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2013年01月エロパロ342: 古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ6 (166)
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古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ6
- 1 :2012/04/17 〜 最終レス :2012/12/17
- 古代〜中世っぽい雰囲気のある架空の世界を舞台にしたエロSS投稿スレです
魔法・竜・妖精・天使・悪魔・獣人OK
洋風、和風、中華風、アラビア風等々、ベースとなる地方は問いません
オリジナル専用になっておりますので、版権モノで書きたい方は他を
あたってください
前スレ
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ5
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1284381359/l50
前々スレ
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ4
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1246868732/
前々々スレ
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ3
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218039118/
前々々々スレ
古代・中世ファンタジー・オリジナルエロパロスレ2
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1205504913/
前々々々々スレ
●中世ファンタジー世界総合エロパロスレ●
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145096995/
- 2 :
- >>1乙
- 3 :
- >>1乙!
あと前スレで出てたから一応
つ 保管庫TOPのミラーサイトその1。
ttp://database.f-adult.com/
- 4 :
- >>1 乙〜。
前スレ473
「次スレの終わりごろに続く」といわずにすぐにでもどうぞ。
文章がテンポよくて笑いながら読めた。
- 5 :
- >>1乙
- 6 :
- >>1
乙
- 7 :
- >>4
どうもです。
では即回避代わりに、前スレ473の続きをもう少し。
……今即って無いんでしたっけ?
× × ×
「勇者ぁ〜? 魔王と同じくらい胡散臭いんですけどぉ〜?」
もはや投げやり風味の国王に、秘書官さんが提案します。
「しかし、胡散臭い者には胡散臭い者をあてがっておけばよろしいんじゃないでしょうか。他に良い
案も無いことですし、とりあえず会うだけ会ってみては?」
「むぅ……それもそうだな」
というわけで謁見の間。
国王夫妻と秘書官さんの前に現れた勇者は、11、2歳位の少女と見紛う程の可憐な美少年でした。
小柄な背中には不釣合いな程の大きい剣を背負っています。
秘書官さんは思いました。
(ありがちありがち)
国王は言いました。
「ほう……そなた、勇者なんぞやめて余の愛人にならねぇ?」
王妃(39)は立ち上がりました。
「あっあなたっ! 妻の目の前でナンパとは良い度胸ね!」
「ぐっぐえっ! 待て落ち着け首を絞めるなっ!」
「しかもこの子、男の子じゃないの! 可愛ければ何でも良いって仰るの!? それとも若さ!?
若さなのね!? きいぃぃー! 悔しいー! 私は、全ての若さが、憎い……っ!」
勇者くんは思いました。
(あれ……? く、来るとこ間違えたかな……?)
不安な顔の勇者くんに、秘書官さんは
「いつもの事だから気にしないでね。それより勇者さん、あなたの話を聞かせて。魔王に関しての事
なのよね?」
とロイヤル夫婦喧嘩を無視して話を進めました。この人も、なかなか苦労しているようですね。
美人のお姉さんに優しく促され、少年は顔が真っ赤です。仕方ありませんね、勇者くんだって男の
子ですもの。
「はっ、はい! ぼく……いえっ、わっ、私はっ、ハッシュ・ユータスと申します! ユータス家は
代々勇者を生業にしており、私の父で三十八代目になります!」
「三十八代……」
無駄に歴史を感じます。
「昔は、勇者の需要も多かったんでしょうねぇ」
「ええ、まあ……。い、いやしかし! この世を脅かす存在を打ち倒すのが勇者の使命、出番がなけ
ればその方が良いのです。しかし、ついに、ついに魔王が現れ、勇者が立ち上がる時が来たのです!
こ、これで長かった雌伏の時が……仕送りとバイトで糊口をしのぎ、厳しい修行に明け暮れたつらい
日々が……やっと報われる……っ!」
ハッシュくん、涙ちょちょぎれです。
「……勇者も大変なのね。で、そのお父様は?」
「はい。それもあって参りました。これをご覧ください」
ハッシュくんは懐から手紙を取り出し、秘書官さんに渡しました。
「私の両親は勇者の働き口を求めて、地方巡業の旅に出ていたのですが」
聞けば聞くほど切ない勇者ファミリーの現状です。
「先日、仕送りと一緒にその手紙が送られて来たのです」
秘書官さんが手紙を開くと、そこにはこう記されていました。
- 8 :
- 『魔王出た! 魔王出たよ! ついに待ち望んだ魔王が出現した! これで勝つる!
息子よ、我らはこれより魔王討伐に向かう。だが敵は強大だ。
この手紙よりのち、一週間たっても連絡が無い時は、父母の命は無いものと思え。
その時は、ハッシュ! お前が第三十九代目勇者を襲名し、魔王を倒すのだ!
見事、勇者の本懐を遂げ、父母の仇をとってくれ!』
勇者様はしゃぎ過ぎでした。秘書官さんはそのあたりには目をつむって話を進めます。
「……この手紙はいつ?」
「ちょうど一週間前です。おそらく、父も母も、もう……」
「それは……お気の毒に」
「いえ、お気になさらないでください! 世界のために命を投げ出すのは、勇者の家系に生まれし者
の宿命!」
しゅくめいと書いてさだめと読みます。
「魔法使いであった母も、勇者の仲間として覚悟を決めて父に嫁いだはずです。最期に勇者らしい事
が出来て、二人とも本望だったと思います……。しかし! こうなった以上、私は父の遺志を継ぎ、
第三十九代勇者として魔王討伐の旅に出る所存でございます! そのために、まずは国王陛下にご挨
拶をと思い、まかりこした次第であります!」
「なるほど。ということですが、いかが致しますか陛下?」
と玉座を見ると、先程まで修羅場ってた国王夫妻は、いつの間にか二人の世界に入っていました。
「分かっているだろう? 本当はお前が一番だよ」
「嘘……またそんなこと仰って……」
「嘘なんかじゃないさ。余を思うそなたの気持ちに、いつも支えられている」
「あ、あなた……」
「それに、お前の体は余が時間をかけて仕込んでるんだ。歳を重ねるほど具合が良くなっていくぜ。
ただ若いだけの女じゃ、この味は出せねぇなあ」
「やだ、もう、あなたってば……。そんなこと仰られたら、私、今夜はいっぱいいっぱいおねだりし
ちゃいますわよ?」
「朝まで寝かせないってかぁ? ぐへへへ」
「お二人とも、そろそろよろしいですか」
秘書官さんは冷静です。たぶん、これもいつものことなんでしょう。ハッシュくんは耳まで真っ赤
ですが。仕方ありませんね、勇者くんだってお年頃の男の子ですもの。
「おお、何だったかな」
「この子が勇者として魔王討伐に出てくれるそうです。ついては国として支援を」
秘書官さんがハッシュくんの話を一行にまとめました。
「うむ、あいわかった。何が必要だ? あー、言っておくが聖剣とかそういうのは無いからな」
「それは大丈夫です。我が家に代々伝わるこの炎の聖剣がございますので」
「あるんかい」
「ええ、まあ。勇者の家系ですから。できましたら路銀と、陛下の配下から旅の仲間を五人、お借り
したく存じます」
「五人? たった五人で良いのか?」
「はい。私を含めて六人。前衛三人、後衛三人でございます」
「……そ、そうか」
国王には良く分からない世界でした。
「出来れば戦士系を二人、魔法使い系を二人、回復系を一人お願いしたいのですが」
「いやいやいやいや。今の時代に魔法使い系とかいないから。回復系とかもいないから」
「そ、そうなのですか……?」
そりゃそうでしょう。ハッシュくん、夢見すぎです。まあ、夢でも見てないことには、このご時世
に勇者なんかやってられないんでしょうけど。
「軍の兵士で良ければ志願者を募るが、それでどうだ?」
「は。ありがとうございます。本職ほどではないにしろ、魔法なら私にも多少覚えがありますので」
「あるんかい」
「ええ、まあ。勇者の家系ですから。母も魔法使いでしたし。それに、戦士系で固めたパーティーと
いうのも、それはそれで味があるものです」
「……そ、そうか」
国王にはやっぱり良く分からない世界でした。
- 9 :
- というわけで、以下の通り軍に志願兵募集の告知がなされました。
『魔王討伐パーティー急募! 勇者と共に魔王を倒そう!』
そんな、何ともアヤシゲな告知でしたので、最初のうちは全然集まらなかったのですが、ハッシュ
くんが皆の前に現れて挨拶した途端、男女問わず申し込みが到しました。
「うおおおお男の娘勇者ktkr!」
「やあん可愛い〜(はあと)」
「ハッシュたん激萌えっ!」
「結婚してくれぇ!」
「おい俺の嫁口説いてんじゃねえぞコラ」
「いや俺の嫁だが?」
「いいえあたしの婿よ!」
「むしろ俺の婿!」
……ハッシュくん、本当にこんな人達で良いんですか?
とにもかくにも、人事部によって厳選された――つまり軍から抜けても特に問題の無い程度のメン
バーの中から、ハッシュくんが旅のお供として五人を選びました。
――五人とも、綺麗なお姉さんばかりでした。
仕方ありませんね、勇者くんだって男の子ですもの。
× × ×
以上です。
では今度こそ、このスレの終わりごろに続きます。
- 10 :
- GJJJJJJ!
いや面白かったわー。続き希望!といいたいとこだけど
まぁこればかりは作者さんの胸三寸だからねぇ。
でも続き期待してます。スレ最後でもすぐ続きでも。
- 11 :
- GJ!!
すげえテンポいいな!
タイトル的展開まであって良かったw
- 12 :
- 「僕のパーティが修羅場過ぎて世界が救えない」を髣髴とさせるなあ。
続きが楽しみだ、が・・・お姉さんだけじゃなくてロリもいますよね?
首と股間伸ばして続き期待!
- 13 :
- ★見習い魔女とオッサンの叙事詩〜Hexe nina and erwachsener saga〜(ヘクセニーニャ アンド エアヴァクセナー サーガ)
一章後半をはります。
13レスです。
どこかに長期的にJPGを公開できるうpロダありませんかねぇ……?
下記URLはヒロインのイメージイラストです。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2893653.jpg
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org2893657.jpg
- 14 :
- 8
トーレ村から北に十数分あゆめば北の洞窟はすぐに見えてくる。
トーレの洞窟というのが一般的な呼称だが、トーレ村の者からは北の洞窟と呼ばれ、内部は浅いが足場の安定しない岩窟となっている。
この洞窟の中に、魔物を呼び寄せる邪力をもった装飾品を多く身につけた孫娘が連れ去られたという話である。
放って置けるはずがなかった。
「この中に魔物がいるなんて、俄かに信じがたいな」
「わた…………あたしは中から確かな『妖気』を感じるよ」
「ほう……」
ヴァッツはあえて無関心をよそおう。
リディはそれに判り易い反応を示した。
「……魔物にされかけたんだから、もうちょっと緊張感を持ちな」
「ああ。いやしかし、悲しいくらいに似合っていないな」
少女の顔が紅潮する。
口をぱくぱく動かすが、結局言葉にならなかった。
いやしかし、とヴァッツは心の中で反芻する。
やや吊り眼ぎみだが大きな紅い瞳はぱっちりしており、小さな鼻梁、薄いピンクの唇ととても可愛らしく幼い顔立ち。
それに透き通るような可愛い幼声のためか、十歳くらいにみえてしまう。
まあ彼女いわく過去から来た人間だから、そのころは年齢より若く見える傾向があったのかも分からない。
ん、まてよ、と男は考え直す。
直接訊けばいいだけの話じゃないか、と。
「そういえば」「ん」「おまえ齢は幾つなんだ」「十七」
即答だった。
ヴァッツは噴き出した。
「な、なに……?」
おどろくヴァッツ&リディ。
「おまえの外見で十七、か……過去の人間はみなその齢でその外見なのか」
ヴァッツが大真面目な突っ込みをいれると、
「もちろんウソだよ。決まってるじゃないか」
リディは可愛らしく笑っていた。
自分のウソで男が驚いている様子がおもしろかったのだ。
「ホントは十四さ」「……本当なんだろうな?」「うん」「本当だったら過去の人間が羨ましいな」「え…………? うらやま……え?」「冗談だ。で、実際幾つなんだ」「…………だから十四歳」「冗談はもういいから」
……そんなやり取りに五分くらい費やしてようやくリディはヴァッツに十四歳だと納得してもらえた。
少女は最初に嘘をつかなければ良かったと後悔した。
「そうか…………なんというか、色々と大変じゃないか?」
リディには「いろいろ」の中身がよく分からず、首を傾げて頭に疑問符をうかべる。
「まあいい、忘れてくれ。行くぞ」
疑問を「まあいい」の一言で一蹴され、リディはかなり不満だった。この人はマイペースすぎやしないだろうか……?
ともあれ、二人はようやく洞窟の中へと足をふみ入れる。
短針が真東を向く時刻とあって外はまだ明るいが、中は奥にいけばいくほど暗かった。
「待っていろ、松明を点けるから、な――」
- 15 :
-
「【灯火〜Lumen〜(ルーメン)】!」
それは一瞬のできごとだった。
リディがなんか変なポーズ(ヴァッツの主観的な意味で)をとって何事か小さく叫ぶと、リディの頭上に煌々と輝く小さな光球が出現したではないか。
その光球は小さいながらも大きな光をはなち、まぶしさを抑えつつ洞窟の奥のほうまでを照らし出していた。
「……こ、これで松明の必要はないね。どうだい、あ、あたしの力は?」
ヴァッツは、照れつつもどこか誇らしげに言うリディのことをまじまじと見すえ、一言。
「うお……まぶしい」
男は自分で言っておきながら少し恥ずかしそうだった。
「……この魔法はそこまでまぶしくはないはずだけど……?」
すかさず少女がつっこむ。
「便宜的に言っただけだ……他意はない」
苦しかった。
「…………そうなの」
ワケわかんない男はおいといて、少女は洞窟の奥へと歩み進んでゆく。
「おい……待ってくれ」
ヴァッツは便宜的な台詞を吐いてリディを追う。
聞いていたとおり洞窟内は足場が不安定だった。
リディなどとても歩きにくそうにしているが、ヴァッツはそれほどでもない。
こういう地形に慣れているのももちろんあるが、ここには二度ほど来たことがあるからだ。
ただ、なんというか…………さしものヴァッツも雰囲気が以前と異なるのを感じとっていた。
何か嫌な空気が流れている。
「……何か分かるか、リディ」
少女はこくんとうなずいた。
「二回め」「ん?」「私の名前を呼んでくれたの」
ヴァッツは「何……?」と口に出しかけて、すんでのところで抑えた。
今のでまだ二回しか口にしていなかったか……?
そして気付いた。
そういえば今、自分の口調を気にする素振りがまったくなかった。
つまり(?)、それほどに名前を呼ばれてなかったことを気にしていたのか……。
「……悪かった、リディ」
意識して名前で呼びかける。
「……え?」
と振り向いた少女の表情はどこかはにかむようだった。
「いや、なんでもない。さ、行こうか……レディ・リディ」
ヴァッツはリディに背を向け、ずかずかと先に行ってしまう。
また自分で言っておきながら恥ずかしくなってしまったのだ。
そんな男の広い背中を、少女は頬を染めてなかば呆けた様相で見つめていた。
- 16 :
- 9
しばらく歩いていると、唐突に魔物が現れた。
妖豚魔――オークである。
凶暴化した豚が二足歩行し、軽めの防具と棍棒を持ったような外見だ。
「さっさと片付けるか」
まだ生涯でたった二匹目のモンスターだというのに、ヴァッツにはまったく物怖じする雰囲気がなかった。
「ちょっと待ちな……こいつだけじゃない、何匹もいる」
リディの忠告どおり、一匹めのオークの後ろには――人間の気配を嗅ぎ取ったのか、軽く十数匹のオークが凶悪な冷笑を浮かべて待ち構えていた。
「……雑魚が群れたところで大勢は変わらんと思うのだが、どうだ?」
ヴァッツのセリフに、この余裕は一体どこから来るんだろう、と純粋に感じたリディだった。
なにせこの男、きょう一度魔物にされかけていたのだ。
私がいなければどうなっていたか分かったものではないのに。
「まあ見ていろ」
ガシャン! とヴァッツはその体躯に見合った大きな剣を抜きはなつ。
彼のために造られた特注の両手大剣――ツヴァイハンダーであり、通常のそれより長く、厚い。
その威力、外見、そして彼以外ではとても扱いきれないことから、ヴァッツ自身はこれを『災厄の剣(ディザスターソード)』と呼んでいる。
「やられっぱなしじゃイメージが良くないからな。ここらで実力を見せておかなければ」
誰のイメージ? あやうくリディはそう訊ねそうになった。
訊かなくたって答えは分かりきっているが、それでもヴァッツの口から返答を聞きたかった。
「さて……一仕事するか」
高らかに宣言するヴァッツ。
「ヴォフゥゥゥッ!!」
男の宣言がそのまま鬨の声となり、先頭のオークが棍棒を手に襲い掛かってくる。
びゅんッッ――――。
ものすごい風切り音がひびき渡った。リディは眼と耳を疑った。
ヴァッツが薙ぎ払った大剣が眼にも留まらぬ速度でオークの腹部を一閃し、鮮血を派手に噴き上げていたのだ。
少女はおもわず眼を細めていた。
男の動きはとても人間のものとは思えなかったのだ。
あれだけの大きさ重さの獲物を軽々と振り回し、全く息を乱していない。
「はぁあっ!!」
ヴァッツの裂帛の剛声が洞窟内に反響する。
奇しくも男の前言どおり、オーク程度は敵ではなかった。
オークの棍棒が届く前にリーチの長いヴァッツの剣がオークを斬り伏せてしまうからだ。
「………………」
半ば愉しそうにオーク狩りに興じるヴァッツを、リディは無表情で見つめていた。
- 17 :
- 10
ヴァッツはオークを殲滅させるのにものの三分とかからなかった。
リディは表情こそ落ち着いているが、内心は驚愕を覚えざるをえない。
魔法無しであれほどの力を揮える人間はリディの時代にはいなかったと断言できる。
しかもこの男、一見したところ三十代は過ぎているだろう。
二十代の頃はもっと強かったかもしれない。
「さて…………」
両手大剣を収め、リディに向き直る。
「早く行くぞ。クレミアに何があるかわからんからな」
「…………うん」
しおらしいな、とヴァッツは感じる。
姉語調になる場合とそうでない場合の法則性がいまだによく分からない。
と――――突如ふたりは異臭、いや臭を感じた。
しかも周囲には薄茶色い噴煙が立ち込めはじめているではないか。
幸い視界にはほぼ影響を及ぼすものではないが、異常事態であることは確かなようだ。
「急ぐぞ!」
男の呼びかけに少女は無言で頷き、そして駆ける。
「【走駆〜Laufen〜(ラウフェン)】……」
このときリディがさりげなく行使った魔法によりヴァッツの走駆速度は飛躍的な上昇をみせていたが、ヴァッツ自身はそれになかなか気付かない。
お、今日は調子がいいな、くらいなものである。
だが十ほど数えるとようやく自分の走りに異変が生じていることがわかった。
周囲の景色が異常な速度で流れてゆく。
地面の凸凹もなんのその、たまにモンスターが眼に入ろうがもはや素通りである。
そして後方を走っているリディもまた、文字通り人間離れした動きでヴァッツに追随する。
童顔に感情の動きは見られない。
まさにあっという間という表現を許せるだろう時間で、彼らは最深部にたどり着いた。
たどり着いてしまったというべきか。
「クレミアッ!」
ヴァッツは孫娘の名をさけび、眼に入った彼女の姿に歯噛みする。
クレミアは四肢に杭を打ち込まれ磔にされていたのだ。
頭を垂れており顔色は窺えないが、あの様子からしておそらく彼女は生きている。
ほっと胸を撫で下ろしたのもまた事実だ。
しかし、だしぬけに頭上から降って沸いた人影を認めるなり、ヴァッツの瞳孔は大きく見開かれる。
野生的な顔つきに見覚えがあった。
「ギラス…………おまえ、いままでどこにいた」
ギラスと呼ばれたその男は盗賊のような身なりをしているが、その挙動はとても妖しい。
特に眼が……本来は黒いはずの眼がいまや鮮やかな血のような赤に変貌している。
「誰だか知らないけど、もうこの男は助からないね。完全に邪気に取り込まれてるよ」
後ろからリディがやや低めの姉語調で忠告してくる。
ヴァッツは嘆息した。
「……村長の息子だ。都会で一山当てると家を出て三月も行方不明だったが……」
まさか魔物に操られてるとは、と言葉を継ぐ。
ギラスは、グ、ゲゴ、と人が発しているとは思えない不協和音を出しながら言葉をつむぎはじめた。
「…………今さら来たところでもう遅い。この娘はすでにあちら側の住人だ。速やかに立ち去れ。さもなくば………………」
- 18 :
-
コロス――――――。
最後の言葉だけは人工的につむがれたかのごとく発音がおかしかった。
生前の、直情的かつ野心あふれる青年の面影はまったくない。
「助かったな」
ヴァッツは平然と言った。
「ギラスもクレミアも現世の者でなければ迷う必要はない。おまえを倒すだけでいい」
「ま、まってよ! クレミアは生きてるかもしれないだろ?」
リディから存外冷静な忠言を受け、ヴァッツは微かに逡巡する。
やつは「あちら側の住人」と言っただけで、まだんでいるかどうか確定ではない。
が、逆に本当にんでいた場合、こちらの動きを止めるために「あちら側の住人」と嘯いた可能性がある。
そして、ヴァッツは迷うのをやめた。
「関係ないな」
だんっ、と地を蹴り、大剣を手に‘ギラスだったもの’に向かって突進する。しかし――
「ぐっ!」
男は何かに弾き返されたかのように仰け反り、あお向けに倒れた。
「くっ、どういうこと、だ……」
「…………精神障壁…………」
リディが小声でつぶやいた。
精神障壁とは、精神が正常に働いている人間を阻む見えない結界である。
術者には大きな負担が伴うが、魔力が続く限り障壁が消えることはない。
術者に大きな衝撃、つまりダメージを与えれば障壁は消えるが……。
ヴァッツにそのことを説明すると、彼は悔しげに顔をゆがめた。
「おまえの魔法でどうにかならないのか?」
「…………無理。わたしには結界が見えるけど、壊すことも無効化することもできないし、範囲が広すぎる。洞窟を破壊してもいいなら大丈夫だけど……」
「無茶を言うな。……手打ちなのか」
と、その時だった。
二人の後方から異様な叫びが聞こえたのは。
「がああああぁっ!!」
荒々しい女の咆哮。
二人とも後ろを振り向くことはせず、本能的に危機から回避しようと左右に分かれる。
すると、人影が刃物を持って二人のあいだをすり抜けていき、そのままヴァッツが弾き返された場所をも駆け抜けてゆく。
魅惑的なラインを描くその人影に、ヴァッツは見覚えがあった。
「あ、あいつは……」
「がああああぁっ!!」
彼女は棒立ちだったギラスの懐に飛び込み、短剣を突き立てて吹っ飛ばす。
ヴァッツとリディは顔を見合わせて頷きあい、ギラスと女のところへ走った。
女はいまだ悲鳴とも絶叫ともつかぬ声を上げつつ、ギラスに馬乗りになって短剣で滅多刺しにしていた。
と、そのときヴァッツは確かに見た。
ギラスの骸から魂のような半透明の碧い球体が浮かび上がるのを。
『使えぬ男だ……』
しかも喋った。
声音はかなり濁っていたが、聞き取るのにそこまで苦労はしなかった。
- 19 :
-
「【捕縛〜Fangen〜(ファンゲン)】!」
リディのはっきりした魔法行使が聞こえる。
少女がバッと伸ばした右掌から白い光の網のようなものが放出され、それはまたたく間に魂のような球体を捕えた。
『ぐっ…………!!』
魂からうめき声が発されたような気がした。
魂は束縛から解放されようと暴れもがいたが、捕縛の網はまったく破れる気配がない。
「がああああぁっ!!」
ギラスを事切れさせても女はまだ狂乱しており、その火花はこちらにも降りかかってきそうだった。
「ちっ、仕様が無い」
ヴァッツはぼやきつつも剣を収め、今度はこちらに走り向かってくる女と対峙する。
「相変わらず危険なオモチャを持っているな」
余裕のある物腰で女の持つ獲物を見すえ、そして――――突き出されたその右腕を掴むことに成功する。
そして、適度な強さの掌底を女の額に打ち込んだ。
ビキィ!
女は大きく仰け反ったが、倒れはしなかった。
その代わり、先刻まで白目を剥いていた顔にようやく人間らしい表情が戻っていた。
正気に戻ったのは明確だった。
「あれ? あたし…………」
「まったく、昔とかわらないな、ヒュリン」
ヴァッツは昔なじみの少女に呼びかけた。
臍を露出する若葉色の薄手の短上衣に、同色同系の短脚衣をまとっている。
黒く長めの足通しに同色の穴あき手袋に、腰には「傷」を意味する片刃短刀・スクラマサクスを帯び、女盗賊らしい露出過多な出で立ちだ。
先刻まで額に付けていたあやしげな緋色の宝石は砕け散ってしまっている。
おそらくそれのおかげで彼女は精神障壁に弾かれなかったのだろう。
ヒュリンと呼ばれた少女は、赤く長いポニーテールを揺らしつつ周囲を見回し、ポンと手を打った。
「あ、どうだったヴァッツさん、あたしの活躍ぶり!」
「助かったには助かったが、あまり無茶はするな。上手くいったから良かったが」
「うん、上手くいったから問題なし」
女、いや少女ヒュリンは大胆不敵とも言える笑みをヴァッツに向けてくる。
動きがいちいち大げさなので、その度にゆれる双つの膨らみが気になってしょうがない。
(……胸の大きさも相変わらずか)
ヴァッツはやれやれといった様相で苦笑したが、すぐに表情を引きしめ、クレミアが磔にされている祭壇に向きなおる。
「リディ、そいつは一体何者なんだ?」
ヴァッツは魔法の網の中で暴れまわる魂を指してたずねた。
リディは自らが束縛しているその魂を冷たい眼で見下ろしている。
「……たぶん、過去から来た魔法使い。そうでしょ?」
「フハッ、当然だ!」
リディの問いに魂は即答した。
魂が口を利くという非現実的な光景だったが、もはや彼は驚くこと自体に飽いていた。
「フェリロディ=エキドナ、貴様っ、中等位主席のくせして俺の声に聞き覚えがねぇのか!」
魂は怒鳴り散らすが、少女は険しい無表情で首を傾げるばかりだ。
「とぼけんじゃねぇ! このビュリタス=ゴルディノー様を忘れるとはいい度胸だ!」
「あ………………」
リディの表情がほんのわずかに得心がいくような動きを見せ、次いで不快感を示すように眉が八の字になる。
- 20 :
- ビュリタス=ゴルディノー……魔法によって人に幻覚を見せたり行動を強制させたりする精神魔法――エスプリマジーア専門の教師。
生徒からの評判はよろしくないが、ヴァッツにとってはどうでもいいことだった。
「で、自分の精神を身体から離脱させる魔法みたいなのを使ってそのザマというわけか、ビュリタス殿とやらは」
「フン、うるせぇ! いいか、我が主は未来のこの大陸に『混沌』が喪失している事実にお嘆きだ。これからも魔物は増え、魔法が多く散見されることとなろうよ」
「そんなことして何になる? ……いや、別にご大層な理由は持っていないのだろうが」
「はっ、これだから未来人は蔑みたくなる。『混沌』が喪失われた大陸ならば容易に征服できるからに決まってんだろうが!」
ヴァッツは盛大なため息をついた。
「……どうでもいいが、そこにいる娘は生きてるんだろうな?」
「なっ…………!!」
どうでもいい。
大陸を征服されることがどうでもいいと言われ、魂――ビュリタスは絶句した。
「き、貴様……どうでもいいわけなかろう! 大陸が支配されれば貴様も好きには生きていけまい」
「そうでもないぞ。そもそも、そう簡単に大陸を支配できるわけなかろう」
ヴァッツの毅然とした態度に、ビュリタスだけでなくリディまでもが驚愕としていた。
世界制服が怖くないと言ってのけるこの男に怖いものなどあるのだろうか。
と、突然ビュリタスは下卑た哄笑を上げはじめた。
「……なにがおかしい」
「フヒハハハァ…………教えてやろうかぁ……」
命を握られているも同然の状態ながら、この魂の声には明瞭な余裕がうかがえる。
ヴァッツはもとより生かしておく気などなかったが、ビュリタスが放った言葉は彼の怒りに火をつけるには十分すぎるものだった。
「そいつは――クレミアとかいったか――まだ生きてるぜぇ…………生きてるが…………精神は廃人同様なんじゃねぇかと思うんだよなァ…………」
何かを堪えているかのような、嗜虐的な響きを感じさせるビュリタスの声。
ヴァッツの額には青筋が浮かんでいた。
「なぜなら…………――俺がさんざん凌辱してやったからなぁァ!!」
ガギィン!
振り下ろされたヴァッツの大剣が白き魂を断ち切った……かに見えたが、なんともない。魂には物理攻撃は無効なのだ。
「キヒヒ……んなことぁしたって無駄だぜぇ……」
「リディ、こいつをしても特に支障はないな?」
「………………」
少女は無言無表情ながら首肯した。
男はそれを見て鷹揚に頷く。
「残念ながら俺はそいつをれねえが……リディ」
ヴァッツは剛毅な面差しをリディに向けて一言いい放つ。
「そいつの処遇はおまえにまかせる。強制したくないんでな」
「私もあなたと同じ気持ち……だよ」
意外なことにリディは明確に自分の気持ちを顕示してきた。
ヴァッツは再び頷いた。
「お、おいてめぇ……教師をす気かコラ? ただじゃすまねぇぞオイ」
一転、魂からは泣き言が漏れ出した。
「俺の主がだまっちゃいねぇぞコラ。エキドナてめぇ、俺の主が誰だか知ってんだろうが」
「…………しらない」
無慈悲な一言。
少女の手には大きな樫の木の杖がしっかと握られていた。
「お、おい待て、マジでただじゃすまねぇっつってんだろうが! おまえら、ただぬだけじゃすまねぇってんだよ、あの方を怒らせたら…………!」
「関係ない、ね!!」
そう言い切った少女が振り上げた杖が碧い光を纏って薙ぎ払われ、【捕縛〜fangen〜(ファンゲン)】によって動けないビュリタスの魂に見事、命中した――――――
- 21 :
- 11
リディは幸い、眼前に展開されている悪夢のような光景が幻覚だということにすぐ気付いた。
ビュリタスはおそらく生きちゃいないだろう。
手ごたえはあった。
だが、彼は命を賭してリディに厄介な置き土産をしていった。
一定時間意識を失わせ、壮絶な悪夢という名の幻覚を見せる精神魔法。
これはあくまでまぼろしなのだ。
身体にはダメージはない。
それでも、この魔界のような空の下に放り出され、後ろから触手生物が追いかけてくる状況はもの凄い恐怖だった。
『くひひ……誰がんだって?』
「?!」
追い討ちをかけるかのように、聞き覚えのある声が少女の耳朶を打つ。
ビュリタスの声だということは解るが、どこから聞こえてきているのかは解らない。
「ま、まさかこの魔法は……!」
『そう、そのまさかだ』
後方から迫ってくる触手生物に追いつかれそうになるが、リディには走って逃げることしかできない。
この空間では魔法が封じられてしまうからだ。
ガシッ、と最初に捉えられたのは右足首だった。
「…………!」
まだ一分程度しか経っていないのにもう捕まってしまった。
ガシ、ガッガッ――――と負の連鎖のごとく四肢を拘束させられる。
『きひひ……いいザマだぜ、フェリロディ=エキドナ!』
どこからか、ビュリタスの下品な声が聞こえてくる。
『遊んでるヒマはねぇからな……口惜しいが、すぐに終わらせてやるよ』
まもなくリディの眼の前におぞましい形状の触手が具現化する。
吸盤のような触手が二本、突起が大量についた触手が一本。
生理的嫌悪感にリディの身体は自然とぞくぞく震えだす。
『怖いか? クク、安心しろ…………言ったろ、すぐ終わらせてやるって!』
魔法空間に反響するビュリタスの声とともにひとつのシルエットがリディに近づいてくる。
半透明で黒い、中肉中背の人型。
ビュリタスの精神体。
『知ってるかァ、エキドナァ…………』
男の舌なめずりするような声音に少女の背筋に薄ら寒いなにかが走った。
『この魔空間はなぁ、精神魔法にも関わらず直接対象に触れることが出来るんだぜぇ…………』
もちろん虚言だ。
触れられるのはこの悪夢の中だけで、それは実際に触れたことにはならないだろう。
夢の中でいくら痛い思いをしたとしても、現実では何も起こっていないのと同じである。
- 22 :
- 『……そりゃ詭弁だぜぇ、エキドナよぉ』
「!?」
心の中を透かされたようなビュリタスの言にリディは戦慄する。
『現実のおまえが自由でも、今のおまえは束縛されてんだろうが。……と、無駄話がすぎたな。そろそろ始めるぜ、エキドナァ…………』
言下に、眼前に揺らいでいた触手が抵抗するすべをもたない少女の身体に接近してきた!
「くっ…………!」
こうなるともうリディはただ一人の無力な少女でしかない。
いかに魔法に秀でていようが、それを使えなければ意味がないのだ。
後悔するべくは、この魔術にたいする抗魔法――クラージュ・マジーアを講じていなかったことだろう。
うねる触手がリディの衣服の中へ侵入しはじめる。
「う…………んっ…………!」
華奢な肢体をくねらせて不快感を示すリディ。
魔法も使えぬいま、彼女はこの恥辱にただ耐えるしかないのだ。
触手は直接胸をまさぐり、下衣のうえから陰部を刺激してくる。
「く…………くそっ!」
少女の口から思わずそんな悪罵がとびだす。
憧れのあの人ならおそらくこういうだろうと思ったからだ。
それに、今は無力な女の子でいるわけにはいかない。
ただもてあそばれるだけじゃない、身体は犯されても心は絶対に屈しないと、少女は誓う。
『クク……わかってねぇな。……これは一方的な凌辱なんだよ』
「…………!」
ふたたび心を読まれたかのようなビュリタスの口上にリディの痩身がふるえ上がる。
その間にも触手はついに下衣をかいくぐり、少女のもっとも大事な部分を弄ろうとしていた。
ビリィッ!
リディの上衣がやぶられ、可愛らしい白い下着、キャミソールがあらわになる。
「ひ…………」
まともに怖がるいとまさえもなく、そのキャミソールすらまくり上げられ、外気にさらされた小さな胸に触手がぴたりと触れる。
ちゅうううぅぅぅぅぅ…………――
「――ひゃあんぅぅぅぅっ!!」
双つの突起に走った強烈な衝撃に、リディは堪えきれず絶叫を上げる。
その触手は吸盤のようになっており、はた目にはそれが少女の乳首に吸い付いているように見えた。
ちゅく、ちゅぷちゅぷ、ぴちゅぴちゅぴちゅ、といやらしい水音が鳴りひびく。
「んんっ! ひあっ! あくぅぅぅ…………っ!」
吸音が発されるたびに少女も甘い嬌声を漏らしてしまう。
すっかり勃ちきってしまった乳首を、触手は吸盤内部にある二本の舌で舐め、しごきあげる。
「は、くぅ、んっ! ……やっ、あっ、だめ……いやぁ!!」
声が漏れてしまうのが我慢できないほど、彼女が覚えている性感は強いものだった。
『へっ、いいザマだなエキドナよぉ。そんなナリでもう女として目覚めてやがんのかよ』
悔しいがビュリタスの言うとおり、リディは初潮を迎えている。
それに自慰の経験だって少ないながらあるのだ。
すべては‘あの男’のせいだが。
- 23 :
- 「あ、んっ……ふあっ、んあぁ!」
あまりの気持ちよさに湧き上がってくる嬌声の欲求を抑えることができない。
このままでは絶頂に達するのは時間の問題にみえる。
『ケッ、張り合いがねぇじゃねぇか。こうも容易に篭絡できそうなのも逆につまんねぇな』
もうビュリタスの声もまともに聞こえない。
少女のおもては快感の恍惚に酔いしれており、涎を垂らし、涙を流し、紅い瞳はトロンとして焦点があっていなかった。
故にか、彼女は下衣を脱がされ、大事な部分が晒されてしまったことにも気付いてない様子だった。
『へっ、もうグショグショじゃねぇか』
ビュリタスは呆れ半分に言う。
「は、はやくぅ…………」
『は?』
よほどリディのセリフが意外だったのか、ビュリタスはワンテンポ遅れて反応した。
「はやく…………そこ触って…………」
束縛され、さんざん屈辱を合わされているはずの少女が口走るような言葉ではなかった。
『……気が触れたか? 言われなくても絶頂せてやるから安心しろや』
もちろんビュリタスは余裕の態度を崩さない。
ぐちゃり。
「んはぁああああっ!!?」
もの凄い濁音がひびいたかと思えば、リディが享楽の悦びに満ちた嬌声を上げる。
おぞましい形状――凸凹やイボだらけのぶっとい触手が、少女の膣内に侵入したのだ。
ぐちゃっ、ぐちゅっ、じゅぶっ。
「ひゃン!! んあああっ! やぁああ!!」
ずぶずぶと秘処に出し入れされるたびに絶叫のようなあえぎ声を発し、小さな身体を大きく痙攣させる。
気を失いそうなほどの快感を受けながら、彼女は心の底からこの状況を愉しんでいるようにみえた。
ビュリタスはここにきてようやく違和感を覚えていた。
(おかしい……一度は絶頂ていてもおかしくないはずなのに)
もう十分経つ。残り十分もあれば彼女を果てさせるのは余裕のはずなのだ。
「ふく、んっ……ざ、ざんねんだった、ね、んあっ! ……ビュリタス=ゴルディノー……あ、あたしは、はぁっ……まだ一度も絶頂ったことがないのさっ――――んはぁぁん!!」
ふとリディがそんな口上を垂れた瞬間、ビュリタスは心臓が跳ね上がったような感覚を覚えた。
精神体だからそんなことはありえないのだが、とにかくそれほどの衝撃を受けたのは確かである。
『な、なんだと?!』
驚愕に声を上ずらせながらも、触手による責めを緩ませる事はない。
「ひゃあぁっ、はぅ、あぁぁん!! ……き、きもちいいぃ…………」
愛液を垂らし……いや噴き出しながら、少女は生意気にもそんな科白を吐く。見た感じではもう二、三回は果てていてもおかしくない。
だのにこの空間が無くならず、また自分に大いなる生命力が漲らないのは、この少女がまだ達していないからだ。
『てめえっ……この俺を羽目やがったなぁ?!』
あまりに驚きすぎたせいか思わず支離滅裂なことを口走ってしまう。
「……意味がわからないね。それより、もう終わりかい? 手が……いや触手が止まってるようだけど」
『黙れぇええ!!』
少女の挑発にビュリタスは怒号をあげ、思いのまま触手を炸裂させる。
「ひゃああああぁぁぁっっ?!」
ぐちゅぐちゅと激しい濁音がひびき渡り、愉悦きわまる甘やかな声音が奏でられる。
あとおよそ五分しかないというのに、リディに絶頂(イく)気配はまったくない。
いや、いまやまったくないように見えてしまうのだ。
十分前であればもうイかせることができると確信していただろうが、リディの告白を聞いてしまったビュリタスにはもう彼女をイかせる自信がなくなっていた。
『くそ、ふざけやがってフェリロディ=エキドナ!! このまま俺が無駄にすると思うなよ!』
少女にその言葉は届かなかった。
- 24 :
- 12
「精神魔法?」
大柄の壮年の男、ヴァッツはやや頓狂とした声を出した。
「うん、この子はたぶんビュリタスとかいうやつの魔法空間に取り込まれてる。でも、放っておいても平気だと思うよ」
少女盗賊ヒュリンが簡潔な説明をする。
「何故だ?」
「顔色がいいから」
えらく安直な答えである。
「たぶん悪夢を見させられてるんだと思う。でも、なんとなく大丈夫そうよ」
「…………よく知ってるな」
「知り合いに魔女見習いがいるからね」
「……何だって?」
ヴァッツは少しだけ驚いてみせた。
「ってもまだ知り合って三日しか経ってないけど」
「そいつも過去からきたんだろうな」
「うん、なんかいかにも魔女ってカンジのカッコしてた。『外に出るのは不都合だ』からって、ずっと私のうちに閉じこもってるけどね」
「そうか」
ヴァッツは一呼吸置いて、すがすがしさを感じさせる表情でこう言った。
「なかなか面白そうなことになってきたな」
「え?」
「魔女やら魔物やら、もう五百年以上も無縁の『混沌』って存在が現れてきてるんだ。これほど楽しそうなことはないと思わないか?」
「あははっ、確かにそうね」
少女は朗らかに笑う。
「ヴァッツさんと行動してると、今まで私をさんざん悩ませてたこととかがひどく矮小なものに見えてくる」
「いいんじゃないか矮小で。くだらないことに思いっきり頭を捻るのが人間というものだろう。
当事者にとっては一大事でも傍から見ると瑣末なことという事例は尽きないが、その傍から見ている人間だって他者にとってはどうでもいいような悩みを抱えていたりする。
前に進んでるかもしれないし後退してるかもわからないが、常に変化を求めてる、それが人間だろう?」
「うん…………そう、だよね」
ヒュリンは顔を綻ばせてヴァッツの話を聞いている。
彼の考え方はすごく共感できるものだけど、自分が嫌いな人間……たとえば父親に言われたとして、素直に耳を傾けることができただろうか。
否、無理だろう。
同じセリフを紡がれたとしても、言う人間によって説得力は全く異なってくるものだ。
- 25 :
- 「そういえばまだ起きないか、リディは。さっきからずっと眠ったまま変化はないようだが」
「うーん……――あっ!」
噂をすればなんとやら、リディの身体が微振動しだした。
そしてゆっくりと眼が開かれ、頭頂部から青い球体がすぽんと飛び出してきた。
ビュリタスの魂。
表情や挙動が窺えるわけでもないのに、今にも消え入りそうな雰囲気のそれ。
「ふあぁ…………」
リディは大きく伸びをして目覚めた。
ビュリタスの魂とは対照的に、きわめて元気そうだ。
「あー、気持ち良かっ…………悪かった」
一度は言うのを止めようとしたがか言い切りそうになってしまった。
「……気持ち良かった?」
ヴァッツが怪訝な顔で問いかける。
「夢の中での出来事でしょ? 見た目によらず(?)エッチな子だねー」
ヒュリンがからかうように言うと、リディの顔が赤くなった。
「ち、ちが…………――」
……………………。
……その先の言葉は紡がれなかった。
リディが言い訳を思いつかなかったからだ。
「おいお前ら…………俺を無視すんなよ」
ビュリタスの声が聞こえる。
魂から発せられる声でも、人間の身体から発せられる声と遜色ないのだと解る。
何故なら、彼の今の声音は先刻と違っていかにも弱々しいからだ。
「……このままほっといてもヤツはぬのか、リディ」
ヴァッツの問いに、リディは頬を紅潮させたまま静かに首を傾ける。
「へっ……さすがは中等位主席の才女だぜ。……そっちの方もただもんじゃ無かった、か…………」
ビュリタスの言葉にリディはぷいと顔をそむけた。
「ビュリタスとやら、おまえの主は一体何をたくらんでる?」
ヴァッツが訊くと、ビュリタスは嘲笑したような声をだした。
「話しちまったら……面白くもなんとも無くなるだろうが。……別に、てめえが想像をめぐらせるような……ご大層な目的でもねえ。ありがちなもんだ」
ビュリタスの口調はどこか、自分の主に諦観然と接しているような響きがあった。
「……どうせ間もなくオレは消えるんだ、ひとつ良いことを教えてやる。そこの娘は生きてるが、精神が壊れてる。廃人同然だ。ま、あの魔法を使える、こっちに送られてきたアイツならそいつを治せるだろうよ」
精神を壊したのは誰だよと、ヴァッツは怒鳴りたくなった。
「とはいえ、アイツがおまえらに協力するかどうかはかなり疑問だがな。なにしろそこにいるフェリロディ―――――――――」
フッ、と。
きわめて、唐突に。だしぬけに、自然と。
ビュリタスの魂が、ヴァッツたちの眼前から完全に消滅した。
- 26 :
- 以上です。
続きは後日に。
クオリティ的に「文章がはおまけ(絵が主)」と感じるかもしれませんが、文章の方に力を入れて続きを書いていきます
- 27 :
- >>26
乙です。ヒロインかわええやん、結構ロリすな
あと前スレ>>478も最後の埋めお疲れ様。
最近またこのスレが賑わってきて嬉しいな。
- 28 :
- >>13
保管庫に付属のアップローダなら利用者も少ないから滅多に流れないよ。
- 29 :
-
★見習い魔女とオッサンの叙事詩〜Hexe nina and erwachsener saga〜(ヘクセニーニャ アンド エアヴァクセナー サーガ)
第二章前半をはります。
エロパートなし、イラストもなしですが、おそらく明日すぐにでも続きを貼るつもりです。
6レスです。
>>28
ありがとうございます。
テアルの絵が完成したらリディの絵ともどもうpしようかとおもいます
- 30 :
-
第二章「後れてきた魔女見習い」
1
「リディ……ひとつ訊きたいことがある」
トーレの洞窟の帰路、ヴァッツは村長の孫娘クレミアを背負いながら、後ろを歩む少女に前をむいたまま話しかける。
リディの隣には、いつもとはうって変わって大人しいヒュリンが歩んでいた。
「…………なんだい?」
「ビュリタスとやらの魂は消失したようだが……ああなると肉体の方はどうなってしまうんだ?」
なんだそんなことか、と正直リディは思った。
もっとシリアスというか、核心をつくような質問をされるかと思っていた。
「ああなると、肉体のほうは完全な抜け殻になっちゃ……ちまう。
どこに元の身体を置いてきたか知らないケド、もうあいつがんだのは間違いないよ」
相変わらず口調がフラフラなリディである。
「そうか」
すたすたすた………………。
(……それだけ?!)
まったくなんの感動も示されずにすたすた先に行ってしまうヴァッツに、少女は唖然とした視線を刺す。
何故か横にいるヒュリンがぷっと小さく噴き出した。
「な、何がおかしいのだい?」
「まず、あんたの口調」
不意打ちの指摘を受けたリディの顔は真っ赤になった。
「それは置いとくにしても……ヴァッツさんは普段はマイペースだからねぇ。まじめな人は付き合いにくいかも」
少女盗賊は遠い眼をする。
不真面目ってわけじゃないんだけど、と心の中で追加しておいた。
「でも、いい人だし、強いし、色んなことを知ってる。
これからどうするかはあんた次第だけど、しばらくはヴァッツさんのもとで歩むのもいいかもよ」
ふとリディは思った。
このひとはどこまで知ってるんだろう……私やレージルさんのことを。
そして、レージルさんとどんな関係だったんだろう。
「あ、そろそろ出口みたいよ」
かすかな夜の情景がみえる方角をヒュリンがさし示す。
と同時に、リディはえもいわれぬ強烈な違和感に襲われる。
そう、まさに「襲われる」という感じだった。
とてつもなく嫌な予感……生理的に危ない何かを覚えてしまっていた。
「れ、レージルさん……!」
少女は思わず低い声で叫んでいた。
間違いない。
この気配はあの子だ。
「ん? どうした」
- 31 :
-
先を行っているヴァッツが振り向く。
「そこから離れてください!」
少女のただならぬ様相に、男はすぐさま出口から距離を取る。
その瞬間であった。
ドゴオォォォォォォォン――――。
洞窟の出口付近で大爆発が起こった。「何……?!」
「――【自然の守護〜nature scudo〜(ナテュールスクード)】!」
突如リディたち三人の眼前に展開される巨大な魔法障壁。
淡い光の粒子が爆発による衝撃や粉塵をみごとに遮断してくれる。
「…………!!」
ヴァッツもヒュリンも大きく眼を見開いていた。
この少女がいなければ自分達はいまごろんでいたかもしれない。
運が良くて半身不随だろう。
「……………………」
爆発が収まったあともリディは鋭い眼光を出入り口付近にむけたままだった。
あまり大きくはない魔力を感じる。
自分のものと比較したら笑ってしまいそうになるくらいの、小さな魔力。
だが彼女を蔑んだ記憶は一度もない。
けれど、彼女はいつもリディにもの凄い対抗心を燃やし、ことあるごとに壮絶な闘いを展開してきた。
「……テアルちゃん………………」
出口の岩場の陰にいるであろう彼女に、リディは呼びかけた。
テアル=サイモリア。
フェリロディ=エキドナと同学年の少女にして、唯一好敵手として相応しいとされた生徒。
「久しぶりだな、フェリロディ=エキドナ」
年齢にしては低く、ドスのきいた声が聞こえる。
「元気そうでなによりだ」
未だ姿を現していないくせに、そんなことを言う。
「ちょ、ちょっと待ってよテアル!」
意外にも割り込んできたのは少女盗賊ヒュリンだ。
名前を知っているということは、匿っていた魔女見習いとはテアルのことなのだろう。
「なんでこんなことすんのよ! あやうくあたしまでぬとこだったんだからね!」
「大丈夫だ、問題ない。現にそこにいる女が防いでくれただろう?」
「なっ……!」
テアルの詭弁に近い物言いにヒュリンは絶句する。
「…………いつまでも隠れていないで姿を現したらどうだ」
先刻の驚きはどこへやら、ヴァッツが煽るように言い放つ。
その挑発に乗ってというわけでもないだろうが、意外にもテアルは簡単に三人のまえに姿をあらわした。
抜けるように綺麗な黒髪のうえに、つばが広い暗紫色の円錐帽子を被っている。
顔立ちは鮮鋭に整っているが、深緑色の瞳はかなりけわしい三白眼。
陶磁のように白くきめ細やかな肌にまとうのは、丈が短めの真っ黒なローブ。
加えてかなり奇妙な形状をした大きな杖を持っていれば、リディと同じ魔女見習いであることは自明だろう。
ただ、体つきや顔つきはともかく、年齢の割りにかなり小さなリディより身長が低いのが気になるところだった。
つまり、彼女はきわめて小柄なのだ。
- 32 :
-
「……すこぶる小さいなわりに尊大だな」
「煩いぞ、貴様」
気にしているのか、テアルはヴァッツの言葉にすぐ反応した。
「ひとつ忠告しておいてやるが、貴様など数瞬で灰に変えることができるんだ。言葉には気をつけるんだな」
「いいや、無理だね」
否定したのはヴァッツではない。リディである。
「私……あたしがそんなことはさせないよ」
「ほう…………」
テアルは眼を細め、口端を僅かに吊り上げた。
「現代の人間に比べれば未来の人間など脆弱にもほどがある。魔法に抵抗する手段がないんだからな」
言下に、テアルは杖を振りかぶって叫んだ。
「【焦熱弾〜Llama glans〜(ジャーマ・グランス)】!!」
ゴオオオオオォォォォォォォゥ!!!
詠下にテアルの眼前に巨大な焦熱の火球が形作られてゆく。
すでにヴァッツたちにはテアルの姿をみとめることができなくなっていた。
「…………尋常の沙汰ではないな」
冷や汗を浮かべながらもヴァッツは微苦笑をうかべている。
「ほんと、ただごとじゃないね」
ヒュリンも同じような反応。
平時であればリディがあきれ返っているところだが、いま彼女はそれどころじゃない。
(あれだけの自然魔法を『無詠唱〜preghiera conjuro〜(プレギエーラ・コンフーロ)』で放つなんて……無茶だよ…………)
リディは抗魔法〜courage〜(クラージュ)を詠唱しながらもテアルの身を案じていた。
魔法を詠唱無しで放つことも可能だが、そのぶん体力や精神力や魔力が大幅に消耗する。
自然魔法ジャーマグランスはかなり高位の魔法ゆえ、無詠唱で放てばその反動も凄まじいからだ。
ゴオオオオォォォォォォッッ!!
と猛烈な熱気と勢いで迫りくる焦熱火球。
リディは『高速詠唱〜aceleracion conjuro〜(アセレラシオン・コンフーロ)』で辛くも抗魔法を完成させる。
「【自然鎧兜〜nature armatura〜(ナテュール・アルマテュラ)】!!」
掲げた杖に碧い光がきらめき、三人の身体もまた同じ色に包まれる。
「む……?」「え、何コレ?」
ヴァッツもヒュリンも思わず驚嘆の声を上げるものの、そのいとまはほとんど無かった。
三人の全身はすでに焦熱の炎に包まれていたからだ――――――が。
「熱っ…………ということにはならないな」「ですよねー……」
ふたりして予測どおりといった反応で平然としている。
ただひとり、リディだけが胸に手をあてて咳き込んでいた。
「……おい、大丈夫か」
「うん…………なんとか――」
「この洞窟大丈夫か? こんなに魔法を連射したら崩れてきそうだな」
「……………………」
- 33 :
-
リディに存外けわしい表情で睨まれ、たじろぐヴァッツ。
「いや、冗談だ」
「……そういう冗談は好かないね。もっと気の利いた言葉を並べて欲しいもんだ」
「すまん」
シュウウゥゥゥゥ……。
強大な自然魔法ジャーマグランスの脅威はあっという間に去った。
「ぐはぁっ! がっ……は…………」
悲痛なうめき声がヴァッツたちの耳朶を打つ。
間もなくそれはテアルのものだと解った。
「ぐうぅ…………――うげあぁっ」
小さな少女の口から少なくはない紅き液体が吐きだされる。
かといって、三人が三人とも目を逸らそうとはしなかった。
「…………魔法の副作用か、あれは」
ヴァッツがよく通る小さな声でリディに訊く。
少女はコクンとうなずいた。
「今のうちにれ」
「……そんなこと言わないでくれないかい」
「ん……?」
リディの意外なセリフにヴァッツは瞳孔を丸くする。
「あれはおまえの仇敵ではないのか」
勝手にそういう設定を作らないほしい、とリディは思った。
「……確かに私……あたしは嫌われてたかもしれない、けど…………少なくともあたしは、テアルと友達になりたいと思って……」
「甘言だな…………」
ヴァッツは重く響くような低い声で少女に喋りかける。
「ほら、やつを見ろ」
男が顎をしゃくってしめす方向を、少女はおそるおそる振り返る。
「…………!!」
――テアルは、睨んでいた。
口唇から血を垂れ流しながらこちらをねめつけるその表情は、まるで親の仇を見るように冷たく、凄絶な様相であった。
「フン…………何を怯えた目で見ている、エキドナ。私が吐血する姿がそんなに愉快か?」
血をぬぐおうともせず、全力で嘲笑し、蔑視をむけ、侮辱の言葉を吐くテアル。
傍から見ればテアルはリディにそうとうな恨みを持っているように思えるが、リディ自身はなぜここまで彼女が自分を嫌い、恨み、憎んでいるのか分からない。
「これで終わりと思うなよ、エキドナ」
「や、やめてよっ!」
身体をひきずりながら再び杖を構えようとするテアルに、リディは必の思いで止めようとする。
「これ以上やったらテアルちゃんの……あんたの身体がこわれちまうかもしれないだろっ!?」
「……そのふざけた口調といい、私もだいぶ嘗められたものだな。この程度で私がへばると思ったか。が……」
- 34 :
-
テアル、片手で持った杖を眼前に突きだし瞑目する。
美しい黒髪が、少女の周囲に生じはじめた風によって上へなびく。
「今日のところは…………っ!」
だんっ! と地を蹴るリディを見て舌打ちしそうになるテアル。
リディはテアルの行使おうとしている魔法を見切り、それを止めるべく全力で接近しはじめたのだ。
「くっ…………」
あわてて詠唱を中断し、防御体勢に入るテアル。
リディが『自動体術〜Auto corpus〜(オートコルプス)』で襲いかかってくるのが解っているからだ。
「はぁぁあぁあっ!!」
幼いながらも気合のこもった声とともに、リディの樫木の杖がテアルへ振るわれる。
ドゴッッ!!!「がっっ!!!」
ものすごくにぶい音が鳴るとともに、テアルの手から杖がものすごい勢いでぶっとんだ。
どころか、テアル自身も派手にふっとんでいた。
杖は洞窟のかなり奥の方までいってしまい、少女もまともに受身を取れずに石の地面に叩きつけられる。
グギャ、といういやな音も三人の耳にはいった。
テアルは目を覚ます気配がなかった。
「……………………」「……………………」「……………………」
うつ伏せに倒れたボロボロの少女を、三人は顔を見合わせながら窺う。
「……やってくれたな、エキドナ」
テアルの声にビクッと反応したのはリディだ。
両手で杖をもち、身体を支えながらがくがく起き上がる様は痛々しい。
右脚のどこかを折ったらしく、左脚だけでなんとか立っている状態。
そうとうな痛苦を感じているはずだが、闘志は衰えていないらしく未だ鋭い眼光をリディに向けている。
「相変わらずだ、な…………ぐっ…………だが、私はまだ負け……――くっ!!」
リディが再び杖を手に疾駆すると、テアルはやや愕然とした表情を浮かべて臨戦態勢に入……れない。
彼女はただ自分に向かってくる悪魔を凝視するのみ。
ヒュッ、ドゴッッ!!!
「がっ…――はぁっっ!!」
杖の先端で腹部を殴打され、小柄な身体をくの字に反り返らせるテアル。
逆流してきた血液が吐きだされて地面に血溜まりを作り、少女はくずおれるように地面へうつ伏せに倒れた。
「…………ほう」「……ちょっとやりすぎなんじゃ」
感嘆とするヴァッツとやや引き気味のヒュリン。
「……………………………………」
当のリディは、自ら殴り伏せた小さな少女を冷たい眼差しで見下ろしていた。
その瞳に弱々しくもみたび起き上がろうとするテアルが映し出されると、彼女もまたみたび杖をかまえた。
- 35 :
-
「…………ま………まだ、だ………………」
地面を這いつくばりながらも立ち上がろうと試みる少女めがけて、リディは無慈悲に杖を振るおうとし――止められた。
「やめておけ。もう十分だ」
ヴァッツが杖の中腹あたりをぐっと握りしめていたのだ。
「もう相手に戦う力は残っていない。弱者をいたぶるのは良い趣味とはおもえんぞ」
「ちがう…………」
リディは不満げな顔をヴァッツにむけた。
「何が違うんだ」
「……彼女を魔法でどこかに強制送還する。異論は?」
急にクールな表情になったリディに違和感を覚えはしたが、ヴァッツは「無論、ない」と即答した。
「…………くく、く…………こ、後悔するぞ……エキドナ………」
「……ああ言ってるが?」
「私も本当はもっと痛めつけたいんだけど……これ以上やったら本当に……マジで壊れちゃうかもしんないだろ?」
ようやく明るめの姉御口調になったことに、ヴァッツはなぜか安堵した。
リディの意外すぎる一面にさしものヴァッツも戦慄を覚えていたからだ。
「……じゃ、いくよ」
言下に、杖を掲げたリディの周囲に風が巻きはじめた。
すると、黒いミニスカートがめくりあがっていかにも子供っぽい淡黄色の下衣が見える。
ヴァッツは一瞬「むぅ……」と眼を細めたあと、すぐに顔をそらした。
「く……くそっ…………」
地面を無様に這いつくばって悪罵するテアル。
「こ、後悔すると…………後悔すると言っているのが聞こえんか、エキドナぁ!」
しかし、異能魔法〜percezione〜(ペルチェツィオーネ)を詠唱中のリディは目蓋を閉ざして集中しているため、まったくの無反応だった。
そして、‘それ’は無慈悲に完成した。
「【無作為転送〜Neugier exir〜(ノイギーア・エグジル)】」
なんの感情も籠もっていないような、透きとおった声音。
リディが正眼にかまえた杖から淡い青光の粒子が、
キィィィィィィン!
ときわめて甲高い音をたてて飛散し、それと同時にテアルの身体が徐々に薄れてゆくのをヴァッツはみた。
少女はなにやら悔しげに口をぱくぱく動かしているが、もはや何も聞きとれなかった。
ヒュン―――――――――――――――――――――。
黒い衣をまとった魔女見習い〜〜の存在は、この空間から完全に消滅した。
以上です。
続きは後日に
- 36 :
-
★見習い魔女とオッサンの叙事詩〜Hexe nina and erwachsener saga〜(ヘクセニーニャ アンド エアヴァクセナー サーガ)
第二章後半をはります。
8レスです。
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- 2
「うあっ!!!」
テアルは普段の声とは似ても似つかないすっ頓狂な悲鳴を上げて起きあがった。
周囲は闇のとばりに落ちているが、見渡す限りの草原。
トーレ村の南に位置する、同名の広大な土地だろう。
全身に汗をかいているが、つい先刻まで体験したできごとが夢じゃないことぐらいはわかる。
「痛っ…………」
全身に軋むような鈍痛。
あの女にやられたせいだ。
「やつめ…………まったく躊躇することなくここまでするとは…………ちぃっ」
声が濁ってしまいそうな腹部の痛みにテアルは舌打ちする。
杖の先端で胃をえぐるように打ち据えられたが、もしとっさに抗魔法〜クラージュ〜をかけてなかったらこの程度では済まなかっただろう。
「……未だやつに敵わないのか、私は」
少女は忸怩たる思いをかみ締めるように独語(どくご)した。
中等位次席がなんだ。
主席と差が大きすぎたらそんな事実など滑稽に見えるだけだ。
「…………ぐぅ…………っち」
地面に手をついて立ち上がろうとするが、体中の至るところが悲鳴をあげていて起立することすらもままならない。
そのうえ、先刻の戦闘で魔力のほとんどを使い果たしてしまったせいで回復魔法〜curare〜(キュラーレ)の行使もできそうにない。
「…………アルさまぁ」
ふいに。
テアルの耳朶を打ったのは可愛らしい少年の声。
少女の首にかかっている黒縞瑪瑙〜ブラックオニキス〜のペンダントから放たれたものだ。
「アルさまぁ、だいじょうぶですかぁ……?」
鼻にかかったようなハイトーンソプラノに、テアルは思わず相好をくずした。
「…………そういえば、すっかり忘れていたな」
「えっ、そんなぁ?! ヒドいですよアルさまぁ」
「仕様が無いだろう。見てのとおり、無様にやられてきたからな」
「うう、おいたわしや…………」
「だが、私の言いつけをちゃんと守ってくれたのは有り難く思ってるぞ、ギリオン。むしろ、心配性のおまえが良く最後まで出てこなかったな」
テアルが彼――妖精ギリオンに頼んだのは、「私がどうなっても決して外に出てくるな」というもの。
主従契約を結んでいる魔女と妖精は、魔石を介して容易に召喚可能だが、テアルはあえてギリオンの加勢を事前に止めておいたのだ。
- 38 :
-
「でもでも、このままじゃうごけないですよねぇ……? どうしよう……ガドウィールさまをよんだほうがいいかなぁ…………?」
「な、なんだと?」
テアルはその固有名詞に過敏に反応する。
「おい、まさかギリオン……あいつがこちらに来ているのか?」
「そうですけどぉ……あれ、けっこうおおきなまりょくがちかくからはなたれているじゃないですかぁ」
少女は肌が粟立つのを感じた。
ようやくあの小姑爺から解放されたと思ったら、もう再会する破目になるのか?
「というか、もうすぐそこまできてますよぉ」
「逃げるぞギリオン」
「え、ど、どうしてですかぁ?!」
「せっかく自由を満喫できそうなのに、また縛れらるのはごめんだ。私は独力でやつをたお――――」
「其れは無理な相談ですな、テアル様」
渋みのある特徴的なバリトンボイスが響くと、テアルの背筋に悪寒が走った。
過去の世界では飽きるほどに聞いた低い声。
一週間程度あわなかったところで忘れられるはずもない。
「わたくしの気配を察知出来ないとは、よほど消耗しているのでしょうな。お痛わしや」
ギリオンと同じことを言う声の主の姿を、テアルは視認できない。
わざわざ異能魔法を行使っているのだろうか。
暗いとはいえ、周囲は見渡す限りの大草原なのである。
「…………主に対してかような狼藉、とても見過ごすことはできん。クビにするぞ、ガドウィール=カトゥケスス」
「いや、冗談です、冗談でありますぞ、テアル様」
テアルがガドウィールと呼んだ不可視の男は、フフフと愉快そうな忍び笑いを漏らした。
「相変わらず……お変わりないようで、テアル様」
「一週間顔を合わせなかったくらいで大げさだな。それよりさっさと姿を見せてくれないか? やりづらくてかなわん」
「かしこまりました」
声は首肯し、すぐさまサァァァッ……という乾いた音とともに、大柄な男性のシルエットが少しづつ形をなしてゆく。
推定、四十代後半の大男である。
背丈だけでなく横もヴァッツを有に越える。
それだけではない。
彼が全身にまとうのは、もの凄い重そうで、もの凄い光沢が目立つ全身鎧〜フルプレート〜だ。
背にはきわめて特徴的な紋様が描かれている巨大な戦斧〜バトルアクス〜を携(たずさ)えている。
鎧から出ている顔は男前だが、齢はすでに五十手前だろう。
初老寸前の壮年の良い部分だけを抽出したような、見事な面差しだ。
ガドウィールは、きわめてアルカイックな微笑をテアルに向ける。
「寂しかったでしょう。さあ、遠慮なくこの爺の胸にとびこ…………」
ごんっ!
にぶい音が響く。
テアルの白樺の杖〜ホワイトバーチ〜がガドウィールの頭部をしたたかに打ち据えたのだ。
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「どの口がいうんだ、どの口が。……そうか、私に殴られたくてそんな戯言を吹いてるんだな?」
「……いくらわたくしといえど痛覚を愉しむ趣はありません。それに、あまり殴られると頭が馬鹿になってしまいます」
「ええい、うるさい。……くそ、余計なやつが来たせいで行動しにくくなったな」
「ところでテアル様、ひとつお訊きしたいことがあるのですが」
「なんだ」
「テアル様はなぜ未来にきたのですか?」
「…………なんだと?」
テアル、なに分かりきったことを訊いているんだ、という表情をがガドウィールにむける。
「未来にきたエキドナを打倒するために決まっている」
「つまり、彼女をしたら現代に戻られると」
「こ………………」
テアルは言葉に詰まった。
「……すとは言ってない。倒すと言ったんだ」
「ならばわたくしにお任せを。あのような小娘、赤子の手を捻るかの如く――――」
「やめろ!!!」
ドスのきいた低い怒声が放たれる。
わずか十三の少女の声とは思えないほどの迫力があった。
「私とやつの間柄に口を挟まないでくれ」
「ええ…………解っています」
ガドウィールは何事もなかったかのように、柔和な笑みを浮かべたまま話し続ける。
「わたくしとて、貴女とエキドナ嬢の関係性に介入したいわけではありません。ただ、契約を忘れてほしくないのです」
「…………………………」
テアルはうつむき、押し黙った。
「……解っている」
「けっこう。ところで…………」
言下に、ガドウィールがまとっている鎧がガゴッ! という音を立てて地面に落ちた。
ものすごい重装備のはずだが、落ちた際に発されるはずの衝撃や音はほとんどない。
全身鎧をはずした初老の男は、一人の村人のような普段着に姿をかえた。
ただし、渋麗な容貌ゆえ目立つことにかわりはないのだが。
テアルの身体に戦慄が走った。
「ずいぶんとご無沙汰でしたな。テアル様もそう思いませんか」
テアルは答えることができない。
ガドウィールの口で自身の口が塞がれてしまったからだ。
無理矢理に唇を奪われ。
強引に肩を抱き寄せられ。
服の上から胸を揉まれ。
それでも、彼女は抵抗する気がおきなかった。
本当は待ち望んでいたからだ。
こうされることを。
だが、表面的にはそれを否定せざるをえない。
彼に軽い女だと思われたくないゆえに――――
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3
『後悔するぞ、エキドナ…………』
【無作為転送〜Neugier exir〜(ノイギーア・エグジル)】を行使い、テアルをどこかへ飛ばしたまさにその瞬間に、リディはテアルの「後悔するぞ」の本当の意味が解かった。
……確かにいま、リディは後悔していた。
テアルならクレミアの精神を正常に戻せるが、精神魔法〜esprit〜が苦手な自分にはそれができない。
ヴァッツらには「一日経てばもとに戻る」などと嘯いてしまった手前、明日すぐにテアルを捜しに行かなければならない方針は伝えづらい。
「はぁ…………どうしよう」
少女は独りつぶやいた。
あれからヒュリンとは別れて、ヴァッツとともに村長宅に着くなり、夜も更けきっていた時分とあってか二人はぐったりと眠りに就いた。
が、なぜか今リディは眼を覚ましてしまったのだ。
眠れない。
疲労の極みに達していたはずなのにここまで目が冴えるのは、何か尋常じゃない。
「ふぉっふぉっふぉ……お目覚めのようじゃな」
出しぬけに聞こえてきた村長の声に、リディは寒気を覚えてぶるっとふるえた。
ふと見ると、いつのまにやら開いた扉から村長が顔をのぞかせていた。
「……まさか、あなた…………」
「別にわしはお前さんに何かしようと思ってきたわけではない。少しばかり様子を見にきたんじゃ」
「様子って…………――うあっ!!」
ドクン!
少女は両手で腹部を押さえうずくまった。
体内で何かが蠢いている。
ひどく不愉快な……しかし抗いがたいこの妙な感覚……そう、下腹部からだ。
「な……何を…………あたしに、何を飲ませたんだい…………?」
「ふぉっふぉっふぉ…………その口調は似合わんぞ、お嬢ちゃん」
下腹部が熱い。全身がひどく火照ってきた。
月のものの前のように……いやそれ以上に自分が不安定すぎるのを少女は感じとる。
「ふむ、魔女とはいえ、やはり催淫薬を飲まされれば効果はてきめんじゃな」
(催淫薬…………!!)
「レージルめには睡眠薬を盛ったが……あの阿呆め、まんまと引っかかりおったわい」
まずい、とリディは思った。
すべての魔法使いにいえることなのだが、性的快楽を覚えると魔力が飛んでしまうのだ。
男女問わず絶頂を迎えると、魔力が一気に全て飛んでしまう。
故にか、大魔法使いほど齢を重ねているし、女性の方が優れた魔法使いが多い。
個人差はあれど若い男の射精欲は尋常でなはないし、また女性であっても若いほど性的な標的にされやすいからだ。
「……ふふ、うふふふふ。可愛いのぉ」
身もだえするリディを眺めて涎をたれ流す老人。
「そんなに短いスカートで……美味しそうな足を晒しおるから悪いんじゃぞ……そう、お前さんがイケナイんじゃ」
もはや村長の声すらまともに聞こえない。
歯を食いしばって沸きあがる肉の欲情を抑える。
「…………さて、わしは退室するとしよう。人がいない方が自涜はおもいきり気持ち良くできるだろう? ぶふふふふふふふ…………」
気色悪い笑声を高らかに響かせ、老人は退出する。
愕然とした気持ちを抱えたまま、少女はベッドの上で悶えていた。
- 41 :
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4
「ひぐっ、あっ……! ――ふぁっ! だめ…………!」
テアル=サイモリアが、普段の声からは想像できない嬌声をもらしている。
「あいかわらずここが弱いですな、テアル様」
ちゅくちゅく、ちゅぷっ、ちゅぷっ…………
「ひゃぅ…………くっ、う…………! ふくぅぅ…………」
右乳首を執拗に舐められ、吸われ、少女は白く小さな肢体をがくがく痙攣させる。
声を抑えようと必なのだが、ものすごく気持ちいいせいで多く洩れてしまうのだ。
「や、やめっ、ろっ、あっ――……うっ……くぁ……ひあぁっ!!」
特にテアルは吸われてから顔を離されるのが苦手だった。
なぜか乳首に電気を通されたかのような感覚が走り、たまらなく気持ちいい。
「気持ちいいんですか、テアル様」
「くぅ……そ、そんなわけっうぁっ」
ちゅぱ、と吸われれば言葉をまともに口にできないほどの衝撃が走る。
「ひぅ……――んぁ! っ……ひゃ…………んんっ……!!」
ちろ、ちろ、しゅぷしゅぷしゅぷ…………
舌先で乳首の先を擦られたり、口に含んで全体を舐め回されたりと、多彩な責めでテアルは絶えることなく甘い鳴き声を上げてしまう。
「ふふ……もうこんなにコリコリにたっていますよ、テアル様」
言葉通り手で乳首をつまんでしこりあげると、「ひやあ!」と喘いだ少女の身体がビクンと跳ねた。
「も、もうっ……やめへぇ! お、おか、おかひくなっひゃうぅ…………」
「おや、乳首だけでこんなになるなんて…………(ちゅく)」
「ひゃっ!!」
「テアル様は本当にお好きですな」
すすすっ……――と、ガドウィールの右手は自然とローブスカートをまくりあげ、下衣の上から股間を刺激する。
「あくぅ…………」
「もう湿ってらっしゃる。直接触ったらどうなるんでしょうな」
言いながら、ガドウィールはそれこそ無遠慮に下衣の中へ手をいれる。
「そ、そんなすぐにっ……」
「すぐに、なんですか。いつもしていることではありませんか」
「そ、それは……(くちゅ)――んあぁっ!」
濡れた指で膣内を探られると、蕩けそうな性感が少女を襲って恍惚の声をおさえることができない。
くちゅくちゅ、ぬちゃぬちゃぬちゃ。
「ひゃっ、あっ、きゃあんっ! だっ……くはっ、んんっ、ふぁああっ!!!」
人差し指で秘境を探り、分泌される愛液をすくうようにして責めたてる。
愛液でぐしょぐしょになった少女のそこから指を引き抜き、ぬらぬらした指をねっとりと舐める。
「もうこんなに濡れていらっしゃる。そんなに昇りつめたいのですか」
「そ、そんなわけ…………(くちゅ)――ひゃうぅん!!」
今度は長い中指が根元まで挿入された。
少女の狭く小さな性器のなかで、初老の男は中指の第二関節と第一関節を巧みに動かし、テアルの良い部分を的確に刺激する。
「ひぐっ、あッ!? やっ、だめらめぇ、ひゃ、やぁぁ!!」
先刻と比較すると明らかに激しいぐちゅぐちゅという水音が響いている。
「絶頂(いき)そうですか、テアル様」
「ひゃめっ、もうやめっ、あっ、指を抜い、ひゃあッ、あんやんひゃあああぁっ!!!」
ガドウィールは可愛くあえいでもだえ狂う少女を愛おしく見つめる。
右手中指がテアルの愛液で濡れていることに、男はえもいわれぬ快感を覚える。
もうすぐ昇りつめるだろう……そうと解かるだけで彼は満たされた気持ちになる。
娘ほども齢が離れた少女を性感へ誘うことへの背徳感。
しかも強姦などという下劣きわまる行為ではない。
彼女はとある理由から合意の上で自分に身体を許し、しかも自ら快楽を求めているのだから…………。
- 42 :
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5
「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」
ぐったり、という様相のテアルである。
ほとんどの衣類を脱がされ、あおむけに倒れて涙と涎を流し、性器は自らの漿液で濡れている。
何も知らぬ者が目撃すれば凌辱現場に見えるかもしれないが、その美しい肢体には傷一つない。
「大丈夫ですか、テアル様」
ガドウィールの声が遠く聞こえる。
快楽の余韻が未だに抜けきれず、陶然としている状態。
初老の男はため息をついた。
「やれやれ、仕方ありませんな……自分でするしか――」
「何が仕方ないんだ」
出し抜けにむくりと上体を起こした少女に苦笑を禁じえない。
「いえ……テアル様がしてくれないので自家発電しようなどと言ってませんよ」
「いま、言った」
「ええ、言いました。してくれるのですか、テアル様」
「別にしてやろうなどと言ってない。おまえがどうしてもというなら詮無いが」
「じゃあ、どうしてもです」
ガドウィールは真顔で視線の焦点が合わないテアルに迫る。
「わたくしはどうしてもテアル様にご奉仕していただきたいのです」
「ふむ…………ならば仕様が無い。この私じきじきにおまえを良くしてやろう」
まるで酒に酔っているかのような少女のいきおいである。
「言いましたね」
「ああ、女に二言はない」
「別にあってもかまいませんが……そこまで言ったからにはしてもらいますよ」
言うなり、男は恥ずかしげもなく脚衣を脱ぎはじめる。
「…………おい」
テアルが少し引き気味だがお構いなし。
なにゆえだろうか、彼のそれはすでに戦闘準備万端のようだった。
「うえ…………」
さすがのテアルも明らかに吃驚している。
なにゆえだろうか、初老の男は得意満面で少女を見据えている。
(キモいぞ………………)
正直そう思うが、口には出さなかった。
「…………なんというか、だな…………おまえの持ち物は本当、半端じゃないな」
黒髪の少女は頬に朱を差している。
酔いが醒めたとでもいうのか、眼前に屹立する逸物を見て後悔していた。
ちょっと前までの自分はなぜあのようなことを口走ったのだろうか。
「当然ではないですかテアル様。まあ、これというのもテアル様のおかげです。わたくしの性力……もとい精力を取り戻させてくれたのですから」
「……………………切り取ってやった方がいいかもしれんな」
「何か言いました?」
「別に…………」
「無駄話はこれくらいにして、そろそろはじめましょうか」
テアルは盛大に舌打ちした。
だが、あそこまで啖呵を切ってしまったのでは仕方がない。
それに、彼女は舌技には自信があった――――
- 43 :
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6
ちろちろ、ちろちろ。
ちゅぷ。ちゅくちゅく、ぺろぺろ。
しゅるうぅぅぅ…じゅく、じゅぷ、じゅぷじゅぶ。
…………見事に擬音だけの口淫場面である。
両者ともなかなかはっきりとした声を出さない故だが、当然ながら傍目にはなかなかエロチックだ。
舌先で亀頭を優しく舐めたり、小さな口に亀頭をすこし含んで吸い付いてペロペロしたり。
あるいは根元から亀頭まで舐めあげたり、今度は陰(いん)茎(けい)全体を小さなお口に含んで淫猥に上下運動したり…………。
それに、少女の表情も淫蕩に染まっており、奉仕される初老の男も少女の頭に手をのせて不敵な顔だったりして…………。
ある種の雅やかさを感じるのが不思議である。
「……………………ふう。なかなかにいい眺めですね……初老の男であるわたくしが、年端もゆかぬ少女に奉仕されているというのは」
「……なら少しはよさそうにしたらどうだ。張り合いがなくて困る」
「これは失敬。こう見えてもわたくしそろそろ射精そうなのです」
「……能面というわけでもないだろうに、ちょっとは顔に出しても罰は当たらんぞ」
「では口に出しましょうか。(誰うま)
――――ああ、ああ、気持ちいいですテアル様。で、射精そうであります。
あ、あ、あぁ、あん、射精る、射精る、射精てしまいますう」
「棒読みのくせにずいぶんビクビクしてるな……本当に――――ぷあっ!」
どぴゅ――びゅく、びゅぷ、びゅっ……どくどく、どく…………。
精液がテアルの口内、そして顔を濡らし、美しい少女は白濁に穢れて咳きこんだ。
「〜〜射精すなら射精すといえこの馬鹿!」
「いやあ、あまりに気持ちよかったもので……直前に言えませんでした」
「……言っとくが別に私はこれがすきなわけじゃないからな! まったく……ああ、髪にも少しついてしまった……もう!」
ガドウィールは微笑みながら、ぷんすか怒っているテアルを見つめる。
「すいません。でもそれは魔法の布でなんとでもなりますよ」
「そういう問題じゃない!」
「それに、ここは宿のベッドというわけでもありませんし……」
読者様が失念されないよう記すが(そもそも筆者が情景描写を怠りすぎなわけだが)、なにしろこの二人が今スケベしているところは「真夜中の大草原」なのである。
たしかに人通りは皆無に等しいとはいえ…………ねぇ。
「……そうだな。たしかにベッドではない以上、おまえと繋がる必要性もないだろうな」
初老の男は「おや」という顔をする。
射精したあととあってか、この少女に挿入れたいという欲求が薄いのは確かだが……
「おたがいによくなったんだ。行くぞ」
テアルはどこからか取り出した魔法の布で顔を拭きながら言った。
「……何処へでありますか?」
例によってアルカイックスマイルをむけてくる男に、テアルもまた清々しさを感じさせる微笑で応える。
「それはお前が決めることじゃないのか? 行ってやろうじゃないか、どこへなりとも。お前の望むところへ私もいこう」
少女の朗々たる表明に、ガドウィールは思わず瞑目して答えた。
「仰せのままに」
「…………ボクのこともわすれないでくださいよぉ」
妖精ギリオンの台詞はもちろん二人の耳に入らなかった。
- 44 :
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7
「あくぅ、あ…………ふ、あっ。んはぁ……」
くちゅくちゅ、くちゅくちゅ、くちゅくちゅくちゅくちゅ。
と、少女はひたすら自らの膣内に中指薬指を出し入れさせていた。
仄かな気持ちよさ。
そんな表現がもっともしっくりくるであろうほどよい心地よさを、少女は自らの指で味わっている。
淫猥な水音を響かせながら愛液をしたたらせ、眼を瞑り、開けた口から涎を垂らすさまは、外見的に十歳程度の少女としてはとてつもなく大きな違和感を覚える。
「きも、ち、いぃっ…………あぁぁ――キモチいいよぅ……!!」
トーレ村の長が盛った催淫薬の効果はてきめんだった。
リディがそこまで性欲があるわけでもなく、かといって意志が抜群に強いわけでもないが、ここまで欲情のままに自涜に及んでくれるとは思っていなかった。
「あ、あ、あっ、あン、あぁんっ……だめ、だめだめ、ここらめぇ、きもちぃよぉ…………」
無我夢中で陰核〜クリトリス〜をいじりながらそんなことを口走る。
確かに彼女、強い性的快楽を感じてはいるものの、もう二十分近くもシているのに絶頂を迎える気配はまったくない。
ある意味、これのおかげで彼女は体力(魔力)があるのかもしれない。
自慰行為というものは、長引けば長引くほど体力的に疲弊する。
リディは絶頂けないゆえ、なんとしてでも絶頂こうと励むから、そのぶん体力もつくのだ……。
そして、そんなリディの様子をヨダレを垂らしながら見守る村長の姿があった。
恍惚の表情である。
むき出しの逸物からは先走りがあふれ、久方ぶりの快感に酔いしれていた。
だが、不幸なことにそれは長くは続かなかった。
「ふむ…………なかなかに趣のある光景ではあるな」
――――!!!???
老人の全身は凍りついたかのように硬直した。
そして、おそるおそる後方を振り返る…………!!
(ば、馬鹿な…………ありえん! わしは確かにレージルめの落ちる瞬間を見届けたはず。なのに、一体なぜ!?)
「なぜ俺がここにいるんだ……か? 答えは簡単、俺には睡眠薬が効かないからさ」
「…………!!」
「……というと御幣があるがな。まあ、あんたが何を企んでるか知れたものじゃないから、狸寝入りをしたというわけだ」
村長は表情を凍りつかせたままガタガタと震えていた。
逸物をむき出しにしたままの状態なので非常に間抜けにみえる。
ヴァッツは嘆息した。
「別にとって食おうという気はない。見なかったことにする、だから…………さっさと消えろ」
ダダダダダダッ…………老体に似合わぬ走駆をみせ、村長はあっという間に姿を消してしまった。
ヴァッツは微苦笑を浮かべる。
「気持ちは分からんでもないがな……」
むしろ痛いほどによくわかる。
そして、わかるからこそ村長のよからぬ企みを見抜けたというべきだろう。
「あっ、はぁ、あぁん! らめ……らめぇ……」
未だ自分で自分を慰めるリディに、ヴァッツは眉間にしわ寄せ複雑な表情をむけた。
(はて、どうしたものか……)
むろん、理性的に考えれば放っておくべきなのだろう。
彼女があの状態だからといって心身ともにそこまで実害があるわけではないし、催淫薬を中和する方法もわからない。
このまま見てみぬふりをするのは簡単だ。
(………………どうにも決めがたいな。――よし、天の声にまかせるか)
- 45 :
-
1、 理性的にも倫理的にも、このまま立ち去るのが一番だろう
2、 しばらく様子をみる。何か状況が変わるかもしれない
3、 よし、ここは俺が一肌脱ぐか
4、 その他
…………実際どうも決めがたいので、どなたか選んでくださると助かりますw
悲しいことにまったくレスがなかったら自分で勝手に選択して続きを書きます(´;ω;`)
では、続きは後日に
- 46 :
- 3.
- 47 :
- 3でしょう
- 48 :
- 3だろう。
髪の毛の長いハイライトの消えた(レイプ目の)女の子に色々舐められる夢見た。
これは一人称で書けという啓示だろうか……。
- 49 :
- 洋画のニーベルングの指環を見た
三時間あったけど、あれはずっと見いれたし設定もよかった
久しぶりにファンタジー系の中で当たり引いたな
ドラゴン数分しか出てこなかったけどw
- 50 :
- >>49
スタッフロールに流れる歌は誰が歌ってるの?
あの歌耳から離れないんだけど
- 51 :
- おお、こんなスレあったんか
保管庫あるん?
- 52 :
- >>49
悲劇すぎてあれをSSにすると暗くなるだろうなw
- 53 :
- >>51
あるよー
>>3
つ 保管庫TOPのミラーサイトその1。
ttp://database.f-adult.com/
- 54 :
- >>53
ありがとう!
- 55 :
- >>50
ささやき声っぽいので「おーるいとぅしーむそーふぁーらうぇい」って
始まるやつなら Katie Knight Adams「Riding on the Rock」だと思う。
うちにあるニーベルングの指輪のDVDで確認した。
映画自体が違ったらごめんねー。
投下します。前スレでもお世話になりました魔女アニエス話の続きです。
「魔女の妙薬」のタイトルで10レスです。相変わらず長くてすんません。
NGはタイトルか◆RAN/ur62O.でお願いします。
※注意※
TS要素があります。前まで男だった人の見た目が女になっている設定です。
また、途中で一部ふたなりになっています。どちらもぬるいので
TSもの・ふたなりものとしてはカウントできないクオリティだとは思いますが
苦手な方はご注意ください。
見てなくても別段支障ないと思いますが、時間軸的には前に投下した
「魔女とその弟子」の続きです。簡単に言うと魔女である主人公と、
契約してる悪魔(魔物)の話です。悪いエロ司祭がいて、主人公が
住んでる村の女の子に手を出そうとしたので、色々あって身代わりに
なったけど相棒の悪魔がそれに対してプリプリ怒ってるという話でした。
村の人間は主人公が進んで身代わりになった事に対して、若干悪いなーと
いう気持ちがあるので割と親切にしてくれる、という設定です。
- 56 :
- 「あ……ふぅっ、………ううっ」
すすり泣くような声が薄暗い部屋の中に響く。寝台の上で二つの影が
重なり合って動いていた。影のひとつは金色の髪の女で、黒髪の娘を
抱えたまま嬲るようにしてその体をまさぐっていた。
「あっ、あっ……んっ」
しなやかな指で中を広げられて黒髪の娘は声をあげた。
その額に汗が浮き、髪が額へとはりついている。
「ねぇ、アニエス。どぉ、気持ちがいい……?」
金髪の女がそう問いかけるものの、黒髪の娘――アニエスは
息も絶え絶えにぐったりとしながらかすかな息遣いで
あえいでおり、答えられそうもなかった。
「返事をしなよ。……ねぇってば」
「ふああっ」
肉芽を指の先でつままれて、アニエスは身を折った。
ずるずると落ちるようにして下がりながら、金髪の女の腕から逃れようとする。
だが、しなやかな腕が伸びてきて彼女の体を抱きしめた。
「やだ、もう……やだってば」
アニエスは腕を振り払うように体を動かしたが、自らの手が触れた
場所にむにゃりとした感覚があり、思わず目を見開いた。
まろやかに膨らんだ乳房をまじまじと見てしまう。思わずたじろいだ
アニエスの手を取って金髪の女は嫣然と微笑んだ。
「さわってみて」
* * *
例の司祭の一件以来、村の人間はなにくれとアニエスに差し入れをしてくれて
いたが、アニエスとしても好意に甘え続けるわけにもいかず仕事を請け負おうと
考えていた。食べるだけなら庭や畑で育てているものや、森に入ればなにかしら
猟れるので大して困らないが、日用品やら魔法に使うものであればやはりどこかで
金銭が必要になるのだ。
アニエスは村に住んでいる、以前に頼まれて薬を作ったことがある豪農に頼み、
いくばくかの紹介料と引き替えに彼の知り合いに手紙を書いてもらった。
要はなにかしら困り事あらば、という宣伝だ。うまく行けば御の字で、これで
駄目なら街まで行って薬の行商だと考えていたのだが、彼の知り合いから一人
返事が来たらしく、アニエスはやって来た依頼主の代理人に引き合わされ、紹介された。
「……お話はだいたいわかりました」
代理人を自分の家に招いてひとしきり話を聞いたアニエスは言った。
依頼主は街に住んでいる商家の主人であった。代理でやって来たのはその侍従。
つい先日、その家の主は長いやもめ生活を終わらせ、新しい奥方を迎えることに
なったのだが、そこで問題が持ち上がったという。といってもこみいった事情ではなく、
それは馬鹿馬鹿しくも単純な問題であった。しかし、切実な。
やや老年にさしかかっている主人は、若い妻との楽しい第二の人生を迎える
前段階として、男としての機能を試すために女性を呼んだのだが、どうにも
役に立たなかったのだという。
「それ以来、旦那さまはすっかり気が塞いでしまったようで。
せっかく若い美人が嫁にくるのに何もできないなんて酷すぎる……。
私はご主人さまが気の毒で……」
そう言ってくっ、と目頭を押さえた従者にアニエスは神妙に返事をした。
「そうですか……」
それ以外に何と答えていいものか分からなかったからだ。
- 57 :
- 「では、要は回春薬の作成を請け負えば良いのでしょうか。
強壮剤と言い換えてもよいですが」
代理人の男はアニエスの家の中に吊るされた干した薬草やら
イモリの黒焼きやら、壺に入った木の実やらを眺めて、ほえーっと息を吐いた。
「……愛の妙薬と言うんでしたっけ、三色すみれの薬でしたっけ。
わたしが子供の頃、住んでた村にも魔女の婆さんがいましてね。色々作ってましたよ。
眠り粉とか、くしゃみの薬とかも」
商家の人間のせいか男は愛想が良かった。あはは、と笑うその反応に
『魔女』に対する偏見は人それぞれなのだなとアニエスは思う。
「くしゃみの薬ならご入用ならばいくらでも。それと、三色すみれは惚れ薬ですね。
……眠っている人のまぶたに塗ると起きたとき最初に見た人間に恋をする。
でも効果は短いですよ」
アニエスはそう説明した。
「いやぁ、でも美女と一夜でも情熱的な恋ができるってことでしょう。
それいいなぁ。ご主人様のお相手も探しに行かなくてはいけないし、
その時、店一番の花娘に使っちゃったりね」
「お相手ですけど、わざわざ探しに行かれなくても
お代金いただけるならこちらから参りますよ」
奥から聞こえてきた艶やかな声に、アニエスはぎょっとした。
それまで自分の冗談で笑っていた代理人の侍従も、目を見開いたまま
固まったように奥を見ている。
アニエスが振り返ると、そこには金色の髪を無造作に結い上げた
肉感的な美女が立っていた。たれ目がちな瞳の横についた黒子がなまめかしい。
「タラン……」
苦々しげにそうアニエスが呟くと、タランと呼ばれた美女は
うふっと愛らしく笑ってみせた。
「いやだ、名前を間違えてますよ。私はターリャ。もういやだわ」
「やー……これは、何とも…何というか、なんとも……お美しい方ですな」
見とれるようにしてうっとり呟く男とは裏腹に、アニエスは
げんなりとした顔をした。
ターリャとやらは、しゃなりしゃなりと近づいてくると近くにあった
紙にさらさらっと、相場に少し加えたくらいの金額を書いて彼に見せた。
「これではいかが?」
*
「まったく何を考えてるんだ?」
交渉の結果、結局夜伽役も依頼の内容に加えることになり、アニエスは憤慨していた。
「だーって、アニエスがお金ないお金ないっていうから。
いいじゃんか、ジジイに性春の喜びを思い出させてやりゃこの値段
もらえるんだろ。特に大した裏もなさそうだし良い仕事じゃん」
「良くないよ、わたしは体を売るつもりはない。
ここの魔女は体を売るとか噂が広まったらどうするの。
ようやくここに馴染んできたのに居辛くなるじゃないか」
「そしたら、さっさとここも引き払って次に行けばいいじゃん」
けらけら笑う女を前にアニエスは唇を引き結んだ。
それから静かな声で言う。
「……わたしはここでやって行きたいよ。できるだけ長く」
「ふーん、あっそ」
- 58 :
- だがタランは興味もなさそうに気のない相槌をする。
「そうできりゃ良いけどね。……まぁ別にいいじゃないか。
何もアニエスにジジイの相手しろって言ってるわけじゃないんだし」
「ここにそういう仕事ができるのが、わたし以外に誰がいるんだよ!」
バン! とテーブルを叩いてそうわめいたアニエスの額に、
いつもより細く小さなタランの手が触れた。アニエスはそのまま
タランの顔をじっと見る。長いまつげに、青い瞳。そして笑みを湛えた
ぽってりとした唇。見れば見るほどいつもとは違う顔だ。
だが、笑い方や雰囲気などでアニエスには確かにタランだと
感じることはできた。するとタランはにぃっと唇をつり上げた。
「誰が君にやれって言ったよ。僕が行く。だからアニエスは薬だけ作ってよ」
「お前が?」
「そう」
こくりとうなずくと、タランの金色の髪の結い上げた部分から一房がはらりと落ちた。
「……お前が?」
「なんて顔するのさ」
アニエスはしばし苦悩していたが、薬の材料を揃えるのにも必要なので
もらった前金をちらりと見て声を絞りだした。
「人の紹介なんだ。変な真似はできないよ……でも、そうだな……今のお前は」
「ちゃんと女だよ。もちろんここもね、見る?」
「結構だ」
下腹部の隙間を指差す女に向かって制するように手を上げたアニエスだったが
ふと深刻な声を出した。
「……大丈夫か?」
「なんだよ、信用がないなぁ。うまくやるってば」
最近、夜になるとタランはこのような女の姿を取っていた。
アニエスにはその理由は分からなかったが、彼が姿を変えるのは
今に始まったことではない。ここ数年は元の青年姿でいることの方が
ずっと多いタランだが、それでも何度か女に化けて男の精気を喰ってきた事が
あるのは知っていた。
この姿もそうだし、別の女の姿をしているのを見たこともあった。
それに関してはアニエスは口出しするつもりはなかった。なかったのだが、
「……前から思っていたんだけど、その姿は誰か元にした人でもいるのか」
「人って言うかー…。昔、いっとき関係のあった妖魔の娘。
なんか精霊の血も引いてるとかでああ美形だなと思ったから。似せてる」
「へー……」
さいですか、とアニエスが力なく返事をすると
「美人だろ?」
そう言ってタランはくるりとその場で一回転した。
「そうだね……」
昔の女の姿に変身して男に抱かれに行く、というのはアニエスには
理解しがたい感覚ではあったが深くは追及しないことにした。
「いやー男を喰うのはすんごい久しぶり。どうやったかとか忘れてるかも。
ちょっと楽しみっ」
うきうきと言った様子でそんな事を言うタランをアニエスは白眼気味にみやった。
「……悪趣味」
- 59 :
-
*
仕事をする、と決めれば準備が必要だった。
日が落ちるとアニエスは蝋燭に火をつけテーブルに置く。
そして水を張った盥をよろよろと持ってきて、その隣に置いた。
水面が火明かりを受け、あたりのものを反射して映していた。
ターリャの格好をしたタランはそれを見ると、物珍しげに周りをうろうろし始めた。
「なにしてんの?」
「サキュバスを呼ぶ。媚薬をつくるのに材料が必要なんだ」
「ふーん。……前からこんなやり方してたっけ」
「してたよ。失せもの探しの応用だもの。お前がいない時にやってたから
見てないだけじゃないの?」
アニエスが何事か呟くと水面に映る影が揺らぎ、女の顔が映った。
それが揺らぎ、また別の女の顔。いずれも美しかったが不自然なまでに
整った美貌の女もいた。皆、すべて精気を欲して人間の男を惑わす
夢魔や淫魔といった悪魔の類だ。
「へーえ、なるほど便利だ」
「皆だいたいこの近くにいる。タラン、この中で名前を知ってる奴はいるか?」
移り変わる像を見つめていたタランだったが、ある女悪魔の影に向かって
指を指した。
「ジュヌヴィエーヌ。……この子を知ってる」
「よし、名前が分かったな」
アニエスはそのまま盥の周りをぐるりと囲うように、白墨で円を描いた。
自分の周りにも円を描き、それぞれに術式を書いていく。
するとアニエスはジュヌヴィエーヌの名を口にすると、いくつかの言葉で
こちらの声に応えるべく呼び続けた。
我が声に応えよ、さすれば与えられん――と。
すると盥の中身にさざ波がたち、それが収まると滑らかな水面は
真っ黒な板のようになる。きぃぃんと鼓膜を打つような響きがあり、
空気が張り詰めていく。
アニエスがこの召喚円を介してかけた女悪魔への呼びかけに、
向こうが答えたことによって扉が繋がったのだ。
黒い円の中からぬっと女の手が伸びてきて、そのまま顔が、上半身が現れた。
現れたのはジュヌヴィエーヌと呼ばれていた女。
胸元が扇情的に開いた服を着ており、男心をそそる肉体と、勝気そうな
瞳を持った美女であったが、その耳の造りがどことなく人とは違う。
背中にも膜のある羽根がついていた。
女はアニエスを見て紅を引いたような真っ赤な唇を開けた。
「……あたしを呼んだ?」
「こんばんは、ジュヌヴィエーヌ。君に頼みがあるんだ」
ジュヌヴィエーヌは、アニエスを上から下まで眺めると
すうっと猫のように瞳を細めた。
「あんたさぁ、なんであたしの名前知ってるわけ」
「僕が教えた」
ジュヌヴィエーヌは、アニエスの後ろに控えている金髪の女に目をやると
しばらく近目のように目を眇めていたが、鼻をくんと動かして叫んだ。
「あんた、タラン!? しばらく見ないと思ったら使い魔になんかなってたわけ」
- 60 :
- 「まあね」
召還円の上に座って伸びをしたジュヌヴィエーヌは、けっと
つまらなそうな声をあげるとアニエスに向かって指を向けた。
「一匹子飼いの悪魔がいるのに、あたしが必要なの?
誰か男を誘惑させたいならあいつにやらせれば?」
そして指をタランへと向ける。だがアニエスは匙を手に取ると
ジュヌヴィエーヌに向かってそれを差し出した。
「この匙を舐めて欲しい。特別製の媚薬を作りたくてね。
催淫作用のある君の唾液が必要なんだ。男相手には女悪魔のものが、
女相手には男悪魔のものを使った方がやっぱり効果がでるから。
して欲しいことはそれだけ」
「……対価は?」
アニエスはテーブルの上に置いた物を指差した。
「このイモリの黒焼きと交換」
「いいわ。すっごーく簡単なことだものね。じゃあ黒焼きちょうだい」
「匙が先」
ジュヌヴィエーヌは赤い唇をにっこり吊り上げた。すると手のひらを
上にして差し出すように指をアニエスの方へと向けた。
長く伸びた爪の先も朱色に染められているのが分かる。
渡した匙をジュヌヴィエーヌは面白そうにアニエスを見たまま口に含んだ。
しばらくしゃぶって、れろり、と出されたそれをアニエスは受け取った。
代わりの対価を渡そうとすると、女悪魔が何故か体を引いたので
アニエスはわずかに手を伸ばす。するとジュヌヴィエーヌはなぜか笑った。
一瞬、嫌な予感がしたのだ。そして気がつく。魔法円から足が少しだけだが、
出てしまっている。アニエス自身もまずいと思った時、ジュヌヴィエーヌの
目がきらりと光った。伸ばした手を掴まれぐいと引かれ、アニエスは息をのんだ。
「ねえ、ちょっとでいいから遊びましょ」
腕をねじり上げられ、ジュヌヴィエーヌが座っている場所まで
引きずり上げられてアニエスは痛みに顔をゆがませた。思わず匙を握り締める。
「………っ!」
焦りながらも何か武器になりそうなものを探していたアニエスだが
タランと目が合った瞬間思わず助けを求めてしまった。
「タラン……ッ!」
すると、青い目がふっと細められる。タランはかすかに笑ったようだった。
「はいはい、そこまで」
タランはジュヌヴィエーヌに向かって手を打って声をかける。
「ジュヌヴィエーヌ、それは僕の契約者だよ。身体の一部を食べたいにしろ
抱きたいにしろ、まずは僕に筋を通しな」
女の低い声でタランはすごみ、睨まれたジュヌヴィエーヌは肩をすくめた。
「……わかったわよ、タランはケチねぇ」
女悪魔はアニエスの腕をひねっている手に力をこめた。
瞬間、手首に灼けるような痛みが走りアニエスはうめいた。
「いっ………!」
「また会いましょうね、今度はお目付け役のいないときに」
そう言い残してジュヌヴィエーヌは召還円の奥に消えていった。
黒い板のようになっていた水面が揺らぎ、次の瞬間盥の中身はただの水に戻った。
アニエスはゆっくりと後ろを振り返る。
「どじ」
「分かってるよ……」
- 61 :
- 女悪魔が握ったあとが火傷のように赤く爛れている。
それを見てタランは片眉をあげた。先ほどまで笑っていたタランが、
急に冷たい目をしてこちらを見つめてくる。
「馬鹿じゃないのか。何やってんだよ、相手の悪魔がまだいるときに
魔法円から出るなんて。かわいいかわいい妖精や小人なんかは
君にとっちゃオトモダチ? で、お願いするのなんかお手のもの
なんだろうけど、あの手の貪欲なのを相手にするときは隙を見せるな」
確かにアニエスがうかつだったのだ。幸運だったのはあの女悪魔に
アニエスに対して悪意も好意もなかったこと。アニエスを『引っ張った』のは
単なる気まぐれでアニエスの反応を見たかっただけだ。
本当にアニエスを害する気があるなら魔法円から引きずり出された時点で
引き裂かれている。
「分かってる、気をつけるよ。……助けてくれてありがとう」
「……次は助けないからね」
タランはそれだけ言うと、ふいっとそっぽを向いてしまった。
座ったまま頬杖をついてアニエスから顔をそらす。
手伝いを期待できそうもないので、アニエスは痛みをこらえながら
自分ひとりで媚薬作りに没頭しはじめた。手にした匙を器に入れて置いておく。
そこにマンドラゴラを漬けておいた油を三滴。
コリアンダーを七粒に、エリュトライコンの実を一粒をすり鉢に入れ
粉末になるまですりつぶしていく。アニエスは呪文を唱えながら
全てを混ぜ合わせていった。
これだけでも効果はあるが、できあがった代物は舌に刺激がきて、
口に入れても飲み込みづらいので最後に特別なものを入れる。
蜂蜜だ。アニエスは、棚から蜂蜜が入っている器を取り出すと傾けて
慎重に中身をすくって材料の中に入れた。もうそれほど残りは多くないからだ。
それをせっせと練っていく。あとは火にかけて水分を飛ばしてまるめればできあがりだ。
作業をしていたアニエスは、ふと指についた蜂蜜をぺろ、と舐めた。
ぽわ、と柔らかい甘味が舌に広がっていき、アニエスは
一瞬手首の痛みも忘れ、思わず顔をほころばせた。
するとそれまでずっと黙りこくっていたタランがぽつりと言う。
「……みみっちいな。食べたいならガッと食べりゃいいのに」
「う、うるさいな! 蜂蜜はすごい希少なんだから。
いくらすると思ってるのさ。そんな沢山食べちゃ駄目なんだ」
「そーかい」
タランはまた背を向けて棘のある声で返事をする。何を怒っているのか
分からないので、アニエスとしても対処のしようがない。
何なんだもう、と思いながらアニエスはタランを放っておいた。
だが、約束の日の前日までタランは不機嫌で、アニエスは仕事の約束を
破られたらどうしようかと案じていたが、くだんの代理人が
手配した迎えが来ると、タランはあっさりとそちらへと向かった。
移動のときは目立たぬようにとアニエスは自分の持っている一番
地味な服を着せた。だが、それでもこの姿のタランは人目を引く美女であった。
わずかに憂いを帯びた顔をしているのが更に関心を引くだろうと思われた。
「それじゃ、いってらっしゃい」
そう言うと、タランはアニエスに向かって何か言いたげに口を開いたが、
思い直したように向き直ってそのまま行ってしまった。
アニエスはタランを見送ると一人そっと寝台に入った。
- 62 :
-
*
翌日アニエスは材料を片付けたり整理していたが、その合間に
手首の傷のために薬を作った。赤く爛れた傷の痕にそれを塗り、布を巻く。
その後は庭の状態をみて、収穫できる香草や薬草は摘み取ったり
それなりにする事は沢山だった。そうするうちに日は落ちて夕方あたりに
タランが帰ってきた。無表情で荷物の入った袋を棚へと入れた。
「どうだった? 問題はなかった?」
出迎えてそう尋ねるもタランは答えず、アニエスが手首に布を巻いてるのを
見て、咎めるような目つきをした。
「痛くないの?」
開口一番がそれだったので、アニエスは最初何を言われているのか
分からなかったが、タランが手首を見ているのでジュヌヴィエーヌの
傷の事を言っているのだと分かった。
「えっ? ……そりゃあ痛いっちゃ痛いけど……」
そう言うと、タランはふとこんな事を言った。
「治してあげようか」
アニエスは一瞬迷った。ただでさえ自分のしくじりで危地に陥ったところを
助けてもらったのだから、これ以上迷惑をかけることもなかろうと。
口ごもっているとタランは視線を床に落とし、ふっと皮肉気に笑った。
「でもただでとは言わないよ。……このままの姿の僕にやらして
くれるって言うなら、治してやっても良いって話。
アニエスは女とはしたことないんでしょ? 楽しいよ、なかなか。
普通に頼んでも君、嫌がりそうだし交換条件ってことで」
タランは金髪を揺らして華やかな表情を見せた。
「別にいい。……もう薬、作ったし」
その言葉をタランは鼻で笑い飛ばす。
「君が作る薬なんか気休めみたいなものじゃないか。
……それは魔法でつけられた傷だよ。そんなもの火傷の薬くらいで
治るもんか。消えない痕が残るよ。痕がある限り、どこにいたって
ジュヌヴィエーヌには絶対分かるし、魔物にも目立つよ。
……僕はそんな醜い傷痕、大嫌い」
「お前の体じゃないんだから別にいいじゃない。関係ないんだから。
お前の力は借りなくても平気だし放っておいて」
アニエスは魔法はともかく、薬作りには自信があった。
それを『気休め』呼ばわりされればさすがに腹が立つ。
するとタランが不快そうに顔をゆがめた。
「アニエスのばか」
そして子ども並みの罵倒をアニエスにぶつけたのだった。
「僕が治してやるって言ってるんだから大人しく受ければ
いいじゃないか。そんなに僕とするのは嫌なの? だったらそのまま
醜い傷跡こさえればいいさ、わからず屋」
アニエスはあっけに取られていた。そこまで怒るようなことではないし
言っていることが無茶苦茶だ。要は自分が思い通りにならないからと
いってへそを曲げているのだろうと判断する。
(どうしようもないやつだな……本当に勝手なんだから)
- 63 :
- 支援?
- 64 :
- 「聞いて」
アニエスは手を伸ばして金髪の女の頬に触れた。胡乱に自分を見てくる目を見返した。
「治してくれるならそれに越したことはないし、ありがたいけれど
別にそんな変な交換条件なんかつけなくたって、お前がしたいなら、
わたしはいつだって、ちゃんと応じるよ。魔力が足りない、精気が足りない
やり足りない……そういう約束じゃないか。だから嫌とかそういうの
じゃなくて、わたしのミスで犯した傷は自分で何とかするからってだけ。
……ま、どうしてもそんな気分になれない、とか具合が良くないとか
そういう時はさすがに勘弁して欲しいけど」
タランはわずかに表情を緩めて顔を傾けた。アニエスの指が耳朶に触れる。
「いまは、そんな気分になれるんだ……」
「……お互いの、努力次第? とりあえずその喧嘩腰をやめてくれるなら」
するとタランはその場に膝をつくと、腕をアニエスの腰に回して
すがりつくように顔をうずめた。アニエスは自分に抱きつく女の
頭に手を乗せて軽く動かすと、儚い光を弾く髪を指でわずかに乱した。
「金髪って触ると柔らかいよね」
すると布に押し付けたためにか、くぐもった声が響いた。
「……アニエスってほんとに金髪女に弱い」
「なんだって?」
「いつもなら僕がこういう事すると嫌がるくせに、
見た目がこうなら許すんだ」
思わぬ言葉にアニエスは思わず笑ってしまった。
「なにいってるの。それに金髪女に弱いって……」
「だって本当のことじゃないか。今まで君が気に入ってた女は
何人かいたけど、たいてい金髪女だった。今だってそうだよ」
考えてみてもタランが言っている意味が分からず、仕方なく
アニエスは尋ねてみた。
「誰のこと言ってるの?」
するとまたくぐもった声が聞こえた。
「リディア」
そこで一度言葉を切ってタランは顔を上げた。
「アニエスは、あの子には態度が全然違う」
「ば……っ、馬鹿じゃないの?」
アニエスは思わず叫んだ。リディアは小さい女の子だ。
それなりにでかい男に対してと対応が違うのは当たり前じゃないかと思う。
するとタランがアニエスの手首を掴んだ。傷があるところだ。
痛みに顔をしかめたが、タランは更にそこを強く掴む。
そして黒い火花が散ってちりっとした痛みが走ったかと思うと
急に熱くなり、タランが手を離した時にはそこはすっかり痛みも
不快さもなくなっていた。巻いた布をほどいてみると傷跡など
どこにも見当たらなかった。
「ありがとう……」
礼を言うとタランは口を閉じて唇を曲げたが、ぐいとアニエスの髪を
引っ張って言った。
「そんな言葉はいらないからやらせて」
- 65 :
-
* * *
しばらくはタランの好きにさせていたアニエスだったが
ねちねちと指だけで弄られるのはさすがに限界が来ていた。隘路を数本の指で
埋められてゆっくりと動かされるとぞくぞくと背中の辺りから震えがくる。
そのままもう片方の手でくちゅりと敏感な場所をつままれて
アニエスはひときわ大きな悲鳴をあげた。
「ふあああっ」
崩れ落ちた体を抱えられ、引き戻される。抵抗した手を取られ、思いのほか
肉の詰まった乳房に手を触れさせられてアニエスは戸惑った。
「さわってみて」
そう言われても、どうしたらいいかわからずアニエスは首を振った。
「いい……」
「なんでさ。君にもついてるものじゃないか……ここをこうすると
気持ちが良くなるだろ」
下からすくいあげるように柔肉を集められ、もみしだかれる。
官能的な感覚が高まっていき、アニエスは漏れ出そうになる声を
唇を噛んでこらえた。耳元で囁かれる声は愉悦の響きがあった。
「同じように、して」
アニエスはおずおずと目の前の膨らみに触れた。自分がされたのと
同じようなことをしていくと、段々と羞恥にも慣れてきて大胆になってくる。
相手の乳首を親指で弾くと青い瞳に欲情の色が揺らめくのを見て、
自分の行為が相手を酔わせていることに楽しさを感じるようになってきた。
「あ……」
どちらからともなく唇を合わせる。舌の根元をつつかれてアニエスは
泣きそうなくらいの切なさを感じた。女の体はやわらかく、抱き合うと
いつもより密着した状態になり、乳房と乳房の触れる感触に喘いだ。
寝台に横たわり足を抱えられ、濡れた場所を同じように濡れた所に
押し付けられる。ぐりっとこすられるとそこはぬめらかに滑り、
妙なる感覚をもたらした。
「ああぁ……」
高まりはするが、解き放たれはしない。今夜の交わりはまるで
現の狭間にいるような頼りなさでアニエスはゆるゆる続く快楽に眉根を寄せた。
すると急に入り口に硬いものがあたり、こじ開けるように押し付けられた。
「な、なに……っ」
思わず驚いて身を起こそうとするとそのまま女とは思えない怪力で
押さえつけられた。
「女同士で、と思ってたけどやっぱり挿れないとなんかすっきりしないや」
「ちょっと……なにこれ」
タランの上半身は紛れもなく女のものだ。だが、その下半身は今では違った。
アニエスの秘部には怒張した肉棒が押し当てられていた。
「なにこれ!?」
狼狽するアニエスに構わずタランはアニエスのそこに一息に押し入れた。
「ああああっ!」
十二分に潤ったそこは動かすたびぬちゃぬちゃと音を立てながら
タランを受け入れていたが、ただでさえ倒錯的と感じる行為を
強いられていたアニエスは、男と女、両方の肉体を持つ者に犯されて
興奮したのか、きゅうきゅうと中にあるものを締め付けた。
「あ……いやっ、……なんか変…ん…ううっ」
「おっとと、すごいや。たまにはこうやってやるのも良いかもね」
「い……やぁ、ちくび……押しつけないでぇ……っ」
腰を使って体を押し付けるように抽送が繰り返されアニエスは、がくがくと体を震わせた。
- 66 :
- 「おっととすごいや。たまにはこうやってやるのも良いかもね」
タランはそんな事をいいながらずっぷずっぷと突いていく。
アニエスはわななきながら仰け反った。
「く……うっ!」
呻き声とともにタランは中からずるりと引き抜いた。
次の瞬間、アニエスの腹から胸にかけてどぴゅしゃっと熱い液体がぶちまけられた。
「や、ああああ……っ!」
くすくす笑うと金色の髪の女はアニエスの上に覆いかぶさった。
「ちょっと、ついちゃうよ」
「いや、面白いことを考えたから」
そう言ってタランは、アニエスを引き寄せてお互いの体をすり付けた。
ぬるぬるとした感触が気持ち悪いような、気持ちいいような不思議な感覚であった。
全てが終わり濡れた布で拭き清めると、アニエスは気になっていたことを尋ねてみた。
「どうして最近ずっとその姿でいたの?」
「この姿、気に入った?」
横になりながら肘をつき、巻き毛を指でくるくるさせてタランは
答えにならない返事をした。
「気に入ったならずっとこの姿でいてやろうか。……女の方が甘えやすいし」
だがアニエスは首を振った。そしてかすかな微笑みを浮かべる。
「元のタランの姿の方がいいよ……慣れてるし。
その格好でいられると、一瞬知らない人といるみたいな気分になる」
「元の、姿ね……」
ふっと笑いタランはわかったよ、とだけ言うとそのままごろりと横になった。
*
次の日の朝、アニエスが目を開けると隣で寝ているのは茶色の髪の青年で
アニエスはなんだか妙に安心してほっと息を吐いた。服に着替え、昨日
タランがしまった荷物を確かめにいく。中にはきちんと報酬が入っていた。
「ああ……それね。ちゃんと入ってるでしょ」
起きてきたタランがアニエスの後ろで、くぁっとあくびをしながら言った。
「どうだったの? ちゃんと薬は依頼人の役に立った?」
昨日は返事のなかった質問をもう一度する。すると今度はけろりとした顔で
タランはあっさり答えた。
「うん。ジジイはごきげん。ターリャはご褒美に割り増し料金をもらえましたよ。
気前のいいジジイは嫌いじゃない……」
まだ眠いのかタランは目をしばしばと瞬いた。
「割り増し!?」
アニエスは内心歓声をあげた。お金に余裕があることは良いことだ。
うきうきと聞き返す。
「この中に入ってるの?」
「ううん……割り増し料金分はちょっと使っちゃったから」
「ああそうなんだ。……何につかったの?」
別に怒ったわけでもなく、単純に疑問に思ってそう聞いたのだが
タランは一瞬ぐっと言葉に詰まった。だがすぐに挑戦的な口調でこう言ったのだった。
「君には教えない。……ターリャがもらったものなんだから、別に君に言う必要を感じないもん」
(こいつ……っ!)
かわいくない。タランはアニエスが金髪娘に弱いと言ったが、
その傾向はあるかもしれないと考えた。昨日の金髪娘だったならば
まぁ許せたかもしれない言動も、目の前でふてぶてしい笑い方をする
男に言われると倍くらい腹が立つ。アニエスはどうやり返そうかとしばし考えていた。
確かに、見た目の力は重要だ。
(終わり)
- 67 :
- 以上です。
>>63
マジありがとう!! 連続投稿ですエラー出てどうしようかと思ってたんだ。
thx!!!
- 68 :
- >>55
GJ!
そしてありがとう!
ずっと探してたからこれでスッキリした
マジで感謝
- 69 :
- >>67 GJ!!
金髪娘になって甘えるタランが可愛いw
チップで何買ったんだろう。
- 70 :
- >>67
乙。このシリーズ好きだなぁ。
- 71 :
- 保守保守
- 72 :
- 最近投下ないねえ
- 73 :
- 何だかんだでたまに投下されるののレベルが高いせいでハードル高いのかも
雑談でもして盛り上げようか。
というわけで、どんな世界観が好き? 俺はとりあえずきちんと設定とか作ってあるのが好き
ほのぼのしてるといいなぁ
- 74 :
- 復旧
- 75 :
- 過疎りすぎあげ
>>73
設定きっちり重厚なのも好きだしファンタジー自体をパロディにしてるライトな感じも好きだな。
童話とか昔話っぽい世界観も良い。
今やってるメリダ〜とかもああいう世界観素敵だ。
- 76 :
- 陰鬱なダークファンタジーの世界観が好きだ
- 77 :
- 保守あげ
- 78 :
- こんにちは。
一ヶ月以上書き込みなくてさみしいので、保守代わりに>9の続きを書いてみました。
× × ×
ハッシュ君は顔合わせのため、秘書官さんに連れられて王宮の奥の特別会議室へと案内されました。
そこには、すでに件のお姉さん達五人が集まっていました。
全員揃ったところで、先ずは自己紹介から。
「レイチェル・レイン中尉です。うふふ、ご指名、どうもありがとうね。ハッシュくんって言ったっ
け? キミ、こういう事、初めて? 大丈夫、お姉さんが優しく導いてあげるからね。安心して身を
ゆだねちゃってね」
一人目のお姉さん、ふんわりエアリーショートのアッシュブロンドと口元のホクロが蠱惑的なレイ
チェルさん(23)が、ハッシュくんを後ろから抱きしめながら、耳元で誤解を招くような挨拶をし
ました。て言うかあんただって初めてでしょう。魔王討伐なんて。
「んっ……はっはい、お願いしま……あっ、んっ、息を吹き掛けないでっ……ひあっ! せ、背中に、
胸が……っ!」
「あ、ずるぅい!」
それを見た二人目のお姉さん、笑顔の優しそうなゆる巻き栗色セミロングのメアリーさん(24)
が膝を着いて正面から抱きつきます。
「メアリー・コネリー中尉でぇす。ハッシュくん、よろしくねー」
「こ、こちらこそ……やあっ、む、胸を押し付けないでください……っ!」
「えー、でもこうすると、ハッシュくんのどきどきが伝わってきて、とってもあったかいんだもん。
……あれぇ? どうして前屈みになるのぉ? くすくす」
「あ……やあぁ……」
三人目のお姉さんは、シルバーヘアをショートにした背の高い凛々しい系、だけど実はちょっぴり
内気なアレーネさん(21)。彼女は、二人の女性に前後から挟まれ動けないハッシュくんの右手を
両手でそっと掴み、自分の胸の前に持っていきました。
「あの……アレーネ・ノヴァク少尉、です……。その……よ、よろしくね……」
「ふあぁっ……ひ、人の手を握ったまま指もじもじしないでぇっ!」
手の平や甲が弱い人っていますけど、どうやらハッシュくんもそうみたいですね。
「えっ、あっ、ご、ごめんなさいっ!」
あわてたアレーネさんは、ハッシュくんの手をしっかりと掴んだまま、思わず自分の胸を押さえて
しまいました。
「ふああっ……手が、胸に埋まって……っ!」
「し、しまった、出遅れたわ!」
そう言ってハッシュくんの左腕にしがみついた四人目のお姉さんは、目尻のキッと吊上がった気の
強そうなお嬢様、ストロベリーブロンドロングツインテのクリスティーナさん(19)。
「クリスティーナ・デビソン大尉よ。クリスで良いわ。か、勘違いしないでよね! 別に、君が可愛
くてあたし好みだったから志願した訳じゃ無いんだからねっ!」
じゃあ一体どんな理由なんですか。
「ああっ! ま、また胸がぁっ! う、腕に胸が当たってますぅっ!」
「当ててんのよっ!」
四方向からのおっぱい攻撃に、ハッシュくんはなすすべも無く固まってしまうのでした――色んな
所が。
- 79 :
-
さて、五人目のお姉さん、亜麻色の髪をフェミニンなショートボブにした小柄な可愛い系、エリザ
ベスさん(16)は、おろおろしているうちにハッシュくんを囲む輪――というか塊から、一人取り
残されてしまいました。
「あーん、私もハッシュくんといちゃいちゃしたいよぉっ!」
そういう場ではないです。
どっちにしろ、前後左右どこも陣取られ、もう隙間がありません。
「うー……よーし、こうなったらあっ!」
エリザベスさんはそう言って二、三歩下がったかと思うと、勢いをつけて突進しました。
「えいっ、どーーーんっ!!」
「あらっ!」「えっ!」「きゃっ!」「わっ!」「やぁんっ!」
そのまま全員ひとかたまりになって床に転がりました。ちなみに悲鳴の主は順に、レイチェルさん、
メアリーさん、アレーネさん、クリスさん、ハッシュくん、です。
ハッシュくん、悲鳴も可愛らしくて、本当、女の子みたいですね。
がんばれ第三十九代目勇者。
「えへへー、わーい! やっとハッシュくんに触れたよー。あ、私はエリザベス・アールン。階級は
少佐だよー。リズって呼んでねー」
「呼んでねーじゃねーわよこのおばかっ!」
クリスさんがリズさんの頭をはたきます。
「痛あい……なにすんのよー」
「それはこっちのセリフよっ! なにが『どーーーん』だっ! 一番貧乳のくせして!」
「なっ何の関係があるのよ! ってか人が気にしてること言うなー! 私、上官だぞー!」
「あら、関係あるわよ? さっきからの反応を見るだに、ハッシュくんってば大きいおっぱいが好き
なのよねー?」
メアリーさんがにこやかに尋ねますが、ハッシュくんは顔を真っ赤にするだけで答えられません。
「あら、照れちゃって。可愛い。本当に初心なのね。これからお姉さん達が色々教えていってあげる
から、安心して任せてちょうだいね」
あの、レイチェルさん、そういう目的で集まったわけじゃありませんよ。
- 80 :
-
と、そこで、
ず ば あ あ あ あ ん っ !
という凄まじい音が部屋中に響き渡りました。
皆が驚き静まりかえる中、秘書官さんは何事もなかったかのように床に叩き付けたバインダーを拾
い上げ、埃を払います。
鉄製のバインダーは、少しひしゃげていました。
「そろそろよろしいですか?」
「「「「「失礼致しましたっ!」」」」」
お姉さん五人組は全員、直立不動で横一列に並びました。こういうところは一応軍人さんぽいで
すね。っていうかこれで皆さん士官とか、大丈夫ですかこの国の軍隊は。
ちなみにハッシュくんは、足の間に両腕を挟んだまま女の子座りです。支障があって立ち上がれな
いのです。仕方ありませんね、ハッシュくんだって男の子なんですもの。それにしては女の子座りが
良く似合ってますが。
「も、申し訳ありません……騒いでしまって……」
「はう……っ! あ、あなたは気にしなくて良いのよっ。悪いのはこの五人だから」
恥ずかしそうに上目遣いで謝罪するハッシュくんがあまりに可愛らしく、秘書官さんはこの旅程に
同行できない有能な我が身と、役得の五人をあらためて恨むのでした。実は秘書官さんもこっそり志
願していたのです。
「ちょっと秘書官殿、ハッシュくんと一緒に行けないからって、逆恨みとかしないでほしいんですけ
どぉ?」
クリスさんが的確に指摘しましたが、それを差し引いても、やっぱりあなた方が悪いように見えま
すよ。
「ねえねえところでハッシュくん、なんで座ったままなのかなぁ? お姉さんに教えて欲しいなぁ」
メアリーさんが、にっこり微笑みながら言わずもがなの質問をします。優しそうな顔して、この人
けっこうSですね。
「そんなの、タっちゃったからタてないんだよ。ねっ、ねーっ?」
リズさんが、うまいこと言っちゃった! って顔で周りを見渡しました。
ハッシュくんはうつむいてしまいます。
秘書官さんは、深く溜息をつきました。
「……話を進めますよ。まず部隊名ですが『魔王討伐特務戦隊・疾風』に決定しました。そして以後
本作戦は『山岳の嵐作戦』と呼称されます」
ぷっとレイチェルさんが吹き出しました。
「……陛下直々のご命名ですが、何か?」
「いえ、なんでもありません」
真顔に戻って直立不動で答えます。
「結構。それから予算ですが、六人部隊の派遣費用としては破格の金額が計上されています。よほど
無計画に使わない限り困ることは無いでしょう。ただし領収書は必ずもらってくださいね。この書類
を会計科窓口に提出すれば即時支給されるよう手配しておきました。その前に一応目を通しておいて
下さい」
- 81 :
-
ハッシュくんに渡された書類を覗き込んだアレーネさん、メアリーさん、クリスさんは驚きの声を
上げました。
「こ……こんなに!? い、良いんですか……っ!?」
「ええ。ちなみにこの資金はアールン公爵閣下、デビソン侯爵閣下、レイン伯爵閣下、コネリー子爵
閣下、そしてノヴァク男爵閣下から出資していただきました」
「わぁい! お父様ありがとー!」
「パ、パパったら……べ、別に喜んだりしないわよ? まったく、余計なことするんだから……」
「うふふ、デビソン大尉ってばツンデレね」
「素直に喜びましょーよぉ」
「そ……そうですね……」
このやり取りからも分かる通り、リズさんは公爵令嬢、クリスさんは侯爵令嬢、レイチェルさんは
伯爵令嬢、メアリーさんは子爵令嬢、そしてアレーネさんは男爵令嬢です。公侯伯子男勢ぞろいです。
貴族の子女は士官学校に入り軍人になるのが慣例なのです。まあ戦時ならともかく、平時は大抵腰掛
なのですが。それぞれの階級の高さが爵位に比例してしているあたり、なんとも世知辛いですね。今
や士官学校もすっかり形骸化してしまっているのです。
閑話休題。
「それにしても、これなら一週間毎日宴会出来るわねぇ」
「いや、一ヶ月は出来るわよっ! あんたどんだけ飲むつもりよっ!?」
「……念のため言っておきますけど、これは遊行費ではありませんからね。例え足りなくなっても、
よほどの事がない限り追加は出せませんから、考えて使ってください。別にあなた方はどうなっても
構いませんけど、ハッシュくんのことを考えてくださいね」
「むー。言われなくっても、ハッシュくんを困らせたりしませんよーだ」
リズさん、そう言いますが、ハッシュくんは現在進行形で困っているようですよ? 主に男の子的
な意味で。
「でもぉ、こんなに額が大きいとぉ、任務遂行にちょっとプレッシャーかかるかもぉ……」
「あら、でも元々私達の家が出したお金なんだし、遠慮する必要ないわよ。だいたい、一軍動かす事
を考えたら安いものじゃないの。むしろこれくらいで済むんだから、私達は感謝されても良いくらい
だわ。軍の懐は痛まないし、それを管理してる会計科にしたってどうせ金勘定の帳尻さえ合えば良い
ような連中なんだから。ねぇ秘書官殿?」
メアリーさんの不安をなだめるようにレイチェルさんが言いますが、
「分かりました。あなたの意見は会計科の士官達に伝えておきましょう」
「……ごめんなさい今のはオフレコで」
どうもレイチェルさん、ついつい口が滑ってしまうダメな人みたいですね。
- 82 :
- 「んじゃあハッシュくんっ、さっそく会計科に行こっ!」
「あっ、あのっ、ちょっ、リズさんっ! もうちょっとだけ、待ってください……っ」
リズさんが座ったままのハッシュくんを、後ろから腋の下に腕を差し込んで立たせようとしました
が、ハッシュくんはそれに必に抵抗します。主に健康で健全な男の子としての理由で。
「あらぁ、何でかしらぁ? ほら、早くぅ。善は急げって言うじゃない」
何でか分かってるくせに、メアリーさんがにやにや微笑みながら、ハッシュくんの右腕を掴んで引
き上げようとします。
「やぁ……お、お願いですからっ、少しで良いですからっ、待ってください……っ!」
「ダぁメ♪ 大丈夫だよぉ、恥ずかしがらなくても。男の子としては自然な反応なんだからぁ」
「うふふ、そうよ。さあ怖がらないで、お姉さんに身を任せて、ね? とっても気持ち良くしてあげ
るから」
左腕にレイチェルさんも加わりました。
いかにハッシュくんが勇者で男の子でも、三人掛かりでは流石に抵抗しきれません。ついに、何処
ぞの捕まった宇宙人のような格好で立たされてしまいました。
立ち上がったハッシュくんの勃ち上がった部分に、皆の視線が集中します。
そして、ハッシュくん以外の全員が息を飲みました。
ごくり……と、誰かの喉の鳴る音が部屋に響きます。
しばしの沈黙の後、全員の意見を代弁するようにアレーネさんが言いました。
「やだ……うそ……! ハッシュくんの……すっごく、おっきい……っ!」
そう。その乙女のような外見に似合わず、ハッシュくんのそこは、服の上からでも分かる程、大変
立派でございました。
「やあぁ……見ないでくださいぃ……」
恥ずかしい場所に視線を感じ、顔を真っ赤にしてうつむくハッシュくんですが、意に反して、ソコ
は嬉しげにヒクヒクと動いてしまいます。
それを見たクリスさん。もう我慢できません。
彼女はハッシュくんの胸倉を掴むと、他の三人ごと、扉に向かって引っ張って行きました。
「ひゃあぁ……く、クリスさん……っ!?」
「かっかかっ、かかかか会計科までっ、こっ、こっ、この私が案内してあげるんだからっ、感謝しな
さいよねっ! まったく、トロいわね! もっと急ぎなさいよっ! あっ、かっ、勘違いしないでよ
ねっ!? 別に、とっとと出発して脱ぎ脱ぎさせたいとか、早く生で見たいとか、そっ、そういう事
考えてる訳じゃないんだからねっ!?」
非常に分かりやすいクリスさんです。もちろん、他の四人のお姉さん達に異存があるはずもありま
せん。
彼女達に運ばれるように、ハッシュくんは会計科へと連れていかれてしまうのでした。
残された秘書官さんは、深く深く溜息をつくと、切なく独りごちました。
「あーあ……いいなぁ年下の男……。あたしも男、欲しいなぁ……」
美人過ぎて逆に敬遠されがちな秘書官さんは、最近めっきりご無沙汰なのです。
× × ×
以上です。
続きはこのスレの終わりごろ……はやめて、気が向いたら書くことにします。
では。
- 83 :
- 保守
- 84 :
- 保守
- 85 :
- おおお、久々に着たら投下きてた!GJ!!
あいかわらずテンポいいし、お姉さんたちもいいキャラだ
続き期待あげ
- 86 :
- 書いた本人が自分で言ってちゃ世話ないな
恥を知れ
- 87 :
- >>86
なんで自演てわかるの?
- 88 :
- ただの嫌がらせじゃね?
- 89 :
- さすがに4日のスルー沈黙は耐えられなかったんじゃね?
需要ないみたいに思われたら続きを投下できなくなるし
- 90 :
- >>82
続きはよ
- 91 :
- 自演乙
- 92 :
- >>86
>>89
自演乙
- 93 :
- なんだこの険悪な空気
- 94 :
- 夏は終わったんだぞ
- 95 :
- ヘクセサーガの続き見たいです。
- 96 :
- 精巧で美しい商品
絶えず更新します
http://www.shangke.in/H4IJ
http://www.shangke.in/W1DU
http://www.shangke.in/CGOL
- 97 :
- そうですね
汚された当スレを救うのは、もはやヘクソサーガの投下しかありえない
- 98 :
- おいおいおい!
どうした!!
この暗い空気はあ!?
- 99 :
- 勇者くんのせいじゃないよね
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