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鍵のかかった部屋でエロパロ Room#4


1 :2012/07/17 〜 最終レス :2012/12/08
原作でもドラマでも
前スレ
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1340601929/401-500

2 :
初めて身体を重ねた後の再会は、恥ずかしくてどうしようもなくて、顔がまともに見られなかった。
ほんの少し前までは、顔を見る度、告げられない切ない想いに胸をしめつけられていたのに。
「青砥さん」
榎本さんが呼ぶ。この唇が私の身体中に触れたのだ。
「コーヒーが入りました」
カップが机の上に置かれる。この指が私の身体中に触れ、この腕が私を抱きしめた。
「青砥さん?」
壊れるほどに強く抱きしめ、胸に口づけ、赤い跡をいくつも残して、私の中にまで触れてきた。
私の隅々まで確かめるように探った榎本さんの長い指が、近づいてきて、ふと頬に触れる。
ビクッ
「…………」
「…あ、あの…」
「すみません、お声かけしても反応が無かったので」
いつもと同じ無表情のまま、私の顔を覗き込んでくる。榎本さんが触れた頬が熱くて、私はどうにかなりそうだ。
何でこんなにまで震えているのか…
「す、すみません…今日は、これで帰りますね。その……し、仕事がまだ残っていて、事務所に戻らないと…」
苦しい私の言い訳に、榎本さんは一言、そうですか、とだけ返した。
「本当にすみません。また、ご連絡しますので!」
せっかく淹れていただいたコーヒーを一口も飲まず、私はひきつった笑みのまま備品倉庫室を後にした。
いつも通りに、榎本さんは迎え入れてくれた。こんなに緊張している私に、気付いていただろうに。
なんて情けないんだろう、思春期の中高生じゃあるまいし。けれど、どうしようもない。
この身体がすべてあますことなく、あの目に晒されたかと思うと。
榎本さんの綺麗で長い指に、自分でもあまり見たことが無い部分まで探られたかと思うと。
どうしようもなく、恥ずかしい。
まして私の身体の奥に、彼を迎え入れたのだ。あの、熱く熱く、激しいまでに私が欲しがったものを。
それを思うだけで堪らなくなる。
服を着ているというのに、榎本さんの前にいると、まるで裸に晒されているような羞恥にあぶられる。
こんな私に、彼は呆れているだろうか―――


3 :

あれから1ヶ月。芹沢さんから頼まれた資料を届けるためなど、2、3回会う機会があったが、
榎本さんは私に指1本触れようとはしてこなかった。私は安心しながらも、少し寂しい。
何で、抱きしめてくれないのだろう? いや、びくついている私が悪いのは分かっている。
ならばこちらから誘えばいいのか? 無理だ、そんな勇気が私にあるはずがない。
今日も東京総合セキュリティ地下備品倉庫室に2人。
何とはなしに、私はテレビを見ているふりをしながらコーヒーを飲んでいたが、榎本さんが動く度に、期待と緊張に胸が高鳴る。
近づいてきた榎本さんの指が、ふいとまた離れていく。怖いのに、なぜかすごくがっかりしている自分がいる。
確かに怖かった。痛くて苦しかった。けれど、それを上回るほど、あの時の榎本さんの腕は、私を優しく暖かく包んでくれた。
―――抱いてほしい。
けれど、いちいちビクつくような私を、榎本さんは欲しがってないかもしれない。愛想を尽かされても仕方ない態度を私はとっているのだし。
ため息をつきながら、コーヒーカップを見つめていた顔をようやく上げると、榎本さんが私を見ていることに気づいた。
一見、感情を感じさせないような無表情のようでいて、私を射抜くような力強い視線。
目がそらせず、動けずにいると、腕がそっととられ、榎本さんの指が私の顎にかかった。そっと、そっと、榎本さんの端正な顔が近づいてくる。
緊張しながら、目を閉じる。唇が触れた瞬間、ぞくっとしびれが走った。手が震えているかもしれない。
舌で唇をなぞられ、私はそっと唇を開いて、榎本さんの舌を待った。しかし、その先は与えられず、ため息とともに榎本さんの唇は離れていった。
「榎本、さん…?」
「……僕が、怖いですか?」
榎本さんの手のひらが、寂しそうにそっと私の肩をなでた。
「そんなに怖がらないで下さい。もう、何もしませんから」
違う…! 嫌なんじゃない、確かに怖い、だけど緊張しているだけで、決して榎本さんが嫌なわけじゃない。
自分でも整理がついていないこの感情を、どう言えば、いいんだろう…
「違います…違うんです!…そうじゃなくて、私は…!」
「青砥さん?」
ちゃんと伝えなければいけないのに、上手く言葉を紡ぐことが出来ず、そんな自分がもどかしくて、嫌気がさして、瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「欲しく…ないですか? こんな私…ごめんなさい……でも、どうにも、ならなくて…だって…私は、榎本さんが…!」
あぁもう、どうしたらいいんだろう。私は何を言っているんだろう。抱いてほしいのに、そう伝えられず、頭の中を言葉や感情がグルグル空回りする。
不意に私の身体に回った榎本さんの腕が、息もできないほど強く私を抱きしめた。
「……欲しいです。震えがきてしまうくらい、青砥さんのことが欲しいです」
「えのも…」
「そんな顔で見ないでください。このままあなたを抱いてしまいそうです」
―――ごめんなさい、ただ頷くことしか出来ない私を、許して下さい。


4 :

ゆっくりと身体が横たえられる。本当にそっと背中を抱きしめられ、この人は何て優しく抱くのだろう、と小さく息をつく。
「すみません。また、震えていますね…」
そっと胸に抱え込まれ、耳元で囁かれる。そんな風に言われたら、私はどうすればいいのだろう。
「優しくします。だから、そんなに怖がらないでください」
ごめんなさい。榎本さんに、そんなことを言わせてしまって。
「だ、大丈夫ですから……私のことは気にせず、榎本さんの好きに…」
榎本さんの指が、シャツのボタンを外す。あつい手が私の肌を滑っていく。
首筋に熱い吐息をかけられ、痛いほど口づけられる。上半身をさまよっていた指が、胸の突起をはじいた。
「んっ…」
それが唇に変わり、その手は下に滑っていく。ぞくぞくと背筋を何かが這いあがってくる。腰が浮き上がりそうになり、榎本さんのシャツを握りしめた。
そんな私を上目づかいで楽しみながら、榎本さんの手はどんどん下にさがっていく。そして、既に潤み始めている私自身に触れた。
「あっ……」
あぁダメだ、恥ずかしい、何て声を出すんだ。
「え…榎本さん、だめ、だめで…す…」
「大丈夫です。青砥さん、大丈夫ですから、僕を見て下さい」
そう言って榎本さんは、ぐいと股間を私の内腿に押し当てた。榎本さん自身も硬くなっている。
「じっとしていて下さい」
「…ん、うぅ……」
震える私の身体を、榎本さんの唇がなだめるように滑っていく。
そして徐々に、むさぼるように激しく、榎本さんの手が私の身体を滑り、飢えたように唇が身体中に吸いついて跡を残す。
「あっ…待って、まっ……えのもっ…」
そんなに激しく求めないでください…おかしくなってしまいそうです…そんなにも私なんかを欲しがってくれて…
激しい愛撫。私の上がる吐息と、榎本さんの切ない吐息。唇が脇腹をかすめ―――
「あっ…や、だっ、榎本さ、ん……っ!」
そんなことしなかったのに、初めての時はそんなところを舐めなかったのに。私の中に、榎本さんの舌が差し込まれている。
そんなところを、ずっと仲間だと思っていた、だけどいつも間にかどうしようもなく惹かれていた人の口に、囚われる。
それはあまりにも恥ずかしくて、どうしようもなく居たたまれないことで。
うろたえる私を無視して、榎本さんはますます口淫を強くする。舌を奥まで差し込まれ、内壁を強く扱かれる。
どうしよう……このままだと、榎本さんの口で…
「だ…だめっ、だめです、放してください! もう、もう……!」
「イってください、このまま」
「んんっ……―――っ!!」


5 :
一気に高みへと押し上げられ、呼吸が追いつかない。
ごくり、と榎本さんの喉の鳴る音がやけに大きく聞こえた。息を整えている私を見下ろして、榎本さんは唇を舐める。
何て恥ずかしい。榎本さんの口で、私は……もう、顔が見られない……
しかし榎本さんは、信じられないことに、未だ落ち着きを取り戻していない私の中に、再び舌を差し込んできた。
「あ、の、榎本さん…っ! 待って、まだ……あ…んっ!」
「やっと青砥さんの震えが止まってきたので…もう少し続けさせてください」
ぐちゅぐちゅと音を立てながら、榎本さんの熱い舌が私の中を犯す。
「やぁ…やめ…本当、に、もぉ…だめ……っ」
切れ切れにこぼす私の言葉など聞いてくれず、榎本さんは舌での愛撫を続ける。
その濡れた感触に、次第に私の中は、むずがゆいような、痺れた感覚になってきた。ひくひくと独自で呼吸するのが分かる。
「も…もぉ…っ」
あまりの恥ずかしさに私の目に涙が滲み出した頃、ようやく榎本さんはそこから顔を上げ、濡れた唇を乱暴に手で拭った。
カチャカチャとベルトを外す音が響き、スラックスの前が寛げられたが、私はそれを直視出来なかった。
そして、榎本さんの怒張したものが、私の下に押し当てられる。
途端、身体を激しい震えが襲う。―――怖い!!
「あ…あ…あぁ……」
私の身体はあの痛みを忘れていなかった。覚悟していたはずなのに、その瞬間を思い出して、身体が震える。
どうしよう…どうしたらいい……!
「大丈夫ですから、どうか、そんなに怖がらないでください…」
榎本さんの手が、私の髪を何度も撫でる。切なそうに寄せた榎本さんの眉がいとおしくて、少しずつ安心していく。身体の強ばりがとけていく。
「榎本さん…」
こんなにも大事にしてくれる榎本さんに、やめてとは言えない。私はもう一度覚悟を決めて、頷いた。

ゆっくりと榎本さんが自身を押しつけてくる。じりっと先端が入ってきた。
「い…た、痛いっ……痛い痛っ……いたぁ…っ」
「もう少し、もう少しですから…」
榎本さんが力を入れてぐっと押し入ってくる。焼けつくような痛みに、息が出来なくなる。
「やぁっ……痛っ、痛い、榎本さ…ん…!」
「青砥さん…青砥さん…大丈夫ですから…」
榎本さんの声も、辛そうに掠れている。私がこんなに力を入れていたら、きっと榎本さんも辛い。私は必に身体の力を抜く努力をして、大きく息を吐いた瞬間、
「あああ…っ!」
ぐいっと、榎本さんが一気に奥まで突き入れてきた。


6 :
ドクン、ドクン、と身体の内側で脈打つ鼓動。榎本さんの鼓動だ。
「青砥さん…」
榎本さんの囁きで、痛みは嘘のように引いていた。感じるのは榎本さんの大きさと熱。ありありと私の中で息づく、榎本さん自身。
初めての時は、そんなことを感じる余裕なんてなかった。でも、今は―――
私の唇にキスを落としながら、ゆっくりと榎本さんが動き出す。その唇からはため息が漏れ、私の中で感じてくれているんだと、嬉しくなった。
榎本さんの切なそうに眉根を寄せた顔を見ていると、身体の奥が疼いてくる。
と、その時、榎本さんの動きが激しくなった。奥の奥までずずっと入ってきて、先端がそこに触れた瞬間、私の身体は大きくのけぞった。
まるで身体中に電気が走ったかのような快感が襲う。
「あっ……あっ…嫌…何か、何だか、変です私……っ!」
初めての感覚に私はうろたえる。
「変じゃありません。もっと、感じて下さい…青砥さん…」
「あ…んっ……こんな…のっ…あっ、あっ……!」
おかしくなる。こんな快感は知らない。そこを何度も何度も突かれ、恥も何も吹き飛んでしまう。探られる入口は痛いのに、奥が信じられないほど気持ちいい。
もう、何も分からなくなる。どうしよう。こんなのは恥ずかしい。恥ずかしいのに、たまらない。もっと―――榎本さんが、欲しい。
「榎本さん、榎本、さん…どうした、ら……もぉ、あぁっ……」
快感の涙が頬を伝う。榎本さんが一層激しく私を突く。耳を塞ぎたくなるような、グチャグチャとはしたない音が、部屋中に響く。何て音をたてているのか、私の身体は。
じんじんと奥が痺れ、絶頂の予感に震える。それを目ざとく見咎めた榎本さんが、優しい手つきで私の頬を包み撫でた。
はしたない声を上げ続ける私の口を唇で塞ぎ、同時に最奥を強い力でぐいと突く。身体の中心から溢れだす、気が遠くなるような絶頂。
「青砥、さん―――っ!」
榎本さんの熱い飛沫を奥に感じながら、私は達した。

「青砥さん、大丈夫でしたか…?」
いとおしそうな榎本さんのキスを顔中に受け、私は幸せに身体を震わせた。榎本さんは私の呼吸が落ち着くまで、優しく身体を撫でてくれている。
「すみません。優しくすると約束したのに、止まりませんでした…」
「……そんなに、謝らないでください…」
「まだ、怖いですか…?」
「もう…大丈夫です。ちょっと恥ずかしかっただけで、もう、平気です」
身体の震えなどとうに伝わっているだろうけれど、私の強がりを、榎本さんは微笑みで受け止めてくれた。私の頭を腕に抱え、耳元に顔を寄せて呟く。
「すみません、青砥さん。僕は不器用なので、あなたを怖がらせてしまいました。欲しい気持ちばかりが焦って…」
切ないような幸福感と、今までと変わってしまう恐怖感の狭間。
「こんな風に抱いてしまってから言うのも何ですが…身体だけ欲しいわけではありませんから」
分かってます。分かっています、榎本さん。
「……青砥さんのことが、好きです」
榎本さん、あなたに抱かれて良かった。こんな満たされた幸せは、今まで知らなかったです―――
<終>

7 :
新スレ記念&即回避用に投下。
何かのきっかけで先に体だけ結ばれてしまい、
非処女になったばかりでモンモンする青砥さんの一人語りでした。
榎本さんは、童貞じゃない設定。

8 :
>>1
>>2-7よかった。GJ!

9 :
>>1
>>7GJっす。初々しい青砥さん良いっす

10 :
>>7
がっつりエロよかったよー。

11 :
>>7
とってもドキドキしながら読みました。
DTバージョンも好きだが処女青砥&経験者榎本もすごく萌える。童顔で小柄で華奢で一見草食ぽいけど、やっぱり男で30の大人でっていう榎本かっこいいな。
できる事なら初回も読みたいな…
あ〜最高です。GJでした!

12 :
前スレが512KB越えて書き込めなくなったから、こっちに。
>>前スレ 532
原作ファンも呼び込みたいなら
後半部分は【原作】じゃなくて【防犯探偵】とかの方がいいと思う。
角川で設定されている公式シリーズ名は「防犯探偵・榎本シリーズ」だし。

13 :
>>2-7
今さらだけどGJ!!
ウブな青砥さんが目覚めていく過程が超エロ可愛かったです。

14 :
てか、エロパロ板なのに「エロなしもOK」って言い切っちゃうのはどうなの?

15 :
スレタイこのままに一票

16 :
>>14確かに・・・。お約束には入れない方がいい気がしますね。(まあ、ひっそりと、黙認ってかんじで行ければいいな、と自分は思いますが)
>>15このままって、どのままかな?
自分はスレタイ希望は最初のまま
【ドラマ】鍵のかかった部屋でエロパロ Room#  希望。

17 :
議論が完了するまで待とうかと思いましたが
ルール確立後は投下出来なくなりそうですので今のうちに…
設定はドラマ榎青。
最終回から数年経過して、新しい人生をスタートさせた二人と
それを見守る芹沢パパさん乙な極短SS、エロ無しです。
・・・・・・・・・・
時計は25時を回っていた。
芹沢は、資料から顔を上げ、老眼鏡を外して目をこする。
企業法務以外の案件を扱う一般部門を立ち上げて
青砥をそちらに異動させて以来、どうにも仕事が捗らない。
里奈は精一杯やってくれているが、所詮はお嬢様仕事。
こんな深夜まで残業させるというわけにもいかず…
「ここはひとつコーヒーブレイクといきますか?」
芹沢はひとりごちて、事務所を抜け出してコンビニに向かった。
国道に渡された歩道橋の上を歩く。
こんな時間でも、街は十代の若者で賑わっている。
人目も憚らずに密着して歩く二人連れから目を逸らして
やれやれとため息をつきながら、陸橋の下に目を向けると、
側道に停めたアウディの脇に
青砥純子の姿があった。
こんな時間に何をやってるんだあいつは。
思わず手を挙げ、声をかけようとした次の瞬間―――
コンビニの自動ドアから、
両手に缶コーヒーを携えた小柄な男が現れた。

18 :
青砥の表情が花びらのようにほころぶ。
相手の男も微笑み返し、ビル風に凍えた青砥の両頬に
今買ったばかりの缶コーヒーを近づける。
そんな男の、コーヒーを持った両手を
青砥は手のひらで包み込んで――――
男は両手を青砥に拘束されたまま
引き寄せられるように彼女の顔を覗き込むと
素早く周囲に視線を走らせて、
盗むようなキスをした。
不意に唇を奪われて、光量を増す青砥の笑顔。
身長差の無い幸せそうなカップルに
芹沢は踏まれたヒキガエルのように情けなく呻く。
「最近やけに早く上がると思ったら、ったくそういうことかよ〜」
「やられた!」というように、大げさに顔をしかめてみたものの
自分がこれっぽちも腹を立てて無いのは判っている。
そうか…そうだったのか…
意外なような以外じゃないような、いや、実に複雑な心境だな。
だけどあいつ、あの頃は奴んとこに入り浸っていたもんなぁ。
あれはやっぱりそーゆー感情があったってことだよなぁ。
あれ?でもありゃ何年前だ?
あの頃から惚れてたんだとすりゃ、
一途にも程があるじゃないか?え?青砥??

ニヤニヤと見守る視線があることに気づかぬまま
青砥は助手席に乗り込むと、シートベルトを装着した。
男は青砥のあごの下に手を添えると、
愛おしくてたまらないとでも言うように
もう一度小さくくちづけた。

繰り返し執拗にあてつけられて、芹沢は思わず頭をかき
苦笑いしながら、うんうんと頷く。
はー、やれやれ。
「青砥を不幸にしてくれるなよ?えのもっちゃん」
テールランプの赤い光が見えなくなるまで
可愛い部下とこしゃくな男を見送った。
そして二人を乗せた車が見えなくなると、
先ほどまでとはうって変わった若やいだ足取りで、歩道橋を駆け下りた。
まるで娘を嫁に出したような
気恥しさと安堵感と―――そして小さな寂しさを胸に。

〜fin〜

19 :
>>17-18 GJ!
私は幸せそうな二人が大好きです。
この後どこへいくの?とか、どうやってくっついたのかとか色々妄想するのだっ。
スレが賑わうのが一番大事だと思うので、自分的にはエロなしも目こぼししてほしい。
スレタイは【ドラマ】鍵のかかった部屋でエロパロ Room#  希望ですが
表記の上、原作ネタもOKがいいかな。

20 :
>>17
うわー!なんだこれ!
朝から禿萌えんでしまった。
エロがなくてもこれだけキュンキュンしてしまうなんてすごい。
素晴らしいです。ありがとうございました!

21 :
おはようございます
前スレの「手繰る聲」からしばらく何も書けなかったけど、何か続きらしいものが
出来たので投下
エロなし、何故かオリキャラの犬目線、とある意味反則技かも知れない

22 :
僕の名前は径。
数ヶ月前にペットショップで純子が買ってくれた柴犬の牡。
名前は元々純子が好きだった男のものなのだとすぐに気がついた。だって呼ばれる度にいつもあの
優しい顔が何だか曇って悲しそうになってたから。
きっと恋は不幸にも良い終わり方をしなかったのだろう、それなら出来るだけ良い子にして少しでも
純子の慰めにならないと。
そう決意を固めていた頃に何を思ったのか件の男から突然連絡があり、しかもわざわざ会いに来た。
当然のようにずっと凍結していた純子の時間は瞬時に巻き戻って、それ以後は僕と同じ名前の男と
過ごす時間が格段に増えた。
どうやら奴はしばらく海外の珍しい鍵や錠前を求めて旅をしていたらしく、帰国してからはそれまでの
つてを駆使して防犯ショップを始めているとか。
突然電話一本で全てを切り捨てて旅立った男なんて、ろくなものじゃない。他人事ならそう思うだろう。
まして純子は法の番人である弁護士を務めている。もっとそんな奴には冷徹になってもいいぐらいだと
僕も思う。なのに恋は女をどこまでも愚かにするものらしく、再会後の純子は人が変わったようだ。
それは本当に喜ばしいことなんだろうか、と最近は思う。
僕はどうしてもあの男が好きにはなれない。
冷たく神経質そうな眼差しをしたそいつは純子が夢中になるほどの男には思えず、それ以上に何故かは
知らないけどやたらと胡散臭いものを感じた。
勘、というものなのだろう。
それが正しいかどうかはともかく、魂の根底から信じきれはしない男だと確信していた。
そんなことを考えながらちょいちょいと前足で小さな犬のぬいぐるみを触って遊ぶのが、最近の僕の
日課だった。
「径、ほら取って来て」
今のところ男との関係は良好なのだろう、ソファーに座る純子は御機嫌でボールを投げてくる。僕は
ペットらしくそれを追いかけて首尾良く咥えて戻る。いい子ね、賢い子ねと頭を撫でてくる手は今夜も
優しい。
だけど僕のささやかな幸福の時間は、あっさりと終わる。
あいつが電話をかけてきたからだ。
こうなってしまうと、もう携帯を取る純子の頭の中からは僕の姿も声も頭の中から消える。
「榎本さん、こんばんは」

23 :
あいつと話す純子の声はとても浮かれていてキラキラと華やいでいる。何度かここを奴が訪れた時は
いつもベッドルームに二人きりで籠ってしまって入れないので詳しくは分からないけど、きっと恋する
女の可愛らしさが全身に溢れていて微笑ましく映っているに違いない。
例え奴にどんな思惑があろうとも。
「明日…ですね。分かりました。必ずお伺いします」
どうやら会う約束を取り付けたようだ。だとしたら明日は純子の帰りが遅くなるのだろう。いつものこと
だから慣れているとはいえ、僕は心配で仕方がない。
いつかまた純子は泣く日が来るのだという、うっすらとした未来が見えるからだ。
それが間違いであったらいい。せめてあいつが少しでも僕の思っている通りの人間でなければ。
でなければ純子があまりにも可哀想だろう。
ねえ純子。
そのボールをもっと遠くに投げてごらんよ。
さっきよりももっと上手く取って来られるよきっと。
僕は犬だからいつまでも純子の側にはいられないけど、せめて最後の日まではあいつから少しでも
守ってあげる。
だから僕の不安がただの取り越し苦労だったら本当にいいね。




24 :
今更ですけどスレ立てありがとうございます。
こんなの考えてみた。
エロシーンがあっさり気味で物足りなかったらすみません。
××××××××
 純子が戻って来ない、と芹沢から連絡が入ったのは、夜の9時を回ろうか、という時間だった。
 密室専門ともてはやされる芹沢の元に、面倒な事件が舞い込んできた。ストーカーに狙われていた女性が部屋で害され、その現場が密室だった、というもの。
 そのせいで、警察は、最近ノイローゼ気味だった女性が発作的に自したのだろうと判断したが。依頼者は、どうしても納得できない! と芹沢に泣きついてきた。
 依頼者がされた女性の妹で、しかもなかなかの美人だったことが、今回の騒動の原因ではあるが。実際、榎本が見たところ、自というには女性のに方は不自然極まりなく、調べてみれば密室の謎もあっさり解明できたため、結果オーライとも言える。
 榎本は密室の謎を、純子は犯人……女性につきまとっていた男性の自宅で、彼女をストーキングしていたという証拠集めを、芹沢は、警察や検察との交渉ごとを行う、と役割分担し、それぞれ動いていたのだが。
『密室の謎は、解けたんだろ』
「ええ。証拠もあります。問題ありません」
『そうか、さすが榎本だな。こっちも問題ない。話はついた。明日、犯人と対面できることになったから、そのとき一発頼んだ』
「了解しました」
『で、後は青砥なんだけどさあ……あいつから連絡が無いんだけど。えのもっちゃんのとこには、来てる?』
「? いいえ」
 芹沢の言葉に、思わず時計に目をやる。純子が犯人の自宅に向かってから、どれくらい経っただろうか?
 犯人自身は警察の取り調べを受けているため、危険は無いはずだが。
『時間も時間だし、ちょっと心配になっちゃってさあ。榎本、手伝ってやってくんない? お前、今、例の倉庫だろ。そこからなら、犯人の自宅までそんなにかからなかったよな』
「構いませんが。芹沢さんは?」
『えのもっちゃん。弁護士の仕事はさあ、結局のところ書類作業がほとんどなんだよ。俺はこの後、明日の対面に必要な申請書だとか、色々作んなきゃいけないの。それを手伝って欲しいから、青砥を待ってるんだよ。頼んだ』
「わかりました」
 なるほど。弁護士というのは口が達者なら務まる仕事かと思っていたが、案外、そうでもないらしい。
 納得して、榎本は電話を切った。
 犯人の自宅まで、電車で数駅。
 向かった先にあるのは、ボロというほど古くはなく、豪華というほど大きくはない、いわゆる単身者用のマンションだった。
 一応オートロックではあるが、榎本の目から見れば防犯設備に関してはお粗末という他ない。しかし、一般のマンションとしては中の上レベル、と言ったところか。
「青砥さん?」
 インターホンを鳴らしても応答がない。ちょうど住人が出てきたのをいいことに、オートロックを潜り抜け、直接部屋に向かう。
 ドアを引くと、鍵はかかっていなかった。中に純子がいるのは、間違いないらしい。
「青砥さん」
「あ」
 ガチャっ! とドアを開けると。狭い廊下に作りつけた台所、進んだ先に寝室……という、よくある1Kの作りが目に入った。
 その部屋の中央に座りこんでいるのは純子。その周りには、アルバムやスクラップブックがうずたかく積まれており。隅にあったテレビには、何かの映像が流されている。
「え、榎本さん!?」
「芹沢さんから、青砥さんを手伝うように、と言われまして。ストーキングの証拠は見つかりましたか?」
「ま、まだ……あ、あの! あの!」
「失礼します」
 ずかずかと部屋に上り込み、純子が見ていた冊子を覗き込む。
 そして、硬直した。

25 :
「これは」
「……部屋に入ったら、こんなものがいっぱい積まれてたんです……」
 高い嬌声に振り向けば、テレビの中で、見たこともない男女が裸で絡み合っていた。
 大げさな声と、わざと局部をレンズに向けるようなアングルから、それがいわゆるアダルトビデオ、と呼ばれる類のものであると判断する。
 しかも、恐らく違法に手に入れた「裏」と呼ばれる種類のもの。何故わかるかと言えば、モザイクが一切かかっていないからだが。
 純子が見ていた冊子は、恐らく雑誌の切り抜きを集めたもので。それらも全て、例外なく裸の女性がポーズを取っている。異様に気まずい空気が流れ、榎本は、思わず視線をそらした。
 ……あまりに唐突だったため、ついでに言えばあまりにもあからさますぎる映像が逆にブレーキになって、自分の身体が男としての反応を見せなかったことは、幸運だったと言うしかない。
「こ、この中に! 被害者の女性の写真とか、盗撮した映像とかがあるはずなんです! それで片っ端から見て行ったんですけど……」
 言いながら、純子の眉が下がるのがわかった。気持ちはよくわかる。こんな作業をやれと言われたら、榎本でも同じ顔をするだろう。芹沢なら喜ぶかもしれないが。
「……お手伝いします」
「すいません……」
「いえ。こちらの作業は終わりましたので。密室の謎は解けました。芹沢さんが手をまわして下さいましたので、明日にも犯人は正式に逮捕されることになるでしょう」
「じゃあ、後はわたしが証拠を見つけるだけなんですね……本当にすみません」
「いえ。では、僕はこちらから」
 朱色に染まった純子の顔から目をそらし。榎本は、散らばるアルバムに、手を伸ばした。
 被害者の写真と動画が見つかったのは、それから約一時間後のことだった。
 証拠品を集めて押収し、関係ないものは元の場所に片付ける。全ての作業が終わったとき、時刻は夜の11時になろうとしていた。
「はい……はい……すいません、では明日」
 ぴっ! と携帯を切り、「芹沢さんから直帰の許可をもらいました!」と、純子は少しだけ晴れやかな笑みを浮かべた。
 余程苦痛だったのだろう。その顔は、どこか痛々しいくらいにひきつっている。
「榎本さん、本当にすみませんでした」
「いえ。お疲れ様でした……帰りましょうか」
「はい」
 まだ、終電には間に合うため、二人でもくもくと駅までの道を歩く。恐ろしく沈黙が気まずいのは、榎本の気のせいだろうか。
「……榎本さん」
 そして。
 純子がぽつり、と切り出したのは、歩き始めて数分が経ってから。
「榎本さんは……ああいうの、見たことあります?」
「……ああいうの、とは」
「あの、その……ああいう、ビデオ、とか……雑誌とか……」
「…………」
 質問の意味はわかるが意図はわからない。ついでに言えば、答えは明快だが恐ろしく答えづらい。
「……僕が見たことあるかどうかと、今回の事件と、何か関係がありますか」
「犯人の心境を知りたいです」
「心境?」
「はい。ストーカーって、一種の愛情の裏返しですよね? それなのに、どうしてあんな……他の女性の裸なんか、見たがるんですか? 他に好きな人がいるのに、どうして?」

26 :
 思った以上にまともな切り返しが来て、言葉に詰まった。確かに、その心理は女性にはわかりにくいかもしれない。
「……僕が見たことあるかどうかは、想像にお任せしますが。見たい、と思う犯人の気持ちは、男としては理解できます」
「そうなんですか?」
「簡単に言えば、性欲と愛情は別だということです」
 あえて純子の顔を見ずに、淡々と告げると。純子は、「そんなのおかしいです!」と、憤慨したようにつぶやいた。
「それって、好きな人でなくても……その、そういうことをしたい、できるってことですか? それとこれとは別ってことですか? そんなのおかしいです」
「おかしい、と言われましても」
 子供ではあるまいし、何を言っているのか。
 世の中には、男の性欲解消を目的とした店がいくらでも存在すること、援助交際……いわゆる売春と呼ばれる行為が平然とまかり通っていることを、まさか知らないわけでもないだろうに。
「事実は事実ですから」
「じゃあ、榎本さんもできるんですか? 好きな人が相手でなくても。榎本さんだって若い男性ですよね?」
「…………」
 だって、とはどういう意味だ。自分は男じゃないとでも思われていたのか。
 だが、ここで素直に頷いてもいいものかどうか。それはそれで、身の破滅を招くような気がしなくもない。
「……ご想像にお任せしましょう」
「ごまかさないでくださいっ」
 ぱっ、と前に回り込まれる。視線をそらすと、追いかけられた。
 ため息をつく。何故、こんなことを問い詰められなくてはならないのか。自分はたまたま事件に巻き込まれただけで、女性をしたのは自分ではないのに。
「……そうですね。可能か、不可能か……と問われたら、可能でしょうね」
「…………」
「すみません。僕も、一応男ですので」
 すたすたと足を進める。純子はショックを受けるかもしれないが、十代の少女ではないのだ。現実は、知っておいた方がいいだろう。
 後のフォローは芹沢にでも押し付けよう、と、榎本が勝手なことを考えていると。
 ぐいっ、と腕を引かれ、足が止まった。
「青砥さん?」
「…………」
 振り向く。うつむいた純子は、真っ赤な顔をしていたが。手を放す気はないらしい。
「青砥さん、どうされました?」
「……気づいてましたか、榎本さん」
「はい? 何がですか?」
「今、どこを歩いているか」
「…………」
 周囲を見回す。やけに静かだと思ったら、いつの間にか、自分達は駅への道を外れ、いわゆる裏通りに踏み込んでいたらしい。
 周りに軒を連ねているのは、派手なネオンが灯る建物――ラブホテル。

27 :
「あの、青砥さ」
「わたし……変、なんです」
「はい?」
「あの部屋で、雑誌とか映像とか見せられて……最初は、何でこんなものって犯人を軽蔑してたんですけどっ! 何だかっ……身体がうずうずするっていうか、熱いっていうか……」
「…………」
「そのせいで、時間がかかっちゃって……もてあましてたら、榎本さんが来てくれて、それから、ずっとずっと変なんです」
「あの、それは」
「榎本さん、言いましたよね? 好きな相手でなくてもできるって」
 じいっ、と見つめられ、思わず息が止まった。
 その瞳は、まぎれもなく「欲情」と呼ばれる感情で濡れていた。
「それって、相手はわたしでもできるってことですか……わたしだって女です。そりゃ、あの雑誌とかに出てる女性に比べたら、スタイルも顔も大したことはないですけど……」
 ぎゅっ、と、指に力がこめられた。
 ひきよせられる。スーツから覗く白いうなじ。熱く吐息が漏れる唇。すがりつく、華奢な身体……その全てに、男としての本能が反応しているのが、わかった。
「榎本さん」
 すがりつかれて、ぶちっ! と、理性の一部が音を立てて切れるのが、はっきりとわかった。
「……榎本さんなら、この熱を……冷ましてくれますか?」
 時刻、深夜0時。
 散々にあられもない映像や写真を見せられて、変な気を起こさない男などいない。その本能に理性が負けたのは、きっと疲れと寝不足のせいだ。
 そう自分に言い訳をしながら。榎本の身体は、純子にひきよせられていた。
 ラブホテルの一室。仕事の関係で入ったことはあるが、本来の目的のために入ったのは、恐らく初めてだ。
 交互にシャワーを浴びて、バスローブ姿で向かい合う。やたらに巨大なベッド、あちこちに無駄に飾られた鏡。巨大なテレビをつけてみると、先ほど散々見せられたのと同じような映像が流れてきて、即座に切った。
 沈黙が、重い。
「青砥さん」
「……はい」
「ここまで来たら、僕も止められませんが……一応聞きます。いいんですね?」
「いいですよっ! 何を言ってるんですか、今更っ」
 榎本の問いに、純子は真っ赤な顔をして。けれど、引く様子は全く見せず、ベッドに飛び乗った。
 シャワーを浴びることで少しは冷静になるかと思ったが、どうやら、余計に熱を煽られたらしい。榎本にも同じ効果があったため、気持ちはよくわかるが。
 無言でベッドに上る。正座する純子の肩に手をかけ、その身体を、ゆっくりと押し倒した。
「青砥さん。……初めて、ではないですよね?」
「なっ……こ、ここでそういうこと聞きますか!?」
「いえ、もし初めてだったのなら、さすがに申し訳ないと……」
「初めてじゃありません! そ、その、随分久しぶりではありますけどっ……」
「……そうですか」
「そういう榎本さんこそ、まさか初めてじゃないですよね」
「違います」

28 :
 きっぱりと言い切れたことに、密かに安堵する。もっとも、誇れるような経験ではない。
 相手をしてくれたのはいわゆるプロの女性で、何故そんなことになったのかと言えば、学生時代の悪友に無理やり付き合わされたという何とも情けない理由なのだから。
 正直、素人の……それも、明らかに行為に慣れているとも思えない女性を相手にするのは初めてで。それが、不安と言えば不安だが。既に、身体は痛いほどに反応している。今更引き下がることなど、できそうもない。
「……失礼します」
 バスローブの紐をほどいて、そっとはだける。恐ろしいほどに白い身体が目に飛び込んできて、思わず息を呑んだ。
「み、見ないでくださいよ……恥ずかしい」
 榎本の視線を感じたのか、純子は真っ赤になってつぶやいたが。何を言っているのかと問い詰めたい。
 いつもの地味なパンツスーツからは、想像もできなかった。純子の身体が、こんなにも白くて……こんなにも、綺麗だったとは。
 胸はあまりない。だが、細く華奢な身体には、その方がふさわしいと思う。
 何よりも、白い胸の中央に、控えめに存在する桃色の突起は、ビデオに出ている女性の黒ずんだそれとは全く違っていて、ひどく、艶めかしかった。
「……触ってもいいですか」
「ど、どうぞっ」
 指を伸ばして、頬をひとなでした後、するすると首筋、鎖骨、そして胸へと滑らせていく。
 榎本の手が動くたび、羞恥に頬を染めてぴくん! と反応する様が、何とも初々しい。
 手のひら全体で胸を包み、やわやわと力を入れてみる。自分の身体ではありえない弾力。手のひらの下で、明らかに突起が固く尖ってくるのがわかった。
「どうですか?」
「ど、どうって」
「いえ、痛くはないですか」
「……大丈夫です……あ、ひっ!」
 片方は手でもてあそびながら、もう片方の胸に唇を寄せてみる。そっと頂きを口に含んで、舌先で転がしてみると、高い悲鳴が漏れた。
 ビデオの女性が叫んでいた、耳につく嬌声とは全く違う。それは、どこか甘く、柔らかで。遠慮がちな恥じらいを含んでいた。
「やっ……榎本さんっ……」
「気持ちいいですか?」
「そういうこと聞かないでくださいよっ!? うーっ……は、恥ずかしい、です」
 もじもじと太ももをすり合わせながら睨まれた。正直、全く怖くない。むしろ、欲情を煽られる。
 ……面白い。
 わざと焦らすように、ゆっくりと手を滑らせた。下腹部、脇腹、腰……そして、うっすらとした茂み。
「ひっ!」
 その場所に指をあてがうと、そこは、既に熱く濡れていた。いつからこうだったのか、ひょっとしたらあの部屋にいたときからずっとこうだったのか。今となっては知る術はないが。
「熱いですね」
「何を真面目な顔で言ってるんですか!?」
「言い換えましょうか。濡れています」
「だからっ……真顔でそんなこと、言わないでくださいっ……」
 ぎゅっ、と目を閉じて。純子はいやいやをするように首を振った。
「お願い、焦らさないでください」
「…………」
「熱いんです。すごく熱くて……変な気分になっちゃいそうでっ。お願い、楽にしてくださいっ……」
「……わかりました」

29 :
 榎本とていいかげんに限界だった。ベッド脇に備え付けられていた避妊具を装着し、そっと入り口にあてがう。
 挿入寸前に、ちらりと視線を向ける。純子は……
「…………」
 歯を食いしばるようにして、ゆっくりと腰を進める。びくんっ! と震える身体を抱きしめるようにして、一気に貫いた。
「ひっ……」
 荒々しく腰を動かした。太ももがこすれる音と、漏れる喘ぎ声がやけに耳につく。目を閉じて、身体を本能に任せた。
 止められなかった。
 こんなのは間違っていると、奥底ではわかっていたのに。どうしても、止められなかった。
「ひゃっ! え、えの、もとさっ……」
 悲鳴が漏れる。もしかしたら痛かったかもしれない……どうでもいい。聞けない。聞いても、どうせ止められないのだから。
 その肩を抱いて、より深くまで腰を進めた。昂ぶりが限界に来る。瞬間、それを読んだかのように、純子の締め付けがきつくなる。
 榎本に絡みつくように、腕と脚に力がこめられた。囚われる――という錯覚に陥りながら。榎本は、内部で精を吐き出した。
 事が終わった後というのはこんなにも気まずいものなのだな……と、榎本はしみじみと実感していた。
 特に、このような、成り行きで身体を重ねた後というのは。
「……ありがとうございました」
 ぽつり、とつぶやかれる。振り向けば、ブラウスを羽織っただけという中途半端な姿で、純子がうなだれていた。
「熱は冷めましたか」
「はい……本当に、ありがとうございました」
「…………」
 純子の顔を見ないまま、榎本は吐き捨てるように言った。
「謝りません」
「え?」
「僕は、謝りませんから」
「あの……榎本さん?」
「本当は、後悔しているんでしょう」
 榎本の言葉に、純子は無言だった。
 まくしたてるように続ける。こんなにも苛立たしい思いを味わったのは久しぶりだった。いや、ひょっとしたら、初めてかもしれない。
「後悔しているんでしょう。一時の熱情に駆られて、僕なんかに身を任せて。けれど謝りません」
「榎本さん、何を言って」
「泣いてましたよね」
「…………」
「僕に抱かれながら、泣いていましたよね、青砥さん」

30 :
 あの瞬間。
 榎本に貫かれるその寸前、純子は泣いていた。その頬を伝う涙を見て、それが痛みや苦痛から流した涙ではないとわかっていて。それでも、榎本は止めることができなかった。
 男としての本能に負けて、欲望の赴くままに彼女を抱いた。
 榎本とて男だ。そこまで紳士には、なれない。
「抱いて欲しいと言ったのは、あなたです」
 最低な台詞であるとわかっていながら、あえて突き放すように言って、背を向けた。その瞬間――
「っ…………」
「…………」
「青砥さん?」
「違う。違うんですっ」
 抱きつかれる。押し付けられる身体と、触れる吐息。瞬時に燃え上る本能を押さえつけるように、振り払おうとすると。ますます力をこめられた。
「違う。後悔なんかしてませんっ……嫌だったからじゃありません。わたしが泣いたのは」
「青砥さん」
「嬉しかったんです……」
 ぽつり、とつぶやかれた言葉が意外で。榎本の身体が、固まった。
「嬉しかったんですよ! 榎本さんに抱いてもらえてっ! 榎本さんて、そういうことに興味なさそうで……わたしのことなんか、女として絶対見てないって思ってて……だから、嬉しくて……」
「青砥さん……」
「迷惑かけて、ごめんなさい」
 涙でぬれた謝罪に、首を振る。
 確かに、榎本は純子を女として見たことはなかった。意識してしまうことはあったが、それが劣情に繋がる前には振り払うように努めていた。
 住む世界が違う彼女を、そんな対象として見ても。自分がみじめになるだけだとわかっていたから。
「迷惑じゃありません」
「榎本さん?」
「迷惑じゃありませんよ。迷惑だったら、断っています」
「…………」
「もう遅いから、今日は、泊まりましょう。明日は、色々大変ですから」
 榎本の言葉に、純子は頷いて。微かに、笑った。
 本音は告げない。こんな状況で伝えてはいけない。伝える機会が、今後あるかどうかはわからないが――
 今日、この出来事を、お互い後悔はしていない。それだけで、十分だ。
 広いベッドの中で、不自然にスペースを取りながら。
 榎本と純子は、静かに、眠りについた。

〜〜END〜〜
××××××××
終わり。長文失礼しました。

31 :
>>24
いい。榎本が切なくて胸しめつけられちゃった。

32 :
>>24-30
GJ!なかなか良かったです。
二人が幸せになれますように。

33 :
GJ!
センシュアルかつセンシティブ

34 :
33は24宛て
17はエロは無くても萌があったからセーフw

35 :
これから原作榎青投下します。苦手な方はタイトルの「危険なオトコ」か、このIDをNG設定してください。お手数をお掛けして申し訳ありません。
作中に出てくる奈々という女性は、原作『狐火の家』に、名前だけ出てくる純子の友人です。ちょっと拝借させていただきました。
**********
純子は、待ちに待った休暇を、学生時代の友人と共に軽井沢で過ごしていた。
得意のテニスに興じ、その後はエステティシャンの巧みなマッサージに酔いしれる。
そして、夜には、外資系の投資銀行に勤める奈々によってセッティングされた合コンが控えていた。
何でも、桁違いの年収を持った若くして成功している精鋭部隊らしい。
車のローンが残っているとはいえ、まずまずの収入がある純子にとっては、相手の年収はさほど重要な条件ではなかった。
しかし、年齢も20代後半、いわゆるアラサーという域に近付き、そろそろステディな相手が欲しい。
仕事で身も心も疲れ果てた時、支えてくれる誰かが。
そう考えた時、あの男の顔がよぎる。
榎本径。
ひと月前、流れで一度だけ関係を持った…。
あの日、で見事に完敗した純子は、屈辱の余り、バーで一人やけ酒をあおっていた。
どうやら、酔った勢いで榎本を呼び出してしまったらしい。
気が付いた時には榎本の部屋のベッドで一糸まとわぬ姿で横たわっていた――。
でも、あれから二人の間には何の進展もない。
…これはまずい。かなりまずい。あの男は正真正銘のデンジャラスな男だ。
危険な香りに惹かれるのは致し方ないとしても、本気になってしまっては洒落にならない。
なんでこんな時にアイツの顔が浮かぶのよ!
これでは、せっかくの楽しい休暇も台無しだ。
純子は必に榎本の顔を打ち消すと、今宵の素敵な出会いに思いを馳せながら、夢心地へと誘うマッサージに体を預けた。
極上のマッサージですっかり生気を回復した純子は、この日のために奮発して買ったハイブランドのシルクのワンピースに身を包む。
薄いベビーピンクの上品な色合いは、純子の知的で清楚な佇まいをより一層引き立てた。
そして、約束の洒落たレストランに着くと、予約席には待ち望んだ3人の男性がすでに座っていた。
収入だけでなく、顔立ちもハイレベルだ。目が肥えた奈々が勧めるだけある。純子は心の中でガッツポーズをした。
「こんなに美しい弁護士さんがいるものなんですね。」
いつも聞きなれているあからさまなお世辞も、いい男に言われれば心地よい。
会話も盛り上がり、楽しい時間を送っていた矢先、不意に誰かにポンと肩を叩かれた。
上機嫌で振り向いた先には―――1ヶ月前に肌を重ねた、一番会いたくないあの男の顔。
「榎本さんっ!?どうしてここに?」
純子はあまりの驚きに思わず立ち上がる。皆から疑問の視線を投げかけられ、純子は取り繕うように紹介を始めた。
「あ、この人は榎本径さんといって、仕事で…」
お世話になっていると続けようとしたところで、榎本に思い切り肩を抱き寄せられる。
純子に頬を寄せ、皆に笑顔を向けながら、榎本はにこやかに言った。
「すみませんが、僕の恋人にちょっかいを出さないでいただけますか。」
一瞬にして場の空気が凍りついた。皆、口をぽかんと開けてこちらを見ている。
最初にその空気を破ったのは友人の奈々だった。

36 :
「ちょ、ちょっと、純子!彼氏がいるって聞いてないんだけど…。」
「いや…、あ、あの。これはね。ち、違うの…。」
必の弁明を榎本が遮る。
「お友達の奈々さんですよね。投資銀行にお勤めだとか。やはり、知的な上にとてもお美しい。いつも“純子”からお噂は聞いてます。」
「いえ…。すいません、私ったら。純子にこんな素敵な彼がいるなんて知らなくて…。」
とびきりの営業スマイルを向けられた奈々は顔を赤らめながら謝罪した。
「さあ、行きましょうか。」
同じような笑顔を純子に向けると、榎本は純子の手首を強引に掴み、ずんずんと歩き出した。
遠ざかっていく高収入のイケメンたち。今度こそ彼氏を手に入れるという野望は脆くも崩れ去る。純子は心で泣いた。
「いやっ。離して!榎本さん!」
そう訴えても榎本は、振り向きもせず、何も答えず、前を向いたままでどんどん歩いていく。
足早にレストランを後にすると、暗がりの中に連れ出された。所々に街灯はあるものの、数はまばらで、視界が悪い。
どこへ行くともわからず、引っ張りまわされ、純子は非難の声を上げた。
「痛い!痛いってば!離してよ!」
不意に手首を離された。そこはどうやら駐車場のようだ。目の前には王子様の白馬、…ならぬ榎本の白いジムニー。
助手席のドアを開けられ、「どうぞ」と乗るように促された。
今すぐにでも目の前の男を張り倒して、皆のところに戻りたい。
しかし、彼氏持ちというあらぬ容疑をかけられてしまった自分にとっては、あの場はもう針のむしろでしかないだろう。
純子は観念し、しぶしぶ車に乗り込む。榎本は無言でエンジンをかけた。純子にとっては非常に不愉快な音を立て、車は走り出す。
しばらく走りながら、ふと、気付いた。てっきり、東京に戻るものだと思っていたのに、方向が違う。
国道をそれ、細い林道に入る。周りはひたすら鬱蒼とした木々ばかりが立ち並ぶ。何かおかしい。
「…あの、榎本さん。」
「…」
「榎本さん…。どこに向かってるんですか?」
「…」
何も答えようとしない榎本の横顔を見て、純子は胸騒ぎを覚えた。
いつもの飄々とした雰囲気とはかけ離れた冷たい表情。その表情には、怒りの感情も見て取れた。
純子の頭の中に一つの最悪のシナリオが浮かぶ。
…誘拐。まさか。
だが、どんな所でも簡単に侵入してしまう器用な榎本なら、誘拐ぐらいは軽くこなしてしまうかもしれない。
――落ち着くのよ。純子。
こういった時は犯人の神経を逆撫でしない方がいいと犯罪心理学の本で読んだわ。
「榎本さん。」
何か楽しい話をしようと呼びかける。だが、その呼びかけを無視し、榎本は逆に純子に話しかけてきた。
「…青砥先生はああいった方が好みなんですか?」
「は?ああいった方?」
「先ほど合コンをしていた方たちです。」
「え、ええ。まあ…。だって、年収良し、顔良しだったら、どんな女性でも嫌がる人はいないと思うわ。」
「なるほど。」
「そりゃ、私だって、もういい年ですから。彼氏くらいいてもいいじゃない?」
「……では、青砥先生は彼氏でもない男とああいったことをするのですか?ずいぶんとふしだらですね。」
榎本の言い方にはひどく険があった。

37 :
「ああいったこと?」
「はい。」
何だろう。ふと考える。それが、ひと月前の情事のことを表していると気付くまでに、そう時間はかからなかった。
「あ、あれは!その…その場の流れっていうか…。でも!榎本さんだってあれから何も…。」
「――僕を避けてましたよね。」
…そうなのだ。
実は関係を持ったあと、何度か榎本から電話があった。
しかし、仕事が忙しいことを口実に電話に出なかったり、出ても、疲れているからとすぐに電話を切ったりしてしまっていた。
実際、気まずかったこともある。
だが、本当のところをいえば―――これ以上深みにはまるのが怖かった。
好きになってはいけない。アイツは危険すぎる。
自分の根底にある道徳心がずっと警鐘を鳴らし続けていたのだった。もちろん、拉致されている今、この瞬間でさえも。
榎本はきっと怒っているのだろう。
いくら酔っていたとはいえ、大人の男を弄んだ、助手席にいるふしだらな女に対して。
そして、その女は、一度とはいえ、結んでしまった体の関係を不問に付し、他に彼氏を見つけようと躍起になっている。
恨みを買ってしまっても仕方がない。
森に囲まれた細い道が険しさを増す。もはや獣道と呼んだ方がいいかもしれない。
車が揺れ、純子の体も心も激しく揺さぶられた。
最後に車が大きくバウンドし、純子は嫌というほど頭を車の天井に打ち付ける。
「いったーい!」
叫んだ途端に視界が広がった。どうやらどこかの小さな川岸に出たようだ。
車のヘッドライトに照らされ、細波打つ水面が見える。
榎本は車を止めて、サイドブレーキを引くと、ヘッドライトを消した。
辺りが暗闇に包まれる。そんな中、車のインパネランプの淡い光だけが不気味に車内を照らしていた。
目の前にいるこの犯罪者が、人けの全くないこの場所で、一体何をしようとしているのか私には皆目見当がつかない。
思えば、私はこの人のことを何も知らないのだ。過去にどんな罪を犯したのかも。ひょっとしたら人もとっくに経験済みかもしれない。
用意周到でどこまでも緻密な彼のことだから、完全犯罪だって可能だろう。
私もその餌食にされてしまうのだろうか。そんなのはごめんだ。
奈々に電話をかけようと思い立ち、震える手で携帯電話をバッグから取り出す。
しかし、あっさりと榎本に見つかり、「今は必要ないでしょう」と取り上げられてしまった。
空しい試みだとわかってはいたが、純子は最後の説得に出る。
「榎本さん、聞いて。私は…」
「……静かにしてください。」
榎本が人差し指を唇に当てた。訪れる静寂。
すると、暗闇の中から小さな緑色の光が無数に浮かび上がった。
「わあ、蛍…!」
純子は感嘆の声を上げる。
「東京でも見られる所はありますが、ここまでの所は中々無いでしょう。これだけは青砥先生に見せたくて。」
その時、純子はこの恐怖のドライブの目的をやっと悟った。本当は、合コンから純子を連れ去るということが真の目的だったのかもしれないが。
いくら得体の知れない男だからといって、あまりにも壮大で失礼な妄想を抱いてしまったことに深く反省した。

38 :
「…すごい…。こんなの子供の時以来よ。…綺麗。とても癒されるわ。」
「それはよかった。最近、お仕事の方が“かなり”お忙しかったみたいですから、こういう癒しも必要でしょう。」
「…そういったところは相変わらずシニカルね。」
ふと、榎本の方を向くと、優しい眼差しで、蛍ではなく自分を見つめていた。
車内はクーラーが効いているのに、純子の顔は一気に火照る。
「わ、私、外に出てみます。」
赤くなった顔を隠すため、外に出ようとドアハンドルにかけた手を、榎本が身を乗り出して制する。
「やめた方がいいです。虫に刺されますから。」
その声に振り向くと、榎本の顔がすぐそこにあった。
視線が絡み合う。
焼けつくように熱くなる顔。
早鐘を打つ心臓。
まるで全身の血が逆流するかのような感覚。
榎本の甘い吐息が顔をくすぐり、指が純子の頬に触れる。
――もうどうなってもいい――
気付くと、自然に唇を重ね合わせていた。ただ重ねているだけなのに、徐々に力が抜けてくる。
まるでとろけてしまいそうだ。キスがこんなに気持ちいいものだったなんて。
息をするのも忘れ、ただ唇の感触だけに集中する。榎本の舌の先端が自分の唇に触れると、唇を開いてその舌を迎え入れた。
激しく絡み合う舌と舌、混ざり合う唾液。
あれだけ必に抑えていた欲望は、あっけなく堰を切って溢れ出た。
助手席のシートが倒され、フラットになる。
榎本はキスをしたまま、運転席から体を持ち上げ、右足を純子の股の間に入れ込んだ。体が純子の上に被さる。
右手で服の上から胸を包むと、そのまま揉みしだいた。
「あ…はぁ…」
思わず純子は唇を離し、小さな喘ぎを漏らす。
純子のものを離れた榎本の唇は、名残惜しげにそのまま横へ逸れ、頬、耳朶、首筋を順番に口づけた。
榎本の右手と唇が自分に与える愛撫はゾクゾクして、気持ちがいい。
純子は小さく体を仰け反らせた。
「…ん…ぅ…」
喘ぎが甘美さを増すと、榎本の右手は胸を離れ、ウエストの辺りを撫で回す。
狭い車内にシルクの滑らかな衣擦れの音が響いた。
徐々にワンピースの裾は腰までめくれ上がり、嘗め回すように愛撫を続ける右手がとうとうショーツの中に押し入ってくる。
そして、花弁を器用に押し広げ、顔を表した敏感な花芽を指で刺激された。
「あっ…」
純子の体がビクリと反応する。
そのまま何度もなぞられ、下半身が熱を持つ。耐えきれなくなり、榎本の体に強くしがみついた。
淫靡な刺激を受けた花唇からは甘い蜜がとめどなく流れる。
榎本はその蜜の量を指で感じ取ると、ベルトを緩め、もうすでに怒張した己を取り出した。
淫らに濡れた花弁にあてがい、じわりじわりと飲みこませていく。
下からせり上がってくる快感。

39 :
「は…ぁ…あん……」
純子は榎本に強くしがみつきながら、幾度となく繰り返される注挿に身を委ねる。
突かれるたびに、純子の背中は固いシートに擦られ、痛みを伴った。
しかし、それでも、榎本と繋がっているという悦びは何事にも代えがたい。
榎本の動きに合わせて、小刻みに揺れる狭い車内で、体のあちこちをシートやダッシュボードにぶつけながら、お互いの欲をただひたすら満たしあった。
そして、共に絶頂を迎えると、二人の荒い呼吸だけが、車内に満ちる。
榎本は薄く閉じられている純子の瞼に口づけを落とすと、顔を寄せたまま、純子に呼びかけた。
「純子さん。」
「…なんでしょう。」
「ここは、殊の外、動き辛いので、もっと広い場所で楽しみませんか。」
「――賛成です。」
二人は見つめあい、クスリと笑いあうと、深く唇を重ねあう。窓の外では、たくさんの蛍が静かに美しい光を放っていた――。
翌朝、軽井沢のホテルの一室で純子は目が覚めた。
あれから、箍が外れたようにお互いを求めあい、体が壊れそうなほど何度も絶頂に達した。
そのせいで体は鉛のように重い。昨日施された高級エステのマッサージなど、無駄になってしまった。それでも純子の心の中は幸福感で一杯だった。
横ですやすやと眠る榎本の裸の胸に頬を当てる。肌を通して伝わってくる規則的な拍動が心地よい。
これからどうなるかなんてわからない。
だけど、自分の気持ちに素直でいることに決めた。たとえ相手がどんなに危険な男でも。
「…好き。」
普段は口に出すにはためらわれる言葉を小さくつぶやく。
たぶん、眠っている榎本の耳には届いていないだろう。
だが、それでいい。
昨日、あれだけ散々振り回されたのに、この言葉を簡単に伝えてしまうのは癪だ。もっと後にして、じらしてやろう。
そんなことを密かに企みながら、純子はそっと榎本の胸に口づけた。そして、再び重くなった瞼を閉じる。
愛する人に抱かれながら眠りにつくなんて、これ以上の贅沢はない。
まどろみゆく意識の中で、純子は忘れかけていた一つの疑問を思い出した。
そういえば、どうして私があのレストランにいることや奈々のことまで、榎本さんには分かったのかしら。…そんなこと…今となってはどうでもいいか…。
一方の榎本はというと、眠っている振りを決め込みながら、1ヶ月前に純子の携帯電話に仕込んだGPS発信機と盗聴器をいつ回収しようかと考えていた。
…でも、もう少し束縛していたいから、しばらくはそのままにしておくか…。
よこしまな結論に達すると、自分の胸にうっとりと顔を埋める純子に気付かれないよう、ニヤリと小さく微笑んだ。
********
以上です。無駄に長くて、会話も少ないし、読み辛かったことと思います。お目汚し大変失礼いたしました。


40 :
イイヨーイイヨー!!GJ!!
>>…これはまずい。かなりまずい。あの男は正真正銘のデンジャラスな男だ。
ここ吹いた

41 :
GJ!
凄い!
防犯探偵シリーズの短篇集に紛れ込んでても違和感が無い完成度!
ヤキモチ妬きの榎本いい!!

42 :
皆様 GJ!!  もうぅ…最高です!
スレタイは 【ドラマ】鍵のかかった部屋でエロパロ Room#○【原作】 に1票♪
それと エロ はなくても 萌え があればいいかと思う♪

43 :
んじゃ
【ドラマ】鍵のかかった部屋でエロパロ Room#○【防犯探偵】
に一票。

44 :
>>35
GJ!
これはヤバイ…
榎本に抱かれたくなったジャマイカw

45 :
>>35
送ればせながら・・・萌えきゅんしたー!

46 :
>>35-39
GJ!原作知らないけどよかった。
自分は原作パロは読みたくないんじゃなくて、そのつもりで読まないと「あれ?」ってなる。
スレタイは
【ドラマ】鍵のかかった部屋でエロパロ Room#希望だけど
つけるんなら【原作】のがいいな。
【防犯探偵】は知らないとピンとこないんじゃないかな?

47 :
書き手さん達GJです!
自分も【防犯探偵】より【原作】にしてほしい。
ドラマがあって立ったスレだし、それの原作だからこその原作ネタ可でしょ。
原作のスレが元々あって、それがドラマ化されたってわけじゃないんだから。

48 :
>>35
GJ!GJ!
エロ本さんエロすぎて悶える
大人の関係が(・∀・)( ・∀・) イイネ!

49 :
スレタイは今まで通りでいいんじゃない?
うっかり【ドラマ】が抜けただけだと思うけど。
原作云々に関しては、投下するときに一言添えてもらえれば解決でしょ。

50 :
なんかまたパタっとレスが止んだね
投下される時は、GJをつける間もなく
次から次へと投下されるのに
その結果、ちゃんと読んで貰えないまま
スルーされるSSもあるんだよな…と思うと
次の投下のタイミングに関して
「最低○時間は空ける」とかのルールが
あった方がいいんじゃないかな?とは思う

51 :
>>50
そんなくだらないルールはいらない。

52 :
>>50
書き手が皆SS書いている間は暇だよ
誰かが書き上げて投下が始まると別の人が投下してだから
打ち上げ花火を見ているように読めて楽しいから
こっちも乙やGJだけでなく短く感想を入れてるよ

53 :
そっか
ならいいんだ
某所で職人さんが愚痴ってたから
そーゆーのも必要なのかな?と
ここで話題になるのは自分たち読み手側の都合ばかりで
書き手さんの気持ちに寄り添ってないかも…と
取り越し苦労だったスマソ

54 :
そこで保管庫ですよ
こういうのってどういう状況になったら作られるもんなの?

55 :
>>53
自分が投下した直後に、人気も実力もある書き手さんも投下して
そっちにばかりGJレスがつくと、たしかに寂しいし悔しいけどね。
でも、だからといって「投下は最低○時間以上空ける」みたいなルールはいらない。

56 :
私も職人だけど、別にGJレスが少なかったり全然なかったりしてもどうとも
思わないなあ
むしろ、どこが不評だったか考えるいいきっかけになる

57 :
前回の続きにあたるSSを書く時は、別に前回のSSを読まなくても、それ単品でも読めるSSを書いて投下している
そのほうが読み手に優しいSSだと思ってるので、そうしているだけ

58 :
過疎ってる所で
数レスつかない・一日or半日もあけず投下被せたらフルボッコ
というか被せてきた奴嫌がらせレベルだけど
ここみたいに今が最後の旬というか祭りで流れが速い時は
特に気にならないけどね
>>56
どこが不評だったか考えるいいきっかけは
指摘されないで自分で結論出すと
ますますあさっての方向に行きそうだけどねw

59 :
ごめん下げチェック外れてた…orz

60 :
>>54
作りたいと思った人が作ればいい

61 :
もう動かないのかな・・・・。さみしいね。

62 :
誰か一人でも投下するとダダダッて投下祭りになるよ
いつも大体その流れ
ただみんな自分が最初の一人になるのは嫌なだけ

63 :
ならば呼び水に超短いSSだ!10分クォリティーなのでご勘弁。
はやく神様の文章ください!

************************
「あれ・・・?榎本さん?」
「なんでしょう青砥さん。」
「ちょっといいですか?」
青砥が急に手を伸ばして来たので榎本は一瞬身体を固めた。
その隙に青砥が榎本の眼鏡をさっとはずした。

「うっわぁ!榎本さん!」
「・・・・青砥さん、なんでしょうか?」
「ねぇ!榎本さん!!!うわぁ〜・・・すごいです!」
「あの・・・・青砥さん、本当になんでしょうか。」
「榎本さん、嵐の人に顔そっくり!嵐って知ってますか?最近よくテレビ出てるアイドルですよっ!
榎本さんあんまりテレビ見そうにないですね。」
そういって楽しくて仕方がないというように青砥が笑って、榎本の目をしげしげと覗きこんできた。
長い時間目を合わせられるのになれていない榎本はつい瞳をゆらしてしまう。
「あ・・・っおとさんっ・・・・ちかいっです。」
気づくと15cmの距離にいた青砥の肩をぐっとつかんで自分から話した。
青砥も無意識に近づいてしまっていたのだろう。あっと小さく声を出すと恥ずかしそうに一歩下がった。
「いや〜〜。でも榎本さんほんとそっくりです。たしかリーダーって呼ばれてる人じゃなかったかなぁ。」
ちょっと前髪上にあげて見てくれませんか?と榎本のおでこをさらっと撫であげる手を避けようと、
その腕を榎本はとっさにつかんだ。
「青砥さん、やめてください。」
「え〜〜〜、恥ずかしいんですか?前髪あげたらきっとすごく似合いますよ!
だってアイドルとそっくりな顔してるんですよ〜!」
語尾に♪マークが付いているだろうと言わんばかりにノリノリな声に、榎本はつい眉根をよせてしまった。

64 :
あ。エンドつけるの忘れました。エンドです。
初投稿でそこらの色んなの混ぜた感じですんません。
呼び水に引かれて神様いらっしゃるのまってます。

65 :
乙!
そしてGJ!
>「あ・・・っおとさんっ・・・・ちかいっです。」
ここいいね!

66 :
中の人のグループ名をもろに出していいのか・・・?
同じネタのSSはいろいろ読んだけど
書き手さん、みんな濁してたよ?

67 :
>>66
あ。そっか。ごめんなさい。

68 :
これから原作の径×純子を投下します
未読の方でも読めるように工夫はしましたが
それでも苦手な方はスルーして下さい

69 :
ある夜、径こと榎本径は『あっ、俺ぬかもしれない』と咄嗟に覚悟する事が起き、その瞬間、純子こと青砥純子を思い浮かべた
「え? なあんだ、夢か」
ベッドで純子は同時刻に夢を見て、目を覚ました
「あ〜、夢で良かった」
偶然なのだろうか、径が何者かの手によって命を落とす内容だった。起きてから一時間が経ってもまだ動悸が収まらないものだった
具体的には何も知らない、知りたくもないが、怪しい事ばかりをしている径なら、そういう最期も、径らしいなと思っている
「でも、正夢には、ならないで欲しい……」
とても悲しそうな顔をして呟いた
やっとどうにか収まって目を閉じるが、どうしても眠れそうになかった
起き上がり、携帯で径の番号にかけてみると、ベランダから聞き慣れた着信音が流れた
「はい〜、榎本さん?!」
思わずベランダを見ると、レースのカーテン越しに径の姿があった
慌てて窓を開けるといきなり抱き付かれた
「ちょっと、アナタ、どうやってワタシの…、んぐぅ、むっ!」
いくら夢とはいえ径は純子を酷く心配させたので、文句の一つも言ってやろうとしたが、唇を唇で塞がれそれは出来なくなった
煙草のヤニが鼻につくが、本物だと感じさせ、正夢にならなくて良かったと、安心を与えてくれた
「はぅ、あぁ…、ちょっと、誤魔化さないで、あっ! 何する…の!!」
ようやく唇が離されたと思ったら、抱き上げられてベッドに寝かされた
純子の抵抗をモノともせず、服を脱がせ径は肌を重ねようとする


70 :
(こんなに華奢だったのだな……)
組み敷く純子の素肌に魅入る
今夜のような目に純子が遭っていたら、一瞬で散るなと思えるほど、その体は儚い
弁護士としての気迫が、この細い折れそうな体に詰まっているのが信じられない
欲望のままに動いていた手がふと止まる
「どうして、泣くの?」
不思議そうに純子が尋ねる
別に十代の初心な心を持つ娘ではないから、何をしようとしているのか見当はつく
もう上半身は裸にされている。径も似たような姿をしている
(泣く……?)
言われて頬を撫でてみると、右手の人指し指が濡れた
その隙をみて、純子も乳房に落ちた径の涙を指で拭った
その頃ベランダに、ポツリポツリと雨が降り出してきた
雨は雷を呼び寄せ、部屋の中が明るくなる
その瞬間、純子の顔は自分を責めるものではなく、慈悲を称えたものに見えた
ガラガラガラドッシャァァァン!!!
「ひぃっ!」
凄まじい音が光に追い付こうとする
思わず径にしがみ付き、やり過ごそうとする
「お、おい!」
先程まで、純子を押し倒そうとしていた径のほうが逆に動揺する。胸に乳房の柔らかさが伝わり、胸の奥と下半身が疼く
一時間ちょっと前、径は脳裏に浮かんだ純子にとても逢いたくなった
(このままんだら、言いたい事言えない。成仏出来そうにないな……)
何が何でも生きたいと欲が出て、今こうして純子の部屋に訪れていた


71 :
激しい雨でベランダが洗われていく
激しさはないが、その代わりに優しさで溢れる口付けを交わす
既に体を覆う布はない状態で抱き合っている
次第に遠退く雷が時々部屋を照らして、純子のまだ知らない場所を見せてくれる
「そんなに、見ないでよ……」
口調にも変化が表れている。理由も聞かずに径を受け入れようとしているがわかる
今迄何人の男がこんな純子の姿を見たのか、嫉妬を抑えた分だけ責めが激しくなる
「やぁっ、あぁぁ……」
そんな目で見られるのがとても恥ずかしい
見えない場所を手で触られるのが恥ずかしい
「そ、そういうの、ヤダ!!」
一番感じ易い部分を舌で舐められる
「ひぐぅ! はな……して」
必で径の頭を剥がそうとするのだが、力がどうしても入らない。もっとやって欲しい、そんな気持ちのほうが勝っていた
ピチャピチャと水音がする
雨はもう勢いはなく、音は聞こえて来ない
それで何の音だか判った純子の頬が赤くなる
「そろそろ……」
耳元で微かに囁かれた言葉に小さく肯くと、これ以上、もう見てはいられなくなった純子が目を閉じる
脚を抱えられる。舌で散々舐められ、時には唇で吸われた部分に何かがあたる
(あぁ……、入ってくる!)
「あ…、あぁ……、や、ぁ!」
衝撃に目を開く。そこから涙が零れる
(狭い…な……)
職業柄経験が少ないのかなと径は考えたが、直ぐにそれどころではなくなった
拒む訳ではないが、奥に進めるのがきつい。ゆっくりゆっくりと突き入れていった


72 :
「も…、むり、あぁぁ!」
根元まで咥え込んでおいて、無理だと喘ぐのに違和感を覚えながらも、責める事を緩めず径は腰を動かし続ける
昼間の気丈な顔とは違い過ぎる、弱々しさに径は魅せられていた
「ふっ、あぐぅ、ぁあ、はぁ!!」
涙の乾いた頬が紅潮する。もう辛さは消えたのだろうか甘い声が上がる
背中に回された両手に力が入る
地味だが丁寧に施されたネイルが、肩甲骨の辺りに喰い込み思わず顔を顰める
(痛っ! とんだ、じゃじゃ馬だな……)
自分がしている事を忘れて心の中でぼやいた
腕で抱えられた脚を肩に乗せる
「ひゃ、ぁあ! あぁぁん!」
奥を抉られるような動きに堪らず喘ぐ
乳房だけでなく肩に径の汗が落ち、玉になり転がってゆく
「あぁぁあぁ、あふぅぅ……」
繋がったまま体位が変わり、胡坐をかく径の膝に座る形で責められる
大きく反らすから、乳房が上下に揺れる
「あん、痛いっ!」
軽く吸うつもりだった乳首を、つい噛んでしまった。お詫びのつもりで舐めてみる
「やぁぁん、それ…」
甘過ぎる声が耳に届く。思いっ切り中に出したくなる誘惑に駆られる
(もう、これ以上…、され…たら……)
向かい合っているせいか、繋がっている場所の前にあるものが擦れてより感じてしまう
「うっ、はぁ、はぁぁん!」
径が終わる前に感じ過ぎて達してしまった
そんな姿を見られてしまい思わず顔を背ける
「俺、その顔でイキそうだな」
いやらしく煽ってみると、たちまち締め付けが強くなる


73 :
「じゃあ、中で……」
「ひゃぁ、やぁ!」
汗で髪が額に張り付く純子が頭を大きく振る。その慌てぶりが愛おしいと思う
奥に強く腰を打ちつけて径も達した。やはり純子の中で終わらせたくなった
「そんなに、ジロジロ見ないでよ」
「見たくなるのが、人情でしょ」
たくさん汗をかいたせいか、共にシャワーを浴びた。湯上りの純子の肌は赤味があって、ここで先程の続きをしたくなる美しさがある
「それにしても、どうしてベランダにアナタがいたの?」
濡れた髪をタオルで拭きながら、純子が気になる事を聞いた
「さぁ、どうしてだろうね」
バスタオルを体に巻いた純子に後ろから抱き付く。そして下から手を入れて撫で回す
「ちょっと! こらぁ!」
まだじんじんする純子のそこに指を這わす
「よく拭かないと、風邪ひくよ」
「それ、違うで…、ひゃぁ!」
タオル越しに何かがお尻に当たっているのを感じて、純子は離れようとするが遅かった
「くぅ、後ろ、から…なんて、ズルい……」
底なしの欲望がまた純子の中に入ってきた
(ここに来られなかったら、どうなっていたか判らない事があったのかなぁ……)
何の前触れもなく夜這いをかける男だとは、思ってもいない純子は再び繋がりながら径の本心を探ろうとしたが諦めた
バスタオルが剥がされて放り投げられた
「あぁぁ、そこ…、あぁぁん!」
湯気が籠る脱衣場に、純子の喘ぎ声が大きく鳴り響いて木霊した
おしまい


74 :
>>69
がっつりエロ乙です。
いったい榎本がどんな目にあってきたのか気になってしかたない!

75 :
>>63
乙です!
確かに中の人をもろに出すのはまずいかと
今度から気を付けてちょ
でも、投下ありがとう!
>>69
乙!
がっつりエロ美味しくいただきました
お蔭でネタ切れで筆が止まってたSSやっと書く気になったよ
ありがとう

76 :

すいません。嫌がる方がいらっしゃることは重々承知ですが、これから原作榎青投下します。
苦手な方はタイトルの「素直になれなくて」か、このIDをNG設定してください。お手数をお掛けして申し訳ありません。
軽井沢で恋人同士になった>>35の続きです。なかなか素直になれない純子を書いてみました。
**********
「そうやって、いちいち突っかかってくる所が可愛くてたまんないなぁ」
榎本に、逆にからかうようにあしらわれ、純子の怒りはヒートアップする。
なぜこのような事態になっているかと言えば、純子が仕事帰りにF&Fセキュリティ・ショップを訪れたことから事は始まる。
いつものようにドアを開けると、榎本はカウンターで若い女性を相手に接客中だった。どうやら家庭用の簡易防犯カメラの機能を説明しているらしい。
純子は接客が終わるまで、カウンター奥にある事務所で待たせてもらうことにした。
保温ポットから注いだコーヒーをすすりながら、ソファに腰掛け、無造作に置いてある雑誌をぱらぱらとめくる。
その時、店の方から二人の笑い声が聞こえてきた。
ドアの隙間から、そっと様子を窺うと、あの榎本と客の女性が顔を寄せ合い、展示してあるダミーカメラの前で笑いあっているのが見えた。
先程は別段気にも留めなかったが、よく見ると、その女性は知的で清楚な美人。やや勝気そうにも見える。どことなく雰囲気が自分に似ていた。
ち、近い! 近すぎる!
何なのよ!? 楽しそうにしちゃって…!
純子は扉を閉め、読んでいる雑誌に集中しようとするものの、なかなか頭に入らない。ふと虚しくなり、雑誌を放り出した。
すると、女性が帰っていく気配がして、榎本が事務所に入ってくる。
「お待たせしました」
何となくだらしない笑顔の榎本にイラつきながら、純子は精いっぱいの嫌味を言う。
「ずいぶんと盛り上がっていらっしゃったこと」
「お喋りがお好きな方のようですね」
「そういう榎本さんも結構楽しそうだったけど」
「接客業ですから。相手に合わせることも必要でしょう」
「ふうん。じゃあ、あの鴻野とかいうむさくるしい刑事が客としてやってきても、あんな風に頬寄せ合って鼻の下伸ばしながら話すのね」
「うーん。それはちょっと…。なかなか痛い所を突きますね。純子さん、……ひょっとして…妬いてるんですか?」
「〜〜〜!! な、なんで、私が、妬いたりするのよ!」
「それは、たぶん…僕のことが好きだからでしょう」
「ちょ、ちょっと! やめてよ! 私が! いつ! 好きだなんて言ったのよ!? 自惚れるのもいい加減にして!」
「…例えば、この前の軽井沢の時とか」
いけしゃあしゃあと、あの激しく求めあった翌朝のことを榎本は口に出す。
てっきり聞かれていないだろうと思い込んでいた純子は恥ずかしくなり、耳まで赤くなった。
「あ、あ、あなた…! 起きてたのね!?」
「覚えてるってことは起きてたんでしょうね」
「ひ、ひどい。寝たふりなんかして!!!」
そして、声を尖らせて怒る純子に対して、榎本は件の言葉を言ったわけである。

77 :
自分の怒りを受け流され、純子は顔をさらに真っ赤にさせて憤慨していたが、内心、いつもの丁寧で物腰の柔らかい口調とは違うやや砕けた物言いに
――ほんの少しだけだが――ときめいていた。
そんな純子をものともせず、榎本は体を寄せてくる。
「ホントに素直じゃないんだから。でも、知ってる?体の方はとても素直だってこと」
意味深な言葉をかけると、純子をそばのソファに押し倒した。
両手首を抑え込み、耳朶をやんわりと噛む。
「ほら、こことか」
「あっ…」
「ほら、ここなんかも」
「はぁっ…ん…や、やめて…」
首筋にちゅう、と音を立てて吸い付く。陶器のような白い肌に桜色の跡を残し、すぐに消えて無くなった。
「でも、一番素直なところはここかな」
榎本はすっと下着の中に指を入れ、茂みに隠れる敏感な部分をくちゅくちゅとかき回した。わざと聞こえるように音を立てて。
「いやっ! あっ…ぁ…ぁ…んっ!」
「ほら、少し触れただけで、こんなになってる」
蜜が絡んだ指先を純子に見せる。その、細く長い指先がてらてらと妖しく光っていた。
純子はあまりの生々しさに、目を逸らす。
「やだっ…」
「頼むからさ、いい加減素直になってくれないかな」
少し持て余し気味に言うと、榎本は下着とストッキングを膝まで下ろし、茂みに顔を埋めた。指先とは違う、柔らかくも芯のある感触が秘部を苛む。
そこは唾液と蜜が混ざり合い、一層淫靡な音を立てた。
「ふ……あっ…あっ…ぁんっ!」
いつまでも意固地な純子を責めるかのように執拗に舌の愛撫は続く。そのうち、指の愛撫までも加わってきた。
「ああっ! はっ…ぁ…!」
指で花唇をなぞられ、舌で芽を擦られる。二つの異なる感触が、純子の敏感な部分をそれぞれ好きなように嬲る。
そのうち体がふわりと宙に浮くような感覚を覚えた。絶頂が近い合図だ。
……榎本が欲しい。
だが、なかなか言い出せない純子と攻める榎本の間でしばらく攻防は続く。
先に折れたのは純子の方だった。
「榎本さ…お願い…も…やめ…」
「…」
「やだぁっ…こんなっ…あっ…ああっ!」
必で身をよじる純子に、唇を離した榎本は言った。
「どうして欲しい?ちゃんと言わないと俺だってわかんないよ」
「――っ! ……あ……わ、私っ…榎本さんが欲しいんです! 早くっ…!」
「やっと素直になった」
榎本はニヤリと笑うと、間を隔てる邪魔な衣服を素早くすべて取り去った。ソファの上で生まれたままの姿になる二人。
榎本は純子の片足を肩に担ぐと、もう十分に主張をしている自分の欲望を一直線に突き立てた。
「あぁーっ!」
待ち望んだ衝撃に思わず背中がしなる。榎本がゆっくりと腰を動かすと、ほぼ昇りつめていた純子は数回の律動でいとも簡単に絶頂を迎えた。

78 :
肩で息をしながら体を朱に染める純子から、いったん己を引き抜くと、榎本は腰を後ろから強く引き寄せた。
「きゃあ!」
まだ、達した直後で敏感になっている体を触られ、純子は悲鳴を上げる。
「俺がまだイッてないんだけど」
攻撃的に言い放った榎本は、純子の背部からまだ欲望のたぎる自分自身を再挿入した。
達したばかりの純子の内部はまだ小刻みに畝っている。纏わりつく襞、それを押しのけようとする猛り立った欲望。
「くっ…」
思わず、榎本の喉の奥から絞り出すような声が漏れる。繰り返される律動が性急になった。
純子は腰をしっかりと捕えられ、激しく榎本の体が打ち付けられる。その度に、ソファがぎしぎしと耳障りな音を立てた。
「あっ…はぁっ…あっ…あっ…」
自らの体重を支える手足がひくひくと引き攣れる。2回も押し寄せて来ようとする絶頂の波で純子の体は限界だった。
ソファの軋む音も二人の乱れた呼吸も何も耳に入らない。
「……も…だめ……」
「……っ…!」
純子の頭の中が白く光ると同時に、自分の中にドクドクと何かが入ってきたのを感じた。榎本がぐったりと背中にもたれかかる。
純子の耳を掠めるのは、あの冷静な榎本からは想像もつかない苦しい位に乱れた息遣い。まるで強く自分を求めるかのように。
火照る背中に汗ばんだ体が張り付き、体温を奪っていく。
次第に呼吸が整ってくると、体を起こされ、背中から榎本に抱きすくめられた。回された手にそっと触れると、榎本が切なく呻くように言う。
「…あの時みたいに好きって言ってくれる?」
「え…」
「俺は…好きだよ。純子のことが、何よりも大切で、そして…愛してる」
耳元で低く囁く榎本の口調はいつもより粗雑だけど、どこか優しくて。
榎本は不安だったのだろうか。あの日以来、一向に思いを口にしようとしない純子のことを。
胸の奥が熱くなる。
「わ、私だって…榎本…じゃなくて、け、径さんのことが、好きです…。……愛してます」
その言葉を噛みしめるかのように、純子を抱きしめる榎本の腕に力がこもる。しばらくの間、艶やかな髪に顔を埋めると、懇願するように榎本は切り出した。
「ごめん。俺、まだ、し足りないんだけど」
「そんな…まだ…するの?」
「好きな女に愛してるなんて言われて、そんな気にならない方がおかしいよ。嫌ならいいけど?」
「…嫌だなんて…そんなことない。私も…して…欲しいです」
「素直、だな…」
純子が振り向く。榎本が唇をふさぐ。
こうして二人は本当の恋人になった――。
********
以上です。こんなの投下して、本当にごめんなさい。でも、呼び水になろうと頑張ってくださった>>63さんに敬意を表して。
今度は頑張ってドラマ榎青書いてみます。

79 :
胃の上に乗っかったモノの重みで、苦しくて目が覚めた。
僕はため息をひとつついて、自分のお腹を圧迫していた青砥さんの膝をそっと持ち上げると
彼女を起こしたりしないように、静かにベッドから降りる。
時刻は5時20分。
目覚ましが鳴るまでまだ40分ある。
早起きにも程がある時間だ。
僕はもう一度ため息をついた。
青砥さんは…とベッドを見れば、僕の身体ひとつ分広くなったシングルベッドの上で、
のん気な顔をして寝息を立てている。
床の上には彼女が脱いだベージュのスーツ…と、ストッキング。
だけど、夕べの僕と彼女との間に、何か色っぽい事があったとかいうわけじゃない。
いや、確かに、そういうことも、過去にしたことがないわけでもないけれど…
青砥さんは僕を好きだと言ってくれたし、僕だって彼女のことが大好きで…
だけどもじゃぁ僕らの関係が、恋人同士かと問われたら正直僕には自信がないのだ。
童貞が物珍しくて、からかわれただけかもしれないし。

それに大体、彼女は今仕事が猛烈に忙しくて、部屋に来ても、キスもそこそこに
僕のシングルベッドに潜り込んで寝てしまう。

それは僕が、ちょっと長めの海外旅行の後に、青砥さんの住んでいるマンションの
3階の部屋を買って引っ越したことがバレた日から。
彼女は最上階の自分の部屋に行くまでの、エレベーターのほんの僅かの時間が惜しいと言って
僕から無理やり合鍵を奪うと、毎夜毎晩、もう5日間も、こうして僕の部屋に現れては
二人分のスペースなどないシングルベッドに潜り込んで来る。

おかげで僕はもう、慢性的な寝不足だ。
例の臨時収入に余裕があったからとか、例の事件のおかげでこの部屋が安かったからとか
何より少しでも青砥さんの近くにいたかったからとか、そういう理由で安易にここに引っ越して来たことを
僕は今や心底後悔していた。

勿論彼女が嫌いになったからじゃない。
そんなことがあるわけがない。
寧ろその逆で…
だからこそ毎日が辛い。

目覚ましの為のコーヒーを淹れながら、僕はもう一度、目下一番の悩みの種…
青砥さんの寝顔を盗み見た。

80 :
布団を蹴り上げて剥き出しになった長い脚。
普段パンツスーツで完全に隠されてるから、肌の白さが艶かしいというか…悩ましい…
じっと見ていると、つい…出来心で、僕はベッドのへりに腰掛けて
彼女の膝の内側の…柔らかな部分に手を伸ばす。
そしてそのままつつ…っとその初々しい腿から、お尻のギリギリ…のちょっと先の
パンツのゴムの際の際まで、産毛の光る滑らかな流線を
人差し指と中指の腹でなぞってみたりする。
ちょっとだけ…
ちょっとだけ布と肌の間に、指を滑り込ませてみたい衝動―――
そんなリビドーに、ただでさえ起き抜けで無駄に元気な僕自身が更に固くなって始末に負えない。
これ以上側にいると鼻血が出そうだ。
だからって、激務に疲れている彼女の寝込みを襲うなんて真似が誰に出来る?
僕は断腸の思いで(大袈裟?)立ち上がった。
するとその弾みでベッドがきしみ、青砥さんが目を覚ます。
「…はようございます」
少し浮腫んではれぼったくなった目をこすりながら、朝の挨拶をする青砥さん。
だけども、僕は振り向けない。
だって、男なら…この状態はどうしようもないでしょう!?
「榎本さぁん…おはようございますぅ…」
もう一度彼女は鼻にかかった甘い声で繰り返すけど
でも僕は振り向けませんからっ!
だって、青砥さん!
あなたのキャミソールの胸元から、イチゴが一つこぼれてますっ!
気にならないのか気がつかないのか胸元も露に、青砥さんはベッドサイドの
目覚まし時計に手を伸ばすと呟いた。
「ん…もう6時…?」
そうなんだ。
悶々としていると、朝の時間はあっという間に過ぎる。
青砥さんはベッドの上で、ううんと一つ伸びをして、当たり前のようにシャワールームに向かった。
ほっとしたような、残念なような…
そして、今日一日分の仕事を終えたくらいの疲労感。
まぁいいか…
今日は僕の店は定休日だ。
青砥さんが仕事に出かけたら二度寝しよう。
っていうか、まずはちょっとスッキリしよう。
こんな時の為に右手の恋人がいるわけだし。
うんそうしよう、その方がいい。
そんな風に一日のプランを練っていたら、バスルームから僕を呼ぶ声がする。
「ごめんなさい…何か着るモノを貸して下さい」
ああ、はい…と僕は立ち上がった。

81 :
でも、どうしようか?
このところ、毎日のように青砥さんにスウェットの上下を貸し出しているんだけど
彼女はそれをまだ返してくれていないんだ。
つまり彼女の部屋にそれを着て上がってスーツに着替えて出勤し、夜になるとまた僕の部屋にやって来るから
気がついたら僕の部屋着は在庫切れの状態になった。
それで…
それで僕は仕方なくTシャツを一枚取り出した。
ずっと前にバーゲンでサイズを間違えて買ってしまい、そのままになってしまっていたガンダムTシャツ。
…というのは嘘で、
男のちょっとしたアレで昨日買ったばかりの、僕自身には多分一生縁のないサイズのそのTシャツ。
僕はそれを引っ張り出すと、やっぱりおろしたてのトランクスと一緒に何くわぬ顔をして青砥さんに手渡した。
バスタオルを巻いた彼女は、キョトンとした顔で僕を見る。

僕は努めて自然な表情で青砥さんに説明した。
「これしかないので、取り敢えずこれを着て下さい。
後で青砥さんの部屋へ行って、僕のスウェットを回収して来ますから」
賢い青砥さんは状況を理解すると、ごめんなさい、と小さく謝って、もう一度バスルームへと消えて行った。
僕は自分の下心が見透かされなかったことにほっとして、ベッドの端に腰を下ろすと、彼女が出てくるのを待った。
そうして数分後に脱衣所から姿を現した彼女は、素肌の上に、LサイズのTシャツを被っていた。
彼女には大きすぎるサイズのそれは、まるでマイクロミニのワンピースのように
彼女の秘密の場所をギリギリ覆っているものの、すらっと伸びた綺麗な脚は隠しようも無く。
しかも湯上りの湿った肌に、生地が張り付いて、乳首が透けて見えるというオプション付きでっ!!
かっ…かわいいっ。
そしてエロいっ。
これぞやっぱり男のロマン。
榎本径31才、本懐を遂げたかもしれません。
僕は心の中で、自分自身にGJを贈った。
ところが…
そんなガッツポーズも束の間、更なる予期せぬ出来事に、またも鼻血が出そうになる。
床に脱ぎ散らかしたスーツを拾い上げようと、僕に背を向けたままかがんだ青砥さんの
トランクスを履いている筈の下半身は…
下半身は…


…ノーパンでした…orz

82 :
「あ、あ…、青砥さんっ!」
僕が思わず大きな声を上げたら、可愛い悪魔は、普段は清楚なその顔に
はてなマークを浮かべてこちらに向き直る。
「勘弁してくださいっ。僕を誘ってるんですかっ?
こんなんじゃ、僕の自制心だって限界ですっ」
やぶれかぶれで叫んだら、途端に青砥さんが真顔になるから、僕はますますどうしていいかわからない。
じっと僕の目を見つめたまま、青砥さんが近づいて来る。
まずい。
ホントにまずい。
軽蔑されたに違いない。
万事休すと目を閉じたら―――
次の瞬間、僕の膝が、しっとりと重くなった。
恐る恐る目を開けると、少し見上げる高さに、青砥さんの潤んだ目。
彼女は僕の膝に腰掛けて、不機嫌な目で僕を睨んでる。
ご…ごめんなさい。
もう言いません。
僕が間違ってました、申し訳ありません。
いくつもの謝罪が僕の脳裏を過ぎった、その瞬間―――
「誘ってるんです。いけませんか?」
青砥さんは、怒ったような表情を崩さずに言い放った。
わけがわからず戸惑う僕に、彼女はまるで恋人のような甘くて長いキスを浴びせる。
ごめんなさい、青砥さん。
胸が苦しくて息が出来ません。
「で…でも、仕事はどうするんです?」
状況が上手く飲み込めなくて、ついつい間が抜けた質問をしてしまう気の回らない間抜けな僕のことを怒りもせず
彼女はくすりと微笑みをくれる。
そして、悪戯な表情で僕の目を覗き込むと、
「ちゃんと有給を取りました」と
優しい声で、囁いた。

〜fin〜

・・・・・・・・・・・・
済みません。
投稿規制に合って悪戦苦闘してたらリロードを忘れて被っちゃいました。
しかも前置きも消えてしまって…。
一応ドラマ榎青です。
では、ロムに戻ります。

83 :
あ、GJを忘れてました
>>76
素晴しい!!
原作榎青、流石のクォリティですね!

84 :
原作GJ!
合鍵を持ってる青砥さんの次の行動にも期待!

85 :
>>75>>79
2作ともよかったよー。
両方とも続きを妄想。また書いてください〜。

86 :
75じゃなくて、>>76だった、すいません。

87 :
>>79
GJであります!
初心な榎本が可愛かった。
しかし、イチゴポロリとかノーパン純子の誘い方が大胆すぎて鼻血が…
また、書いてください!

88 :
>>78
原作純子さん硝子のハンマーより狐とか鍵のかかった部屋よりですね。可愛い感じ。
ガッツリエロ乙です!
>>82
可愛い榎青でした♪
榎本さんはガンダムのTシャツを青砥さんに着せたかった????
男のロマンはよくわかりません(笑)GJ!

89 :
こんばんは。
>>2-7と、前スレ「ゲーム」に感想を下さった皆さんありがとうございました。
すみません、懲りずにまた原作榎青を投下します。
一応エロ有りですが、今回ははっきり言ってぬるいです。
ドラマ派の方には、榎本も青砥も違和感ありまくりな性格設定だと思うので、
苦手な方は「酒は罰の味」でタイトルよけして下さい。
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カツカツとヒールの音を響かせながら、エレベーターを降りて真っ直ぐに奥の自分の部屋に向かう。
まだまだ夜も更け切らない時間だったが、徹夜明けに近い身体は睡眠を求めていて、
こんなことだったら勧められるままに飲んでしまったアルコールを控えるんだったと今さら後悔するが、遅い。
しかしそれでも、仕事はひと段落したのだし、気分は上々に良かった。
「……あれ?」
鞄からカギを取り出し、カギ穴に差し込もうとして、純子は違和感を覚えた。
しかしそれを酔っているからだと思い、気にせずにカギを回す。そして数秒遅れて、違和感の原因に気づく。
家の中から明かりが漏れているのだ。
朝、慌てていたからそのままで出てきたのかしら? と、頭の中で時を遡って考えを巡らせる。そしてそれはすぐに答えが出た。
「おかえりなさい、青砥先生」
「………」
がくりと力が抜けるような声と態度の榎本に出迎えられて、言葉の無いまま玄関に立ちつくしてしまった。
「…ど、どうして、何であなたがここにいるのよ?」
玄関先にいつまでも立っているわけにもいかず、ヒールを脱ぎ、カギをかけて中に入る。酔いはすっかり冷めてしまった。
「勝手に女性の部屋に上がり込むなんて失礼にも程があるわ。……そういえば、戸締りはちゃんとしていったはずだけど?」
「そうですね。ちゃんとカギは掛かっていましたよ」
榎本を見下ろすような形で、純子は強気なままに腕組みをしてじっと視線を送る。それを榎本は余裕で受け止めて、逆に純子を見返した。
「だから、どうやってこの部屋に入ったのかって聞い…」
苛立ちを隠さずに言いかけた言葉を無視するようにして、榎本のわずかに低くて通る声が響く。
「約束をお忘れですか?」
「え、約束?」
一瞬の間が部屋の中に流れた。
どうやら考えた顔がそのまま顔に出てしまったらしく、榎本の視線がちくちくと刺されるように痛く感じる。
そうしてようやく、数日前の榎本との電話の記憶が蘇る。
『いいお酒が手に入ったんですが、一緒にいかがですか?』
『あー…ごめんなさい、今日明日は仕事が忙しくて無理。明後日のが終われば、時間を取れるわ』
『分かりました。では明後日の夜に伺いますね』


90 :

仕事の勢いですっかり記憶から飛ばしていたことを思い出し、言葉を失って手持ちぶさたのまま黙り込む。
それでも場の雰囲気は変わることはなく、むっとしたままの榎本の表情が怖く、誤魔化すような笑みが自然と漏れてしまう。
「……本気で忘れていましたね?」
声が冷たい。言外に、待たされた時間をどうしてくれるんですか、といった言葉が聞こえてきそうで、慌てて言葉を紡ぐ。
「だって、あの時は仕事が本当に忙しくて、それどころじゃなくて…」
純子の必の言い訳は空回りして、榎本に聞き流されていく。軽く相槌はうっているが、信じてはいないらしい。
「ごめんなさい! 本っ当〜にごめんなさい!!」
ここは謝り倒した方がいいと判断し、身体をくの字に折り曲げるように頭を下げる。それでも榎本は無反応のままで、どうしようもなくなる。
「……コーヒー淹れるから、ちょっと待ってて」
キッチンに向かい、新しいケトルに水をいれて火をつける。
「もしかして、何時間も待ってたの?」
もしそうだとしたら、今までの経験からいって何をされるか分かったもんじゃない。
不意に背後に人の気配を感じ、榎本が近づいてきたと思うより先に、右耳の後ろに息をふっとかけられる。
「っ!」
一気にざわっとした感触が這い上がってきて、耳をおさえて勢いよく振りかえる。そこには、さっきまでは無かった榎本の笑顔があった。
「そんなには待ってませんよ。実はさっき来たばかりですから」
両腕ではさまれて逃げ道の無いままに、榎本の顔がゆっくりと近づいてくる。
「…騙したの?」
榎本の胸を両手で押しやり、少しでも距離を置こうと顔をそむける。
「騙すとは人聞きが悪い。時間は関係ないにしても、約束を忘れたこと自体は明らかに青砥先生の非でしょう?」
たしかにそれはその通りであるだけに、言われてしまうと返す言葉が無い。それを見逃さずに榎本は両腕で純子を抱きしめて、奪うような深いキスをする。
抵抗する間もなく全てが榎本による酩酊感にのまれていく。アルコールとは違う、酔うような感覚が身体中を突きぬけていった。
唇を少し横にずらした榎本は、息の上がりかけた純子ほどではないが、掠れる声で囁く。
「アルコールの味がしました。私のことなんか忘れて飲んできましたね」
後ろめたくて、視線を外したまま榎本に訴える。
「仕事でよ…」
「ふうん」
納得していない榎本の声は固くなり、純子は身をすくませる。その背後でカチッという音がして、コンロの火が榎本によって消されてことを知る。
お茶よりも先に時間を取りたいということだろうと察して、言葉が出なくなる。熱は一気に冷めて、少しでも離れたいという思いだけが先行していく。
それに気づいたかどうかは分からないが、抱きしめられていた身体が楽になり、不意にゆるんだ榎本の腕から逃れる。
しかしこの中には逃げられるような場所など無く、部屋は榎本の背後だし、純子は仕方なく洗面所に逃げ込むことを決めた。
外開きのドアを開けて身体を滑り込ませ、身体を滑り込ませてカギを回す。カチャリと音が聞こえ、安心してドアを背にもたれ掛れ、一息ついた瞬間。
再びカチャリとカギが回る音が聞こえ、純子はそのまま仰向けに転倒した。
「この程度で私を締め出せると思ったのなら、ずいぶん見くびられたものですね」
その言葉に扉の方を見れば、枠にしっかり手をかけている笑顔の榎本がいた。

91 :

「う…そ……あんな、たった一瞬で……」
「私から逃げようと考えること自体が間違いだと、教えて差し上げましょうか?」
その一言に、純子の思考が一瞬止まる。どうしようもなくなった状態に、何も答えられずにいると、先刻以上の力を扉に加えられて、呆気なく榎本の侵入を許してしまう。
純子は慌てて起き上がり、扉から離れて後ろ向きのまま逃げるが、狭い部屋の中で逃げるといってもたかが知れている。すぐに洗面台にぶつかり、足がそこで止まる。
榎本はそれを眺めながら身体を進め、純子を追い詰めていく。逃げ場を無くした純子は、ただ目の前の人物を見ているしかなかった。
自分をじっとみつめてくる視線に対して、榎本は諭すように自分の言葉を純子に教え込ませる。
「だから、逃げても無駄ですってば」
手を伸ばされ、肩に触れられてそのまま榎本の方へと引き寄せられる。
「……ひどいわ、榎本さん」
「そうですか?」
「自分で自覚が無いのなら、相当な重症よ」
「どこかですか?」
近づけられた顔は見慣れているはずなのに、少しずつ心拍数が上がっていく自分に気づき、純子はそれを押し隠そうとして声が素っ気なくなっていく。
「私の話も少しくらい聞いてくれたっていいじゃない」
「優しくすると、青砥先生はすぐに逃げるじゃないですか」
そんなのは言いがかりだと騒ぎたてるよりも先に、静かにしろといった意味合いの強いキスを榎本から受ける。
「ちょっ……や…」
抵抗する言葉は最後まで言えずに榎本の唇の中に消えていく。
両頬を掌でおおわれたまま、ゆっくりと純子は目を閉じる。波にのまれるようなそんな感触に、自分の理性が砕かれていくのが分かる。
指を滑らせ耳を愛撫する動きに、ぴくっと身体が揺れた。キスの角度を変えられて、堪らなくなって息を吐き出す。
熱のこもった吐息に近いことに満足したように、榎本の器用な指は、口づけの間に純子のシャツを苦も無く脱がせていく。ベルトさえもあっという間に抜き取られ、タイトスカートのファスナーを下ろされる。
冷たい指が身体に触れ、晒された素肌にキスを施されて、自然に声が漏れそうになって焦る。弱いポイントを知っている指は巧みで、確実に純子の熱を上げていく。
榎本の頭がゆっくりと下がり、潤み始めた部分に舌を入れられて、純子は強く指に力を込めて榎本の肩にすがる。
「やぁ……っ」
どうしようもなく、ぎゅっと目を閉じたまま首を左右に振る。肩に触れる純子の力は強いものの、榎本の行為を嫌がるようにも、促すようにも見えた。
「何が嫌なんですか?」
これ?とでも言うかのように指で煽られて、声を飲みこむ。焦らされることに慣れていなくて、言葉も思うように出てこない。
前かがみになって榎本の背中にすがりつく。榎本のシャツ越しの熱が純子に伝わり、相乗効果に目眩が起こる。
「……あ」
意味の無い言葉がこぼれることを止めることさえ出来なくて、右手を口にあてるが、それだけではもう止まらない。
涙目になって睨んだ瞳は、相手の情欲を駆り立てるだけなのだが、それすらも今の純子は気づけない。
慰めのキスはこの辛さを与えた本人からのものとは思えないほどに、優しい。戸惑いなく動く榎本の指に、意識を飛ばすよう示唆される。
素直に流される自分に気づきながらも、従うしかなくなって、それに満足げな雰囲気が伝わって、ほんの少しの反発心がわく。
「青砥先生、後ろを向いて下さい」
だが、耳元でささやかれた榎本の声は完全に掠れ切っていて、自分だけがそういう状況でないのだと安心させてくれた。
考える力を放棄しかけていた純子は、言われるがままに榎本に背を向けた。洗面台に手をつき、腰を引かれる。
耳の後ろに感じた舌は、誘いかけるように強弱がつけられ、身体の強ばりが徐々に解けていく。繰り返される行為に力無く頭を揺らして、送られる快感をリアルに感じていく。
そんな中、いつもの榎本とは違って言葉が無いことにふと何かが引っかかって、純子は顔を上げた。
「―――っ!!」
目の前にある鏡の中の榎本と、ばっちり目が合う。じっと見つめられて、一気に頬に赤が散る。


92 :

先に視線を外したのは純子の方だった。瞬間的に我に返った純子は、再びうつむいて身じろぎをし、嫌がった仕草を見せる。
「…なに、見てるの…よ」
途切れがちな声を無理矢理に出して抗議するも、榎本の返事は無いまま、すっと伸びてきた手に顎を取られて正面を向かされる。
「見て下さい」
言っていることを理解した純子は、ぎゅっと目を閉じたまま勢いよく首を左右に振る。しかしそれだけでは許してくれない榎本は、ぐっと身体を進ませて純子に短い声を上げさせた。
目を開いた瞬間に自分の姿が目の端に映ってしまい、後ろを振り向いて、本気の目で榎本を睨みつける。
「…止めてってば」
「こんなに可愛いのに。もったいない」
本気でもったいなさそうに言う榎本の悪びれない態度に、純子は声を荒げる。
「榎本さんっ!」
「…………」
羞恥という言葉を知らないとかと考える純子とは逆に、その反応の一部始終を楽しんだ榎本は程々で手を引こうと決め、鏡は諦めて視線を純子へと戻す。
全ての返事は全ての激しい行為に変えられて、純子はその刺激を拒むことなく、ただ全てを受け止めた。

「……ん」
眠りこんだことも忘れて、純子はゆっくりと覚醒していく。一人でゆったりと寝ているベッドに違和感を覚えて目を開ける。
ぼやけた頭で間近の時計を確認すると、まだ真夜中に近い時間で、早々にダウンしてしまった自分の体力の無さを痛感した。
そして、違和感の正体が隣りに榎本がいないからだと納得した瞬間、不意に掛けられた声に身体をびくつかせる。
「おはようございます」
「……榎本さん」
ベッドの傍らに腰をおろしている榎本の姿を見つけて名前を呼んだものの、それから先の言葉が出てこない。
「やっと起きたようですね」
「なに、してるの?」
喉が渇いて掠れた声のまま尋ねると、榎本は片手に持ったグラスを持ち上げて純子の視界の中に入れる。
「持ってきたお酒を飲んでいました」
「……私にもちょうだい」
手を榎本の方へと差し伸べて、寝ぼけ眼のままにじっと見つめる。
「もう無いですよ」
「え?」
ほら、と見せられた透明なボトルの中は本当に空っぽで、それを一人で空けたというなら、一体どんなペースで飲んでいたのかと純子は疑問する。
「……たしか、私と一緒に飲むために持ってきたんじゃなかったの!?」
「そうなんですけどね。青砥先生は起きてくれないし、一人で待つのもあれだったもので。ちょうどこれが最後です」
黙ったまま怒った表情を見せる純子に対して、榎本はやれやれといった顔で手に持っていたグラスの中身を一気に煽る。
「ん」
そのまま首を引き寄せられ、顔を近づけられる。
しばらくは戸惑いを見せた純子だったが、キスを素直に受け入れた瞬間、喉を焼くようなアルコールが一気に流れ込んできた。
そのまま榎本はベッドの上に身体をずらして、純子の上半身を抑え込む。
榎本を仰ぐその顔には、多少の疲れも見えていたが、榎本はそこで止めようとはせずに余計に純子に執着する。
唇を離されることの無かったキスの合間から、琥珀の液体が喉元を伝ってシーツに流れ落ち、仄赤い染みを作った。
<終>

93 :
>>89
素敵…!
鏡の前でエチなんて、エロいエロ過ぎるよ榎本…
美しい文章に引き込まれてしまいました。GJ!

94 :
>>88
マジレスすると、三大男のロマンとはガンダム云々のことでなく
「裸エプロン」「裸メンズYシャツ」「裸メンズTシャツ」の事であります
僕と青砥さんは身長差が無い為、普通に洋服を貸してもジャストサイズで
襟ぐりや袖口から胸元や脇からのチラ見えもなく、萌え成分は少なめでした
そこでわざわざ自分が着る予定も無いLサイズを買ってきたと…
文章力不足、大変申し訳ありません
以上、榎本径でした

95 :
径たんから返信がw
大丈夫、理解できてたよー!

96 :
原作人気だね
ドラマは萌えないもんなぁ…

97 :
>>96
自分はそうでもないわ
原作青砥のイメージはドラマ青砥の人が出ているCMから生まれているもの

98 :
>>96
ドラマも萌えるよ。
ただ、あの初々しい関係の二人が好きなだけに、自分の筆力じゃ上手くエロに結びつけられなくて、
ついついエロシーンを書きやすい原作版の二人に手をつけてしまうんだよね。
ほのぼの日常小ネタとかなら、ドラマ版の方が圧倒的に多く浮かぶんだが。
単純にこのスレ向きじゃない。

99 :
>>96
自分は逆だ
ドラマのあの初々しい二人だからこそはまったし萌えた。
芹沢も加えた三人の絶妙な距離感が大好き
だから逆にそれらの要素がまるでない原作には一切興味がない

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