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2013年07月ニュー速VIP+74: R「ラスト・Rーだ」 (160)
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R「ラスト・Rーだ」
- 1 :2013/07/14 〜 最終レス :2013/07/16
- 「両者共、今、スタートを切ったッ!」
その寒村は、熱狂の坩堝と化していた。
渦中にいたのは、一人の男と、一貞のRだった。
「ふははははははっ!
そんなもんか、小僧!!」
「……ふっ」
Rは、まだ年若かった。
少年、といっても差し支えない。
Rは下半身をさらけ出し、人の温もりを知らぬソレをしごいていた。
彼と対峙している男も同じく、自慰に耽っている。
周りでは、人々が固唾を呑んで、彼らの様子を見守っていた。
「はっ……はっ……そろそろ出そうだ!
俺の勝ちだな!」
男が底意地の悪そうな笑みを広げた。
人々がどよめく。
「そ、そんな!」
「旅のRの方、勝ってくだされ!
でなければ……でなければ村はおしまいじゃぁ!」
「目にも止まらぬスピード……ッ!
一体、どちらに軍配が上がるんでしょうッ!?
Rに勝ちの芽はあるんでしょうか!」
「全くの予想もつきませんね。
Rーはその日のコンディションや天候、風向きによって左右されますから。
彼には勝ってもらいたいところですが……」
- 2 :
- Rはそれらの声にまるで興味がないように、嘆息混じりで溢した。
「俺は誰の為でもなく、自分の為のRーしか出来ないさ」
「ははは!薄情なRめ。
村がダムに沈もうが、村のR達がどうなってもいいようだな」
「俺は誰かに剣(おR)を捧げたつもりはない。
けど――」
悲嘆の声を上げる人々が、驚きに目を見張った。
R少年がやにわに袖を捲り上げ、重々しいリストバンドを見せたのだ。
「バ、バカな……!
あんな重りをつけて今までぶっコいてたのか……!?」
「これは勝負が分からなくなってきました……ッ!」
放り投げられたリストバンドが、爆音にも似た響きと共に土埃を巻き上げる。
そこから亀裂が、男の足下まで走る。
小さな悲鳴を上げ、男が尻餅をついた。
Rは、R動画を彷彿とさせる曇りのない笑みを覗かせた。
「――このRーで救えるモノがあるというなら、救ってやろうじゃないか」
- 3 :
- 期待
- 4 :
- 人々はその狂気をこう呼んでいた――ヤリチン教団。
世を覆うそれは、人心に巣食う悪を浮き彫りにした。
そして、それは確かな敵意を持って、とある存在を苦しめていた。
対極に位置する種族、Rだ。
今、この山間の寂れた村も、ならず者のヤリチンの被害に遭っていた。
数週間前から「幼いRを拐う」と金を脅し取られていたのだ。
Rが高く売れるということに加え、警察はRの為に動かない。
もはや今の世に、Rの人権など無いに等しいのだ。
こと、人里離れた小さな村では、尚更だ。
ヤリチン達もそれを見越して、脅しを掛けたのだろう。
世情は完全に彼らを味方していた。
ヤリチン達は金さえ出せば、おとなしく引き下がったが、今度ばかりは勝手が違うようだった。
彼らは、上から正式な仕事をもらってきたらしい。
それが、ダム建設である。
なんでも、愛液をダム一杯貯めたいらしい。
立ち退きを命じられた村人はドン引きしながらも、遂に溜まっていた鬱憤を爆発させた。
だが、立ち退き命令はヤリチン集団の意思ではなく、国家の意向だ。
そもそも、ただの人間がヤリチンに勝てるはずがない。
村人はそう歯噛みしながらも、悪さをするヤリチン達に反抗し、一触即発の状態となった。
そこにちょうど、若い旅人が居合わせていた。
枝分かれした角のある獅子を連れた、Rだった。
Rは言った。
「自分とRーで対決しよう。
俺が勝ったら、もう村には手を出さないでくれ。
お前らヤリチン共が勝ったら、このR、くれてやる。
煮るなり焼くなり好きにしろ」
ヤリチンのリーダーは面白がり、承諾した。
斯くて、村の存亡を懸けたRーが始まったのだ。
そして、それはRが本気を出してから、一瞬で終わった。
「バ、バカなぁ……」
ヤリチンの口から掠れた声が漏れた。
Rは重りを外してから、目にも止まらぬスピードRーを展開し、僅か四秒で射精したのだ。
「そんな滅茶苦茶なフォームだから数分も掛かる。
何より、相棒に対する愛や敬意が見えない。
よくもその程度で、勝てると思ったもんだ」
村人は手を取り合って喜んだ。
口々に、Rを讃える。
「Rスゲー!」
「ママー、あのRかっこよくて、あたし濡れちゃった」
「あらあら、私もよ」
「Rさん、ありがとうよ!」
- 5 :
- Rは一息吐いた。
ヤリチンが本当にこのまま引き下がるとは、露ほども思ってなかったのだ。
予想通り、ヤリチンの一団は負けたリーダーを袋叩きにし、今度はRへ牙を向けた。
「おい、黙ってここから立ち去れ!」
「立ち去れ!」
村人が憤った。
手に持った鎌や鍬に、力が入る。
「そりゃねぇだろ!」
「約束はどうした!?」
Rは争う彼らを見ながら、再び、相棒を怒張させた。
放たれたのは白い弾丸。
獲物を求めるその様は、餓えた狼にも似ていた。
人間であれば、それは精々、四十キロ程度の速度しか出ないはずだ。
そう、人間であれば。
では、Rならばどうだろう――。
ヤリチン達から、痛々しい悲鳴が上がった。
「ど、R!テメェ……」
声は途切れた。
胸に精液が命中し、ヤリチンが昏倒したのだ。
訓練されたRの射精は、容易く意識を刈り取る力があるという。
その上、彼は射精精度、シコッティングスピード、Rング、最大貯精量さえ一級品だった。
Rは尚も、Rーを止めない。
泡を食って逃げ出すヤリチンの背にも、威嚇射精を忘れなかった。
- 6 :
- 「お見事でした!
人助けをしたなんて、御主人も喜びますよ」
Rは隣に並んだトナカイへ目もくれず、
「貴方がやれって仰ったから……お師匠がこんなことで喜びますかね」
「きっと。御主人はなんだかんだ、君のことを気にかけてるっす」
「俺はただ射精した……それだけです」
彼は踵を返し、村を跡にしようとした。
その背中に、待ったの声が掛かる。
「ま、待ってくだされ旅の方!
貴方は村の恩人!
ヤリチンが支配するこの世の中に射し込んだ一条の光!
ただで帰すわけにはいきません!」
そのでっぷりと肥えた男は、Rの前に周りこんだ。
へつらうような、ぎこちない笑顔が顔に張り付いている。
「私は村長です。
村長として、村の英雄たる貴方をもてなす義務があります」
- 7 :
- 戸惑いを滲ませるRの横で、トナカイは乗り気だった。
「私ら英雄ですって!!
人の好意を無下にするのもあれですし、行きましょうよ!」
「シカはシカらしく黙ってていただきたい!」
村長が家畜でも見るようにトナカイを睨んだ。
「シカじゃないっす!」
言い争いにならないうちに、Rは言った。
「分かりました。
ご好意痛み入ります。
ですが、俺達には急ぐ旅があって……」
「えぇ、えぇ、そうでしょうともそうでしょうとも!
貴方のようなお強いRがこんな所を彷徨いているんですから。
何か訳ありの旅なんでしょうな。
深くは聞きません。
大丈夫、時間もあまりとらせません!
村に伝わる滋養強壮の料理を振る舞いましょう」
一貞と一頭は、村長に案内され、村で一際立派な家へと向かった。
その間、彼らは気付けなかった。
村長が度々見せる笑顔の奥で底光りする、欲にまみれた悪意に。
「滋養強壮ですって!戦いが終わった後にぴったりっすね」
「シカは黙っていただきたい!
さ、さ、R殿……と、まだ名前を聞いてませんでしたな。
教えてくだされ、村を救った勇者の名を」
村長は肩越しに振り返った。
「俺の名前は……」
Rは、無感動な顔に、少しばかり誇らしげな色を覗かせた。
「小森新斗。Rさ」
ごく最近 遥か彼方の銀河系ってわけでもなく日本のどこかで――
- 8 :
- 《今日未明、首都高速道路で原因不明の爆発事故が起こりました》
その一室は白を基調とした、飾り気のない部屋だった。
微かに薬品の匂いがし、低い機械の唸り声がどこからか聞こえる。
そして、時折部屋の外で思い立ったように靴音が響いた。
そこは病院だった。
ベッドには横になり、少しやつれて見えるひっつめ髪の女がいる。
椅子には、息子らしい幼い少年が緊迫した面持ちでテレビに見入っていた。
《警察はR反乱軍の爆破テロとみて捜査を……》
「ここのところ毎日ねぇ」
ベッドに横になっている女が言った。
歳はというと、三十中頃だろうか。
女がさして興味のなさそうにニュースを聞き流しているのと対照的に、男の子は器用にもリンゴを剥きながら、真剣な顔で視聴していた。
「R反乱軍が関係ない人を巻き込むなんて、ありえないよ」
「あら、どうして?貞」
貞(ただし)、と呼ばれた男の子は、厳しい顔のまま、女に顔を向けた。
「だってRだもの。
Rは、名誉と誇りを大切にするんだ」
「まぁ、貞ったらRみたいなこというのね」
「僕はRだ」
貞はむくれ面で言うと、剥き終えたリンゴを慣れた手つきで切り分け、皿に盛った。
- 9 :
- 《政府はちかく、R反乱軍に対する緊急対策会議を国会で開くことを公表しました。
会議ではRに対する数々の法案が可決される見通しで……》
「また、R手党はRに不利な法律を作るのか」
少年は表情を曇らせた。
一年前の解散総選挙で、当時野党だったR手党が大勝してから、日本は目に見えて狂っていった。
ヤリチンが幅を利かし、Rは苦しい生活を余儀なくされたのだ。
「貞、母さんはRのことはよくわからないけど……危ないことだけは止してね」
母親が心配そうに言った。
その言外に含められた意味を感じとり、貞は苦笑しながら肩をすくめた。
「僕はお姉ちゃんみたいに強くないし、そんな勇気もないよ」
「佳乃……元気にしてる?最近連絡くれないけど」
「うん、バイト忙しいんだって」
「そう……」
母親がすまなそうな顔を、少年に向けた。
「あなたたちには迷惑をかけるわね」
「それは言わない約束でしょ」
努めて明るく笑うと、貞は何となしに時計の方を見やった。
「いけない、もう7時を回ってる。学校いくね、母さん」
「ええ、いってらっしゃい。朝忙しいのに、毎日こなくてもいいのよ?」
「そういうわけにもいかないよ。行ってきます」
貞は皿に盛られたリンゴを一欠片摘むと、ランドセルを背負い廊下へ出た。
行きはガランとした廊下だったが、帰りはナースや寝起きの患者で混み合っている。
「ねぇ、あの子?
今のご時世、Rを頑なに守ってる子って」
「えーマジー?Rー」
「Rが許されるのは、新生児室までよねー」
後ろから聞こえてくるナースの話し声に、自然と早歩きになる。
- 10 :
- 「でも可愛くない?
取っ捕まえてたべちゃおっかなー」
貞は顔色を変え、逃げるように病院をあとにした。
元々、Rは馬鹿にされてはいたが、差別されるほどでもなかった。
マスメディアや雑誌を通した、国を挙げてのプロパガンダ。
更に、R手党が出来る少し前から、急に勢力を拡大していった『ヤリチン教』というヤリチンの教えを絶対とする新興宗教団体の活動により、今の風潮が出来上がっている。
それもこれも、R手党のせいに違いない。
(いや、そもそも新党だったR手党の大勝自体おかしなことじゃないか…)
貞はぶつぶつと思案しながら、枯れ葉が散り敷いた舗道を歩いた。
このまま、R手党が独裁政治を続けると、Rは滅びてしまう――これは貞のみならずRたちの総意だった。
もっとも、国中に点在する反乱軍は国家という圧力の前に、悪戯に疲弊する一方で、何の成果も上げられていない。
小さな群れが数ばかりあったところで、巨大な怪物には些細な傷しか付けられないのだ。
(幾つもあるR軍をまとめられる……そんな救世主みたいなRが現れれば……!)
その時、貞の顔に、一抹の不安と大きな喜悦が上っていった。
向かい側から、拡声器を通した威勢の良い声が聞こえてきたからだ。
《R迫害反対ッ!!R迫害反対ッ!!》
《Rに人権を!!チェリーボーイに自由を!!》
《圧政を強いる政権党を許すなー!》
- 11 :
- 二十人程のRだった。
拡声器や『打倒!政権』と書かれた旗を手に、舗道を練り歩いている。
通行人は皆、高見の見物か、知らんぷりを決め込んでいた。
貞は先頭の人物まで走り寄りながら、
「あの!」
拡声器の声に掻き消されないように声を張った。
先頭の人物は、二十代前半といったところだろう。
テンガロンハットが特徴的な長身のRだった。
一瞬、そのRは射るような視線を投げ掛けたが、びくりと身を震わす幼い少年に、すぐ緊張を解いた。
「おい、そこにいると轢いちまうぜ。
チェリーボーイ」
太い声だった。
からかうような語調だが、嫌味はない。
チェリーボーイ、と言うあたり、貞のR力を感じ取ったらしい。
貞は、面長で顎髭が目立つ気さくな顔に、好感を覚えた。
「R反乱軍の方ですよね」
「ああ、そうさ。
俺たちゃここらで反政府活動をしている『三擦り楽士団』!」
と答えたのは、後ろの方で旗を持っていたRだ。
そういうこった、と長身のRが頷いた。
「名乗り遅れたな。
俺はこの冒険野郎共をまとめてる『R』の益垣だ」
貞は驚きに目を見開き、益垣と名乗ったRを見据えた。
『R』の二つ名を持つ益垣といえば、全国でも名の通ったRである。
ハッとして、自己紹介をする。
「僕は貞、芳野貞です」
「貞か、いい名だ」
「益垣さん、こんな人通りの多いとこで活動して大丈夫なんですか?
警察や、ヤリチンが来るんじゃ……ニュースでよくRデモ隊が捕まってますし」
「もっともな意見だな。
だがな、少しばかし勉強不足だぞ、少年!」
軽快に笑うと、益垣はくるりと踵を返し、大股で歩きだした。
彼の仲間達も追従する。
慌てて、貞も益垣の横に並んだ。
「確かにR手党はまだRを合法的に差別したり攻撃できる法案を通してませんけど……!
テレビや新聞で毎日のようにR反乱軍は逮捕されています。
何も悪いことしてないのに」
「確かに、な。
だが、九州……特に、この県に限っちゃある程度は自由が利くのさ」
- 12 :
- 眉根を寄せる貞を見て、益垣はさも可笑しそうに笑った。
「いいかい、貞?
R手党は、全国に息の掛かった腹心を置き、厳しい条例改正を敷いた。
風俗営業法、R防止法、児童ポルノ法の完全撤廃……お前は知らないだろうが他県は酷いってもんじゃないんだぜ」
ふと、益垣の額の裏に、凄惨たる光景が浮かんだ。
飛び交う風俗嬢。
倒れる仲間達。
アジトに送り込まれる刺客『デリバリー・R』。通称R。
暗い顔で顎髭を弄り、苦虫を噛み潰すように若い男は言った。
「だが、この地方を任された男は甘いんだよ。
その理由はここで生まれ育ったお前がよく知ってる事情だろう」
「諏八、大檎……」
無意識の内に、貞は零した。
諏八大檎――全国レベルのRだが、R手党に取り入り寝返った男である。
貞は、表情を暗くしたが、益垣は気付いていないようだった。
「奴に関しちゃ、政府の犬だという奴もいれば、何かわけがあったのだと擁護する奴もいる。
俺個人としては……いや、話がずれちまうな。
単刀直入に言うとな、この地方は諏八のおかげでかなり暮らしやすいのさ。これでもな」
「そうだったんですか……」
「あぁ、あとこの地方はスパッツマスクもいるだろ?」
どうやら益垣は、会話をせずにはいられない質らしい。
子供のようにキラキラと目を輝かせ、オーバーな身振り手振りで喋る。
「なんでも、単独でヤリチン僧兵一個中隊を壊滅させられるRらしいな。
現れたのはここ最近だが、今や、古株の俺より有名だ。
たくっ、羨ましいぜ!」
「スパッツマスク……僕も聞いたことあります。
凄腕のRだって」
- 13 :
- 「おっと、そうそう、諏八で思い出した。
今日、ヤリチン寺院の近くには、近寄らない方が身の為だぜ」
ヤリチン寺院、というのはヤリチン教の施設である。
表向きは慈善事業をしているが『ヤリチン僧兵』という兵士を抱えており、実質は武力組織といっても差し支えない。
益垣が声を低くし、続けた。
「署活系の周波数がおかしいんだ。
……どうやら、警察やヤリチン僧兵共が厳重な警戒体制を敷いてるらしい」
「え?」
貞が益垣を見上げる。
「それってどういう……?」
「いくら俺がRとはいえ、さすがに分かんねぇ。
一ついえることはだな。
ヤッコさん、かなりピリピリしてるってこった。
諏八の野郎、何を考えてるやら」
諏八、という名を聞くたびに、貞の顔は曇るようだった。
彼の何ともいえない複雑そうな表情を、益垣はちらりと横目で認めたが、何も言わなかった。
ほどなくして、交差点に差し掛かり、彼等は別れの挨拶を交わした。
「じゃあ、お話ありがとうございました。
僕はこれで……」
「あぁ。機会があればまた会おうぜ、少年」
益垣が、そうだ、と懐から何か小さなものを取出し、指で弾いた。
貞が掴みとったそれは、ギターのピックだった。
どこかの住所が刻んである。
「俺達の根城さ」
貞は酷く驚いた顔で、顔を上げた。
「会ったばかりの僕にそんな大事なこと教えていいんですか……?」
「たったいま信用に足ると判断した!
何か困ったことがあったらこいよ、茶と菓子くらいは出すぜ」
- 14 :
- 益垣は、仲間達を見やり、「異論はあるか!」と問い掛けた。
「ありません!」
「俺はアニキについていくだけでありやす!」
「いや、いつもながら軽率かと……四国に遠征した時もリーダーがふらふら女の子についていったせいで敵の罠にかかったし」
不満の声を上げるRに、益垣が怒鳴った。
「おいこらそこ!」
「は、はい!」
「こいつを信じる俺を信じろッ!」
「はいッ!!」
貞は、ピックをポケットにしまうと、礼を言った。
そして、学校へ遅れないように、足早に歩きだした。
ふと、先ほどの会話を思い出して、左手の方を見やる。
見る者に鉄のような強さと冷たさを感じさせる、堅牢な建物があった。
ヤリチン寺院だ。
壁一面は黒く塗られ、中庭から天を突くように塔が勃っていた。
教祖の男性器を模したデザインで、権力の象徴らしい。
貞はぶるりと身を震わせた。
確かに、その卑猥な塔は人を圧倒する何かをもっていたのだ。
ヤリチン寺院では今まさに、悪意がとぐろを巻き、街に襲い掛かろうとしていたのだが、
「学校へ行こう!」
そのようなこと、少年には知る由もない。
貞はヤリチン寺院から目を反らし、走りだした。
先程の寒気を振り切るかのように。
- 15 :
- 一心不乱で走ったため、貞が学校へついたときには、余裕が出来てしまっていた。
貞は胸中びくびくしながら、教室のドアを開く。
――その鳩尾に、一筋の液体が命中した。
「がっはぁ!?」
あまりの勢いに息がつまった。
身体をくの字に曲げ、咳き込む。
立ち上る雌の匂い……潮だ。
「やったー!命中したー!」
「美代ちゃん潮吹きうまいねー」
「次あたしがやるー」
教室ではクラスの女子達がスカートを捲り上げ、ドアの方へ蒼穹のヴァギナーを構えていた。
男子達はニヤニヤと下卑た笑みで、野次を飛ばす。
「女子ーやっちまえー!」
「Rはいい的だな!」
「ちょっとー!男子もいやらしい雄汁ドピュドピュ飛ばしなさいよー!」
貞はやっとのことで顔をあげると、状況を確認した。
「や、やめてよ、みんな……いきなり何を……」
絞り出した声は、痛々しいほど擦れていた。
貞の顔面に、第二波が飛来する。
衝撃――一瞬、意識が飛び、気が付けば彼は大の字になっていた。
『潮吹き』女性が性的なエクスタシーを感じるときに尿道から放たれる液体を潮というのは、読者の皆様もご存知のことだろう。
だが、この機能の真骨頂を知っている方は少ない。
Gスポットを刺激し、快感という弾丸を尿道に装填する。
甘美な蜜に指を滑らせ、やがて達した時、潮吹きは射精を越える威力を発揮するのだ。
史実には残されていないが、世界各地で潮吹き部隊が活躍したという逸話は、世界各地でまことしやかに残されている。
そしてこれらの逸話は、決して都市伝説などではないッ!
Wi●pediaには潮吹きの機能は不明と書かれているが、嘘である。
潮吹きの用途は、神が女性に授けた攻撃手段なのだッ!
- 16 :
- ジムに行って参ります
スレは落として構いません
>>3の方、本当にありがとうございます
- 17 :
- なんと熱い戦いなんだ少し感動した
- 18 :
- おもしろい
- 19 :
- 保守
- 20 :
- 保守
- 21 :
- 捕手
- 22 :
- ただいま戻りました
保守なんて身に余る光栄です
皆様、ありがとう…!ありがとう…!
いまスーファミ起動して、カジオー倒しながらご飯食べるので、再開は三十分後になりそうです
もしお暇なら、昨日書いた美少女「こっくりさんしようよ」もご覧ください
- 23 :
- こっくりさんは面白かった
- 24 :
- コックリさんもあなたでしたかw
- 25 :
- 名作の予感
- 26 :
- お待たせしましたッ!
再開しますッ!!
- 27 :
- 「う……」
呻く貞を助け起こそうとする生徒は、誰もいなかった。
皆、嘲笑するか冷たく見下ろしている。
たとえ、倒れている彼に同情したとしても、助けの手を差し伸ばす者はいないだろう。
この国ではRに加担する者もまた、Rなのだ。
「おい!こいつのR奪っちまおうぜ!」
男子生徒の笑い混じりの思い付きに、賛成の声が上がった。
貞が恐怖に顔を歪めながら、何とか身を起こす。
「やめてよ……それだけはマジ勘弁してください……」
彼は哀願したが、その表情は女子達の加虐心をそそる材料にしかならなかった。
彼女達が目を光らせ、左右に展開しつつ迫ってきた。
窮地に立たされた貞だったが、彼はどうやら、まだRであるべき定めだったらしい。
突如として、耳をつんざく轟音が響いたかと思うと、教室が揺れた。
にじり寄ってきた女子達が、悲鳴をあげながら床に突っ伏する。
一転して、静寂。
生徒達は皆、息を詰め、緊迫した表情で周りを伺っていた。
何が起きたのか分からない様子だった。
無理もないだろう。
彼らの平和な日常は、いま、文字通り音を立てて崩壊したのだ。
《校内の皆さん、先程、緊急R警報が発令しました!》
頭上から振ってきた放送室からの急いた声に、生徒達は再び、蜂の巣を突いたような騒ぎだす。
《皆さん、R災訓練通りに事を進めてください!
ハンカチで口を覆い、防災頭巾を装備して、とっとと校庭に出てください!
万が一、あの悪魔共が学校内に侵入してきたら……その時は先立つ不孝をご両親に許してもらってください!》
- 28 :
- 「ど、ど、R警報だー!!」
どこからか上がった恐怖の一声、瞬く間に学校内は恐慌状態となった。
生徒達は泡を食って、我先にと廊下へ飛び出した。
「に、逃げろ!
Rは三次元世界の住人の命を何とも思ってないんだぞ!」
「Rだ!Rが人類に仕掛けてきやがったんだ!
この街はおしまいだぁ!!」
阿鼻叫喚の中、最後列で一人落ち着いた少年がいた。
小柄な体格で、上着と顔から磯の香りを放っている生徒。
先程、R喪失を何とか回避した、貞その人である。
(R警報だって……。
ただの印象操作の一環じゃないか……)
貞は小さくツイートすると、一応、生徒達に倣って校庭に避難した。
彼が校内を出ると、既に殆どの生徒は外へ出ているようだった。
だが、決して避難訓練通りのようにはいっていない。
興奮冷めやらぬ生徒達が右往左往し、泣き出す者やRする者などもいる。
先に駆け出したのだろう、あちこちで怪我をした生徒が目立っていた。
「静まれ!ちゃんと並べ!クソガキが!
コラそこ!誰がRしていいと言った!」
教師でさえ、緊張に顔を強張らせ、まとまらない生徒達を恫喝混じりに叱りつけている始末だった。
- 29 :
- このままでは収拾がつかない――その時、落ち着き払った声が上がった。
「慌てるな、人の子よ」
それは叫んだわけでもないのによく通り、また、秘められた力も絶大だった。
生徒達は一人、また一人と声の主へ視線を向けた。
そして、口々に驚きの声を上げる。
「す、諏八さん!?
県知事の諏八さん!」
「ヤリチン教団九州統括部の最高司令でもあるらしいぜ!
これで安心だな!」
演説台の上にたったその男、諏八大檎は、権力を持つには若すぎる年齢だった。
まだ、十代後半といったところだろう。
短く刈り込んだ髪に、ナイフのような涼しげな目元が印象的な青年だ。
彼は能面のように感情を感じさせない表情で、生徒達を見下ろしていた。
横には、部下らしい教団の制服を着た黒ずくめの男が何人もいる。
色めき立つ生徒達の中で、貞は一人、言葉を失っていた。
諏八とは、もう近くで顔を会わす機会はないと思っていたのだ。
懐かしい記憶が走馬灯のように、走っては去っていく。
- 30 :
- 諏八大檎――かつて、姉共々よく遊んでいた幼なじみである。
貞には、兄のような存在であり、尊敬するRでもあった。
何しろ、彼のRとしての才能は類い稀なレベルで、最年少で貞下一武道会で優勝する快挙を成し遂げたほどだ。
その功績はルール上の試合だけに止まらず、若くして武勲も輝かしい。
一年以上前にヤリチン教団の急進派がこの街にやってきた時、彼ともう一人の少女が、僅か千のRを率いて勝利を収めた戦、『薩摩事変』。
それは、今も若いR達の血を熱くさせており、既に教科書に記されている現代の神話と謂われている。
「みんな……落ち着いて聞いてほしい」
諏八が懐から紙を取り戻し、抑揚のない、事務的な口調で続けた。
「身の程知らずなR共が街で暴れだした。
奴らはついに我々人類に、宣戦布告したらしい。
……見たまえ、あれがその狼煙だよ」
諏八が生徒達の後ろを顎でしゃくる。
生徒達は背後へ視線を走らせ、唖然とした。
そこにあったのは、彼らに非日常を賜わせた悪夢の序章だった。
ヤリチン寺院の象徴であるオチンポ・タワーが半壊し、黒煙を上げていたのである。
- 31 :
- 諏八は、感情を感じさせない語調で続ける。
「小競り合い程度ならいつものことだが、近頃のR共の動きは度を超えている。
連日ワイドショーを賑わす爆破テロ、国会議事堂の壁にぶっかけ、水道局を占拠しザーメン混入……他、極悪非道の所業。
連中はやることがきたないのだ。
このままでは、日本はあの悪魔共に食い物にされてしまう。
だが、安心してほしい。
ヤリチン寺院は抜本的な解決法として“R狩り”を政府に提案している。
我等は、Rの人権を剥奪後、総力をあげてR狩りに協力する方針だ。
皆、我等が美しい国ニッポンにのさばる奴らを、許していいのだろうか?」
少しずつ、生徒達の間に熱が広がった。
不安感や分からないものへの恐れが、彼らを突き動かしていく。
「よくない!」どこかで上がった一声。
人々はどよめき、熱の籠った声を張り上げた。
「ヤリチンこそ正義!!
少子化の権化を許してなるものかッ!」
「Rに正義の……否ッ!性器の鉄槌を!!」
「ヤリチン……ヤリチン!……ヤリチンッ!ヤリチンッ!ヤリチンッ!」
- 32 :
- 貞は蒼白な顔で、相変わらず無表情な諏八を眺めていた。
漠然とした意識で、色々な思案が浮かぶ。
オチンポ・タワーに誰が爆撃したんだ?
いや、Rの権利を剥奪して、R殲滅戦?
……そんな恐ろしいことを話しているのに、なんで人々は狂ったように、喚声をあげているんだ。
「本件に関しては、警察と……れん……れん…けい?……連携し、民間のヤリマン傭兵部隊が既に出動している。
ヤリチン教団支部からの僧兵も時期に現場に到着し、連中をすぐに……すぐに……えー……」
諏八は隣にいる部下らしい教団の制服を着た男を小突いた。
自分の持っている紙を指差し、なにやら耳打ちされている。
「失礼、続きだ。
ヤリチン教団支部からの僧兵も時期に現場に到着し、連中をすぐに殲滅する。
私もこれから現場に向かわなくてはならない。
子供達、先生の言うことを良く聞いて、気を付けて家に帰れ。
私からは以上だ」
盛大な拍手が上がったが、諏八は笑顔一つ見せず、最後まで氷のように冷たい態度だった。
彼は演説台から降りると、ヤリチン教団員を率いて、さっさと行ってしまった。
昔は明るく優しい憧れのRだったのに、と貞は顔を歪ませる。
- 33 :
- それから、教師が生徒をまとめ、地区単位で下校することとなった。
貞の地区は大所帯だったが、それでも歩く生徒達の顔は不安そのものだ。
街はやはり、人気が無い。
張り詰めた空気が息苦しく立ち籠め、立つ風は戦慄を孕んでいた。
「いたぞ!Rだ!逃がすな!!」
時折、遠くで上がる怒号が、ヤリチン教団兵とRの死闘を物語っていた。
一人、また一人と生徒が減り、半分に差し掛かったところで貞の家に着いた。
彼を迎えたのは、小柄な少女の抱擁だった。
「貞ちゃん、心配したのよ。
外が騒がしくて……貞操は無事?」
姉弟とすぐに分かる貞によく似た可愛らしい顔立ち。
だが、彼女のそれは幾分勝ち気に見える。
背中まで伸びたやや癖のある髪もまた、弟と同様に黒みがかった栗色だった。
少女は名を芳野佳乃。
薩摩事変で諏八と肩を並べた、伝説の少女その人である。
ヤリチンを購買層とした雑誌『週間R膜ジャンク』で、懸賞金が賭けられていたほどだ。
かつて、最強とまで謳われたRだった。
そう、Rだったのだ。
- 34 :
- 「うん、今朝マワされそうになったけど」
「そう……ごめんね。
お姉ちゃんバイト忙しくなければ、助けてあげられたのに……!」
「そんなことお姉ちゃんが気にすることじゃ……」
「貞」
佳乃は弟を離し、神妙な顔で見つめた。
疲れ切り、やつれた顔だ。
彼女は連日連夜、朝方まで病床の母親に代わって働いていた。
「今はRにとって物凄く辛い時代よ。
それでも強く……強く生きるの。
踏まれても踏まれても実をつける、麦のように」
「うん。わかってるよ」
「でもあんたを犯したくなる子の気持ちも分かるの。
眼球舐めてもいい?」
「やめてよ」
- 35 :
- 貞は椅子に座り、一息吐いた。
かじかんだ手を擦り合わせる。
姉はというと、調子っぱずれな口笛を吹きながらココアを作っているようだ。
「そういやさ、お姉ちゃん」
「何よ?もしかして……いけないわ!
あたし達、姉弟じゃない……!」
貞の目に一瞬、迷いが浮かんだ。
言うべきか、言わざるべきか。
だが、湯気の立つコップを二つ持ってきた姉を見ると、知らず知らずの内に言葉が零れていた。
「今日……大檎兄に会ったよ」
佳乃の眉が心なしか、動いたように見えた。
彼女はそう、と呟くとココアを啜る。
「あの糞は……今も、のうのうとヤリチンの犬を?」
貞は答えられなかった。
彼は姉が諏八を、幼なじみにしてかつての戦友を良く思っていないのを知っていた。
誰よりもRでありながら、ヤリチンに加担する。
それは、佳乃にとって許せないことだったに違いない。
何故なら、彼女は貞操を愛しながらにして、守るべきそれがもうないのだから。
そう、佳乃はもうシンデレラではない。
幸せは誰かがきっと運んでくれると信じていないのだ。
- 36 :
- 貞がバツの悪そうな顔をして、何も言えずにいると、助け船を出すかのようにサイレンが鳴った。
《住民の皆様、緊急R警報が解かれました。
R共は我等がヤリチン教団が、5.56ミリカラシニコフ弾で吹っ飛ばしてやりました。
これからもヤリチンを、ヤリチンをどうぞよろしく。
あなたの街の平和の為に。ヤリチンです》
R警報は始まりが不意であったように、終わりも不意であった。
貞はココアを呷ると、逃げるように玄関へ歩いていった。
(益垣さん達は無事だろうか……)
何よりも彼は、今朝会ったR達が気掛かりでもあったのだ。
佳乃が顔をしかめて、その小さな背中に声を浴びせる。
「ちょっと、まだ危ないって。
ヤリチン僧兵がうろついてるかもしれないわ」
「大丈夫!すぐに帰ってくるよ」
貞は靴を履くと、外へ飛び出した。
- 37 :
- 下校した時と違って、ちらほら人の姿が見える。
好奇心にかられ、危険を承知で外へ出たのだろう。
貞はポケットからピックを取り出し、住所を確認した。
どうやら、海沿いの工場区あたりらしい。
(歩いて30、40分かな)
早歩きで目的地に向かう少年の表情にふと、陰りが差した。
先程垣間見た、姉の名伏し難い表情が、彼の心中に引っ掛かっていたのだ。
そしてそれは、姉がR喪失した日を、鮮明な色を持って思い出させた。
- 38 :
- 半年前――姉は血塗れで帰ってきた。
ヤングサ●デーばりにあちこちが破れた服。
激しい戦闘を匂わせる赤く染まった拳。
顔と髪も、誰かの返り血で赤黒く光り、
「あたし……汚れちゃった……」
放った第一声は、そんな言葉だった。
慌てふためき警察に電話にしようとした貞を、姉は穏やかに制止した。
「もういいの」
姉の顔は、疲れきっていた。
繰り広げられたのであろう死闘か、それとも諦めからか。
貞は結局、何も出来なかった。
警察はヤリチン寺院の魔の手が伸びていたし、何より、姉の尊厳をこれ以上傷つけられなかったのだ。
(お姉ちゃんは多分……Rとしての誇りをもってヤリチンと闘い、ヴァージンを散らしたんだ)
そう結論付けた。
だが、姉のことを思うと、いたたまれない心持ちだった。
あんなに強い姉が、ヤられてしまうなんて。
――貞は暗澹とした気分と過去を振り払うと、目的地の細かい位置を調べるため携帯を開いた。
- 39 :
- 地図アプリを開き、住所を打ち込んだとき、よそ見をしていたせいか人にぶつかってしまった。
「わっ、ごめんなさい」
「なんだ、お前?
テメ、芳野じゃねぇか!」
貞は顔面蒼白となった。
ぶつかった相手は、同じ学校の上級生だったのだ。
上級生は貞を見るやいなや、血相を変えて、たじろぐ。
いつもと違う様子だが、貞にそんな機微に気付く余裕はなかった。
「おい、なんだ、どうした?」
路地裏から上級生の連れらしい少年がひょこっと顔を出した。
その表情が、みるみるうちに凍り付いていく。
「五年……三組の……芳野貞……!
Rを持つ者だ!」
R、という貞は言葉にハッとした。
そうだ。自分はRなのだ。
いまや、完全に人から恐れられ、忌み嫌われる対象なのだ。
上級生二人は、最初は貞に驚いたようだが、貞自身がか弱い少年というのを思い出すと、すぐさまいつもの調子を取り戻した。
- 40 :
- 「Rは……Rは断罪せよ!!」
「ヤリチンマンセー!」
上級生二人は目に怒りの炎をちらつかせ、貞に飛び掛かった。
無論、まともに抗えるはずもなく、貞はあっという間に地面に引き倒された。
「い、痛い!僕が何を……!」
「うるせぇ!街の平和を脅かすRめ!」
「粛清をッッ!!!世にはびこる悪魔に粛清をッ!!!」
上級生達は狂ったように叫び、股間をいきり立てた。
目は血走り、息は荒い。
恐怖と怒りからか、理性を忘れているようだ。
上級生達が次に起こしたアクションは、意外なものだった。
なんと、貞のズボンを剥ぎ捨てたのだ!
「う、うわぁああああ!!」
貞の絶叫が、人気のない路上に谺する。
上級生達は頓着せず、ただただ息を呑んだ。
彼の外気に曝された尻は、想像を絶するほど見事なものだったのである。
陶磁のように白く、触らずとも分かる瑞々しい肌。
丸みを帯びたフォルムは、少年とも少女ともつかない、どこか背徳的な可憐さがあった。
彼は時代が時代なら『傾国の美尻』と呼ばれ、歴史に官能的なエピソードを添えたに違いない。
- 41 :
- 「禁域へ……!禁域へいざ行かん!御先祖様ごめんなさい!」
「ヤリたい子とヤッたもん勝ち!青春ならッ!!」
「辛いー時はいつーだってーッ!
そばにいるからァーッ!!」
「楽しそうじゃねえか!交ぜろよ!
夢はでかくなけりゃ、つまらないだろ!!」
「wow!wow!」
聞き慣れない声に、貞が身を捩って顔を上げた。
その顔は絶望に歪んだ。
上級生以外にも、何故だか四、五人増えていた。
貞は知らなかったが、黄金率を満たした彼の美尻は、老若男女問わず人を呼び寄せる魔尻でもあったのだ。
「わけが分からないよ……!
助けて……お姉ちゃん……誰か!」
「――待てい!邪教に魂を売った非R共め!」
その時、空から勇ましい声が降ってきた。
神様は貞のRだけでなく、RRまで面倒を見てくれているらしい。
不自然にくぐもっているが、力のある声に、魔尻にとりつかれた者たちが動きを止めた。
そして一様に、上を仰ぎ見る。
電柱の上に、男がいた。
逆光を受けていて姿形を確認しづらいが、頭をすっぽり覆っている黒い布は、饒舌に主を物語っていた。
「ス、スパッツマスクだと!」
「伝説のRだっていう?おいおい冗談だといってくれよ相棒!」
「いや……!あの頭を覆い隠すスパッツ……間違いねぇ!」
- 42 :
- スパッツマスクは目に見えて動揺する敵などどこふく風で、飛び降りた。
貞を囲っていた尻フェチ達が、小さな悲鳴を上げて後退る。
貞は、現状に思考が追い付かず口をあんぐりと開けていたが、目の前に差し出された逞しい手に、我に帰った。
「あ、ありがとうございます!」
「なに、気にするな。
これもヒーローのつとめだ」
スパッツマスクはスパッツ越しのくぐもった声で言うと、貞を助け起こした。
そして彼は、キッと尻フェチ達に向き直った。
尻フェチ達がまた一歩、後ろへ退く。
彼らの戦意は、もう挫けているようだった。
目の前のスパッツ男に威容を感じ、足が震えるのを抑えられなかったのだ。
例え、スパッツマスクがブランドのない無名のRだったとしても、対峙した瞬間に彼らは実力差を悟り、変わらない結果を生んだに違いない。
『伝説のR』『R界のヒーロー』『救世主』それらの名に違わない、圧倒的な風格とR力。
貞は、隣に立つ男に、憧憬の念を感じずにはいられなかった。
この人こそRだ、心からそう思った。
「……何者も私には勝てん。
君たちはおろか、ヤリチン僧兵も警察もな。
一体、何がそう結論付けるのか?
私が強いから?Rだから?否、違う!
理由は一つ。
『絶対』を約束してくれるシンプルな論拠。
それは私が…スパッツが大好きだからだ!」
- 43 :
- スパッツを突き付け、
「行け。このスパッツは薄汚れた血にまびれるためではなく、同胞を守るためのものだ」
それが、彼が浴びせた言葉だった。
尻フェチ達はすごすごと去っていき、最後まで貞の尻を恨めしげに睨んでいた。
「あの、本当にありがとうございました、スパッツマスクさん!
感動しました!R過ぎます!」
「ハハハッ、自分はただ、ブルセラ帰りに通りすがったスパッツフェチに過ぎないさ」
スパッツマスクは、自分を振り仰ぐ少年に言った。
黒い伸縮性のある生地に隠されているために、表情は伺い知れない。
だが、その声色は優しかった。
- 44 :
- 「仲間は守る。それが私のR道だしな」
「R、道……?」
「あぁ、そうだ。
……私はよい子の味方だ。
ピンチの時はいつでも呼ぶがいい。
いつだって駆け付けてやるぞ――ニュートリノの速さでな!」
そう言い残すと、貞の返答を待たず、去っていく。
その碧落を思わせる大きな背中は、どこまでもRだった。
残された少年はしばし、呆然としていたが、
「か、かっこいい……!」
意図せず自分の口から零れた言葉にハッとすると、赤面しながら押し黙った。
そして、ズボンを穿くいとまも無いというかのように、フルチンで走りだした。
- 45 :
- 彼の目にはこれまでにない強い光が宿っている。
その光にチラチラと、決意のようなものが見え隠れしていた。
市街地を抜け、少年の行く先には、煙を吹く建物や倉庫の並ぶ工場区が広がった。
彼は息を上げながらも、止まらない。
何かに突き動かされるかのように、ひた走った。
ほどなくして、彼は寂れた倉庫に入り込んだ。
中にいた屈強そうなRが、走り込んできた貞を見て目を丸くする。
「敵襲か!?」
「いや、Rの子供だ。
……!な、なんて尻してやがる!」
貞は小さな胸を激しく上下させながら、ある人物の姿を認めた。
今朝出会った『R』の益垣である。
貞は血気にはやり、考えもまとまらぬうちに言った。
放たれた言葉は、彼自身にしても意外なものだった。
「僕を――僕をR反乱軍に加えてください!」
R道――少年は考えたこともなかった。
姉に守られ、与えられたRを胸に抱えて生きてきた。
離すまいと必死で、それ以外に頭が回らなかった。
だが、そのRをただ守るだけでなく、他人を守る為の剣にしたいと思ったのだ。
気付けば、少年は走り出していた。
無垢な願いを抱いて。
行き先を知ってるのは、小さなスニーカーだけだ。
- 46 :
- Rがあればヤリチンもあり、Rがあればビッチもある。
リア充があれば俺もあるように、光があれば病みもある。
全てはコインの表と裏のように、二つの顔を持っているのだ。
街もまた、例外ではない。
今日も“子供はもう寝る時間”になると、昼間に見せた風貌とは違う姿へと変わる。
「イチゴで二時間!ゴム有り本番だよー!」
「オニーサン、チョト、ヨットイデ。安クスルヨ」
「シャチョサン、シャチョサン」
繁華街は香水を匂わす女と、酒気を散らす柄の悪い男で雑踏が出来ていた。
R手党は一年前、各地方自治体に息のかかった者を置き“ヤリチン条例”を施行させた。
風俗営業法、R防止法、児童ポルノ法の完全撤廃。
加えて、R手党はヤリチンに有利な法案を強引に通していった。
ヤリチン支援法、R税などだ。
……結果、これらの法律が、後々教科書にも載ることになる『ソープ産業革命』の発端となったのである。
- 47 :
- これらの政策により、爆発的に性産業は拡大したが、治安は急激に悪化した。
ヤリチンや風俗産業が幅を利かし、力を持て余したソープランド同士が利権をめぐって争うようになったのだ。
性的な意味で弱肉強食が当たり前である時代の到来に、人々の倫理観は音を立てて爆発した。
「うぇーん!うぇーん!
お家に帰してよー!」
「ちょっちだけ!ちょっちだけ!ね?
先っちょだけだから!お姉さんに任せて!ね?」
強姦!姦R!セクハラ!性的暴行!逆R!おねショタ!
犯罪が罷り通るこの世の中に、Rの居場所はない。
更に追い討ちを掛けるかの如く、富、名声、力!全てを手に入れた風俗王、ヤリチン寺院の教祖が放ったといわれる一言が、人々を夜の街へと駆り立てた。
「俺の子種か?
欲しけりゃくれてやる
テクを磨け!!
俺の耳に名が届くほどの嬢は、抱きに行ってやるッ!!」
女達は、繁華街でシンデレラストーリーを夢見続ける。
世はまさに、大風俗時代ッ!!
- 48 :
- だが、風俗街の勢力図で最強なのは有名ソープランドではなかった。
信じられないことに、それは地味な酒場だった。
繁華街の外れにある二階建の建物の一階に店を構えている。
その店内は古い木造だった。
あちこちから上がる紫煙が、明かりに白く浮かび上がっており、ダウナーな曲が余計に古めかしさを助長させている。
雰囲気はというと陰気だが、どこか鋭さを孕んだ空気が立ち籠めていた。
もちろん、ただの酒場ではない。
壁には、このような貼り紙があった。
『業務拡大により急募!Rハンター募る!
政府のヤリチン部隊へ協力して、Rを狩ろう!
国家へあだなす逆賊に、遠慮はいらない。
奴等にいるのは鉛の弾だけだ!
週2〜3からでOK!
正規雇用もあります!
学生から主婦まで働けます!
アットホームな職場です!
電話番号×××―××××
※武器はこちらで支給致します。大剣、片手剣、斧、ガンランス等取り揃えております。
※ランクの高いRの任務にはライセンスが必要です
※狩りにいこうぜ!』
表向きは酒場だが、その実態は全国にチェーン展開している、Rハンターズギルド……そう、Rに飢えたハンター達の斡旋所なのである。
ヤリチン条例を犯したRや、テロR、R税を滞納しているRはブラックリストに載り、賞金が懸けられる。
賞金カリ首、と呼ばれる彼らは日夜、彼女達ヤリマン傭兵と戦う運命にあるのだ。
無論、強力なRほど賞金も高く、一攫千金も夢ではない。
ハンター達はここを拠点に、今日も金と名声に夢を馳せるのだ。
- 49 :
- 「おい……なんか掴めたかい?
三日前、九州大寺院で起きた、爆破テロの話」
「あぁ、全然。ニュースでいってること以上は何にも。
ていうか私達、ヤリマン傭兵部隊として行ったのに、だぁれもいなかったじゃないのぉ」
「なんかおかしくない?
他のハンターの先輩は情報規制なんじゃないか?って言ってた」
とある、パーティを組んでいるらしい三人組のハンター達が、お座敷席で声を潜めて言った。
二十代半ばくらいの豊満な女と、十代後半くらいの勝ち気そうな女、そしてランドセルを背負った少女だった。
※コスプレです。この物語に出てくる人物は全員18歳以上です。
- 50 :
- 「なんでも、ニュースによれば、どっかのRがやらかしたんだって。
そうだとしたら誰だろう?
大寺院の厳重な警備を掻い潜れるのは『英雄』のスパッツマスクしかいないよなぁ、やっぱり」
と、勝ち気そうな女。
「でも、アイツは非合法のR狩りをするヤリマン傭兵をいためつけたりするくらいで、かなり穏健派のRって聞くしなぁ」
と、小学生のコスプレをした少女が反論した。
「じゃあスパッツマスク以外か?
『R』の益垣あたりならやれそうだが……奴もハト派か」
「『鉄チン』の金田『エロゲマスター』の武原あたりも、ひょっとするとやれそうじゃない」
「色んな噂が飛び交っててなんともいえないわねぇ」
彼女達は、今世間を大いに賑わしているヤリチン寺院事変を肴に酒を酌み交わしているようだった。
ヤリチン寺院爆破テロは、全国で大々的に報じられていた。
一地方の寺院全てを統括する、日本に八つしかない『大寺院』がテロにあったのだから、当然だ。
テレビは連日、Rを辱めるニュースを流し、歌番組等はヤリチン讃歌である『Y-POP』がランキングを飾っていた。
世論は『Rは悪』で一色だというのは言うまでもない。
- 51 :
- 「まぁ、これを名目に近辺のR反乱軍は“有害R”としてブラックリストに指定されたってこったな。
なんでも、聞いた話じゃもうすぐ、政府は一般Rの人権さえ取り上げるっていうし。
仕事に追われそうだぜ」
「またお仕事で忙しくなるねー!
うーん、今からでも濡れちゃうなー!」
「この街も本格的に狩場になるのねぇん。
ゾクゾクするわぁ」
と、言った若い豊満な女が「でも」と表情を曇らせた。
「スパッツマスクの奴が黙っちゃいないわねぇ。
無駄な争いはしないといってもぉ、アイツはRとしてこの街の陥落を防ぎにくるに違いないわよぉ」
「日本最強のRなんでしょ?
やだなぁ、なんでこんな街にいるんだろ」
- 52 :
- 「……ちと小耳に挟んだ話なんだが……」
一人が、声を潜めていった。
後の二人は、興味津々といった様子で顔を寄せる。
「なんでも、既にスパッツマスクの対策は講じられてるらしい。
岡田さんとこの……『SOL団』の一人が話してくれたんだが。
ほら、連中だいぶギルドに借金してるだろ?
ツケやら武器やら弾薬やらツケやらでさ。
その借金チャラを条件に、スパッツマスク追討ミッションを強制されたらしい」
話を聞いた二人は、サッと顔を青ざめた。
「こ、怖いなぁ。
誰もやりたがらない任務を強制なんて」
「やっぱりあの店長は怖いわねぇ、私の胸睨むしぃ。
SOL団は練度が高いけどぉ……無理よ、相手が悪いわぁ。
奴に勝算があるやつなんて……」
- 53 :
- 豊満な女が、何かを言い淀んだ。
三人は、意味ありげに顔を見合わせる。
「……『山鯨』」
三人組の女傭兵から出た言葉が、重なった。
ランドセルを背負った少女が、畏怖とも嫉妬ともつかぬ表情で零した。
「山鯨……アイツなら、スパッツマスクを倒せるかも……」
「確かに、ギルドも最終兵器痴女として見てるだろうな」
三人組は口をつぐみ、酒を呷った。
そうすれば、脳裏に浮かんだ山鯨という人物を酒で洗い流せる、というかのように。
「――あ、すみませぇん。
今日予約してたRまだきてないんですけどぉ」
幾分気を取り直した様子の豊満な女が、脇を通り掛かった店員に声を掛けた。
店員は、慌てて厨房へ引っ込む。
やがて、台車で運ばれてきたのは、亀甲縛りが施された全裸の男だった。
- 54 :
- 男は喚くが、店員は取り合わず、慣れた手付きで座席に男をセッティングした。
「や、やめろ!!
俺はまだ卒業したくないッ!」
「いいわぁあ!そそるわぁあ!!
お姉さんのアソコが波浪注意報よぉ!!」
女が息を荒げながら、身動きのとれないRを見下ろす。
やおら、スカートを穿いたままショーツに手を掛けた。
捲れあがったスカートから覗く白い脚。
肉感的なそれは、むせ返るほど大人の芳香を放っていた。
Rは無意識に喚くのを止め、喉を鳴らした。
「ふふふ、人に嫌がることしちゃダメよね、だから……されて気持ち良いことしてあげるっ!」
他の仲間二人も、思わぬ余興にニヤニヤと笑う中、女はショーツをゆっくりと下ろした。
絹擦れの音とともに、艶っぽい脚を白い布が滑り落ちていく。
Rは惚けたように眺めていたが、我に返り、叫んだ。
「やめろビッチ!!俺は――」
「強情ねぇ。そんなにRが大事だったら名前でも書いてなさいよぉ」
女は丸まったショーツを素早く男の口に押し込んだ。
- 55 :
- 男の顔が喫驚に歪む。
女は妖艶な笑みを浮かべ、男の耳に口付けを落とすと、すぐに腰を沈めた。
くぐもった悲鳴が、響く。
「あはぁあ!これよこれぇえ!!
RがRを失った鳴き声ェ!最高よォォオ!!
Rさいっこぉぉぉおおお!!」
男は白目を剥き、気を失っていた。
今宵もまた、一人のRがここに散ったのだ。
女は尚も腰を振り、Rらな水音が店内に響き渡る。
女の仲間の一人が、頬を紅潮させ、もじもじと股をくねらせた。
「すみませーん。
あたしもRお願いします……」
「お前も頼むのかよ、んじゃあたしも」
「あ、すみません。
こっちにも、三十年もののビンテージR二つ!」
「こっちも生五つ!」
「こっちにもお願い!
新鮮なショタR、ゴム抜きで!」
R靡な雰囲気にあてられてか、店内からRの注文が殺到した。
一度注文が入ると、Rは飛ぶように売れるのだ。
- 56 :
- カウンターで静かにグラスを磨いていた少女が成り行きを見つめ、目に愉快そうな光を湛えた。
少女は、すらりと背が高い。
年齢はまだ十代中盤といったところだろうか。
首の後ろで結わえている濡鴉色の髪は腰まであり、顔立ちは息を呑むほど整っていた。
絶世の美少女といってもいいだろう。
だが、気になる胸はというと、そこに存在していなかった。
「店長!」
少女に、慌ただしい様子のヤリチン店員が言った。
「Rがバカ売れしてるせいで売り切れの心配が……」
「分かっております」
少女は凛とした声で、大の大人である店員に応えた。
「狼狽しなくとも在庫数の状況は把握しています。
最寄りのR市にRを十貞ほど注文してください。
届くまでは、今の在庫状況でも保つでしょう」
ヤリチン店員は了解すると、一礼して奥へ引っ込んだ。
- 57 :
- 少女はあちらこちらで上がる水音を意に介さず、グラス磨きの作業に戻った。
初めてこの店へ足を運んだ者は、十中八九こう思うだろう。
“何故このような年端もいかない少女が、ハンターズギルドを切り盛り出来ているのか”
裏社会は嘗められたら終わりである。
荒らくれビッチや荒らくれヤリチンだらけの世界で、彼女の年齢と胸部は、大きなアドバンテージだ。
だが、その疑問は店長と視線を合わした瞬間に露と消える。
暗く深い、底の見えない双眸。
形容するならば、静かな冬の湖面だろうか。
一見すると美しいが、その深淵を覗き込めばこちらが引き摺り込まれてしまいそうだったのだ。
彼女は確かに、見るものを圧倒する何かを持っていた。
胸にいく栄養がカリスマにいったのだ、と専らの噂だった。
「あら」
端然と作業を続けていた彼女が、ふと、顔を上げた。
表情に、含んだような笑みが上っていく。
彼女が薄い胸の内に何を感じ取ったのか、誰も気付くこともないまま、その瞬間は訪れた。
- 58 :
- ドアチャイムが、空気を揺らした。
「オマンオマン♪」
小気味の良い音の後、店内に小柄な人影が伸びる。
誰かが息を呑んだ。
皆がまさか、といった形相で出入口へ視線を走らせた。
その顔が、Rー中にドアをノックされた貴方のような顔へとなっていく。
ただ一人、店主を除いて。
「今日は賑わってるようね」
もしも神様がいたとすれば、神はよほどの皮肉好きと見える。
入ってきた人物は、本来、Rに味方する立場であるはずの少女だったからだ。
小柄な少女は、上下とも白いジャージというラフな格好だった。
気の強さを匂わせる動きで、カウンター席へ向かう。
彼女が歩く度に、やや癖のある豊かな髪が揺れた。
自分を見て、ひそひそと話すハンター達は気にしていない様子だった。
少女は、グラス磨きをしている店主の前に腰掛けると、
「いつもの」
店主の目に映ったのは、可愛らしい姿で『山鯨』という厳めしい二つ名を持つ少女だった。
「畏まりました。芳野様」
- 59 :
- すみません、お風呂入ってCODやろうと思います
- 60 :
- しえん
- 61 :
- ほしゅ
- 62 :
- 保守
- 63 :
- DEI48を彷彿とさせる奇才だな
- 64 :
- 再開致します
伝説のオウガバトルしながら書くので、投下スピードは少し遅いかもしれませんが、ご容赦ください
(*^_ ’)保守、本当にありがとう!
物凄くうれしい!
- 65 :
- 芳野佳乃は、皆が恐れる店主相手に、高慢ともとれる態度で座っていた。
頬杖をつき、勝ち気な瞳で見事なカクテル作りを眺めている。
店主は蜂蜜色のトロリとした液体をミキシング・グラスへ注ぎ、あか●げ、破●王DX、源●堂、●帝、仁王●ちを投入した。
常人には気が触れてしまうほどの精力増強効果に違いない。
それをステアーしながら、芳野へと視線を移した。
例の相手を圧倒する、あの眼差しだ。
この眼差しを向けられる度、芳野でさえ見えない手で腹の中を探られているような錯覚に陥る。
気付くと芳野は、濡れていた。
「お待たせいたしました、芳野様。
『チェリーブロッサム、気まぐれ店主の精力剤オールスターズ風味』でございます」
コースターに置かれた異臭を放つそれを、芳野は豪快に呷った。
口元を拭い、ニヤリと笑った。
「ところでマスター、仕事ある?」
「えぇ、もちろん。
このギルドの管轄区全てのR反乱軍がリスト入りしましたので」
言いながら、Rが記載された紙の束を芳野に手渡した。
- 66 :
- 芳野は受け取ると、さして興味のなさそうに何枚かに目を通した。
『二次元旅団』
ランクB 創設者である鈴木が引退してから衰えたが、未だ指折りの反乱軍
人員は二百貞を越えるらしい
『三擦り楽士団』
ランクA Rの益垣率いる少数精鋭の反乱軍
穏健派で、デモ活動に加え音楽活動もしている変わり種のR集団
『スパッツマスク』
SS 一人で活動している
正体不明
最強のR
芳野は紙束に目を落としながら、考え深げに言った。
「ふぅん、どうせ三日前のアレで……でしょ」
アレ、とはヤリチン寺院に対するテロ行為のことだろう。
芳野は紙束から顔を上げ、酷薄な笑みを浮かべた。
「バッカよねぇー、そのR。
一時の感情に任せて、みんなに迷惑ぶっかけして。
ま、そのバカのおかげであたし達ヤリマンに仕事と大義名分が出来たんだから感謝しないとね」
「えぇ、まったく」
マスターは同意し、僅かに口角を上げた。
- 67 :
- 芳野は「これに決めた」と、軽い調子で紙束から一枚選びぬいた。
「『二次元旅団』ですか」
マスターがそれを見て、無感動に言った。
「難度はB。いまはリーダーを失っていますが、これまでかなりのヤリマン傭兵達が返り討ちに遇いましたわ」
「そいつにするわ。
スイス銀行のあたしの口座に振り込まれたのを確認してから、仕事に移るんだからね!」
「了解致しました」
店主は空になった芳野のグラスに酒を注いだ。
芳野に動揺していたRハンター達はもう気を取り直したのか、いつもの調子に戻っている。
芳野は一杯目と違い、静かに杯を傾けて飲んだ。
彼女らしくない、物憂げな様子だ。
その目には、何かしら厭わしい想いが浮き沈みしていた。
- 68 :
- マスターは彼女の胸中を知ってか知らずか「芳野様」と話を切り出した。
「いま、わたくし達に危難が差し迫っております」
「危難?」
芳野がやおら顔を上げた。
「えぇ、スパッツマスクをご存知ですね」
「そりゃ、知ってるわ。
あの武闘派集団『女子十二尺棒』、『アヘ&ピース』精鋭ユニット『ももいろローター』、『パフーパフガールズ』を破ったとかでね」
「えぇ、奴は間違いなく日本最強のRにして、政府を揺るがす歩く国難です。
膨大な懸賞金や最強の噂を聞いて、全国からハンターが狩りにきていますが、並みのヤリマン傭兵達をいくら揃えたところで彼の前には無力でしょう」
芳野はマスターの無表情を見つめ、嘆息混じりに言った。
「読めてきたわ。
……けど、あたしはパスよ」
「あら、どうしてですか?
スパッツマスクがR界最強なら、貴方はヤリマン界最強。
彼を倒せるのは、貴方しかいない」
- 69 :
- 「確実に勝てる相手しか戦わない」
芳野はぴしゃりと言い返し、声色を低くし続けた。
「――Rを失ったあの日、あたしはそう言ったはずよ」
マスターの言葉を待たず、すっくと立ち上がった。
芳野は踵を返すと、振り向きもせずにコインを弾いた。
彼女の後ろで、彼女が空にしたグラスにコインが入った音と、ドアのチャイムが鳴ったのは同時だった。
- 70 :
- 同時刻、芳野のいた酒場から遠く離れた場所。
厚い雲が月を隠し、そのデパートの屋上は夜陰に包まれていた。
夜に抵抗する繁華街と違い、灯りはない。静かな闇が広がっていた。
そこで、何かが動いた。
男だ。
始めからそこにいたのか、それともいま現れたのか定かではないが、男が佇んでいた。
「ずいぶんと腐ったな、この街も」
男は吐き捨てた。
フェンス越しに街を見下ろすその顔はスパッツで覆われ、夜に溶け込んでいた。
R界のヒーロー、スパッツマスクである。
「だいぶ保ったといえるが……ここもじき、肉欲に沈む……」
彼は、頭を前に傾けた。
そのマスク越しに何を思ったのか、不意に横に飛び跳ねた。
一瞬前まで彼がいた場所が、音を立てて弾ける。
スパッツマスクは空中で体勢を整え、襲撃者を確認した。
OLと思わしい格好の若い女が、ドアの傍で不適な笑みを浮かべている。
スカートからすらりと伸びる脚――その間から、ぽたぽたと滴が落ちていた。
- 71 :
- 「やるわね、スパッツマスク。完全に不意を狙ったはずなのに」
「おいおいなんだよネエちゃん、藪から肉棒に」
「貴方の“R”を貰いにきたのよ」
「Rハンターズギルドのまわしもんか、ご苦労なこったぜ」
スパッツマスクはくぐもった笑いを漏らすと、視線を走らせた。
OL以外には、誰もいないようだ。
「一人できたのか?
この私も舐められたものだな」
「まさか。貴方相手にソロプレイは想定してないわ。
私達は世界をOLで盛り上げるビッチ集団『SOL団』」
OLがこれを見よがしに右手をあげてみせる。
彼女は指を盛大に鳴らした。
呼応するように、フェンスが激しく揺れた。
スパッツマスクが目をやると、フェンスのあちこちにピンクローターが巻き付いていた。
ピンクローターを攀じ登り、OLの仲間らしい女が次々と屋上へ躍り出てくる。
十六……十七……計二十人ものRハンターに囲まれながら、スパッツマスクは平然としていた。
- 72 :
- 「こりゃ逃げられそうにないな!」
彼は、スパッツ越しに笑ったかに見えた。
追い詰めたはずの獲物が見せる余裕に、最初に奇襲したOLのタイツは伝線した。
「余裕ぶっちゃって!!
ムカつくわね!貴方は終わりなのよ!
行くわよ、ビッチ共!」
「おほぉぉぉおおおお!!!
Rほしぃいいのぉぉぉぉぉぉおおお!!」
一番近い位置にいたハンターが、スパッツマスクにタックルを仕掛けた。
いくら凄腕のRといえど、押し倒されて動きを封じてしまえば一溜まりもない。
だが、スパッツフェチは攻撃を見越していたらしい。
斜めに踏み込み、ハンターの捨て身タックルを容易く躱した。
「さて、次はどいつだ」
一番槍のハンターが、声もなく倒れた。
- 73 :
- 女達はぎょっとして動きを止め、獲物を注視した。
スパッツマスクの両の手にあるのは、見紛うこともない、スパッツである!
――スパッツ格闘術。
スクール水着やニーソ+制服等の大派閥に隠れ余り目立たないが、スパッツ信者は日本人にとても多い。
夏はその吸汗性を存分に発揮し、秋はスポーツのお供になり、冬は突き刺さる寒さから身を守る防寒具になり、春色ファッションにも彩りを添える。
四季折々の日本はスパッツと密接な関わりにあり、無論、我々日本人はDNAレベルでスパッツ大好き!と言っても過言ではないのだ。
そんなスパッツ信者たちがスパッツを用いた戦闘術を考案するのは、最早言うまでもないッ!
そうして生まれ、スパッツフェチの間で伝承されてきた武術がスパッツ格闘術……通称、コンバット・スパッツなのであるッッ!!!
「ひ、怯むな!!
奴のRを奪って賞金がっぽりよォォオ!!」
ハンター達が、一斉に地を蹴った。
四方八方から暴風雨のように襲いくるビッチ。
並のRなら、その暴風雨に一瞬で消えてしまう蝋燭の火……といったところだろう。
だが、スパッツは並のRではない。
ビッチの攻撃が暴風雨ならば、彼のスパッツは噴火である。
スパッツマスクの怒涛の攻撃に、一人、また一人とビッチは倒れていった。
ものの五分で、残るは最初に奇襲を掛けてきたOLだけになった。
- 74 :
- リーダーシップをとり、毅然としていた彼女だったが、スパッツマスクの圧倒的な強さに腰を抜かし、嗚咽を漏らし座り込んでいた。
「や、やめて……お願い、許じて……」
「おい」
スパッツマスクは泣きじゃくり失禁するOLに構わず、スパッツを突き付ける。
「俺の質問に答えてくれ。いいな?」
OLは首を激しく縦に振った。
- 75 :
- 罵って下さいよぉ(*´ω`*)♪
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/kitchen/1346330939/
- 76 :
- 「お前らは誰の差し金で俺を襲ってきたんだ?」
「ハ、ハンターズギルドで貴方の賞金を見掛けて……」
「おいおい、嘘をついていいのは政治家だけと相場は決まってんだよ!」
そう一蹴し、スパッツマスクは続けた。
「誰かが裏で、俺の退場を願ってやまないんだろう。
でなければ、この俺に挑む物好きなRハンターはいない。
現に、俺はほとんど狙われてなかったからな。
言え。誰が裏で糸を引いてるんだ?」
スパッツマスクは口をつぐみ、OLを正視した。
ポリエステル20%とポリウレタン80%で形成されている生地の裏で、その瞳は底光りしている。
- 77 :
- やがて、OLが震えた声を絞りだした。
「わ、私達を貴方にけしかけたのは白砂町のハンターズギルド運営者よ。
ほら、この前ヤリチン寺院が爆破テロを受けたあの町」
「……白砂町?
日本でも有数のRが住みやすい地じゃないか。
あそこにもハンターズギルドがあったのか」
「ここ最近よ、あの町にハンターズギルドがおかれたのは。
……そこの運営者、黒い噂が絶えなくて……なんでもヤリチン寺院の上層部と繋がってるとかで……借金をネタに脅されて、それで……」
(……どうもきな臭くなってきたな。
ヤリチン寺院爆破事件も、一連の騒ぎもだ)
- 78 :
- スパッツマスクがマスクの下でぶつぶつと独り言を零した。
思案を回らせている為に、彼は気付かなかった。
遠くから目を光らせている、殺気の塊に。
「そいつの名前は?
特徴は?詳しく教えてくれ」
「わ、わかったわ。
名前は知らないけど、特徴はひんにゅ――がっはぁ!?」
何かが空気を裂く音が聞こえたかと思うと、次の瞬間、OLの脇腹に棒状のものが生えていた。
スパッツマスクは目を剥く。
- 79 :
- 「おい!大丈夫か!」
彼は考えるより先に、OLを助け起こし、傷口を確認した。
ディルドだ。
彼女を襲った投擲物は、雑じりっ気なしの100%ディルドだった。
OLは荒い息を吐きながら、
「あかん……これあかんで……」
再度、風を切る音。
スパッツマスクは素早く反応し、スパッツを一閃。
瀕死のOLへ襲いくるディルドを迎撃した。
スパッツマスクが、マスクの下の目を怒りで燃やす。
ディルドが投げられる方角のビルに、人影がいた。
男か女か分からないが、線は細い。
こちらが気付いたことを悟ったに違いない。
襲撃者はゆっくりとその場を去っていく。
- 80 :
- 「待て!」
スパッツマスクは追おうとするも、すぐ思い直した。
息が細くなっているOLの元へ駆け寄り、傷口を診る。
「……抜いたら一気に出血するな」
もしかすると、先ほどの襲撃者から黒幕へ辿り着けるかもしれない。
そもそも、ヤリマンなど助ける義理はない。
だが、このスパッツフェチは特に何も考えていないらしい。
それも、彼がヒーロー足る所以なのかもしれない。
スパッツをOLの傷口にかざし、R力を込めた。
スパッツが、本来の姿へと変わっていく。蒸れていく。
スパッツとは力である。
エネルギーである。
完成された一つの理屈である。
真にスパッツを使い熟し、理解すれば、森羅万象に影響を与えることも可能なのだ。
スパッツから立ち上がる湯気が、OLの傷を優しく撫でる――すると、なんと出血が徐々に止まっていくではないか。
凄いぞスパッツ!
この場を借りて言いたい、全ての学校はスパッツを体育服として制定すべきである!
- 81 :
- 「あくまで応急措置だ。
しっかりと治療したほうがいい」
「なんで……私を……敵じゃない。
Rの情けなんて……!」
「人命を守れないで、Rを守れるか」
スパッツマスクは何やら考え込むように俯くが、ふと顔を上げた。
遠くから、サイレンの音が迫ってきている。
「ヤリチン寺院の私兵ね」
OLが、嘆息混じりに言った。
暗い顔で続ける。
「連中は裏切り者には容赦ない。
そもそも貴方に負けた時点で、私達は終わりなのよ」
「死ぬつもりか」
スパッツマスクの言葉に、OLは笑った。
諦観の感じ取れる、歪な笑みだった。
- 82 :
- 「私はビッチとして戦い、負けた。
本来なら既に貴方に葬られてるわ。
……出来る事ならあのヤリチン達からは逃げたいけど、この怪我じゃ逃げられないしね。
ヤリチンに捕まって拷問されて、ビッチとしての誇りを奪われるくらいならッ……堂々と討ち死にしたいッ!」
OLがスパッツマスクを見上げた。
先程、恐怖に失禁していたときとは違う、戦士の顔つきだった。
その視線に込められた意味を汲み取り、スパッツマスクは俯いた。
彼はじっと地面を見つめていたが、集まってくるサイレンの音に気を取り直した。
後五分と経たないうちに、ヤリチン達がここを包囲してしまうだろう。
彼はOLを見下ろし、仰々しく頷いた。
「分かった。少し痛むぞ」
- 83 :
- 「私はビッチとして戦い、負けた。
本来なら既に貴方に葬られてるわ。
……出来る事ならあのヤリチン達からは逃げたいけど、この怪我じゃ逃げられないしね。
ヤリチンに捕まって拷問されて、ビッチとしての誇りを奪われるくらいならッ……堂々と討ち死にしたいッ!」
OLがスパッツマスクを見上げた。
先程、恐怖に失禁していたときとは違う、戦士の顔つきだった。
その視線に込められた意味を汲み取り、スパッツマスクは俯いた。
彼はじっと地面を見つめていたが、集まってくるサイレンの音に気を取り直した。
後五分と経たないうちに、ヤリチン達がここを包囲してしまうだろう。
彼はOLを見下ろし、仰々しく頷いた。
「分かった。少し痛むぞ」
- 84 :
- スパッツマスクは右手に握られたスパッツを、高々と振りかざした。
月が彼らを覗きこむように、雲の切れ間から顔を出した。
辺りに柔らかい月明かりがたゆたい、OLの決然とした顔に色を添える。
スパッツマスクは陸上部女子を思い描き、スパッツとの間に再び絆を作った。
スパッツがR力を湛え、硬度と鋭さを増していく。
その刃は、ナイロンとポリウレタン。
刀身は、前の持ち主の染み込んだ汗。
鞘は心。Rの心意気。
抜くときは、守るときという心の構え。
その様はまさに、刀を構えた侍を、別に想起させたくない。
やがて、彼のスパッツは、何の前触れもなく振り下ろされた。
- 85 :
- *
R反乱軍の朝は早い。
多くの反乱軍はまず、早朝の集会から始まるからだ。
規則もなく、比較的緩いとされる三擦り楽士団もその例外に漏れなかった。
彼らはどこからか拾ってきたらしい椅子に座り、リーダーの言葉を待っていた。
「予想はしてたが、まずいことになった。
なぁに、心配するな。最悪の事態だ」
『R』の益垣が、緊迫した声色で言った。
まだ彼らの城である寂れた倉庫には、リーダーである益垣を含め五人しか集まっていなかった。
学校のレポート……仕事……撮り蓄めたアニメ鑑賞……ダークソ●ルで心を折る作業……反乱軍戦士にも生活がある。多忙なのだ。
- 86 :
- 見てる
- 87 :
- 「信頼できる情報筋からなんだが……ゴミ箱孕まし隊がやられた。
やっこさん、遂にハト派の反乱軍にも仕掛けてきたようだぜ」
「ゴミ箱孕まし隊が!?」
「穏健派のRにもきたということは、うちらにも攻めてくるな」
R達が不安げに顔を見合せ、意見を戦わせ始める。
その中で子供が一人だけ話についていけず、当惑しているようだった。
一週間前に入団したばかりのルーキー、芳野貞である。
見兼ねて、益垣が説明を加えた。
「あぁ、ゴミ箱孕まし隊ってのは平和主義のR団体でな。
俺たちと同じく、ビッチやヤリチンと小競り合いを直接起こさない穏健派のRなんだ。
本来なら俺たち穏健派のRは、圧力をかけられるこたぁあるが襲撃されるなんて滅多にないのさ。
少なくともこの街ではな」
- 88 :
- だが、と暗い顔で続ける。
「事情が変わったようだ。
粗方見当はつくが、厄介なことになってきたぜ」
「やはり……こないだの爆破事件が関係してるな」
益垣の次に発言力がある二十歳そこそこといったRが、独り言のように零した。
皆が渋い顔で、頷いたり、Rしたりといった形で同意を示す。
認めたくないがヤリチンやビッチが攻撃を仕掛けてくるというのは、彼らの共通認識のようだ。
- 89 :
- 「てぇへんだッ!」
その時、倉庫のドアが激しく開けられたかと思うと、団員の一人が駆け込んできた。
皆が、何事かと視線を走らせた。
頬の上気した団員は、息を切らして言った。
「リーダー!たいへ……てぇへんだ!」
「おいおい、どうしたぁ!?」
「さくらんボーイズ……スク水学会……禁欲クルセイダーズ……それと、二次元旅団……全て壊滅したみてぇだ」
益垣が呻いた。
目に見えて、三擦り楽士団に動揺が広がる。
二次元旅団といえば、この界隈に最近飛び込んだ貞でさえ知っている有名なR軍だ。
なんでも、団員は二百名ほどで、個々のR力も高い武闘派反乱軍らしい。
「バカな……!強豪が一度にそんな……」
「まさかあの二次元旅団が……」
R達が狼狽する中、貞は俯いた。
条例が改正されたのは間違いない。
テレビをつければ、ニュースでもやっているだろう。
だが、貞はそんな単純な話ではないと思った。
爆破テロも、ビッチ達の破竹の勢いも何か裏がある。
- 90 :
- (いま、この街で何が起きているんだ……?)
だが、幼い少年がいくら思案を回らせたところで、答えが出てくるはずもなかった。
「情けねぇな、野郎共ッ!
それでもRか!」
不意の叱責に、R達はびくりとした。
益垣は目に強い光を湛えて、仲間を見渡した。
このRはどうやら、起ち直りが早いらしい。
いや、彼には賢者タイムさえないのかもしれない。
「同胞がやられてんだ。
悲しむ時かい?違うだろ。
戦いの時だ」
益垣の力強い科白に、三擦り楽士団の面々に活気が戻っていく。
リーダーの言葉というのは不思議なもので、仲間を生かしもすれば殺しもする――貞が入団して最初に学んだことだった。
「そうだ……あっちがその気なら迎え撃とう!」
「俺達にはRの誇りという剣がある!」
「いつやるの?いまでしょ!」
皆は完全に気を取り直したようだ。
益垣が早々と朝会を切り上げると、情報収集や知り合いの安否確認のため出ていった。
- 91 :
- 後に残されたのは貞と益垣だけで、倉庫内は先程とは打って変わって静かになった。
貞は居心地の悪そうに、壁に立て掛けられている楽器を眺めながら、やがて決心して、
「益垣さん、お話しがあるんですが」
神妙な顔で切り出した。
ふと芽生えていた疑念の芽は、いつの間にか彼の心に収まりきらなくなっていたのだ。
「僕、考えたんです。
浅はかだし、ただの憶測だけど……爆破テロって、政府かヤリチン寺院の自作自演なんじゃ……」
益垣が眉をぴくりと動かした。
- 92 :
- 「あぁ……実は俺も似たようなことを思っていたよ。
俺の情報網で知れる範囲だとあの日、どのRも寺院付近にいなかったんだ」
「やっぱり……!」
貞はヤリチンへの怒りと真実に近づいた高陽で、思わず立ち上がりそうになるが、「だけどな、貞」益垣の低い声で制された。
「腑に落ちない点があるんだよ」
「……と言いますと?」
「まず、ヤリチン寺院に犯行予告状が届いたらしい。
なんでも手紙が括り付けてあるディルドが寺院の壁に突き刺さってたとか。
ヤリチンもあの日、マジで警備にあたってたしな」
「それは……昔から敵を騙すには味方からと言います。
一部の偉いヤリチンだけで、秘密裏に計画を進めたんですよ。きっと」
「歳の割にずいぶん頭が回るな、貞」
益垣が感心して顔を崩した。
だが、すぐに真顔に戻る。
- 93 :
- 「俺も他所の地域ならそれで納得出来た。
あぁ、納得出来たさ。
だけど、ここの支配者は他でもない、あの諏八大檎だぜ」
Rの口から出た旧友の名前に、貞は虚を衝かれた。
一瞬変わった貞の表情に、Rが気付かないはずがない。
だが益垣は殊更追及しようとも思わなかった。
この少年が天才Rとまで謂われた諏八大檎と知り合いで、何か因縁があるというのは、既に気付いていたことだ。
諏八大檎はこの地域の戦を左右する重要なファクターだ。
有用な情報が手に入るかもしれない。
だが、益垣は少年から話すまで待とうと思った。
人の繊細な部分に触れる話だ。急ぐことはない。
彼は人付き合いまでRなわけではないのだ。
――そんな心中を露ほども表情に出さず、益垣は続けた。
「諏八はヤリチン寺院のトップだ。
すぐ傍でそんな計画が進められて、あいつが気付かないはずがない。
……こっからは俺の私見だが、諏八はまだRだと思う。
その証拠に、この街は今の今まで暮らしやすかったじゃないか。
Rが全滅するようなそんな計画があったら、何らかの形で情報を漏洩させてくれると思うんだよ」
「じゃあ……一体誰が……まさか本当にどこかの反乱軍が……?」
「あるいはヤリチンでも、Rでもない“何か”だな」
益垣は表情を曇らせて言った。
何かを思案するように顎髭を撫でる。
だが、彼は貞のように長い間頭を働かせるのは苦手だった。
Rだもの みつを
- 94 :
- 「……まぁこれ以上考えても、しょうがねぇわな」
幾許もなく、ふっと何かを思い付いたように笑い、いつもの軽い調子に戻った。
立ち上がり、隅に立て掛けてあるギターを二本とる。
一本は年季の入ったアコースティックギターで、彼専用のものだ。
もう一本は、元々三擦り楽士団の備品庫に眠っていた小ぶりなギター。
現在の主は、貞になっていた。
「今日もやるぞ」
「分かりました!……本当に演奏が出来ればRも上手くなるんですよね」
貞は言いながら、ギターを受け取った。
- 95 :
- 三擦り楽士団が有名なのは、『R』の益垣が率いているというだけではない。
団員全員が音楽の道を志す音貞であり、音楽活動を続ける傍らR活動もしているという一風変わった反乱軍だからだ。
貞も入団初日から、益垣に楽器の指導を受けていた。
全ての道はRに通ずる、もちろん音楽もな!――というのが、益垣の持論だった。
「コードはだいたい覚えたかい?」
「はい。セーハっていうのが難しいけど、教わったコードは覚えました」
「よっしゃ男ならそうこなくっちゃな!
今日は簡単な奴を一曲弾いてみるぞ」
- 96 :
- 貞はギターを構えた。
実際のところ、音楽とRの腕が比例するという科学的根拠はない。あるわけない。
だが、純粋な少年は疑わずに練習を続けていた。
彼は当初の思惑とは関係なく、意図せぬうちに演奏に惹かれていたのかもしれない。
益垣は必死に弾く少年を眺めている内に、一週間前、少年がここへ飛び込んできたときの光景が胸に蘇るのを感じていた。
あの日、肩で息をする少年の入団を最初は断った。
R軍はいつナニがあってもおかしくない。
強者のRでも、あっさりとその貞操を散らすこともあるのだ。
子供に勤まる仕事ではない。
そんなことを説明しても、少年はしつこく食い下がった。
意思の弱そうな見た目と裏腹に、その目は強い光と決意を抱えていたのだ。
- 97 :
- だが、今は戦時中である。決意ややる気だけでRはやっていけない。
脅してでも追い返そう、益垣がそう思ったとき、視てしまった。
柔い新雪に隠れた、底知れないR力を。
小さな少年という器に凡そ、入り切らない大きなRを、ちらりと垣間見てしまったのだ。
益垣はそれに魅入られ『下働きだけで危ない仕事はなし。リーダー命令は絶対。楽器を練習しろ』という条件付きで入団を許可した。
団員達や地区R組合は子供の入団に難色を示したが、貞の才能を説明し、納得ずくの上で、若干十一歳という若さのR戦士が誕生したのだった。
- 98 :
- (ただのガキじゃあない。
天性のRがある。訓練さえ積めば、一流のRになれるはずだ!)
益垣は思い出から帰り、真剣な顔つきでギターを弾く少年を見下ろした。
あの日以来、貞は強いR力を発していない。
合同訓練時も、際立ってRというわけでもなかった。
(だが……不思議なことに、こいつは誰に師事してたわけでもないのに、基本は完璧だ……)
何より、あれは見間違いではあるまい。
益垣には確信があった。
(こいつは強くなる。俺よりも……スパッツマスクよりも……誰よりもだ。
この戦争を終わらせるのは、こいつかもしれない!
いっぱしのR戦士になるまで、こいつのRだけは死守してやるぜッ!)
- 99 :
- 練習は二時間続き、昼前になってようやく終了した。
昼時になると、暗い表情の団員がぞくぞくと帰ってきた。
どうやら、ビッチ達の奇襲に友をやられたものもいるらしい。
揃って頭を垂れ、益垣に芳しくない報告をした。
曰く、この街の『反政府R』が全て有害Rに指定された。
曰く、ビッチハンター達はほぼ全ての反乱軍を襲撃した。
曰く、半数のR反乱軍が壊滅的なダメージを負った。
全てを聞き終えると、益垣は深く息を吐いた。
その表情には、隠しきれない痛憤が刻まれていた。
「……みんな、俺達は今、危機に瀕している」
いつになく真剣な面持ちで彼は言うと、団員一人一人の顔を順に見た。
「恐らく……いや、確実にここへビッチ共が押し掛けてくるだろう。
抜けるなら、今のうちだ。
元々俺の道楽に付き合ってもらってたんだ。
抜けても文句はねぇ」
「ああ、抜くさ。
奴等の心臓に俺のザー汁で穴を開けよう」
「今更かっこつけても遅いっすよ、団長。
一生ついていきやす!」
団員達が残ると声を上げる中、益垣は俯き、顔を伏せた。
心なしかその口は、バァロー、と言ってるように映らなくもない。
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