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2013年07月創作発表12: 多ジャンルバトルロワイアル Part.16 (231)
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多ジャンルバトルロワイアル Part.16
- 1 :2013/05/11 〜 最終レス :2013/07/02
- ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html
〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/
wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa
- 2 :
- ★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「R」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。
- 3 :
- 1/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/ ● 枢木スザク/ ● C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
0/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/ ● 竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/ ● 園崎詩音/ ● 北条悟史
1/5【スクライド@アニメ】
● カズマ/ ● 劉鳳/ ● 由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
1/5【らき☆すた@漫画】
● 泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/ ● 岩崎みなみ
1/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/ ● 雪代縁
1/4【仮面ライダー龍騎@実写】
● 城戸真司/○北岡秀一/ ● 浅倉威/ ● 東條悟
0/4【ルパン三世@アニメ】
● ルパン三世/ ● 次元大介/ ● 石川五ェ門/ ● 銭形警部
1/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/ ● 水銀燈/○翠星石/ ● 蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
0/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/ ● 田村玲子/ ● 後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
0/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/ ● 三村信史
0/2【相棒@実写】
● 杉下右京/ ● 亀山薫
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
● 南光太郎/○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
● 男主人公/○狭間偉出夫
0/2【DEATH NOTE@漫画】
● 夜神月/ ● L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
0/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/ ● 桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
0/1【灼眼のシャナ@小説】
● シャナ
10/65
- 4 :
- スレ立て終了、投下待機
- 5 :
- 回復して体を起こし立ち上がるとランスロットの駆動音は遠ざかっていた――北岡が引き付けているのだろう。
ロロに代わって贄殿遮那を抜く。
北岡のもとへ駆け付ける前に死体の傍らに膝を落とし、見開いていた目を閉じさせる。
イケブクロでルルーシュの学友シャーリーを、この会場でアイゼルを殺害した少年。
「ロロ・ランペルージ、ルルーシュ様の偽りの弟……。
私は貴様と最期まで分かり合えなかった。
だが――」
年齢も出自も違う、積み重なるのは互いに嫌い合う要素ばかりだった。
ナナリーの件、アイゼルの件、今更ロロと分かり合いたいとも思わない。
ロロの方からしても願い下げだろう。
だがロロは、ゼロでも皇子でもないルルーシュ・ランペルージ個人の家族として時間を共有していた。
一年間――ジェレミアにしてみればとても長いその時間、ルルーシュにとって最も身近な存在としてそこに居た。
シャーリーやアイゼルを殺したのも、純粋にルルーシュだけを想った結果だった。
ジェレミアには出来なかった事をしたのだ。
嫌悪も憎悪もある、しかし敬意も羨望もある。
「貴様のルルーシュ様への思いに偽りがなかった事は、覚えておこう」
手向け代わりの言葉を残し、ジェレミアはその場を後にする。
ランスロットの攻撃によって脆くなっていた天井が崩壊し、遺体は瓦礫の中へ飲み込まれた。
▽
地上に倒れた北岡。
ビルの上から降ってくるランスロット。
腕が千切れかけていた。
立ち上がる暇もない。
潰される。
そう北岡が諦めそうになった時、声がした。
「北岡さん!!」
風と共に空を切る箒。
ランスロットが着地したその場所には、誰も残っていなかった。
「助かった――から大きい声では言えないけど、無茶はやめてよね」
「ごめんなさい……」
ランスロットが地面に辿り着く直前、つかさは地面すれすれを最高速度で通過した。
北岡はその時を逃さずに箒の柄に掴まって難を逃れたのだ。
今はハーケンも届かない所まで高度を上げ、北岡が箒にぶら下がった状態のまま会話している。
そしてつかさはリフュールポットで北岡の肩を治療しながら、Gー9で見たものを語った。
「……それ、ジェレミアにはもう話した?」
「すみません、今戻ったところなので……」
初めは耳を疑った。
志々雄の真意は相変わらず分からないままで、ジェレミアの意見を聞かない事には動けない。
「とにかく今はジェレミアを探し――ッ」
息を飲み、「避けて」と叫ぶ。
地上にいたランスロットは青い銃を上空、つかさと北岡に向けていた。
つかさが箒を旋回させる。
すぐ真横を風と衝撃が駆け抜け、煽られて箒の軌道がぶれた。
- 6 :
- 人間が扱うには大きすぎる、ギガランチャーと比べてさえ巨大なランスロットの銃・ヴァリス。
その詳細はジェレミアから聞かされていないが、命中すれば形も残らないだろう。
そう思わせるに足る威圧感が、数百メートルと距離を取ったこの高さまで届いている。
第二撃も北岡がつかさに指示を出して回避をするものの、北岡の体勢が悪く長続きしそうにない。
ヴァリスの銃口が光る。
第三撃が放たれようとした時、銃身が揺れた。
ジェレミアが上へと集中していたランスロットの体を駆け上がり、ヴァリスに直接蹴りを入れたのだ。
「遅いよ……!」
北岡はつかさに高度を下げさせ、箒に掴まっていた手を離してビルの屋上に着地。
マグナバイザーの連射でブレイズルミナスを発生させ、足止めを再開した。
手にはつかさから受け取ったフラムがある。
そしてつかさに指示を出し、ジェレミアのもとへ送り出した。
▽
ビルの屋上に北岡、地上にランスロットとジェレミア、上空につかさ。
つかさは更に高度を下げて戦場に接近する。
基準とするのは北岡の位置。
ランスロットに対し北岡以上に近くなれば攻撃目標にされてしまう。
北岡の言い付けに従い、離れた地点から叫んだ。
「ジェレミアさん!」
ジェレミアはその声に反応し、つかさの位置を視認する。
しかしつかさの接近に伴ってランスロットが動きを変えた。
右腕のハーケン一機だけでなく、腰部にも取り付けられた二機を加えた三機を一度に打ち出す。
搭乗者がパスワード入力をしなければ使用出来ない特殊な技、ハーケンブースター。
ハーケンは窓ガラスの中へ吸い込まれ、更に別の窓から北岡、ジェレミア、つかさの三人に飛び掛かる。
北岡が寸でのところで跳び退って避ける。
ジェレミアはつかさの姿を目にした直後に既に走り出しており、一機目をそのまま避けた。
片手に刀を構えたまま空いた手で箒ごとつかさを抱き止める。
足は止めず、つかさの背後の窓ガラスから飛び出したもう一機のハーケンを躱した。
ハーケンを回避されたランスロットは姿勢を低くして疾走、つかさとジェレミアに接近する。
つかさを抱えたまま、ジェレミアはランスロットの体当たりを横へと回避した。
だが通り過ぎたランスロットは急停止と共に旋回して向きを変え、再びジェレミアに向かってハーケンを打ち込んだ。
つかさの目からも、それが避け切れない一撃だと分かった。
ジェレミアが片腕だけで扱う刀では防御も不完全になる。
結果ジェレミアはランスロットに敢えて背を向け、ハーケンを装甲で受け止めた。
つかさの耳に届いたのは装甲に亀裂が入る音とくぐもった声、そして突き抜けた衝撃に揺さぶられる。
左腕を下にして地面に打ち付けられたジェレミアに庇われ、つかさは無傷だった。
二人に足を振り下ろそうとするランスロット、そこへジェレミアがフラムを投げた。
アイゼルが遺したフラムだ。
ブレイズルミナスとて一瞬で展開出来るわけではない――その僅かな時間を稼ぐ為に、ランスロットは後退した。
後退し、フラムが届くまでの一秒もない時間でブレイズルミナスを発生させて爆発から身を守るランスロット。
そこへ北岡がマグナバイザーで追い打ちを掛け、注意が引き付けられている間にジェレミアが立ち上がった。
ランスロットから距離を取る間もつかさは抱えられたままだ。
「あ、ありがとうございます……」
肉体の傷とは違い、機械部分の損傷は薬では直せない。
- 7 :
-
- 8 :
-
- 9 :
- 直す手立ては現状では見付からず、それ故に深刻。
しかし今はそれすら後回しにせねばならない程に状況が切迫していた。
気を取り直したつかさは声を張り、報告する。
話している間もジェレミアはつかさを抱えたままで、時折打ち込まれるハーケンを回避する。
追い詰められ切った状況の中、つかさは走り続けるジェレミアに「それ」を伝えた。
「……私が直接行って確かめるしかあるまい。
援護を、任せる」
Gー9へ向かう、ジェレミアはそう決断した。
つかさは地面に降ろされて箒を受け取る。
ジェレミアにしてみればつかさを戦闘に関わらせたくはないだろう。
それでもこうして任せるのはそれだけ状況が差し迫っているから――そして信頼があるからだ。
それが分かっているから、つかさはランスロットと相対す恐怖があっても躊躇いはなかった。
手持ちの昇天石を使ってしまったというジェレミアに、つかさは自分の分を渡す。
逆にジェレミアからは「預かって欲しい」とデイパック本体を差し出された。
少しでも身軽になった方がいいとの事で、これでジェレミアの所持品は贄殿遮那と昇天石のみとなった。
更につかさはジェレミアの指示に従ってデイパックからブラフマーストラを取り出す。
それは、ズシリと重い。
自分の身を守る為の道具――ではなく相手を攻撃する為の武器。
「もし嫌なら私が、」
「いいえ、使います!!」
ジェレミアの声を遮る。
つかさがこれまでに引き金を引いたのは二度。
その二度とも人の命を奪った。
出来ればもう触れたくないと思っている。
だが自分の事を信じてくれている相手から渡されたそれを、拒みたくない。
皆で帰る為にも、これが今の自分に出来る事。
ブラフマーストラを握るつかさの手はやはり、震えてはいなかった。
箒に跨って浮き上がり、動作に問題ない事を確認。
そしてジェレミアから「近付き過ぎるな」ともう一度念を押され、強く頷いた。
▽
- 10 :
-
- 11 :
-
- 12 :
-
- 13 :
-
- 14 :
- 「G−9に向かう」、「協力を頼む」と大雑把に方針を示され、北岡は改めてランスロットから距離を取った。
ジェレミアが目的地に向かう間、北岡とつかさの二人だけでランスロットの足止めをする――というわけにもいかない。
攻撃の的が複数いる状態でなければランスロットとはとても戦えず、その的をつかさにする事も出来ないのだ。
よって、三人掛かりでランスロットの攻撃を凌ぎながら移動する事になる。
ランスロットと戦うという前提に加えて新たに加わった指針、G−9に向かう。
防御だけに集中していられなくなり、元々綱渡りだった戦いはますます厳しくなる。
「ジェレミアの走行をなるべく阻害しないようにし、同時に北岡とランスロットが一対一になる状況は避ける」。
そんな都合良く事態が運ぶはずがない。
しかし、実際に動き出してみるとむしろ負担が減っている事に気付いた。
東西に走っていた大通り、その交差点を三人それぞれが南に折れる。
ジェレミアが地上を疾走。
その間つかさが上空からブラフマーストラを、北岡が屋上からマグナバイザーを撃ち続ける。
マグナバイザー、ブラフマーストラ、どちらも弾数に制限はない。
ブラフマーストラの方は装填に多少の時間を取られる為連射こそ出来ないが、威力は充分。
ランスロットは頭上からの攻撃に対し、片腕を上げてブレイズルミナスを展開するか回避するかの二択しかない。
それはランスロットの攻撃の的となるジェレミアと北岡にとって大きな助けになる。
加えて、上空であれば鏡面がないのでハーケンに強襲される事はなく、ある程度の安全が確保出来る。
万一ランスロットがつかさを狙ってヴァリスを持ち出したとしても、その時はジェレミアと北岡が攻めに転じるだけだ。
遠距離専用のヴァリスに対し、懐に飛び込んでの至近距離戦はファクトスフィアや車輪の破壊を狙える絶好の機会となる。
つかさの加入により戦略の幅が広がり、ジェレミアが無理に攻撃を仕掛ける必要がなくなった。
その分移動と回避に注力出来るので、常にランスロットに接近しているジェレミアの危険は減ったと言っていい。
問題があるとするならば――ゾルダの変身時間が残り五分を切っている事である。
つかさの箒の速度と往復に掛かった時間を考えれば、五分以内に目標に到着するのは不可能ではない。
だが、普通の走りではなくランスロットの攻撃を防ぎながらの移動。
またそもそもG−9に行けば全てが解決するという話でもない。
飽くまで『確認』に行くのだ。
“それ”が使えなければ詰み、有用であったとしてもやはり戦いが終わるわけではない。
故に動きに余裕が出来た分、ここで少しでもランスロットのエナジーと戦力を削る必要がある。
ランスロットは屋上からの北岡の射撃に対し、左のブレイズルミナスを展開したまま右腕のハーケンを打ち出す。
ハーケンがランスロットの脇の窓ガラスに吸い込まれると、北岡のいるビルの向かい側の窓からそれが飛び出した。
北岡が紙一重で回避するとマグナバイザーの連射が途切れ、それに乗じたランスロットが跳躍。
地上に向かって蹴りが叩き落とされるが、駆動音で接近に気付いていたジェレミアは振り向かずに大きく横へと避ける。
アスファルトが砕け、視界を遮る程の厚い砂煙が立ちこめた。
その煙から一早く抜け出したジェレミアは足を止める事なくそのまま南へ。
- 15 :
- ランドスピナーの車輪が回転、ランスロットの追撃が始まろうとするが、車輪は即座に逆回転してランスロットを後退させた。
上空からブラフマーストラによる射撃が降ってきたからだ。
マグナバイザーによる狙撃が再開すると、ランスロットは細かく車輪の回転の向きを変えて前後左右に素早く移動。
全ての弾丸を躱し、再びハーケンブースターを起動する。
三機のハーケンが同時に射出され、窓ガラスの中へと吸い込まれた。
それを確認した北岡はすぐにビルから飛び降りる。
ハーケン三機を同時に射出し、更にミラーワールド内でブースターを使って角度を調節、敵に命中させる。
それは並の集中力では不可能だ。
全神経がハーケンに注がれている――つまり、今が最もランスロット本体の手薄な時。
三機のうち二機が北岡に襲い掛かるものの、外壁を蹴って速度を付けながら落ちる北岡には当たらない。
着地し、フラムを投げる。
狙うのは左腰部のハーケン射出機構。
ランスロットがランドスピナーを起動させて回避しようとするが、北岡はマグナバイザーでフラムを撃ち抜く。
破裂音。
ランスロットの手前で爆発する事になったが、目的を果たすには充分だった。
即ちハーケンワイヤーの切断。
巻き取られる前だったハーケンは地に落ち、残るは右腕と右腰の二機のみとなった。
北岡が攻撃する間、ハーケンを避けたジェレミアは更に距離を稼いでいた。
北岡の目にも、真っ直ぐに続く道路の先が見えている。
目的地は決して遠くない。
ジェレミアを追う形で走る。
北岡がつかさのサポートを受けてビルの屋上まで跳び、ランスロットの蹴りを逃れてなお走る。
そして、視界が拓けた。
「ここが……!」
G−9中心部。
建物が破壊されて何もなくなった地帯。
そしてゾルダの目はつかさから聞いた通り、その更に中央に『穴』を確認した。
ジェレミアは既に先行している。
穴までは恐らく一分も掛からない。
そしてその一分間、北岡とつかさは二人でランスロットを足止めする必要がある。
目標地点に向かうジェレミアが狙われては意味がないのだ。
それを理解しているようで、つかさが高度を下げた。
「つかさちゃん!」
「ごめんなさい、でもこうしないと北岡さん達が!」
打ち出されるハーケンに、箒が速度を上げて回避する。
一点に向けて刺さるハーケンは立体的に動き回る箒に対して決して有利な武装ではない。
だがこれにランスロット自体の動きが加わるのだから楽観視など出来るはずがなかった。
北岡がビルから地上に降り、敢えてランスロットの関心を引く。
つかさはブラフマーストラをデイパックにしまい、ランスロットの周囲を旋回して回避に徹する。
だがつかさは元々運動神経に優れているわけではなく、むしろ鈍いと言われてしまう部類に入る。
そして箒も本来は錬金術士にしか扱えない品であり、操縦は決して簡単ではない。
北岡はそんなつかさをフォローしようとするが、僅かでも気を抜けば北岡自身が踏み潰されかねない状態だ。
故にこの均衡した状況は、長続きはしない。
「きゃっ……!!」
ハーケンがつかさの肩を削った。
つかさが箒ごと体勢を崩し、速度を出した状態のまま地面に落下する。
つかさの体はコンクリートの上を滑るように転がり、身を小さくして痛みに堪えていた。
- 16 :
-
- 17 :
-
- 18 :
- 「つかさちゃん、ポット使って!!」
「でも……あと、二つしか」
「そんなのいいから!!!」
北岡がカードを抜く。
しかしマグナバイザーにそれを装填しようとして、ハーケンが足下に突き刺さった。
咄嗟に跳び退いて躱し、倒れたつかさを抱えて走る。
ワイヤーを巻き取ったランスロットが高速で迫り、それまで二人がいた場所に蹴りを落としていた。
つかさは抱えられた状態でリフュールポットを使ったが、ランスロットが至近距離にいてはつかさを降ろせない。
手が塞がっていてはカードが使えない。
箒は北岡の視界の中にはなく、ランスロットの蹴りで砕けたコンクリートの下になってしまったようだ。
必要な支給品だが、悠長に探して拾っている暇も余裕もない。
そしてゾルダの変身時間の残りは僅かとなっていた。
八方塞がりの状況で、ランスロットの後頭部に向けて影が飛来した。
それはランスロットの死角の位置にあったが、パイロットの超人的な勘と反射神経によって捉えられてしまう。
下から上へと振るわれたランスロットの太い腕、それによって弾かれたのは贄殿遮那。
大穴の手前の地点からジェレミアが投擲したものだ。
その隙に北岡は離れた場所までつかさを運び、逃げるように言い含める。
贄殿遮那はランスロットの意識を北岡達から逸らしたが、弾かれると同時にハーケンが発射されていた。
後頭部に当てる事で注意を引くはずだったのだろうが、ランスロットの反撃はジェレミアの想定よりも一歩速い。
刀を投げた体勢からの回避が遅れ、ジェレミアの正面からハーケンが命中した。
ブレードで肉を斬り裂かれ、跳ねた血がハーケンを汚す。
ハーケンの出力に押され、体が浮いて後方へと飛ばされる。
そして北岡が見ている中、ジェレミアは穴の中へと落下していった。
「ッ……!!!」
北岡の傍らに、高く飛ばされていた贄殿遮那が突き刺さった。
その音で北岡は我に返り、カードをデッキに挿入する。
――SHOOTO VENT――
北岡の両肩に砲筒――ギガキャノンが現れ、ランスロットに向けて撃ち込む。
しかしこれまで通りブレイズルミナスで防御するランスロットは、その体勢を保ったままじりじりと北岡と距離を狭めていく。
ゾルダの指先が粒子となって空気中に溶け始めた。
だが一秒でも長く足止めをする為に、北岡はランスロットへの連射を続ける。
焦燥と恐怖。
『確認』に失敗した時点でほぼ詰んでいる、変身が解ければ自衛手段すら失ってしまう。
生身の体ではとても逃げられない。
変身が解ける前にこの身体能力を使って逃走を図りたいぐらいだが、残り数秒ではどの道逃げ切れない。
やがてギガキャノンの発砲音は途切れ、北岡は元のスーツ姿に戻っていた。
ブレイズルミナスが解かれるが、北岡に攻撃手段は残っていない。
無防備なまま胸にハーケンを受け、受け身も取れずに地面を転がった。
折れた肋骨が露出し、呼吸も出来ずに藻掻く。
ランスロットが前傾姿勢を取り、ランドスピナーが起動――だが、停止して再びブレイズルミナスを展開した。
ブラフマーストラを抜いたつかさが引き金を引いていたからだ。
最後の一個となったリフュールポットを北岡に使い、助け起こす。
「つかさちゃん、逃げて……!」
「出来ません……!
だって、皆で帰るのに!」
ブラフマーストラの次弾装填までの隙にハーケンが打ち込まれ、北岡はつかさの手を引いて避けさせた。
そのまま走って逃げる。
- 19 :
-
- 20 :
-
- 21 :
- そして二人の上に、車輪による蹴りが落ちてきた。
蹴り自体を避けられたとしても、ランスロットの一撃は地面をも砕く。
コンクリートの破片、高速で飛び散る石や砂すらもただの人間にとっては脅威にしかならない。
粉塵が舞う中で倒れる二人。
衣服には血が滲み、全身が痛みを訴える。
舞い上がった粉塵が晴れた頃、ランスロットのハーケンは既に北岡に狙いを定めていた。
ギャリギャリギャリ、と車輪の音がする。
ランスロットは動いていない。
ランスロットのランドスピナーの音ではない。
音源は地下。
胸の奥まで響く振動が北岡とつかさの足から立ち上る。
月光を遮るものが一切存在しない拓けた大地、その中央の穴からもう一機の“巨人”が姿を現す。
それは、ランスロットよりも早く実践に投入された量産機。
シンジュク事変から一年、ランスロットと同じ第七世代の機体が量産されるようになって以降も最前線で使われ続けた。
型遅れとなってもなおブリタニア軍の主力の一つとして位置付けられている紫色のKMF。
中でもこれは頭部のファクトスフィアと両肩を朱に塗り上げ、『純血派』の象徴とされていたもの。
聞こえていたのは両壁に当てた二つのランドスピナーで穴の底から登る音。
洗練されたランスロットのフォルムが騎士ならば、対照的に無骨なそれは鎧武者のような。
型式番号RPI-13、サザーランドと呼ばれるKMFが地上へと這い上がった。
▽
腹部にハーケンをまともに受けて意識が飛び、そのまま大穴の中へと墜落する。
硬く冷たい金属に覆われた床に背中から落下し、衝撃ですぐに意識が戻ったのは幸か不幸か。
仰向けになったジェレミアが目を開けると、星の浮かぶ暗い空が遠くに見えた。
穴の底から覗く、四角く切り取られた夜空はとても狭い。
腹部に手を当てるとべたりと血が貼り付いた。
起き上がろうとして、左半身から火花が散る。
志々雄に斬られた傷は広がり、背の亀裂は全面に渡っているようだった。
ルルーシュがゲフィオンディスターバーでジェレミアの半身の機能を停止させた時、ジェレミアは全身が動かなくなった。
機械化されたのが左半身だけでも、そこに不調を来せば体全体に影響が出る。
破損がこれ以上進めば、やはり動けなくなるかも知れない。
だが今は構わずに立ち上がり、見上げる。
空ではなく壁を。
壁を背にして立つ物を。
先行したつかさが見たもの。
それは『もう一体のロボット』、KMFだった。
何故会場内にKMF格納庫が設置されているのか。
志々雄の罠なのか、本物なのか――だがこれは紛れもないサザーランド純血派機。
屹立するその姿はジェレミアが知るままの姿で、思い出されるのはこの機体に乗って駆け抜けた日々。
両肩に背負った赤は誇りの証。
感傷を振り切って見渡せば既にコックピットは開かれ、ワイヤーに吊られたリフトが地面の高さまで下りてきていた。
「……」
もう一つその横に鎮座するものがあったが、後に回す。
足を引き摺りながら惹き付けられるように近付き、リフトに足を乗せ、ワイヤーを巻き取りコックピットへ。
一見して罠の類は見られない。
- 22 :
-
- 23 :
-
- 24 :
-
- 25 :
- コックピット正面とその上部、左右と合わせて四面のモニターは多くのKMFと共通。
座席にはブリタニア国章をあしらったサザーランドの起動キーと入力用パスの書かれたメモ、申し訳程度のマニュアル。
奇しくもこれらは、ジェレミアにとって覚えのあるものだった。
シンジュク事変の日にジェレミアが乗っていた――ルルーシュの策によって破壊された機体だった。
ランスロット導入と同じ日に、アリエス宮の暗殺事件以来初めてルルーシュと接触したサザーランド。
「随分な嫌がらせだな、V.V.……」
一般兵すら第七世代、エース級パイロットは第八世代相当の機体に乗り、第九世代の機体さえ開発された時代。
それでもジェレミアは旧式のサザーランドにこだわり続けた。
嚮団殲滅戦に際しても時代遅れのそれに重装備をさせて食らい付いた。
第二次東京決戦に間に合うよう開発されたワンオフ機にも、敢えてサザーランドを組み込んだ。
そうしてサザーランドに固執していたジェレミアに『プレゼント』と称して贈ってきた者達の思惑は、分からない。
更に分からないのが、座席。
その背もたれには三つのプラグがあった。
神経電位接続――パイロットの神経を機体に直接接続し、操縦桿を握らずとも意思のみで操縦出来るようにするシステム。
機械の体に改造されたジェレミア専用のものだ。
この技術が確立されたのはブラックリベリオン以降であり、シンジュク事変の時にはなかった。
つまりこの機体は外側こそあの日のものだが、V.V.らの手によって別物の如く改造されている。
キーやマニュアルが用意されているのを見ると、ジェレミアの為だけに用意されたものというわけでもないのだろう。
しかしやはり真意は分からない。
視認出来ない箇所に罠が設置されているのではないか、そもそも起動するのか。
疑念はあったが、ジェレミアはコックピックブロックの出入り口を閉める。
どの道、志々雄が言うように「縋らなければ」――何も得られない。
故にジェレミアは所定の場所に立ち、胸の前で両腕を交差させる。
コートの背が縦に割れて開き、露出する装甲と神経電位接続用のコネクタ。
席に着くと自然とコネクタとプラグが接続され、コックピット内が淡いオレンジ色の光を帯びる。
ジェレミア自身がキーとなってパスの入力もショートカット、全て問題なく起動。
左右に分かれた二つの操縦桿は使わないが、体を固定する為に両手で握る。
正面の画面に表示された「SERIAL#/4097112-5508」「PILOT/Sir JEREMIAH GOTTWALD」の文字すら今は懐かしい。
装備を確認するとジェレミアが知るものと一致していた。
アサルトライフル、胸部のスラッシュハーケン二機、スタントンファ。
ランスロットには届きそうにないものの、出力は通常のサザーランドよりも大幅に上昇している。
他にも神経電位接続による機体の反応速度がジェレミアの知るものよりも速くなっていた。
画面上の「G-ER流体」という物質が関わっているようだが、これについて調べている時間はない。
起動画面が消え、四つのモニターには周囲の景色が映し出される。
そしてサザーランドの横にはもう一つ、強い存在感を放つものが置かれていた。
それは金色に飾られ、中央にブリタニアの紋を貼り付けた巨大な十字架だった。
底に車輪の付いたそれを、一目で何なのか言い当てられる者はそういないだろう。
だがジェレミアは知っている――憧れていたから。
これは剣とそれを収める鞘だ。
- 26 :
-
- 27 :
- 第九十八代皇帝がナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインの駆るKMF・ギャラハッドの専用武器。
皇帝シャルル・ジ・ブリタニア自らが名付けた“エクスカリバー”だった。
ジェレミアの夢はナイトオブワンになる事だった。
一年前に途絶えた夢ではあるが、確かに志していた。
この殺し合いに巻き込まれるのが一ヶ月も遅ければ叶っていたのだが、未来を知らぬジェレミアにとっては途絶えたままの夢だ。
だからこの場にこの剣が置かれている事が、痛烈な皮肉にしか思えない。
それでもジェレミアはその剣を手に取った。
皮肉であろうと悪意であろうと、既に「縋る」と決めていた。
全高七メートルを超えるギャラハッドよりも更に大きかったはずのその剣は、サザーランドの背程の高さになっていた。
わざわざサザーランドでも扱えるように調整したのだろう。
そもそもエクスカリバーそのものは、第五世代のKMFが扱えるような出力ではない。
鞘から抜いて現れたのは金の柄、紫の刀身。
手にして問題がない事を確かめてからジェレミアは目を閉じ、大きく息を吐き出して、もう一度目を開ける。
「枢木……私はあの時、何も言い返せなかった」
――好きな人を生き返らせようと思って……何が悪いッ!!!
忠義と個人感情の間に迷い、スザクの方が正しいと思ってしまった。
人間らしい、真っ当な言葉だと。
スザクが洗脳されていたと知った今も、言葉それ自体の正しさはそのままで。
未だに迷いが振り払えたとは言えず、主の命を奪った仇との関係も中途半端なままで。
それでも。
――自分の命も掛かってねぇような軽い剣で、この志々雄真実を止められるわけねぇだろ!!
今は、何の理屈も付けられなくていい。
ただの開き直りで構わない。
意地の一つも張れないのでは、何も果たせはしないのだから。
「それでも守りたいと願って、何が悪いッ!!!」
今はただ吼える。
未来のない命であっても、こんな所で死にはしないと執着する。
死なせてなるものかと、何一つ譲ってなるものかと拳を握り、サザーランドを発進させた。
▽
V.V.は志々雄にランスロットと煉獄を譲渡する前に、二つの条件を提示した。
一つは翠星石の意向も聞く事。
もう一つは、サザーランドが会場に残る者達の手に渡るチャンスを作る事だった。
脱出者の特典と言っても煉獄・改、ランスロット、サザーランド、そのすべてが一人の手に渡るのでは公平性に欠くからだ。
そんなどこまで本気かも分からない説明を志々雄に聞かせながら、V.V.はやはり笑っていた。
対する志々雄はこの条件を快諾した。
志々雄にとって他の参加者を「間引く」のは事のついでであり、必死になるものではない。
そしてランスロットよりも下位の機体であるサザーランドは、ランスロットの性能を確かめるのに丁度いい相手と見なした。
KMF同士の戦闘を見物するのも暇潰しになる、その程度のものだった。
飽くまで「チャンスを与えた」だけで、ジェレミア達がそこに辿り着く前に力尽きればそれまで。
スザクと同じようにさざなみの笛でUNDEAD状態にしたロロを搭乗させるのみ。
彼らが志々雄の言葉を信じずに近寄ろうとしなければまた同様。
そして万一ランスロットが破壊されたとしても別の手を打つだけだ。
- 28 :
-
- 29 :
-
- 30 :
- 結局全てはV.V.の、そして志々雄の手の上である。
会場を見下ろす二人に踊らされるままに、サザーランドはランスロットと対峙する。
▽
サザーランドのファクトスフィアを展開、モニターで北岡達の姿を探す。
どうやら動けない程の怪我はしていないようで、間に合った事に胸を撫で下ろした。
「巻き込まれないうちに先に行け。
ここは私が相手をする」
外部用スピーカーのスイッチを入れてそう告げると、北岡達が動き始めた。
箒を失ってしまったように見えるものの、ランスロットはサザーランドの方に集中している。
徒歩での移動ではあるが、北岡達は無事に視界の外へ離脱していく。
一対一。
ランスロットは一振りのMVSを抜いた。
メーザーRレーションソード――高周波振動剣。
マイクロ波を増幅・発振した高周波振動を纏う斬撃用兵装だ。
灰色に近かった刀身は電力を注がれて赤く染まる。
エクスカリバーの半分程の細い刀身ではあるが、その威圧感は充分。
一太刀でも受ければ、サザーランド程度の装甲では確実に真っ二つにされる。
サザーランドがどの程度までV.V.に改造されているのかははっきりしないが、期待しない方がいいだろう。
KMFに乗ったから互角――ではないのだ。
KMFに乗る事で漸く同じ土俵に立ったというだけで、勝算の低さは大して変わらない。
元よりランスロットとサザーランドはそういう関係にある。
ランスロットの速度は通常のサザーランドの約二倍。
スザクが駆るランスロットはこれまでに数え切れない程のサザーランドを屠っている。
ランスロットが行う三次元的な立体運動もその出力あってのものであり、旧世代KMFには限界がある。
スザクにしか扱えないワンオフ機と誰でも乗れる量産機、ランスロットとサザーランドは同列に語れるようなものではない。
出力が多少上がったところで、小型のエクスカリバーを手にしたところで、埋め難い差。
それはジェレミアとて百も承知。
この差を覆すものは、パイロットの技術と神経電位接続による反応の速さだけだ。
元よりジェレミアの操縦技術は高く、指揮官でありながら戦場の最前線に立っていた。
そして改造によって得た常人離れした動体視力、反射神経、それを直接KMFに伝える神経電位接続。
持てる力を総動員しても届くかどうか。
そんな状況にあって、ジェレミアの手は震えていた。
抱く感情は恐怖ではなく、抑えがたい高揚だった。
ナイトオブセブン、枢木スザクが駆るランスロット。
元よりデスクで書類に向かうよりも、後方で指揮を執るよりも最前線でKMFに乗るのが好きだった。
一人の軍人として、パイロットとして、旧世代型とは言え自分のスペックを最大限に活かせる機体で彼と戦えるのだ。
彼が既に死体であると分かっていても――緊張も怯えもなく、今だけは後悔も疑念も投げ捨てて集中する。
機体の操縦のみに没頭するうちに、武者震いは止まっていた。
- 31 :
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- 32 :
-
- 33 :
- 「相手にとって不足なし……!!」
跳躍し、上段に構えたMVSを振り下ろすランスロット。
それをサザーランドはエクスカリバーという大剣を構えて正面から受け止める。
足場となるコンクリートが衝撃と重量で亀裂を走らせるが、まだ力負けはしていない。
大剣を振り抜いて捌くとランスロットが浮き、回転しながら後方に着地した。
ランスロットが持つMVSは二振り。
二刀流も出来るはずだがそれをしていない。
そして強化されてもなお出力の面で劣るサザーランドに、攻撃を受け止められている。
これらから推測出来るのは、ランスロットも決して余裕があるわけではないという事だ。
三人掛かりでブレイズルミナスやヴァリスを使わせ続けた事で、ランスロットは確かにエナジーを消耗している。
対するサザーランドはまだ起動したばかりであり、高出力のエクスカリバーを用いていてもまだ余力があった。
これでもまだ五分には足りないぐらいだが、気休め程度にはなる。
徒歩で動いていた北岡達を巻き込まないよう、車輪を回転させて東へと駆ける。
ランスロットにあっさりと追い抜かれるも、MVSによる斬撃を大剣で防いで更に東へ。
更地となったG−9、その東にはここまでの移動に使っていたのと似たような四車線道路とビル群があった。
大剣を振るうなら拓けた場所が望ましい、それに左右を建物に挟まれてはそれだけランスロットの足場が増える。
更地の方がサザーランドにとって有利になるのだが、警戒しているのはヴァリスの存在だ。
北岡達を狙っていたヴァリスに蹴りを入れた際、そこで見た形状はジェレミアが知るものとは異なっていた。
これまでのランスロットとサザーランドの様子を考えれば、V.V.がまた余計な事をしたとしか思えない。
ヴァリスの正体が掴めない以上、広範囲に被害をもたらすような戦術兵器である可能性も考慮する必要がある。
それ故に北岡達から距離を取り、かつ被害の範囲を狭められるよう障害物の多いルートを選んだのだ。
東へ疾走するサザーランドが、追い迫るランスロットに向かってアサルトライフルを斉射。
ランスロットは左右のビルの外壁を交互に蹴りながら移動してそれを回避する。
一呼吸のうちに間合いを詰められ、サザーランドは銃を捨てた。
ランスロットに投げ付けたライフルがMVSで両断される。
そのMVSが振り切られたところへ、サザーランドが大剣を振り下ろした。
ランスロットはそれを後退して躱し、大剣はコンクリートを砕くのみ。
車輪が即座に回転の向きを変えてランスロットを前へと押し出し、サザーランドに斬り掛かった。
横からの斬撃に、サザーランドの肩の装甲が一部破損した。
だが大剣が地面に刺さった状態のままサザーランドは車輪を回転させ、追撃に対し回避行動を取る。
大剣の刺さる角度が直角に近くなるよう腕で調節しながら、その陰に隠れるように移動。
刺さった大剣を盾にしてMVSを防御し、その一方で蹴りを放った。
大剣を挟んで反対側にいるランスロットの蹴りもまた同時で、ランドスピナー同士がぶつかり合う。
拮抗せずに互いに弾かれ、サザーランドは大剣を抜きながら、ランスロットは壁面を蹴りながら距離を取った。
素早いランスロットに重い大剣はすこぶる相性が悪いが、これ以外に対抗出来る武器もない。
未だ一太刀も浴びせられていないものの、今は持ち堪える事に集中する。
両者のランドスピナーが起動、車輪の回転で一気に加速する。
- 34 :
- 携帯投下の諸事情により、10〜20分程度投下を中断致します。申し訳ございません。
- 35 :
-
- 36 :
- 上から斬り掛かった大剣をランスロットが余裕をもって避け、MVSを突き出した。
再び地に刺さった大剣で受け止めるが、ランスロットは瞬時にその場で旋回。
サザーランドの横へと回り込まれ、MVSが振り下ろされる。
防御は間に合わない。
よってサザーランドは真横にいるランスロットに向けて大剣の腹を蹴り上げた。
型も構えもない、荒削りで大雑把な攻撃。
だが突き上げるような蹴りを乗せた一撃はMVSを弾き、ランスロットの胸の装甲へ到達した。
装甲に傷が走り火花が散る。
それでも破壊するには浅い。
高く持ち上がった大剣を握り直し、そのまま下方への斬撃に変える。
ランスロットもまたMVSを構え直しており、大剣と正面から打ち合った。
衝突して鍔迫り合いになり、どちらも一歩も退かない。
両者が両腕で剣を支える中、ランスロットが腰部のハーケンを射出した。
両者の間の距離は一メートル程、ハーケンがその間を高速で飛ぶ。
しかしそれを捕捉したサザーランドは間髪入れずに胸部のハーケンを打ち込んだ。
過たずハーケン同士がかち合って互いに弾かれ、サザーランドがもう一機の胸部ハーケンを撃つ。
ランスロットはくぐるように大剣をいなしつつハーケンを避け、その上でハーケンワイヤーを切断。
これでサザーランドに残る武器は大剣とハーケン一機、それにトンファのみ。
サザーランドは兵装を確実に削られ、それでもなお食い下がっていた。
▽
剣で打ち合いながら大通りを駆け抜ける。
時折ランスロットがビルの外壁にハーケンを打ち込んで変則的な動きを取るが、攻撃はどれも決定打にはならなかった。
ランスロットは確かに速いが、サザーランドがその動きを「見てから」反射行動を取るまでの時間はほぼゼロに等しい。
マシンスペックでは圧倒していても、サザーランド側はパイロットの技術と神経電位システムが不足を補う。
ランスロットのパイロットが存命であったなら。
ギアスという呪いの力が健在であったなら、全く別の戦いになっていたであろう。
両者が駆けるうちに景色が変わっていく。
ビル群は次第に市街地へ、途中で柵を飛び越えると程近くには観覧車にジェットコースター。
既にG−10に到達していたらしい。
そこでランスロットがMVSを収めた。
ジェレミアはその事を、疑問には思わない。
サザーランドとの戦闘が始まってから、ほとんどブレイズルミナスを使わなくなっているのにも気付いていた。
考えられる理由は一つ、エナジー切れが近いのだ。
サザーランドが大剣を構え直すと、ランスロットは空いた手でヴァリスを抜いた。
そしてヴァリスは変形する。
銃身が上下に割れ、その間からより大きな銃口が顔を出した。
ヴァリスの銃口に収束される赤い光。
ジェレミアの背筋が凍った。
ランスロット本体は戦場に導入された当時のもののようだったが、兵装は最新鋭のもの。
第九世代KMFランスロット・アルビオンが装備するはずだったスーパーヴァリス。
撃つのはハドロン砲。
分子を亜音速で撃ち出す、圧倒的熱量によって戦場を蹂躙する荷電粒子砲だ。
サザーランドがこれに耐えられるはずがない。
ランドスピナーで後退し、射線を避けようとする。
だが銃口はサザーランドにピタリと追ってきていた。
サザーランドの速度では逃げられそうにない。
狙いを定め、ランスロットが引き金を引く。
塗り変えられる周囲の色。
ジェレミアは迫り来る『死』そのものとも言える光を前に、覚悟を決めた。
- 37 :
-
- 38 :
- 支援
- 39 :
-
- 40 :
- サザーランドが桃色の光を纏った大剣、エクスカリバーを振りかぶる。
「おおおおおおおおお!!!!!!」
黒い光と大剣が接触、辺りに光が飛び散った。
ギャラハッドが所有したエクスカリバーはただの剣ではない。
エネルギーフィールドを放出する事でビーム砲をも拡散させて払いのける、攻防一体の機能を持つ。
中華連邦最強のKMF・神虎のビーム兵器、天愕覇王荷電粒子重砲をも弾いた実績がある。
ハドロン砲とて跳ね返せない道理はない。
刀身を中心にして環状に纏わるエネルギーが、ハドロン砲と拮抗する。
「ぐっ……ううう……!!!」
だがサザーランドのコックピット内にまで熱が届く。
ギャラハッドのエクスカリバーの半分程のサイズ、つまりは出力も半分以下になっている。
それを支えるサザーランドの力も、ギャラハッドと比べてしまえば玩具のようなもの。
ギャラハッドと同じ事は出来ないのだ。
コックピット内、正面モニターにエラー表示が群を成す。
甲高い警告音が響き、機体の損傷率が瞬く間に上昇していく。
「はああああああああああッ!!!!!」
斬り払う。
ハドロン砲の黒い閃光が割れ、弾ける。
同時にエクスカリバーも砕け散った。
周囲に撒き散らされたハドロン砲の熱が市街と遊園地を舐め上げ、一帯を炎に包む。
防ぎ切れなかった余波を受けたサザーランドは全身に高熱を浴び、各部から放電による火の粉が飛んだ。
エクスカリバーに注ぎ込んだ為、エナジーの残りも僅か。
モニターがエラー表示に埋まる。
「WARNING!」の文が並び、脱出装置がオートで作動しようとしている。
コックピット内の明かりは非常用の薄赤いライトを残すのみとなっていた。
「……そ、れで……」
傷と疲労、熱を抱えたまま、ジェレミアは掠れた声を絞り出す。
「それで、終わりか……!
ならば――」
このサザーランドは神経電位接続によって繋がったジェレミアの分身にも等しい存在。
大破寸前であっても意志さえあれば、この機体の操縦は可能。
サザーランドはまだ動ける。
ジェレミアにまだ戦う意志が残っているならば、戦える。
「次は私の番だなぁあッ!!!」
座席のコネクタとプラグの接合部が強いオレンジの光を放つ。
各部から火花を散らすサザーランドが、軋みを上げながら顔を上げた。
サザーランドの両腕が変形、スタントンファを展開。
近接格闘用の装備であり、この機体を操作していた頃のジェレミアが最も多用していた武器だ。
モニターで確認した表示を信じるなら、これもV.V.の手が加えられて強度を増しているらしい。
スタンガンのように電流を流す機能もあるが、本来の用途に比べればさほど重要ではない。
最も重要な、その本来の用途はただ一つ。
殴る。
「はあああああ!!!!」
- 41 :
-
- 42 :
-
- 43 :
- 一打。
ランスロットがMVSを抜いて防ぐ。
しかしその刀身は灰色であり、やはりハドロン砲を最後に既にエナジー切れを起こしている。
振動していないMVSはただの剣に過ぎず、トンファが叩き折った。
二打。
ランスロットが残る一振りのMVSを抜き、その先端がトンファとぶつかり合う。
そして砕けたのは、MVSの方だった。
三打。
ランスロットが右腕の手甲部からハーケンを突き出させ、拳を振るう。
トンファとハーケンのブレードが接触し、トンファの先端から電流が流れ込んだ。
ランスロットがそれによって出力を落とし、競り勝ったのはサザーランドだった。
ブレードを弾き、ランスロットの右肩へとトンファを振り下ろす。
パーツを散らばらせながら右腕が砕け、地面に落下した。
四打目を振ろうとして構えるが、ランスロットが回し蹴りを放つ。
ランドスピナーを起動して後方に回避、そして再び前進しようとした途端、突然サザーランドが動きを止めた。
「っ、神経電位接続が……!」
大破しかけた状態で戦闘を続行した為、機体の損傷が進んでいる。
接続されたコネクタから指令を出してもサザーランドは動かない。
ランスロットが更に一撃、右足による蹴りを見舞おうとしていた。
「まだまだァッ!!!」
操縦桿を強く握り、手動でサザーランドに指示を出す。
トンファを収納、守りを固めた左腕で蹴りを防ぐ。
常ならばそれだけでKMFを破壊していた蹴りも出力が下がっており、かろうじて腕を砕かれるだけで済んだ。
残るトンファを構え、今度こそ四打。
ランスロットの腕の防御の上から叩き込む。
砕けていく腕の装甲、トンファから流し込む電流によってランスロットから激しく火花が散った。
しかし、足りない。
エナジー切れで電流が途切れ、防御を突破する一手も足りず、機体が互いに軋みを上げる。
モニターにノイズが走り、明滅。
映像が乱れて見えなくなった一瞬、それ故に反応が遅れた。
モニターを突き破る赤。
ランスロットの腰部のハーケンが、サザーランドの胸を貫いた。
サザーランドの胸部のハーケンさえ砕き、パイロットにまで到達する。
「が、……はっ……」
コックピットの中で、ゴトンと重い物が落ちる音。
ハーケンはジェレミアの左脇とその真横を貫いていった。
即ち左腕。
機械の腕は切断されてコックピットの床に転がり落ちた。
左胸の損傷は志々雄に斬られた脇腹よりも更に深く、腕の切断面から赤黒いオイルが滴る。
正面とその上部、そして左側のモニターは電流を弾けさせて暗くなり、映像を映さなくなった。
こうなっては脱出装置も作動しない。
体の内側を焦がすような熱に、意識が遠のく。
結果は敗北だった。
だがランスロットを行動不能にするという目的は果たせた。
負けたとしても、悔いなど――
- 44 :
-
- 45 :
- 「あるに、決まっているだろう……!!!」
戦っているのはジェレミアではなく、ジェレミア「達」。
戦っているのは枢木スザクではなく、彼の残骸。
この敗北は仲間達の、枢木スザクの恥になる。
そんなものを許容出来るはずがない。
残った右腕で操作してランドスピナーを起動、僅かに後退。
そしてそこから車輪を逆回転させて得た推進力を乗せ、トンファを振りかぶる。
モニターは既に使い物にならないが、経験と勘でランスロットの位置を捕捉した。
防御した腕ごとランスロットのコックピットブロックを砕く。
激しい火花が動力部のサクラダイトに引火して、二機のKMFは同時に炎に包まれた。
▽
- 46 :
-
- 47 :
-
- 48 :
-
- 49 :
-
- 50 :
- ランスロットとサザーランドが燃える。
元より拡散したハドロン砲によって燃えていた一帯は、街灯など無くても昼のように明るかった。
サザーランドの脱出装置は破損していたものの、運良くコックピットの開閉部も爆発の衝撃で外れていた。
そこから自力で脱出し、ジェレミアはKMFから飛び降りる。
ランスロットと交戦するうちに到達したその場所は、遊園地に併設されたホテル。
海にほど近く水平線さえ見渡せる、広い庭と繋がったテラスだった。
左腕を失って重心が変わった事もあり、コックピット程度の高さからの着地も覚束ずよろめいた。
吸い込む空気さえ燃えるようで、体の内と外の熱で額に汗が浮く。
視界が霞み、歪み、揺れる。
しかしまだ終わっていない。
決着はついていない。
背後に聞こえた足音に振り返るとスザクが立っていた。
ジェレミアがそうしたように、スザクもまた自力でコックピットから外へ出ていたのだ。
反応が遅れ、スザクの体当たりを避けられなかった。
ハーケンの直撃で裂けた腹部に焼け付くような痛みが襲う。
「ぐっ……」
膝を着きそうになるが、再度突き上げるような一撃が腹に見舞われた。
血を吐き、熱された地面に這う。
視線を遣れば腹には二つの灰色の金属片が刺さっていた。
MVSの破片だろう、ラクカジャの効果が続いていてもなお攻撃が通ったのはスザクの身体能力故か。
破片の幅は刀よりも広く、傷は背の装甲がなければ貫通していたであろう程深い。
スザクは何ら表情を変えずに、倒れたジェレミアを見下ろしていた。
白兜という仮面を剥がされた少年の目は、文字通り死んでいる。
ジェレミアもロロと遭遇して既に理解している、これがただの動く死体であると。
この状態で懐にある昇天石を投げてもスザクには避けられてしまうだろう。
僅かな逡巡の間に生身の脇腹を蹴られて体が浮く。
ホテルの内部とテラスとを繋ぐ出入り口、それを支える大理石の柱に衝突して地に伏せた。
衝撃で半身から火花が飛ぶ。
体が重い。
だが腕で傷を押さえ、柱を背の支えにして立ち上がる。
「枢木、私は――」
向かってきたスザクの拳を掌で受け止めて握り込んだ。
だが左腕を失ったジェレミアに出来るのはそこまでで、もう一方の拳は避けられそうになかった。
腹に拳が突き刺さり、体がくの字に折れる。
傷から血が噴き出すも、まだ膝を着かない。
握り込んだ手は放さない。
「昔、君に助けられた事があっただろう……?」
背を折り曲げ、頭を低くして下を向いたまま言う。
スザクの死体に言葉など届くはずはなく、鋭い拳がジェレミアの頬を打った。
火花が散り、顔の左半分を覆っていた仮面が外れて落ちる。
地面と仮面とがぶつかり合う乾いた音。
それでも踏み留まり、顔を上げる。
今度はスザクと顔を突き合わせる、死んだ目を見据える。
「その礼を……伝えておきたかった」
一年前。
純血派の威信が、名誉がと躊躇っていた為に、結局スザクが生きているうちに伝えられなかった。
本当に伝えるべき相手、枢木スザクはもうどこにもいない。
ロロの死体に向けた言葉も、本来はロロの存命中に言うべきだった。
もう誰の耳にも届かない、聞いているのはジェレミア自身のみ。
その当人すら意味を見い出せないのでは自己満足にもならない。
- 51 :
- それでも、言わずにはいられなかった。
そしてやはりスザクの死体に変化はなく、続けて殴打されたジェレミアは衝撃で脳が揺れる。
よろめくがスザクの拳は握り込んだままであり、引っ張られたスザクの体も傾いた。
そこでジェレミアは倒れずに一歩踏み出し、それを軸足にしてスザクの腹に蹴りを入れる。
同時に手を離すと、スザクは回転しながら後方に跳んで着地した。
そこから数秒をおいて、同じやり取りが繰り返される。
殴り掛かるスザク。
拳を掌で受け止めるジェレミア。
だが今度は無手ではない。
スザクが殴ったのは、ジェレミアの手の中にあった昇天石だった。
石が光り、その中から現れた夥しい数の護符がスザクを囲む。
「すまない……もっと早く、止めてやりたかった」
スザクを中心に、白い光の柱が立ち昇る。
死体に戻り、炎の中に倒れた少年を見て胸に湧くのは虚無感だけだった。
ジェレミアの不運も大概だったが、スザクのそれと比べれば余りに恵まれていた。
水銀燈に出会えばスザクでなくとも洗脳されていただろうし、彼が初めに奈緒子と出会っていればやはり保護していたはずだ。
スタート地点でジェレミアはほんの少し運が向き、スザクは徹底して向かなかった。
その大きな差が直接、今ある結果に繋がった。
ルルーシュの遺体に発砲したと書かれていた。
偽りの想い人を失ったと思い込んだスザクは、どんな思いで親友の存在を拒んだのだろうか。
最期の時、惚れ薬が切れた後に自分を取り戻せたのだろうか。
あるべき姿、侍として逝く事が出来たのだろうか。
皇女ユーフェミアの名と、向き合えたのだろうか。
何一つ分からない。
何も聞けなかった。
何も話せなかった。
看取ってやる事すら出来なかったから。
ほんの十行程の無味乾燥な文章でしか、スザクを知る事は出来なかった。
スザクが進んだ道を思えば、いっそ何も気付かずにRた方が幸せだったかも知れない。
それでもジェレミアは過去に、スザクの正しさに救われたのだ。
スザクが憎しみに囚われたまま死ぬのでは、かつての彼の正しささえ否定されているように思えた。
だから最期だけでも狂気から解放されていて欲しかった。
今更何を望もうと、何もかもが遅いとしても。
スザクはこの殺し合いの中でのジェレミアの在り方を、自分のそれよりも『正しい』と、『侍』としてあるべき姿だと感じていた。
大切な人の為に手段を問わないスザクの在り方を『正しい』と思ってしまったジェレミアとは逆だった。
噛み合わない。
そしてそれを互いに伝える事も出来ず、終わった。
虚しい幕切れだった。
背にした柱からずり落ちて、ジェレミアはその場に座り込む。
月は西へ西へと傾き、東の空は既に白み始めていた。
波打ちながらその色を反射する海面は、星のように瞬いて見える。
遠かった朝が近付いていた。
狭間達は無事だろうか、北岡達は彼らと合流出来ただろうか。
研究所は。首輪は。志々雄の動向は。
V.V.は。薔薇水晶は。翠星石は。シャドームーンは。
まだ何も終わっていない。
何の決着もついていない。
だが立ち上がろうにも手足に力が入らなかった。
一歩も動いていないはずなのに、いつからか血溜まりの中に座っていた。
視界の半分――左目が何も映さなくなっているのは殴られた衝撃によるものか。
- 52 :
-
- 53 :
- 左半身が絶え間なく発する火花はますます激しくなっている。
喉の奥や舌に纏わり付く鉄の味が不快で血を吐き出したが、口元と服を赤黒く汚すばかりで楽にはならなかった。
辺りの炎が広がっていく。
それまで燃えていなかったものも燃えていく。
ホテルもとうに火に飲まれており、今いる場所も遠からず焼け落ちるだろう。
「……ここまでか」
時間を掛けて漸く事態を飲み込み、呟く。
他人の手の中で踊らされるまま、同じく弄ばれた死体と戯れて。
これではただの犬死だ。
――貴公の忠節は、まだ終わっていないはず。
窮地に立つ度に命を長らえてきたが、こうなってはそれらが何の為にあったのかも分からない。
――生きて、ね。
――私の分も……。
死んでいった者達の為に、元凶に一矢報いる事も。
問い質す事も戦う事も、どころか仲間との合流さえ出来ない。
――それなら俺は後藤を倒す。最速でな。
失ったもの、諦めたもの、やり残したものばかりが数を重ねていく。
――危険だと判断したら逃げていい。
――それで研究所や我々が襲われる可能性があるとしても、とにかく絶対に死ぬな。
死に掛けの身体を引き摺って駆けずり回って血反吐を吐いて。
命を懸けても何も得られなかった。
後には何も残らない。
「結局私は、何も守れはしなかった……ッ」
生き残った者達も、約束も、何もかも投げ出して一人死んでいく。
虚しく、あるのは悔いだけだ。
奈緒子の死以来、アイゼルを失ってもなお流れなかった涙が落ちた気がした。
それも外気の熱に煽られて蒸発し、跡も残さずに消える。
最早足掻く気力すらなくなって、残った右目で舞い散る火の粉を眺めていた。
炎はますます激しく踊り、周囲の景色を舐めるように包んでいく。
燃え盛る草木、崩れる建物、割れる窓ガラス、全ての雑音も既に気にならない。
耳を傾ける事すら億劫だった。
「……」
炎の中、一際強い光に目を細める。
東の空と海の境界から差し込むその光は、炎よりも明るく柔らかい。
空と海をオレンジ色に染め上げ、扇のように広がって夜の闇を追い払っていく。
風が吹き抜ける。
熱風ばかりが吹き荒んでいたその場所に、少しだけ冷えた空気が流れ込む。
風向きが変わり、炎を震わしてその勢いを弱くする。
- 54 :
-
- 55 :
-
- 56 :
- その新しい風を舞い込ませたのは、既に見慣れた二人だった。
上空から陽光を遮るように降り立ち駆け寄ってくる姿に、ジェレミアは目を丸くする。
「何故」と言おうとして開いた口は、言葉を紡ぐ事も出来ずにいる。
「何で驚いた顔してるかな……ここまで来て、言われた通りさっさと先に行くってわけにいかないでしょ。
俺一人ならともかくつかさちゃんもいるのに」
「ジェレミアさん、腕……怪我が……!」
騒がしさが強制的に耳朶を打つ。
眩い朝陽を背負った二人。
片膝を着いた北岡が手を差し伸べてくる。
死の間際に見る夢ではないかと、目の前の光景を信じられずにいた。
何故逃げなかったのかと、巻き込まれたらどうするつもりだったのかと言おうとしていた。
だがジェレミアも逆の立場であれば、やはりそこに留まっていただろう。
全員で、帰る為に。
人形のような音を立てて軋む腕を持ち上げ、差し伸べられた手に触れる。
そして首を小さく横に振った。
「……無理だ、北岡。
私はここに残る」
二人が驚いた顔を見せる。
ジェレミアの手は力なく地に落ちた。
握り返す力も残っていない。
「ちょっと、まさかこの期に及んでまだ死にたいとか、」
「違うッ!!」
絞り出すような声を出した事で体から火花が強く飛び散り、ジェレミアの襟に掴み掛かろうとしていた北岡の手が離れる。
北岡は「結果は同じだ」と言うかも知れない。
だがジェレミアはこの場を生き延びる為に戦っていた。
死んでいった者達の分まで生き、守りたかったものを守り、仲間達が帰っていくのを見届ける為に戦っていた。
北岡が差し伸べたこの手を取れない事が、どれだけ口惜しいか。
純血派よりも黒の騎士団よりも付き合いが短く、けれど今まで得たどんな仲間よりも信頼した二人に。
この二人から話を伝え聞くであろう狭間やクーガー達に。
「この結果を望んでいた」などと思われたくはなかった。
左半身の損傷は限界値を超えていた。
右半身も既に手遅れだ。
差し伸べられた手を取る事は出来ない。
それを理解したようで、北岡はうなだれて溜息を吐いた。
北岡がそうして億劫そうに立ち上がろうとするも、悲鳴に引き留められる。
「ぃ、やです……!!
だって、……だって皆、で……一緒に、帰るって!!
言って……私……いや……」
つかさはぺたりと座り込んでしまった。
北岡が立ち、つかさの肩を叩いて促しても首を横に振って嫌がった。
つかさも状況を理解出来ていないわけではないのだろう。
彼女の目からは涙がとめどなく落ちていく。
熱で蒸発するのも間に合わず、次から次へと流れていく。
「何か方法は」と途切れ途切れに尋ねる声に、北岡もジェレミアも答えない。
別れを惜しむような間柄でもなかったはずだ。
- 57 :
-
- 58 :
-
- 59 :
- 互いに相手を見れば殺した事を、殺された事を思い出す。
そしてつかさに負い目があるように、ジェレミアにもつかさを見殺しにしようとした負い目がある。
罪悪感を抱えている。
だから極力相手の視界に入らないようにして、けれどいつでも駆け付けられる距離を保って。
視線を合わせる事すら限られ、会話も必要最低限。
そんな相手の為に、今更流す涙もないだろう。
そう思う。
だがつかさがそう思わないであろう事は分かっていた。
それが分からない程の浅い付き合いではなかった。
「もういい」とジェレミアが言っても、つかさはやはり首を横に振る。
赤子のように大声で泣く。
幼子のように駄々をこねる。
「置いて、くなんて……」
「わざわざ、死に顔を見られたいとは思わん。
巻き込まれないうちに、離れたまえ」
守れなかったものの数を数え、悔恨に悔恨を塗り重ねて。
それなのに仇にこうも惜しまれては、毒気を抜かれてしまう。
背負ってきた悔いまで溶かされてしまいそうになる。
もう一度北岡に促され、つかさは服の袖を目に当てたまま立ち上がった。
泣きじゃくり、細い肩も足も頼りなく震えている。
それでもここで我儘を続けて北岡を困らせる真似はしない。
一日前ならばともかく今は、自分のやるべき事を知っているはずだ。
とは言えつかさが自力で立ち上がった事に、ジェレミアはほんの少しだけ安堵した。
「移動ぐらいした方がいいんじゃないの」
「ここで良い。
それより……早く、狭間と合流してやってくれ」
誰よりも優れた頭脳、無二の能力。
そして一人で清濁も責任も全てを負おうとするその背に、自然と自らの主を思い出す。
だからそこに支えとなる者が必要な事も良く知っていた。
北岡とジェレミアのやり取りを余所に、つかさはふらふらと歩を進めてしゃがみ込んだ。
手にしているのはジェレミアが落とした仮面だった。
「これ……貰って、いいですか」
「……好きにしたまえ」
刀と違って何の役にも立たないだろうが、つかさはそれを大切そうに胸に抱き締めた。
熱風が吹き、もう時間が残されていないと告げている。
一度は収まりかけていたつかさの涙は再び溢れ、仮面の上に落ちた。
つかさが北岡と並ぶようにジェレミアの正面に立つ。
そして深く頭を下げた。
「ずっと……り、がど……ござ、いまし、た……っ」
嗚咽に潰れ、聞き取りにくい声だった。
それを見ていた北岡も、申し訳程度に続ける。
「あんたの事は嫌いだけど、結構助かったよ。
お疲れ、一応ありがとう」
感謝の言葉を口にされて、改めて思い知る。
既に理解して秘めていた事ではあるが、漸く正面から認められた。
- 60 :
-
- 61 :
- 本当に感謝するべきなのは。
支えられていたのは、縋っていたのは、依存していたのは――守られていたのは、ジェレミアの方だった。
「誰かを守る」という役目を己に課していなければ、立っている事すら出来なかった。
失ってばかりであっても独りになった事は一度もなく、本当に折れそうな時にいつも仲間がいた。
「感謝、している。
私は……貴公らと出会えた事を、誇りに思う」
ルルーシュと再会し、騎士として新たな人生を歩む事になった時。
それは自分を、世界さえも変えてしまうような瞬間だった。
不安定で何の目標もなかったはずの道が輝いて見えた。
それだけに主の喪失は、世界が壊れる事に等しい。
それでも今まで自暴自棄にならず、諦めもせず、戦い続けて来られた。
仲間がいたからここに辿り着いた。
その感謝を臆面もなく告げる事が出来たのは、ロロに、スザクに、云えなかった言葉があったからだ。
伝えようと思った時にはいつも手遅れだった。
今度こそ、後悔はない。
つかさはまだ泣いていた。
何度も鼻を啜り、幾ら袖で拭っても涙が落ちる。
だが息を止めてしゃくり上げるのを無理矢理抑え、それから大きく息を吸い込む。
そしてつかさは、笑ってみせた。
歪んでいて、不自然で、まだ涙が溢れていて、とても満面の笑みとは言えなかったけれど、笑おうとしていた。
「行ってきます」
いつかに聞いた言葉だった。
その時はジェレミアの方から送り出したのだが。
別れに際してこれを選ぶのは、とてもつかさらしく思えた。
まるで明日にでもまた会えるような、そんな錯覚を起こしてしまいそうになる。
――申し訳ございませんルルーシュ様。
――私は、最後まで柊つかさを……
これはきっと主への最後の、そして最大の不忠であろう。
常に険しくしていた眉間の力を僅かに解く。
強ばらせていた頬を少しだけ緩ませ、口の端を微かに持ち上げる。
「ああ、行け」
それなのにどうしてか、後悔は微塵も感じなかった。
【二日目/早朝/G−10 遊園地上空】
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、ブラフマーストラ@真・女神転生if…
[支給品]支給品一式×2(水のみ3つ)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、食材@現実(一部使用)、
パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた、メタルゲラスの角と爪、ジェレミアの仮面
[状態]精神的疲労(大)、ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
- 62 :
-
- 63 :
-
- 64 :
-
- 65 :
-
- 66 :
- 0:……。
1:錬金術でみんなに協力したい。
2:狭間達と合流する。
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)
[所持品]:支給品一式×5(水×2とランタン、鉛筆一本と食料の一部を消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、咲世子の煙球×1@コードギアス反逆のルルーシュ、
五ェ門の確認済み支給品(0〜1)(刀剣類では無い)、昇天石×1@真・女神転生if…、贄殿遮那@灼眼のシャナ、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
ジェレミアの確認済み支給品(0〜1)
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
0:……。
1:つかさに対する罪悪感。
2:狭間達と合流する。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
【サザーランド純血派機@コードギアス 反逆のルルーシュ】
ブリタニア軍が開発した量産・普及型KMF(ナイトメアフレーム)。
G−9地下のKMF格納庫に収容されていた。
純血派機のシンボルとして機体の頭部のファクトスフィアと両肩が赤く塗装されている。
起動キーはV.V.の手元にあり、バトルロワイアルの進行状況次第で参加者に渡す予定もあった。
型式番号 RPI-13
全高 4.39m
重量 7.48t
装備 スタントンファ、スラッシュハーケン、アサルトライフル
第五世代KMFであり、第四世代のものよりもコクピットの居住性・生存性の他、機動性の向上が図られた。
R2では多くの新型KMFが登場したため旧式となったが、ジェレミアは可翔式やサザーランド・ジークという形で使用し続けている。
V.V.の改造によって、本来この機体に用いられていなかった神経電位接続システムが採用された。
またサクラダイトの使用量を増やし出力増大。
更にエンドレス・イリュージョンのG-ER流体システムが導入され、搭乗者と機体の伝達速度がより速くなっている。
【エクスカリバーコードギアス 反逆のルルーシュR2】
第九十八代皇帝のナイトオブワン・ビスマルクの専用機ギャラハッドが背中に装備する巨大剣。
皇帝が直々に命名したものである。
元の刀身はギャラハッド自体の全高七メートルすら上回るほど巨大。
収納時の機動力低下を防ぐためか鞘の先端にはランドスピナーが装備されている。
巨大な刀身からはピンク色のエネルギーフィールドが放出されており、天愕覇王荷電粒子重砲でさえも拡散させ払いのけてしまうほどの高威力を誇る。
この場ではサザーランドが扱えるよう約半分のサイズとなった為、出力もそれに合わせて低下した。
▽
- 67 :
-
- 68 :
-
- 69 :
- 二人が立ち去ってその背も見えなくなった頃には、炎は再び勢いを取り戻していた。
四方を火に囲まれ、傍らに転がっていた死体は既に火の手に飲まれて人の形を残すばかり。
これならもう志々雄やV.V.に利用される事もないだろう。
状況は何も変わっていない。
むしろ時間の経過によって悪化したと言ってもいい。
それなのに、不思議と気分は晴れやかだった。
「すまん、な……枢木。
私ばかりが、納得のいく結果に……なってしまった」
その代わり最期ぐらいは付き合おうと、小さく付け足す。
北岡に頼んで炎の来ない場所に移る事も出来たが、それではスザクを独りにしてしまう。
生前に何の借りも返せなかった、その分してやれる事はこれしか思い付かなかった。
ナイトオブゼロとナイトオブワン。
ゼロとナイトオブワン。
第九十九代皇帝ルルーシュと、二人の仮面の騎士による世界の変革。
この先、二人に訪れていたはずの未来をジェレミアが知る由もない。
ルルーシュがゼロとして初めて表舞台に立った時、ルルーシュが皇帝として最期を迎える時、そのどちらにも立ち会うはずだった二人。
奇妙な関係にあった二人は、結局敵となったまま終わってしまった。
この結末が残念ではあったが、今はもう諦めがついている。
左半身を蝕んでいた火花は徐々に収まっていき、やがて全体の機能が停止する。
それに併せて急激に意識が鈍り、朝焼けの名残を惜しみながら目を閉じた。
目蓋の裏に届く温かな光。
思い起こすのはいつか見たアリエス宮の夢。
誰もが笑っていられる幸せな世界。
実現し得ないと分かっていても、夢見ずにはいられない。
「ルルーシュ様、マリアンヌ様……」
二人の主はこの姿を見て呆れるだろうか。
それでも――
「遅ればせながら私も、そちらに――」
葛藤も後悔も置き去りして、静かな眠りにつく。
訪れるはずだった未来にて、1と0の名を冠するはずだった二人の騎士は、炎の中に消えた。
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】
- 70 :
-
- 71 :
-
- 72 :
- 投下終了です。
投下途中での中断、失礼致しました。遅い時間まで御支援ありがとうございます。
誤字脱字、問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。
- 73 :
- 投下乙です!
ジェレミアああああああああああああああああああああああ!!!!
ここで退場するとは……熱い死だった……!
原作から続くスザクとの因縁、この多ロワでの話、すべての総決算だった……!
ロボもカッコよく動いているところが想像できるし、それでジェレミアの心情も痛いほど伝わってくるし……!
大作投下乙でした!
- 74 :
- 投下乙です!
ナイトメアの動きの細かさ、人vsロボからロボvsロボの戦闘の移り変わりが熱い…!
スザクやロロに対するジェレミアの思いも見事に書き込まれ、その覚悟からのこの結末…、とても引きこまれました!
そして最後に。ジェレミア…、お疲れさま…
- 75 :
- 状態表にて、ジェレミアのデイパック内の支給品がつかさではなく北岡の所持品になっていた為、Wikiにて修正させて戴きます。
失礼致しました。
- 76 :
- 憎しみ、悲しみ、孤独感、閉塞感。
それらの感情を持っている人、
何らかの形で、伝えたい人がおりましたら、
お願いいたします。
特に私が今、重要視しているのは、
憎しみというものの恐ろしさ
というのを、くだらない世界に知らせてやりたい、という意志を持った方です。
そうでなくても、勿論うれしいです。
アドレスは、
mofury100tb@gmail.com またはサイト内のフォームよりお願いいたします。
http://www.aozorakanshokai.co.jp/
絶対に、これまでもし一人で憎しみを伝えようとしていたならば、
プラスの要素もあると思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
送ってくださるのは、捨てアドで結構です。
- 77 :
- 投下乙です!
コードギアスは把握してなかったけどそれでもうならざるを得ない熱い戦いだった!
ジェレミアがつかさに対して複雑な感情を持ったまま、だけど守れなかったことを悔やむシーンは涙が…
ギアスを把握していなくてもったいないとつくづく感じた話でした
改めて投下乙でした!
- 78 :
- 男を支えたのは忠義。
そして男が貫いたのも忠義。
果てに悔いなどあるわけもない。
騎士、見届けさせていただきました。闘家乙です。
- 79 :
- ひぐらしのなく頃に途中まで何巻か読んだんだけど
度の順で読んでいいかわからずに読むのやめちゃったわ
- 80 :
- 今日の気になったニュース
【芸能】乙武洋匡さん、人気レストランから入店拒否される・・・店主が謝罪★2
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1368963217/
- 81 :
- つかテレビ面白いの全くやってねえな
- 82 :
- てst
- 83 :
- よっしゃー! 規制解除されたぞー!
- 84 :
- そろそろ予約から一ヶ月かー
因果応報みたいな大作が来るのだろうか
- 85 :
- このロワトップクラスの不人気が、またやらかしてしまうのか?
- 86 :
- >>85
このロワに不人気なキャラなんているのか?
- 87 :
- 翠の子はなあ・・・
今でこそこんな感じだけど後から汚名返上してくれると信じてる
- 88 :
- 今の多ロワの最強ってシャドームーン、狭間、志々雄の三竦みかねぇ
- 89 :
- 翠の子が漫画版でも大変なことになってる……
- 90 :
- 本予約きた…!
- 91 :
- どんとこい
- 92 :
- ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0233.png
ttp://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0234.png
支援イラストを代理で貼らせていただきます
- 93 :
- うおおおお支援絵乙!!
- 94 :
- ついに今日か・・・
- 95 :
- お待たせしました。
投下を開始します。
- 96 :
- 簡素な部屋の中で抱き合う二体の美しい少女人形。
それは他の何者かの悪戯でそうなった訳では無い。
二体の人形、それ自体が自ら抱き合っているのだ。
二体の人形、翠星石と薔薇水晶はどちらも自らの意志を持つ、生きた人形なのだ。
翠星石を包み込むように抱きしめる薔薇水晶。
程なく、薔薇水晶は翠星石から離れる。
翠星石はどこか名残惜しそうな様子だが、薔薇水晶は構わずに部屋から出ようとする。
部屋の扉からではなく、部屋の壁に掛かっている鏡で。
「……薔薇水晶、どこに行くですか?」
「私はどこにも行かない。ずっとあなたのそばに居る……」
薔薇水晶の返答を聞いても、翠星石の不安は消えない。
姉妹であるにもかかわらず、薔薇水晶の意思は不明瞭な点が多い。
それでも、今の翠星石にとっては唯一そばに居る大切な姉妹であり、
何よりこの場で信用できる、唯一の存在である。
その薔薇水晶が鏡から居なくなってしまった。
一人部屋に残された翠星石は、どうしようもない心細さに襲われる。
思い出したくないこと、そして考えたくないことも一人になると浮かんでくる。
何で一人になってしまったのだろう。
本来、翠星石がこんな場所で、大人しくしていなければならない道理は無い。
首輪を外して、殺し合いの会場も脱出できたのだから、
家に帰ろうとするなりすれば良いのである。
確かにそれは簡単な話ではない。
今の翠星石は、制限によってnのフィールドと言う移動手段を使えない。
そして現在翠星石が居るのは、V.V.の本拠地。云わば敵地にあたる。
軽々しく動き回るのは危険である。
それでも、本気で帰りたいのであれば幾らでも動きようがあるはずだ。
翠星石が帰ろうとしない理由。
それは単純に帰るつもりが無いからだ。
この殺し合いの中の渦中は、翠星石にとって耐え難い恐怖と苦痛に満ちた物だった。
更に翠星石は殺し合いによって蒼星石と真紅と水銀燈、そして雛苺まで四人の姉妹を失っている。
その上、殺し合いの恐怖と苦痛から翠星石を守っていた城戸真司を死なせてしまったのだ。
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