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2013年01月創作発表78: 新西尾維新バトルロワイアルpart4 (227) TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼
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新西尾維新バトルロワイアルpart4


1 :2012/05/04 〜 最終レス :2012/12/28
このスレは、西尾維新の作品に登場するキャラクター達でバトルロワイアルパロディを行う企画スレです。
性質上、登場人物の死亡・暴力描写が多々含まれすので、苦手な方は注意してください。

【バトルロワイアルパロディについて】
小説『バトルロワイアル』に登場した生徒同士の殺し合い『プログラム』を、他作品の登場人物で行う企画です。
詳しくは下の『2chパロロワ事典@wiki』を参照。
ttp://www11.atwiki.jp/row/

【ルール】
不知火袴の特別施設で最後の一人になるまで殺し合いを行い、最後まで生き残った一人は願いが叶う。
参加者は全員首輪を填められ、主催者への反抗、禁止エリアへの侵入が認められた場合、首輪が爆発しその参加者は死亡する。
六時間毎に会場に放送が流れ、死亡者、残り人数、禁止エリアの発表が行われる。

【参加作品について】
参加作品は「戯言シリーズ」「零崎一賊シリーズ」「世界シリーズ」「新本格魔法少女りすか」
「物語シリーズ」「刀語」「真庭語」「めだかボックス」の八作品です。

【参加者について】
■戯言シリーズ(7/7)
 戯言遣い / 玖渚友 / 西東天 / 哀川潤 / 想影真心 / 西条玉藻 / 時宮時刻
■人間シリーズ(6/6)
 零崎人識 / 無桐伊織 / 匂宮出夢 / 零崎双識 / 零崎軋識 / 零崎曲識
■世界シリーズ(4/4)
 櫃内様刻 / 病院坂迷路 / 串中弔士 / 病院坂黒猫
■新本格魔法少女りすか(3/3)
 供犠創貴 / 水倉りすか / ツナギ
■刀語(11/11)
 鑢七花 / とがめ / 否定姫 / 左右田右衛門左衛門 / 真庭鳳凰 / 真庭喰鮫 / 鑢七実 / 真庭蝙蝠
真庭狂犬 / 宇練銀閣 / 浮義待秋
■〈物語〉シリーズ(6/6)
 阿良々木暦 / 戦場ヶ原ひたぎ / 羽川翼 / 阿良々木火憐 / 八九寺真宵 / 貝木泥舟
■めだかボックス(8/8)
 人吉善吉 / 黒神めだか / 球磨川禊 / 宗像形 / 阿久根高貴 / 江迎怒江 / 黒神真黒 / 日之影空洞
以上45名で確定です。
【支給品について】
参加者には、主催者から食糧や武器等の入っている、何でも入るディパックが支給されます。
ディパックの中身は、地図、名簿、食糧、水、筆記用具、懐中電灯、コンパス、時計、ランダム支給品1〜3個です。
名簿は開始直後は白紙、第一放送の際に参加者の名前が浮かび上がる仕様となっています。

【時間表記について】
このロワでの時間表記は、以下のようになっています。
 0-2:深夜  .....6-8:朝     .12-14:真昼  .....18-20:夜
 2-4:黎明  .....8-10:午前  ....14-16:午後  .....20-22:夜中
 4-6:早朝  .....10-12:昼   ...16-18:夕方  .....22-24:真夜中

【関連サイト】
 まとめwiki  ttp://www44.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/
 避難所    ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14274/

2 :
結局、全裸の太が唯一生き残った。こうして太の時代が始まる。完。

3 :
時宮時刻‥?

4 :
めだか最強じゃないの

5 :
代理投下を開始します

6 :
支援

7 :
黙々と零崎軋識は歩く。
まず目指すのはクラッシュクラシック。
トキを、零崎曲識を、殺した奴を殺し、その一族郎党余さず皆殺しにする。
それは良い。
それは良いが、情報がなければそれも出来ない。
そのためにはまず死体を見付け、どう殺されたか調べなければならない。
のもあるが、何よりも弔ってやりたい。
他の『家族』の誰かが既にやっている可能性もあるが、それでも見付けて損はない。
「…………」
そう思っても、口惜しい。
何故、『家族』の事を疎かにした。
何故、『他人』の事を優先したか。
何もかも殺しても殺し足りない。
『家族』を守り通すと決めてもまだ足りない。
償い、足りない。
しかし今思い悩んでも意味はない。
見付けなければ意味がない。
そのためのクラッシュクラシック行き。
「きっとあそこに向かってるはずっちゃ……!」
人識は分からないが、レンならきっと、クラッシュクラシックに向かっている筈だ。
『家族』思いのが向かわないはずがない。
だからそこか、その途中で合流出来る。
そうすれば全身全霊を持って守る事が出来る。
「ん?」
何か、何処からか音がした気がした。
耳を澄ませる。
足音。
それが近付いて来ている。
自然、《愚神礼賛》を握り直す。
誰か知らないがR。
会場にいるならR。
足音に向けて進む。
走っていたレンがいた。
「――レン!」
思わず声を掛ける。
声を掛けた瞬間、離れるように横に跳び、十字架を構えた。
そして小脇に抱えていた、
「子供かっちゃ?」
子供を降ろす。
何をやっているのか
思わず怒鳴り付けたくなる。
老若男女容赦なく、関わりがあれば殺し尽くす。
特に今回はもう一人死んでいる。
尚更、ここにいると言う関わりを持つ人間を殺さないといけない。
それが基本の筈だ。
それが普通の筈だ。
それが通常の筈だ。
それが当然の筈だ。
なのに、

8 :


9 :
「レン!」
「近寄るな!」
「ッ!」
何故、『家族』に武器を向ける。
何故、『家族』に殺意を向ける。
何故、何故、何故。
どうして。
「また似たような手で騙せると思ってるのか貴様は!」
「……は?」
「今度はなんだ? 正面から不意討とうって魂胆だろう。違うか!?」
「お、おい、落ち付くっちゃ!」
どうして。
どうにも妙な事になっている。
俺が誰か分からないのか。
『呪い名』に何かされた訳でもあるまいし。
いや、ざっと見ただけで定かではないが、確か、あろう事か、あの名簿には、『時宮』の名前があったはずだ。
もしかしたら、そう言う事なのか。
「――落ち付け、レン。俺は他の誰でもない、『呪い名』の野郎共じゃない、紛れもなく、零崎軋識だっちゃ」
「……悪いがまだ信用ならないな」
「だったら何を言えば良い?
 お前は《自殺志願》を使わない方が圧倒的に強い事を言えば良いのか?
 お前の特技がコサックダンスだって事を知ってるって言えば良いのか?
 それとも……それともお前がかなりのRだって事を知ってれば良いのか?」
「…………おい」
「事実だろ」
そこまで言ってようやく、顔が引き攣らせてはいるものの、十字架を下ろした。
後ろの子供を守るように。
言い様のない苛立ちが湧き起こるが、堪える。
今この苛立ちに流されれば今度こそ、蝙蝠、とか言う奴と思われるかも分からない。
それに少し前まで人の事を言える立場じゃなかった。
歯を食い縛り、何とか堪えた。
「――――それより、その、子供は、なんだ?」
堪えた、と言ってもまだ残っている。
心の奥底から未だに湧きつつある不満。
それが言葉を途切れ途切れにさせていた。
何とかそれ以上何も出ないように押し留め、睨み付ける。
レンは肩を竦めた。
「何って、協力者に決まってるだろう?」
「協力者だぁ?」
事もなげに協力者と言った。
よりにもよって、『家族』が殺されたにも関わらず、協力者。
こいつは一体、何を言っている。
何故殺してないかと思えば協力者。
この場所にいると言う立派な関係者なのにも関わらず協力者などと温い事を言って、殺していない。
思えば思うほど、考えれば考えるほど、

10 :
「レン…………この、馬鹿野郎!」
耐え切れない。
堪え切れない。
よもやそんな甘い男だったと思いたくない。
よもやその程度の男だったと思いたくない。
人一倍『家族』の事を大事にし、大切にし、それ故に特攻隊長などと言われていた男がこんな甘かったと思いたくない。
しかし、目の前にあるのが事実だ。
「この会場にいる関係者ならなんで殺さない!
 この場所にいると言う理由でなぜ殺さない!
 なんで殺さない!
 理由として充分だろ!
 理屈として充分だろ!
 なのになんで殺してねえんだお前は!
 『家族』でもない奴を殺したくないって訳じゃねえだろ?
 それとも何か別の理由で殺せないって言うんだったら、俺が、殺して」
《愚神礼賛》を振り上げ、
「馬鹿野郎!」
「がっ!」
その瞬間、殺気と共に眉間に衝撃が走った。
殺気があったから咄嗟に衝撃を和らげる事が出来たが、それでも十分痛い。
十字架を握った方とは逆を振り終えた姿勢のレンの姿が目に入る。
殴られた。
そう気付く。
死にそうなほどではないにしろ、あろう事か、『家族』に殴られたと思うとなお痛い。
痛みが増す。
「お前、何を……!」
「馬鹿だから馬鹿だと言ったんだこの馬鹿が!」
「レン! 幾らお前でも」
「許さないとでも言う気か? だったらそれで構わない」
「なにっ!」
予想を遥かに超えた剣幕に尻込みした。
僅かに気圧され、下がってしまった。
そうなってもレンの言葉が止む気配はない。
「確かに関係している。間違いはない。この場にいるんだからな……だが考えろ! もし俺達の手に余る事態が起きたらどうする? その時になって殺さなければ良かったじゃ済まないんだぞ!」
「た、確かにそうだが……」
振り絞るように、言葉を続けようとするが、続かない。
現実的に考えればその通り。
事実、思い当たる節が幾つもあった。
例えば、《害悪細菌》のような破壊。
例えば、《猛獣》のような探索。
例えば、俺の現地行動。
それぞれにはそれぞれにあった輩が居るのは、骨身に染みて分かっている。
手を取り合う『家族』ではなく、目の敵のような『他人』のお陰で。
「とりあえず……」

11 :


12 :
レンが一瞬子供を窺い見て、その首筋に手を当てた。
子供が前のめりに倒れた。
動かない。
当て身。
気絶させたのか。
「今Rのは不味い。さっき言った通り、殺してから後悔では遅いんだ。Rなら――全てが終わった後。そう思わないか?」
射抜くような目が向けられた。
そう言えば普段付けている伊達眼鏡がない所為で諸に視線が身体を射抜く。
一時の激情に身を任せて皆殺しにしようとしていた俺と、それを堪えて今後を考えて行動しているレン。
どちらが正しいかなんて考えるまでもないだろう。
それでも、そうと分かっていても、
「――悪いが、そうは思わない」
口から衝いて出たのは同意とは真逆の、否定の言葉だった。
レンが目を閉じ、空を仰ぐ。
「何故」
「嫌だから、だ」
もし協力するとしても、その中にトキを殺した奴が紛れ込んでいたとしたら。
そんな想像、一時足りとも耐えられない。
顔を戻し、睨み付けてくるレンの眼が鋭く光った気がし、同時に殺気が湧き上がり始めた。
そうだろう。
頭ではどれだけレンの話が正しいと分かっているのに、否定の材料もなくただ否定だけされる。
ただの子供の我が儘に近い。
きっと俺自身であっても殺気を抑え切れない。
だから、レンは正しい。
間違っているのは俺だ。
故に、『家族』に殺気を向ける行為を、咎められない。
「猶予はやる……次に会う時までにその子供を殺しておけよ。『家族』以外生き残らせる道理なんて無いんだからな」
それだけ言って、横を通り過ぎる。
刹那、レンの体が激しく震えているのが見えた。
口で言っても、理屈も何もなく否定されたのが口惜しいのか、はたまた別の理由か分からないが。
「クラッシュ・クラシックで待ってるぞ」
「このっ!」
殺気が背を叩く。
大人しく殴られる覚悟は出来ていた。
殴られても、少ししてまた仲直りすれば良い。
漫画のような話だが、それで良い。
唯一無二の、『家族』同士。
出来ない道理はないのだから。
「馬鹿野郎!」
そう思っていた中、頭を、今までにない衝撃が、襲った。

13 :


14 :
「が、ああ!」
絶叫が上がった。
それでも武器に力を込めようとしている零崎軋識の脇腹に、頭を殴った流れで十字架を打ち込む。
鈍い音が鳴り、くの字に折れ曲がって地面に倒れた。
だが、手を緩めるにはまだ早い。
空かさず軋識の右肩に十字架を振り下ろし、砕く。
「ぁが、ぐがが!」
再び絶叫を上げた所で手を止める。
と見せ掛けて左肩を。
次いでに腰骨も。
そこまでやって、今度こそ手を止める。
「がががあがががが」
最早何を言おうとしているのかも分からない。
何処をどう動かそうとしても痛みが走り、それどころじゃないんだろう。
腰骨じゃなく背骨にするべきだったかと一瞬思うが、大して変わらないと思い直す。
抵抗する隙を与えれば命の危機に直結しかねない相手だから、これでもまだ心細い位。
そんな奴だと話していた、だけでなく見ていて、確信したのだから。
「きゃはきゃは……って、武器持たせたまんまじゃ、まだまだ危ねえか」
口にしながら武器をもぎ取る。
辛うじて指に引っ掛かっていた程度だったが、指を外すのに少し掛かった。
思い入れでもあったのか。
如何でも良いが。
それよりも、武器だ。
振り回すのには中々の力が必要な重量感に全体に付いた鉄の棘。
当たり所次第では死に直結し、当たり所が良くても大きな傷を与えるだろう。
一撃必殺と言う言葉がこれ以上なく似合う武器だ。
「これでよし…………きゃはきゃは」
一先ず笑ってみるが、今になって冷や汗が出て来る。
真後ろから、しかも身内と勘違いしていた様子だったから一発で殺そうとしたのに、初撃の威力を殺され反撃までされる所だった。
始終疑いを持たれずにそれだ。
もし途中で、ちょっとした事ででも疑われていたら、倒れていたのはどちらか分からない。
まあ勝負になっていたとしても勝算はあった。
姿から動揺を誘い、言葉巧みに揺さぶり逃げて、不意打ち。
過程方法問わなければ幾らでも勝ち得ただろう。
そう思っても、冷や汗が止まらない。
疑われなくて良かった。
そう、未だに思う。
「お、前……な……に、者」
「きゃはきゃは。生憎ながらおれはトキだぜ?」
「嘘、を」
「付くなって? おいおい、お前がそう思いたいだけだろう、零崎軋識さん?」
意地悪く言ってみると、軋識が震えた。
姿形はどう見ても双識のそれだが、偽者だと思っているはずだ。
そこで、そう思いたいだけだ、と言われればどうなるか。
笑いながら思い悩む軋識を眺める。
体がもはや殆ど動かず、顔を動かす位しか出来ない様子だ。
そんな苦悩と苦痛に歪む顔を見てて愉しいが、

15 :


16 :


17 :
「――ま、そろそろネタばらししてやるか。確かにおれはお前の思ってる通り、零崎双識じゃねえぜ?」
言いながら創貴を窺う。
まだしばらくは起きそうにない。
その間に、力一杯使って地面に十字架を突き刺す。
軽い力でも押せば軋識に向かって倒れそうだ。
そうして、ゆっくりと、焦らすように軋識の後ろに回り込み、
「……おれの……いや……わたしの…………名前は…………あ。あー。よし……」
身体を弄くり、軋識の前に姿を晒す。
双識の姿ではなく、
「奇策士とがめだ」
紛れもない奇策士とがめの姿に変えて。
その姿で笑って見せる。
するとそこには、驚きのあまり目を剥いた軋識の姿が目に入る。
笑いが込み上げてきた。
心の底から可笑しさが込み上げてきた。
本当ならここでネタバラシと行こうと思っていたが、一つ、悪戯を思い付いた。
このままの調子で上手く行けば面白い事になる悪戯を。
「――いや、そんな、はずがあるか! とがめって、やつは、死んだはずだ!」
「んー、何で死んだって分かるんだ?」
「何で、も、何も、不要、湖とか、言う、場所、に、死体があっ、た!」
こいつ、もう死体見てやがったか。
しかも丁度よりにもよってとがめの野郎の死体を。
仕方ない、もうバラすか。
いやいやだが待て。
「死体を見た」って事は、実際に殺した訳でもなけりゃあ話した訳でもない訳だ。
ならばここはあえて押してみるべきか。
「へぇー。それは本当に、このわたしだったのかな? んん?」
「当然、だ! それ、に、放送で……!」
言っている途中でその言葉は止まった。
軋識も言っている途中で気付いたようだ。
こっちも今まで思い付かなかった事だが。
「お前、まさか、不知火、って奴と……!」
「さあ、どうだろうな? きゃはきゃは」
苦しげに言うのを嘲笑う。
そう、放送の内容がすべて真実かどうかなど、放送で名前を呼ばれた奴が本当に死んでいるのかも、直接死体を見ない限り分からないのだ。
おれもついさっきまでその可能性には気付かなかった。
でもまああの二人は死んでるだろうなきっと。
さて、笑いながら様子をじっくり観察する。
何処まで真実か分からない不安定さ。
何を信じればいいか分からない不可解さ。
仲間だと思った奴が敵で。
その敵が死んだ筈の奴で。
混乱に混乱を重ねて正常な判断力を根こそぎ奪った今現在。
目に見えて、そして何より予想通り、面白い位に狼狽えている。
だけでなく、

18 :


19 :


20 :

「?」
何故か僅かな安心が見て取れた。
それに思わず首を傾げる。
「おい、とがめ」
「何だ、命乞いか? 何でも差し上げますってんなら聞いてやるぜ?」
「違う。一つだけ、聞きたい事がある」
「……聞いてやる理由がねえな」
「頼む――冥土の土産に、一つだけ、教えてくれ」
冥土の土産。
あろう事かこの蝙蝠に冥土の土産とは。
折角最後まで意地悪く死なせようと思ったのに。
そう言われれば、
「きゃはきゃは……そう言われちゃ断れねぇな。何だよ」
「零崎曲識って、奴、は、生きて……るか?」
零崎曲識。
その名前は記憶にある。
放送で呼ばれた中にその名前があった。
つまり死んだはずの人間だ。
だがなるほど、目の前に死んだはずの人間がいる。
そしてそいつが不知火とか言う奴と仲間だとしたら、本当に死んだかどうか知っている。
とでも思った訳か。
「…………」
もちろんそんなの知らない。
今現在言った事だって嘘八百。
冷静に考えれば可笑しな所が幾つも考え付くほど分かり易い嘘だらけだ。
だが冷静に考えられるだけの時間は軋識に残ってない。
残すつもりもない。
ならばせめて真庭蝙蝠。
冥土の蝙蝠らしい答えに、
「……生きてるぜ」
嘘を一つ。
その嘘に軋識が目を閉じ、言った。
「最高の、土産、だ。ありがとう……っちゃ」
「どういたしまして。そしてさよならだ」
答えながら十字架を押す。
十字架はゆっくりと倒れて行き、
「すま、な、いっちゃ、レン。トキ。人識――申、し訳あ、りま、せん、暴く」
何事か呟いていた軋識を――――

21 :


22 :


目を開けると僕の目の前に、麦わら帽子を被り、血塗れの服を着た、零崎軋識が立っていた。
一瞬で全身総毛立つ。
「……蝙蝠か」
が、気付いた。
もし目の前にいるのが本当に軋識だとしたら、目を覚ませている訳がない。
そう言うと軋識が、いや、蝙蝠があからさまにつまらなそうな顔をし、舌打ちをする。
「ちったぁ焦れよ、つまんねぇな」
そして、
「きゃはきゃは」
相変わらずの不愉快な笑い声を上げた。
そこまでしたのを見届け、気付けば、そして思わず、ため息を付いていた。
「ため息付くなよ。幸せ逃げるぜ?」
「これ以上逃げてたまるか」
別段蝙蝠が役立たずな訳ではない。
能力や性格性能含めたあらゆる要素のぶっ飛び具合は今まで会った大半の――会った事のある6人の魔法使いを含めた――中でも相当だ。
もしかしたら良くも悪くも五本指の中に入るかもしれない。
だけど、それでいても零崎軋識。
そのぶっ飛び具合は異常だった。
家族至上主義と言えばいいのか。
無差別殺人鬼と言えばいいのか。
釘バットを何の躊躇いもなく人間に、それに一応子供相手に振り下ろそうとした動作。
魔法と違って、飛び道具と違って、自己防衛のためと言う訳でもないのに、やらなければならない訳でもないのに、特に理由らしい理由もなく、本当の意味で自分の手で人をR動作を何の躊躇いも迷いもなく。
片鱗を見ただけでどれだけ危険か分かる。
だから正直不安だった。
果たして蝙蝠が騙し切れるか。
途中、騙す工程で必要だったんだろうが気絶させられるとは思ってなかっただけに。
目を覚ました時、目の前に血塗れの軋識の姿が目に入った時の恐怖は言い表せれない。
駒にこうも振り回されるのは難だが。
騙し切れて良かった。
「…………」
そう思う反面、惜しいとも思う。
あの異常なまでのぶっ飛び具合。
もちろん魔法使いではないにしても。
家族至上主義と言える考えを利用出来れば、そこそこ優秀な駒として使えたろうに。
後悔先に立たず、ではあっても。
例え蝙蝠と双識のの殺し合いが確定事項でありその時に僕が蝙蝠の手伝いをするのが確定事項でも。
例えその時に軋識が双識側に付くのが確定事項であっても。
過程までは駒として役に立っていた、かも知れない。
かも知れないに過ぎないが。
それに、あんな奴みんなを幸せにする上で障害にしかならなかっただろうが。
「……で、だ」
「あん?」
「気絶までさせといて何の情報もないでーす……なんて事はないよな?」

23 :


24 :

下を軽く出して、目だけ軽く上に向ける。
ペコちゃんか貴様。
顎を下から殴ってやろうかと考えるが、読まれたようで下を引っ込め少し真剣そうな表情をした。
「クラッシュクラシックは分かるよな?」
「ああ。それで?」
「どうもそこと零崎の奴らが関係してるみたいでな、あいつもまず行こうとしてたみたいだ。ま、おれにあったのが運の尽きだったって訳だが――きゃはきゃは」
「クラッシュクラシックか」
「笑えよ」
苛立った様子で舌打ちする蝙蝠をスルー。
付き合い過ぎると調子が狂う。
「一番考えられるのは零崎の……曲識と関係ある場所何だろうな。だとしたら双識についても何か分かるかも知れないが……」
「今行くのは危険、ってか?」
揶揄するような蝙蝠の言葉を、若干気に入らないが、頷く。
もし他の零崎、と言っても残りは双識と人識だけのはずだ、が二人とも軋識と同じようにクラッシュクラシックに向かっているとすれば鉢合わせになる可能性が高い。
何時かは双識をR手伝いをするにしろ。
今、クラッシュクラシックに行くべきだとは言えない。
今は、まだ。
「いやいや」
と。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
と。
僕の考えに蝙蝠が首を振る。
「今だから、今だからこそ、行ける。
 今、まだ二人が軋識が死んだって気付く前に、おれが軋識に成り代わってるって気付かれる前に、そう今の内なら仮に鉢合わせたとしてもすぐには気付かれねえ。
 気付かれない内に殺せれば後がぐっと楽になる。
 だからこそ今、クラッシュクラシックに行くべきだ」
釘バットを振り回しながら蝙蝠が言う。
それをただ、なるほど、と思う。
確かに蝙蝠の言葉にも一理ある。
そしてふと思う。
あるいはここが分岐点なのかも知れないと。
委員長としてりすかと出会ったように。
りすかと共にツナギと出会ったように。
あるいはここが大きな分かれ目になるんじゃないか。
「……一応聞くが」
「何だよ?」
「僕がどっちか決めたとしたら、お前は大人しく従うのか?」

25 :


26 :
自分で言いながら、その自分に思わず呆れる。
元々は裏切る前提で組んでいたはずなのに、どうにも蝙蝠の魔法が魅力的過ぎるらしい。
変身能力。
R能力。
地球木霙、属性「肉」、種類「増殖」。
ツナギ、属性「肉」、種類「分解」。
単純に属性「肉」の二人と比べても、戦闘でこそ一歩以上引き離されそうだが、使える幅が広い。
なまじ戦闘に特化でないだけに、応用が利き易い。
利き易過ぎて、作戦に使い易い。
使い易過ぎて、まるで万能だ。
それこそ万能過ぎて、手に余らない。
「んー、どうすっかな」
「その場合、同盟を解消したいってんなら僕はそれでも構わないぜ?」
「行く気はないって訳か?」
「早まるな。あくまでそうなった場合は、だ。すぐ決めるにはメリットもデメリットも多い」
言いながらさり気なく蝙蝠の様子を観察する。
首を横に傾げ、目を閉じて、考え込む動作。
表情は相変わらずの笑いが貼り付いてるだけで、何も読み取れない。
関係ないが今の、華奢な男の、ガキ大将のような見た目とマッチしているようなミスマッチのような、微妙な表情。
「ん?」
ガキ大将のような見た目。
零崎軋識の姿そのまま。
服装から武器、何から何まで軋識と全く同じ姿だ。
蝙蝠から目を離して辺りを見渡す。
までもなくすぐに、背中を十字架で貫かれ地面に縫い付けられた、裸でうつ伏せの男の姿が見付かった。
道具やら何やら所の騒ぎじゃなく、服までひん剥きやがったか。
やり過ぎだろ、とは思わない。
むしろどうせひん剥いたなら素性が分からないようとことんまで遣り尽くすべきだ。
「蝙蝠」
「……もうちょい待てって」
「違う。軋識の顔をしっかり潰しとけ」
「もうやってある」
何でもないように言って、こちらに向けていた目をまた閉じた。
「ふん……」
見えてなかっかったが抜かりがない。
優秀な駒だ。
逆に言えばそれだけクラッシュクラシックに行く気満々な訳だろうが。
「……蝙蝠、こんな所で考えてて鉢合わせしたら拙い。場所を移すぞ」
「おうよ」

27 :


28 :
すぐに答えは返ってきた。
考えていたのはあくまで僕を振り回すためのフリだったのか。
そう疑問を感じるほど、答えは早かった。
だとしたら扱い辛い駒だ。
それとも僕の言葉で危険性に気付いたか。
だとしたらまだ扱い易い駒だが。
死体に背を向ける形で足を進める。
数歩も行かない内に、蝙蝠が横に並んだ。
十字架は置いて釘バットで行くようだが、上手く扱えるのか。
そんな事を思いながら頭の中で地図を開く。
山の方向からして、一番近いのはマンションか。
「マンションで少し過ごすぞ。クラッシュクラシックに行くかどうかはその後に決める。良いな?」
「ま、良いんじゃねえか? きゃはきゃは」
変わらない、不愉快になる笑い声を聞きながら考える。
早い内にクラッシュクラシックに行くべきか、行かないべきか。
一先ずはそれを。

【零崎軋識@人間シリーズ 死亡】
【1日目/午前/D-5】
【供犠創貴@りすかシリーズ】
[状態]健康
[装備]グロック@現実
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0〜1)、銃弾の予備多少、耳栓
   A4ルーズリーフ×38枚、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0〜X)」、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない
 1:蝙蝠とマンションに向かう
 2:出来るだけ早くクラッシュクラシックに行くかどうか決める
 3:りすか、ツナギ、行橋未造を探す
 4:このゲームを壊せるような情報を探す
 5:機会があれば王刀の効果を確かめる
 6:蝙蝠の目的をどう利用して駒として使おうか
[備考]
※九州ツアー中からの参戦です
※蝙蝠と同盟を組んでいます
※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします


29 :


30 :
【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]健康、零崎軋識に変身中
[装備]愚神礼賛@人間シリーズ、軋識の服全て
[道具]支給品一式×2(片方名簿なし)、ランダム支給品(0〜4)、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実、王刀・鋸×1、諫早先輩のジャージ@めだかボックス
[思考]
基本:生き残る
 1:創貴と行動
 2:双識をできたら殺しておく
 3:強者がいれば観察しておく
 4:完成形変体刀の他十一作を探す
 5:クラッシュクラシックで零崎について調べたい
 6:行橋未造も探す
 7:危なくならない限りは供犠の目的を手伝っておく
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、都城王土、零崎軋識、元の姿です
※都城王土の『異常』を使えるかは後の書き手の方にお任せします
※放送で流れた死亡者の中に嘘がかも知れないと思っています

※零崎軋識の死体はD-5にありますが、服がなく顔も潰されています
死体が一つ。
顔の潰された無惨な死体。
しかしそれこそが、その死体の主のあるべき末路だったのかも知れない。
零崎の一賊でありながら《仲間》の一員である事を捨て切れず、《仲間》の一人でありながら零崎であった男の。
このような場所でどちらかに偏ろうとして、結局根本的な所で偏り切れなかった男の。
ずっと昔から決まっていた未来、なのかも知れない。
さてそこに一本残された十字架。
果たしてこれはどちらの十字架なのか。
《愚神礼賛》の十字架なのか。
『蠢く没落』の十字架なのか。
いや、結局どちらとも言えないだろう。
誰かも分からない骸と十字架。
それだけ。
それだけが、残された。

31 :
これにて代理投下終了です…と言いたいところですがコピペミスがあったので>>509を以下に修正
「レン!」
「近寄るな!」
「ッ!」
何故、『家族』に武器を向ける。
何故、『家族』に殺意を向ける。
何故、何故、何故。
どうして。
「また似たような手で騙せると思ってるのか貴様は!」
「……は?」
「今度はなんだ? 正面から不意討とうって魂胆だろう。違うか!?」
「お、おい、落ち付くっちゃ!」
どうして。
どうにも妙な事になっている。
俺が誰か分からないのか。
『呪い名』に何かされた訳でもあるまいし。
いや、ざっと見ただけで定かではないが、確か、あろう事か、あの名簿には、『時宮』の名前があったはずだ。
もしかしたら、そう言う事なのか。
「――落ち付け、レン。俺は他の誰でもない、『呪い名』の野郎共じゃない、紛れもなく、零崎軋識だっちゃ」
「……悪いがまだ信用ならないな」
「だったら何を言えば良い?
 お前は《自殺志願》を使わない方が圧倒的に強い事を言えば良いのか?
 お前の特技がコサックダンスだって事を知ってるって言えば良いのか?
 それとも……それともお前がかなりのRだって事を知ってれば良いのか?」
「…………おい」
「事実だろ」
そこまで言ってようやく、顔が引き攣らせてはいるものの、十字架を下ろした。
後ろの子供を守るように。
言い様のない苛立ちが湧き起こるが、堪える。
今この苛立ちに流されれば今度こそ本当に偽者と思われるかも分からない。
それに少し前まで人の事を言える立場じゃなかった。
歯を食い縛り、何とか堪えた。
「――――それより、その、子供は、なんだ?」
堪えた、と言ってもまだ残っている。
心の奥底から未だに湧きつつある不満。
それが言葉を途切れ途切れにさせていた。
何とかそれ以上何も出ないように押し留め、睨み付ける。
レンは肩を竦めた。
「何って、協力者に決まってるだろう?」
「協力者だぁ?」
事もなげに協力者と言った。
よりにもよって、『家族』が殺されたにも関わらず、協力者。
こいつは一体、何を言っている。
何故殺してないかと思えば協力者。
この場所にいると言う立派な関係者なのにも関わらず協力者などと温い事を言って、殺していない。
思えば思うほど、考えれば考えるほど、

32 :
今度こそ代理投下終了です
支援ありがとうございました
ついでに月報を
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
89話(+3)  31/45(-1)   68.9(-2.3)

33 :
予約分投下します

34 :
学習塾の廃墟から骨董アパートへ向かう広い道路の途中で、
「……はぁ」
と着物を着た女がため息をついた。
透き通るような程白い肌を持つその女にはとてもよく似合うため息だった。
『どうしたの?七実ちゃん』
すると、隣にいた学ランに身を包む人畜無害そうな笑顔をした少年が女――鑢七実に声をかける。
「別にどうもしませんよ、禊さん」
七実は少年――球磨川禊に対し素っ気なく返す。
『その割には結構着物を気にしてるみたいだけど。七実ちゃんって綺麗好きだったりする?』
「わたしの趣味は草むしりですが、だからといってそこまでこだわりがあるわけではありませんよ」
『ふーん、まあいいや。じゃあこれは僕からの余計なお世話ってことで』
言うが早いか七実の真っ白な着物についていた赤い模様が消える。
それは一時間ほど前の戦いで一方的に虐殺した日之影空洞の血痕だった。
雑草の分際で自分を汚したことが許せなかった――もはや逆恨みですらないただのいちゃもんだ。
そして球磨川の過負荷――大嘘憑きは血痕を消すだけに留まらず、七実の中にあったものをもう一つ「なかったこと」にした。
「あら、ありがとうございます」
『お礼を言われるほどのものじゃないよ。……ってやっぱり気にしてたんじゃない』
「ただの社交辞令です。ついでに言うなら体もいくらか軽くなったみたいですしそちらの方のお礼を」
『ここまでほとんど歩きっぱなしだったでしょ?疲れもそれなりに溜まっているだろうしそれを「なかったこと」にしてあげただけだよ』
「本当に便利なものですね――その『おーるふぃくしょん』は」
『べっつにー。いくら僕でも「なかったこと」にしたことを「なかったこと」にはできないし七実ちゃんの病気も「なかったこと」にはできなかったしね』
「その気持ちだけでいいんですよ。いえ、悪いのかしら?しかしわたしの目でも見取れないものがあるとは思いませんでした」
『僕たち過負荷っていうのはそういうものだからね。分析するだけ無駄なんだよ』
「確かに結果だけを見て過程や原因を逆算することはできませんしね。それに見取れたところで強くなってしまうようでは逆効果です」
『強くなるだなんて変なこと言うね。誰よりも弱いのが僕たち過負荷なのに』
「弱い、ですか。確かにわたしの体は誰よりも貧弱です。全く、どうせなら健康な体で生き返らせればいいものを……」
後半部分は独り言のように呟いたものだったので球磨川には聞き取れなかったようだ。
それでも何かを言っていたことはわかっていたようなので内容を聞こうとしたそのとき。

 ぐ〜〜〜〜〜

と、どこからともなく音がした。
二人は立ち止まりしばし顔を見合わせ。
『……ごめんね』
気まずそうに球磨川が口を開いた。
「しょうがないでしょう。そういえばもう何時間も食べていませんしね」
『七実ちゃんはお腹空かないの?』
「わたしは元々食が細いですから。でもそろそろ食事にしてもいいかもしれませんね。いえ、悪いのかしら?」
『じゃあスーパーマーケットに行こうよ。ここから近いしこんな道のど真ん中で食事にするよりはいいと思うよ』
「『すーぱーまーけっと』ですか、どういったところで?」
『基本的には食料品を売っていてね――って七実ちゃんスーパーも知らないの?』
「島育ちなので本土のことには疎いんです」
『疎いってレベルじゃ済まされないと思うんだけどなぁ……。まあいいか早く行こっ』
「そうしましょうか」

35 :

このとき既にスーパーマーケットに二人を罠にかけようとする人間がいるということは知る由もなかった。

 ■   ■

地図のG-5に位置するスーパーマーケット。
そこに一人の男が訪れていた。
「これだけ時間が経っているのだ、誰かが来ているとは思っていたが――」
彼――時宮時刻が見据えていたのは跡形もなく破壊された鮮魚コーナー。
数時間前、魔法を使ったことで「おなかすいた」ツナギが手当たり次第に消化していったためだ。
陳列されていただろう生魚やら刺身やらは根こそぎ食い散らかされ奥の保管庫の中身もすっからかんであった。
所々にぶち撒けるように床の上にあった発泡スチロールのトレーやマグロの尻尾にあった歯形が下手人の手掛かりを残している。
「歯形の大きさは大小様々か、形を見るに猛獣の類だろう。複数の猛獣を使役した――というところか?」
真相は前述の通りだが、いくら人間離れした存在が数多く跳梁跋扈する暴力の世界にいた時刻とて「魔法」にはそうそう思い至れるはずがない。
まだしも理解力の追いつく「何者かが動物に餌を与えるなどの目的で破壊させた」という考えが先に浮かぶ。
それでも害でしかない発泡スチロールも食べられた跡があったり、隣の精肉コーナーが無事だったりと不可解な点があるが。
「まあこれ以上考えても無駄だろうな。それよりも食事を済ませるとするか」
そう言って惣菜コーナーに足を伸ばす。
この「実験」がいつまで続くかわからない以上、保存が効く缶詰やレトルト食品を持ち出すべきなのだろうが、生憎、今の時刻は左腕を欠損している。
片手で開けるのが難しいため、勿体ないがそのままにしていくことにした。
その点、惣菜やおにぎり、サンドイッチなどの軽食は多少は苦労するが開けられないことはない。
マウンテンバイクが入っていたことから推測できるように、デイパックには容量制限がないようなので多めに入れていく。
賞味期限などの問題はあるが、2、3日は平気だろう。
開けるのにやはり多少は苦労したが食事を済ませ、当面の食糧の確保も済ませたところで、時刻は外へ向かわずある日用品の前で止まった。
しばし逡巡し、それらもデイパックの中に入れていく。
「少々時間はかかるが仕掛けてみるか。それまで他に人間が来なければいいのだがな」
そう呟く時刻の口元にはうっすら笑みが浮かんでいた。

 ■   ■

時宮時刻が「仕掛け」を終えてから約30分、そんな「仕掛け」があるとは露知らず、球磨川禊と鑢七実の二人も到着した。
『ほら、七実ちゃん、ここがスーパーマーケットだよ』
「ここが、ですか――随分しっかりした造りで」
『七実ちゃんお肉食べられないんだっけ?だったらゼリー飲料とかいいかもね』
「『ぜりーいんりょう』……なんですか、それは?」
『七実ちゃん本当に物を知らないんだね……しょうがないなぁ、僕が教えてあげるよ。とりあえずこっちこっち』
と、七実に先んじて入った球磨川だったが、一歩目を踏み入れたその瞬間――
 ずるっ
と、足を滑らせ、とっさに――
『う』『ぉ』『おっと――!』
と、声を上げ、体を支える物を探すも手は宙を掴み――

36 :
 ごっち〜ん☆
と、盛大に硬い床に後頭部をぶつけたのだった。
突然のことで何があったのか理解できなかった七実は茫然と事態を眺めていたが、このままでは埒が明かないので、
「禊さん?」
声をかけてみるが反応しない。
今の球磨川の状況をさながらベタなギャグマンガの表現で表すとすれば目は渦を巻き、頭上を星が回っている――といったところか。
端的に言えば、気絶していた。
「起きてくださいな」
しゃがみこみ、頬をぺちぺち叩きながら尚も声をかけてみるがやはり反応しない。
「――しょうがありませんね。まあ、なんとかなるでしょう」
ひょい、と球磨川を拾い上げ肩に担ぐと、先程までと変わらないペースで歩き出した。
日本の高校3年生の平均体重は63kg――球磨川もそれぐらいの体重のはずだが七実は全く重さを感じていない。
それもそのはず、このバトルロワイアル開始当初から多用している忍法足軽の効果だ。
「しかしわかりません――どうして禊さんは足を滑らせたのでしょうか……」
不気味に光る床の上を何事もなく歩きながら七実は呟く。
その先が罠へと繋がる一本道をは気付かずに――

 ■   ■

入口をじっと棚の陰から見張る者がいた。
無論、時宮時刻である。
店内には棚が乱立しており、隠れる場所には事欠かない。
それでも、気配で気付かれる可能性があったため離れたところから覗くことしかできなかったが。
「念のためにと思ってやったものだったが……ここまで効果があったとはな」
球磨川が足を滑らせ、後頭部を強打し、気絶した原因――それは原液のまま撒かれた洗剤だった。
店の出入り口は一ヶ所しかないため、必然、時刻がスーパーを出るときも洗剤の海を渡ることになるが、それについては抜かりはない。
意図的に洗剤の無い箇所を作り、自身が出るときは滑らないようにしてある。
「あそこまでうまくいくとなると本来の目的からはズレてしまうが――」
時刻が本当に用があったのは洗剤の中身ではない。
あれは本命の「仕掛け」が終わった後にあくまでついででただの思いつきでやってみただけのものだ。
気絶までされるとは時刻も予想外ではあったがそれはそれで相手が目覚めたときに無抵抗に繰想術をかけられるからよしとする。
七実はきょろきょろと周りを少し気にしながら時刻のいる方向に歩いて来ていた。
この距離ならばそろそろ勘付かれるかもしれない――ならば見つかる前に自分から姿を現すとしよう。
「――ここまで思い通りにいくとは期待できそうだ。罠を仕掛けたかいがあったというものだ」
それでも時宮時刻は気付かない。
僅か数時間前に人類最終・想影真心という前例にどんな目に遭わされたのか忘れたわけではないのに、気付かない。
罠にかかった獲物が被食者でなく捕食者であるという可能性を――

 ■   ■

突然七実の進路上に人が現れた。

37 :
だが、それに七実は動じることなく。
「あら、わたしたちの他にも人がいたんですね」
その辺でたまたま知り合いに出会ったときのように話しかける。
武器などを隠し持っていないかを足元から一応確認し、最後に顔を見る。
そして、
 目が、合った――
瞬間、肩に担いでいた球磨川と持っていた双刀・鎚が落ちるのと同時に忍法足軽が解ける。
本来の重さを取り戻した球磨川はどさりと2回目の床との激突を果たし、鎚は3分の1程陥没する。
七実は目を開き意識をなくしたまま立ちつくし今は時刻の傀儡と成り果てていた。
「無抵抗だったとはいえこうも操想術がうまくいくとは――下地の効果はあったようだな」
時刻が本当に用があったのは洗剤の中身ではなく中身が入っていたボトルだった。
色にはそれぞれ意味がある。
時刻はそれを利用した。
陳列されている商品の色も利用しながら。
怪しまれないようにさりげなく。
主張しすぎずそれでいて目には映り。
意識には残らずとも無意識には残るよう。
数種類の色のボトルを配置し、操想術をかけやすくするための下地を形成した。
滑らせるために撒いた中身は相手を警戒させるためのものだ。
入って早々あんな目にあえば、自然、周囲の状況に必要以上に気を配る。
聴覚は過敏になり、視覚は余計なものまで捉えてしまう。
さらに言えば、相手が七実だったことが時刻にとって幸いした。
七実の見稽古はまず見ることから始まる。
見る。
見切り。
見抜き。
見定め。
見通し。
見極め。
見取る。
見る――視る――観る――診る――看る。
観察するように――診察する。
だから。
目を合わせることで発動する時刻の操想術とは非常に相性が良かった、いや、悪かったのだ。
横に倒れている男のことはほっといてまずは落ちた石刀を拾い上げようとする。
が、時刻の右腕では持ち上げることはかなわなかった。
時刻が非力というわけではない。
自由落下のみでめり込んだことも考えれば仮説が立つ。
これは超重量の物体で、これを容易く持ち歩いていた女はとてつもない怪力の所有者であると――
そしてもう一つの仮説が浮上してくる。
この女は世界の終わりに繋がるのでは?と――
どことなく人類最終と似た雰囲気を抱えている彼女。
世界の終わりに繋がるかもしれないのならばかけるべき操想術は支配ではなく――解放だ。
そうと決まれば――時刻は七実の頭部を掴み、目を合わせ、術をかけていく。
解放の操想術をかけながら支配の操想術を解くのも忘れない。
下地がまだ残っていた影響か施術は5分もかからず終わった。
人類最終は解放こそしたが直後に自身が投げ飛ばされたこともあって成果を見れていない。
「そういえば名前を聞いていなかったな……さあ、君はどうするのかな?」
人類最終の二の舞を踏まないよう、離れようと背を向けながら独り言を呟いた時刻に返事があった。
「わたしの名前は鑢七実と言います――ところで」
「む?」

38 :

反応し振り向いた瞬間、闇色の目があった。

 ■   ■

「その汚らわしい手でわたしに触れましたね――この、草が」
一瞬で吹き飛ばされた。
時刻には何をされたのかわからなかった――認識できる事象の範囲を超えていた。
操想術によって解放された七実は何の技術を行使することなく、ただの純粋な反射運動のみでやってのけたのだ。
壁に叩きつけられたことで背中の傷口が開く。
鋭い痛みが蘇るが、それ以上に時刻は喜びに溢れていた。
この鑢七実という女は――当たりだ。
当たりも当たり、人類最終に匹敵するかもしれない大当たりだ。
そんな時刻の考えがわかるはずもない七実は吹き飛ばしただけで満足するはずもなく、時刻に迫っていく。
虚刀流の足運びも忍法足軽も使用せずただ歩いているだけなのに、瞬間移動をしているかのようだった。
壁にもたれるように座り込む時刻の左足を七実が踏みつけた。
繰り返し、繰り返し、繰り返し。
時刻の反応などまるで構わず――踏みつける。
「草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。
 草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。
 草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が」
大動脈が潰されたことで血がどくどくと流れ出る。
背中を刺され、腕を?がれてもまだ、体内にこれほどの血が詰まっていたのか――
そんな時刻の反応を尚も構わず七実は踏み続ける。
「草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。
 草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。
 草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が。草が」
程なく――時刻の左足は失われた。
跡形もなく――ただの血だまり、肉だまりと化した。
これは、逃れられないな――このような目に遭ってもまだ意識のあった時刻は自らの死期を悟る。
だが、心は晴れやかだった。
ああ、自分は世界の終わりに近づけたのだ。
直接見ることが叶わないのが心残りではあるが――やはり死心地が違う。
薄れゆく意識の中、声がした。
『これ以上は駄目だよ、七実ちゃん』
一緒に入ってきていたあの男だ。
目が覚めたのか。
しかし、手遅れだ。
もう解放されてしまっている。
人類最終のように不完全な解放ではない。
止める手立てなどありはしないのだ。
「禊…さん、わたしの邪魔をしないでください」
『そんなこと言ったって無茶な動きをしたせいで体がボロボロじゃないか』
「関係ありません。警告は一度だけですよ」
『僕が気絶してる間に何かされちゃった感じなのかな?安心して、それも「なかったこと」にしてあげるから』
途端、目の色が変わる。
戻る。
止まるはずのない解放が――止まった。

39 :
「何故だ!何故邪魔をする!」
気づけば時刻は叫んでいた。
これ以上流れ出る血もなく、ただ安らかに死を待つだけの体に鞭打ち、あらん限りを振り絞って叫ぶ。
「その女は人類最終にも勝るとも劣らない世界の終わりへと向かう可能性だ!
 だからこそ解放してやったというのに何故戻す!
 人類最終のときとは違う、完全な解放だ!」
「完全な解放?まさかあれがわたしの全力だと思っていたのですか?」
「何……?」
突き落とすかのような言葉だった。
「わたしの全力はわたしだって耐えられませんよ、あれで完全な解放だなんて滑稽も甚だしい」
では、さっきまでのあれはなんだったのか。
解放では、なかったのか……?
「最初の方はおっしゃっていた下地……とやらの影響でしょうか、わたしに逆らう術はなかったんですよ」
下地のことがわかっている――最初から失敗していたのか?
さらに時刻にとって衝撃の言葉が続けられる。
禊、と呼ばれた男も口を挟んできた。
『えーっと、僕には状況が理解できないんだけど……何?世界の終わりなんてものが見たかったの、君は?』
「何が、『なんてもの』だ!お前らごときに何がわかる!」
『でもさ』
ずい、としゃがみこんでくる。
視界はもうおぼろげで輪郭くらいしかわからないが、簡単な操想術ならかけられる。
時刻の思惑通り正面に球磨川の顔がやってくる――
そして。
 目を、合わせた――
が。
『ほら、僕には何もできないでしょう?そんなんで世界の終わりなんて見れるわけがないじゃん。ばっかみたーい』
そのとき隣に都城王土がいたとはいえ、受信の異常を持つ行橋未造に「思考が全く読めない」と評された彼である。
眼球に何かが浮かぶはずもなく、鏡のように反射し、放たれた操想術はさながら呪い返しのように時刻に返る。
「ぐ、うぅ……」
それでも、時刻は完全に自我を失ってはいなかった。
瀕死で放った操想術が不完全だったのか自身に耐性があったのかはわからない。
「まだ……まだだ。ここまで来て終われるはずがないだろう」
血を流し尽くし、唯一の目標を折られ、肉体も精神も抜け殻となりかかって尚、生きようとしていた。
世界の終わりに近づける可能性なのだ。
先程の解放が不完全?ならば今度こそ完全な解放をさせるまで。
こんなところで邪魔立てされるわけにはいかない。
そこに、とどめが刺さる。
「禊さん、ちょっとどいてくださいますか。この方の言っていた操想術とやら、試してみたいんです」
『んん?いいよー』
操想術を試す?一体何を言っている。
この技術は一朝一夕で身につくものではない。

40 :
それなのに、何故、その色はなんだ。
やめろ。
そんな色で見るな。
そんな色の目で――

再び闇色の目がやってくる。
目を合わせられた時刻に抵抗ができるはずもなく、辛うじて繋ぎ止められていた意識がぷっつりと切れた。

 ■   ■

「大体こんな感じですかね」
『終わったの?』
「ええ、まあ。といってもこれ、調子が悪かったみたいなので本当に効果があったかどうか疑わしいですがね」
これ、ともう動かなくなった時刻を言葉だけで示し、球磨川と言葉を交わす七実。
彼女の見稽古は時宮の繰想術までも見取っていた。
支配の繰想術と解放の繰想術、それぞれ一度ずつしか見ていなかったため不完全ではあるが。
事切れた肉塊には既に興味を失い、見据える対象は球磨川一人のみだ。
『でも彼は何がしたかったんだろうね?世界の終わりがどうとか言ってたけど。』
「そんなこともわからず挑発していたのですか?」
『ちょっと台無しにしてみたくなってみただけだよ。それに僕はマイナス十三組のリーダーなんだから七実ちゃんに危害を加えるのを見過ごせるはずないじゃないか』
「ぬるい友情――ですか」
『あ、覚えててくれたの?三つのモットー』
「いいモットー――いえ、悪いモットーでしょうと言ったではないですか。むなしい勝利も手にしてしまいましたし」
『そういえばそうだね。じゃあこの場合無駄な努力はどうなるのかな?』
「それもわたしでしょう、操想術なんてものを見取ってしまいましたが使い道が今のところありません。それこそ無駄な努力です」
『ふうん、まあいいや。それよりもさ、食事にしようよ』
興味を失ったのは球磨川も同じでそれまでのことが「なかったこと」のように話を続ける。
「そういえば――食事をしに来たのでしたね。……どうしたんですか、禊さん?」
『ほら、この人のカバンの中サンドイッチとかおにぎりとかいっぱい入ってるよ。探す手間が省けたね』
「あら、それはよかった、いえ、悪いのですかね」
『うーん……肉が入ってるのがあったりするから七実ちゃんには悪いかも。さっき言ってたゼリー飲料探してみる?』
「わたしにはよくわかりませんし、禊さんにおまかせしますよ」
『そう、じゃあ多分こっちかなー。ついてきてよ』
二人はその場を後にする。
片手片足を失くした男には目もくれず。

 ■   ■

スーパーマーケットを出て再び道路に出た二人。
入る前と変わらない歩調で進み続ける。
『どうだった?口に合った?』
「悪くはありませんでしたよ。ですが、量は若干多いかもしれませんね」
『そういうときは蓋をすればいいじゃん。こうやって、さ』
手に持ったゼリー飲料のパックの蓋をひねって七実に示す。
球磨川も味が気に入ったようだったので時刻同様多めに持ち去っていた。
「これは便利ですね。そういえば、禊さん」
『なぁに?』

41 :
「その袋、食べ物以外には何か入っていなかったんですか?」
『何本か洗剤と錠開け専門鉄具ってのが入ってたよ。鍵を開けられるらしいけど僕の場合あまり必要ないかもね』
「『なかったこと』にしてしまえる――と」
『そういうこと、その気になれば鍵穴を「なかったこと」にもできるしね。なんだったらこれ七実ちゃんにあげるよ?』
「でしたら、お言葉に甘えましょうか」
『なら僕が入れてあげるよ……あれ?あの棍棒みたいなのどうしたの?』
「それなら置いてきましたよ。いつまでも持ちっぱなしというのも疲れますしね」
『疲れなんて僕が「なかったこと」にしてあげるのに』
「いつまでも頼りっぱなしというわけにはいきません」
『強がっちゃって。仲間なんだからいつでも頼ってくれて構わないんだよ』
「別に強がってるわけでは――」
否定しようとして止まる。
今更否定して何になる。
錆びた刀には温(ぬる)い馴れ合いがお似合いだ。
このまま堕ちていくのも悪くないだろう。
『どうしたの、急に立ち止まっちゃって』
「お気になさらず。頼ってもいいというのでしたら、着物と草鞋の血を消していただけますか」
『お安いご用。それにしても七実ちゃんも結構潔癖なんだ、僕と同じだね』
球磨川禊。
マイナス十三組のリーダー。
好きな相手と一緒に駄目になる。
愛する人と一緒に堕落する。
気に入った者と一緒に破滅を選ぶ。
強固(ぬる)すぎる仲間意識の持ち主。
そんな彼と同じと評された錆びた刀、朽ちる天才――鑢七実。
余談だが錆には二種類ある。
一つは、一度できてしまえば内部を浸食し続ける赤い錆。
一つは、表面に緻密な膜を作り内部を保護する黒い錆。
どちらも切れ味こそ鈍るが内部には大きな違いがある。
彼女の錆は、何色なのか――
『こんなに広い道だし、さすがに今度は迷わないよね。あ、そういえば』
思い出したように球磨川が言う。
『あの人の名前、僕知らないんだけど七実ちゃん知ってる?』
「いえ、結局わたしも聞かずじまいでした」


勝者は切望して死に、敗者は絶望して死ぬ。
時宮時刻――世界の終わりを望んだ彼がどちらであったかは言うまでもないだろう。

【時宮時刻@戯言シリーズ 死亡】


42 :
【一日目/午前/G‐5】
【鑢七実@刀語】
[状態]健康、身体的疲労(小)、満腹
[装備]無し
[道具]支給品一式×4、錠開け専門鉄具、ランダム支給品(1〜6)
[思考]
基本:弟である鑢七花を探す。
 1:七花以外は、殺しておく。
 2:骨董アパートに行ってみようかしら。
 3:球磨川さんといるのも悪くないですね。
 4:少しいっきーさんに興味が湧いてきた。
[備考]
※支配の繰想術、解放の繰想術を不完全ですが見取りました。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。

【球磨川禊@めだかボックス】
[状態]『健康だよ。だけどちょっと疲れたかな、お腹は満腹だけどね』
[装備]『大螺子が2個あるね』
[道具]『支給品一式が2つ分とランダム支給品が3個あるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』
[思考]
『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』
『1番はやっぱメンバー集めだよね』
『2番は七実ちゃんについていこう!彼女は知らないことがいっぱいあるみたいだし僕がサポートしてあげないとね』
『3番はこのまま骨董アパートに向かおうか』
『4番は―――――まぁ彼についてかな』
[備考]
※『大嘘憑き』に規制があります。
存在、能力をなかった事には出来ない。
自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。
他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り3回。
怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。 (現在使用不可。残り45分)
物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。
※戯言遣いとの会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。

※G-5のスーパーマーケット内に時宮時刻の死体、双刀・鎚@刀語が放置されています。

43 :
以上で投下終了です
酉がおかしくなったので入れられませんでしたがタイトルは切望(絶望)です
指摘感想等ございましたらよろしくお願いします

44 :
投下乙です。
時刻さんが逝ったか……あれ、展開だけならマーダー死亡、危険対主催大勝利なのに、対主催の無理ゲー感が酷くなった…?
しかし様刻さん、時刻さん死んじゃいましたよ? 仇の仇はチート2匹ですよ? ……様刻オワタw
しかし、クマーと七実のコンビは板についてきましたね。クマー相手だと姉ちゃんも楽しそうで何よりです

45 :
投下乙でした
設定が分かりやすく整理されてるのもいいですね♪

46 :
代理投下を開始します

47 :
問題が多過ぎる。
喜界島さんの不参加。
阿久根君の早過ぎる死。
唯一の望みは人吉君のみ。
めだかちゃんを、僕の妹を、元に戻すだけで山積みしている問題。
しかしそれらを一度整理して歯を食い縛る。
先手を打たれた。
そう思うしかできなかった。
今更何を言っても意味はない。
「くそっ!」
ゆっくりと行動し過ぎた。
実力があるから大丈夫だろうと、三人を探しているつもりで探していなかった。
その結果が、阿久根君の死だ。
だけど嘆いていても仕方がない。
きっぱり諦めて、見付ければ弔ってあげる位で済ませよう。
しかし、悔やまれるのは一番最初の禁止エリアに箱庭学園が選ばれるのを考えてしかるべきだったのに、ゆっくり歩き過ぎた事だ。
今からでも一時間あれば着けると思う。
だが不知火理事長に会うには十分な時間があるかと言えば、ない。
理事長室にいるかも知れないが、僕のような者が他にいるかも知れない事を考えれば、いない可能性の方がよっぽど高い。
そうなれ探さざるを得ないが、探すには時間が足りない。
過ぎた時間は戻らない。
どれだけ悔もうと意味はない。
どれだけ悔いようと甲斐はない。
「くそっ! くそっ!」
箱庭学園に行っても不知火理事長には会えそうにない。
人吉君がRばめだかちゃんを戻せる可能性はほぼない。
ならどうするべきか。
人吉君を探す。
それが最良の選択だ。
めだかちゃんを元に戻すための最良の選択。
だけど困った。
人吉君ならきっと、めだかちゃんがいると知ればめだかちゃんを探すだろう。
暴走していると分かっていても、そう動く。
「……どうする」
あえてめだかちゃんと着かず離れずにいるべきか。
それとも、それでも、人吉君を探してみるか。
殺されるリスクを負ってでも。
殺されてるリスクを負ってでも。
どちらにしろ危うい。
選び難い。
「どうするっ!」


48 :
戻せなくなれば、あるいはこの手で、止めなければならなくなるのか。
愛しき妹をこの手で。
あるいは仲間を集めてでも愛しい妹を。
「――――」
いや、焦るな。
焦るべきじゃない。
人吉君が見付からないと決まった訳じゃない。
めだかちゃんより先に見付けさえすればきっと。
そう、まずは人吉君を見付けられれば良い。
それが出来さえすれば希望はある。
僕一人では難しいけどきっと。
「きっと、助けてみせる!」
待っててくれめだかちゃん。
頼むから見付かってくれ人吉君。
きっと戻して見せるから。
僕が。
いや、人吉君と僕とできっと。
『理詰めの魔術師』の名に掛けて。

【一日目/朝/C−4】
【黒神真黒@めだかボックス】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)
[思考]
基本:めだかちゃんを改心させ、不知火理事長に会う。
 1:めだかちゃんを直すために、人吉君を見付け出す。
 2:万が一に備えて組めそうな相手も探す。
 3:人吉君まで死んだら……?
[備考]
 ※「十三組の十三人」編のめだかちゃん(改)と人吉善吉が戦っている途中からの参戦です。

49 :
以上で代理投下完了です

50 :


51 :
確認sage

52 :
完成したので投下を開始します

53 :


「時代の流れか」
真庭鳳凰は呟いた。
真庭忍軍の実質的な頭にして真庭忍軍十二頭領の一人。
十二頭領。
元々は頭領など一人しかいなかった。
しかしある時期、頭領を十二人に増やそうと言い、実行した。
その時期、その時代、敵対関係にあった相生忍軍との戦いに勝つため、実行した。
結果は大成功だったと言える。
個々の突出した能力を最大限に活かす事ができ、そして生き残った。
勝ち残ったと言っても良い。
「これもまた」
しかしそれが今ではどうだろう。
半日も経たずに参加している四人の真庭忍軍頭領の半分が死亡。
個々の能力が傑出しているからこその十二頭領。
それが脆くも半壊状態。
化け物だらけだから仕方がない、などと言う言い訳が立つわけがない。
卑怯卑劣を売りとしている忍者が力に圧倒されて負けたなど、笑い話にもなりはしない。ましてや、実質的な頭と言われている真庭鳳凰がそれではなおの事。
こんな現状で生き残れるのか。
勝ち残れるのか。
「思い上がっていたつもりなど、なかったのだが……」
神の鳳凰。
真庭忍軍で唯一、実在しない動物の名を冠する忍び。
なのに。
「このままでは犬で終わるな」
さも可笑しそうに笑い、空を見上げた。
竹の葉ばかりの空を。
しかし何処か力がないように見受けられる。
それに、普段は鋭い眼光も何処か鈍く見える。
そのまま左腕を掲げ、
「負け犬、噛ませ犬ではまったく――笑えぬ」
振り下ろす。
そして己の右腕を。
あたかもやり慣れているかの調子で。
斬り落とした。


54 :
回想――それは少し前の事だった。

真庭鳳凰は竹林の中を歩いていた。
ただ北へ。
ただ踊山の頂上へ向けて。
「……しかし、踊山の麓に竹林などなかった筈だが」
首を傾げながら。
相も変わらず色々と考えながら。
無意味に思い悩みながら。
竹林の中をブツブツと。
「む?」
不意に足を止める。
竹林の中にある不自然な光景。
薙ぎ倒された竹。
それも一本や二本ではない。
嵐でも通り過ぎたかのように大量の竹が中途から薙ぎ倒され、辺りに散乱していた。
耳を澄ませ、音を聞く。
気配もなく草を踏み締める音一つしない。
鼻を動かし、
「ふむ」
とだけ呟き、また歩き始める。
血の臭いの濃い方向へ。
気配を殺し、念のために炎刀を構えながら。
意外に早くそれは見付かった。
胸元から血を流し尽くした、しかしどこか満足げな顔をした娘。
遠目に見てもこれと言った持ち物は見当たらない。
顔色からして死んでいるようではあるが。
「………………」
一応の警戒をしながらにじり寄る。
警戒するまでもなく、完全に死んでいた。
しかしそれでも周囲を見渡し、やっと警戒を解いた。
一先ず近くで軽く観察をし、左腕を伸ばし、娘の致命傷となったであろう傷口に触れた。
そして発動した。
「ん――――」
娘の、いや、匂宮出夢の服に触れ、忍法記憶巡りが発動した。
巡る。
服の記憶を巡る。
放送の終わった頃へ。
放送の始まった頃へ。
ただ倒れたままの時を。

55 :
「――なっ!」
そして見る。
殺した、顔に紋様の刻まれた小さな少年を。
その少年と話をし、共に何処かへと去っていく、
「鑢七実!」
更に巡る。
竹林を歩き、途中で妙な娘と男とR、竹林に入り、雪上を歩み、かまくらでR、七実と共に歩いてきたこの娘。
おおまかにであっても把握した。
異常であると。
化物であると。
そして理解した。
やはり七実はそれ以上の天災であると。
「妙な者が……いや、妙な化物がやはり多いか」
そして、それらにむざむざ殺されないようにするためにはどうするか。
簡単だ。

――回想、終了。

「――堕ちればいい」
異国の宗教にもある、天国から地獄に堕ちた天の使いのように。
十二の刀の一本を得て最強の座から自ら堕ちた堕剣士のように。
神などと呼ばれている今から。
「同じ化物にでも」
右腕を伸ばし、手近な竹を握る。
竹の握った部分は手の中で屑になり、上の部分はただ倒れる。
「――やはり付けてすぐでは制御が効き難い。が」
倒れた竹を無視し、そう言いながら手を握ったり開いたりと。
匂宮出夢の腕の具合を試し始めていた。
先ほど真庭鳳凰が自身の腕を斬り落としたのは周知の事実だろう。
そしてくっ付けた。
出夢の腕を死体から切り離して。
忍法命結び。
それを使って。
全力を出せば、
「それでも」

56 :
体を捻り、全身の力を込め、振るう。
片腕のない死体に。
人すらも喰い尽くす右腕を。
たったそれだけで、地面は抉れ、血肉が散る。
「十分な威力だ。なるほどこれが――《一喰い》か」
その光景に頷く。
予想通りの光景に頷く。
そして、首を振る。
「しかし、これではしばらくまともに物を持てぬな」
地面に落ちていた小石を摘まむ。
あっさり砕け散った。
思わず苦笑いが漏れる。
まだ力の制御がまるで利いていないことが難点ではあるが、それでも今の所は十分。
今後、更に化物の部品を結んで行けば良い。
優勝するにしろ、別の何かをするにしろ、どちらにしろ、どちらにしないにしろ。
強くなって損はない。
堕ちて行って損はない。
一先ず、何となく、支給品の中身を確認し、
「さて一先ず踊山を登ると――」
見付けた。
名簿を。
二枚目の名簿を。
「――ん? ん? あぁ、虚刀流に返し忘れていたか」
と言う事は放送でしかこの場にいる人間を把握できてない可能性がある。
その可能性しかないの間違いか。
見覚えのある名前のほか、知らない名前も多い。
だがそれでも見覚えのある名前が何人いるかだけでも知っておいて損はない、だろう。
「………………一応、探すとしよう」
片手で地図を広げる。
東に行くと言っておいたのだからまさか着いて来ているはずはない。
北は今しがたまで歩いていたが出会う事もなかった。
そして南は砂漠と海と行く意味を感じられない場所しかない。
そうなれば行っている可能性があるのは、
「西か――ついでに斜道郷壱郎研究施設とやらも見てみるか」
そうして、鋭い眼光をした真庭鳳凰は動き出す。
《人食い》の腕を得てどうなるのか。
それは誰にも分からない。
それでもその後には、胴を喰われた匂宮出夢の死体が残されていた、


57 :
【1日目/昼/E−8】
【真庭鳳凰@刀語】
[状態]健康、精神的疲労(小)
[装備]炎刀『銃』(弾薬装填済み)、匂宮出夢の右腕(命結びにより)
[道具]支給品一式×2(食料は片方なし)、名簿×2、懐中電灯、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、ランダム支給品2〜8個、「骨董アパートで見つけた物」、首輪×1、真庭鳳凰の元右腕×1
[思考]
基本:優勝し、真庭の里を復興する
 1:西へ向かう
 2:本当に願いが叶えられるのかの迷い
 3:今後どうしていくかの迷い
 4:見付けたら虚刀流に名簿を渡す
[備考]
 ※時系列は死亡後です。
 ※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません
 ※「」内の内容は後の書き手さんがたにお任せします。
 ※炎刀『銃』の残りの弾数は回転式:5発、自動式9発
 ※支給品の食料は乾パン×5、バームクーヘン×3、メロンパン×3です。
 ※右腕だけ《一食い》を習得しましたが、まだ右腕での力の細かい制御はできないようです

 ※E−8の匂宮出夢の死体は半壊状態になっています

58 :
相も変らぬ短めな内容で申し訳ないです。
とりあえず死亡フラグ立てときますね。
誰のとは言いませんけど。
いつも通り変な所や感想などがあればお願いします。

59 :
遅くなりましたが投下乙です
火喰い鳥は人喰い鳥に進化した!
しかしクロスオーバーならではのハイブリッド参加者が増えてきたといいますか
その辺も含めて行く末がどうなるか楽しみですw
そして誰とは言わないけど逃げてー!

60 :
月報です
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
92話(+3) 30/45(-1) 66.7(-2.2)

61 :
代理投下します

62 :
手をつなぎ、どこまでも行こう。
君となら、どこまでも行ける。

【1】

「そうだね、復讐なんかしても病院坂両名は喜ばないね。僕はもう復讐なんて愚かしいことは考えないよ」
「いーや、嘘だっ! 誠意がない。あたしの会話をめんどくさそうに打ち切ろうとするときの兄ちゃんと同じ目をしてる!」
「そう言う火憐さんは、僕の妹に全然似てないね」
がれきの山のうちのひと山を椅子にして、火憐さんと櫃内様刻君は言い争っていた。
より正確に言えば、火憐さんが櫃内君に復讐なんて止めろと滔々と説教を垂れ流し、
櫃内君は、うんざりとした顔で会話を終わらせる機をうかがっている。
ちなみに、櫃内君の頭には巨大なこぶがある。たまに、蹴りを入れられた部位であるお腹を押さえている。
誰がそれらの攻撃をしたのはについては、説明するまでもないだろう。殺したい。
無桐伊織さんは、『まだ終わらないんですかー?』という顔で、投棄された丸太の上に座って足をぶらぶらさせている。
いや、表情だけではなく、実際に言葉に出してそう言おうとしていた。
けれど、櫃内君が火憐さんの腹蹴りで強制的に黙らされて説教を聞く流れになってからは、ぴたりと大人しくしている。
時折、思い出したように凶悪な殺気を見せるというのに。凶暴なのか臆病なのかよく分からない女の子だった。殺したい。
僕――宗像形としては、立場はあくまで火憐さんの味方、心情としては中立寄り、といったところだ。
確かに僕は火憐さんの正義に感銘を受けているけれど、万人がそうではないと分かるぐらいの客観的判断力はあるつもりだから。
よって、櫃内君をそこまで非難するつもりはない。殺したい。
僕ら二人と二人が出会ったのは、分岐点で進路を決めてからほどなくのこと。
左右の景色が、がれきの山に変わった頃合いだった。
ゆるやかにカーブを描くがれきの山に視界が遮られて、互いの気配に気づいたのは割合と近づいてからだった。
もちろん二人組だからといって殺し合いに乗っていないグループだとは断言できない。
ましてや二人組の女性の方からは、あの零崎軋識と同じ空気がした。
つまりは、危険人物の匂いだ。
というか、参加者詳細名簿にも危険人物だと書かれていた。
けれど、火憐さんはそういう見た目(?)で人を判断するタイプではないし、その女性――無桐伊織も、全くの無警戒でこちらに声をかけてきた。
その呑気さは演技には見えないから、強者の余裕なのか――あるいは、あまり空気を読めるタイプではないのか。
ともかく、ファースト・コンタクト自体は穏便に運んだ。
自己紹介もそこそこに、僕と火憐さんは、彼らがたどった経緯について聞きたがった。
無桐さんと櫃内君は、まず『零崎人識』と『時宮時刻』に会わなかったかと聞いてきた。
僕たちは、そんな二人は知らないと言った。
いや、正確に言えば『零崎軋識』という男には会ったのだけれど、伊織さんはそちらにはあまり関心がなさそうだった。
その人物とはどういう関係なんですかと、僕は尋ねた。
詳細名簿から、無桐さんと『零崎人識』が家族であることは知っていたけれど、櫃内君と時宮時刻との間に繋がりはなかったはずだから。
櫃内君は、大事な人とその縁者を殺した仇であり、復讐を果たすつもりだと答えた。
そんなことをあっさりと明かしてくれたたことは迂闊だったけれど、櫃内君にそこまで落ち度はない。
一般人である櫃内君の目にも、僕が無桐さんと似た、しかし彼女より分かりやすい殺意を持っていることはすぐばれる。
そんな僕と普通に同行している火憐さんも、『そちら側』に慣れていると思い込んでも、無理はないだろう。
殺人を日常茶飯事におく人物ならば、復讐殺人についてとやかく言われることはあるまい、と。
しかし火憐さんはもちろん、『復讐による殺人』を見過ごすような人ではなく――今に至るということだ。
「お兄さんが死んでも復讐に走らない火憐さんは、とても立派だと思うよ。
けど、自分が立派なことをしているからって、そのやり方を僕にまで押し付けないでほしいな」
「兄ちゃんは関係ないっ……! いや、あたしだって兄ちゃんが死んだ時はすげー悲しかったし、あんたと境遇は似てるって思ったけど……!
でも、兄ちゃんのことがなくたって、あたしはあんたを止めようとしてる!」

63 :
「火憐さん」
「どうした、宗像さん」
どうやらこの説教はまだしばらく続きそうだぞ、というタイミングを見計らって、僕は声をかける。
正直、お兄さんが死んだ直後の火憐さんを知っている僕としては、彼女の肩を持ちたかったのだけれど。
「この分だと、櫃内君を説得するのにはもう少し時間がかかりそうだよね。
だからその間に、僕は無桐さんと情報交換を済ませておくよ。ちょうど僕らが向かおうとしてる方角から来たんだから、何か分かるかもしれないし」
「おお、それもそうだな。んじゃ、情報交換は任せるぜ! 近くで怒鳴られると迷惑だろうから、あたしらはその辺をぶらついてくるよ」
「うん、何かあったら無茶しないで戻って来てね」
「あたし『ら』って、僕の意思はないんだね……」
本当ならこちらからそれとなく距離を取ろうと思っていたのに、気づかいまでしてくれた。
僕の言動をそのまま信じ込んで櫃内君を引きずって行く火憐さんに対して、罪悪感を覚える。
けれど、探していた人物――無桐伊織――と二人きりになれた高揚感の方が、その時の僕には勝っていた。
「えーと宗像形君でしたっけ。もしかして様刻君たちって、人払いされました?」
どうやら、いささか露骨だったようだ。
ひたすらぼーっとしていた無桐さんも気づいたというのに、気づかなかった火憐さんはよほど素直ということなのだろうか。
「うん。火憐さんには、知られたくないことだから」
「うな? 何やらプライベートなご相談ですか?」
どこにでもいそうな――いや、両手が義手だということ以外は、特異点のない女の子に見える。
感じる殺気は、零崎軋式や僕の持つそれと比べると小さいけれど、それは決して『弱い』という感じではない。
言うなれば、『抑え込んでいる』という感じがする。爪をひっこめている猫のような。
だから、無桐さんのそんな姿が、僕に期待を抱かせた。
もしかしたら。
「君の《家族》について、教えてほしいんだ」
もしかしたら――僕の《殺人衝動》を抑える方法が、分かるかもしれない。

【2】

「殺人衝動を抑える方法? そんなものありませんよぅ」

ばっさりと。
いとも簡単に、僕の――宗像形の願望は否定された。
「そんな方法があるんだったら、教えてほしいぐらいです。
私も人識くんも、哀川のおねーさんに怒られなくて済むじゃないですか!」
うん、もしかしたら、という期待ではあったけれど。
それでも、ここまでばっさり切られると……堪えるものはある。
いや、だけど。
確かに僕も、ちょっと楽観的な可能性かもとは思っていたけれど。
それにしたって、“全く”方法がないってことは、無いんじゃないのか?
生きてれば、衝動を抑えなきゃいけない時ぐらいあるだろう?
「そうなったら、ひたすら我慢するんですよ。現に、今の伊織ちゃんが正にその状態なんですから」
義手でぽんぽんと自分の胸を軽くたたいて、無桐さんはあっけらかんと答えた。
……うん、実際僕だって今まで我慢してこれたんだけど。

64 :


65 :
けど、それにしたって、限度ってものがあるだろう?
僕は、いつ本当に人を殺してしまうか、不安で仕方がないんだぞ?
そんな痩せ我慢みたいな方法で、まともな人生を送れるものなのか?
「はい、支障があるのが普通ですよね。だから零崎一賊って、みんな短命なんですよ――これは人識君からの受け売りなんですけど。
でも、まともに生きるのなんて無理だと思いますよ? だから新しく『家族』を作っちゃうわけですし」
あっけらかんと語る火憐さんに、僕が感じたのは違和感だった。
そりゃあ、軋識のようなとんでもない『異常性』があれば、社会生活から外れようと、短命なりに生きていけるのかもしれない。
だけど、そのあっけらかんとした様子に、違和感があった。
この人たちは、殺しながら生き続けなければならない人生に、何の疑問も抱いてないのか。
人間は、殺したら死んでしまうじゃないか。
死んだら、取り返しがつかないじゃないか。
なんでそんな、曇りの無い顔ができるんだろう。
「もしかしてあなた――まだ、人を殺したことがありません?」
ぎくりとしたけれど、肯定するしかなかった。
確かに僕は、まだ一線を踏み外してはいない。
「あーなるほどなるほど。だったら、『そのせい』かもしれませんね。
伊織ちゃんが目覚めたのも、最初に人を殺した時でしたから。
罪悪感がさっぱり湧かなかったから、自分でも不思議でしたね、あの時は。
人識君は、それを『零崎化する』と言っていましたが」
どうやら殺人経験の有無が、ポイントになるらしい。
ならば、もし僕が、本当に人をR時が来れば。
その時の僕は、『殺したら死んでしまう』ことにも、罪悪感を抱かなくなるのか?
それは、楽になれるということなのか?
だけど、それは悲しくないのか。絶望しないのか。
人を殺しても何とも思わない人間になるんだぞ?
それが、人でなしじゃなくて何なんだ。
「じゃあ、『私はそうじゃないんだー』って意地を張って、目を逸らしたら幸せになれるんですか?」
火憐さんは、真剣な面持ちに豹変してそう言った。
「自分の本質を否定したら、……それって『逃げた』ってことですよね。伊織ちゃんは、逃げたくありません。
殺人を我慢するってことと、自分を否定するってことはまた別なんです」
そうきっぱり言い切る無桐さんは、空気の読めない異常殺人鬼の顔ではなく、しっかりと自分の考えを持った少女の顔に見えた。
だからこそ、心が痛い部分もあった。
僕はずっと人間を『殺したい』と願い続けて来た。
だから『殺人鬼』だと悪ぶってきた。
けれど、『人殺し』と言われると『僕だって本当は死なせたくないのに』と忸怩たる思いをする時があった。
僕は本当はそうじゃないのだと、主張したいような。
だから、逃げだと指摘されたら、否定できないのだ。
「もしあなたが目覚めて、それが『零崎化』と呼べるものだったら、家族として迎え入れる準備はありますよ?」
無桐さんはそう言った。
それは何の打算もなく、ただ好意からそう言ってくれたように見えた。
零崎に、なる。
それは、人殺しになっても、それなりに幸福な人生を送れるということ。
『家族』という理解者がいて、引け目のない人生を送れるということ。
『逃げ』をしなくても、いいということ。

66 :


67 :

真摯な無桐さんの目を、僕はもはや『異常者』と見ることはできなかった。
けれど。

そうなったら、火憐さんとは相いれなくなる。

未だに僕は、火憐さんに“殺人衝動”のことを打ち明けていない。
似た者同士である無桐さんや軋識の前では披露したけれど、最も長く共にいる彼女に話すことは恐れている。
それを告げたら、関係が終わりになってしまうかもしれないと恐れている。
“ついて行く”と言いながら、彼女のことを信頼していないのかと見做されてもしかたがない。
けれど、火憐さんだからこそ、打ち明けるのには勇気が要った。
それは火憐さんが『正義の味方』であり、悪を憎んでいるからだ。
人間を殺したいと考えている人間は、果たして悪の側に分類されるのかどうか。
簡単だ。まぎれもなく悪だ。
悪であるからこそ、火憐さんは『人を殺そうとしている』様刻君に対して怒っているのだから。
人を殺したくて殺したくてたまらないなんて、そんな気持ちが『正義の味方』に理解されるかどうか――

「あのー。こんなこと言っちゃうと、また『空気読めない』って言われそうですけど」

その時だった。
真摯な表情はなりを潜め、おずおずとした顔で、伊織さんは斬りだした。
火憐さんたちが出歩いていった方角の、曲がり角を指差して。

「さっきから、様刻君たち二名に立ち聞きされてるみたいですよ?」

【3】

阿良々木火憐による、櫃内様刻を更生させようという試みは、そう長くかからなかった。
何故なら、そう遠くに歩かないうちに、死体と出くわしてしまったからだ。
それは、火憐がこの殺し合いで最初に――宗像形と同時に見かけた少女だった。
そこにある所業は、一言で言えば滅多刺し。
ボロボロに裂けた豪華絢爛な着物。
内蔵は、バラバラに散乱し。
両腕はなくなっていた。
しばらく、言葉もなく立ちつくす二人。
櫃内様刻は、見るに堪えない姿に顔をそむけ。
そして阿良々木火憐がしたことは、膝をついての謝罪だった。
「ごめん……助けてあげられなくて、ごめん……」
涙を含ませた声で懺悔をする少女を、様刻は複雑そうな面持ちで見下ろす。
しかし火憐としては、探していた少女が遺体で見つかったとなれば、様刻を相手にするどころではない。
宗像形に報告して、そして二人で彼女の遺体を埋葬しようと決めた。
芯が強くとも人間強度は決して強くない火憐が、そうやって気持ちを切り替えられたのは、
それだけ彼女が宗像形を頼りにするようになっていたことの証左かもしれない。

68 :


69 :
実のところ、宗像形はとがめの名前を知っていたので、放送の時点で死亡を知っていたのだけれど、阿良々木火憐にそのことを言っていなかった。
なので、火憐としては気が重い報告を抱えて戻り、宗像らのいた一角まであと一つだけ曲がるというところまで近づいて、

「僕は――君と同じ、人を殺したくて殺したくてたまらない人種なんだ」

そんな重たいことこの上ない告白を、漏れ聞いてしまった。
その告白は、信頼を置く宗像形のもので、火憐はそこで立ち止まってしまう。
どうやら二人は、『殺人衝動』なるものについての議論を交わしているようだった。
殺人を何とも思っていない伊織の言動に、火憐はムッとして飛びだそうとしたが、
「でも、今は人を殺さないように我慢してるんだろう?」
「あ、そりゃそうか……」
様刻の言葉で、すぐに鎮火した。
阿良々木火憐の成すことはあくまで正義の味方であって、罪人の糾弾ではない。
伊織が殺人を我慢するというのならば、討伐する理由は何もないのだ。
やがて無桐伊織は宗像形の質問に全て答え終わり、宗像形は『家族になってもいいよ』と勧誘された。
宗像が長考する気配が、廃墟の壁越しに伝わる。
「割って入らないのかい?」
「割って入る?」
「君の同行者、殺人鬼の道に誘われてるぜ? 僕にしたように、止めなくていいのかい?」
「んー……」と阿良々木火憐は難しい顔で唸る。
しかし、はっきりとした言葉で答えた。
「まずは、宗像さんの答えを聞いてからにする。
宗像さんは、『正義の味方』のあたしに『ついて行く』って言ってくれたんだ。
宗像さんに『行くな』って怒るのは、その言葉を信用してないってことじゃないか」
そう答えた時だった。
「さっきから、様刻君たち二名に立ち聞きされてるみたいですよ?」
火憐は、ぎくりと凍りつく。
様刻は、そりゃばれるよね、と肩をすくめた。
自分の悩みでいっぱいいっぱいの宗像とは違って、伊織には余裕がある。
そして伊織は駆けだしとはいえ『プロのプレイヤー』であり、一方の火憐と様刻は一般人に過ぎないのだから。
ぎくしゃくとした足取りで、火憐は宗像らの前に姿を現した。
いくら『宗像を信じている』と発言したところで、『立ち聞きがばれた』というシチュエーションならば罪悪感はある。
ましてや、火憐はそういう状況で悪びれることができるほど強かな性格ではない。
そして、硬直という意味では、宗像はそれ以上だった。
最もばれたくないと思っていた自らの悪徳を、最悪のタイミングで知られてしまったのだから。
周囲への警戒も忘れて、火憐の目をただただ凝視する。
不可抗力の連続した結果、その場には重苦しい沈黙が横たわった。

だから、

「人間・認識」

70 :


71 :

火憐のはるか後方で様子をうかがっていたその『人形』を、彼らはその宣告がなされるまで、気付けなかった。

【4】

いくら殺人経験のない殺人鬼と、素人の殺人鬼とはいえ、奇襲の可能性を考慮できないはずがない。
だから、ガラクタの山に囲まれた、見つかりにくい場所で話し合っていた。
しかし、その『刀』が持つ視覚であるセンサーは、人間ならば見逃すほどの隙間から微かに除く、人間特有の生命反応を、見逃さなかった。

「即刻・斬殺」

宣言と共に、人間と人形を遮る、小さな掘っ立て小屋のがれきが吹き飛ばされる。

火憐はとっさに、様刻の襟首をつかんで横っ跳びに回避した。
いくら火憐がけんかっ早いとはいえ、この状況でもっとも弱者である様刻をまず守ろうとする。
「ぐえぇ……」
「なんだありゃ?」
息をつまらせる様刻と、疑問の声を上げる。阿良々木火憐。
舞いあがる埃の中から姿を見せたのは、四本の足に四本の腕、四本の刀を持つ可愛らしい顔立ちの人形だったのだから。
「――呆けてる場合じゃなかったね」
一歩前に出て、人形に対峙する構えを見せたのは――宗像形。
がれきの破壊から、人形が危険なのは明らかであり、なおかつ人間でないならば、躊躇する理由はどこにもない。
「刺殺――いや、この場合は、圧殺かな?」
その両手には、何時のまにやら取り出された暗器である、千刀。
それを宗像は、一直線に投擲した。
四本の刀のうちの日本で、それを難なく弾き落とす、人形――日和号。
ぎょろりとした目が、宗像をとらえる。
それは、標的を一般人二人から宗像に変更したということだった。
「反撃・開始」
「残念、まだこっちの攻撃は続いてる」
しかし、宗像の攻撃はそれにとどまらない。
「ストックは、まだ数百本あるからね」
暗器を出現させ、投げる。
宗像形は、これを一瞬で行える。
一瞬で、連続して、取り出しては投げられる。
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる

72 :


73 :
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。投げる
零崎軋式に対して行使したのと同じ、『?』による物量攻撃。
ただし、直接に切りつけるのではなく、投擲による集中砲火。
からくり人形ならば、肉体強度はそれほどでもあるまいと、質量攻撃を狙ったこともある。
数百本の刀は、もはや『壁』のような剣山となって、人形を蹂躙せんと飛来する。
日和号は、感情の宿らない無機質な目でそれを観察し。

――新たな言葉を、発した。

「人形殺法・旋風」

四本腕の刀を、プロペラのような形に集約させる。
次の刹那、その四枚羽根からまさしく旋風が放たれた。
「なっ……!?」
高速回転による推進力で、人形は千刀を小枝か何かのように巻き上げ、叩き落とし、散らしながら一直線に突進した。
刀の幾本かは、その風圧だけでばらばらに吹き飛ばされた。

障子紙のように容易く、千刀の『壁』が、突き破られる。

圧倒。
人間相手を想定した技術が、通じない規格外。
それが、宗像形を目指して襲来する。

宗像は、見る見ると距離を詰める化物に畏怖を覚える。
しかし、そこで退避ができないほど素人ではない。
こいつに、迎撃の構えを取るのは危険だ。勘がそう言っている。
だから、回避するしかない。
この至近距離でも、己のスピードならそれができると判断して――

――しかし。

宗像形の後ろに、判断に迷う無桐伊織がいた。

“人形”という殺意を持たない敵であるがゆえに、日和号との相性が悪い“センスだけの素人”が。

74 :
もちろん、宗像形はそこまで知らない。
そもそも、彼女をかばうほどの絆は二人にない。
同族かもしれないとはいえ、ついさっき出会ったばかりの相手なのだ。“零崎”同士でもない限り、身を挺して守りたいとは思わない。
しかし、それは『いつもの癖』だった。
人間を『殺さないように』と、人一倍に配慮してきた癖。
敵に捌かれた武器でさえ、人に当たって二次被害を出さないようにと、心がけてきた癖。
それが、宗像形の足を止めた。
『避けることで、他の人間が死んでしまうかもしれない』というリスクに対して、躊躇した。

――避けられない。

その躊躇いをとらえた日和号の視覚は、それを『かっこうの隙』だと判断する。
四本足の一本を支点として、宗像形の眼前で着地。
旋風の勢いを殺さぬまま、刀を横凪ぎに高速回転させて迫る。
元より宗像形、『暗記の扱い』と『殺し方』には長けていても、『戦闘スキル』自体はそこまで高くない。
飛来する『?』を全てしのぎ切る相手と斬り結べるような技能は、ない。
四本の刀が振りかぶられ、次の瞬間にそれが肌を切り裂くことを宗像は理解する。
目と鼻の先で、殺人人形は死刑宣告をした。

「人形殺法――」

目を閉じた。
ああ、これで終わるのか。
殺してしまうかもしれない人生だったけど、もう少し生きたかったな。

「宗像さんっ!!」

どん、と。

体に、真横からの衝撃が加えられた。
柔らかい、女の子の手だった。
その手に、突き飛ばされていた。

まさか、と思った。
そんなこと、あるはずがない。
もっと言えば、『彼女』が、自分の正体を『殺人鬼』なのだと知って、その上で庇うはずがない。

宗像は、目を開けた。

刀で突き殺そうとする人形と、殺されようとする宗像形の間に、割り込む少女の姿がそこにあった。

75 :


76 :


「台風」


まぎれもなく、阿良々木火憐だった。

【5】

血しぶきが、視界に焼きつく。

幾重にも斬りあげられて、火憐さんは空中を舞った。
頭が、真っ白になった。
その瞬間、僕は自分がどんな言葉を叫んだのか覚えていない。
ただ、我を忘れた僕は、それでも憎き人形を攻撃するより火憐さんの安全確保を選んだらしい。
舞い落ちる、火憐さんの体を追った。
その体を、ぎゅっと受け止めた。
ずたずたに引き裂かれ、赤く濡れた火憐さんを目にした。
息は、あった。
死なせたくない、と逃げた。
無桐さんは、その数秒の間に、櫃内君を回収して、僕の後に続く。
とはいえ、僕こと宗像形のスピードにはついて来られず、どんどんその姿は小さくなっていった。
不要湖の出口まで到達して、僕は火憐さんを降ろした。
火憐さんのディパックから支給品を探り、治療道具がないかを調べようとする。
その時、火憐さんの胸元から、ごぼりと血が噴き出したのを見てしまった。
傷口が肺にまで到達しているのだと、僕はその裂傷を見て理解する。
「なんで……?」
つまり、手遅れだった。
致命傷だった。
死んでしまう、傷だった。
火憐さんは、そんな作業に焦る僕を、虚ろな目で見上げていた。
苦しげな呼吸音と共に、その唇がたどたどしく動く。
「あー……むな、かた…………さん?」
喋らないでと、そう言おうとした。
けれど、僕の口は、違う言葉を言っていた。
「なんで助けたんだい……僕は『殺人鬼』なのに」
答えを求めていたわけではなかった。
答えられるだけの意識が残っているとは、思えなかったからだ。
「ううん……まさか」

77 :


78 :
そう、思っていたのに。
がしっと。
火憐さんの手が、僕の手をつかんだ。
「宗像、さん…………わるい、ひと、じゃ……なぃ」
その手の温度は、熱かった。
死にかけているとは思えないぐらい、熱かった。
命が、燃えているみたいだと思った。
理由があるんだよ、と。
火憐さんはそう言った。
「あたしは、何があっても……宗像さんの、味方、だから……」
燃える、この温度に。
溶ける、その答えは。
「『正義の味方』である、あたしが。
『味方』してるんだから……。
宗像さんは……『正義そのもの』、だ」
清く、正しく、マシュマロのように甘く。
そして、その笑顔がかっこよかった。

それが、運命の言葉になった。

火憐さんの呼吸は、いっそう苦しげになっていた。
ひぃひぃ、と。
肺の周りの肌が、少しずつ膨らみはじめている。
呼吸が肺から漏れて、体の諸器官を圧迫している証だった。
肺の損傷は、ずっと深かったらしい。
このままでは、呼吸ができるのに窒息死するという、地獄の苦しみを味わうことになる。
見ていられない、そんな死に方をすることになってしまう。
それでも、僕がしようとすることは、『殺人』になってしまうのかと恐れたから。
だから、僕は火憐さんに判断をゆだねた。

「火憐さん。苦しい死に方と、苦しくない死に方。どっちがいい?」
「苦しくない方?」と、火憐さんは囁くように答えた。
だから僕は、『苦しくない方』をすることにした。
たとえそれで『零崎』に目覚めても、耐えきって見せると決意して。
「ごめんね、火憐さん」
千刀の一本を、火憐さんの体の上に掲げる。
「僕は君を、守れなかった」
僕こと『枯れた樹海』宗像形は、人の殺し方を色々と知っている。
だから、苦しまずにR方法だって知っていた。


79 :


80 :

【6】

「無桐さん。さっき、初めて殺した時から“零崎”に目覚めたって、そう言ったね?」
様刻君を連れて追いついてきた無桐さんに、僕は話しかけた。
火憐さんの、まぶたをそっと閉じながら。
「なら――僕は違うよ。僕は、“零崎”じゃない」
『殺人鬼』は、目覚めなかった。
むしろ、抱いた気持ちは失望だった。
僕が欲しがっていたのはこんなものだったのか、とがっかりしたような。
失望したような。
こんな感情しか手に入らないなら、要らないと。

殺人衝動が、消えていた。

火憐さんからの、最後の贈り物。
そんなロマンチックな考え方をするほど、僕はご都合主義者ではない。
だから、僕にとって重要なのは事実だけだ。
『阿良々木火憐さんが、宗像形から『殺人衝動』を消した』という事実のみ。
だから、阿良々木火憐さん。
君は確かに、『正義の味方』だった。

だから僕は――君の言う『正義そのもの』になりたい。

【阿良々木火憐@物語シリーズ 死亡】

81 :

【1日目/真昼/E−7】

【宗像形@めだかボックス】
[状態]身体的疲労(中) 、殺人衝動喪失
[装備]千刀・?(ツルギ)×564
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0〜5)、「参加者詳細名簿×1、危険参加者詳細名簿×1、ハートアンダーブレード研究レポート×1」、「よくわかる現代怪異@不明、バトルロワイアル死亡者DVD(1〜10)@不明」
[思考]
基本:阿良々木火憐と共にあるため『正義そのもの』になる
 0:斜道郷壱郎研究施設へ向かう
 1:???
 2:機会があれば教わったことを試したい
 3:とりあえず、殺し合いに関する裏の情報が欲しい
 4:DVDを確認したい
5:火憐さんのお兄さんを殺した人に謝らせたい
[備考]
※生徒会視察以降から
※阿良々木暦の情報はあまり見ていないので「吸血鬼」の名を冠する『異常』持ちだと思っています
※無桐伊織を除いた零崎四人の詳細な情報を把握しています
※参加者全員の顔と名前などの簡単な情報は把握しています
※危険参加者詳細名簿には少なくとも宗像形、零崎一賊、匂宮出夢のページが入っています
※上記以外の参加者の内、誰を危険人物と判断したかは後の書き手さんにおまかせします
【無桐伊織@人間シリーズ】
[状態]殺人衝動が溜まっている
[装備]『自殺志願』@人間シリーズ
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0〜2)
[思考]
基本:零崎を開始する。
 0:玖渚さんに電話をして宗像さんのことを教えるべきですかね……?
 1:曲識を殺した相手や人識君について情報を集める。
 2:今は様刻さんと一緒に時宮を探す。
 3:黒神めだかという方は危険な方なのでしょうか。
[備考]
 ※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。
 ※黒神めだかについて詳しい情報を知りません。
※宗像形とは、まだ零崎に関すること以外の情報交換をしていません。

【櫃内様刻@世界シリーズ】
[状態]健康 、『操想術』により視覚異常(詳しくは備考)
[装備] スマートフォン@現実
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0〜2)
[思考]
基本:死んだ二人のためにもこの殺し合いに抗う。
0:火憐さん……。 
1:時宮時刻をR。
[備考]
 ※「ぼくときみの壊れた世界」からの参戦です。
 ※『操想術』により興奮などすると他人が時宮時刻に見えます。
 ※黒神めだかについて詳しい情報を知りません。
 ※スマートフォンのアドレス帳には玖渚友が登録されています。
 ※阿良々木火憐との会話については、次以降の書き手さんに任せます

82 :
代理投下終了です
冒頭のコピペミスってしまいましたがWiki収録時に修正します

83 :
リスタ前に比べるとやっぱRに見えるな。
xRとかいう勘違い書き手は下手な文連ねてエース気取りだしよー

84 :
予約分投下します

85 :

後ろを向いたまま、前には進めない。
進むということは、後ろに背を向けるということだ。


クラッシュクラシックを出た鑢七花は西に向かったところで一人の女と遭遇した。
「箱庭学園生徒会長黒神めだかだ」
七花が何かを言う前に先手を取るかのように黒神めだかは名乗りを上げる。
背筋を伸ばし、凜とした姿勢は七花にどこか王刀・鋸の元所有者、汽口慚愧を連想させた。
「貴様はまさかこの殺し合いに乗ってはおるまいな?」
……いや、汽口はそんな高飛車な物言いはしなかった、と七花はめだかに対する印象を訂正。
尤も、どんな印象だったところでこれから殺してしまうのだから意味はないが。
「なあ、あんた名簿は持っているよな?」
めだかの質問を無視し、現在のところの一番の目的である名簿の有無を確認する。
七花としては相手に質問する隙も与えず殺してしまいたかったのだが、今となってはかなわぬ相談だ。
「ふむ」
と短く返しためだかは七花をじっくりと、品定めするような目で見た上で、
「一応持ってはいるがなぜ貴様は持っていない?荷物を奪われたというなら話はわかるが――」
「別にいいだろ、そんなこと」
質問を更に質問で返され、ぶっきらぼうに打ち切る。
不承島を出て嘘をつくことを覚えた七花だが適当な話をでっち上げられるほどコミュニケーション能力は高くない。
かといってそのまま経緯を話してしまえば一悶着あることぐらいは予想できる。
もう会話も面倒になってきたし殺してしまおう――そう思ったそのとき、
「やはり貴様、殺し合いに乗っているな?」
疑問形の形をとってはいるが実質的には肯定形。
反論の余地を与えない、断言だった。


「まず気になったのがその袖についた血だな。自分のものならそんな位置にあるのはおかしいし返り血にしては少ない。他者を襲ったはいいが逃げられたというのが妥当だろう。
 それとやけに軽そうなデイパックだ。たまたま軽いものだけが入っていたとしても名簿だけを紛失するというのは不可解だ。
 大方、誰かと同盟を組むなり取引するなりして道具を渡し、そのとき手違いで白紙だった名簿も一緒に渡してしまった、と。奪うとするならデイパックごと奪うはずだしな。
 そして、それらの道具を渡してしまっても問題ないということはかなり腕に覚えがあり、武器を使う必要がないのだろうな。おそらく、貴様は拳士ではないか?」
どこからか取り出した、七花には見覚えのある鉄扇をばんっ!と広げ『観察』して得た結果を元に推察するめだか。
二言三言言葉を交わしただけで十中八九事実を引き当てたことに若干の驚きを覚える七花だったが、最後まで言い当てられなかったことで動揺は見せずに済んだ。
「残念ながらおれは拳士じゃねえ、剣士だ。あんたがどういうつもりでいるかは知らないが邪魔をするならたたっきるだけだ」
「その様子からして手当たり次第に殺そうと思っている戦闘狂というわけではなさそうだな、さしずめ優勝の賞品狙いといったところか?」
「だとしたらどうする?」
七花に人をRことに対する抵抗は一切無い。
刀として育てられたのだから、人をRことに躊躇するようであれば刀失格だ。
だから、「そんなことをしても無駄だ」みたいなことを言われても自分には関係ない、と受け流せると思っていた。

86 :
けれど、
 . . . . . .
「哀れなことだ」
まさか憐憫の情をかけられるなんて思ってもみなかった。
 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
「貴様もかつてはバトルロワイアル打倒に燃える正義感の強い人間だったに決まっている」
でも、最初は意外な反応をするものだと聞いていたが、言っていることはてんで的外れ。
 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
「想像を絶する程の重度のトラウマを負い殺し合いに乗らざるを得なくなったとしか考えられん」
七花は汽口よりも尾張城で殺した雑魚(名前忘れた)の方に似ているんじゃないかと思い始めていた。
中身はあるのに聞いていてむかつくとはどういうことだ。
が、
「親に見捨てられたか?
「よき師に出会えなかったか?
「恋人に裏切られたか?
七花の頭の中が真っ白になる。
「安心しろ。私が更正させてや――
「ふざけるな!」
刀集めの旅の途中でもここまで激昂したことはないのではないかというほど七花は怒っていた。
三途神社での敦賀迷彩との戦いでも虚刀流を否定されて怒りはしたがこれほどではなかった。

「親に見捨てられたか?」

――まさか、親父は島流しの憂き目にあってもおれと姉ちゃんをちゃんと育ててくれた。

「よき師に出会えなかったか?」

――とんでもない、親父から教わった虚刀流は今でもおれの誇りだ。

「恋人に裏切られたか?」

――そんなことがあるわけない、とがめは今際の際におれに惚れてもいいかと聞いてくれた。

「おれのこともとがめもことも知らないおまえに更正される筋合いはねえ!」
そう、めだかは間違えたのだ。
感情が乏しい七花の数少ない大切な部分を悉く否定してしまった。
平和的解決が望めるはずもなく、戦闘――いざ尋常に、始め



「虚刀流――『薔薇』!」
二人の距離は5m程。

87 :
まずはその距離を詰めるように体重を乗せた跳び蹴りを放つ。
一方でめだかは動かない。
空手・柔道・合気道・日本拳法・ジークンドー骨法・ムエタイ――ありとあらゆる格闘技の指南を受けためだかであるが、虚刀流は初見の剣法である。
だからこそ、『反応』よりも『反射』よりも先に『観察』をしてしまう。
蹴りが自分に届きそうになったところでようやくいなす。
「なら――虚刀流『百合』!」
今度は腰の回転を加えた回し蹴り。
これもギリギリまで引きつけた上で跳んでよける。
「なるほど、手刀や足刀を刀に見立てるというわけか、無刀の剣士というのもおもしろい」
「そう言っていられるのも今のうちだ――虚刀流『石榴』から『菖蒲』まで打撃技混成接続!」
足技から手技主体に切り替えて数を使って攻撃する。
さすがに『観察』する余裕がなくなったようなので防御をすることが増えていく。
「しかし困ったな。私はいつまでもここにいるわけにはいかんのだ」
「じゃあとっとと終わらせてやるよ――虚刀流『桔梗』!」
めだかの右腕を捻り上げ、肩と肘を極めて奥義をたたき込む、はずだった。
瞬間、腕に軽い刺激が走る。
「……? ………………っ!」
めだかの右手の爪が異常とも言える程伸びていた。
疑問の後に、驚愕。
掴んでいためだかの腕を放さざるを得ない。
四肢が痛みで動かない。
頭が痛い。
目の奥にも痛みを感じる。
そして何より。
身体が――火照る。
熱い。
燃えるように。
火のように熱い。
炎の中に身を投げたような気分だ。
どさり、と地面に体をぶつける。
「ふむ、初めてで不安だったがうまくいったか」
「……おれに――何をした」
「何、デング熱に罹ってもらっただけだ。貴様のような頑強な者でも高熱・頭痛・筋肉痛・関節痛になれば動きは制限されるだろうからな」
「天狗熱……?」
「否、デング熱だ。高貴から聞いた通りだったな。病気を自在に操れるスキルというのは制圧には中々便利だ」
めだかが使ったのは本来箱庭学園保険委員長赤青黄が悪平等安心院なじみから貸し出されているスキル『五本の病爪』
オリエンテーションで球磨川禊から阿久根高貴に伝聞されたものを更に聞くだけで完成させた今のめだかの異常度を表すと言ってもいいスキル。
「見れるかどうかわからんが私には不要だから名簿は貴様にやろう。私はここにいる全ての人間を救わねばならんからな」
七花のデイパックに自分の名簿を押し込み七花に背を向ける。
「デングウイルスは蚊によって媒介されるからな、潜伏期間の問題もあるし他の者に移るということはないだろう。全て終わったら治してやるから安心するがいい」
最後にそう言い残して。
朦朧とする意識の中何も言うことができずそれを見ていた七花は恨めしげにめだかの後ろ姿を見送ることしかできず、やがて視界が真っ暗になった。


88 :

黒神めだかは振り返らない。
「余計な時間を食ってしまった。早く戦場ヶ原上級生を追いかけねばならんと言うのに」
七花のことは「ただの障害」としか感じてないかのような物言い。
「しかし他にも殺し合いに乗った者がいるかもしれんし急がねばならぬ」
東に歩みを進めてまだ見ぬ参加者に対し、説得か勧誘か制圧かどう対処すべきか考えながら。
おそらく、めだかの対応は正しいのだろう。
ただ、一つ見落としがある。
正しさを知っているだけでは正しい人間とは言い切れない。
独りぼっちの行進は続く。

【1日目/昼/C−4】
【黒神めだか@めだかボックス】
[状態]『不死身性(弱体化)』
[装備]「庶務」の腕章@めだかボックス
[道具]支給品一式×3(名簿のみ2枚)、ランダム支給品(3〜7)、心渡@物語シリーズ、絶刀『鉋』@刀語、否定姫の鉄扇@刀語
[思考]
基本:もう、狂わない
 1:戦場ヶ原ひたぎ上級生と再会し、更生させる
 2:話しても通じそうにない相手は動けない状態になってもらい、バトルロワイアルを止めることを優先
[備考]
※参戦時期は、少なくとも善吉が『敵』である間からです。
※『完成』については制限がついています。程度については後続の書き手様にお任せします。
※『不死身性』は結構弱体化しました。(少なくとも、左右田右衛門左衛門から受けた攻撃には耐えられない程度には)
ただあくまで不死身性での回復であり、素で骨折が九十秒前後で回復することはありません、少し強い一般人レベルです。
※都城王土の『人心支配』は使えるようです。
※宗像形の暗器は不明です。
※黒神くじらの『凍る火柱』は「炎や氷」が具現化しない程度には使えるようです。
※戦場ヶ原ひたぎの名前、容姿、声などほとんど記憶しています。
※『五本の病爪』は症状と時間が反比例しています(程度は後続の書き手にお任せします)。また、『五本の病爪』の制限についてめだかは気付いていません。
※軽傷ならば『五本の病爪』で治せるようです。

89 :

七花の体感では数時間、実際の時間は十分足らずで意識が戻る。
めだかも気付かなかった制限――症状の持続時間。
夏風邪のような軽い症状なら数時間から一日持続するのに対し、致死率の高い病気は二分程度で自動的に治ってしまう。
ただし、治るのは症状だけでその過程で発生した出血が治ることはないし消耗した体力は戻らない。
だるさを覚える体で立ち上がる。
周りに人影は見当たらない。
めだかが去った方向は覚えているが今から追いかけたところで無駄だろう。
「くそっ!」
憤慨する。
完膚無きまでに負けた。
向こうから受けた攻撃らしい攻撃と言えばやたら長い爪で引っ掻かれただけ。
しかし、こちらの攻撃がまともに当たったかと言えばそうでもない。
手加減されていた。
はっきりとわかってしまう。
父を、虚刀流を、とがめを否定されて許せなかった、のに。
「……とりあえず欲しかった名簿は手に入ったんだから見てみるか」
怒りを一旦落ち着けて名簿を確認する。
ここに来る前の同行者、否定姫がいるか確認しなくてはならない。
「やっぱ否定姫もいるのか……探さなきゃなんねえよなぁ」
名簿に目を走らせる。
宇練や真庭忍軍などの死者がいることについてはもう疑問にすら思っていない。
「ああ、面倒だ――ん?」
名簿に鑢の文字が二つ並んでることに気付く。
そうだ、死んだはずのとがめも放送で呼ばれていたのだ。
実際に殺した真庭鳳凰はこの会場で最初に出遭って同盟を結んだ。
ならばいないと決めつけていいはずがない。
むしろ、どうして今まで気付かなかった。
「姉ちゃん……?」
紛れもなく自身が殺したはずの姉の名前が名簿にあった。
【1日目/昼/C−3】
【鑢七花@刀語】
[状態]疲労(中)、倦怠感、黒神めだかに対する怒り、七実がいることに困惑、りすかの血が手、服に付いています
[装備]
[道具]支給品一式(食料のみ二人分)
[思考]
基本:優勝し、願いを叶える
 1:否定姫もここにいるのか……面倒だ。でもそんなことより……
 2:姉ちゃんがここに……?
[備考]
 ※時系列は本編終了後です。
 ※りすかの血に魔力が残っているかは不明です。

90 :
投下終了です
タイトルは「LOST PARADE」で
……かっこいい七花を書いていただいたのにかませにしてしまってすみません

91 :
予約分の投下を開始します

92 :

人間同士に付き纏う奇妙なそれ。
ぼくがあの絶海の孤島から帰り、あの絶対の《赤色》と会った。
ぼくはある日の京都の夜の道に、あの対極の《失格》と会った。
ぼくがあの人に学園に連れられ、あの極限の《危険》と会った。
ぼくは少女と施設に乗り込むと、あの罪人の《害悪》と会った。
ぼくがある人を家に上げたから、あの両極の《人喰》と会った。
ぼくはあの両極と会った所為で、あの最悪の《最悪》と会った。
そして先程。
ぼくはこんな場所に拉致されて、あの対極の《未満》と会った。
奇妙な、《縁》。
「…………………」
ふと思う。
あの《未満》は果たしてあの《最悪》の目にどう映るのか。
あの《失格》の代用可能にでも映るのか。
それとも世界の終わりへの可能性の一端とでも映るのか。
それとも代用可能とも違い、時間収斂とも違う、全く新しい理論の一つでも想起させるのか。
あるいは、《最悪》の運命論すらも台無しにしてしまうのだろうか。
それとも、それとも、それとも。
「…………戯言だけどね」
まあ全部が全部、可能性でしかない。
最低の可能性を考えるとするなら、それこそ《最悪》と《未満》の二人が手を組む事だろう。
それこそ、戯言だけど。
しかし困った。
誰か電話に出てくれないものか。
かれこれ五分近く、電話を鳴らし続けていると言うのに。
まったく。
誰も電話に、出んわ。
「――――――」
「――――――」
あれ、可笑しいな。
口に出してないのに電話を持っている真宵ちゃんからの視線が痛い。
気のせいだと思いたいけど、冷たい。
限りなく極寒に近いレヴェルに、冷たい。
北極よりも冷たい。
行った事はないけど。
多分行った事はなかったと思うんだけどどうだろう。
言った事ぐらい、あるけど。
一先ず現実逃避をしてみても、向けられる目は相変わらず冷たい。
「あの、真宵ちゃ――!」
ガチャリ。
と、音が鳴った。
電話から、音がした。

93 :


『――もしもし?』
「『もしもし?』――ふん、代わり映えしない言葉だな。
 一体どんな目的で五分も電話を鳴らし続けてるのかと思って出てみれば第一声がそれか。
 まあこれも《縁》が会ったって事なんだろうな。
 お前は五分近く電話を鳴らし続け、俺は五分近く電話を無視し続けたのに話している。
 俺としてはお前の目的なんかどうでも良いが、これは実に面白い《縁》だ。
 いい加減煩くて敵わないからなんて理由であろうとなかろうと変わりはない。
 偶然にしろ必然にしろ、変わりはない。
 そうなるべくして話している――――内容なんてもの、あってもなくても変わりないが、聞いてやるぜ?」
『………………』
「………………」
向こうからの返事はない。
あってもなくても同じ事だ。
俺が見えもしない相手に今の言葉を話す事が重要だったのか、それともここに電話が繋がる事が重要だったのか。
些細な事だ。
切られようが切られまいが同じ事。
運命とはそう言うもの。
『…………あなたは、死にたいですか?』
「……くっくっく」
唐突に告げられた言葉。
思わず、離れた所からこっちを見ている弔士に目を向けていた。
未だ《十三階段》に入ろうか入るまいか悩んでいる。
悩み続けている、あの男。
あいつは何て言ったか。
確か、「危険な目に会うのは、ごめんです」
その後に答えた言葉が浮かんでいた。
「ふん――『死にたいですか?』
 死にたくない。
 俺だって死にたくはない。
 だがな、俺は世界を終わらせたい。
 いや、物語を終わらせたい。
 特にこの物語は凄いなんてもんじゃねえ。
 俺が今まで関わった世界の中で、群を抜いていると言って良い。
 だから死にたくはない。
 こんなおもしろい物語の終わりを見ることができないなんて、堪えられないさ。
 だが、だからこそ、死なないために物語と関わることを放棄するつもりはねえよ。
 終わりを見たい。
 ――そう言うお前はどうなんだ。
 世界を、物語を、味わいたくないのか。
 終わりを見たいと思わないのか。
 それとも、関わることなく生き延びたとして、その先に何かがあるのか、お前には。
 なぁ、"お前には何か違ったものでも待ってるのかよ"」
答えは返ってこない。
どう思われようと知ったことじゃない。
言葉を続ける。

94 :

「答えないのか?
 答えようが答えまいがどうでも良いさ。
 だが、俺は世界を終わらせる。
 そのためにこの物語を使う――いや、乗っかる。
 利用してやるさ。
 お前の目的がどうか知らないがな。
 もしなんだったら言ってみるか、お前も目的を?
 電話で話してるだけの《縁》だが、偶然にしては面白い《縁》だ。
 話してみても損はねえと思うぜ。
 もしかしたら、お前も、《十三階段》に誘うだけの価値があるかも知れねえ。
 甲斐があるかも知れねえ。
 可能性があるかも知れねえ――世界の終わりに繋がる可能性が。
 どうなんだよ、お前の持っている目的は――――――どんな目的で動くんだ?」
答えは、返ってこない。
どう思われたか知ったことじゃない。
どう思われようと意味はない。
だが、これ以上、話すだけ無駄か。
受話器を耳から離す。
そのまま、
『ぼくは』
切ろうとした。
答えか。
受話器を耳に近付ける。
『ぼくは、幕を閉じようと思っています』
「幕を?」
『ええ、幕を閉じようかと思います。
 こんな事に巻き込まれた人たちと。
 どうにか救ってみようと思います。
 今まで殺してばかりでしたけど。
 今まで壊してばかりでしたけど。
 今まで、今まで、ずっとずっと。
 たくさん殺してきました。
 だけど、今は生かす道を行きます。
 一人でも多くの人達と
 あなたの目的とは合う事じゃなくても。
 あなたを敵に回す事になったとしても。
 例えあなたがぼくの前に現れようとも。
 家で待っている人達と再会する為にも。
 ――――物語は終わらせない、絶対に』
「そうか」
『そうです――ああ、そう言えば、まだ名前を聞いていませんでしたね』
「そうだな。
 俺の名前は――いや、止めだ。
 お前には名乗るのもいいかも知れねえが、またにしよう」
『そうですか』
「そうだ、それじゃあ」

95 :

縁が《合ったら》会いましょう。
言う前に言われ、電話が切れた。
思わず受話器を見詰め、置く。
口元が勝手に歪む。
最高だ。
これだから世界は面白い。
どうしてこんなにも世界は面白いのだろう。
ああ、早く読み終えてしまいたい。
「くっくっくっくっく」
展望台の狐はただ、犯しそうに笑った。
【1日目/昼/Bー6展望台】
【西東天@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]拡声器(メガホン型)@現実、首輪探知機@不明
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0〜1)、マンガ(複数)@不明
[思考]
基本:もう少し"物語"に近づいてみる
 1:弔士が<<十三階段>>に加わるなら連れて行く
 2:面白そうなのが見えたら声を掛け
 3:つまらなそうなら掻き回す
 4:気が向いたら<<十三階段>>を集める
 5:時がきたら拡声器で物語を"加速"させる
 6:電話の相手と会ってみたい
[備考]
※零崎人識を探している頃〜戯言遣いと出会う前からの参加です
※想影真心と時宮時刻のことを知りません
※展望台の望遠鏡を使って、骨董アパートの残骸を目撃しました。望遠鏡の性能や、他に何を見たかは不明
※首輪探知機――円形のディスプレイに参加者の現在位置と名前が表示される。細かい性能は未定

【串中弔子@世界シリーズ】
[状態]健康、女装、身体的疲労(中)、露出部を中心に多数の擦り傷(絆創膏などで処置済み)
[装備]チョウシのメガネ@オリジナル、三徳包丁@現実、中華なべ@現実、虫よけスプレー@不明
[道具]支給品一式(水を除く)、小型なデジタルカメラ@不明、応急処置セット@不明、鍋のふた@現実、出刃包丁@現実、
   食料(菓子パン、おにぎり、ジュース、お茶、etc.)@現実、懐中電灯@不明、おみやげ(複数)@オリジナル、「展望台で見つけた物(0〜X)」
[思考]
基本:…………。
 ?:できる限り人と殺し合いに関与しない?
 ?:<<十三階段>>に加わる?
 ?:狐さんについていく?
 ?:駒を集める?
 ?:他の参加者にちょっかいをかける?
 ?:それとも?
[備考]
※「死者を生き返らせれる」ことを嘘だと思い、同時に、名簿にそれを信じさせるためのダミーが混じっているのではないかと疑っています。
※現在の所持品は「支給品一式」以外、すべて現地調達です。
※デジカメには黒神めだか、黒神真黒の顔が保存されました。
※「展望台で見つけた物(0〜X)」にバットなど、武器になりそうなものはありません。
※おみやげはすべてなんらかの形で原作を意識しています。
※チョウシのメガネは『不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界』で串中弔士がかけていたものと同デザインです。
 Sサイズが串中弔士(中学生)、Lサイズが串中弔士(大人)の顔にジャストフィットするように作られています。
※絆創膏は応急処置セットに補充されました。

96 :


「戯言さん。さっき私が言った事を覚えてますか?」
「うん? 覚えてるよ。電話は真宵ちゃんが持つって事だろう?」
「あとは?」
「あと? あとは……なんだっけ?」
聞いてみると、真宵ちゃんが溜息を付いてしまった。
何かまずい事を言っただろうか。
「戯言さんは運転に集中してくださいと言いましたよね?」
「言ってたっけ?」
「言いました!」
いやまあ覚えてたんだけど。
片手運転した事を怒っているみたいだ。
そんなに危ない目には合ってないのに。
精々、砂丘の一つを全力疾走で登ったから五秒くらい飛んだだけだって言うのに。
その時、着地の時に片手で制御しようとしたらうっかり横転しかけただけなのに。
無事だったから良いじゃない。
良くないか。
爆発オチと言うのはあんまりだし。
「分かったよ。次からは気を付ける」
「本当にお願いしますよ、本当に」
「大丈夫大丈夫。ぼくが覚えてる限りはね」
「……余計心配になりました」
「泥ぶ――大船に乗った気持ちでいれば良いと思うよ」
「…………」
はぁ、とため息を付くと余所を向いてしまった。
突っ込みを期待したんだけどなあ。
随分と機嫌を損ねちゃったみたいで困った。
このままじゃどこにも連絡が出来ない。
まだ連絡を入れてない場所が幾つもあるからね。
早い所、真宵ちゃんに押して貰いたいんだけど。
「まあまあ、安心してよ真宵ちゃん。ぼくがそう簡単に言われた事を忘れるはずないだろう?」
「…………」
「ただうっかり頭の中から飛んでただけだよ」
「忘れてるじゃないですか」
「そうとも言う」
「全く、これだから洒落言さんは…………」
「うん、ごめんごめん……うん?」
「なんですか?」
「今、地味に噛まなかった?」
「失礼、ばれました」
「わざと噛んだの?!」
「ちゃみまみた」
「もはやなに言ってるの!?」
「ごほん」

97 :

と、真宵ちゃんがわざとらしく咳ばらいをした。
話が脱線し過ぎていた気はあったから丁度良い。
気分転換にもなったし。
「……先程の電話の相手ですが、知り合いですか? 理事長の事、一切聞いてませんでしたけど」
「そう言えばどこに連絡したの?」
「話を逸らそうとしないで下さい。無理矢理過ぎですよ。展望台です」
言いづらい事を平然と。
でも答えてくれるとは。
さて、どう答えるべきかな。
世界の敵、と言うのも変だ。
人類最悪、と言うのも妙か。
狐面の男、と言っても何だ。
ああ、良いのが一つあった。
これ以上なく。
「ぼくの敵だよ」
これ以上なく。
あの男を表しているだろう。
こんなぼくを、敵に選んだ、
それだけで随分と伝わった。
凄く微妙な表情をしている真宵ちゃんの顔が鏡越しに見える。
「そろそろ次の電話お願いできる」
「あ、はい、分かりました」
次はどこに電話しようかと悩み始めているのを余所に、言われた通り運転に集中する。
とは言っても、世界は変わらない。
見える景色は一向に変わらない。
まだまだ先は変わらない。
でも。
アクセルを思いっ切り踏み込む。
エンジンが唸りを上げ、砂を巻き上げながら進む。
「まだまだ先は長いかな」
でも。
何もしないよりかはずっと。
景色を変えられるような気がした。

98 :


【一日目/昼/F-3】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康、
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、
    赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
 0:電話をかける
 1:真宵ちゃんと行動
 2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流
 3:豪華客船へと迂回しつつ、診療所を経由し、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
 4:不知火理事長と接触する為に情報を集める。
 5:展望台には出来るだけ近付かない。
[備考]
※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
※どこに電話をかけたかは、次の書き手さんにまかせます。
※携帯電話から掲示板にアクセスできることには、まだ気が付いていません。

【八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(中)
[装備]携帯電話@現実、人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス
[道具]支給品一式、 柔球×2@刀語
[思考]
基本:生きて帰る
 1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします

99 :

以上です。
他の方々も投下お疲れ様です。
何時も通り変な所や感想などがあればお願いします。

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