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2013年01月創作発表110: ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第六部 (428)
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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第六部
- 1 :2012/10/31 〜 最終レス :2013/01/05
- . -―- . やったッ!! さすがジョジョロワ3rd!
/ ヽ
// ', おれたちにできないことを
| { _____ | 平然とやってのけるッ!
(⌒ヽ7´ ``ヒニ¨ヽ
ヽ、..二二二二二二二. -r‐''′ そこにシビれる!
/´ 〉'">、、,,.ィ二¨' {. ヽ _ _ あこがれるゥ!
`r、| ゙._(9,)Y´_(9_l′ ) ( , -'′ `¨¨´ ̄`ヽ、
{(,| `'''7、,. 、 ⌒ |/ニY { \
ヾ| ^'^ ′-、 ,ノr')リ ,ゝ、ー`――-'- ∠,_ ノ
| 「匸匸匚| '"|ィ'( (,ノ,r'゙へ. ̄ ̄,二ニ、゙}了
, ヘー‐- 、 l | /^''⌒| | | ,ゝ )、,>(_9,`!i!}i!ィ_9,) |人
-‐ノ .ヘー‐-ィ ヽ !‐}__,..ノ || /-‐ヽ| -イ,__,.>‐ ハ }
''"//ヽー、 ノヽ∧ `ー一'´ / |′ 丿! , -===- 、 }くー- ..._
//^\ ヾ-、 :| ハ  ̄ / ノ |. { {ハ. V'二'二ソ ノ| | `ヽ
,ノ ヽ,_ ヽノヽ_)ノ:l 'ーー<. / |. ヽヽヽ._ `二¨´ /ノ ノ
/ <^_,.イ `r‐'゙ :::ヽ \ `丶、 |、 \\'ー--‐''"//
\___,/| ! ::::::l、 \ \| \ \ヽ / ノ
このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください
この企画は誰でも書き手として参加することができます
詳細はまとめサイトよりどうぞ
まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/
前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第五部
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1342195958/
- 2 :
- 名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
※第一回放送を迎えましたので上記のズガン枠キャラクターは今後の登場は不可能です。
Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス
Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ/○ロバート・E・O・スピードワゴン
Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO
Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影
Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ
Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/○空条承太郎/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ
Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ディエゴ・ブランドー/○ホット・R/
○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ
JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆
恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ
ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー
バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド
ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ
- 3 :
- 容量512kb到達につき新スレを立ち上げました。
前スレ最後の文章を378の
「略)見事についたビーティーの勝ちさ」
と
「さ、長くなったが(略」
の間に追加しようと思います。
ご指摘ありがとうございました。
さて、今作のwiki収録ですが、今回の指摘追加分に対するさらなる指摘を受けたのち(1日くらい置く?)に収録しようと思います。
とりあえず今はcg氏の作品に期待しておりますw
まだ何かご指摘ありましたらバシバシとどうぞ。 それでは。
- 4 :
- それは唐突に襲いかかってきた。立ちくらみのような、めまいのような。脈絡もない突然のフラッシュバック。
鉄が錆びた様なこもった臭い。重苦しく淀んだ空気。地面に散らかる赤の斑点。
断片のようないくつもの記憶が思い浮ぶ。細部まで見たわけでもないし、急いで目を逸らしたから、全部がどうだとわかっているはずもない。
だというのに記憶の中のその光景は嫌に鮮明で、生臭くて。
手を伸ばせば掴めそうだと思えるほどのくっきりとした記憶が、川尻しのぶの脳を揺さぶった。
しのぶはごくりと唾を飲み込む。込み上げた吐き気も一緒に飲み干せたらいいのにと思ったが、吐き気は収まらなかった。それどころかますますひどくなった。
掌にじんわりと広がる汗を感じる。顔から血の気が引いて行くのが見ずともわかる。
彼女はゆっくりと眼を瞑って、息をとめてみた。あまり効果はないことはわかっていた。けれどもそうするほかにすることもなかったので、とりあえずそうしてみるしかなかった。
瞼の裏に映る暗闇を見据え、しのぶは隣に座る男に気づかれなければいいけど、と思った。
空条承太郎に気を使われるようなことはしたくない。それだけが心配だった。
アナスイとの一件を終えた後、二人は杜王駅内を捜索した。
駅には誰もいなかった。残酷な殺人鬼も、恐怖におびえる幼子も、影一人、人一人見つけることができなかった。
かわりに二人が見つけたのは、奇妙な形に歪められた死体。捩じれて、融け合わされ、崩れかけている幾つもの残骸。
人間としての表情が読みとれる余地が残されているだけ、余計にたちが悪い。
だがそれを見ても承太郎は眉一つ動かさなかった。彼は一切動じる素振りを見せなかった。
立ちすくむしのぶを尻目に彼は被害者の顔を覗きこみ、知り合いでないことを確かめ、そして支給品を一つ残さず全て回収した。
おまけに荷物になるであろう余分なデイパックや食料、懐中電灯を残してくるほどの徹底ぶり。
墓を造るようなことはもちろん、死者のために黙とうをささげるための僅かな時間すら、彼は惜しんだ。
吐き気を堪え俯く中、しのぶはそんな男を見て、まるで感情を剥ぎ落した機械のようだと思った。
場慣れた刑事や勘の鋭い戦士でなく、一体のアンドロイドが動いているかのような……そんな印象を彼女は抱かずにいられなかった。
しのぶはそっと眼を見開く。吐き気は少しだけ収まっていた。だがフロントガラスに映る自分の顔色は、一向に良くなる気配を見せない。
車内に会話はなく、壊れかけた空調が時折軋む音が、静寂を破っていた。隣の運転席でハンドルを握る男は、長い事口を閉ざしたままだった。
今二人は駅で拾った支給品のうちの一つ、車にのって移動している。
速度はそれほど出ていない。ちょうど朝の通勤ラッシュで急ぐサラリーマンぐらいの速さだ。
承太郎に言わせれば、誰かが見つけても追いつけられる程度で、誰かを見つければ追いつくぐらいのスピードだそうだ。
しのぶは自分の体調がよくなるよう、大人しく座席に収まっていた。
「少し休憩する」
数分後、男は速度を緩めると路肩に車を駐車した。
シガーライターでタバコに火をつけ、何回か煙を吐いた後、彼は思いついたかのようにそう言った。
やはり彼に気を使わせてしまったのだろうか。そう、と返事をするとしのぶはため息を堪え、居心地悪そうに視線を車外に向けた。
恥ずかしさと失望感で、とてもじゃないが話す気にはなれなかった。
- 5 :
- しのぶにもわかっていたことだった。
お節介を焼いているのは自分のほうのはずだというのに、気がつけばいつも自分は彼に気を使わせている。
最初からそう。彼が無理を言ったことと言えば、ここにきて最初に会った時だけ。
『すまないが、一本吸わせてもらってからでいいか』 そう言った時だけなのだ。
彼との関係は、自分が一方的に追いまわしているだけの関係のはずなのに。
承太郎からすれば自分と一緒に行動してなんら得になるようなこともなかったし、きっとこれからもないように思える。
空条承太郎は自分がつけまわすことを“許してくれている”のだ。わざわざ自分に合わせ、足並みをそろえてくれているのだ。
その気になればしのぶをほっぽり出し、自分一人でより効率よく、より迅速にこの場を駆けまわれるというのにだ。
彼は自分が危険にならないよう、疲れないよう、さり気なく、いつも手を差し伸べてくれている。
しのぶは顔をしかめた。情けなさと怒りが半分ずつ同居するような、中途半端な表情だった。
長いこと、承太郎は動かなかった。
彼は何も言わず、地図と名簿をジャケットのポケットから取り出すと、じっとそれを眺めていた。
それほど熱心に眺めているわけでもない。なんとなくすることがないのでそうしている。何とも言えない、ポッカリとした空洞感があった。
そうして彼は不意に筆記用具を取り出すと、一つの名前の隣にメモを取る。
しのぶがすっかり回復したのを見計らったようなタイミングで、承太郎は動いた。
無言のまま、彼はしのぶにそれを突きつける。しのぶはそれを覗きこみ、そして次の瞬間、息をのんだ。
それは名簿に載っていた名前を見たからではない。承太郎の筆跡がそこにこう記していたからだ。
『俺たちは誰かに見られている』
◆
- 6 :
- 突如脇腹に鈍い痛みが走り、私は呻き声を漏らしかける。
慌てて口を覆い、喉奥で痛みの叫びを噛み砕く。もしや聞かれてしまっただろうか。空条承太郎は今の声を聞き落としてくれただろうか。
ラバーズに意識を集中させ、様子を伺う。
車からのっそりとその巨体を捻りだしたのは紛れもなく、あの空条承太郎だ。辺りをゆっくり見渡し、鋭い視線で何一つ見逃すまいと神経を張り巡らしている。
しばらく観察を続けたものの、どうやら声を聞かれてはいないようだ。ほっとしたのも一瞬、私は気合を入れ直し、再びラバーズに集中する。
助手席に座る女には見覚えはない。念のため手元にある名簿に目を通すが、これといってピンとくる名前もなかった。
承太郎の母親にしては若すぎる。顔も似ていなければ、態度も肉親にしてはよそよそしすぎる。
きっとどこかで拾ったただの女だろうと、だいたいの見当をつける。あの脅えかたからしてもスタンド使いとは思えない。
こうなると、やはり注意すべきは承太郎だ。
あの強力無比なスタンド、スター・プラチナの恐ろしさを忘れてはいない。眼前まで迫った拳の嵐。ラバーズすら知覚し、捕える桁外れの基礎能力。
油断は禁物だ。ドジを踏めば今度こそ、あの拳で再起不能なまでに叩きのめされるだろう。
私は自らを叱咤激励するように、つい先、つけられた傷口を撫でた。鋭い刃物で貫かれたその脇腹は、決して油断してはならないという戒めの証。
今私は単独で行動している。放送を終えた後、結局私は独りで行動することを決意したのだ。
情報交換の後に身の振り方を考えようと思っていたが、呆れることにヤツらはまともに情報交換する気すら見せなかった。
怪物でありながら戦闘狂であるワムウ。血と殺戮を愛する狂人、J・ガイル。きっと頭の中は闘いのことでいっぱいだったのだろう。
認めよう、私の認識が甘かった。こんなやつらとともに行動していたら戦いに巻き込まれ惨めな死を迎えるか、策略をめぐらしてる最中に背中から貫かれるに違いない。
最初からこんな二人を手駒にしようというアイディアそのものが無謀だったのだ。
実際この傷はJ・ガイルによってつけられたものだ。
私が別行動をしようと提案したのがよっぽど気に入らなかったのだろう。
脇腹の肉をえぐり飛ばし、ゲスじみた笑いをヤツはあげていた。今でも動けばずきずきと痛むほどの傷だ。
怒りで体が硬直しかけ、再び私は傷に手をやった。冷静になるんだ、スティーリー・ダン。落ち着くんだ、落ち着くんだ……。
J・ガイルやワムウでのミスを繰り返してはならない。まして相手はあの空条承太郎、その上見たところ私が知っているヤツより年をとり、熟練の雰囲気すら纏わしている。
隙もなければ、その眼光の鋭さも並はずれている。思わず私の体が震えるほどだ。恐ろしい……、あの男、ヤバすぎる。
「―――……だが」
これは真っ向勝負の戦いでなく……決闘でもなければ、ルールの存在するゲームでもない。
正攻法で敵わないならばそれなりの戦い方というものがあるのだ。そしてその闘い方において、このラバーズに弱点は……ないッ
ここに連れてこられる前にジョースター一行と戦えたのは幸運だった。J・ガイルによって慢心の愚かさを知れたのは幸いとしかいいようがない。
慎重に、慎重にスタンドを進めていく。そうだ……慎重に、そして大胆に。
策さえうまくはめてしまえば例え承太郎だろうと上回る自信はある。あの場所へ、“あそこ”まで辿りついてさえしまえば……!
「……良し」
だが、まさにそんな時だった。まさに私が策を完遂させ、これでヤツとも対等に渡り合えそうだ……と思いかけた、その瞬間。
思わず小声で自身を勇気づけるような言葉を吐いた瞬間。
「――――――…………」
- 7 :
- 承太郎が息を吐く。深く、長いため息のような呼吸音。気を静めるのでもなく、呆れるのでもなく、ただ機能的にそうしたような音が聞こえた。
そして唐突にヤツは私のほうをまっすぐに見据え、呟くようにこう言った。
声が届く範囲に私はいない。そんな距離まで近づいていない。だから私はヤツの口元を読み取っただけだ。
もしかしたら間違いでは。そう望みたくなった。何故こちらの居場所がばれたのだろう。微塵の当てすら浮かばなかった。
ただのブラフだ。山カン張った、ただの虚勢に違いない。私は咄嗟にそう思う。
だが無意味だったのだ。空条承太郎は、私が隠れている場所を真っすぐに見据え、こういったのだ。
「そこにいるんだろう、スティーリー・ダン」、と。
刹那、ぞわり と、背中が震える。
その声は私が知っている空条承太郎のものではなかったから。いや、空条承太郎どころか……この声は本当に人間のものなのだろうか。
私の体は震え始めていた。私の腕が、身体が、足が、そして……傷口が警報をがなりたてるように疼いた。
私は見た。こちらを向いた空条承太郎の目を、見た。
そこに込められたのは狂気……。そしてどこまで続くかもわからないほどの、底無しの殺意……。
◆
- 8 :
- 川尻しのぶが不安げな様子で外に出てきた。今にでも爆発する何かを刺激しないように、彼女はそっとドアを開け、そして閉める。
空条承太郎は動かない。男は道路の先に視線を向けたまま、微動だにしない。
その様子から彼が何かを待っているのだろう、としのぶは思う。だが一体何かを待っているのか、それが何なのかはさっぱりわからなかった。
沈黙のまま、刻々と時だけがすすんでいく。十秒、三十秒、一分…………。
状況が動くのにそれほど時間はかからなかった。スティーリー・ダンがその姿を現したのだ。
二人が面する道路、その先の坂を登って、たっぷり50メートルほどの位置で、その男は立ち止っていた。
しのぶは神経質そうに、ちらちらと承太郎へ視線を向けた。彼はその視線を無視した。承太郎は今、目の前に現れた男に全神経を注いでいる。
しのぶには何が起きているのか、まるでわからない。承太郎が車の外に出て、辺りを見渡して、一言二言、ブツブツと呟き……。
そして今、新たに姿を現した男は、はるか向こうで立ち止まり此方の様子を伺っているのみ。
此方に声をかけるでもなく、知り合いかどうかを確かめるために近寄るでもない。ただそこにひたすら立っているのだ。
そもそもここまで離れていると顔すらはっきり見えない。話をしようと思ってもこの距離となれば大声でしなければいけないのだが、そうする様子も見えない。
承太郎と男は会話もせず、互いに顔も見合わせる必要もなく、何かしら二人の間だけで通じ合っているようだった。
自分が蚊帳の外に置かれている事で、不安は大きくなるばかり。しのぶはやきもきしながらも、だが、ただ二人を見守るほかなかった。
「スティーリー・ダンか?」
- 9 :
- 承太郎が、確かめるようにそう言った。しのぶが辛うじて聞こえるぐらいの、小さな声。
これじゃ相手に聞こえるわけがない。無論、承太郎もそんなことは承知だろう。
だが彼はそのままの声で話を続けていく。
独り言としてはいささか奇妙で、淀みなく。
「タロットカード、恋人。スタンドはその名の通りラバーズ。能力は極小のそのスタンドを敵の脳内に埋め込み、内部から攻撃する。
特徴は自分が傷つけば、相手にもダメージが及ぶというのを前提とした人質作戦。性格は紳士風を装っているが、そこらのsラと変わらない、虚栄心の強い男。
DIOから命を受け、パキスタンを少し過ぎたあたりで俺たち一行に襲いかかったことがある……」
ふぅ、と一息入れる。そして続ける。
次に出てきた言葉は問いかけのようでありながらも、ほとんど確信を込めているのがしのぶにもわかった。
「あのスティーリー・ダンで間違いないな」
砂粒一つが落ちても聞こえるのではないか。そう思えるほどの沈黙が辺りを包み、二人と男の間を風が駆け抜けていく。
承太郎はきっかり十秒だけ待った。刑の執行直前に自白を待つかのような重苦しい十秒だ。
そして時が過ぎ、遠くの男がそれでも動かないのを見定めると……彼は男に向かって足を進めた。
その歩みに一切迷いは感じられなかった。空条承太郎は綺麗に、一直線に、男めがけて向かっていく。
慌てたのは遠くの男のほうだった。
※代理投下者注
したらばNGワードにかかって細切れになっていた4つの文章を一つにまとめ、
さらに次のレスで書かれた文章をまとめています
- 10 :
- 「止まれ、承太郎ッ」
承太郎は止まらない。変わらず一定のペースで黙々と足を運んでいく。
「そこまでわかってるなら、私が考えそうな策も、当然わかってるんじゃないか……ッ!?」
少しだけ、ほんの少しだけ、彼のペースが落ちた。早歩きのスピードが、普通の歩くぐらいまでのペースに落とされる。
それでも……それでも、彼は止まってはいない。着実に、二人の男の距離は詰まっていく。
「我がラバーズは! 既にッ! その女の脳内に潜んでいるッ!
つまりこれがどういことかわかるか? 貴様には理解できているのか、エエ!?」
スティーリー・ダンと呼ばれた男の額に汗が浮かぶ。
顔は余裕を現すために笑おうとしているのだろう。だが承太郎の接近に驚きと狼狽を隠せていないのは一目瞭然だった。
奇妙にねじれた笑い顔は素直な焦り顔より、よっぽど惨めで、余裕がないことを顕著に示していた。
「おいッ、止まれと言ったはずだぞ、このクソガキがッ!」
男は声を荒げ、脅そうとしたのだろう。しかし緊張でか、途中で声が裏返ってしまい、脅すどころか笑いすらこみ上げてきそうだった。
本人もその裏返った声にあからさまに動揺している。見ていると、段々気の毒になって来るほどに。
同情すらしたくなるほどまでに、その男の表情と挙動は奇妙で余裕がなく、明らかに承太郎を前に冷静さを失っていた。
スティーリー・ダンは慌てふためきながら、ズボンのポケットをまさぐる。
尻ポケットから目的のものを見つけた彼は、これ見ようがしにそれを振り回し、承太郎の進行を食い止めようとした。
「動くんじゃねェ―――ッ! それ以上動くようだと、この銃で……、ぶっRぞ!」
- 11 :
- 黒光りする武器、武骨で荒々しい暴力の象徴。今までどこか余裕のあったしのぶも、さすがに銃の登場にハッと息をのんだ。
承太郎が見せたスター・プラチナという能力。とても強力で、並大抵のことじゃかすり傷すら負わないだろうとはわかっている。
だが、それでも銃はやはり怖い。どれほど説得力を持たせ説明されても、現実世界最強の武器、銃は、しのぶにとって死そのものを連想させるのだ。
承太郎が、ようやく止まる。スティーリー・ダンが荒れる呼吸を整える。気がついてみれば彼と男の距離はもはや十メートルほどしかない。
いつの間にこれほど詰められてしまったのか。だが驚いている暇すら、今のダンには惜しい。
とにかく止めることはできたのだ。ようやく・・・・・・、ようやく! 承太郎が止まったのだ。
畳みかけるならここしかない。ラバーズが潜んでいる事実をもう一度印象付け、最悪ここは一時的に逃走してもいい……―――
ダンがそう考えている時だった。
無意識のうちに、彼は銃身を下げていた。承太郎の心臓目掛けて向けられていた暗闇が、足元へ向く。
最強のスタンド使いの眼が怪しく光る。そして男は絶妙のタイミングで彼は話しかけた。まるで日常の会話の一コマかのように、極めて自然に、そして如何にも気軽な感じで。
承太郎が言った。
「覚えてるか、スティーリー・ダン。てめェにはじめ会った時の事、ジジイを人質に取った時のことだ」
「…………?」
そうして一寸、立て続けにいくつかの事が起こった。承太郎の体から飛び出る大男の影。最強のスタンド、スター・プラチナが構えを取る。
スティーリー・ダン、反射的に及び腰になる。頭は冷静に射程距離外だと喚き立てるが、本能的な恐怖が理性を上回った。
男の膝が砕ける様に曲がり、彼は何もかもを捨ててその場から逃げようとした。脅しが効かない相手だと、そのとき初めて理解し、命惜しさにその場を逃れようとした。
逃がれようとした。
「『スター・プラチナ・ザ・ワールド』」
「え」
それが最期の言葉となる。スティーリー・ダンの記憶の中で最後に口にした言葉。
※代理投下者注
改行が多すぎるとのエラーで書き込めないので分割させていただきました
- 12 :
- 幸か不幸かと問われれば、きっと幸運だったのだろう。
スティーリー・ダンは自分が気づかぬうちに逝った。時が静止した世界で知覚すら不可能のまま、男はスター・プラチナに首をはねられ、一瞬で、死んだ。
一閃、目で追えぬほどの速さで振るわれた二本の指先。ザクッ、と小気味よい肉裂き音をとどろかせ、彼の首はピンポン玉のように綺麗に飛び、そして跳ねた。
坂を転がり、重力に従い、ころころころころ……。
驚愕を張り付けたままの首はしのぶの足元で、狙ったように止まった。
しのぶは見下ろす。見たくなくても、その生首から目が逸らせなかった。
自分の身に何が起きたかわからないまま、何が何だかわからない表情を張り付けた男の生首。
焦りと恐怖を焼き付けた瞳が、しのぶを見つめていた。しのぶは、視線をそらすことができなかった。
足が震え、呼吸が乱れる。足に力を込め、その場に崩れ落ちないよう、なんとかふんばる。
だがそんな彼女をつき落とすように……―――それは唐突に襲いかかってきた。立ちくらみのような、めまいのような。脈絡もない突然のフラッシュバック。
駅の死体、濁った臭い。そうでないはずなのに夫の、そして息子の死にざまがそれに重なる。
足元に転がる首。誰のものだろうか。スティーリー・ダンのものだったはずなのに。いつの間にか、息子の面影がそれを覆い隠す。
首なしの死体が、夫の一張羅をはおる。息子が首をサッカボールのようにドリブルする。
あらぬ妄想が、現実と重なり合い、氾濫し、混乱を生む。
しのぶは、その場で倒れないように、しゃがみ込むことで精いっぱいだった。
様々な感情がこみ上げる。同時に吐き気と、そしてなぜだか涙がせり上がった。
しのぶはその場にしゃがみ込む。長い間、彼女は動かなかった。
空条承太郎がスティーリー・ダンのデイパックをあさっている間も。点検を済ませ、首輪を拾い上げる音が聞こえても。
気遣っているのか、ただ単に待っているのか……彼女の様子を確かめる様に傍に男が立ちつくしていても。
川尻しのぶは、動かなかった。
◆
※代理投下者注
改行が多すぎるとのエラーで書き込めないので分割させていただきました
- 13 :
- いつかはその時が来るとはわかっていた。
それに近しいことは先のナルシソ・アナスイの時にも行ったことだったし、なにより自分は彼の凄みを理解していたつもりだった。
けれども、それでもしのぶはそうなって欲しくないとどこかで願っていた。彼の決心がどれだけ固かろうと、まだここでとどまっているうちは、彼は帰ってこれると信じていた。
踏切台から飛び降りる様に、もうその一線を越えてしまっては二度と戻れない。
空条承太郎は、たった今、殺人者になった。
スティーリー・ダンを殺したのは、空条承太郎。
誰かを守るためでもなく、誰かを救うためでもない。しのぶを傷つけないと確信していたから彼は拳を振るったわけではない。
彼は迷わなかった。きっとしのぶがもっと直接的に人質に取られていたとしても、彼は同じように殺しただろう。
もしかしたらその拳で、しのぶごと貫いていたかもしれない。足元に転がる生首、その男の何も写さない瞳を見ると、しのぶの胃がざわついた。
覚悟が、足りなかったのだ。
立てるか。そう承太郎に尋ねられ、しのぶはそっと頷いた。泣いてはいなかった。
差し出された腕を掴み、男の隣に並び立つ。彼女は承太郎の顔を見るのが怖くて、前を向けなかった。
覆いかぶさっていた影が動き、男が去っていくのがわかる。見れば車へ向かう男の後ろ姿があった。
彼の鉄仮面に負けず劣らず、その背中は何も教えてはくれない。大きくて、けれども淋しい背中だ。
このまま私はついていっていいのだろうか。彼と共に歩むのは間違った行為ではなかろうか。
ふとそんな疑問がわき上がり、しのぶの足が自然に止まる。男は変わらず車へ向かっていく。
でも……今さらどこに行くの? この人を、一人、放っておくつもりなの? こんなに優しくて……さびしい人なのに。
何秒かの後、しのぶの足が動き出す。しっかりと大地を踏みしめ、力強く前進していく。もう迷ってはいなかった。
彼女の顔色を伺うように視線を向けていた空条承太郎。しのぶは車を出すように彼を促し、助手席へと滑りこむ。
男は無表情のまま、しばらく彼女を見つめていた。そして……ゆっくりと頷き、車のキーをポケットから取り出す。
車のエンジン音が轟き、やがて消えていく一台の車。排気ガスが立ち込める街。後には誰も残っていない。
捨て残されたスティーリー・ダンの死体は、何も言わず、俯いたままだった。
- 14 :
- 以上です。指摘などありましたら連絡ください。どなたか代理投下してくださったら助かります。
状態表についてなのですが、したらばのNGワードに引っ掛かってしまい投下できませんでした。
実は文中の>>361->>319の間にもあったようで、細切れになったのはそのためです。
何がNGワードなのかはわかりませんが、規制がとけたら本スレに、駄目だったらwiki収録の際に状態表と一文を加えたいと思います。
管理人さん、できるようでしたらNGワードの確認をお願いします。
***
代理投下終了です。改めて投下乙でした。
いやあ承太郎の黒いこと黒いこと。でも有言実行だしいいのかな?
しのぶさんは良く壊れないなぁ。強い女性だw
ダンは長生きできないとは思っていたが……相手が悪すぎましたね
※代理投下時に分割やNGワード部の接続を行っていますのでcg氏はご確認ください。
- 15 :
- なんか投下・予約ラッシュ来てるな
これはアニメの影響もあるのか・・・?
俺はなかなか書き込めないから代理も何もできないが
(この書き込みも規制じゃなく書き込めることを願いつつ)
これでジョジョロワに人が集まると良いな。
そういえばyx氏の収録はどうすんの?2作品あるうち最初の方はもういいんじゃないの?
それとも議論待ち?
- 16 :
- ◆SBR/4PqNrM氏の代理投下行きます
- 17 :
- 326 名前: ◆SBR/4PqNrM[sage] 投稿日:2012/11/02(金) 21:07:30 ID:oEnzT.CU [1/19]
『ぼっ、ぼっ、ぼくらは 〈劇団見張り塔〉〜〜!』
『今から、
ジョナサン・ジョースター、エリナ・ジョースター、
ジョセフ・ジョースター、ルドル・フォン・シュトロハイム、
DIO、東方仗助、広瀬康一、噴上裕也、山岸由花子、セッコ、ナランチャ・ギルガ、パンナコッタ・フーゴ、
エルメェス・コステロ、マウンテン・ティム、ディ・ス・コ、シ―ラE、カンノーロ・ムーロロ
…の、SSを、投下するよォ〜〜〜!!』
『誰か代理投下を、よっろしっく、ねぇ〜〜〜〜!!』
『それにしても何だいこの人数! ちゃんとさばききれているのかなぁ〜〜?』
『そうだね、ちょっとリストラした方が良いンじゃないかな〜〜〜?』
『おい、ちょっとまて、お前、今俺の方みたな!? リストラするならやくたたずのお前の方だろ!?』
『はは、役たたずの下っ端同士で揉めてるぞ!』
『まちなよみんな、ぼくらはみんな揃っての 〈劇団 見張り塔〉 だろ〜〜?』
『うるせぇ〜、いい子ぶりっこ!』
『いた、やめろって、おいっ…!』
『ばか、それは俺の数字だっ』
『いてて、いてっ!』
『そ、それでは……』
『タイトル、【死亡遊戯(Game of Death)】……』
『……はじまり、はじま……りぃ〜〜〜……』
パタン……。
- 18 :
-
トクン …―――… トクン …―――… トクン …―――… トクン …―――…
微かな。
聞こえるか聞こえないか。感じるか感じないか分からぬ程に微かな。
儚く、もろく、今にも消えいりそうな鼓動。
それを無理矢理に動かしているのは、男の両手から発せられている生命のエネルギー。
古代より伝えられる、呼吸法により生み出される技。波紋、である。
背に負うた女性は、若く美しく、常ならば誰しもの心を癒しうるだろう気品すら感じられるが、その顔面は土気色をし、胸元は赤黒い血で染まっている。
出血そのものは止まっている。
しかし問題はそこではない。
黒騎士ブラフォードによって与えられた、鉄槌のダメージ。
それは間違いなく、彼女の骨を砕き、内蔵を破り、血反吐を吐かせている。
瀕死。
本来ならばすでに死んでいる。死んでいるはずの損傷。
それを、ただ波紋の力で、無理に生かしている。
もし、少しでも波紋呼吸のリズムが狂えば。
もし、その効き目が通じなくなるほどにの時間が経てば。
彼女は、死ぬ。
それを知り、だからこそ。
彼は、走るのを、止めない。
止められるはずもないのだ。
☆ ☆ ☆
「ジョースターの血統……?」
名簿を見る。確かにそこには、ジョナサン・ジョースターはもとより、二人のジョージ・ジョースターに、エリナ・ジョースター、ジョセフ・ジョースター、さらにはジョニィ・ジョースター等、多くの『ジョースター姓』の名前がある。
ジョナサン・ジョースター。
ゲーム開始直後にコロッセオでナランチャとR、行動を共にしていた屈強な青年。
正直で、誠実。
自分たち『ギャング』とは真反対な、気高く誇らしい世界の住人。
元々は資産家、上流階級の中で育ったフーゴではあるが、これまでの人生で、『本物の紳士』に出会ったことはほとんどない。
いや、むしろ、『上品で気取った連中』の、その裏にある醜さであるならば、ギャングになる前にもそれ以降にも、嫌というほどに見てきている。
その上で、フーゴは感じ取ったのだ。
「彼は、本物の紳士だ」と。
今、ジョナサンはナランチャと共に、簡単な食事と水分補給をしつつ、リストの確認をしている。
放送は、彼らがまだ意識を取り戻す前に行われていた。従って今ここにいる3人の中で、メモを取れたのはフーゴのみ。
放送後に意識を取り戻した彼らとフーゴは、近くの建物に一旦身を隠し、『放送』の内容を伝え整理しなければならなかった。
奇妙な境界からは、『ローマ』側の建築物。石造りの外観だが、中は広めのアクセサリーショップの様だ。
居住性を考えれば、住宅のどこかに隠れたほうが良かったのかもしれないが、異国の狭い住宅はいまいち勝手がつかめないし、外の様子を確認しづらく思えた。
それと近くに戦闘の痕跡があるというのも問題に思えたし、思案の末、西へ数ブロックほど移動することにしたのだ。
ここは、外の様子がよく見える大きめのガラス張りだが、内側にはショーケースやカウンターがあり遮蔽物に事欠かない。
裏口と二階への階段もあり、とっさの逃亡ルートも確認してある。
また、目が覚めた後のナランチャは、フーゴに言われて〈エアロスミス〉での索敵を始めていた。
その上で、無人の街のショップの奥、レジカウンター近くに、3人は陣取っている。
参加者とされる人間の名前。そして死者の数。
メモを確認しつつ、ジョナサンとナランチャは、驚きを隠せない。
そう、『77人』もの死者の数、その意味を、それぞれに異なった衝撃で受け取っている。
- 19 :
-
「なんだよ、これ、おかしーじゃねーかよ…」
震える声でそう吐き出すのは、ナランチャ。
「だっておかしーじゃねーか!? 俺ははっきりと見たんだぜッ!?」
叫びだすナランチャに、フーゴはそっと人差し指を立てて口元に寄せ、静かにするよう促す。
「たしかに、ナランチャ。ぼくらは最初の場所で、ジョジョ……ジョルノが殺されるのを観ている」
ジョジョ、という言葉にジョナサンが僅かに反応する。フーゴはなんとなしに、そういえば彼の名前、ジョナサン・ジョースターも、愛称として『JOJO』と呼ばれるのには相応しい、と思った。
「だったら…、だったらなんで、『名簿』にジョルノの名前があるんだよ!?
ブチャラティやミスタ、トリッシュが居るのは分かるぜ…。きっと『ボス』の奴が何かやってるんだッ……。
けど、まさか、『殺し合い』させるために、ジョルノを殺してから、また生き返らせたとでも言うのかよッ!?」
生き返らせた、という言葉に、またジョナサンが微かに反応した。
アバッキオの体の持ち主が『吸血鬼』であると即座に見抜いたりと、どうも彼はそのあたりに何か因縁があるらしいが、フーゴはまだ詳細を知らない。
「ナランチャ。この名簿が正しいのかどうか。それは今の僕らに確かめようは無い。
けど、それでも、君と僕はここで出会った。この名簿に名前のある、ジョナサンとも出会っている。
だったら、僕らがまずすべきことは、分かるだろう?」
何度も『このド低脳がーッ!』 などと『ブチ切れられた』ことのあるナランチャが、平時であれば気味悪く思うくらい優しく丁寧な調子で、フーゴが続ける。
唾を飲み込みながら、ナランチャはそれに応える。
「……ああ、わかってるよ。まずは、ブチャラティ達と合流する……」
「『チーム』が集まること。『任務』を達成すること。
それが一番だ。そしてその任務には間違いなく、『このゲームを仕組んだ奴らを倒す』ことが含まれる……!!」
「けど、けどよォ……!」
飲み込むべき言葉。けれどもナランチャは堪えきれずに吐き出してしまう。
「あの、アバッキオを『殺して、逃げた』でかいやつをッ……!」
「あいつは後回しだ、ナランチャ!」
その叫びを、フーゴはきっぱりと、そう切り捨てた。
日の光が出始めて、あの化物は逃げていった、と、二人には説明してある。
もちろん、「あの大男の中身はアバッキオで、化物となった宿命を背負い、その力で会場にいるであろう殺人者たちを始末して回るつもりでいる」などということは、言っていない。
そして、二人が聞いていないことから、『死者として告げられた名』の中に、アバッキオの名を付け加えておいた。
ごまかしに過ぎないと分かっている。しかしナランチャに問われて、誤魔化しきれる自信がなかった。
アバッキオの意志もある。あるが何より、そもそもフーゴ自身、そのことをどう捉えれば良いかの整理がついていない。
何よりフーゴは今、それら以上にどう捉えれば良いかわからぬ情報に混乱させられているのだから。
強く言われたナランチャは、やや意気消沈した様子で押し黙る。
立ち上がっていた足も萎え、半歩ほど後ずさり、傍のカウンターにもたれ掛かり項垂れる。
ナランチャとて、分かっているのだ。
まずは仲間と、チームと合流すること。『アバッキオの仇』を追うにしても、まずはそれからなのだと。
そして何よりも、ジョルノのことを確認したいという気持ちもある。
彼が本当に生きているのか? あの最初のステージで殺されたのは誰だったのか…?
ナランチャが不承不承ながらも納得したのを確認して、フーゴは改めてジョナサンに向き直る。
「ジョナサン…そう呼んでも構いませんね?」
「……あ、ああ。ジョナサン・ジョースターだ」
不意に声をかけられて、苦痛と困惑に顔をしかめていた青年は、悩ましげな様子を慌てて引っ込めてそう返した。
「辛いことを聞くことになりますが、教えてもらいたい。
この名簿の中に、ジョースター姓の人物が多くいます。彼らは君と関係が?」
小細工や、もって回った物言いは返って逆効果と考え、フーゴは率直に核心に触れる。
ジョナサンはその岩のような拳をぎりりと握り締め、それを震えさせながら口元にやりつつ、それでもはっきりと、「何人かは」と答えた。
ナランチャとも、フーゴとも、比べようもないほどに体格が良い。丸太のような脚は、チームの中でも一番痩せているナランチャの胴回りくらいはありそうだし、胸板は並みの格闘家にも引けを取らない。
それでいて粗野粗暴の風はまるでない紳士。その紳士の彼が、今はひとまわりもふたまわりも小さく見える。
- 20 :
- 「ジョージ・ジョースターT世、というは、僕の父の名だ……。U世とあるのが誰かは解らない。
ほかの名前も、もしかしたら遠縁の人かもしれないが、少なくとも僕は知らない…」
ジョージ・ジョースターは、T世、U世ともに、放送で告げられた『死者』に含まれている。
「何人かは、というと、後は…?」
再び、ジョナサンは苦痛と苦悩に顔を歪める。
「エリナ……」
エリナ・ジョースター。これも、名前がある。まだ『死者』としては呼ばれていないが、名簿には書かれている。
「僕の知っているエリナは、エリナ・ペンドルトン…。優しく、気丈で、誇り高い……僕の幼馴染で……最愛の人だ」
再びここで、口ごもる。
「結婚したいと、そう考えていた……」
ジョナサンはつまり、それを加味して危惧しているのだろう。
意地悪くも、或いは残酷なこの『主催者』は、彼が結婚しようとしている女性の名前を、敢えて『ジョースター姓』で名簿に載せたのではないか、と。
「君は、ディオという敵を追っている最中だと聞きましたが……」
フーゴが話の流れを変える。
「ああ。ディオは石仮面の力で吸血鬼となった、かつての僕の友人だ。彼は非常に危険な力を持っている。
それに……」
困惑と悔恨。複雑な感情のうずで藻掻いている。
「吸血鬼のディオは、死者を屍生人として蘇らせ、自分の手下にする能力を持っているッ……!
蘇ったものは、人間の生き血を啜る邪悪な亡者となってしまうんだ……!
僕の………僕の父も、まさかッ………!」
ぶるぶると震えているのは、恐怖ではない。怒りと悲しみ。それらの感情の波が、彼の体の全てに波紋のように広がっているのだろう。
「ジョナサン。確認させてもらいたい。
つまりそれは、君の父は、『すでに死んでいた』ということですか?
それなのになぜかこの『名簿』に名前があり、さらに先ほどの放送で『ここに来て死んだ』とされている。
だから、『ディオにより蘇らせられた後に、ここで再び死んだのではないか?』 と………。
そう考えているのですね?」
慎重に、言葉を選びながらも、はっきりと問い直すフーゴに、丸太のような両腕が伸ばされ、その襟首を締め上げる。
「ジョ、ジョナサン……!?」
慌てたナランチャが間に割って入ろうとするが、するまでもなく締め上げる力は勢いをなくし、怒りに燃えた瞳から、瞬時に強い後悔の色が浮かび上がる。
「わかってる、ナランチャ…。済まない、フーゴ……。
君たちも今しがた仲間を失ったばかりだというのに、僕は、自分の事ばかり……」
「気にしないでください、ジョナサン……」
襟元を直しつつそう言うフーゴ。
しかし。
フーゴがそう言うのは、何もジョナサンを気遣ってのことではない。
もちろんまるで気遣っていないというわけでもないが、フーゴにはそれよりも考えねばならないことがあったからだ。
いくつかはすでにナランチャにも話していた事を含め、改めて『名簿』としてもたらされた人名について、照らし合わせていく。
ロバート・E・Oスピードワゴンは彼の友人で、ウィル・A・ツェッペリは波紋法の師。そしてその同門の波紋戦士、ダイアーとストレイツォ。
黒騎士ブラフォードとタルカス、ジャック・ザ・リパーやワンチェン等ディオの配下の屍生人。
そして……。
「『DIO』もしくは、『ディエゴ・ブランドー』。このどちらかが、君の宿敵である『ディオ』かもしれない」
「ディオ・ブランドー、が彼の名前だ。
僕は最初、ウィンドナイツロットに来たときのように、催眠術のようにディオの罠にかけられてここに居るのではと考えていた。
けれどもし、この『名簿』のどちらかが『ディオ』で、『殺し合いの参加者』というのなら、全く別の何者かの仕業なのかもしれない……」
ジョースターの血統。『ディオ』との因縁。だが、しかし……。
「クウジョウ、とか、ヒガシカタ、というのは、まるで聞いたことがない」
再び、フーゴはしばし押し黙った。
そうだろう。きっとそうなのだ。
そしてだからこそ、それをいつ、どう説明するべきかを考えねばならない。
- 21 :
- ★ ★ ★
四方を壁に囲まれた、石造りの海の底。
あえて形容するならば、此処はそういう場所だ。
広大な敷地と、堅牢な外壁を持つこの施設の奥の奥、一切の日の当たらぬその場所で、彼は名簿に目を通している。
重厚な机に、クッションの良い椅子。棚や調度品もそれなりに値の貼るものだし、机の斜め向かいにある応接セットも同様だ。
元々それらは、刑務所内の他の場所にあったものだ。
GDS刑務所の女子監房内の一室を仮の拠点とし、いろいろと物を運び込んでいる。
女子監房はGDS刑務所のほぼ中央に位置し、管理ジェイルや医療監房等の施設に近い。
建物自体の、外に通じている窓などは全て塞いでおいた。
強いパワーのスタンドや、吸血鬼並みの膂力を持つものであればたやすくどかせる程度のものだが、ここで直接日の光にさらされる事はまずない。
地下へと通じる経路も確保している。よほどの油断をしなければ、たいていのことに対応できるだろう。
簡素な蛍光灯の明かりの下で、DIOは、広げた名簿とメモを見る。
150人の『参加者』。76人の『死者』。
その中には、馴染んだ名もあれば、知らぬ名もあり、配下や友人の名もあれば、宿敵や殺した者の名もある。
屍生人、波紋使い、スタンド使い…そして、「過去の、すでに死んでいるはずの人物」……。
過去の、というのは、いささかに主観的すぎる言い分だ。
彼ら(例えば先ほどそれを確認した少年、ポコなど)からすれば自分の方……、つまりはDIOこそが『未来の』人物だろうし、或いはDIOの時代より『未来から』来ている者もいるのだろう。
「セッコ」
座ったまま、DIOはそばにいた別の男へと話しかける。
「今は何年だ?」
呼びかけられ、セッコと呼ばれた、『奇妙な全身スーツ姿の男』は、作業の手を止めてしばし思案する。
しかし思案の後に帰ってきた答えは、
「……わッかんね〜〜。気にしたこともねーや」
というもの。
常にチョコラータの庇護下にいて、彼の言うままに殺しを働くだけの生活において「今が何年か」という知識は、確かに不要なものだったのだろう。
年、年月というのは、主観的な世界においては無用だ。それは社会性というものの中に存在する。
「そうか、なら良い」
そう言ってDIOは会話を打ち切り、セッコも元の作業に戻る。
ポコの証言。最初のホール、ステージで見た『空条承太郎と、よく似た男たち』。
そして、名簿に、放送された死者の名前。
これらを、『事実』と仮定するのであれば、この『殺し合い』を目論んだものは、『時空間を超越した能力』を持っていることになる。
だとしたら、それを、『どう扱うべきか』……。
そう、『どう対処するか』ではない。『どう扱うべきか』だ。
つまり、『天国への扉を開くために、使えるか否か』。
DIOにとって重要なのは、その点なのだ。
- 22 :
- 「な、な、DIO!
どう? どう?」
楽しげに、或いは些か誇らしげに、セッコがDIOへと聞いてくる。
思索から引き離され煩わしげ、ということはまるでない素振りで、DIOは僅かに視線を向ける。
「そうだな……、悪くは、ない」
しかしその言葉は、セッコにとっては望む評価には程遠いいものである。
「だ、だめか、これェ……?」
奇妙に小首をかしげるように、少しさみしげに返すセッコ。
「駄目、ということはない。
少ない材料で仕上げたにしては、なかなかセンスが良い。
特に、上下のバランス、かな。
真ん中を中心に、左右をあえて非対称にずらして配置し、それらを囲む並べ方も象徴的だ」
「そうか!? センス良い!?」
一転して、DIOの寸評にご機嫌になる。
「まあ、悪くはない、と言ったのは、やはり材料自体が足りないということにあるかな。
もともと小さかったし、数も少ないが、何より、バリエーションに欠ける」
「けどよォ〜〜〜、そいつはしょ〜〜〜がねェ〜〜〜しよォ〜〜〜〜……」
再び残念そうな表情のセッコに、DIOは指を1本挙げて続けた。
「ひとつ……。
ついさっき、『ここから逃げた何者か』がいる。
なぜわかるか……? は、問わないでくれ。私にも説明はできない。
ただ、『私を見ていた者』がいて、そいつは、『恐れて、逃げた』……。
そういう事だ……」
首筋に意識をやる。
首から下、今の『DIOの肉体』の下の持ち主である、ジョナサン・ジョースターの肉体。
その肉体を得たことで、DIOは『ジョースターの血統』との、奇妙な結びつきをもっているらしい。
だから、『分かる』 …いや、『感じる』というほうが正確だろう。
誰かは分からぬが、誰か。名簿にある『ジョースターの血統』の中の誰かが、『見ていた』のを、DIOは感じ取っていた。
そして、『逃げた』。
だとすれば、それは承太郎ではないし、また脅威となる相手でもない。
「少しの間、遊んで来てみてはどうだ?」
直接的な驚異ではないが、周りを飛び交うハエは、潰しておいたほうが良い。
アスワンツェツェバエの例では無いが、たかがハエに邪魔されることになるのは、面倒ではある。
「ウホッ!? い、良いのか? 遊んじゃって、良いのか、俺ェ…!?」
セッコは…『面白い』。DIOはそう考えている。
無邪気な子供のように、今彼は『新しい遊び』に、夢中になっている。
かつてのセッコは、チョコラータという男の『ご褒美』欲しさに殺しをしていた。
今、彼は、自分自身の中に、『Rことの意味』を生み出そうとしている。
悪意でも憎しみでもない。狂気でも利害でもない。
無意味の時平線から、意味を創造し起立させようとしている。
そのこと自体は、DIOにとってさして意味のあることではない。
ただ面白く、興味深いのだ。
そういう意味で言えば、セッコ自身がDIOにとっての、『新たに手に入れた面白げな玩具』そのものでもある。
「できれば一時間程度で戻って来て欲しいが、まあ、君のその『能力』なら、どこに逃げようと隠れようと、見つけ出して捉えられるだろ?
障害はほとんど無い。
僕の友人や部下たちに気をつけてくれれば、好きなだけ『材料』を持ってこれる」
新たなる創造物。セッコの初めての『作品』に目をやる。
「おう、おう! すげェ! DIOの言うとーりだ!
俺、次はぜってー、もっと『スゲェもの』作れるぜ!」
そう言うとセッコは、軽く飛び上がってからくるりと身を翻して、地面の中へと『飛び込んで』行った。
- 23 :
-
残るは、DIOと、『作品』。
赤錆た匂いと、糞尿の混ざった臭気は、近づくもの全てに吐き気を起こさせるだろう。
乾きかけた血と体液に肉塊は、うずたかく積み重ねられ、組み合わされ、形作っている。
先ほど、ここでその命を奪われた3人の少年、その残骸を材料として作られた、血塗られたオブジェ。
放送前にポコに対して試してみた、『食べてみる』という選択肢は、セッコにとって目新しい刺激ではあったが、そのことをまだ自分の中でうまく捉えきれていない。
それもそうだろう。
『食人行為』というのは、飢餓によるそれや性倒錯を除けば、一種の呪術的行為で、死者の肉体を自らに取り入れることで、相手の持っていた霊力を得る、というような意味合いを持つ。
言い換えれば、他者の持つ人格や精神を認めた上で、それらを『自分のものにしたい』という欲求、同化願望や支配欲こそが、食人という行為に意味を持たせる。
そういった呪術的な思考というのは、セッコの持つ感覚からは程遠い。
それでも敢えてその観点で考えるとすれば、セッコにとって『意味のある食人行為』と言えるのは、チョコラータやDIOを『食べる』ときになるとも言える。
セッコはその発想には未だ至れない。セッコにとって意味も価値もない人間の死体をどれほど『食べた』ところで、そこから意味を見出すことは叶わないだろう。
それで、次に彼が試したのが、この『アート』だ。
誰かを殺し、その死体を使って、何かを『創る』。
チョコラータは、『死の間際の恐怖』にそそられていたし価値を見出していたが、死んだあとの死体にはさほど関心を示していなかった。
元々医者でもある。彼にとって死体はただの物体でしかない。タンパク質とカルシウム。そこに、それ以上の意味などは感じないし見いだせない。
ならば、そのあとに自分なりの創意工夫を凝らしてみようというのが、セッコの新たな着想であった。
セッコにとってこれもまは、未知なる喜びだ。
死体、死者を弄ぶ、冒涜する、というような感覚はセッコにはない。
ただ純粋に、生まれて初めて、『自分で何かを作り出す喜び』を感じているのだ。
はなから、彼にとって、殺人はそれ自体が快楽でもなければ、忌避されるべき悪でもない。
神も人間性も信じていない、その存在すら知らない彼には、冒涜という概念すら無い。
彼にとっての殺人とは、『できるから、する』ものだし、死体とは『その結果できるもの』でしかないのだ。
「―――さて、どうする?」
そのセッコによる『初めての作品』、奇怪なオブジェを挟んで向こう側。
暗闇の中のさらにその奥に、DIOが言葉を投げかける。
「今ここで、君と私は、『ふたりきり』だ。
戦うか? 君が是非にというのなら、それもよかろう。
それとも ――― お話でもしてみるか?
私は、どちらでも構わないよ ―――」
奇怪なオブジェの向こう側。
暗闇の中のさらにその奥からは、すぐさまの返答は返ってこなかった。
- 24 :
- ☆ ★ ☆
紙が、あたり一面に散乱している。
それらのいくつかは、テーブルの上に並べられ、またいくつか床やソファの上に何箇所かに分けてまとめられている。
紙の多くは、会場内各所から〈オール・アロング・ウォッチタワー〉が『拾ってきた』ものだ。
コーヒーメーカーに『サンジェルマンのサンドイッチ』、『鎌倉カスター』等の新鮮な食料も、その紙の中にあった支給品である。
支給品の中には、『地下地図』のような有用なものから、武器類に、飲食品類、そして『図画工作セット』のような、何の目的で支給されたか不明なものもあった。
テーブルの真ん中辺り、本来は、綺麗に磨かれていたはずの面には、マーカーで縦横の線が引かれている。
ちょうど7×9マス。縦にはA〜Gの文字が振られ、横には1〜9の数字が振られていた。
そのマス目の中に所狭しと並べられているのは、駒。
小さく切り抜いた紙を、テープで三角形にし、名前とマークを書いてある。
例えば、ほぼ中央に位置する場所に、ボルサリーノ帽のマークが書かれた駒がある。
これは自分の位置を現す駒だ。
そのやや斜め右下に3つの駒があり、『◎フーゴ』、『○ナランチャ』、『☆ジョナサン』、と書かれていてる。
やや左下には、別の駒がいくつか有り、その中には『●セッコ』、『●ヴォルペ』、『△男』、そして、『★DIO』などとある。
名前が解らない人物には、とりあえず便宜的な属性だけ書いておいた。
やや左下の集まりの中の、南北戦争時の軍服のような服を着た無精髭の、『△男』は、今ところ『●=危険で殺る気満々の奴ら』とも、『○=殺る気の少ない手合い』とも解らない。
だから、『△=立場不明』の、『男=名前不明の男』の駒だ。
そのやや近くにある『●鳥』は、『危険な鳥』だし、『●チョコラータ』、『●サーレー』は、それぞれに殺る気アリな危険人物と分類している。
マークは、会話や行動からの危険度を簡易的に表しているそれと、もう一つ。
先ほど手に入れたものにあった、特筆すべき情報、『家系図』にある、『ジョースターの血統』と、その関係者を現す、『星』の記号。
ジョースターの血統。
ボルサリーノ帽を斜に被り、洒落た仕立てのスーツを着込んだ男、ムーロロは考える。
『亀』の中で、ソファに沈み込むかのように身を落とし、テーブルの上に並べられた駒と、いくつかの情報を書止めた紙を見ている。
煎れたばかりの熱いカプチーノには殆ど手をつけておらず、サンドイッチも鎌倉カイターとかいう甘いケーキ菓子も、何口か食べただけで置かれたままだ。
名簿の中にいる、驚くほど多い『ジョースター姓』の名前。そして、花京院という男から手に入れた、『家系図』の中に秘められた、『因縁』。
それらは、まず間違いなく、『鍵』だ。
この、『殺し合いのゲーム』を引き起こした何者かにとっても、おそらくは重要な『鍵』なのだ。
下弦の月が、呼ばれてこの会場では満月となっていた。
「一瞬で呼び出された」というのが実は間違いで、「さらわれたあと数日か数週間、どこかで昏睡させられていて、改めて全員揃えてからゲーム開始になった」
その可能性も考慮していた。
だが、違うのだ。
ムーロロはすでに『確信』している。
このゲームが始まってからの約6時間ほどの間。ムーロロはひたすら『亀』の中に潜み隠れたまま、会場中に飛ばしたカード、自らのスタンド〈オール・アロング・ウォッチタワー〉により、情報収集をしていた。
最初のステージで殺された男によく似た男たち。
すでに死んでいるはずの、ナランチャやアバッキオ、ブチャラティチームの面々に、暗殺チームの面々。
体が半分機械化されたナチスの軍人に、西部劇さながらの格好をしたカウボーイやメキシカン。
日本の学生やサラリーマンらしき者たちに、産業革命時代の英国紳士。
吸血鬼、屍生人、柱の男、波紋戦士。
とうの昔に死んだはずの、スピードワゴン財団設立者、ロバート・E・O・スピードワゴン。
彼らの振る舞い、言葉、話している内容…。
- 25 :
-
皆が皆、『演技をしている偽物』であったり、『催眠術や暗示か何かでそう思い込まされている何者か』というのでもない限り、結論は限られてくる。
そう。
ムーロロはほぼ、『確信』している。
この『殺し合い』の参加者は、『様々な時代から呼び出されて』おり、そしてその多くは、『ジョースターの血統と因縁のある者か、その関係者』である、という事を。
もちろん、まだ確定的とは言えない。すでに、その例外、『イレギュラー』と思える参加者たちもある程度は把握している。
それでも、この『ジョースターの血統』が大きな『鍵』である、という見立てには、『確信』を抱いている。
ジョセフ・ジョースター。
はじめのステージで殺された男に、酷似した男。
先ほど『コンタクト』を取ったこの男は、探っている間ずっと自分の名を言わなかったし、同行しているエリナという女も、襲いかかってきた長髪の剣士も、『ジョナサン・ジョースター』と呼んでいた。
しかし、ムーロロは既に、最初の頃に発見したナランチャが、ジョナサン・ジョースターと名乗るよく似た男と同行しているのを確認していた。
だから、カマをかけてみた。
「 ――― ジョセフ・ジョースターだな?」
否定は、ない。ムーロロの推測は当たっていた。
そして、ならばこの、『家系図』のとおりの『事実』が、見出されるかもしれない。
エリナ・ジョースター。家系図によれば、ジョセフの祖母。ジョナサンの妻。
その見捨てることのできるはずのない存在を『救う』ため、どんな決断をするのか ―――。
「―――クソッ、ごちゃごちゃくだらねーコト言ってんじゃぁねぇ〜〜〜ッッ !! 全部だッ! 全部教えろッ!!!」
怒号とともに首を絞め上げられる。
なかなか、直情的なところもあるようだ。
だが、震えるその両腕は、決して加減を間違えてもいない。本当に本気で締め上げて、こちらの情報を得られなりかねない愚を犯すほどではないというところか。
「貸しがさらに二つ、そう判断するぜ」
ムーロロは、表情ひとつ変えずに返す。
ひらりと動かした手の中には既にカードはなく3枚のメモ。
それがはらりと地面に落ちる。
「どこを選ぶかは、お前が決めろ。どこに行けば良いかなんてのは、俺に決められる事じゃぁないしな」
ジョセフの両手から解放され、襟元を直しながらムーロロは言う。
慌ててメモを拾い集めて、その中身を確認するジョセフだが、再び顔を上げた時には、暗闇にムーロロの姿はなかった。
ムーロロはようやくに、カップのカプチーノに口を付け、ふた口目を啜る。
――― どれを、選んだか。
その答えをムーロロは既に知っている。カードがジョセフの後をつけているからだ。
そしてその先で起きている出来事も、起こりつつある出来事も、ムーロロは知っている。
- 26 :
- しえ
- 27 :
- しえ
- 28 :
- しえ
- 29 :
-
- 30 :
-
- 31 :
- しえ
- 32 :
-
- 33 :
- しえ
- 34 :
- しえ
- 35 :
- しえ
- 36 :
-
それをしかし、知らせる事はしない。
ボス ――― ジョルノが今どこでどうしているかも知っているが、それをフーゴに教えることも、まだしない。
フーゴに伝えたのは、『家系図』にある、『ジョースターの血統』が、『鍵』になるのではないか、という推測と、「ジョナサン・ジョースターから目を離さず同行しろ」という指示。
とは言えフーゴのことだ。
おそらくは、『何世代にも渡るジョースターの血統』に関する話と、こちらの『煮え切らない反応』から、きっと敵が持っているであろう、『時間を超越したスタンド能力』に関してまでは、独自の推理でたどり着いていてもおかしくはない。
情報の全てを、与えてはならない。
情報には、使うべき時と使うべき価値が有り、今ムーロロのもっているそれは、おそらく他の誰もが及ばないだけのものだ。
あとは ――― それらを使い、どうするか ―――。
いつどこで誰と誰を組ませ、誰と誰を争わせるか ―――。
盤面の駒を見る。
ハートのキング。長年に渡る『ジョースターの血統』の宿敵、DIO。
この男を、どう『利用』すべきか。
さらには、家系図には書かれていないが、おそらくは彼らの一族と強い因縁のある対立構造、『柱の男』と、『波紋戦士』。
ジョナサンの体と、DIOの魂の落し子、『ボス』、ジョルノ・ジョバァーナと、敵対するパッショーネの殺し屋ども。
そして、いくつかの『イレギュラー』たち……。
家系図と名簿を見比べる。
『ディエゴ・ブランドー』、『ジョニィ・ジョースター』。
『家系図』に無い二人の『ディオ』と、『ジョジョ』は、果たしてどのような存在なのか?
盤面の駒を見る。
この二つの『イレギュラー』は、今行われている死の遊戯において、果たしてどんな利用価値があるのだろうか?
☆ ☆ ☆
「ジョジョ!? ジョセフ・ジョースターか、貴様ッ!?」
- 37 :
- しえ
- 38 :
-
シュトロハイムの大声に、一同の注意が引き寄せられる。
シュトロハイムと噴上裕也が戻ってから、さほど時間が経ったわけでもない。
意識のあったものは簡単に食事や休息をとり、また周囲を警戒しつつ、二人の女性の治療にあたっていた。
怪我の具合が幾分ましで、疲労もあるがむしろ緊張が緩和したことから意識を失っていたシーラ・Eがエルメェスより先に目覚め、ごく少ない時間ではあったが、自己紹介とわずかな情報交換をしはじめていた。
それぞれの名前と、簡単な経緯を確認し始めた、ちょうどその最中である。
サンタナ、そしてカーズ。二人の『柱の男』と関わってしまった、2組の即席チーム。
彼ら男女7人、そこに居合わせた者たちの反応は様々だったが、突如としとて古代環状列石の地下から現れた男へと、自然と視線が集まった。
「死んだものと思っておったぞ、このバカモノが!
しかし一体どんなトリックで……」
多くの。ここにいる多くの者が、『首輪の爆発で殺された』ことを確認しているハズの男。
シュトロハイムは、彼自身が『ジョセフ・ジョースター』と呼んだこの男が、生きている事に喜びこそすれさほど訝しみはしていない。
彼の中では、『死んだと思ったら生きていたとしても、おかしくはない』のだと言わんばかりの反応だ。
しかし、残りの者は違う。
(あの男は、確かに最初のステージで殺されていた……。それはここにいる皆が見ているはず……だが)
投げ縄を手にしつつ、救急車の中のエルメェスから離れずにマウンテン・ティムが鋭い視線を向ける。
(ジョセフ・ジョースター? おい待てよ、そいつは確か仗助のオヤジで、ヨボヨボの爺だったんじゃねーのか!?)
ハイウェイスターを傍らに呼び出す噴上裕也が脳裏に浮かべるのは、全く別の人間の姿。
(知ってるわ、その名前……! スピードワゴン財団とも関係のあった、ニューヨークの不動産王の名前と同じ……。
スピードワゴンと良い、いったい何なんだッ!?)
ようやく疲労からも回復し始めたシーラ・Eが、未だおぼつかない意識で困惑の目を向ける。
「シュトロハイム! 俺の事は今はいい!
細かい話をしてる場合じゃねーんだ!
それより……誰が、『ジョースケ』だ!?
エリナを、エリナばーちゃんを助けてくれッ!!」」
「ジョースケ? ジョースケならそこで別の女性の……」
ショトロハイムとしては質問攻めにしたいところだったが、ジョセフの勢いに押され、救急車でエルメェスの治療をしていた仗助の方を見やる……が、そこに仗助の姿は無かった。
何処だ? 慌てるシュトロハイムと、焦るジョセフの背後から、その声が聞こえてくる。
「アンタが何者で、何で生きてんのかとか……何で俺のことを知ってるのかとか……、いろいろと聞きてー事は山ほどある……」
いつの間にか後ろに回っていた仗助が、重く暗い眼差しでジョセフを見据える。
「お前がジョースケか!? 頼む、エリナばーちゃんを、『治して』くれッ……! 頼むッ……!」
懇願。悲痛なまでのその叫びに、周囲のざわめきも困惑も、さざ波が引くかのように消えていった。
だが ―――。
「もう、試した……」
- 39 :
-
- 40 :
- しぇん
- 41 :
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-
- 43 :
-
ぐらり。
地面が揺らぐ。
――― ため…した…?
――― 何を言っているんだ、とにかく早く『治して』くれ。
――― 俺の『波紋』で持たせられる時間はそんなに無いんだ。
――― もうこんなに冷たくなっている。
――― 青白くなった肌が乾いているし、足がうっ血してむくみだしている。
――― それに見ろ、首なんて、だらりと力なく仰け反り、目は既に何も見ていないじゃないか。
――― だから早く、『治して』くれ。
――― 何やってんだよ、おい。
――― 待て、聞こえ無いぞ。
――― きちんと、しゃべ
「俺のスタンドは、『物を直す』こともできる……、『怪我を治す』ことも出来る……」
絶叫が、響いている。
「けど ――― 『死者を蘇らせる』ことは、出来ない……」
絶叫が、ただ響いている。
行くあてすら無い、絶叫が ――― 。
☆ ★ ☆
ジョセフが仗助を選んだ理由には、見当がつく。
ムーロロの渡したメモにある道のりで、今いる場所から一直線に走って着く場所が、仗助のいる古代環状列石に続いていたからだろう。
不確かで、何ら確証の無い情報であっても、あれこれ吟味している時間など無い…そういう判断だ。
ハナから死ぬことを前提にすれば、複雑な地下迷路をたどってGDS刑務所へと行く手もあっただろうが、流石にそれは選ばなかったし ――― 選べるわけもない。
そして、地下、地上どちらから向かっても見つけにくい位置にいたジョルノは、その点で論外だったというワケだ。
とは言え。
時間的に最速の位置に居た仗助に助けを求めたものの、結局は『間に合わなかった』のだから、『エリナ・ジョースターの死』については、どれを選んだところで不可避だったということになる。
ならばDIOであれば蘇らせることができたのか? それをジョセフは、エリナは(そして、この殺し合いを仕組んだ者は)『よし』としただろうか?
そこに関しては、確認できずじまいだった。
今 ―――、それぞれの場所で、当事者とムーロロしか確認していない出来事が三つ、進行している。
一つ。ジョルノ・ジョバァーナは、『家系図』上のジョセフの母、リサリサを治療し終えたが、彼女の様子は『かなりおかしい』ということ。
もう一つ。DIOの元を訪れた新たな存在。テーブル上の駒、『△男』のこと。
この男のマークが、『●=危険で殺る気満々の奴ら』の仲間になるのか、あるいは、『○=殺る気の少ない手合い』となるのか……或いは、『駒そのものが盤上から消え去るのか』。
そして、さらにもう一つ ―――。
ジョセフの訪れた場所にいた一人と、それをつけまわしていたもう一人。
少し前まで『●カキョーイン』と一緒にいた、『●ユカコ』…『髪の毛を自在に伸ばして操る、スタンド使いの女』が、残り全員がジョセフの出現に気を取られているその隙に、『○コーイチ』…、『背の低いガキ』を絡め取り、密かに連れ去ったということ。
このことに、今はまだ、あの場にいる7人は、気づいていない。
この二つの出来事の顛末。その結果、その波紋が盤上にどのような結果をもたらすのか。
それはまだ、誰にも分からない。
【エリナ・ジョースター:死亡】
- 44 :
- ----
【E-6 ローマ市街・ショップ内 / 1日目 朝】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(中)、貧血気味、疲労
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
1.『参加者』の中に、エリナに…父さんに…ディオ……?
2.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
3.ジョルノは……僕に似ている……?
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。
【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:気絶中、額に大きなたんこぶ&出血中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
1.ブチャラティたちと合流し、共に『任務』を全うする。
2.ジョナサン…は、どうする?
3.アバッキオの仇め、許さねえ! ブッ殺してやるッ!
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。
【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.『ジョースターの血統』に、『ディオという男』……? とにかくジョナサンとは同行しておかないと…。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す。
3.ナランチャや他の護衛チームにはアバッキオの事を秘密にする。しかしどう辻褄を合わせれば……?
- 45 :
-
- 46 :
-
- 47 :
-
- 48 :
- 【E-2 GDS刑務所1F・女子官房内の一室 / 一日目 朝】
【DIO】
[時間軸]:三部。細かくは不明だが、少なくとも一度は肉の芽を引き抜かれている。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×5、Rチームの資料、地下地図、リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、携帯電話、スポーツ・マックスの首輪、ミスタの拳銃(5/6)、石仮面、不明支給品×0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:帝王たる自分が三日以内に死ぬなど欠片も思っていないので、いつもと変わらず、『天国』に向かう方法について考える。
1.『新しい訪問者』を見定める。
2.マッシモとセッコが戻り次第、地下を移動して行動開始。彼とセッコの気が合えば良いが?
3.プッチ、チョコラータ等とは合流したい。
4.『時空間を超越する能力』を持つと思われる主催者を、『どう利用する』のが良いか考えておく。
5.首輪は煩わしいので外せるものか調べてみよう。
[備考]
※『この会場に時間を超えて人が集められている』、『主催者は、時空間を超越する能力を持っている』であろう、と思っています。
※『ジョースターの血統の誰か(徐倫の肉体を持ったF・F)』が放送中にGDS刑務所から逃げ出したことは、感じ取りました。
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ
[道具]:基本支給品、死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]基本行動方針:DIOと共に行動する
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.逃げてった? やつ? で、遊んでみて、一時間くらいで戻る!
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康、空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況] 基本行動方針:大統領の命令に従い、ジャイロを始末する
1.何 な ん だ こ い つ ら は っ … … !?
- 49 :
- しえ
- 50 :
-
- 51 :
- しえ
- 52 :
-
- 53 :
- 【D-4 近辺いずれか。『亀』の中 /1日目 朝】
【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、『ジョースター家とそのルーツ』、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(8〜21)
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
1.情報収集を続ける。
2.『ジョースター家の血統』、『イレギュラー』、『DIOという男』、『波紋戦士』、『柱の男』、『パッショーネ』……。さて、どう、『利用する』べきか……?
[備考]
※〈オール・アロング・ウォッチタワー〉の情報収集続行中。
※回収した不明支給品は、
A-2 ジュゼッペ・マッジーニ通りの遊歩道から、アンジェリカ・アッタナシオ(1〜2)、マーチン(1〜2)、大女ローパー(1〜2)
C-3 サンタンジェロ橋の近くから、ペット・ショップ(1〜2)
E-7 杜王町住宅街北西部、コンテナ付近から、エシディシ、ペッシ、ホルマジオ(3〜6)
F-2 エンヤ・ガイル(1〜2)
F-5 南東部路上、サンタナ(1〜2)、ドゥービー(1〜2)
の、合計、10〜20。
そのうち5つは既に開封しており、『川尻家のコーヒーメーカーセット』、『地下地図』、『図画工作セット』、『サンジェルマンのサンドイッチ』、『かじりかけではない鎌倉カスター』が入っていました。
※【川尻家のコーヒーメーカーセット@Part4 ダイヤモンドは砕けない】
川尻家の朝には欠かせない、手軽に本格コーヒーをドリップできるコーヒーメーカーのセット。
※【図画工作セット@現実】
はさみ、のり、セロテープにカラーマーカーやクレヨン、色鉛筆に油粘土等々。
いわゆる小学校低学年の図画工作の授業で使われるようなものの詰め合わせ。
※【サンジェルマンのサンドイッチ@Part4 ダイヤモンドは砕けない】
売り切れ必死大人気のサンドイッチ。重ちーの買ったほうなので吉良の『恋人』は入っていない。
※【かじりかけでない鎌倉カスター@Part4 ダイヤモンドは砕けない】
神奈川県鎌倉市にある鎌倉ニュージャーマンで製造販売している、カスタードクリームをカステラ生地で包んだ洋菓子、と思われる。
東方朋子の好物で、杜王町在住の彼女は、おそらく通販かなどのお取り寄せで購入したか、知人縁者から贈答で貰ったていたのだろうから、そりゃあ一口だけかじっておかれていたら怒る。誰だって怒る。
- 54 :
- 支援
- 55 :
- しえ
- 56 :
- しえ
- 57 :
- 【B-4 古代環状列石(地上)/一日目 朝】
【チーム名:HEROES+(-)】
【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前。
[状態]:絶望、体力消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:首輪、基本支給品×4、不明支給品4〜8(全未確認/アダムス、ジョセフ、母ゾンビ、エリナ)
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.???
【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[スタンド]:なし
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊。
1.ジョセフの様子が心配。
2.『柱の男』殲滅作戦…は、どうする?
【東方仗助】
[スタンド]: 『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷、深い悲しみ、
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
1.ジョセフ・ジョースターに、エリナ……?
2.各施設を回り、協力者を集める?
3.承太郎さんと……身内(?)の二人が死んだのか?
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。
【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:全身ダメージ(小)、疲労(小)、空腹
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
1.ジョセフ・ジョースター? 仗助の親父の名前じゃなかったか?
2.各施設を回り、協力者を集める?
- 58 :
- しえ
- 59 :
- 【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前。
[状態]:フルボッコ、気絶中(?)、治療中、空腹
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1.徐倫、F・F、姉ちゃん……ごめん。
【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミ―』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:全身ダメージ(中)、体力消耗(大)、
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本、ローパーのチェーンソー
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
1.ジョセフ・ジョースター? 最初に殺された男に瓜二つだが……。
2.各施設を回り、協力者を集める。
【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:全身打撲、左肩に重度の火傷傷、肉体的疲労(大)、精神的疲労(大)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
1.ジョセフ・ジョースター? スピードワゴン財団関係者の不動産王と同じ名前じゃないか……?
[備考]
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。
※ジョージU世とSPWの基本支給品を回収しました。SPWのランダム支給品はドノヴァンのマントのみでした。
※放送を片手間に聞いたので、把握があいまいです。
【B-4 近辺のどこか /一日目 朝】
【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:左腕ダメージ(小)、右足に痛み、山岸由香子に捕獲され中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1.???
【山岸由花子】
[スタンド]:『ラブ・デラックス』
[時間軸]:JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前
[状態]:健康、虚無の感情(小)、興奮(大)、康一君を捕獲中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品合計2〜4(自分、アクセル・ROのもの。全て確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:広瀬康一をR。
1.康一くんをブッR。他の奴がどうなろうと知ったことじゃあない。
2.花京院をぶっ殺してやりたいが、まずは康一が優先。乙女を汚した罪は軽くない。
※康一くんをひそかに捕獲成功。まだ(ムーロロ以外の)他の者達に気づかれていません。
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以上で代理投下終了です。支援ありがとうございました、●でも大変なんだなあ……うーむ
- 60 :
- 投下乙です
代理投下の方も乙乙
c.g氏
改めて描かれると「Rこと」は重い
原作でも状況的に死んだだろうってことはあったが…
しのぶの存在は承太郎にとって救いとなり得るんだろうか、あるいは悲劇の引き金に?
SBR氏
ムーロロを中心とした情報生理が見事
ムーロロ、2ndのテレンスポジションになりつつあるか?w
個人的にDIO様と遭遇しちゃったディ・ス・コの将来が楽しみ
由花子がどうやって康一君を捕獲したのか気になるけど補足が必要というほどではないと思います
- 61 :
- 投下、代理投下乙です。
いろいろなロワを見てきたけど、たった六時間程度でここまでいろんなものをひとりで集めたやつが他にいただろうか…
そしてジョセフ……承太郎も身内の死であんなことになってるし、立ち直れるんだろうか…?
指摘というか要望に近いですが、ムーロロが開けた支給品5つはもともと誰に支給されたものだったのか明記して欲しいです。
Wiki編集の問題がありますので。
- 62 :
- いささか突発的ではありますが、本投下開始します
- 63 :
- 支援
- 64 :
- あー、すまない。
約束を破るようで申し訳ないんだが……『最強の話』はもうちょっと待ってくれ。
どうしてもここで話しておかなければならない連中を忘れてたんだよ。
君たちだって薄々気付いてたんじゃあないのか?
『一つだけ気になったのがジャイロの存在です。前作で『下の様子を見てくる』と言ったのに、何のリアクションなしは少し奇妙な感じがしました。
誤差範囲内なんで、そこまでと言ったらそこまでなんですけど。』
――と。
さらに君たちは、
『ぶっちぎってもらっても全然OKです。』
と言うだろうが、そうすると後々面倒だからな。いろいろ話を進めちゃう前にここで少し説明しておこう。
●●●
- 65 :
- C
- 66 :
- 「な……なんだってんだ、この状況」
ジャイロの口から思わず溜息が漏れ出す。
様子を見に外に出る、なんていうレベルではない。
よく部屋の中に危害が及ばなかったとむしろ感心するほどに、ホテルの中は壊滅状態だった。
蒸し風呂のような熱気、舞い上がる火の粉、顔中の穴という穴から玉のような汗がぶわりと浮かぶ感触……
廊下から中央ホールを見下ろせば炎のドームが。中に何人の人間がいるのかさえ解らない。
鉄球を叩きこんでみるか?
――否、それはできない。
自分一人で行動しているならまだしも……今はウィルを部屋に残したまま。
まして彼は戦闘が出来る状態ではない。となればこの現状をウィルに報告するだけにとどめるべきか。
どうするジャイロ・ツェペリ……自分が“納得”出来る結末をこれで迎えることが出来るのか――?
「おはよう、諸君。時刻は午前六時ちょうど、第一回放送の時間だ」
ジャイロの思考を遮ったのは戦況が変わったことが要因ではなかった。
主催者の――スティーブン・スティールの声が彼の鼓膜を震わせる。
「チッ――クショウ」
小さくそう呟き部屋に戻るジャイロ。
静かに扉が閉められた。
彼がもう数瞬だけその時間を遅らせれば、あるいは違う結末も見えたかも知れなかったのに。
●●●
- 67 :
- 放送で告げられたダイアーという名を呟くウィルを俺は放っておいた。
俺だって知り合いが死んでいる。文字通り命がけのレースを戦ってた相手だ。敵だったとはいえ、そりゃあ複雑な心境にもなる。
だが、事態の重要さはそこではない。
放送はどうも名簿の順に死んだ連中を述べたようではない。
となれば『死んだ順』に呼ばれている。
つまり……ウィルの知り合いは、あるいは師匠やら同胞やらはこの場で真っ先に……相打ちという可能性もあるが、一番乗りの死者だって訳だ。
それからこの名簿を運んできた鳩もだ。ワムウが出て行った窓から器用に入ってきたそいつは、俺が足輪から名簿を抜き取ったらすぐに出てっちまった。
ジョニィが言ってた、馬よりもずっと早いって言葉通りだったが、これで確信もした。リンゴォの隠れ家にいたという大統領のものと同じだろう。となればやはりこの殺し合いは――
「……ロ君、ジャイロ君」
と、どうやら考え込んでいたのは俺の方だったようだ。
ウィルに呼び掛けられ顔を上げる。そこには妙に晴れやかな顔をした男の顔があった。
「君が何を考えてるかくらいわかるわい。
ダイアーのことは仕方あるまい……奴とて無駄死にしたわけではなかろう。そう信じることにするよ。
となれば我々が彼の、いや彼らの遺志を“受け継いで”歩かねばなるまいな……
……ふむ、まあ私の場合は這いつくばらねばなるまい、か。フフ」
「――すまない」
「冗談じゃよ。君が謝ることじゃあなかろう。
それより聞かせてはくれないか?今さっき君が部屋を出て見てきたことを」
ウィルに促され話し始める。
ほんの数十秒の出来事だから、説明にはそれほど時間はかからなかった。
俺の口が閉じるとその場を静寂が支配した。重苦しい空気にはやはり暑さは、熱さは感じられない。
不思議な感覚だった。自分は自分の出来る精一杯をしたからこそこうしてこの場にいる。
だがなんだ、この妙なやるせなさは――
「ジャイロ君……いや、ジャイロ・ツェペリよ」
不意に改まって呼ばれたことに俺ははっと頭を上げた。
先ほどと同様に見上げる先にはウィルの顔。だがその顔には今度は緊迫感が見て取れた。
●●●
- 68 :
- 支援
- 69 :
- 「行け――ってあんた何を言ってるんだ?」
私の言葉を復唱し、さらに続けようとするジャイロ君を横たわったまま手で制す。
「さっきと同じこと言うが、君が何を考えてるかくらいわかるわい。
“自分はここでウィルの看病をしなければならない。このジイサンをこの場に放っておくわけにいくか。
そんな事したら医者であるジャイロ・ツェペリの名が廃るってもんだ。”
――大方そんなところだろう?」
「……ああ。だからこそアンタのさっきの言葉が信じられねぇ」
ジャイロ君がそういって顔を背ける。ふぅ、と小さくため息をつき私も視線を彼から外す。
見上げたそこは見知らぬ天井。そののっぺりとした木目を眺めながら私は話し始めた。
「聞いてはくれぬかジャイロ君。
……私は若いころ結婚していた。しかし石仮面のために家族を捨てた。
だけども……自分の運命には満足しておる。
なーに、まだこうして生きとる。死んだわけじゃあないんじゃからこれからどうにでも動けるよ。
――このようにッ!」
ド――z__ン!
「なっ!?
寝転がったままの姿勢!
肘だけであんな跳躍を!
――ったくアンタには本当驚かされっぱなしだぜ」
ベッドから椅子に――そうそう、動かない足もきっちり手できれいに組み直し――着席した私にジャイロ君は驚嘆しきりだった。
「解ったろう?たかだか半身の自由をもぎ取られた程度でこの私が負けると思うな!ってなもんじゃ。
どれジャイロ君、ちょっと、もうちょっとだけこっち寄ってくれんかの。
そうそう、そこがいい。……パウッ!」
ジャイロ君の腹の奥、その横隔膜に小指を叩きこむ。
彼は不思議と抵抗しなかった。普通こういうタイミングじゃあ、私が気を失わせたジャイロ君を放って逆に戦いの場に行くような、そういう攻撃にも見えたはず。
なのにホルスターにさえ手を伸ばさなかったのは、彼が医者だからかの。いや――私のパンチが強力だったんじゃな、ハッハッハ。
そうそう。灰の中の空気をすべて……1cc残らず絞り出せよ。
「ぐはっ!……ウィル、アンタいったい何したんだ!?」
「なーに、心配はいらん。ちょっとしたオマジナイってところじゃよ。心がリラックス出来たんじゃあないかね?
どれ、私のことは一旦忘れろ。あーいや、逆じゃな。今の一発で私のことを心底忘れられなくなったろう?君は戻ってくるさ、必ずな。
さ、行って来い。フフフ」
●●●
- 70 :
- しえ
- 71 :
- うーん、ここまで話せばとりあえず良いかな。もうちょっと突っ込んだところまで行ってもいいんだけど……まあいい。
さて、さっき話した勝者の定義で言うなら、ジャイロは間違いなく敗者だな。俺に言わせれば。
俺は『勝利の定義に反する負けに達しなかったから勝者だ』と言ったろう?さっき。
だが、ジャイロは今回の件で何かしら勝利の定義づけをしたか?
せいぜい『様子見て戻ってくる』がその定義。だとすればそこまでは彼だって勝者だった。
問題なのはそこから先だ。
行って来い、と言ったのはツェペ……ああ、ウィルの方、で。
それに対し彼は反対した。となれば『反対して残っているが勝ち』と言えるだろ?強引にでもなんでもウィルを黙らせて看病に徹する、あるいは自分の意志で行くと結論付けて出ていくか、それならそれでジャイロの勝ちさ。
しかし結果はどうだ。ウィルの言葉に言いくるめられ――というと彼がヘタレっぽく聞こえるから語弊があるけれども。渦中に、いや火中というか。乗り込もうとしてる。
つまりはどうだ、彼はこの場においては“敗者”だろう?あくまで俺の定義に沿った考え方だがね。
ジョニィ・ジョースターはジャイロのことをこう評価した。
『君は受け継いだ人間だ』と。
もちろんそのすぐ後に『どっちが良いとか悪いとかいってるんじゃあない』とフォローもしたが、事実ジャイロは受け継いできた人間だ。
そう、SBRレースでないこの場でもウィルが受け継いだダイアーの意志を。ライバルであったレース対戦者たちの無念を。
さらにはウィルの波紋エネルギーをも――まあこれは一時的なものだろうけど。ぜーんぶ受け継いできてるんだね、これが。
ジャイロは果たして『勝者』になってウィルのもとに戻れるかな?
――すまない、少々駆け足になったがここまでは話しておこうと思ったんだ。それじゃあ、また、改めて。
- 72 :
- 【B-8 サンモリッツ廃ホテル3階 一室 / 1日目 朝】
【ウィル・A・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:ジョナサンと出会う前
[状態]:下半身不随、貧血気味(軽度)、体力消費(小程度まで回復)、全身ダメージ(小程度まで回復)
[装備]:ウェッジウッドのティーカップ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.行って来い、そして戻ってこい、ジャイロ・ツェペリ
【ジャイロ・ツェペリ】
[能力]:『鉄球』『黄金の回転』
[時間軸]: JC19巻、ジョニィと互いの秘密を共有した直後
[状態]:疲労(小程度まで回復)、精神疲労(中)、全身ダメージ(ほぼ回復)、波紋エネルギー(?)
[装備]:鉄球、公一を殴り殺したであろうレンガブロック
[道具]:基本支給品、クマちゃんのぬいぐるみ、ドレス研究所にあった医薬品類と医療道具
[思考・状況]
基本行動方針:背後にいるであろう大統領を倒し、SBRレースに復帰する
1.行ってくる、そして必ず戻る、ウィル・A・ツェペリ
2.階下の渦中に潜り状況を判断する
3.麦刈公一を殺害した犯人を見つけ出し、罪を償わせる
4.ジョニィを探す
[備考]
ウィルに波紋を流されたおかげで体力が回復しています。彼が波紋エネルギーを使用できるかどうかはわかりません。
- 73 :
- C
- 74 :
- 以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
仮投下からの変更点
・文末等の修正
・ジャイロたちのもとにたどり着いた伝書鳩に対する言及を少々追加
見事にとってつけたような展開でしたが思いのほか酷評が少なくてホッとしております。
で、wiki収録に関してですが、『勝者』と『敗者』は自分の中では別の作品です。
ということで収録は別々に行います。
明日あたりにでも『勝者』を収録し、『敗者』は本投下後の意見待ちとしてもう少々おいておきます。
時間軸としては連続、投下順で見たら間に作品が挟まっている、という状態での収録を予定しています。
最後になりますが、ご意見ご感想ありましたらお待ちしております。それではまた次回作でお会いしましょう
- 75 :
- 投下乙です
二人のツェペリ、凄く「らしい」感じだったと思います
- 76 :
- 投下乙!
タイトルがすごく『いい』!
敗者から勝者にのし上がれるのだろうか、楽しみ!
- 77 :
- 投下乙です
怪我の功名というやつか、廃ホテル組が動き出しましたね
元気そうだがツェペリさんはこれからどうなるんだろう
- 78 :
- 感想ありがとうございます。
さて、『勝者』の方をwikiに収録しました。
作品ページのほか、本編目次・追跡表・書き手ページを更新しました。
不足のほか、投下から収録までに間が空いたため前後話のリンクや時系列別リンクが間違ってるかもしれません。ご指摘ありましたら連絡ください。
- 79 :
- 347 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 01:57:14 ID:52T8yFhU
学生や社会人が足早に駆けていく朝。誰もが立ち止まり、何事かと思うような轟音が、一件の民家から聞こえてきた。
木製の家具がけたたましい音をたて床に叩きつけられる。椅子は倒れ、机が床を滑り、衝撃に合わせて棚より何枚かの食器が落っこちてきた。
壁に投げつけられた少年は、ぐぇ、と短い呻き声をあげた。視界が一瞬で真っ白になり、心臓を止められたかのように呼吸ができない。
地面に落下し、二度目の衝撃を受けても、呼吸は戻ってこなかった。まるで息をする方法を忘れてしまったようだと、康一は空気を求めて喘ぎながら、思った。
パリン、と陶器が割れる音が聞こえる。砕けた細かい破片を踏みしめる音。
パキ……、パキ……、パキ……。足音に合わせ、倒れた康一に近づく一つの影。
彼を投げ飛ばした少女、山岸由花子が迫りくる。
由花子は興奮を抑える様に深呼吸を繰り返していた。ゆっくりと息を吸い、大きな扉を押し開けるかの様に、肺の奥にためていた空気を吐き出す。
彼女は必死で冷静になるよう、言い聞かせていた。
まだよ、まだ漏らしては駄目。ここからが本番じゃない、と。自身に言い聞かせるように、そう呟いた。
左まぶたの痙攣が止まらない。彼女の高ぶり、残虐性を知らせるように目元の筋肉が収縮を繰り返す。
ピクピク、ピクピクと。震えが大きくなるに従って彼女の中で、大きなさざ波が生まれる。それに呼応するかのように、彼女の美しい黒髪も震えた。
獲物を前にした蛇のように、ざわめき、首をもたげ、凶暴な目で康一を見下ろす。少年はごくりと唾を飲み込んだ。
「……それで」
弱弱しい声が沈黙を破る。康一の声は震えてはいなかったものの、懇願するような声音だった。
隠しきれない恐怖と戸惑いの色が漂い、由花子の心の震えを更に大きくする。憐れむような視線と声が、彼女の中の何かを刺激した。
少年は続きを言おうと口を開くが、途中でそれをひっこめる。代わりに短い、押し殺した唸り声が漏れ出た。
彼が言葉を言いきる前に、由花子の長く、獰猛な髪の毛が少年の体を宙吊りにしていた。
「一体、僕に……なんのようだっていうんだい…………?」
「よくもそんなセリフが吐けるものね……私に、あんな仕打ちをしておきながらッ」
ぎゃ、と短い悲鳴に続き、轟く衝突音。康一の体は弾丸のように弾き飛ばされ、もう一度壁へと叩きつけられる。
耳を覆いたくなるような音が聞こえた。グシャリと音を響かせ、少年の体が折れ曲がる。見ているほうが、聞いているほうが痛々しく思えるほどだ。
康一の体は何度も何度も、床に、壁に、そして天井に叩きつけられた。出来の悪いピンボールのように、少年の体は何度も跳ねかえり、はずみ、由花子はそんな様子を薄笑いを浮かべ眺めていた。
最後に一段と派手に食器棚を吹き飛ばし、そこでようやく由花子は一満足する。埃が収まらぬうちに、瓦礫の中より足だけ突き出た少年を引きずり出した。
由花子は彼を逆さ吊りにしたまま、改めて少年の顔を眺めてみた。愛する恋人と見つめ合うような至近距離で、彼の顔を見つめてみた。
青あざ、切り傷、水ぶくれ。傷だらけの泣きべそ。そんな表情を浮かべた彼は、大層ひどく、醜く見える。
由花子は笑う。情けない男ね、と少年を鼻で笑い、そしてそんな彼に向かって手を伸ばす。
少年への処刑はまだ終わっていない。由花子の高ぶりは、この程度では収まらなかった。
康一の悲鳴が宙を切り裂いていく。手入れのいき届いた尖った指先が、彼の傷口を抉りとっていく。
目に鮮やかな赤い肉、その奥底までずぶりずぶりとその指を射し込んでいく。康一が身をよじらせ苦痛にもがくが、由花子は一向に意に介さない。
爪が丸ごと埋まるぐらいまで、女は指を進め、長く轟く少年の痛みの叫びに身体を震わせた。心地よい興奮が彼女を満たしていた。
自分のことを侮辱したこのガキを、今確かに自分は蹂躙している。踏みつけ、屈服させ、懇願させている。他でもない彼を。この私が。
加虐心が空っぽの体へ流れ込む。素晴らしい感覚だった。満ち足り、充実感が、彼女を包んでいた。
由花子はしばし時間を忘れ、その高揚感に身をよじらせていた。康一のすすり泣きと絶叫が、民家を包むように響いていく。
- 80 :
- 348 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 01:59:17 ID:52T8yFhU
やがて満足したのか、由花子はその指を引き抜いていく。
些か名残惜しい気持ちもあったのだろう。突き刺した時の倍以上の時間をかけ、引き抜く際には関節を曲げ、爪でひっかき、彼の内側を徹底的に痛み付けるのを忘れない。
康一は几帳面に刺激を与えるごとに悲鳴を上げ、身をよじる。それが由花子にはたまらなく心地よかった。
「なんで……」
涙声の少年が哀れっぽく呻いた。依然逆さ吊り、宙づりの彼の頬を、傷口から流れ出た血が濡らしていく。
由花子は血で真っ赤に染まった指先を口で含み、唇を朱に染める。
口の中に広がる鉄苦さ。生温かく、張り付く様な弾力のある液体が口の中に広がっていく。
広瀬康一の血で自分が汚れることに嫌悪感はなかった。それを上回る満足感が、少女の中を満たしていたから。
反対向きの少年の頬を両手で包み、優しく撫でる。涙で潤み、問いかけるような少年の視線を受け止めながら。由花子はゆっくりといとおしむ様に康一の頬を撫でる。
血が筋になって少年の頬をすっと流れていく。赤い線が無数に走り、彼自身の血で肌が染まっていく。
今度はその両手で、十本の爪で、由花子は少年をいたぶり始めた。
万力の力で全ての爪を喰いこませていく。プツリ、プツリと肌を突き破る音。ジワリと赤の液体が滴り、零れてくる。
そしてそれに調和するように、少年の長い、長い呻き声がこだましていた。由花子は夢中でその行為を続けた。時間を忘れるほど、それに熱中した。
どれほどの間、そうしていただろう。どのぐらいの間、由花子は康一をいたぶっていただろう。
気がつけば由花子は肘まで真っ赤に染まっていた。少年の顔には無数の傷跡が蟻塚のように空いている。
二人はともに、制服の元の色がわからないぐらい、血まみれになっていた。
正気に戻った由花子はそっと康一をその場におろしてやる。
トスン、と軽い音が響き少年は久方ぶりに大地に降り立つ。彼にその事を喜ぶ余裕は既になかったが。
辺りが急激に静まり返っていった。しんと冷える民家と、誰もいない街並み。聞こえるのは康一が痛みに喘ぐ声と、彼の荒い呼吸音だけ。
由花子は彼を見下ろす。康一はうなだれ、その体を小刻みに震わせる。沈黙が二人を包み、しばらくの間、時だけが過ぎていった。
「山岸、由花子さん……なんだよね?」
康一が口を開いた。少女は返事を返すことなく、口を開いた少年を突き刺すように見つめる。
少年はそれを肯定と受け取ったようだ。彼は話を続ける。
「なんで、僕に、こんなことを」
「……殺し合いで誰かをRのに理由が必要とでも?」
由花子は少し間をおいてから楽しげな声でそう言った。ゾッとするような声だった。
氷のように冷たく、鉄のように頑なな声。であるのにその声は確かに喜びに満ちていた。
楽しくて仕方ない。幸せでどうにかなりそう。そんな感情が手に取って確かめられそうなほど、少女の声は朗らかで透き通っている。
相反する二つの感情をその声に乗せ、由花子の言葉が康一の鼓膜を震わせた。
少年の胃がぐらりと揺れる。確かな恐怖を、彼は感じ取る。
- 81 :
- 349 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 01:59:48 ID:52T8yFhU
湧き上がった感情を誤魔化すかのように、康一は言葉を繋げる。
焦燥感、危機感。二つの感情に突き動かされ、彼はこう付け加えた。
「でも、由花子さんは僕の……―――」
恋人だったんじゃないの、と。
だがその言葉を遮るように黒色の光が彼を襲い、少年はまたも黙らされた。
それを言えばどうなるかは先で嫌というほど味わったはずなのに、それでも康一は思わずそうこぼしてしまったのだ。
ひょい、と気軽な感じでラブ・デラックスが彼の体を締め上げ、そして康一の体が縛りあげられる。
これ以上ないほど痛みつけられているはずなのに、それでも痛覚だけは彼の体を離れていない。
ギリギリと、骨まで軋む髪の圧力。ひきつぶすように胃が、心臓が。内臓全てが圧迫されていく。
康一はもう言葉も出ない。身体中が激痛に溢れ、どこがどう痛いのかすら曖昧なほどに彼の身体は全身痛みで支配されていた。
しばらくの後、由花子が拘束を緩めた。絞りあげられた雑巾のように、惨めで汚い少年の残骸が、床に崩れ落ちる。
康一は低く、唸るように、泣いた。
「アンタのその図々しい話は聞きあきたわ。一度でも充分なのに、二度もそんな話は聞きたくない」
そこにはからかいの響きはなかった。しかし同時に温かみもなかった。
この民家に来てから始めて、由花子の顔に怒りの色が灯った。殺意や愛情、憎しみ以外の初めての感情だ。
由花子が康一を連れ去って真っ先に口にしたその話。それは彼女にとって侮辱以外の何でもなかった。
彼曰くこの舞台は様々な人々たちが集められ、その中には時間軸の違いあるとのこと。
曰く康一は由花子と知り合う前から呼び出され、故に由花子とはこれが初対面であるし、どんな感情を持てばいいかわからない。
将来の恋人と言われてもピンとこないし、由花子の気持ちに対しては戸惑い以外の何も持てない。
要約すれば、康一の言っていたことはこんな感じであった。そしてそれは由花子の中で暴力という感情を膨らませ、結果二人はこうして蹂躙し、蹂躙されている。
由花子にとってもその話はどうでもいいことばかりだった。
時代を超えていようがいまいが知ったことでない。康一が過去から来ていることに対してはそう、としか言いようがない。
他の参加者なんて知ったことでないし、だいたい殺し合いなんて話もべつにどうでもいい。
彼女にとって大切で重要なのは終始一貫して広瀬康一のみだった。彼女にとって広瀬康一以外は何一つ興味をひくものはなかった。
そして、だからこそ! だからこそ、なによりも!
これ以上ないほど! 異論の余地を挟めないほどに彼女が気に入らなかった事は!
それは!
「げフッ」
康一を次に襲った衝撃は締め上げるような痛みでもなく、叩きつけられるような苦しみでもなかった。
山岸由花子と言う少女自身が振るった拳による殴打。由花子の鋭い拳が直接、真正面から、康一の頬と脳を揺らした。
骨と骨がぶつかり合う音、鈍くこもった打撃音。少年の眼から火花が散る。
由花子は手を緩めない。熟年のボクサーのように、彼女は拳を振るい、そして同時に彼の身体に刻みつける様に言葉を吐いた。
- 82 :
- 350 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:01:34 ID:52T8yFhU
「なんで、アンタは私のことを知らないのよッ! 時代を超えた? 過去から来た? 未来では恋人?
ふざけるんじゃないわよッ! ならッ! そうなるはずだって言うのならッ! なんでアンタはッ!
私のことを『知らない』だなんていうのよッ!」
一言一言、区切る度に腕が伸び、康一の口から血へどが噴き出る。
一度は収まりかけた左まぶたの痙攣。残忍性が少女の中でずるりずるりと影を伸ばしていく。
濁流のように溢れかえる凶暴な気持ちが、由花子を突き動かした。彼女に拳を振るわせていた。
「未来なんてどうでもいいわ。過去から来たなんて言い訳よ。時間? 時空? 私たちには関係ないじゃないッ!
なんでアンタは私を見てないの? なんでアンタは私を知らないの?
こんなにも私は康一君を見てきたというのに。アンタがそうしてた間にも私はアンタを見ていたというのに。
康一君の魅力に気づいて、康一君の良さに気づいて、康一君のことばかり考えて。
なのに康一君はその時私のことさえ知らなかったっていうのッ!? 私に対して何の感情も抱いていなかった、そう言うのッ!?」
「がハッ…………!」
「私が康一君を想い、康一君を呪い、康一君を愛し、康一君を憎み!
康一君のために動いて、康一君のために走って、康一君のためにかけずり回って、康一君を殺そうとしていた時に!
アンタは私のことを『知覚』すらしていなかったッ! アンタは私の名前も、顔も、存在自体を知らなかったッ!
なんでなのよッ! 可笑しいじゃないッ! 私のことを何だと思っているの!? 舐めるんじゃないわよッ!
このクソガキがッ! アンタにとって私って何なのよッ! アンタにとって私はその程度の存在だとでも言いたいのッ!?
ふざけんじゃないわよ、この屑がッ!」
由花子の感情の高ぶりは、一向にとどまる気配を見せなかった。
無抵抗の康一をいたぶる行為は続いてゆく。康一は気を失うことも、逃れることも、そしてそのまま死ぬことすらも叶わない。
「私の中にいる康一君の分、康一君の中に私がいないなんて可笑しいじゃないッ!
どうして私が愛した分、愛してくれないの? どうして私が呪った分、呪ってくれないの? どうして私が憎んだ分、憎んでくれないの?
私が費やした時間の分だけ費やしなさいよ。私が殺したいと思うだけ私を殺したいと想いなさいよ。私が愛おしいと思ったぐらい私を愛おしいと想いなさいよ。
どうして康一君はそうしてくれないの? なんで、なんで、なんで? ねぇ、なんで、なんで? なんでなのかしら、康一君?」
一向に終わる気配の見えなかった暴力の嵐。ようやく拳の動きが止まった。少女の美しかった手は血でまみれ、手の甲は慣れない殴打に腫れあがる。
少年の顔はもはや判別不可能なほどに損なわれていた。コブと膨らみ、青あざと血に染まった肌。
幾つもの影が彼の顔を覆い、そして濃淡混じった無数の彩りが浮かび上がっていた。
康一は息を吸い込んで、それを耳障りな音として吐きだした。
何かを言おうと彼は口を動かしたが、それすら不可能なほどに彼の顔は由花子によって破壊されてしまっていた。
ただそれでも底のない彼の深い眼は、じっと少女に注がれていた。何かを訴える様に。
また深い沈黙が訪れた。潮時だろう、と由花子は思う。
もう充分だ、もういいだろう。これ以上耐えられない。
殺してしまおう。広瀬康一を殺し、そしてそれでおしまいだ。
彼女は髪を震わせ、康一の腕や足を押さえつける。そして腕を伸ばし、その首に手をかけた。
じわりじわりと馴染ませるように、由花子が康一の首を締めあげていく。ゆっくりと時間をかけて、少年の気道が塞がっていく。
「…………」
- 83 :
- 351 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:02:50 ID:52T8yFhU
少年の澄んだ目線はずっと彼女にそそがれていた。
責めるわけでもなく、恨みを込めたでもなく。
康一の視線は、ただひたすら真っすぐに由花子の中へと突き刺さっていた。
由花子が呟く。
「……何よ、戦う気なの?」
緑色のスタンドは控え目に姿を現していた。康一の上に馬乗りなった由花子、その脇三メートルほど離れた場所に、ふわりと浮かんでいる。
由花子は少しだけ力を緩めると、汚らしい昆虫を眺めるかのよう眼でエコーズのほうを向く。
康一が何を考えているのかはわからないが、そのスタンドは由花子に対峙するでもなく、ただそこに浮いているだけだった。
攻撃の姿勢を見せるでもなく、逃走の準備をするわけでもなく。エコーズは時折身体を揺すり、首を傾げるようなしぐさを見せた。
いちいち癪に障るやつだ、と少女は思った。
死ぬならさっさとRばいい。戦うならさっさと戦えばいい。
いちいち反発するガキだ。何故こうも無駄に抗うのか。どうして人がこうしようとした時に、それを邪魔するようにたてつくのか。
ああ、いらつく。黙って従えばいいものを。アンタは黙って私の言う通りにすればいい、それだけでいいのに……ッ。
そんなこともできないのか! そんなことすら邪魔しようというのか!
真意の見えない行動は彼女を惑わせる。エコーズの無機質な顔。何も浮かべない康一の顔つき。
その二つの曖昧さは少女を戸惑わせ、苛立たせ、そして怒らせた。
もしかしたらそれこそが康一の策なのでは。そう思ったが感情は押し殺せなかった。
由花子は緩めていた両手を完全に離し、スタンドを展開していく。
逃げ道を塞ぐように、ゆっくりと、だが広範囲に真黒な髪の毛が伸びていく。
四方八方、縦横無尽。部屋を、そしてそれどころか民家を丸ごと包むように、由花子の髪は張り巡らされていった。
エコーズはまるで蜘蛛の巣に迷い込んでしまった蝉のようだった。
逃げ道は塞がれ、自由に動くスペースはほとんどなく、視界はもはや真黒に染まっている。
時刻は早い時間だというのに室内は薄暗く、電気をつけなければとてもじゃないが廊下を進むのも困難だろう。
挑発にのっても構わない。やるっていうのであれば徹底的に、体の芯から刻みつけてやろう。
エコーズを切り裂き、同時に本人の首をへし折ってやる。
肉体的だけではなく精神的象徴としてのスタンドまでをも、彼女は切り刻み、八つ裂きにしようとしていた。
それほどまでに由花子は、猛烈に、そして容赦なく、康一の全てを破壊つくそうとしていた。
「…………」
エコーズが動きをピタリと止める。ラブ・デラックスが伸ばしかけていた末端を宙で留めた。
戦いはしんとした空白の後に起こる。短い間だった。その一瞬の間の後に、静寂が引き裂かれた。
緑色のスタンドが風のように動いた。その尾を丸め、解き放つ。狙いを定め放ったその一撃、弾丸のように一直線に向かっていく。
なだれ込む髪の毛は一部の隙間もなく、空間を押しつぶす。まるで堤防が決壊したかのように、黒い影が部屋中を覆い尽くした。
ズシン、と揺れる音。パリン、と割れる窓。床に倒れていた康一は突如跳ね起き、由花子を突き飛ばす。直後、少年が痛みに呻く声が聞こえた。
二人がいる民家はなんとか崩れ落ちるのを堪えていたが、ラブ・デラックスがトドメとばかりに柱を叩き折り、家は壊滅状態へと追い立てられた。
天井が崩れ、床は割れ、屋根が大きく傾いた。なんとか全壊はしなかったものの、崩れた民家の外観は同情を誘う。
- 84 :
- 352 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:03:24 ID:52T8yFhU
少女は訝しげに暗闇を見つめた。半壊の民家で、自らを髪でクッションのように包み込んでいた少女に傷はない。彼女のその浮かない顔は痛みからではなかった。
不可解だったのだ。
康一のエコーズが最後に放った攻撃が、少女を突き飛ばした康一の行動が、彼女の心を乱していた。
エコーズの攻撃は由花子目掛けて放たれていなかった。彼女から大幅に逸れ、背後にあった窓をねらったのだ。
康一は唯一といっていい攻撃の機会を放棄して、彼女の後ろの窓を破壊した。何故? 何のために?
少年には由花子を突き飛ばせるほどの余裕があった。ならば彼は何故あれほどまでに無抵抗だったのだろう。
突き飛ばした時もそうだ。あんなことする必要なんてなかった。その時間で、逃げたり、或いは攻撃に対処できたはずだというのに。
由花子にはわからなかった。
何をしたのかはわかっても、何故そうしたのかがわからなかった。
何が起きたかはわかっていても、どうして彼がそう動いたのかがわからなかった。
少女は、ふぅと息を吐くと、少し離れた場所に位置する康一の傍で片膝をついた。少年の脇腹に鋭く空いた傷口。それは由花子がつけたものではない。
何者かが、つい今しがたナイフで刺しぬいたような傷だ。彼女はラブ・デラックスを展開し、包帯のようにその傷口を覆ってやる。
治療とまではいかないが、これで多少出血は抑えられる。何もしないよりはましという程度の施しだったが、今はそれで我慢するしかない。
由花子はじっと康一を見つめた。自分の拳で、風船のように腫れあがった少年の顔を見つめた。
「……どういうつもりよ」
「…………」
「私はアンタを殺そうとしていたのよ?」
「…………」
「首に手をかけ、絞め殺そうとしていたのよ?」
「…………」
沈黙。康一は何も言わない。
だが間違いないだろう。何も言わなくても由花子にはわかっていたことだ。
だがどうしてもそれを受けいれられなかった。それを認めると自分が惨めで、情けなく思えて。それは彼女にとって許されざることで。
エコーズが文字を投げつけた瞬間、走った閃光。彼女を突き飛ばしたと同時に、抉られた康一の脇腹。
視界の端、窓に映った怪しい影。包帯巻きの怪しいスタンド。舌打ちと同時に聞こえた、うすら寒い男の笑い声。
由花子は叫んだ。康一の肩を掴むと、彼女はその体を揺すり、彼に向って怒鳴った。
「なんで助けたのよッ!? なんで今、私を庇ったのよッ!?」
考えてみればおかしなことだった。
由花子が康一をさらった時も、彼は暴れることなく無抵抗だった。
民家にたどり着き話をしている最中も、由花子が暴力を振るった際も、康一はスタンドを出さなかった。
冷静になればわかることだった。
康一は由花子をなだめようとしていた。由花子を落ち着かせ、辺りに注意を向かせようとしていたのだ。
彼女に向けられていた視線は二つの意味を持っていた。
辺りを警戒するようにという無言のメッセージ。そして康一自身の眼で、彼は彼女が危機に巻き込まれることのないよう、常に警戒していた。
エコーズを出現させたのは口を開けなかったのもあるが、相手のスタンドを視界に捕えたから。
由花子を挑発するようにスタンドを動かしたのは、彼女が攻撃の対象にならぬよう。
- 85 :
- 353 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:04:01 ID:52T8yFhU
広瀬康一は最初から“そうしていた”のだ。彼は“既に”由花子に出会った時から彼女を守っていた。
彼は理解していた。由花子がどんな人間かを。どんな激情家で思い込みが激しく、一度思い込んだら他人の意見を聞こうとしないかを。
無駄にもがけば二人もろとも屠られる。下手に刺激したなら殺人鬼に隙を見せることとなる。
康一はそれがわかっていたので、ああしたのだった。全ては自身と、由花子の安全のためだった。
犠牲になろうだなんて、そんな気持ちはなかった。
広瀬康一にとってそれはただ単にすべきことをしただけのこと。
未来の世界で自分が幸せにし、自分を幸せにしてくれるであろう少女をみすみすRことなんて、彼にはできるはずがなかった。
だから我慢した。痛くてもこらえた。言いたかったけど言わなかった。襲われる直前、彼女を突き飛ばした。
ただ由花子が気づくのが遅れただけのことだ。全てはそれだけのことだった。
「正直気の強い女の子とは聞いていたけど……まさか問答無用でここまでされるとは思ってなかったよ」
苦笑いを浮かべ、少年はそうこぼす。
腫れがすこしおさまったのか、もごもごとした声であったが、彼の口は言葉を紡いだ。
少女はまるで怒鳴られたようにその言葉に身体を固くする。
怒りは既に去っていた。殺意もいつのまにか、どこかに飛んでいた。
あるのは戸惑いと脅え。こんなことをした後でも、広瀬康一は笑った。自分をリラックスさせるように微笑んだのだ。
どうしてそんなことができる。何故そうまでしてくれる。
由花子はわからなかった。だがそのわからないという気持ちは、決して嫌ではなかった。
冷たく、黒く尖った殺意でなく、温かな濁流が彼女の中を駆け巡った。
罪悪感とそれ以外の“何か”が彼女の心を満たしていく。心を振るわせ、締め上げた。
「いきなりは無理かもしれない。やっぱり僕には初対面の女の子といきなり仲良くなるのは難しいや」
場所も忘れ、時も忘れ、康一は笑った。
そうしている場合でないとはわかっている。包帯巻きの謎のスタンド使い、彼の気配はまだ残っている。だがそんなことよりもやらねばいけないことがあるのだ。
罪悪感と戸惑いで、どんな顔をしたらいいかわからない。
そんな山岸由花子を放っておいていいわけがなかろうが。どうして彼女をこのままにしていられようか。
康一は床に腰を下ろしたまま、由花子の眼を見つめる。
だからさ、そう少年は言葉を繋ぎ彼女へと笑いかけた。朗らかで眩しいくらいの笑顔が彼の中で咲き誇っていた。
「まずはお友達から……始めませんか?」
- 86 :
- 354 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:04:49 ID:52T8yFhU
それで由花子さんが満足してくれたら、の話だけど。
そう康一が慌てて付け加えた言葉を、彼女はもう一度口の中で繰り返した。
由花子は思わず脱力してしまいそうだった。指や、肩や、首や、足から一つ、また一つ力が消えていく気分だった。
少女はその時、自らの敗北を知った。広瀬康一には敵わない。自分は一生この男に勝つことはできない。
肉体的にという意味ではない。精神的にということでもない。
由花子は恥じた。自らの未熟さ、そして正眼のなさを恥じた。それは同時に広瀬康一への称賛でもあった。
自分の行為を許した、この少年の懐の大きさ。少女はそれを認めた。小さいけれど、なんて大きな男なのだと由花子は思った。
「……お友達も何も、まずはここを切り抜けないことには何も始まらないわ」
どうしたってキツイ口調になってしまう。ついさっきまで殺そうとした相手なのだ。今さら彼の存在を認めたところで、どう対処を変えればいいのかわからない。
いや、認めたからこそ、それを相手に知らせるようなあからさま態度の変化は由花子にとって照れくさかった。
自然とぶっきらぼうな口調になり、視線は周りへ向けられる。警戒すべき敵がいることを、どこかで歓迎していることは否めなかった。
「そうだね。じゃあ、僕と協力してくれる?」
康一は何も言わなかった。その変化に気づいているのか、先より少しだけ笑みを深めると彼はそうとだけ言った。
由花子は黙り、すぐには返事を返さない。そしてふんと鼻を鳴らし、彼に早く立ちあがるよう腕を貸す。少年は痛みに顔を歪ませながらもその手を取った。
山岸由花子、広瀬康一。
ガール、ミーツ、ボーイ。少女は少年に二度恋をする。
今、スタンド使い最凶のカップルが、一人の殺人鬼と対峙する。
はたして愛は障害を乗り越えるのか?
to be continue……
- 87 :
- 355 :BREEEEZE GIRL ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:05:36 ID:52T8yFhU
【B-5 南部 民家/一日目 午前】
【J・ガイル】
[能力]:『吊られた男(ハングドマン)』
[時間軸]: ホル・ホースがアヴドゥルの額をぶちぬいたと思った瞬間。
[状態]:健康、イライラ
[装備]:コンビニ強盗のアーミーナイフ
[道具]:基本支給品、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る。
0.カップルRよ。
1.思う存分楽しむ。ついでにてワムウの味方や、気に入りそうな強者を探してやる。
2.12時間後、『DIOの館』でワムウと合流。
3.ワムウをDIOにぶつけ、つぶし合わせたい。
4.ダン? ああ、そんな奴もいたね。
【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:全身傷だらけ、顔中傷だらけ、血まみれ、貧血気味、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1.とりあえずこの場を切り抜ける。
【山岸由花子】
[スタンド]:『ラブ・デラックス』
[時間軸]:JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前
[状態]:健康、血まみれ、???
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品合計2〜4(由花子+アクセル・RO/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:広瀬康一をR?
1.康一くんをブッR? まずはここを切り抜けてから。
356 :BREEEEZE GIRL ◆c.g94qO9.A:2012/11/08(木) 02:09:23 ID:52T8yFhU 以上です。何かあったら指摘ください。
元ネタの歌は凄く爽やかで素敵です。UよりTのほうが好みです。
どなたか代理投下をよろしくお願いします!
- 88 :
- 投下乙!
うわ、すごい。こう来るとは
これは惚れますわ
- 89 :
- 投下乙です。
二人の間に時間の壁なんて無かったんや!
- 90 :
- 投下乙
康一くんまじイケメン
- 91 :
- 投下乙
康一くんがイケメンすぎて震えるぞハート!
これは由花子じゃなくても惚れざるをえないな
- 92 :
- 358 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:05:34 ID:VPgF32Is
じっと空を眺める男の後ろ姿がそこにはあった。遠く広がる空には藍色が滲み始め、いよいよ太陽の光も強まり始めていた。
思えば遠くまで来てしまったものだ、と男は思った。走って、走って、走り通して……ついにはこんなところまでやってきてしまった。
不意の哀愁が彼を襲った。ただ理由もなく、乾いた砂漠と一族の歌が懐かしくてたまらなくなった。
時間は恐ろしくゆったりと辺りを漂っている。男は手元に残った紙切れに、もう一度眼を落した。
何人もの名前がそこにはあった。数えるのも億劫になるほど、人の名前が記されている。
そのどれもが彼にとってはどうでもいいことのように思えて、男は黙って名簿をカバンにしまいこんだ。
今は考えるよりも行動しよう。為すべき事を終えれば幾らでも時間はあるはずだ。
静まり返った街並みを一人、男はゆっくりと進んでいく。
恐れる必要はない。何一つ見逃すまいと辺りに眼を配り、彼は慎重に足をすすめていった。
ジョニィ・ジョースターはそう遠くない場所にいる、と彼は思っていた。
これと言った理由があるわけではない。強いて言うならばあの青年が見せた暗く冷たい眼だろうか。
あの眼を思い出すたびに、彼の中でその想いは大きく膨らんだ。それは次第に思いというより確信にすり替わっていった。
ヤツの眼を思い出せ。あれは覚悟の座った目だった。自分の目的のためならば難なく一線を超えてしまえる眼。
ヤツは、俺と同じ眼をもっている。ジョニィ・ジョースターは俺と同じだ。目的のためならば手段や方法を選ばない意志。
それをヤツは持っている……!
ピりッ……と空気が張り詰めていくのを感じ取った。もはやそれは男の中で確信と言うものから確固たる事実として姿を変えていた。
男の足が自然に早まる。ぶるり、と電流が駆け抜けていくような感覚が彼を襲い、彼の身体は戦いを前に自然と高揚し、緊張し、震えた。
男は足を進め続けた。一切気を緩めることなく街の道を歩き続け、そして次の十字路を左に曲がったところでピタリと立ち止まった。
いた。そこに立ちつくしているのはジョニィ・ジョースター。
二本の足でしっかりと立ち、左手は右手首を固定。銃の狙いを定めるように、その右手を彼目掛け伸ばしている。
即座に男はスタンドを傍らに呼び出した。わざわざスタンドを隠す必要はないと思った。
青年の背後に漂う薄い影は間違いなくスタンド像。どうせわかってしまうことならばわざわざ隠すまでもない。
青年の足が自由に動いていることは確かに驚くべきことだった。しかしそれもあまり考慮すべき事ではない。
この一本道、例え足が動こうが動かまいが、逃げ道はない。つまるところ、戦いは単純だ。
生きるか死ぬか。数時間後、ここに残るのはジョニィ・ジョースターか、サンドマンか。
吸い込む息はどことなくざらざらしていた。呼吸を躊躇うような重い沈黙が辺りを満たし、二人はその場に凍りついたように動かない。
狙いを定める青年の指先。懐に飛び込もうと力を込めた男の足。隙のない二人はどちらも動かない。動けない。
風が二人の間を通り抜けていった。沈黙を青年の言葉が破った。
「君は何のために戦っている……?」
- 93 :
- 359 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:05:58 ID:VPgF32Is
ちょっとした静寂が二人の間を流れる。風が吹けば消し飛んでしまいそうなほど、薄い静寂。
「土地のため、家族のため、一族のため」
男は短くそう答えた。青年は何も言わず、ただ頷いた。返事のしようがなかった。
男は一呼吸置くと、歯の隙間から漏らすように息を吐き、話を続けた。
別に話す必要はなかった。二人は戦うべきはずで、おしゃべりなんかを楽しんでいる場合ではない。
だというのに、何故だかそうしなければいけないと思った。
そうしなければ自分の行為がまちがった、汚れたものに成り下がってしまう。そんな気がインディアンの彼にはしていた。
「俺はただ奪われたものを取り返したいだけだ。ほかは何も必要ない。
大地があって、精霊たちを祭る聖地があって、一族が暮らせるだけの場所があればそれだけでいいんだ」
「…………」
「綺麗事ばかり言ってはいられない。
例え土地と言うアイディアが俺たちにとって掴みどころのないものであったとしても……。
後から乗り込んできた者たちが、勝手に権利という紙きれで主張しようとも……。
俺はただ、俺たちの生活を守りたいだけだ。なによりも俺たちにとっての大切なものを守りたいだけだ」
「…………」
「……そして、そのためなら俺は躊躇わない。一族を救うためなら、俺はなんだってやってやる。
レースで一位にもなってやる。金を集めて買い取ってやる。誰かを犠牲にしなければいけないとでもいうのなら、殺しだって、やってやる」
言葉が宙に消えていくと、再び辺りは沈黙に満ちた。静けさが影を落として二人の間を漂う。
青年はゆっくりと手を下した。銃のように突きつけていた指先は地面を指し、背後を漂っていたスタンドが姿を消す。
青年は無防備な姿をさらしていた。チャンスだ、と男は思った。
何故そうしたかはわからないが、青年はみすみす大きな隙を見せていた。ジョニィは直立不動、サンドマンは臨戦態勢。
その一瞬は、大きな一瞬として勝負を決定づけしまうだろうというのに……青年は構えを解いた。
固く冷えたコンクリートの感触を確かめる様、そっと足先に力を込める。サンドマン、いつでも動ける体制で初撃を狙う。
青年はそんな動きを見せても、何も言わなかった。何も動かなかった。
黒く乾いた目線が男を突き刺すように見据えている。その沈黙は話の続きを促すようだった。
彼の懐まで飛び込むのにどれぐらいの時間が必要だろうか。何度跳躍をし、どれほど踏み込めばこの拳は彼に届くだろう。
もう何も話すことは残っていなかった。しかし、考える時間が欲しかった。
サンドマンは白々しいとはわかっていたが、話を続けた。彼の体を貫くイメージを脳裏に浮かべながら、青年の問いかけに答えを重ねる。
「だからジョニィ・ジョースター、俺はお前をR。お前にはここで死んでもらう。
遺体を大人しく引き渡せばと考えていたが、お前はあまりに知りすぎている。
足が動くようになっていて、俺の知らないことを多く知っているようにも思える。
取引を確実にするためにも、お前にはやはり死んでもらうしかない」
「……一族のため、聖なる大地のためか」
「ああ、そうだ」
青年はため息をこぼさなかった。その瞳に感情の波風一つ立てずに、彼は言った。
「―――ないんだよ、サウンドマン」
- 94 :
- 360 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:06:24 ID:VPgF32Is
耳が痛くなるほどの沈黙が落ちた。
インディアンは眉をひそめた。まさに今飛びかかろうと、足に込めていた力を緩めた。
目の前にいる青年が放った言葉の意味が理解できなかった。彼の言い放った五文字の言葉が、一体何を指し示しているのか、彼にはわからなかった。
青年は繰り返す。なくなったんだ、とはっきりとした口調で繰り返した。男は何が、と聞き返すことができなかった。
青年の瞳は寒々しさを覚えるほどにからっぽだった。がらんどうの空洞の奥には感情が潜んでいるかどうかも、わからない。
肌の下で心臓が大きく膨らんでいくのがわかった。それが上下に揺れて、肺と喉が締め付けられた。男は無償に苦しかった。
沈黙がこれほどまでに苦しいということを、彼は今初めて知った。
今から始まるものが何であるにせよ、決して良くないものだということだけはわかっていた。
多分言葉を遮るように襲いかかることもできたはずだ。彼を黙らせるように飛びかかることも容易かったし、きっとそうしたほうが自分は幸せなのかもしれない。
けどそうしなかった。男は、息を殺し、青年の言葉を待った。ジョニィ・ジョースターは話を続けた。
「1890年12月28日のことだった。
その日サウスダコタ州、ウーンデット・ニーで争いが起きた。争いという名の虐殺が行われた。
米軍第七騎兵連隊はスー族インディアン、女子供を含む200人を、或いは一説によれば300人以上を、一斉に殺した。
軍は速射ホッチキス砲で無差別砲撃を加えたんだ。それだけでなく、当時新鋭のスプリングフィールド銃がこの虐殺では試用された。
幼い子を抱いて逃げる女性も、馬も、犬も、子どもも狙い撃ちし、皆殺しにされた。100人弱の戦士たちは、没収された銃を手にするまでは素手で虐殺者たちと戦った。
戦士たちは銃をとった後はテントに立てこもり、白人を狙い撃ちした。テントに火が放たれ、全身に銃弾を浴びるまで勇敢に戦った」
何を言っているんだ、と思った。お前は一体どこの、何の、誰の話しているんだ。
しかし話を聞けば聞くほど鮮明に、男の頭の中にその光景が思い浮かんだ。生々しいほどのリアリティがその話にはあった。
銃弾を喰らいもんどりうつ戦士たちの姿が見える。泣きながら母の名を呼ぶ子供たちが撃ち殺される。子の死体に縋りつく女たちが物言わぬ亡きがらに変わる。
決して降ることなのない、真っ赤な雨が砂漠に堕ちていた。息を吸い込めばその臭いをかぎとれるほどに、青年の話は鮮烈だった。
青年はまるで実在した、本当の事件のことを話しているようだった。男は自分の足元がゆっくりと崩れ落ちていく錯覚を覚えた。
「銃と砲弾の降り注ぐ中、女子供たちはそれでも3キロばかり逃げた。だが負傷のためにそこで力尽き、一人、また一人と倒れていった。
部族員のほとんどが武器を持たず、それを四方から取り囲んだ兵士達が銃撃した。白人は29人死んだ。白人側の負傷者は39人だった。
インディアンの抵抗はないに等しかった。白人たちは味方の攻撃の巻き添えを食って死んだんだ。それほどまでのすさまじい無差別銃撃だった。
ある兵士はその様子をこう語っている。
『ホッチキス砲は1分間で50発の弾を吐き、2ポンド分の弾丸の雨を降らせた。命あるものなら何でも手当たりしだいになぎ倒した。
この女子供に対する3キロ余りの追跡行は、虐殺以外何ものでもない。幼子を抱いて逃げ惑う者まで撃ち倒された。動くものがなくなってようやく銃声が止んだ』
またある兵士はこうも語っている。
『これまでの人生で、このときほどスプリングフィールド銃がよく出来ていると思ったことはない。R飲み子もたくさんいたが、兵士はこれも無差別虐殺した。
この幼子達が身体中に弾を受けてばらばらになって、穴の中に裸で投げ込まれるのを見たのでは、どんなに石のように冷たい心を持った人間でも、心を動かさないではいられなかった』」
めまいが彼を襲っていた。吐き気もだ。
聞きたくないと思えば思うほどに、ジョニィ・ジョースターの言葉一つ一つが容赦なく彼の鼓膜を揺すぶる。
やめてくれ、と男は叫びたかった。彼の話を遮り、殴りつけ、その荒唐無稽な話で自分を惑わせるのはやめろと怒鳴りたかった。
だが彼がそう思えば思うほど身体は固くなった石のように地面にこびり付き、動かなかった。
青年の話は暗く死んだ世界の向こうにあるものを想像させた。荒涼とした砂漠と、誰ひとりいない故郷の影。
- 95 :
- 361 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:09:19 ID:VPgF32Is
「ワゴン砲の砲撃でばらばらになったたくさんの死体の中、こときれた母親の胸でRを吸おうと泣き叫ぶ赤ん坊もいた。
虐殺から数日後、凍結した女性の死体の下から赤ん坊の泣き声が聞こえ、女の子の赤ん坊が発見されたんだ。
死んだこの女性の娘で、発見された時、母親は彼女を守る様に腕にうつ伏せになって娘を抱いたまま死んでいたと言う。
彼女はその後、軍率いる准将に“ウーンデッド・ニーの虐殺の生きたマスコット的存在”として利用され、育てられた。
ロスト・バードと名付けられた彼女は結局のところ、差別や虐待に苦しみ29歳の若さで死んだ。最後まで故郷のことを想い続けていたと記録は語っている。
この虐殺を白人側は“ウーンデッド・ニーの戦い”と呼び、虐殺を実行した第7騎兵隊には議会勲章まで授与した」
男は青年の声に混じって風の歌を聞いた。一族皆の声をのせ、笑いや雄叫びが混じる、懐かしい歌を。
砂漠に立ち上る蜃気楼のように、全てが捩じれて、霞んでいく。朝の日差しが彼を包み、視界全てが真っ白に染まった。
足元がフワフワする。平衡感覚が狂い、全ての感覚がマヒしていく。
いっそのこと悲しみや苦しみの感覚もマヒすればいいのに。そう願ったがむしろ感情は殊更鋭くなっていた。
全身を針で貫いたように、痛みが彼を襲っていた。
「サウンドマン、君の帰るべき場所はもうない。君が守りたいと思ってるものはもう失われた。
アメリカ政府は同日、フロンティアライン消滅を宣言した。
事実がどうであれ、結果は変わらない。その日、アメリカ政府にとってインディアンは消滅した。
無関係だった150人もの女子供は無抵抗、無意味に、家畜同然に虐殺された」
―――君の部族は、もう、死んだんだ。
▼
- 96 :
- 362 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:09:57 ID:VPgF32Is
「うそだ」
長い長い沈黙の後、零れ落ちた言葉はそんなものだった。それはガラクタのように意味を持たない言葉だった。砂漠でコンパスを失った地図よりも無価値な言葉。
そうかもしれない、とジョニィ・ジョースターは返した。
彼の眼はとても静かだった。そしてとても透き通っていた。砂粒を含まない、無機質で、固くて、気温の感じられない眼だ。
風の歌が止んだ。もう誰の声も聞こえなかった。誰の歌も聞こえなかった。
「ウンデット・ニーの虐殺は避けられなかったという説もある。虐殺が、ではなく民族の滅亡が、という意味らしいけど。
君も知っての通り、生活環境の破壊は加速していた。インディアンは住む土地、住む土地追い出され、絶望のどん底にあった。
きっかけがなんであれ、衝突は起きただろうということだ。それが濁流で押し流されるように一瞬なのか、真綿で締める様にじわりじわりとなのかの違いだ。
そしてその結果がどうであれ、それを指揮するのは、指示するのはアメリカ政府だ。インディアンに対する排他的行為は、他でもない、公式見解だった。国民の総意だった。
アメリカ国民が、移民たちが、白人が、そして……大統領が、それを認めたんだ」
息だけが不自然に短く、途切れ途切れに繰り返されていた。
言葉はなによりも男の心を傷つけていた。それは心臓を刃物で抉り取るかのような激痛を男に与えていた。
青年の言葉には一切の許容も、容赦もない。インディアンの男はそっと眼を瞑った。
「サウンドマン、君はそれでも戦うのか。君にはもう守る故郷も、守るべき人もいない。それでも、例えそうだとしても、君は戦うというのか」
真冬の砂漠よりも冷たい孤独感が彼を襲っていく。そこにはなにもなくて、誰もいない。
何もかもが崩れ落ち、湧き出た故郷の記憶さえ次々に失われていく。砂漠の砂を掬おうとしているかのようだ。急速に全てが現実感を失っていった。
光が消える。臭いが消える。風が消える。声が消える。もう何も考えられなかった。もう何も考えたくなかった。
「サウンドマン」
「その名前で俺を呼ぶんじゃない。白人のお前が、その名前で、俺を」
ジョニィ・ジョースターの長い影が男の上に落ちていた。倒れ伏し、固いアスファルトを見つめる男は振り絞るようにそう言った。
サンドマンの瞳から涙が一粒だけ溢れ、乾いた大地に音をたてて零れた。
泣けばいいのか、怒ればいいのか、決めかねた様な様な表情を彼は浮かべていた。ジョニィは何も言わなかった。
何かを言うべきかどうか、長いこと悩んでいたが、結局口を開くのを諦めた。ただ男が立ち上がるのを彼は待った。
温かい日差しが二人を照らしていく。男の涙と嗚咽は長いこと止まらなかった。
▼
- 97 :
- 363 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:10:20 ID:VPgF32Is
「共に戦うことはできない」
泣き疲れた男の声に、青年は沈痛な面持ちで頷いた。
きっとそうなるだろうとは思っていた。それでもできることなら彼と共に戦いたいとジョニィは思っていた。
サンドマンは全てを失った。故郷も一族も土地も大地も、なにもかも。ジョニィ・ジョースターの言うとおりだった。
彼がそれでも立ちあがる理由は、もはや自分しか一族がいないという使命感だ。
全て失った。例え遺体を持ち帰っても今さら約束通り土地が返してもらえるとは、もう思えない。
例え返してもらえたとしても、近い将来インディアンはきっと土地を追われる運命にあるのだろう。
白人は白人だ。インディアンがインディアンであるのが自然であるように、彼らはどうしようもなく彼らなのだ。
そうしていつかはこの地上から彼ら一族はいなくなってしまうのかもしれない。聖なる大地は汚され、白人の手によって壊されてしまうのかもしれない。
だからといって諦められるわけがなかった。絶望のままに、命を投げ捨てるわけにはいかない。
なぜならまだ自分は生きているんだ。まだ、自分が、残っているのだから。
この身に流れる血が、歌が、魂が。それはどうしようもなくインディアンのものだった。
まだインディアンは死んでいない。サウンドマンはまだ、生きている。
過去は変えられないかもしれない。未来を変えることも難しい。しかしそれは未来を諦めることとイコールではない。
インディアンの男の中で燃え上がったのは復讐心でもなく、噴怒の炎でもなく、代々受け継いだ未来に託す想いだった。
血を絶やすわけにはいかない。必ず生きて帰って、自らの手で一族を創りなおさなければいけない。
それは今まで以上に過酷な旅路を意味していた。SBRレースやこのデスゲームで行った“命を賭してでも”、そんな無謀な戦いをすることはもうできなくなった。
その瞬間から、彼は決してRなくなった。自分たち一族全ての祈りを乗せ、彼は必ずや故郷に帰ることを誓った。
だからこそッ!
彼はジョニィと共に行くことを拒否する。ほかでもない、ジョニィ・ジョースターが白人だったから。
彼の元からすべてを奪い、全てを裏切った人間と同じ人種だったから。
感情的な問題だった。冷静に考えればとか、合理的に考えればだとか、そんなことはわかっている。
だがそれでも男は青年を拒否した。彼をR気もないし、邪魔をしようとも思わないが、力を合わせることは無理だった。
もうこりごりだったのだ。勝手に権利を主張し、それに合わせて契約や約束というものを学んでも、それでも結局白人は与えようとしなかった。
かわりに彼の手元からすべてを奪っていった。
- 98 :
- 364 : ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:10:43 ID:VPgF32Is
もう誰にも頼らない。もう誰も頼れない。
ジョニィは眼の前に立つ男を見つめた。なんて気高き男なんだろう。なんて誇り高い男なんだろう。
―――だというのに、何故彼の横顔はこうも儚く見えるんだ。
青年の心は締め付けられる。できることなら手伝いたい。だがそれは不可能だった。これはもう、彼自身の戦いだった。
自分には決して手出しができない、彼だけの戦い。
泣きだしたくなるような、叫びたくなるような、郷愁がジョニィを襲う。
青年は黙って事実を記した百科事典を男に手渡す。そして彼に伝言を頼んだ。
ジャイロ・ツェペリに会ったら伝えてほしい。第三回放送の時刻に、マンハッタン・トリニティ教会で会おう、と。
サンドマンは頷き、そして言う。
「ジョニィ・ジョースター、また会おう。お前には借りができた。
“俺たち”は借りた借りは必ず返すと誓ってる。だから必ず生きて、また会おう」
「“ゴール”は僕と一緒なんだろう? 殺し合いからの生還。ならまた必ず会えるさ。その時に返してくれよ」
殺し合うはずであった男たちは、固く手を握り合う。
青年の言葉に、男の顔が微かにほころんだ。僅かにだけ見せた微笑はすぐに消えると、サンドマンは身をひるがえす。
別れの合図に手をあげるとジョニィが見守る中、男は徐々にスピードを上げていく。そうしてすぐに、サンドマンは道の先へと姿を消した。
彼の姿が見えなくなっても、青年は長いことそこから動けなかった。
彼の脳裏に浮かんだのはアリゾナの砂漠。不意にジャイロと砂漠を旅していた時のことを、彼は思い出していた。
見渡す限り砂しかない不毛の大地。サボテンと岩、砂と太陽しかそこにはない。
ジャイロは不満ばかり言ってたような気がする。といっても彼はいつでも不満ばかり言ってたような気がするけど。
自分は馬のことが心配で風景を楽しむ余裕なんてなかった。ああ、道のわきにある十字架がすごく不気味だったことは覚えてる。
ジャイロと顔を見合わせて苦笑いしたもんだ。突っ切る時はドキドキしたな。
スタンドと鉄球があると言え、馬がやられたらそこでアウトだ。今考えればよくぞ無事ですんだものだ。
そういえばサボテンの針で攻撃するテロリストもいた。ワイヤー使いのスタンド使いもいた。煙や川を爆弾にかえるヤツもいた。ロープの達人、マウンテン・ティムと共に戦った……。
いくつもの思い出があった。冗談のように笑える出来事があった。今だから笑い飛ばせる無茶も、少しはある。
サンドマンはあそこで育ったのだ。彼にとっての故郷なんだ。愛すべき家族、愛すべき故郷。
「サンドマン、君の故郷はあそこにあったんだな」
ジョニィは一人思った。立ち去った男のことを思い出し、彼は一人空に向かって呟いた。
―――祈っておこうかな……彼の旅路の無事を…。そして、彼が故郷に帰れるその日のことを……。
- 99 :
- 365 :彼の名は名も無きインディアン ◆c.g94qO9.A:2012/11/13(火) 20:12:06 ID:VPgF32Is
【D-7 南部/1日目 朝】
【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
[備考]
※サンドマンをディエゴと同じく『D4C』によって異次元から連れてこられた存在だと考えています。
※召使のもう一つの支給品は予備弾薬でした。ジョニィの支給品はフーゴの百科事典のみでした。
※サンドマンと情報交換をしました。
【サンドマン(サウンドマン)】
[スタンド]:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
[時間軸]:SBR10巻 ジョニィ達襲撃前
[状態]:大きなショック、うろたえ気味、ナイーブ、動揺
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(内1食料消費)、ランダム支給品×1(ミラション/確認済み)
形見のエメラルド、フライパン、ホッチキス、百科事典
[思考・状況]
基本行動方針:生きて帰って、祖先の土地を取り戻す。もう一度部族を立ち上げる。
1.とりあえず情報収集。もう誰も頼らない。
2.故郷に帰るための情報収集をする。
3.必要なのはあくまで『情報』であり、積極的に仲間を集めたりする気はない。
4.ジャイロ・ツェペリに会ったら伝言を伝える。
[備考]
※ジョニィと情報交換をしました。
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日本人が魚にこだわる理由