃないか!
麻の衣を着て、日焼けして、漁民と何ひとつ変わらない出で立ちだったが、
昨年の正月の祝賀でちらと見た顔は忘れない。
そうすると、私はピンと来た。「死んだ」筈の人が生きている。
つまり、「死んだ」ことにされて位をすげ替えられたわけだ。役人世界でもよくある事。
そうか、生きてらしたのか。
その場は声を立てずに、後日、君山を訪ねた。
こんな場所で、天子と同席して茶を喫むなんて、私も平凡なようで数奇な生き方をしてるじゃないか。
詳しい事は話されないが、事情は大体飲み込める。
まだ天子を名乗られるなら、私はそちらに従うだけだ。
(岳州刺史、白牡丹に付き、それまで通りに統治を任される)
- 4 :
- ──かくして、白牡丹の復位は一刺史の協力から始まった。
岳州刺史は部下の説得に奔走する。
・白牡丹が立太子前、楚王と呼ばれていたこと
・白牡丹の治世は、湖南のお茶の買い付けが多く経済が潤っていたが、白如月に替わって実入りが減ってしまったこと
・これらの事情から、湖南は親白牡丹の色が濃いこと
・よって周囲の州や藩鎮との合力が望めること
・今の広陵にこちらの動きを抑制する余力はないが、時が経てばどうなるかわからないこと
民間では、もっと早く話が伝わっていた。
漁父の口から口へ、謡から謡へ。そして足を伸ばして。
君山へは舟を浮かべればすぐに行ける。
白牡丹と岳州人との話し合いの場も持たれた。
「もう、虚礼は必要ないんじゃないかな。」
その言葉と、岳州にもともとあった闊達な気風……
洞庭湖に、一舟が浮かんでいた。
舟の上には、農民、漁人、芸人、工人、商人、武人、文人、さまざまな階層の人々。
その中に岳州刺史と白牡丹も混じっていた。
岳州刺史が口を開く。
「今日、この場を設けたのは……
ここにいらっしゃる方を、岳州の皆々が『陛下』とお呼びするか、話し合うためだ」
手続きは、すぐに済んだ。
「州刺史様は、今までよくして下さいましたよ。これからもお願いします。
刺史様がこれからもいて下さるなら、このお人を陛下と呼ぶのに文句はないです」
「話し合うまでもなく、このお人はわしら漁師の天子様よ。なあ」
その後は、宴会だった。飯店のおかみや街の夫人が舟で料理をし、
それを食卓に並べた。
楽人が演奏し、舞芸を生業とする者が、立ち替わり舞った。
白牡丹は、目を閉じていたが、つうっと涙をこぼし、抑えきれなくなって哀号した。
その後は、どれだけ騒いだかわからない。
役人と平民がともに顔を真っ赤にして酔っ払い、肩を組んで湖南の民謡を歌った。
白牡丹も漁師に肩を組まれ、絡まれ、背中をばしばし叩かれている。
「朕も、歌いたいな。」
その声に、いくつもの声がやれいやれいと囃し立てた。
夜空は高く澄み、月はどこまでも青かった。
- 5 :
- (ひとつ、ルールをつくります。)
(スレの外部で、「夜闌でこのキャラやってるよ」など公表することは、しないでください)
- 6 :
- ──岳陽の街角、胡服で洒落こみ双髷を結った小姐たちの噂話
ねえねえ、最近変わったよね。何がって、この街がよ。
前は平気でそこら中にゴミが捨ててあったのに、今は嘘みたいにきれいじゃん。
何かね、陛下の“チョクメー”なんだってさ。
「いかなる理由があろうとも、唾棄、ごみの投棄などしてはならぬ」
たまに街に出てきて、気付いたことを“チョク”にするんだってよー。
前にもあったよね。
確か……
「用無くして、憂さ晴らしやいやがらせで花樹草木を損ねてはならぬ」
「岳陽楼、魯粛墓などの名勝に落書きをしてはならぬ」
「口汚い言葉で人を罵ってはならぬ」
何それー。政治家って、もっとこう、違うもんなんじゃないの?
でもまあ、雰囲気、良くなったよね。
私、まだ陛下見たことないんだけど。超見たいんだけど。
私一回しか見たことないや。何か酒場でオヤジどもとさわいでて、近寄れる雰囲気じゃなかった。
えっ、陛下ってそういうノリなの? 何か君山で静かに楽器とか弾いてるんじゃないの?
あとさ、聞いたんだけど、ほら、陛下って何でか知らないけどボロい服着てたじゃない?
うんうん。
街歩いてて、普通に不審者と間違われてしょっぴかれたって!!
「「「 えー! 」」」
それ洒落にならなくない?
もちろん、刺史様がすぐにやめさせて、平謝りに謝ったらしいよ。
で、州の予算で服を新調することにしたって。
あの劇に出てくるみたいな皇帝の服は着たくないっていうから、普通に街の人が着てるようなのにしたって。
そのしょっぴいた奴どうなったのかな。
でも、その話もなんかわかるかも。
私聞いたんだけど、ちょっとキてるとこもあるらしいよ。
この前、媽媽(ママ)の友達が夕飯のお裾分けに行ったらさ、
庭にいて、お菓子を屋根の上とか縁の下に放り投げて、「うまいか?」とか言ってたんだって!
「「「 えー! 」」」
で、その人が持ってきたもん渡したら、普通にお礼言ったんだけど、
帰り際に背中をバシッ!ってはたかれて、
「雑鬼をつけてると、よくないよ」とか言ったんだって!
ヤバいね。
キてるね。
でもさ、それからその人、体調悪かったのがすっかり治って、
何か若返ったみたいにイキイキしてるらしいよ。
はー……。
皇帝って、やっぱ普通と何か違うんだね。
面白いんだけど、ちょっと近寄りがたいっていうか……。
- 7 :
- ──岳州刺史、執務室にて
人生でやりがいを感じる時があるとすれば、今は確実にそうだね。
ひょんなことから天子にすごい仕え方をすることになった。
宮殿もいらない、龍袍もいらない、三跪九叩頭なんて無駄だから取りやめよ。いやはや変わった皇帝だ。
陛下は、『周礼』以来の宮中典礼を全部廃止してしまった。
「そんな虚礼を覚える暇があったら、いいかい、今から渡すものを間違えずに写して記録して。
これは季節ごとの重要な祭祀の決まりごとだ。朕が死んでも、これから何十年何百年経っても、
残って人の役に立てるようにきっちり保管するんだ。」
あの時、属員が抱えて持ってきた書物の膨大さを見た時には目を回すかと思ったね。
聞いたら、君山に来てから一人で書いていたんだそうだ。
京師からは、とても持ってこられるような状況じゃなかったから。
てことは、この膨大な祭祀の知識を全部頭に入れてたってことだ。
陛下が『周礼』なんかよりももっと古い殷や楚時代の祭祀を、国家のものから民間のものまで研究して
それを改良したってことは、官吏をやってれば当然知ってるが、恐れ入る。
弟君に替わってからは、祭祀のための大機関も、その人員も、目の敵にされて追い出されたらしい。
やっぱり、そのことが未練で天子を名乗られているのだろうね。
あの時の真剣な目を見たらそう思った。
いやあ、あの後は大変だった。慎重に写した後、何重もの検査をして、一字一句違えず記録したんだから。
「ありがとう。君がいてくれて助かる。祭祀のことは、今はこれくらいで大丈夫だ。
国家祭祀は、最終的には
@祭祀、卜巫
A祭壇や霊山の管理
B祭品の調達、管理
C祭祀に関する書物の管理
D演奏、演舞
E祭祀の研究、教導
F天文観測、暦法の考定、漏刻
これだけのことを過不足なく行える人員と設備を揃えなきゃいけないけど、
岳州だけの経済力じゃ、だめだろう。
逆に今できるのは、民衆に祭祀の謡や奏楽、舞踊を教えることだ。それは朕や姚朝欽でできる。
何、意外そうな顔をしてるんだ? 祭祀は元々民間から生まれたんだよ。
それにここは、中華の祭祀の源、『楚』の地じゃないか……」
その時、「楚」って言葉に、特別な思いが込められてるんじゃないかと感じたね。
名前だけとはいえ「楚王」だったことがあるからか。
もしかして、陛下は「呉」の皇帝だけれど、心の内では、受け継いだ古い呉ではなくて、
自ら創始した新しい「楚」の皇帝のおつもりなのかもしれない。
「できるだけ急ぎ、湖南をまとめたい。できるかな。諸葛休民。」
できます。やってみせます、陛下。
「諸葛」、先祖から伝わる誇らしい名を呼んでもらえた。
この名にかけても、期待に応えてみせる。
だからこうして、近くの刺史とやりとりする書簡を書いているのさ。
郎州刺史とのやりとりも度重なった。中々、いい感触なんだよ。
おっと、お茶を持ってきてくれたのか。「君山銀針」。陛下の差し入れだね。
新芽時に雨が続くと収穫できない。また産毛を落とさずに殺青するから、製茶には特別な技術が必要。
これこそ、誰にも真似できない、洞庭湖の君山の名茶だ。
きっと千年、二千年経っても、茶の最高峰にあるはずだ。
天険の地湖南に割拠し、茶で国を建て、やがて広陵を倒して天下を統べる、か……。
- 8 :
- 糞スレ建てんな!
やるならなりきり板でやれ!
- 9 :
- アンジェは馬鹿だからな
- 10 :
- 321 楽蘭 ◆.iJqgYz.1o 2012/02/03(金) 10:42:17.03
お兄様が消えてしまった…
皇帝と共に……
(秘かに剣の使い手…男…に身をやつした楽蘭は、重々しい雰囲気が暗く包み込む屋敷を単身、後にした)
必ずお兄様の消息を…掴んでみせるんだから…!
322 楽蘭 ◆.iJqgYz.1o 2012/02/03(金) 11:01:56.98
【姓】楽
【名】蘭
【字】円爽
【身分】貴族
【官職】----
【容姿】
願えばどんな望みも叶うと謂われる上弦の月を思わせる類い稀な美しさ。
ほっそりと白い肌は闇夜に照り映えんばかりで、黒瞳は意志の強さを表すように煌めいている。
紅い唇は意志の強さを表すようにきゅっと結ばれ、黒い長髪は頭上に高くまとめられている。
323 豊鳶 ◆8pKB2ASrhI 2012/02/03(金) 20:27:36.18
>>321
ガラガラガラガラガラガラガラガラ……
(暁闇にけぶる霧の中を二頭引きの馬車がやって来ると、楽蘭の脇で止まった)
お嬢さん、どこへいらっしゃる?
この辺は夜盗なども出没して危ないですぞ、金はいらんからわしの馬車に乗りなはれ。
【姓】豊
【名】鳶
【字】----
【身分】馬運車乗り
【官職】----
【容姿】
髪はまばらに禿げ、眉は八の字、眼はタレ目で鼻は上を向き、大きな出っ歯の貧相な男であるが、
声は一流俳優のように麗しい。
謎の多い男である。
- 11 :
- キモイスレだな。
- 12 :
- いい加減にしろよ、少しは>>1を見守ってやれ
つまらないスレになったら、そのときは心ゆくまで荒らせばいいだろ
- 13 :
- 糞アンジェの実態
51 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:34:06
通報の言葉にびびったコピペ埋め荒らしのアンジェ先生が完全に沈黙したww
52 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:38:24
偽学習院の誠也=アンジェ
53 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:43:55
なんか学習院に幻想抱いてる奴いるけど、
学習院なんてアンジェレベルの奴ゴロゴロいるぜ?
あそこは歪んだエリート意識の塊しかいない
54 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:45:35
蛆虫アンジェのほんみよう
高岡 誠也
55 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:47:57
歪んだナルシストで嫉妬深く何でも一番でないと許せないのが糞アンジェ
56 :無名武将@お腹せっぷく:2011/01/18(火) 20:52:39
誠也君=アンジェ
http://pr.cgiboy.com/11744436
- 14 :
- ──岳陽 岳州刺史、諸葛休民は語る。
青天の霹靂。その日は格別に機嫌が良かったね。なぜって、交渉を続けていた郎州刺史が折れたからさ。
郎州っていうのは、洞庭湖を挟んで対岸にある州だ。
陛下! 陛下の味方はこの岳州だけじゃなかった!
陛下はどこにいらっしゃる。せっかくの良い知らせが冷めてしまいますぞ!
散々探し回って、まあいいか、明日にしよう、今はメシにしようと飯店に入ったら、
探してたご当人がそこにいなさった。駆けずり回った私の努力を嘲笑うように。
やや、漁父と賭け事ですかな?
陛下は離れたところにぽつんと立ってる私に気付くと、一緒にいる男達に言われた。
「刺史殿の用事じゃ、仕方ない。そろそろ朕は失礼するよ。」
「こら、勝ち逃げたぁずるいですよ!」「まだ勝負はこれからだ!」
立ち上がり拳を振り上げ叫ぶ男たちに、ひらひらと手を振って
陛下は私とともに店を出られた。
「賭け事はもうよろしいんですか」と聞くと、
ほっと胸を下ろされたように笑って、
「丁度良い所に来てくれた。ほどほどにしないと、尻の毛まで抜くような連中だからね」と答える。
天子を脅す漁民もあるまいが……。
「もう、君山へ帰ろうと思ってた。用があるなら、一緒にくるか」
一つの小舟で君山へ向かう。私が漕いで、陛下は目を閉じて水の音を聞かれていた。
陛下は、私たちとは住む世界も見ている世界も違うんじゃないだろうか。
こんなにも下々との距離が近い陛下に、私は時々途方もない距離を感じる。
陛下の家で、二人でお茶を。
「月の青い夜に、庭景色を眺めて、陛下に淹れていただいたお茶を飲む。格別です。」
「よろこんでもらえてよかったよ。琴も聞いていくか」
はい。
声を震わせて言ったね。琴を聞かせてくれる。「知音」の仲と認めてくださったんだ。
陛下はあの時何を考えてらしたんだろうな。
私は、音色を聞いてたら熱いものがこみ上げてきて。
気付いたら大泣きしてた。
綺麗な音色と大の男のむせび泣きが響いてたってわけだ。
「陛下、郎州刺史が、折れました。自ら使者となって来て、今宿舎に泊まってます!大きな一歩ですよ!」
感極まって吐き出した。
「よくやってくれた。本当に大きな一歩だ」
「でも、どうしてでしょうね。岳州刺史の奴、ずいぶん渋ってたんですよ!」
「休民のお手柄さ。本当によくやってくれた」
「違う! 違うんです陛下。本当に、ずいぶん渋ってたのが、なんで急に……。
陛下。何でそんなに平然としてらっしゃるんです。陛下はこうなるってわかってたんですか。
だったら教えてください。陛下!」
陛下は息をほうと吐いて、語り始めた。
「そうだねえ。休民には話してもいいだろう。あれは月かげ暗く、あるはずもない花だけが白く浮かび、
軽やかな霧が浮かぶ夜だった……」
- 15 :
- ──呉皇帝、白牡丹は語る
食事の時間だよ、景栄。今日も生魚だよ。お前、猫の身体になってしまったものなあ。
そろそろ人間の姿に戻ってみるか? 姚朝欽に頼んでやろうか。
お前も、「こっち側」に来てしまったなあ。
人の作った仕組みしか見ようとしなかったお前だ。
今、どんな気持ちなんだ?
朕は、生まれた時から「こっち」にいるんだぞ。
昔から、気をつけていないと、いつの間にかまわりに人でないものがまじっている。
どうやら朕が引きつけているらしい。
「親がなくてかわいそうになあ。わしらと仲間になろう」
そっちの方が、人より話がわかったりするんだけどね。
宮中の書庫は魑魅魍魎の巣だし、人の数より精霊とか妖怪の数の方が多いくらいなのに、
それが他の人には全然見えないのはおかしかった。
そもそも宮中は出世欲、物欲……そんな人間の煩悩の匂いに引き寄せられて、
いろんなモノがたくさん集まってくるんだ。
岳陽に来てからは、宮廷なんてものを建てないでいるから空気が綺麗だ。
でも、例えば不特定多数の人が集まる飯店では……
「おい若僧、ただ勝負をしてもつまらない。何か賭けようじゃないか。
どうだ? お前はお前自身を賭けろ。その代わり、わしらは何かお前の欲しいものを賭けようじゃないか」
「それは勘弁してくれ。朕の命は国の用をしなきゃならないんだ。せめて右目だけで許してくれ」
「よし、人間の身で『こちら側』を見ることのできるお前の目だ。他の人間のとはひと味違うであろう。
それでお前の望みは何だ?」……
『こいつら』も、他の客には漁父にしか見えてないんだろうな。
早いとこ口実を見つけて抜け出さないと、面倒なことになるな……。
そう思っていたら、州刺史の諸葛休民が店に入ってきた。渡りに舟ってやつだね。
「刺史殿の用事じゃ、仕方ない。そろそろ朕は失礼するよ。」
そう言うと、怪物どもは「まさかこのまま勝ち逃げする気ではないだろうな」
「もうひと勝負! 今度は黄金の亀を賭けるぞ」などと凄んでくる。
冗談じゃない。もう、この店には来ないぞ。
諸葛休民、朕の苦手な政治を朕に代わってよくやってくれている。
話があるなら、家でゆっくり聞こう。
お茶を淹れる。最近、上達してきたと思う。どんな味を出すか、
思い描いた味を意図して出せるようになってきた。
それから、琴も。
今日はいい夜で、いい気分だ。気分が琴の音色に乗って、夜空へ吸い込まれてゆく。
休民、何、泣いてるんだ。
「陛下、郎州刺史が、折れました。自ら使者となって来て、今宿舎に泊まってます!大きな一歩ですよ!」
「あの時」の謝礼、本当に果たされたのか。でも、今まで頑張ってきた休民の手柄であることに違いはない。
何、それじゃ満足しないのか? 独力で果たしたことだとは思えないのか? 教えてくれと?
お前、きっと信じないぞ。それでもいいなら……
「そうだねえ。休民には話してもいいだろう。あれは月かげ暗く、あるはずもない花だけが白く浮かび、
軽やかな霧が浮かぶ夜だった……」
- 16 :
- >>5
勝手なルール作るなアンジェ
お前自身はアンジェと公言して他の奴がダメな訳を説明しろ
- 17 :
- >>16
(なぜかというと、
(私の場合は「残念ながら、すでに衆知の事実になってしまっているから」です
(衆知の事実になっている、というのは不幸なことです
(デメリットしかありません
(スレの外でレスを催促される、スレの中でまで外での話を空気読まずにしてくる人がいる、
(中の人を見て絡むか絡まないか決められてしまう……
(経験が少なかった数年前の、取り返しのつかない失敗を
(今どれだけ後悔しても追いつきません
(これから参加される方には、私と同じ大変な思いはして欲しくないんです。
(中の人なんか意識せず、意識させず、のびのびと参加してほしいんです。
(縛り付けているわけではありません)
- 18 :
- (それに、私だって、これから先、
ここ以外のスレでコテを名乗って書き込みをするつもりはもうないんです)
- 19 :
- >>17
ならそのコテとトリップを外せよ
そうしたらどんなに似てると思っても確信は持てない、嵐もな
荒らされたくなかったらコテとトリップを一新するべきだ
- 20 :
- (「夜闌スレ」をやりたいのです。この話はここまでで。)
- 21 :
- >>18
アホジエは嘘つきだからすぐに三戦に書き込むだろうな
- 22 :
- >>19
もう遅い
初めから白牡丹 ◆Enju.swKJUのコテを使わなければ
無駄なレスが付かずに済んだのに
>>5のルールに説得力がなくなるのも当然
これはクマッタにも同じことが言えるんだがな
- 23 :
- アンジェ馬鹿すぎ
- 24 :
- なんで君らは暗示エの妨害をするんだ?
ほっといてやれよ
- 25 :
- ネタを書く才能がない奴がアンジェに嫉妬してるんだろうな
- 26 :
-
- 27 :
- アンジェ得意の自演擁護が始まったな
- 28 :
- 参加者は来ないのか
- 29 :
- 今宵は魚が…釣れんな。
(酒の無くなった徳利を草むらに軽く放り、香草をしゃりしゃりと噛む。)
- 30 :
- アンジェの今日の書き込み時間
1時
4時
11時
アンジェは引きこもり
- 31 :
- アンジェは夜勤
- 32 :
- >>29
(夜水魚の背後、草ずれの音は大きい)
(音の広がりは、茂みの中に動くものが一本の酒瓶だけではないことを示していた)
(一人、二人、三人、草むらの中から現れる人影)
(その内の一人が合図を鳴らすと、黒々とした塊となって岳州の守兵が集合した)
「動くな。州府まで同行してもらおうか」
(月影にぎらりと光る剣を首元に押しつけて、重々しく命じる巡邏の兵士)
(広陵では、白牡丹を逐った保守派の臣僚がすでに政権を固め
生存の噂の立った廃帝の捜索に乗り出しているという)
(深更に、酒瓶を片手に、夜釣りをする男)
(満身怪しさで出来ている。疑ってくれと言わんばかりだ)
(巡邏が密偵の疑いをかけたのも道理である)
(夜水魚は即座に縄を打たれ、州府まで連行されてしまった)
「さて、己の立場は分かっておるな」
「わしはこれから貴様に幾つかの質問をせねばならん」
「嘘偽りを申せば、(すらりと剣を抜き)貴様の首と胴が永遠に離れることとなる」
「貴様は何者だ」
「姓名と本籍、就業の有無、そして今宵あの場に居た理由を聞かせてもらおう」
(尋問の兵は夜水魚をじろりと見下ろし一挙一投足を観察した)
- 33 :
- >>32
アンジェ、おしごとないの?
- 34 :
- >>32
(何だ?この夜更けに…何だ何だ?)
誰だ、てめえら!あッ、俺の徳利を蹴り飛ばしやがった!踏み潰しやがった!
高ぇんだぞ、それ!弁償しやがれっ!
「動くな。州府まで同行してもらおうか」
クソッ・・・!
(刃物を出すのは後にするか、今じゃ分が悪ぃ。何しろ人数が多すぎる。それにしても、こいつら・・・)
お、お役人さむぁ〜〜!
ちょっと生意気な態度を取っちまったけど俺ぁ気の弱い優男でさぁ。
どうかお許し下せぇ〜〜!
{夜水魚は誇りを捨てて土下座した、が無駄だった}
畜生、おぼ・・・チッ今は止めとくか。優秀な狼犬は、無駄吠えをしないもんだぜ。
∞∞そして州府へ∞∞∞
(クソ野郎。扱いが手荒いぜ。ったくよう、お手製の竿は折られるわ、びくは放置されるわ・・・覚えてろよ?)
「貴様は何者だ」
「姓名と本籍・・・聞かせてもらおう」
(ここは致し方ない。半分ばらそう)
あぁ、俺の姓名ですかい?羅刹那と申しやす。本籍は旦那方に捕まった川の下流にある、とある村でやす。
まさか、その村に夜討ちを掛けて焼き払う、なんてのはなしですぜ?
就業は、農業ですぜ。米や麦を作ってやす。あとは干し柿なども。梨の旨さは絶品ですな。
何故あんな時間にあんなとこに居たか、ですかい?翌朝の食事の材料を探して、釣糸を垂れていたんでさぁ。
朝方は寒いからねぇ!
(あそこ(桃里村)が俺のような忍者の巣窟だってこたぁ、知らないほうが身の為ってもんだぜw)
{飄々とした様子で夜水魚こと羅刹那は喋り、息を深く吸いつつ左の耳の穴に小指を入れた。
目線は敢えて役人に合わせていないが、役人の視線は痛いほどに感じ取っていた}
- 35 :
- アンジェの昨日の書き込み時間
1時
4時
11時
19時
アンジェはニート決定
- 36 :
- ──君山、月かげ暗く、あるはずもない花のみが白く浮かび、
軽やかな霧が浮かぶ夜
暗呑とした雲は去ってしまえ。
─雲の海が千々に細切れ霧消し、はるか天の高みから銀河が落ち来る
九天の瀑布、飛流直下三千尺。
いい案配に晴れてきた。これなら霧も白や銀を映して綺麗に見えるね。
ところでいらっしゃい。良い時に来たね。
「ごめんください。突然では失礼とは思ったのですが」
構いませんよ。ところであなたは人ではありませんね。
私でお役に立てますかどうか。ところであなたが胸に抱いてらっしゃる人魂はなんです。
ずいぶん傷ついて見えますね。
「これは私の子どもです。病気で、私にはどうすることもできないのです。
それで」
それで私のところに来たのですね。まあちょっと見せてください。
なるほど立派な人魂だ。しかし死んで随分と時が経っていますね。
人の魂魄のうち、魂の部分がこれほど長く俗世にとどまるのはよくないことなのですが。
「いいえ、いいえ、これは私の子どもです。どうかお願いします。助けて」
……何とかしてみましょう。ただし、お子さんはお預かりすることになりますよ。
「わかりました。七日後にまた参ります。」
─傷つき悶える魂を離すと、ふわりふわりと漂いながら飛んでいく。
その後を追ってあぜ道を越えていくと、目の前に大きな水の流れが現れた
君山に川はない。人の道を通ってこなかったのなら、ここがどこか、わかったもんじゃないな。
魂は相変わらずふわりふわりと、川の上をすべり飛んでゆく。
あれを泳いで追うのは難しいな。
「おーい、おーい、陛下、こっちですよ。もう競争が始まっちまいますよ。」
─川岸に船首に龍をしつらえた舟が何艘も連ね、岳州の男たちが回りを賑わせている。
月明かりしかないのに、男たちの表情や顔の皺までも判別できた。
ちょうど良い。乗せてもらおうか。
龍舟に乗って激流を下る。なあんだ。それじゃあ、ここがどこかわかった。
屈原が身を投げた汨水だろう。
ふわりふわりと飛ぶ人魂が、汨水の中に飛び込むと、白牡丹も続いて飛び込み後を追う。
水底は暗く、水底は黒い。
その中に一点のほの明るい場所。
そこをめがけて歩いていくと、一人の男がうずくまっていた。
白牡丹は、男から二、三歩離れたところで立ち止まり、背中ごしに声をかけた。
「もし、あなたは三閭太夫殿ではありませんか」
- 37 :
- ──昔、屈原が放逐された。河べにやってきて、詩を口ずさんでいた。
憔悴しきった顔だちで、体は枯れ木のようだった。
そのとき一人の漁人が尋ねた。
「子は三閭大夫にあらずや」と。
かつてと同じ言葉を聞き、屈原は顔を上げてその目が白牡丹をとらえた。
「そこもとは何者だ。なぜここに来た」
「なぜここに来たかですって? 大夫殿の言う『ここ』とはどこです。この暗い水の底ですか。
それなら、私は貴方を救いに来たのだ。それともこの荊楚の地をいうのなら、
元いた場所を放たれてきたのです」
「何をもって放たれたのだ」
「『世の中すべてが濁っている中で、私独りだけがただ澄んでいる。
人々すべて酔っている中で、私独りが醒めている。それゆえ放たれた』のです」
「それは小生の言葉ではないか。ではそこもとも入水したか」
「私は生きております。ゆえに貴方を救いに来たと申しました。
私には、廃されたとて、他郷に身を寄せてもせずにはいられないことがあります。
どうして魚の餌食になどなれましょう」
「若僧、小生にそこもとの話を聞かせてくれ。水の下では人と語り合うことも稀であれば」
─白牡丹は自らの生い立ちを、廃された経緯を、今までのことを、すべて語って聞かせた。
水の底では時間はいくらでもあるのだから。
屈原はいった、
「若僧よ、そこもとは異国の帝だ。しかし不思議だ、そこもとの話す声の調子や余情に、
どことなく楚の国の情を感じる。懐かしいことだ。
一つ頼みがある。小生のために謡を聞かせてくれ。そうすれば、もうその感覚さえも忘れた『眠り』を
取り戻せるやもしれん……」
「私の謡でよければ。この場所では琴はありませんか。琴があればさらによいのですが」
そう言うと、屈原は頷いて、岩の下から水琴を取り出した。
白牡丹は手に取り、かき鳴らして歌う。屈原、目を閉じて聞き入っていたが
「どうしてだ。音を聞いていると、胸に熱いものが……」
清水、潺々。
曲が終わる頃、屈原の顔に刻み込まれていた深い憂いはすっかり取り払われ、
永の年月味わうこともなかったであろう晴れ晴れとした心持ちが、浮かんでいた。
「秦も楚ももうない。小生は死んだ。どうせならば、今、小生にできることで
父祖の地である荊楚の役に立ってみようか」
そう言うと、屈原は青い鱗をした一頭の龍に身を変じ、
咆哮一声、たちまち天に昇っていった。
それから数日、荊楚には雨が降り続いたという。
- 38 :
- ──君山、白牡丹と諸葛休民の談話
「そういえば、ありましたな。湖南の広範囲で数日雨が降り続いたことが」
「あのときのことなんだよ」
「(まさか、屈原と会われたなどと、事実ではあるまいが。陛下流の冗談か座興か、
恐れ多いことだが豊かすぎる想像の産物であろうが……)」
「信じないだろう?」
「まさか」
「お茶をもう一杯。それでね、七日後にきっちり河神が来て、事情を話したら望みを言えというから」
「郎州がなびくことをお望みになったわけですな。どうせなら、天下一統をお望みになればよかったのに」
「大きすぎる望みではね。だいいち実現に時間がかかりすぎる。
それに、郎州刺史との交渉に難儀していた君の負担を軽くしてあげたかったしね。
なに、立派な楼閣も一握りの土塊から生まれるものだし、天に届く大樹も小さな種から始まるものだ。
欲張らずにいこうじゃないか」
白牡丹は、そのまま眠りの海に落ちた。
諸葛休民は眠ってしまった白牡丹を寝台に運ぶと、一礼して岳陽に戻る。
─翌日、岳州州府で白牡丹と諸葛休民、郎州刺史が会見する
「陛下には息災でござろうか。遅参の程は申し訳ござらぬ。郎州常徳は武陵蛮との境なれば、
その対処に目を回しておりましてな」
諸葛休民が発言する。
「武陵蛮ですか。何とか関係を改善し、こちらに引き込めれば心強い戦力になりましょうがね」
「関係の改善!こちらに引き込むですと! 岳州刺史殿の言葉とも思われぬ。
大呉の皇帝が蛮族の力を借りたとあっては……」
「必要なことです。彼らを根絶やしになどできるはずもないし、抑圧すれば軋轢は深まるばかりですぞ。
こちらから腰を低うし、彼らの尊厳を慮り、またお互いの境を明らかにすることこそ彼らを引き込む決め手になりましょう」
白牡丹も同意する。
「朕もそう思うね。虚礼は意味のないことだよ。だいたい、さまざまな人種、民族が混然としている状況こそ、
天が作った自然の状態だ。それを画一化、序列化しようとしたのは儒でしかない。
今、西はチベット、インド、ペルシア、ローマからも移り住む者が多い世の中だ。
旧い華夷思想は時代に合っていない」
「それでは次の目標は……」
「ああ、武陵源の彼らと渡りをつけることだ」
- 39 :
- >>34
(尋問の兵は夜水魚から視線を逸らさず、剣の柄を指で弄びながら言う)
「羅刹那。汨水の下流にある村の出とな。その村の名前は何だ?」
「言ったからとて、岳州の官兵が自州内の村を襲撃などせん。余計な警戒はするでない」
「貴様自身は農民で、あの場にいたのは食料の調達のためなのだな」
「これらの品は間違いなく貴様のものか」
(兵は割れた徳利、折れた竿、拾わせたびくを示す)
「成る程、言うことを信じてやることはできる。だが」
「動くでない(羅刹那が左の耳の穴に小指を入れた、それだけの動作をも見咎め剣を突きつけた)」
そこへ、州刺史諸葛長民が入ってくる。
今し方まで寝ていたとみえて、寝癖を急ごしらえで押さえつけて冠を被ったのがわかった。
「彼がそうか? (羅刹那に向き直って)いやー、驚かせてすまなかったね。」
「ただ過分に見えても州の安全のためだ。兵達を怒らないでやってくれ。」
「そこの道具も、君の無実が証明されればきちんと弁償してあげられるよ。」
(威圧的な兵と比べて、諸葛長民は四角ばらない、くだけた印象だ)
「羅刹那君が村の名前を言ってくれれば、村から身元を証明してくれる人を探せるだろう?」
「それまではここに留まってもらうが、まあ、君の無実はすぐに証明されるだろう」
「そうだな、村に行ったら誰を探せばいい。」
「誰だったら君のことを知っているかな?」
「(本当は、こういうのは性に合わないんだけどねえ)」
「(陛下が廃されたこと自体、もう、世の中が乱世に突入してもおかしくない事態だ)」
「(漢末、随末……)」
「(昔の王朝の末期を思えば、嫌な時代に生まれ合わせたものだねえ)」
- 40 :
- >>39訂正
(州刺史の名前は「諸葛休民」です。)
- 41 :
- >>39
{夜水魚は軽く口笛を吹いた。それは不思議に淡く、闇に溶けていった}
村の名前?そんなの聞いてどうすんでえ?って…分かった、分かりやした、分かりやしたよ。
分かりやしたからその刃物は俺の首筋からどけて下さいよ。物騒でならねぇ。
村の名は、桃里でやす。ええ、何の代わり映えもしない農村でやすよ。お役人が気に留める程の村じゃねぇ。
その通り!俺は翌朝の飯のおかずを釣りにあそこで頑張ってたんでさぁ。いや、そりゃ寒かったですが
翌朝に比べれば何てこたぁねぇ。
…ああぁっ!俺の釣り道具!!
(何しやがるんだ、てやんでえ!弁償させるぞコラァ!!)
お役人、これぁ弁償してくれるんでがしょうね?びくはともかく、釣竿なんか真っ二つだ。
この釣竿ぁ、亡くなった裏のじいさんが作ってくれたもんでね、じいさんは名うての釣竿職人だったんだ。
そこらで手に入るもんじゃねえ。
(実は自分で作ったもんなんだが…竿はともかく徳利の代金は帰って来ねえだろう、ここが勝負のし所だぜ!)
(おや…?何か偉そうな奴が入ってきやがった。ぷ…!)
夜水魚は偉そうな男の寝癖と、眠そうにしばたたかれる目に気づき吹き出すのを寸でのところで堪えた。
{偉い男は、柔和な物腰と口調で話しかけて来た}
いや…へぇ…そうですかい……
(何だ、上司のほうが思ったよりも愛想がいいじゃねえか。ちっとばかり拍子抜けしたぜ)
(これなら弁償の交渉もうまくいきそうだ)
いや、村の名前はもうそちらのお役人に言ってありましてね。そちらからお聞き下さればありがてえ。
身元保証人ですかい…
(村長、スマン!この前も金を借りたばっかりなのに…)
そうですね…村の北東の一角に、柿の木に囲まれた藁葺き屋根があるんでやすけどね。
そちらへ行って頂けるとよいかと。ちなみに俺ぁ、村での通称は夜水魚で通ってやすんでスグ分かると思いやす。
(…あれ?何事か上の空で考えてるように見えるぜ。ま、寝癖をつけたまま来るようなお役人だから仕方ねぇ)
- 42 :
- 【地図】
・大陸全土
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0011.jpg
・中華全土
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0012.jpg
・西域吐蕃
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0013.jpg
・南詔本国
http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0010.jpg
各色及び各勢力につきましては下記の通りです。
【番号】 【群雄名】 【地位】 【治所】
@ 白如月 皇帝 広陵(揚州)
A 白牡丹 廃帝 君山(岳州)
B 白果 燕王 幽州
C 白俊 魯王 魯州(兗州)
D 白直 零陵公 零陵(永州)
E 白勒 襄陽公 襄陽(襄州)
F 白呈春 九江公 九江(江州)
G 卞憙 河東・朔方 大原府
H 朱日昊 浙西節度使 南京(金陵)
I 朱懿材 成都塩鉄使 成都府
J 袁楊豊 弘農太守 弘農(虢州)
K 盧虎康 紅蓮教教祖 漢中(興元府)
L 蒙鐸粲 南詔王 河陽府(蒙舎州)
M 楊昂譚 隴右節度使 鄯州
(敬称略・順不同)
なお、それぞれの領土に関しては下記の通りです。
・皇帝・・・・領土記載が無かった為、国都(広陵)を含む節度使領(淮南節度使領)
・廃帝・・・・記載通り現在の湖南省(湖南観察使領+山南東道・鄂岳・荊南諸州)
・燕王・・・・領土記載が無かった為、燕国(幽州)を含む節度使領(廬龍節度使領)
・魯王・・・・領土記載が無かった為、魯国(兗州)を含む節度使領(兗海観察使領)
・零陵公・・記載通り零陵(永州)+臨賀(賀州)
・襄陽公・・記載通り襄陽(襄州)
・九江公・・領土記載が無かった為、九江(江州)
・卞憙・・・・記載通り河東節度使領+朔方節度使領
・朱日昊・・領土記載が無いものの節度使との事だったので、拠点(南京)を含む
節度使領(浙西節度使領)
・朱懿材・・領土記載が無いものの塩鉄使として成都・益州へ任じられている為、
拠点(成都)を含む節度使領(剣南西川節度使領)
・袁楊豊・・記載通り弘農(虢州)を含む節度使領(陝観察使領)*虢・陝二州のみ
・紅蓮教・・記載通り漢中(興元府)
・楊昂譚・・記載通り隴右節度使領
今回につきましても封地不明の陽王(白嵩)の記載ありません。
また廃帝に関しましては、現状を表す官爵・勢力名が無かった為、便宜的にその様にさせていただきました。
なお、領土が重複する群雄の場合、活動状況に応じて対応させて頂きました。
・劉雷 ・・・幽州牧
・蔡興 ・・・零陵太守
(敬称略・順不同)
何か疑問・質問・訂正等が御座いましたら返信の程宜しくお願い致します。
- 43 :
- 【十五道 割拠表】
・関内道 卞憙(霊州)
・京畿道
・河南道 魯国
・都畿道 袁楊豊(陝州)
・河東道 卞憙
・河北道 燕国
・山南東道 襄陽国(襄州)
・山南西道
・隴右道 楊昂譚
・淮南道 直轄領
・江南東道 朱日昊
・江南西道 廃帝
・黔中道 南詔国
・剣南道 朱懿材
・嶺南道 南詔国
行政区分は開元十五道
原則一州でも領有している場合、領有扱いとしました。
また同じ道内に複数勢力が存在する場合、規模の大きい方を
優先としました。
- 44 :
- ・山南西道 紅蓮教(興元府)
- 45 :
- 暇だわ。
- 46 :
- >>41
─諸葛休民は右の眉毛を上げ、尋問の兵の方を見やって訊く
「本当に? 彼はしゃべったのか?」
─兵は相変わらず剣の柄を指でトントンと叩きながら、目礼して答えた
「はい。桃里村、だとか。すぐに桃里村の戸籍を照会します。
こやつが『桃里村の羅刹那』を殺して名を騙っていることも考えられ、
どのみち身元保証人の召還の必要はありましょう」
「戸籍の方は頼むよ(刺史が命じると、手の空いていた下吏がさっと立ち上がって退室した)」
「さて夜水魚君。君が協力的で我々としては非常に助かるよ。」
「今夜の内に君は釈放されることになるだろうし、私としてもそれを願っているが……」
「誰か、人をやって保証人をお連れしてくれ。」
「ただし、強引に連行するんじゃなく事情を話して同行してもらうようにね」
「待っている間、我々は少し話をしよう」
(夜水魚の表情を見て、これは尋問じゃないよ、ただの雑談だ、と付け加えた)
(そして懐から砂金の大粒を取り出して小卓に置く。身元の確認が取れたら渡すつもりだ)
(これ一つで弁償品が山のように買えるだろう)
「(それを追う夜水魚の目を見ながら)ただし砂金のことも今夜のことも他言無用だ。」
「役人に捕まって物を壊されたら金塊がもらえるなんて、噂が立っては困る」
「無事に釈放されて、もしまた岳陽へ、今度は自分の意思で来ることがあったら、
一度飯店へ行ってみるといい」
「役人と平民が同席して飲んでいる姿が見られるよ」
「ここは役人と平民が肩を組んで暮らせる街なんだ」
「ただし、それは厳罰とたゆまぬ綱紀粛正の上に成り立たせた成果でね」
「役人であろうと、平民であろうと、法を犯せば即刻斬られる」
「人をR者。盗みを働く者。放火をする者。婦女を暴行する者。州の機密を漏洩する者。
みな極刑だ」
「君は今夜の仕打ちに怒っているかもしれないが、そうしなければ岳陽、いや州全体で
良民が安心して暮らせないんだ」
「君の村の話も聞きたい」
「桃里村のことを、私に聴かせてくれ」
──深夜、桃里村、三十人の巡邏隊が村の入り口に到着する
隊長の武官が呟く
「おかしな村だ。静かだというのに、どこか落ち着かん」
「松明を燃やせ、我らの出で立ちと素性を明らかにせよ」
(三十本の松明に火が点される)
(辺りは昼日中のように明るくなり、その中に甲冑と剣を帯びた岳州兵の姿が浮かび上がった)
「村の北東と申しておったな」
「隊伍を崩さず行進せい」
(静寂の中に、兵達の揃った靴音のみが響く)
─村長宅
「夜分失礼する。岳州の者だが」
「この村の夜水魚なる住人に覚えはあるか。斯く斯くの事情があり、その者を州府に拘束しておる」
「夜水魚によれば足下が身元保証人とのことなれば、こうして参った次第じゃ」
「足労をかけるが、出頭していただきたい」
- 47 :
- >>42
(お帰りなさいませ!
(また、今回も勢力図を作成していただき、ありがとうございます。
(再開した夜闌スレでもよろしくお願い致します。
(白牡丹に関しては、現在、地図の領域を獲得するまでに至る経緯を書いております。
(長いプロローグになってしまっていますが、できるだけ迅速にそれを終えたいところです。
(官爵・勢力名は、地図の領域を獲得した段階で復位を全国に公表し
呉皇帝を名乗ろうと思っています。
如月、牡丹とも呉ですが、まあ、区別はつくので不都合はないと思います。
(質問というか、ご相談ですが、地図の領域を獲得した段階で、
どのくらい兵士を動員できるのか、もしわかるようでしたら教えていただきたいのです。
- 48 :
- >>47
いえいえ遅れてすいません。
時間もありませんでしたが、何より久し振りでコツをつかむまで時間が掛かりました。
まぁ、プロローグに関しましては、どうして二朝分立になったか、という根幹部分の
描写になりますし、時間をかけてもじっくりとしたものを作り上げて投下した方が良い
かと思います。
勿論、最終的な段階において、その状況に応じた勢力図をまた作りますしね。
なお、兵力等に関しましては、手元に資料がない為、申し上げる事は出来ません。
それぞれ数万程度は兵力を保有していたと思いますが、安史の乱で十節度使の
内、平盧・范陽・河東の三鎮を兼ねた安禄山ですら18万ですから、かなりの藩鎮
を兼務しない限り十万を越える事はないかと思います。
なお、黄巣(大斉)軍と藩鎮連合軍との戦いでは、黄巣軍15万との事ですから、
実際のところ徴発や志願状況というのもあると思われます。
- 49 :
- >>48
お忙しい中、本当にありがとうございます。
私も書きながら感覚を取り戻している状態です。
プロローグで、おっしゃるような根幹部分と、白牡丹(個人・政権とも)の性質を示せればいいなと思っています。
兵力のこと、承知しました。
では、兵力は各自が任意に設定することにして、
>十節度使の内、平盧・范陽・河東の三鎮を兼ねた安禄山ですら18万
という事実をだいたいの目安にするのがいいかもしれませんね。
黄巣軍は大兵力を食わせるために略奪→移動もしていたと思いますし、
「安定して維持できる兵力」を考えれば、安禄山のほうで考えたほうがいいですよね。
- 50 :
- >>49
厳密にいいますと、三鎮を兼務した安禄山の公的な兵力、ですね。
ですから、安禄山が独自徴兵したものではなく、朝廷により設置された節度使
の固定兵力の合計という形です。
即ち、朝廷が平時に常備するものとして決めた兵力ですので、実際の所上限
からははるかに低いものと思われます。
同様に、乱において安禄山が実際に一度の戦役に動員した兵力はわかりかね
ますので、やはり上限兵力としてはわからないです。
なお、黄巣軍は藩鎮連合との戦いの後瓦解していきますが、15万の兵力を集
めた戦いの時には既に朱温が離脱している状況のようなので、最大兵力ではな
いと思われます。
ただし、黄巣軍に限らず藩鎮等の反乱を除いて、この時期の反乱の多くは流賊
的なものですから、兵力面では一般的な維持可能兵力以上のものという点は
確実かと思います。
なお、陽州という州がありますが、この地を陽王の封国としますか?
- 51 :
- >>50
なるほど……
では、「一人勝ちにならない程度に任意で」ぐらいにしておきましょう。
戦争も扱いは他と同じ、ネタの範囲内ですから、
書き手同士が協力して面白くすることを目指せばいいです。
勝つことに躍起になりすぎないように。
陽州という州があるなら、陽王はそこに封じましょう。
ありがとうございます。
- 52 :
- >>51
あの規模なら10〜15万でいいんじゃないでしょうかね?
一人勝ちも何もみな合わせて兵力を蓄えるでしょうから、全体として大きくなり
過ぎないようにすれば宜しいかと思います。
まぁ、逆に二州、三州程度の小規模な藩鎮の方は兼務を比較的緩くしてあ
げるのも一つでしょうし。
陽州は隋代以前に廃止されておりますので、その故地に封じるという形をとり
ますね。
一応、国号は陽(陽国・陽王国)としますか、それともその地域に合わせた国号
にしますか?
- 53 :
- >>52
ありがとうございます。
「全体として大きくなり過ぎないように」ということ、
小勢力の方への配慮も、どちらも大切ですね。
用意していただいた地図は山川や湖も記載してあって、
調べれば地形もある程度はわかるでしょうし、
状況に応じて寡兵で大軍を退けたりなど、いろいろできそうです。
陽のこと、承知しました。
国号は陽にしましょう。仮想スレですし、ログに陽王とあるのを尊重して。
北京も燕国があるから「燕京」という名前にしていますし、
地名は個々の判断で唐代のものから変えてしまっていいと思います。
- 54 :
- http://kowloon.ddo.jp/cgi/up/10MB/src/up0014.jpg
とりあえず作りました。
・@〜C 据え置き
・D 陽王領
・E〜L 各勢力ごと一つずつ繰り下げ
・M 据え置き
・N 南詔
となります。
また、陽王に関しましては下記の通りです。
【番号】 【群雄名】 【地位】 【治所】
D 白嵩 陽王 河南府
・陽王・・・・領土記載が無かった為、陽州(洛州)を含む節度使領(都畿道防御使)
なお、備考となりますが、陽州は東魏により設置され、北周により熊州へと改称し、隋代に
廃止され洛州へ移管(統合)され、唐代において洛州が河南府となり、都畿道防御使が
置かれました。
なお、この地域の特有ないし縁のある諸侯国と呼べるものがない為、陽王から変更するの
であれば周王あたりが一番かと思います。
因みに、領域の一部である澠池県は三門峡市に所属し、三門峡市は陝州州域ですが、
処理が面倒な為、陽国に編入しております
- 55 :
- おっと書いている間に投稿がありましたようで失礼致しました。
それでは陽国としますね
- 56 :
- なお、備考といえば備考になりますが、地図上の
@〜Aがスレ主さん
B〜Dが実質的に不在(NPC的存在)
となります。
まぁ、@〜Aに関しては両朝となりますので活動があるでしょうが、B〜D
に関しましては、家臣団が活発な燕国(B)を除けば、実質的には子息が
活動している(=故郷・一族の地)程度なので、今後の状況次第において
は考えたほうが良いかもしれません。
まぁ、勿論、現状ではまだ半数程度の藩鎮が空白ですので問題はありませ
んが。
- 57 :
- >>54-56
前の地図といい、今回の地図といい、遅くまでお手数をおかけしました。
ありがとうございます。
こうしてみると、データの上ではスカスカじゃなくて
ちゃんと勢力(=ネタの材料)があるんですね。
如月側の官僚たちや、白如月自身など、参加してくださるといいです。
両朝の動きはともにほしいですから。
引き続き、参加募集中でございます。
- 58 :
- ──君山、白牡丹の庭で
やあ、景栄。椅子と木卓を並べていたんだよ。
これからお客さんが来るんだ。お前も知ってる岳、郎の刺史がね。
ここに居たければ居ていいよ。二人とも、門下侍郎がこんな姿をしてるとは思わないだろうねえ。
宦官のお前に言うのは悪いが、やっぱり自分の世話も客の世話も、自分一人でする方が前よりずっといいよ。
ああ、来たみたいだね。諸葛休民、黄加陳。
「「 臣在。 」」
休民、ここへ。加陳もここへ。
(二人は設えられたばかりの席に座った。言葉も礼も簡潔で、やっぱり前よりずっといい、と白牡丹は思った)
それで?
「陛下、武陵源平定の計略を協議しましてね。お耳に入れたいと」
いいよ。お茶を飲みながら聴くよ。
(茶釜の湯がこぽこぽと、小気味の良い音を立てて沸いている。立つ湯気の影も面白い)
(小さく清い水流は、青磁の茶杯を温める)
(お茶を淹れると香り風のよう、白い玉の指を器に絡め、目を閉じて香りを聞き、薄緑の宝石を腹へと流し込む)
どうぞ。
「頂戴します」
うまいか?
「いつもながら驚嘆します。陛下と臣では何が違うのか。まこと好茶で」
そう思うのは、この場で放心できている証拠さ。良いことだ。
それで、武陵をどうすればいいのかな?
「武陵源は、急峻な山脈、奇岩が連立し、翠樹、白雲がおびただしい秘境。
兵を用いるには不利でございます」
当然だ。あそこは天境だよ。兵を入れたり、木を切り倒したり、山を削ったり、そういうのはだめだ。
「そこで我々は、土地よりも人の心を攻むるべきだと判断しました。
かしこには、大小併せて数多の蛮族の部族、それぞれ習俗も異なり、離合集散を繰り返しております。
彼らのそれぞれに天朝への帰順を説き、貢献の多き部族には高き位を授けます。
彼らの統治には口を挟まず、貢納・兵役とその見返りを仲立ちにした関係を築けば、
混乱もなく強力な戦力を得ることにもなりましょう。…陛下。陛下……?」
(白牡丹は瞼を閉じ、青磁の杯を鼻に寄せ、精神を香りの王国に旅立たせているように見えた)
「陛下。お聞きくださいましたか、臣らの策を?」
聴いたとも。配慮が行き届いていてよかったよ。君たちの策は、茶香の邪魔をしなかった。
ただ彼らを蛮族だのと呼ぶのはやめてくれ。呼ぶなら、帝室白氏もそう呼ぶがいい。
策については問題ない。運用……まあ外交だね。それは加陳に任せる。
今まで彼らと隣り合ってきて、知ってることも多いだろうから。
それから一つ補足するが、朕は武陵源諸藩に足を運びたいね。
「「 なりません! 」」
(両刺史が同時に叫んだ)
- 59 :
- ――暇だ。
華蘭は外の光を見るともなく眺めた。
皇帝のいなくなった宮廷のなか。
妃候補であった彼女は、皇帝白牡丹をたらしこむための術を養父から教え込まれて育った。
華家の栄達を一手に担う為に――
だが今、皇帝の姿は奥宮はおろか宮廷にもない。
蘭は煙管を口から放し、ふうと息を吐いた。
白い煙は、龍のかたちになって笑い声を上げながら天に上っていった。
雲と同化しに行くのだろう。
…何故こんな事が出来るのか?
蘭は、実は華家の養女だった。
華蘭とは別な名を名乗っていた…そう、松の木の精だったのだ。
「人間稼業も辛いねぇ…。相手と契る前に未亡人とは、こんなに大量な娘がね」
- 60 :
- 呉皇室にはレビラト婚(寡婦が死亡した夫の兄弟と結婚する習慣)がある
白牡丹は父叡宗の側室をずっと後宮に置いたし、白如月も白牡丹の子を孕んだ薛氏を皇后に立てた
呉後宮に「未亡人」は存在しない
白如月に嫌われたとかでなければ
- 61 :
- >>60
そうかい、ありがとさん。じゃあ一部書き直しだね。せっかくだから加筆するよ。
――暇だ。
華蘭は外の光を見るともなく眺めた。
皇帝のいなくなった宮廷のなか。
妃候補であった彼女は、皇帝白牡丹をたらしこむための術を養父から教え込まれて育った。
華家の栄達を一手に担う為に――
だが今、皇帝の姿は奥宮はおろか宮廷にもない。
蘭は煙管を口から放し、ふうと息を吐いた。
白い煙は、龍のかたちになって笑い声を上げながら天に上っていった。
雲と同化しに行くのだろう。
…何故こんな事が出来るのか?
蘭は、実は華家の養女だった。
華蘭とは別な名を名乗っていた…そう、松の木の精だったのだ。
「人間稼業も大変だねぇ…。前皇帝と契る前に鞍替えせざるを得ないとは、こんなに大量な娘がね」
白牡丹の趣味に合わせて習い事をしていた娘が殆どだろう。自分もその一人だ。
「あぁ…」
養父の勤言実直そうな顔と、それとは裏腹な傲慢で欲深な素顔が、腕で隠した瞼の裏に浮かぶ。
「消えて…消えなって言ってんだよ……」
養父から送られて来た白如月の趣味嗜好が書かれた帳面を床に放り出し、ため息を長く吐く。
養父に、言うことを聞かねば一族みな殺しにするぞと松林の前で凄まれた、思い出したくもない情景が今度は
よぎり、華蘭は起きて首を振ると気分転換に明るい日差しの差し込む窓へ向かった。
- 62 :
- >>61
何度も済まないね。とんだケアレスミスさ。
>皇帝のいなくなった→白牡丹のいなくなった
>皇帝白牡丹をたらしこむため→前皇帝白牡丹をたらしこむため
>だが今、皇帝の姿は→だが今、白牡丹の姿は
- 63 :
- 「なりません?」 何故だめなんだ? 行けば、もう帰ってこられないとでも?
「危険すぎます。行かせれば帰れぬ恐れのある場所に、行かせることはできません。
陛下は彼らについてあまりにも無知だ。私は郎州に赴任しもう三年。
彼らのことはそれなりにわかっているつもりです。大呉にあっては皇帝でも、彼らは心服しておりません。
もし、山間に包囲されたら何としますか」
(黄加陳は強硬に反対するが、白牡丹も負けてはいない)
包囲されて襲撃されるのは、何も山間に限らない!
寡人は広陵の宮中で殺されかけたんだよ。
いいか、武陵は天境の地だ。まだ人よりも、神精の影響力の方が強いんだ。
武陵源を心服させるのは、神に心服されることでもある。
寡人以上にそれが出来る奴がいるか?
諸藩にしても、いきなり威張り散らしでもしなければ、話し合う余地はあるはずだ。
(黄加陳と諸葛休民は、かわるがわる白牡丹を翻意させようとしたが、
白牡丹は一向に折れない。日が高くなった頃、黄加陳が言った)
「陛下がそこまでの決意をされているなら、私はお止めしません。
ただしお一人で行かせるわけにはいきませんな」
(諸葛休民はなお食い下がる)
「私はまだ納得しておりません! やはり危険すぎます!
巡遊は、彼の地が平定されてからでも遅くはありません。断じて陛下を武陵源へなどやれません。
たとい日が西から昇ったとしても!
君山を州兵で閉鎖してでも、出しませんぞ。そのことで私を不忠者と呼ぶなら、お呼びなさい!」
(この忠臣は立ち上がり、今や顔を真っ赤にして息を荒げていた)
(白牡丹と諸葛休民は互いの目を見たまま立ち尽くしていた)
(どちらも動かなかった。春の陽気の中、時が止まったようだった)
(先に座ったのは、白牡丹だった)
わかった、休民。お前を不忠者だとは呼べないよ。
今日はここまでにしよう。良い知らせを待っている。
(諸葛休民、黄加陳は一礼して帰っていった)
(諸葛休民の方は、白牡丹が武陵源行きを諦めていないことを恐れ、人をやって君山を監視させることにした)
─君山、白牡丹は語る
承知してもらえないとは思っていたさ。でも、朕は行くけどね。
持つべきものは良い友だ。朕はすぐに同じ君山に住む、姚朝欽を訪ねた。
姚朝欽、字は夜淑のことを紹介しよう。
彼は酒泉出身の道士だ。元来感性が鋭く、想像の内に数百の怪物を心に描き、
彼らを題材に奇怪な小説を書き散らしたため、奇人だと疎まれ孤独な生活を送っていた。
余りに自身の創造物に心を注いだため、それらには魂が宿り随意に使役・変化できるようになってね。
獏をもって人々の夢を渡り歩き、その夢を売り買いしていたが、朕はその得意客だったんだ。
太平君(叡宗の兄)に依頼されて、焦景栄に刺客が放たれた時には、彼を猫の身に変化させて救ってくれたことがある。
訪ねた時、姚朝欽はいつもの調子で「あらこんにちは、霜葉の君!」と朗らかだ。
夜淑、斯く斯く然々で、武陵源へ行きたいんだが、行かせてもらえそうにないんだ。
悪いんだけど、身代わりになってくれないか?
「畏まりました。(彼が右手を頬に当てると、次の瞬間には白牡丹の姿に変じていた)」
「それはそうと、新しい小説が書き上がったんですよ。読んでくださいよ、ねえねえ、青い鱗の龍が主人公の力作なんです」
「絶対おもしろいですよ、長編に見えてもすらすら頭に入ってきますよ、お手間はかけませんから」
わかったわかった、武陵源へ持って行って道中で読むから。早く貸せ。ほら。……夜淑、頼んだよ。
- 64 :
- 白牡丹ファンだが、彼は最初は盛大だが持久力に少々欠けたきらいがある。
今後は十スレとは言わず、五スレは目指して頑張って貰いたい。
ストーリー途中でスレを放棄されて消化不良でモヤモヤしたくないしな。
- 65 :
- ──洞庭湖上、白牡丹
姚朝欽に後を任せた朕は、今、相棒(琴)とともに湖上にいる。
一人旅は久しぶりだ。懐かしい思い出がこみ上げる。
水の上は好きだ。櫂が水中を掻く低く落ち着いた音、舟体に分けられた水しぶきの音、湖面が波立つ音。
水の香り。襟を吹く風の涼しさ。
一漕ぎするたびに、遠ざかっていく岳陽楼。
果てなく広がる空の青。
身の回りの景色が、あまりに広くて、広い空間の中にぽっつりと浮かぶ
すがすがしい孤独に浸る。
良い気持ちだな。
洞庭湖は、ただの円形の湖じゃない。
どこまでいっても広いけれど、その中でも世界がおさまるほど開けている所と、
近くまで緑の森が迫っている所がある。
そういう所に来ると、猿が良い声で鳴いているのが、こだましてくる。
お前も独りなのか?
岳陽からは、もう離れた。もういいだろう。
朕は、猿の哀号に合わせて、腹いっぱいに息をためて口笛を吹いた。
まっすぐ南へ行くと、目の前に険しい岩壁が立ちはだかり、
水はその両脇に分かれている。朕は右の道を選んだ。
水の音、風の音。身体を包む音は、心地よくて。
森を見て、茶畑を見て、人々を見た。
赤ら顔の農夫が耕し、水を運ぶところ。
その娘とおぼしき少女が父親に弁当を渡すところ。
胡服を着た派手な郎君たちが、馬でやってきて駆け去るところ。
ふと、岸辺を見ると、一人の内気そうな少年が座っていた。
目瞬きをすると、もう、少年はいなかった。
朕は、むかしの自分に会った気がした。
朝には澄んだ水が、昼には深い碧に変わって、夕刻になると、どこか愁いを含んでくる。
なんだか人の一生に似ている。
湖の向うから、遠く孤帆の影が現れて、やがて朕の小舟とすれ違い、碧空の彼方に消えていった。
朕も、あの舟のように、ぽっとこの世に現れて、ぽっと消えてゆくのだろう。
今の時代は、己れが何者かもわからず生き残れるような生優しい時代じゃない。
独り、湖の上で自分の心を覗いてみるとき、そこにいるのは何者だろうか。
朕は大鵬だ。風とともに九万里の高さに翔け上がる。
たとい風がやみ、その時に下りてくるとしても、
なお波を蹴立てて前へと進むのだ。
ふいに夕刻の冷たい突風が木々を揺らし、
葉は煽られて中空に舞い上がり、やがて静かに水に落ちた。
しばらく眺めていると、葉はくるくると回りながら、どこへともなく流れていった。
─そうはならない。頭を上げて、舟をこぎ続けた。
鳥の声、獣の声。遠くにこだましていた声は、消えてしまって。
街を見て、行き交う舟を見て、月の出を見た。
夜闌(たけなわ)、世界には、朕と、月と、影ばかり。
会うは喜び、別れは悲しみ、旅は道連れ、行こうじゃないか。
ある朝、朕は最後の水波に押されて、一つの街に着いた。
川と湖にかがやいて、木や花や田園に彩られて、
青や赤の屋根の楼閣の聳え立つ、立派な街。
こここそ郎州の常徳。黄加陳の治所だ。
ここで疲れを癒したら、さらに西へ行こう。
武陵源へ。はてなき天境へ。
- 66 :
- ──郎州常徳、白牡丹
初めて訪れた街を歩くとき、全てが新鮮で特別に見える。
朝の澄んだ光の中を、大勢の人がそれぞれの道へ歩いて行く。
笑顔が多いな、と思った。
雑踏は嫌いだけど、ここは窮屈な感じがしなくて好ましい。
せっかくだから少し歩き回ってみることにした。
川辺から街の中心へ向かって歩いていくと、大きな寺院に行き当たる。
遠目にもそれとわかる立派な門構えは、朝日を浴びてまだ眠そうにまどろんでいた。
中へ入ってみる。中は、時間がゆったりと流れているような気がした。
百年前、五百年前にも、同じ風景、同じ雰囲気だったのではないだろうか。
そう思うと、自分が五百年の時を越え、晋の時代の参拝者の中に紛れ込んでいるような感覚だ。
昔の人も、このように様々な表情、様々な思いでここを訪れたはずだ。
歴史的な場所の魅力には、そこを訪れる人々もまた含まれていると思う。
腹が空いた。寺院の門前の市で、鶏の足を串焼きにしているのを買う。
なかなかうまいじゃないか。この食感は癖になりそうだ。
威勢の良い呼び込みの声の重なり、人のうねり、所狭しと並んだ食べ物や服飾品、装身具。
子供達を相手にした遊戯場も賑わっている。
食べ物の屋台をはしごして、腹も満たされた頃には、
少し人波から抜け出したい気分になっていた。
街の中心部にある茶荘に入る。
人に淹れたり、自分のために淹れることばかりで、淹れてもらうのは久しぶりだった。
広陵にいた時も、お茶は自分で淹れるから、と言って他人にはやらせなかった。
座って、街の眺めや店内の装飾、他の客の談笑などを見ているとき、
どんな風に淹れているのだろうか、と考えたりする。
どこから来たのか、どうして来たのか、お茶の話にも花が咲き、
そうして飲んだお茶は、とても美味かった。
もう、日も高い。そろそろ行かなければ。
もしまた訪れる機会があるなら、今度はもっといろいろなものを見たい。
名残惜しい気持ちにさせる常徳の空気を背中に、馬を乗り継いで武陵源へと向かう。
道中、人の世界は次第に薄れてゆき、自然が色濃くなってくる。
常徳にも自然はあったが、それは人間に支配される自然だ。
太古からそこにあるような自然は、洞庭湖を行くとき左右に見たが、
今度は、そこに身を置くのだ。
もう、すっかり夜になった。
見上げると、銀河が氾濫したのか、と思わせる満点の星空が広がっている。
朕は、たまらなくなって琴をかき鳴らした。
琴は、星の音だと思う。
琴を演奏すると、その音色は星空を再現したものだと思う。
すると、朕は、はるか頭上に星空を戴きながら、
自分の周りにも星空を持っていることになるわけだ。
一つ一つの星が友達になったようで、心強かった。
今、左手に流れている川はレイ水という。
レイ水もまた、長い旅を続けて洞庭湖に流れ注ぐ。
洞庭湖は、いろいろなことを知っていた。
遠く旅してきた川が、いくつも流れ込んでいるからだ。
今、朕はその流れをさかのぼって旅をしているのだ。
川の教えてくれた武陵源を、初めて見に行く。
- 67 :
- ──武陵源
見よ、目に焼き付けよ! 山川詩を詠む者、武陵源を訪れずして、山岳森林を詩に詠うことなかれ!
この景観を、いったいどのような言葉でもって表現しろというのか?
景観だけではない。木々や、岩山や、肌に纏わり付く霧でさえも、生命をもって鼓動しているかのような
この感触を、いったいどうやって伝えろというのか?
自分の住んでいる場所の近くに、こんな世界があったとは!
武陵源は、まるで侵入者を品定めしているようだった。
境界に立ったときからすでに、朕を見張る幾十万、幾百万もの見えない視線を感じていた。
踏み入り、進んでいくと、慎重に息を凝らしてこちらの一挙手一投足をも見逃すまいとする、
木々の緊張が伝わってきた。
風が梢を揺さぶる音や、木の空洞を通る響きは、招かれざる客について仲間内で連絡を取り合う
彼らの声のように感じられた。
木々だけではない。鳥や獣も、全て警戒と敵対心を向けてきていた。
霧がじっとりと身体に張り付き、全身を倦怠感で包んでくる。
耳の奥がじんじんと痛み、これ以上進むなという警告を伝えているのだと思った。
空だけは踏み入る前と同じ青色をしていたが、空を頼るわけにはいかなかった。
何しろ、空に無数に突き刺さっている奇岩は、
明らかに朕を迷わせようとする悪意を持っていると思われたからだ。
僅か歩いた頃には、朕は方向感覚を失っていた。
これは、危ない。本能がそう告げていた。心臓が割れ鐘を打つように早く鼓動する。
まるで、止まる時が目前に迫っているのをわかっているかのように。
この古森は、今までに朕が知るどの自然とも違った。
とても古く、人を寄せ付けず、そして強かった。
死が笑った。
朕は全く独りだった。倦怠感と耳の奥の痛みは強まる一方で、
反対に木々のざわめきや重圧感はより厚みを増して迫ってきた。
朕は、試しに木々と対話することを試みた。
「朕は、大呉皇帝の白牡丹だ。この武陵源に踏み、踏み……」
声が出ない。心臓を見えない手で強く掴まれたように、最後の声は消えゆく掠れ声になってしまった。
朕はその場に座り込んだ。
脚が自分のものではないように感覚が無く、体重を支えていられなくなったのだ。
歌が聞こえる。
低くくぐもった声で、ふむ、ふむ、ふーむ、と重なり合う歌だった。
古い木々が歌っているのに違いなかった。
侵入者を死の眠りに誘う歌。
耳を塞ぐこともできない。壁の亀裂から確実に入り込んでくる洪水の流れのように、
耳に入り込んでくる音色は、かろうじて繋がっていた意識の糸を断ち切ろうとしていた。
ぼやけた視界は、青い空がだんだんと浸食され狭くなっていくのをとらえた。
空が狭くなると同時に、ざわざわと猛る木々の枝が広くなってくる。
侵入者を押し包み、命を奪おうというのだ。
もうだめだ。助けてくれ……
ぼろん。どこか遠くで音が聞こえる。川を隔てたぐらい遠くに。ぼろん。とても心地よい何かが。
ぼろん、ぼろん…… しだいに意識がはっきりしてくる。
意識がはっきりしてくると、音が確かに、近く感じられてくる。
それとともに、悪意を持った木々の歌には霧がかかり、及ぼす影響も小さくなる。
鳴っていたのは、琴だった。持ち主を救おうと、独り鳴った琴だった。
- 68 :
- 朕はよろめきながら起き上がった。一度立てた右膝が崩れた。
両手を地に付き、腹から息を吐いて今度こそ起き上がった。
ぼろん、ぼろん── 傍らで琴はまだ鳴っていた。「風清」、ありがとう。よくやった。
「風清」と呼ばれた琴は、あるたけなわの秋、呉の糸を、蜀の桐に張って作られた。
弾力のある弦に、しなやかな胴体。比類なき名琴と呼ばれた「彼」は、楚王就任の祝いとして、
まだ幼かった白牡丹と巡り会った。
奏者は琴に心を託し、琴は奏者の心を映して鳴る。
奏者と琴の絆の深さは琴の術を学んだ者にとっては周知の事実であり、
奏者が琴を選ぶのではなく、琴が奏者を選ぶのだと考えられてきた。
白牡丹と、彼の名付けた「風清」は、相性がぴたりと合い、
「風清」の忠誠が表す音は天上から朗々と響くように、すべてを音の内に表現したのだ。
朕は風清を手に取り、掻き鳴らした。
ぼろん。その一音は古森を吹き抜ける風となり、あの重い閉塞感を少しずつ洗い流した。
考えるより先に、指が動く。
思いを抱くより先に、音色に情が吹き込まれる。
琴と一体になったように、朕の身体も音色に身を任せて揺れ動く。
もう、絶望はどこにもなかった。最高の演奏をしている。その思いが希望を呼び起こし、
人生で最高の瞬間を味わっているような幸福感をもたらした。
先程、あれほど強く侵入者を苛んでいた古森は、焦燥感を隠せなくなっていた。
枝を四方八方に振り回し、ふむ、ふむ、ふーむと死の重奏を歌ってみるが、
「風清」の音色の中では、本来の威力は望めなかった。
すると、森の奥から何か小さい姿がこちらに近づいてくるのが見えた。
それが近づくにつれ、小さい姿と思ったのは、大蛇が鎌首をもたげて這い寄ってきている姿だとわかった。
朕は不安にかられた。
蛇が言う。
「わしを恐れておるな」
朕は何も言わない。
蛇はちろちろと舌を出し、切れ目を入れたような鼻腔をひくつかせた。
目の奥には妖しい緑色の光がちらちら覗いている。
「わしがおまえに噛みつくのではないかと思っておるな」
朕はまだ何も言わず、琴を奏で続けた。
琴の音は、先程よりも響きが鈍っているように感じられた。
朕は蛇を見て恐れているのだろうか。
木々は一度は引っ込めた嗜虐心を再びもたげて、元気づいて歌っているようだった。
「白牡丹。わしを見て恐れたのは貴様の心の弱さよ。わしの姿は恐ろしいよなあ」
蛇は円を描くように、朕の周りをスルスルと滑る。
「怖ければひと思いに楽にしてやってもよいぞ」
- 69 :
- 181 名前:無名武将@お腹せっぷく :2012/02/14(火) 13:53:20.92
夜闌スレはアンジェの自己満足スレだから見てても面白くないし感情移入もできない
- 70 :
- 蛇の言う通りだった。朕は蛇が怖かった。
紅、白、黒、黄色に彩られた幾何学模様がてらてらと輝き、地滑りとともに増幅、収縮するのも、
鱗の下に隠された豊かな筋肉が、今は緩慢に優雅に動いているのが、いつ獰猛な瞬発力を顕わにするかわからないのも、
怖くて仕方なかった。
蛇はそんな思いなど全て見透かしているかのように、微妙な動きで次の挙動を悟らせず、
ゆっくりと朕の周りを回っていた。
蛇の動きに合わせて木々の歌声も重なり、完全に朕を包み込んだ……。
蛇は猫なで声で、死への誘惑を囁く。
「お前の命はじきに終わる。老いた木々の歌に蝕まれてな。
怖ければ、その前にわしが全てを終わらせてやろう。
白牡丹よ、絶望することはない。わしの腕の中でやすめばいい。
わしがお前を慰めてやる。
逃げろ、そして自由になるんだ!
全ての闘いはそれで終わりだ。
時間も空間も超えて、わしがお前をすばらしい世界へ連れて行ってやる。
白牡丹……白牡丹よ、
死はお前を慈しんでくれるぞ……」
蛇の声は喋れば喋るほどに甘く優しくなっていった。
しかし、彼の思惑とは逆に、その言葉を聞けば聞くほどに朕の心にはある強い感情が湧き上がってきた。
─嫌だ!
口が勝手に動いた。はっきりとした大声が飛び出した。
寡人はまだ生きたいんだ!
諦めるには、まだ若すぎる!
寡人は自分自身の足でここに来た!
死の口を見たが、見たからにはもう恐れることなど何もない!
寡人は先へ進む! 死よ、目の前からいなくなれ!
お前に寡人をくれてやる気はない!
いなくなれ!
琴の音のくもりが晴れた。
先程よりずっとはっきりしていながら、攻撃的ではない。
しかも、この音色は古森に驚くべき変化をもたらした。
これまで、古森の歌は悪意と嗜虐心のみが表れたものであり、侵入者の命を奪おうとのみするものだった。
それが、新しい「風清」の音色と重なると、より高い次元の、深い思慮分別と叡智を含んだ響きを帯びるようになった。
これが古森の木々の本質だった。太古の森の賢者。
外界の人間への不信と怒りに心をくもらせていた木々は、朕を受け入れ、思慮深い言葉で語りかけていた。
霧のじっとりとした閉塞感や、耳奥の痛みも消えた。
演奏を終えたとき、朕は、まるで母の胎内にいるかのような安心感を覚えていた。
蛇が言う。
「お前は死を克服した。一度目は花姑の助けで『幸運にも』生き残ったが、
二度目はお前自身の強い意志によっての克服であったな。
先へ進め。わしがお前に再び遭う日が近くないことを祈る。わしは最後(いやはて)の敵なる死そのものである」
そして、彼は森の木々の間へ、どこへともなく去っていった。
朕は、道の先へと歩き進んでいった。
もはや迷わなかった。進むべき道は、心がわかっていた。
朕は着いた。
目の前には、畑や水田が広がり、水牛が耕している。青い服で赤ら顔の農夫たちがせっせと動き回っている。
赤地に、色とりどりの刺繍をした服を着て、大きな帽子を被った女たちが談話している。
こここそ、武陵源に太古から生きる果雄(コーション)族の住む地、その都であった。
- 71 :
- >>70
アンジェさーお前さっき三戦板の議論スレに名無しで書き込んだろ?
書く時間帯が一緒でバレバレなんだよ!
- 72 :
- アンジェ他コテに絡む気ねーの?
それなら一言そう言っておいたほうが個スレとして楽しめるぞ
- 73 :
- >>72
言うまでもなく夜闌スレは参加型のスレです。
参加者への絡みであれば夜水魚の返答待ちですね。
華蘭に関していえば、接点がないので絡めません。
白牡丹の中で存在すらおぼろげだと思うので、思い出すというのも不自然ですから。
また、夜闌スレはいつでも皆様のご参加をお待ちしています。
- 74 :
- >>73
一時的に複ハン付けて、参加者に付いてやる気はない?例えば華蘭なら後宮の宦官とかさ
まあ参加者が増えてくるとそうもいかなくなるけどね
- 75 :
- >>74
すみません、現状から担当を増やすと負担が大きいですし、
何より複ハンは感情移入を阻害するのでやりたくありません。
複ハンを多用しても問題なく上手に書ける方もいますが、
私は真似できないですね。
それほど器用じゃないです。
どんな立場で参加してもいいのですが、他に誰もいない場所で参加する場合、
今の私のように「地盤を固める」ネタを書かないとすることがなくなります。
華蘭なら宮廷世界を詳しく描くとか。
そういうのが苦手な方は、女官などではなく勢力を持った群雄を担当されるのを強くお勧めします。
自分がやりやすいのももちろん、群雄が増えれば後から入る方も入りやすくなります。
地図は>>54ですね。
パソコンでしか見られないので、携帯がメインで参加される方も、
どこかのパソコンで見てくれれば……と思います。
- 76 :
- >>75
誠実な対応サンキュー
- 77 :
- 醜いアンジェの自演だな
- 78 :
- ──果雄(コーション)王、翠絶は語る
息子よ。今まで神の所有物だったお前は、七つになって人と成る。
めでたく果雄の子と成ったお前に、こうして話をしてやれてうれしく思う。
私は、お前の年には父親を失っていたのだから。
お前は果雄の古い昔話を知っているね。何だ、もう一度話して欲しいのか?
仕方のない奴だ。それじゃあ、話してあげよう。
昔、昔、一柱の強い神がいた。
神は雨と風を従える力を持っていた。田を作り、畑を耕す我らの先祖にとって、どれだけの恩恵であったことか。
今のお祭りも、ずっとずっと、感謝を忘れないためにするものなのだ。
いつものお祈りもね。
ところがある時……
北の神が、境界を侵して攻めてきた。
先祖の神は、自由を守るために立ち上がった。強力な武器を鋳て、雨と風を起こし、先頭に立って戦った。
先祖の民も、その後に続いて勇猛果敢に戦った。
この闘いは、太陽と日照りを味方に付けた敵の勝利に終わったが……
神は民を生かすために肉体を捧げ、民は散り散りになって山の間に逃げ隠れることができた。
そして今まで、岩や、山や、川や、泉や、霊魂を信仰して暮らしてきたのだ。
神は肉体は滅びても、霊魂までもが消えたわけではない。
私の心にも、お前の心の中にもある。お前は私と同じ果雄の子だ。
昔、神と共に戦った勇猛な魂を受け継いでおる。
息子よ、果雄の男なら、強くあらねばならぬ。
人が死んでも、それはその人が永久に滅びることを意味するのではない。
その魂は我らを生んだ大地に、水に、そして空に還るのだ。
人の心にも記憶が残る。
挫けてはならんぞ。何があってもな。
さて、少し待っていよ。父は「呉」の使いと話をせねば。
「呉」はな、先程話した北の神が住むより、さらに北の最果てより下って世を支配する大国よ。
少し前に「皇帝」がすげ替えられ、負けた皇帝がここから近い場所に拠って再起したそうだ。
「呉」の人間は口が上手い。
奴らの口先を信ずるわけにはゆかん。
何を言ってこようともな。
「呉」の皇帝に会いたいものよ。
皇帝自身に会って、見所がある男なら、力を貸してやらぬこともない……。
- 79 :
- >>76
いえ、ご希望に添えず、申し訳ありません。
- 80 :
- >>75
地盤を固めるのはいいが、最大領土をどうするかとか権力奪取したいとかなってくると大変じゃない?
- 81 :
- >>80
今考えている最大領土は、>>54の地図で蒙鐸粲さんに塗っていただいた範囲ですね。
(現代中国でいう湖南省全域なので、すぐにパソコンが見られず
なおかつ世界地図を持っていらしたら、見てみてください)
この範囲を掌握し、復位を全土に公表するまでの構成を考えて、
今、プロローグで書いています。
あと、少しですよ。1日1〜2レス落とすとして、あと数日で終わる予定です。
プロローグが終わる頃には、参加者が増えてほしいです。
以後は普通に参加者と絡みながら物語を動かしていきたいので。
長いプロローグですが、白牡丹の勢力の性格や、治めている地域がどんな場所なのか、
地形はどうなっているのか、白牡丹自身はどういう人物なのか、など、
書いたほうが結局は参加者としてもわかりやすいと思うんですよね。
もちろん、他の参加者にもプロローグを書けなんて言いません。
書きやすいように、気軽に書いてくれればと思います。
- 82 :
- >>81
d 楽しみですw
- 83 :
- ──白牡丹、果雄の都
目的地に着いて、まずしたかったのは王城に行くことでも街を見物することでもなく、
眠りたい、ということだった。
漁夫に場所を尋ね、宿を取る。気の良い白髪の爺さんが主人をしていて、
果雄の民ではない朕も、快く泊めてくれた。
宿は飯店も兼ねていて、夕刻になると賑わう。
席に着くやいなや、泥のように眠りに落ちていたが、がやがやとした声に起こされて、
丁度腹も空いたことだしと階下に下りた。
滅多に来られない土地に来たら、その土地独特の食べ物を食すべきだ。
それも、現地人ですら気軽に食べないようなものを。
朕は、蛇の汁物を注文した。
さっきのささやかな仕返しだ。
蛇が運ばれてくると、注文したものがしたものなだけに、注目を浴びてしまう。
外国人ということもあって、
「兄さん、どこから来たんだ」「名前は何ていうんだ」
と、あちこちから尋ねられる。
いろいろな人がいた。雪のように白い肌で、平坦な顔もいれば、
褐色で彫りの深い顔立ちもいた。
服装も多種多様だが、共通することは、彩色豊かで形状も凝っているということだ。
宿の主人が酔って叫んだ。
「兄さん、楽器を持ってきていたろう。ちょっと弾いてくれや」
わかった。少し待っていてくれ。
部屋から琴を取ってきて、弦の上に指を置く。
演奏を始めると、果雄人の方が、呉人より真剣に聴いてくれる。
旅情は、心を揺さぶる。
広陵を出てから、苦難を乗り越えて太平君の公国にたどり着いたこと。
猫の焦景栄と再会し、一度広陵へ戻ったこと。
祭祀の削減は止められないと知ったこと。
そして、君山に住んでから今までのこと……。
全てが琴の音色に宿り、誰より、自身の胸に響いた。
「兄さん、こんな演奏が聴けるとは思わなかった。果雄の人間は音楽を愛する者を敬愛する。
兄さんが留まる限り、仲間と思う。困ったことがあったら、何でも言ってくれ。
ついでに、果雄の歌も聴いていってもらおう」
そこに居合わせた客で、かわるがわるに歌い踊った。
広陵の歌より湖南の歌のほうが情熱的だが、果雄はさらに情熱的だ。
激しい恋の歌、神話の歌、黄帝と蚩尤の決戦を歌った歌、その戦いに臨む戦士たちの歌、
果雄の民に流れる武勇の血の歌、どれも聴いていると血が沸き立ってくる。
朕も踊りたくなってくる。
気が付けば、踊りの輪の中に加わっていた。
「おい、街の他の奴らも呼んでこい! みんなで騒ごう!」
その後は、夜中まで、身体が動かなくなるまで踊った。
- 84 :
- それから数日の間、朕は飯店を拠点に、琴の興行を続けた。
何故かって? 待っていたからさ。何をって、
「お前が呉の楽人か? 王がお前の演奏をご所望だ」
ほら、こうやって王から声がかかるのを。
何も考えずに宮殿に行って、「朕が呉の皇帝だ」なんて言っても信じてもらえるはずがない。
けれど、音楽なら民族や身分の垣根を越えられる。
お目にかかった王は、まだ若かった。三十にも届かないように見えた。
筋骨隆々で、背丈は九尺(二メートル)に達し、胴は広く、腕は棍棒のように太く、双眸は流星のように鋭い。
ただそこにいるだけで並み居る人を圧し、普段は泰然としているが、一度怒気を発すれば、
縮こまらぬ者はいないだろう。
頭の二倍もの長さで、黒地に宝石を散りばめた冠を戴き、
服装は、紅地に唐草模様の刺繍、そしてきらびやかな装飾品を帯びている。
蚩尤の民の末裔を率いるに相応しい威厳を、十二分に備えていた。
陛下、御前に失礼いたします。
「お前が噂の楽人か。宮中でも評判だぞ。私を満足させてくれれば、望みの褒美をとらせる。
さあ、弾くがよい」
しからば……
…ぼろん
「風清」の初音は凶刃だった。鋭利な剣に身を切られるのはこのような心地だろうか。
かつて呉潭に竜を切り伏せた剣の切れ味よりも鋭く、琴の音色は聴く者の肺腑を抉る。
ぼろん…… 二音目には、居並ぶ魂を残らず引き裂かんばかりである。
旋律はさらさらと流れる小川のよう。しかしその小川に引き込まれれば、這い上がることはできない。
果雄王・翠絶の前で、白牡丹は一心不乱に琴を弾く。
振り乱した髪は暴風雨、黒い渦となって夜叉のように舞い狂い、衣の皺は千変万化。
聴く者を強引に捕らえ、破壊してしまう嵐の中心だった。
はじめに弾琴に反応したのは、宮殿に棲まう精霊達だった。
数百、数千の精霊が一斉に唱和を始めた。低く木霊するような歌声で啼くもの、
高低さまざまの音域で唱和するもの、精霊達の歌声はすべて白牡丹の琴に乗る。
すると音色はますますこの世のものから遠ざかり、灰色の空を覆う雲は息を凝らし、崩れかけたまま動かない。
幾千もの合唱、悲鳴のような旋律は次第に律動を激しくした。
べんべんべんべん… 奏曲は中盤。複雑に織り合わされた糸からなる織物のようだ。
その律動に、戦慄しているのは宮中の人だけではなかった。
果雄の人々、拍手の音、喝采の声、さながら荒海の遠鳴のように響き立て、
また或いは動揺し、涙を流し、白牡丹の弾琴に耳を傾けない者はなかった。
- 85 :
- >>46
「へえ」
しおらしく頭を下げながら夜水魚は思った。
(まぁ自分の命が大事なだけだがな。俺より大切に思う奴がまだいないだけの事!)
(とはいえ、いつも世話を掛けてる爺さんにまたもや迷惑掛けちまうんだから、申し訳ないとは思うぜ)
官吏にこれは尋問じゃないよ、と言われた夜水魚は少々動揺した。
(表情を読まれちまったか、まだまだ未熟なもんだぜ、俺も)
尋問官が目の前で大粒の砂金を小卓に据える。それを目で追いながら考える。
(でけぇ砂金の粒だ。これだけの砂金があれば、釣竿も何も家の中の物まで新調する事ができらぁ。
これぁ、多少小物を演じたほうがいいな。これで狂喜しなけりゃ大物だって事で話が変な方へ行きかねねぇ)
(とりあえず、ぎらりとした眼差しに、鼻息も荒くしてみっか)
「そりゃあもう!この羅刹那、無用な事は話さねぇ性分でしてね。その代わり、あっしの口から洩れた
情報は寸分の狂いもございやせん!旦那、信じて下せぇ」
身を揉むようにして夜水魚は訴えた。
(本当は俺ぁ、こういう役は嫌いなんだがなw)
街の様子を丁寧に説明してもらいながらお世辞を口に上らせる。
「なるほど!平民がお役人と共に酒を!そりゃあ他では考えられない絶景でやすね」
(ここが誉め時だぜ!)
「こんな素晴らしい街は他にはなかなかありますめぇ。あったら教えてほしいくらいだ」
「それで、この街を造られたのはどのような聖人君子で?」
「もちろん、釈放されたらもう一度ここにやって来るのを誓いますぜ」
(それは実現するか分からねぇけど、言葉のアヤでな)
「婦女子が夜中でも安心して出歩く事ができる街。一度ここに住んだ者は、他へ行きたくなくなる筈でさぁ」
「しかし、お役人の苦労は並大抵のものじゃありやせんね。頭が下がりやすぜ」
(ちょっと疲れてきたな)
「大丈夫でやす。この素晴らしい街を維持する為の、この捕縛。あっしが腹を立てる理由などありやせん」
「釣竿壊されたのにゃあ、ちょっと怒りかけたんすけど、お話を聞いて怒りは雲散霧消いたしやした」
「桃里村の事でやすか?
いや、まあ普通の農村でやすよ。ちょっと前に近所でガキが生まれやしてね。男だったかな?」
「帰ったら、祝いを持っていかにゃあwちょっとした出費ですぜ」
「今、村から村長の爺さんが来るって事なんで、詳しい話はそちらに聞いてみて下せぇ」
「それが、口うるせぇ爺さんなんすよ!村にも規則みたいなのがありやしてね」
「八十越えてるのに、歯も抜けていやがらねえ!」
- 86 :
- >>46
深更、桃里村――
「何事だ?」
村長アルス=クティクはやおら布団から起き上がった。
「敵か?」
夜着の上に上着を羽織る。
外を伺うと、二十五〜三十人ばかりの武官がばらばらとこちらを目指している。
――逃げると余計にまずい事になりかねぬ。
クティク村長は座敷の真ん中に陣取ると、武官達が木戸を開けるのを静かに待った。
が、意に反して武官達は雪崩れこんでは来ず、木戸を手で叩いたのみだった。
木戸を静かに開ける。
「こんな夜分に何用でござろう」
「…夜水魚?ああ、知っておりますがまた、どういう件で?」
「夜中に釣りをしていて捕まった…?」
(なんと間抜けな奴め)
「身元保証人ですと…?」
(またあの風来坊がしでかしおったな)
「どうしても儂が行かねばなりませぬか。ならば、向こうの家にいる副村長に留守を頼んで参りまするゆえ、
暫く、お待ち願いたい」
暫くして村長は戻ってきた。武官達の前で出来うる限り呑気に、農家の爺さん風に振る舞う。
「さ、では参りましょうかの」
- 87 :
- ──演奏を終えて
ご清聴ありがとうございました。
この曲は、私の即興で、黄帝との決戦に臨む蚩尤を題に取りました。
「蚩尤は敗れた」
と、果雄王翠絶は言った。
「しかし、その魂は滅しておらぬ。我ら果雄人の血に、果雄の大地に、川に、泉に、風に、
蚩尤の魂は宿っておる。その魂が、今、目覚め、高ぶっておる! 果雄の子よ、お前達も、そうであるな!」
「「「 おおっ! 」」」
宮殿はどよめいた。
「見事だ、楽人。実に見事であった。約束通り褒美を取らそう。さあ、望みを言え。なんなりと」
望みは……
私の望みは、果雄の力を、呉のためにお貸し願いたいということです。
そのためにここに来ました。
「では、お前は呉の回し者ということか」
回し者ではありません。寡人の名は白 牡丹。呉朝の皇帝です。
「「「 なにっ! 」」」
ざわめく衆人を、王は右手を挙げて制した。
「楽人、冗談ごとではないのだぞ。私は今だかつて、そちらの言うところの『蛮族』の都に、
単身乗り込んでくる中国の皇帝を知らぬ」
いいえ。まだ世の中がそれほど複雑ではなかった頃、皇帝はそうすべき場所、そうすべき人を自ら訪ねました。
寡人もそれを理想としています。
「それが本当だとしても、危険だとは思わなかったのか。ここに辿り着く前に武陵源で倒れることや、
私がお前を人質に取って、お前の使いを脅迫するとは考えなかったのか。」
武陵源で、寡人は死の口を見ました。そして克服しました。
陛下には、そのようなことをするお方とは思えなかったため、正体を伝えたのです。
果雄の武将達が言う。
「大王、中国の皇帝が目の前にいるのです。なぜ捕らえないのです! 積年の恨みを返す機会ですぞ!」
王は武将達に言った。
「この皇帝の琴をお前達も聴いたであろう。口先の言葉よりも、彼がよほど果雄を理解しておることがわかる。
また、自らここに乗り込んで来る意気も天晴れなもの。そのような皇帝にこそ、力を貸す意味があるのではないか。
それに、『なんなりと』望みを叶えるといったのを反故にしては、私の度量が小さくなるわ」
ありがとうございます、陛下。
「よしなにお願い致しますぞ、陛下。陛下のお使いには良き返事をする積もりにて。
ところで、これは個人的な問いなのだが、よろしいか。……鶏と卵はどちらが先と思われる」
鶏と卵。答えるとすれば、『円には始まりがない』。
「成る程。それでは、消失した物体はどこへ行くと思われる」
非存在に。すなわち、すべてに。
「すべてに。……見事な言い回しですな。やはり貴方は粋な方でいらっしゃる」
こうして、武陵源の果雄族を味方に付けることに成功した。翠絶に続き、果雄の諸部族もまた、君山に来朝することになる。
- 88 :
- >>85-86
──岳州、諸葛休民
「『無用なことは話さない代わりに、口から漏れた情報は寸分の狂いもない』」
「夜水魚君、君、もしかしたら間諜とか忍びに向いてるかもしれないね。」
「どうかな、うちの州でそういうお仕事してみないか?」
(本気とも冗談ともつかぬことを言う諸葛休民)
「そうしたら、今よりもうかるぞー」
「……なんてね。まあ、もし州のお仕事がしたかったら、いつでも考査受けに来ていいから」
「いやー、まさかそんなに褒めちぎってくれるとは思わなかったからねえ」
「そんなに岳州が気に入ったなら、いっそ働いちゃえばいいじゃないの、と。」
「ああ、街の歴史なら春秋の楚の時代からあったらしいんだけどね、詳しいことはよくわからないんだよ」
「気にしない気にしない」
「あ、でもいけない、お仕事も何も、君ってまだ釈放が決まったわけじゃないんだった」
「いや〜、参った参った!」
(自分で言ったことで大笑しながら、諸葛休民は頭で考えていた)
「(ふむ、人とお話しするのが上手なのだねえ)」
「(ポンポンポンポン言葉が出てくる。まるで商人みたいだ)」
「(もしこれが『演技』なら、どこかにボロが出るだろうが)」
「(たとえば嘘をつくとき必ず瞳が宙を泳ぐとか、ちょっと言葉に間ができるとか)」
「(そういう『癖』を全部隠せるなら、降参するしかないがね)」
「村で子供が。すばらしいじゃないか。新しい命をみんなで祝うっていうのもいいね」
「私からも、おめでとうー」
「おっと、『保証人』さんが着いたのかな。どうぞ、こちらへ。」
(村長を椅子に招く。武官は諸葛休民の背後に回ると、唇を動かさず伝えた)
「お気を付けください。勘に過ぎませんが、どこかおかしい。桃里村も、この老人も」
「初めまして、村長さん。州刺史の諸葛休民です。こんな遅くにすみませんね」
「事情は聞いていると思いますが。彼は確かに潔白であると保証できますか?」
- 89 :
- ──レイ州 攻略戦
(地図に準拠して話を進めるので、>>54の地図をご覧ください)
それから君山へ戻った朕は、姚朝欽と交代した。
「えー! もっと長くかかってもよかったのに! そうそう、私の小説はどうでしたか!」
しばらくして、黄加陳の知らせ。果雄の調略に成功したと。
「驚きましたぞ。あれほど渋っていたのに、ある日突然承知してきたのです」
お前自身のときもそうだったろう。
今、君山の朕の庭で、岳州刺史・諸葛休民、郎州刺史・黄加陳、果雄王・翠絶が勢揃いしている。
木卓の上には地図が置かれていた。
自然体で四角張らない諸葛休民、謹厳さを常に纏った黄加陳、いるだけで周囲を圧する翠絶。
三者三様で面白い。
「目下の目標は、」
議長役を務めるのは決まって諸葛休民だ。
「レイ州の獲得です。ただ一つ問題がある。レイ州刺史は湖南には珍しい広陵派なんです」
「ふうむ…」
黄加陳が唸った。交渉ごとの難しさを知り尽くしていたからだ。
翠絶は何も言わず、己の拳をさすっていた。
「レイ州はどうしても欲しい。何かご意見はありますか」
一瞬、皆の視線が交錯する。皆、同じことを考えていたようだ。
翠絶が言う。
「果雄の男は、そうすべき時に命を投げ出すことを惜しみませんぞ。より大きな善のために」
黄加陳が続く。
「正面からぶつかるのは果雄王と、この郎州だ。郎州の男とて、果雄に引けは取らん」
二人の言葉に頷いて、諸葛休民は話を進めた。
「私に作戦があります。(地図を指して)まず郎州軍が、陸路からレイ州に攻め上る。
山がちで起伏が多く、平地も水田が多くを占めます。無理せず、を念頭に軍を進めてください。
果雄軍は、レイ水を下って水路からレイ州を襲撃します。
ただ……
この戦いで戦力を浪費するのは好ましくない。
黄刺史も、王も、『負けぬこと』を念頭に置き、無理に攻め落とそうとはなさらぬよう。
郎・果雄がレイ州の注意を引きつけている頃、岳州軍は山南東道の南端、洪湖周辺を封鎖します。
レイ州が長江経路で広陵に事態を知らせぬためです。
封鎖を終えた岳州軍は戦況を見て、洞庭湖を渡り、がら空きになっているであろう、東側からレイ州を攻撃します。
作戦の終了時点で、我々が地図の
・鄂岳観察使領の西南端
・荊南節度使領の東南端
・山南東道節度使領の南端
を完全に領土としていることが目標です。
また、陛下にもお役目はありますぞ。
陛下は馬に乗れますな。軍装をして、馬を自在に操っている所を皆に見せてやってください。
それで皆が奮い立ちます」
確かに、広陵を出てから必要に迫られてずいぶん乗馬も上達したものだ。
わかった。ただし……
軍装は、太祖が来ていたような、鮮卑風のものにしてくれ。
なぜだかね、それを着てみたいんだ。
- 90 :
- 「え〜ん、ママ〜」
- 91 :
- >>90
オー!どうしたんだい?
(おや、この子は男の子かな、女の子かな?)
(泣いてるけど…ひょっとして迷子だったりして…)
(この辺りに、ポリスとかあるかなあ・・・)
- 92 :
- 白人?
- 93 :
- >>91
あたし、ニーファ。
え?男の子かって?ううん、女の子よ。五歳。母様とはぐれてしまったの。
おじちゃん、母様のいるとこ知ってる?
- 94 :
- ──レイ州の戦い 黄加陳 郎・レイ州境 快晴
「黄刺史! 全隊配置に着きました!」
うむ。……わしの眼前には春を迎えた山と、そのふもとに見渡す限りの水田、
そして、あぜ道を埋め尽くす“敵兵”の群れが広がっている。
軍を指揮するなど初めての経験だ。
一州を預かる立場として、必要になる時も来ようかと読学した兵書の技。
付け焼き刃が通用するだろうか。
しかし、とわしは思い直す。
経験がないのは敵方も同じだ。
こちらの進軍が始まってようやく詰問の使いを寄越すようなレイ州刺史に遅れは取らぬ。
わしは一度後方を振り返る。兵士達は、決意を固めた面持ちで整列している。
拝領した「皇帝旗」は、風に勢いよくはためいている。
諸葛休民は、戦うのに無理はするなと言う。
だが戦いを前にして、そのような事を兵に伝えて心の乱れを生むわけにはいかぬ。
陽動であろうが関係ない。「その場」「その場」を死地と思って戦う。
政治と同じではないか。
いける。
心を落ち着け、わしはその場で兵を鼓舞した。
─今朝、鷲が三回陣の上で弧を描き、太陽に向かって飛んでいった。
これは今日が我々にとって良い日になるという兆しである!
あれがレイ州軍だ。我らの掲ぐ皇帝旗の行く手を阻む敵である!
敵は、我々の攻撃を防ぐことができると思い誤っている。
その考えを改めさせてやれ!
あの愚か者どもが、過去に一度も味わったことのない、キツい一撃をお見舞いしてやろうではないか!
さあ、いよいよ! 真っ向から、勝負だ!
「「「 ウワアアアア、ウワアアアアッ! 」」」 「「「 殺(シャー)! 殺! 殺! 」」」
隊伍を組んだ兵団が喚声を上げながら敵に突撃してゆく。
打ち合わせ通り、弓弦の音が一斉に鳴り響き空が暗くなるほどの一斉射撃が敵を襲う。
気勢を削がれた敵に、槍隊が怒濤のように襲いかかる。
ひるむな! 前進しろ!
わしも采配を振るって督戦するが、弓矢の援護を受けた槍隊は言われるまでもなく勇猛に敵を切り裂く。
敵の反撃に対しては、最前面で盾を持った兵が死にものぐるいで味方への攻撃を防ぎ、
その間を縫って軽装の兵が敵をかく乱する。
その後ろに控えた兵は、槍で前面の敵を押さえつけ、
押さえつけたところで、さらにその後ろにいる主力部隊が敵を確実に突きR。
む。─姑息な敵が、我々の側面に回って攻撃しようとしてきた。
すかさず、側面の兵は敵の動きに備え、是が非でも戦友を卑劣な襲撃から守ろうとする。
やがて、敵の抵抗が乱れ始め、勢いに乗って味方は押し攻める。
このままレイ州城まで攻め込むか。それとも、一度止まって体勢を整えるか。
わしは周囲の山を睥睨する。
伏兵が隠れておるやもしれん。
ここで蛮勇にかられて突出する、そのことこそ諸葛休民に戒められた自滅の道。
ここに陣を張る!
短く指示をすると、兵達がいそいそと陣幕を用意し始めた。
- 95 :
- >>93
ほう、なかなかおしゃまさんだねw
ごめんごめん、ちょっとボーイッシュに見えたものだから。
お母さん、かい?
(やっぱり迷子だ)
ポリス…呉のことばで何て言うんだろう…は何処にいるのかな…
お母さんは、どんな姿をしてるんだい?年齢は?
- 96 :
- >>95
お前なー
ちゃんと「歴史」をやれよ
- 97 :
- 時代柄西洋人を演じる事自体は良いとしても
歴史物語に登場する西洋人の役割ってのをちゃんと意識すべき
- 98 :
- >>95
ポリス…?ひょっとして街の警備兵の?
やっぱりあたし、自分で母様を探してみるっ!
ごめんね、それじゃあ!
(ミカエルさん、皆さん、あたしが迷子になったせいで不愉快な思いしてごめんなさい!)
たたたたっ…と足音速く駆け去ってゆく。
- 99 :
- ──レイ州の戦い 翠絶 レイ水上 快晴
時は来た。今こそ、蚩尤の末裔の勇猛さを思い知らせてやる時だ。
私は一つのことしか考えていなかった。先頭に立ち、王の務めを果たすこと。
中国の王は、先陣は臣下に任せて自分は安全な場所に隠れるのが習い。
それぞれに流儀というものがあり、それを軟弱とは言うまい。だが、果雄では有り得ないことだ。
最前線に立って臣下を守れぬ男に、王たる資格はない。
だから果雄の王は、生まれた時から誰よりも強くなることを義務付けられている。
戦のために作られた、血のように朱い蚩尤の面ごしに前方を睥睨する。
眼前に現れる敵すべて、この鉄疾黎骨朶と二張の弓で血の海に沈めてやる。
「大王、今のうちに兵を励まされては?」
私の姿だけでは不足か? ……言葉を飾り立てて、強くなった気になるのは嫌いだ。
何を叫んでも、結局、勝つときには勝ち負けるときは負ける。
上陸地点が見えた。船を泊めろおおおーっ!
誰よりも先に船から飛び降り、待ち構えていた敵兵の頭に鉄疾黎骨朶を振り下ろす。
鈍い音がして、敵の頭が兜ごとぐしゃりと潰れる。
間髪入れず、二つ、三つ、次々と潰していく。
恐ろしい蚩尤を見て恐怖にこわばる顔が、一瞬で、目も鼻も口も区別がつかぬ肉塊に変わってゆく。
私の後に続いて果雄の男たちも次々に餌食を仕留めていく。
敵の突き出した槍を跳躍でかわし、空中から刀を振り下ろして首を刎ね飛ばす。
一人の敵兵を三人で引き包む。一人が敵の斬撃を受け止め、二人目が転倒させ、三人目が息の根を止める。
敵に刀を叩き落とされた者は、上下の顎で敵の刃をかみ砕き、
指を目に突き刺してえぐり出す。
敵が密集して押し寄せてくれば、散って受け流し、包んでR。
戦いに臨む時、われわれの軍装は色とりどりに彩色されているが、
終わってみれば必ず全身朱に染まっている。
最も返り血を浴びた者が、勇者たる栄光に浴す。
─お前達が長の平和に堕落していた間、我々は戦いの技を磨いていたのだ、どうだ漢人!
敵は次々に背を向けて逃げ始める。
逃がすなあああーっ! 私は叫び、追いついて骸に変えてやる。
後から続く味方も、思い思いに敵を討ち取っている。
郎州の状況はどうだ! 殺しながら傍らの味方に叫ぶ。
「州境で敵を破り(>>94)、その後少しずつ北上しているそうです!」
ならば我らも進む! 続けえええーっ、お前達が真に蚩尤の子なのならば!
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