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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第八部 (115)
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ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第八部


1 :2013/08/29 〜 最終レス :2013/10/09
         _,.-―――‐-、
        r/~~ ~'''‐、;;;;;;;;;\
.       rく´i r/  _ノ_>'|;;;;;;;;;;;|
       yェノ〈!'''rエコ  ヽ;;;;;__;!,
       |r/ -、く二-、. '-'/7|;;'i_
.       |;`ニ二´..-‐iヽ|_,ノノノ;;;;;ヽ_
      .ノ;└三-ニ-' !;;;;;;;;|'''´|;;;;;;;;;;;;;;;\          よぉーし!
     /''´;;;; ̄ ̄'''''''''';;;;;;;;;;;ノ  |;;;;;. -―――--、_      みてなベイビー
/二ニl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/  /   ___  \    このブルート様が大統領をぶちのめし
/´   `>、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/  /   /     `''''ヽ ヽ  ジョジョロワ3rdでヒーローになてやるぜ
     人_`'''>---―/'/   /  _,. -      \ |
    /   /     /  /  / //         _,. -‐-、
   /  /     /   .|  // /        ,. ‐'´    )
  ./  /      |    |  .| |       ,. ‐´  ,     ,<
 .|   |       |    /  |       / ,,_  ヽ,,,.. -''´ ヽ
 |....:::::|::::::::::::::::::::/   /  |     _/  、_`'=ニ´‐''''´ ̄`¨''―---、
 |-‐''´\_,. -'´   /   |   ./    - 、_ ,,,  ,,    |i、     )
./_,. -―''''´   _,. /   /|  ./   \、   `'‐--''――'''`¨'''''''''''ヽ
´    _,.-‐二,, -‐'' ̄  |  /  \   \、_  |   |   ヽ__ノ
/ ̄ ̄ ___        |/     ヽ   \、  r-‐'―i''''´
-‐'' ̄ヽ ̄   _二- ̄ ,.-'´      .|     `'‐┤    |
--'_,.--!――‐''´   _,/   .i .ノ  /,,,,,-‐、,_  __,.\_,.   |
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''´l´_|_,.ノ       `'‐---‐''´   `''‐- 、_     _,.-'´ `7  ヽ
 ,.-'´-‐‐'´ ̄                  ̄ ̄ ̄ \   \_  |
           __
        , - f⌒ヽ-r'⌒) ))
        { 人__ノーへ__)    あ〜〜ん…………
       ノ   { rュ  fラ|ハ   たのもしいわ!
       (___ (  __'_, j_ノ  __ あたしのブルりん!
       ト、`ヽヘ ー',/>, イ /
       /-ハ 「ノ`¨/fヨ  /
     /ノ==ミo\`ー/ そ} /ハ ))
     ,' {´ ̄`}8_iヨ廴ノノ\={
     {〈 /三≧' {VV) Y__ノノハ
     _V /{{ 廴/`´一'\'ノノ´⌒`ヽ
   x≦::::::\_≧イ     /} | \`ヽ }

このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください
この企画は誰でも書き手として参加することができます
詳細はまとめサイトよりどうぞ

まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/
したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/
前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第七部
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1357114589/

2 :
名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
※第一回放送を迎えましたので上記のズガン枠キャラクターは今後の登場は不可能です。
Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス
Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ/○ロバート・E・O・スピードワゴン
Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO
Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影
Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ
Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○空条承太郎/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ
Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ホット・パンツ/○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/
○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ/○ディエゴ・ブランドー
JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆
恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ
ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー
バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド
ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ

3 :
ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル発売おめでとうございます。
昨晩したらばに投下しましたが、スレが立てが成功したので改めてこちらに投下します。

4 :
600 : ◆vvatO30wn.:2013/08/29(木) 00:51:49 ID:f6pinpKM
(さて………どこへ隠れたのかな………?)

薄ピンク色の亜人を傍に携え、吉良は礼拝堂内を見渡す。敵の姿は見えない。
この広い礼拝堂にはテーブルも椅子も多い。
柱や彫刻像のような遮蔽物も多ければ、カーテン付きの懺悔室まである。
隠れる場所は多い。
敵は吉良の『キラー・クイーン』とように特殊な能力を持ったスタンド能力を所持している。
吉良には初めての『スタンドバトル』だ。
現在のこの状況は吉良にとって非常に好ましくない状況だった。
1つめの問題は、講堂内にいたはずのストレイツォとリキエルの姿が見えない事だ。
死体を発見したわけではないが、吉良は2人が既に無事ではないであろうと推測し、その前提で考えを進めていた。
正義感の強いストレイツォがこの期に及んで姿を現さない理由がないし、それに現在の敵の手口は不意打ちの暗殺だった。
攻撃を受けた『キラー・クイーン』の―――吉良の両腕がまだビリビリ痺れている。
敵スタンドのパワーは非常に強い。波紋やロッズでは攻撃を防ぐことすらできないだろう。
奴を相手にするには、こちらも高い攻撃力を持つ『スタンド』でなければならない。
例えばそう、『キラー・クイーン』のような。
第2に、『キラー・クイーン』を敵に見られてしまった事だ。
先ほど攻撃を防ぐために、咄嗟に出現させてしまった。
もっとも防がなければ殺されてしまっていたので仕方がない事なのだが、目撃されたからには消す必要が出てきてしまう。
姿は見えないが殺気は感じるため、敵側も戦うつもりではあるようだった。
その点については幸いしているが、もう逃すわけにはいかなくなった。
この先も無力なサラリーマンを演じていくためにも、目撃者を生かしておくわけにはいかない。

5 :
「ストレイツォ! リキエルッ! どこだ助けてくれ!? 攻撃されている!!」
おそらく返事は帰ってこないであろう呼びかけを叫ぶ。
声を張り上げた理由は敵を呼び寄せるためだ。『私はここに居るぞ、さあ掛かって来い』といったところだ。
だが、それでも敵は姿を見せようとしない。
吉良のハッタリを見破って、挑発に乗らずチャンスを伺っているのか?
だとしたらなかなか大した奴だ。
見た目は頭の悪そうな出で立ちであったが、戦闘においてという点ではバカでは無いということか。
(これでもまだ出てこない。やれやれ、面倒だな………)

問題その3。ホル・ホースと空条徐倫の存在だ。
散歩に出かけたあの2人。まだこの教会の付近……遠くへは行っていないだろう。
戻ってくるまで、あの1分?2分? 今すぐにでもここに現れるかもしれない。
ストレイツォたちが(おそらく)死んでしまった今となっては、もはやホル・ホースたちと組み続けることはできないだろう。
いろいろ聞かれて誤魔化し切ることは難しい。あの2人も、もう消すしかないだろう。
2人をRこと自体は別に問題無いのだが、まずいのは『今の敵との交戦中にこの場に戻って来られること』なのだ。
そのまま吉良と力を合わせて3人で戦ってくれるのならばまだいい。
だがあの空条徐倫という小娘は、『敵』と『私のスタンド』を確認して、そのまま何処かへ逃げ出してしまうかもしれない。
あの怯えていた様子では、無理もない。
さらにホル・ホースがそれに同調したならば、『吉良吉影がスタンド使いである事』、そして『その事実を隠していた事』を知る人間が、吉良の元より逃げてしまうということになる。
無力で無害な一般人を演じたい吉良としては、その展開は非常にまずい。
よしんばその場は共闘を選んだとしても、スタンド使いであることを隠していた事実は変わらない。
疑念を抱かれてしまえば、1対2では暗殺も難しくなる。
吉良にとってのベストは、ホル・ホース達の帰還前に敵を瞬殺し、後に戻って来た2人を不意討ちで仕留める事だ。


(敵は動きを見せない。時間は無い。ならば――――)

「『シアーハートアタック』―――!」
吉良自身から打って出るしかない。

6 :
『キラー・クイーン』の左手甲から分離し射出される、無慈悲なる爆弾戦車。
第二の爆弾『シアーハートアタック』。
本体である吉良の意思とは分離した自動操縦型の能力であり、『温度』を頼りに標的を見つけ出し爆Rる。
禍々しい髑髏の顔とキャタピラのみの小さな車体は異常なまでの強靭さを誇り、物理的な破壊をすることもほとんど不可能と言える。
「――――――『弱点』は、ない」
そう吉良が自負するに値する無敵の能力なのだ。
『コッチヲ見ロォォ―――』
ギュルギュルと音を立てながら爆弾戦車が礼拝堂内を駆け巡る。
長椅子やテーブルの間を縫うように走り回り、自動で探索する。
この能力の前では、隠れる場所も逃げる場所もない。
やがて『シアーハートアタック』は『何か』の温度に反応し、走り出す。

(やれやれまったく、この能力まで見せる羽目になるとは思っていなかったが……
だが、『シアーハートアタック』が『奴』を捕捉した以上、もう勝負は付いた。
結局あの男が何者で、どんな能力だったのかわからないままだったが、しかし一つだけ間違いなく言えることがある。『シアーハートアタック』に弱点はない。
狙われた標的は、必ず仕留められる…)
講堂の入口方向へと加速する『シアーハートアタック』。
ロケット噴射のように飛び上がり、ターゲット目掛けて飛翔する。
妙な動きだ、と吉良は思った。
吉良の推測では敵が姿を潜めているのはテーブルか椅子の陰か、もしくは柱の後ろか、せいぜい壁際の懺悔室の中あたりだろうと思っていた。
それが、『シアーハートアタック』は空中に飛び上がったのだ。
この建物にも2階はあるが、天井はかなり高い。
敵の戦闘スタイルから言って、吉良を奇襲するに適した隠れ場所とは思えない。
やがて『シアーハートアタック』は、目標とした『標的』へと接近―――
(いや、違うッ! 『シアーハートアタック』の標的は『奴』ではないッ!!)
教会の入口扉から数メートル上方の壁にめり込まれた『何か』へ衝突し、大爆発を起こした。

「ああああァァァァアアアアア―――――!!!」
(何ッ!!)

突如、吉良の背後より聞こえる絶叫。
『シアーハートアタック』の標的が『敵』では無かったと気が付いた吉良が視線を切る間もなく、わずか背後1メートルに現れた敵の影。
スタンド『オアシス』に身を包んだセッコが、今にも吉良をRべく腕を振り上げていた。
そしてその手刀は振り下ろされることもなく宙を泳ぎ、視線と意識は爆心地付近を彷徨っていた。

7 :
(この男ッ! いつの間に私の背後にッッ!? 何故『シアーハートアタック』に探知される事なく私の傍に近寄ることができたのだッ!?)
何より吉良は『シアーハートアタック』発動中でも周囲への注意は怠っていない。
その警戒を掻い潜り、吉良は敵の射程距離内への接近を許してしまった。
「ああああっ!!! おっ おっ おれのアートがァァああ!!! まだDIOに見せてなかったのにィィィィィ!!!」
セッコは吉良の姿には目もくれず、爆散した肉片に駆け寄り、グロテスクなそれをかき集め始めた。
吉良にはようやく、爆破された『それ』がなんであったかを理解した。
あれはリキエルだ。この男は教会に忍び込み、リキエルを襲い殺害した。そして彼の体を切り刻み、オブジェを作り上げて教会の壁に飾っていたのだ。
そしてそれを『シアーハートアタック』が探知し、爆破した。
折角の傑作を破壊され、この男は攻撃を止め、絶叫して肉片を拾い集めているのだ。
この事は、吉良吉影のプライドを大きく傷つけた。
この男にとって、死体オブジェが爆破された事は吉良への攻撃よりも重要なことだった。
オブジェが爆発されたことで、吉良への攻撃を中断して、今、肉片を掻き漁っているのだ。
そしてもし、オブジェを爆破しなければ。この男が攻撃を途中で止めなければ。
(殺されていた――― この私は――― 『いともたやすく』――――――)
怒り。
屈辱。
(この私をR機会がありながら、それを安々と棒に振ったということか………)
この上ない負の感情が、吉良の心を侵食する。
決して生かして帰すものか。
(この吉良吉影を侮辱した罪、その命で償って貰うッ!!)

一方のセッコも、四散して拾い集める事など到底できないであろう肉片たちを胸に抱え、吉良への怒りに燃えていた。
彼の『処女作』は3人の少年の肉をグニャグニャと練り合わせて作った、いわば肉塊の粘土だ。
それはそれで気に入ってはいたのだが、今度の作品は一人の人間(リキエル)から、原型をあまり損ねず、なおかつ独創性のある人形、剥製の様なオブジェを作り上げていた。
チョコラータの好む恐怖の表情までも取り入れた自信作だった。
DIOをここに連れてきて、これを見せたらなんと言ってくれるだろう。そんな事を想像していた矢先の出来事だったのだ。

「ゆっ 許さねェェ」
視線を切り、吉良を睨みつけるセッコ。
吉良は温度を感じさせない冷ややかな目つきでセッコの姿を眺めていた。
「てめえェェ! 絶対許さねえぞオオオオオ!! ぶっ殺――――」
『今ノ爆発ハ人間ジャネェ――――』
「ぬお?」
攻撃態勢に入ったセッコであったが、明後日の方向から聞こえる機械的な声に注意が逸れる。
吉良本体のいないセッコの側面より、活動を再開した爆弾戦車が忍び寄る。
自動追尾型スタンド『シアーハートアタック』は、本体である吉良吉影が能力を解除しない限り、いつまでも標的を狙い続ける。
攻撃はまだ終わってはいない。

8 :
『コッチヲ見ロォォ!!』
「なっ なんだコイツゥゥゥ!!?」
「私に屈辱を味合わせた分きっちりなぶり殺しにしてやりたいところだが、あいにくもう時間がないのでね。
悪いが一瞬で蹴りを付けさせてもらうよ」
即効で勝負を決めにかかる吉良。
『シアーハートアタック』はリキエルの死体オブジェを爆破したあとも、その勢いを衰えさせることもなく猛然とセッコの方へ向かっていく。
だが、『シアーハートアタック』はまたもや吉良の思惑とは異なる挙動を見せ始めた。
(何!?)
「なんだァ?」
軌道は僅かにそれ、『シアーハートアタック』はセッコが背中に回していたデイパックをめがけて突っ込んだ。
体当たりの直撃を受けたのは、中に入っていたポラロイドカメラ。
思い切り殴りつけたような鈍い音と共に、カメラはデイパックから投げ出され地面に転がる。
そして同時に、デイパックの中から写真と思われる紙切れが数枚、ヒラヒラと溢れ出てきた。
「あああああ!! おっ オレのカメラ!!」
そして爆発は怒らなかった。『シアーハートアタック』は――――――
『アレ? アレ?』
標的を見失い、ウロウロと辺りを彷徨っているだけだ。

(なるほど、そういうことか)
ようやく、吉良は理解した。
奴の身体には、『温度』がない。
正確には、土と一体化したようなスーツ状の『スタンド』に身を包んでいることで、外からは奴の体温を感知することはできない。
だから、『シアーハートアタック』は奴を探知できなかった。
既に冷たくなったリキエルの死体よりも更に低温。だからこそ、『シアーハートアタック』はリキエルの死体を攻撃したのだ。
そして次に、あのポラロイドカメラ。
宙に撒かれた写真を数枚拾って見てみる。被写体はリキエルとストレイツォの死体、それも大量にだ。
ほんの数分前にこれほどの枚数を撮影したというのならば、カメラには熱が残っていたのだろう。
『シアーハートアタック』はその温度に反応した。しかし今度は爆発まではない。低くとも人間の体温程度の温度に達しなければ、爆発は起きないからだ。
そしてカメラが破壊されたいま、『シアーハートアタック』の攻撃対象(温度)は存在しない。
スタンド『オアシス』の温度は、教会の地面の温度と大差がないからである。

(弱点はないと思っていた『シアーハートアタック』だが、『温度を感じさせない敵』……
これではとんだ役立たずだ。こんな落とし穴があったとは、『スタンド』とは奥が深い)
だが、吉良は動じない。
『シアーハートアタック』が爆発しなくとも、まだ吉良には『第1の爆弾』という別の攻撃手段が残されている。
こちらは単純明快。『キラー・クイーン』の手で触れられやものは、なんでも爆弾に変えることができる。
例えそれが100円玉であろうと、なんであろうと。
今度は『シアーハートアタック』ではなく、『キラー・クイーン』の右手で敵に触れるだけでいい。

9 :
「てめえカメラまで壊すとはあああッ!! っ覚悟できてんだろうなあ!?」
役目を終え吉良の元へ戻る『シアーハートアタック』を追い、セッコの『オアシス』が手刀を振り下ろす。
だが、無駄だ。『シアーハートアタック』の頑丈さは筋金入りだ。
吉良自身も『オアシス』の攻撃力は最初の攻防で理解していたが、それでも『キラー・クイーン』の両腕で止められる程度。
『シアーハートアタック』の強靭さは、そんなレベルをはるかに超えている。

ドロリ

そんな甘い考えが間違いであったことを、自らの溶け始めた左手首の痛みで思い知るのだった。
(何ィィィ!!?)
土や石と同じ温度で身を守る『オアシス』だが、能力の本質はそこじゃない。
鉱物のドロ化。それが『オアシス』の特殊能力。
爆発しない『シアーハートアタック』など、いくら硬くとも、『オアシス』の前ではただの硬い石でしかない。
(左手に痛みが……!! 『シアーハートアタック』を―――いや、物を溶かす能力―――――!!
誤算だ! 役立たずどころではない、これでは足手纏いだッ!!)
『シアーハートアタック』へのダメージが返り、左手首が泥のように溶ける。
激しく痛む左手を抑えうずくまる吉良と、その様子を見てゲラゲラと笑うセッコ。
攻撃が初めて通り、もう勝った気でいるセッコはこれから吉良をどう苦しめてやろうかを考え始めていた。


「吉良ッ!! これはいったいどういうことだァ―――!?」

そんなとき、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に、新たな登場人物が現れた。
ホル・ホース、その後ろには空条徐倫。気晴らしにと散歩に出かけて難を逃れた2人が帰ってきた。
教会から発せられる不穏な空気を感じ取り、警戒しつつも講堂内に入った2人は、吉良たちの前にたどり着いたのだ。

(ホル・ホースッ!! しまった、遅かったかッ!!)
まだ目の前の敵を仕留めていない、それどころか形勢は依然として不利なこの状況で、ついにホル・ホースたちが帰還してしまった。
ホル・ホースは訝しむ目で吉良と、その傍らの『キラー・クイーン』を見ていた。
無力な一般人を装っていた男が、目の前で敵とスタンドバトルをしていたのだから当然だ。
そして、その戦っている相手。
忘れるわけがない。忘れられるわけがない。
こいつは、あのDIOと共にいた、あの残酷で残忍な―――――――――

10 :
「いやあああああああああああ――――――ッ!!」
次の瞬間、空条徐倫が叫び声を上げながら脱兎のごとく逃げ出した。
ホル・ホースたちのケアもあってか幾分精神を持ち直した徐倫だったが、身体の乗っ取りからくる不安定さと、一度覚えた恐怖はそう簡単に忘れられるものではない。
DIOへの恐怖。セッコへの恐怖。
あるいは教会入口に散らばっていた、ストレイツォなのかリキエルなのかも判別できない肉片の山に、自分自身を重ねてしまったのか。
「ホル・ホースッ!」
「はッ!?」
動揺し徐倫の走り去った方向を見て立ち尽くしていたホル・ホースが、吉良の呼び声に反応し正気を取り戻す。
行くな!と、吉良は目で訴え掛ける。
苦虫を噛み潰したような顔を見せたホル・ホースは、やがて冷や汗まみれの顔を背け、カウボーイハットを深く被って目を隠し、そのまま徐倫の逃げた方角へ走り去った。

(ホル・ホースの奴―――ッ! 逃げやがった! あの糞カスどもがァァ!?)
吉良にとって最悪の展開となった。
『キラー・クイーン』を見られ、敵と戦闘している自分を見られ、そして逃げられてしまった。

11 :
嫌な予感はしていたのだ。
あの残酷で悪趣味な『アート』の姿を見た時から。
そしてリキエルの死体オブジェを爆破したとき、「まだDIOに見せてなかったのに」と、確かにそう言った。
情報交換にて得た、ディオの情報。
現在戦闘中のこの男は、空条徐倫を恐怖させた原因となった、食人鬼ではないか。
あの徐倫の反応を見るに、その想像は正解だったのだろう。
敵が他の誰かだとしたらともかく、これではまず間違いなく徐倫は逃げる。
目撃者は生かしておけない。
だが、この状況では彼らを追う事はとうてい不可能だ。
セッコは、吉良の想像をはるかに上回る強さを持った敵だった。
こいつを倒すのに、あと何分かかる?
その間に、ホル・ホースと徐倫はどこまで逃げる?
どこへ逃げる?
どうやって後を追えばいい?
セッコを倒したところで、もはや吉良吉影の秘密は守られない。
このゲームにおいて、無力なサラリーマンを演じる吉良吉影は、もう存在できない。

12 :
「何だったんだァ? あいつら?」
2人が走り去った教会入口の外を、セッコは呆然と見つめる。
吉良という獲物が目の前にいる以上、逃げた奴らまでは対して関心がないようだ。
「フフフフフ、フハハハハハハハハ………」
そして吉良吉影は、自分の存在をアピールするかのように、自嘲的な笑い声をあげ始める。
「あんたァ、何が可笑しィんだあ? 仲間に逃げられて、これからオレに殺されるってのによお?」
「君、名前は?」
質問に質問で返す吉良。
突然英語の授業に出てくるような日常会話を始めた吉良に対し、セッコは「ハァ!?」とごく当然の反応を示した。
「私の名前は『吉良吉影』年齢33歳。自宅は日本のM県S市杜王町北東部の別荘地帯に有り、結婚はしていない。
仕事は東日本最大のデパート企業『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。」

13 :
「? 何言ってんだァ? おめえ……?」
「正直、こんな事態にまで陥るとは思わなかった。平穏な私の暮らしは台無しだよ。全て君のせいでね。もうどうやら安心して熟睡できないらしい。
ただし――――――」
そこで吉良は言葉を切り、そして語気を強めて叫んだ。
「ただし『このゲームが終わるまで』だけだッ! このゲームで優勝して勝ち残り、元の生活を取り戻すまでだッ!!」
消極的なスタンスでいるのはもう終わりだ。
無力な一般人を演じ、誰かが主催者を倒してゲームが崩壊するのを待つのはもうやめた。
もうゲームは半分を過ぎ、多くとも残り70人ほどだ。
殺し尽くせばいい。
吉良吉影が残りすべてを殺し尽くし、優勝者になればいい。
もちろん、平穏な人生を送るためには、そのあと更に主催者陣営も壊滅させ、ゲーム自体の秘密も暴かなければならない。
困難で、先の見えない長い試練ではあるが、しかし………

「この吉良吉影が切り抜けられなかったトラブルなど、一度だって無いのだッ!!」

14 :
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会内講堂/1日目 昼】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(ドロ化)、『シアーハートアタック』現在使用不可
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.まずは目の前の敵(セッコ)を始末する。
1.優勝を目指し、行動する。
2.どうにかして左手の治療がしたい。
3.ホル・ホース、空条徐倫(F・F)を始末する。どこへ逃げたかはわからないが、できるだけ早く片を付けたい。
4.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
5.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

15 :
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.オブジェを壊された恨み。吉良をR。
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。  

[備考]
※リキエルの死体で作ったオブジェがありましたが、『シアーハートアタック』で爆破されました。ストレイツォの死体については詳細不明です。
※それぞれの死体の脇にそれぞれの道具が放置されています。
 ストレイツォ:基本支給品×2(水ボトル1本消費)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
 リキエル:基本支給品×2

16 :
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会周辺/1日目 昼】
【H&F】
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.またあいつ!!? もう嫌だああああああ!!!
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者はR? とりあえず今はホル・ホースについて行く。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
※少しずつ記憶に整理ができてきました。

17 :
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:健康
[装備]:タバコ、ライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
0.とりあえず徐倫を追う。
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。
2.吉良はスタンド使い? DIOの手下と戦っていた?
3.散らばっていた肉片はストレイツォ?それともリキエル?何が何だかわからねえ!?
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。内容はストレイツォ、吉良のメモから書き写しました。

18 :
はい、ここまでです。
タイトルは「GANTZ」です
(私にしては)短めな話に収まりました。
決着までも考えていたんですが、ここらで投げてみるのも面白いかなと(←ようやくリレー小説であることを自覚)
もしかしたら続きも書きたくなるかもしれませんが、しばらく無理でしょう。
なぜならオールスターバトルやらなあかんからや!
でも、さすがに今回ほど期間を開けることはしないよう努力します。
俺は9ヶ月間も何をやっとったんや……
ではまたそのうち。

19 :
投下&代理投下乙です!
一見無敵とも思われるシアハだったけど意外と対処法はあるんだなーとなるからスタンドバトルは奥が深い
F・Fちゃんはもう不憫ですね(他人事)
吉良のそれは遠回しな死亡フラグに見えてしまったのは気のせいだろうか…
本編とは全く関係ないけど今の季節にシアハ使ったら使い物にならなそう

20 :
乙です
ステルスマーダー?止めちゃう吉良の明日はどっちだ
>>19
「 コッチヲ見ロォォ」ボーン「 コッチヲ見ロォォ」ドーン「コッチヲ見r「やかましい!」
こうですか分かりません

21 :
投下乙!まってました!
過去のロワとかぶらないようなキャラのスタンスを考えてくれる書き手さんって凄いです。えらいネェ〜
セッコはこれからもどんどん面白くなりそうなキャラだし、なんとか生き残って欲しいところだ

22 :
さて、たまには率直に本題に入ろうか。
今回は『記憶』に関する話だ。まあさっき話したのもある意味では記憶の話だったけど。
もう少し具体的にいうと、次に話すのは“忘れる”ということについて。
この“忘れる”って、何が厄介だっていうと、まあ皆もわかると思うけど、
『自分が何を忘れたかがわからない』ということだな。
あ、いやアレよ。1・2の……ポカン!で技忘れるとかそういうのはナシでね。
今回すぐに俺が本題入ろうって言ったのも、まあこの出来事もいずれ忘れちゃうかなと心配したもんでね、ハハハ。
で、先も言ったように、自分が何を覚えてて何を忘れたかを知らないという事は、そりゃあ相手だって『この人はどこからどこまでを忘れてしまったんだ』と推測することだってできない。
ゆえにこう聞くしかないわけだ。
「どちらさん?ってミスタさん、私ですよ、ミキタカです」
とね。でも忘れた当人からしたらそのセリフが既に意味不明。
「イヤイヤ、それが誰だよ。つーかココどこだよ?俺ぁジョルノと一緒にサンタ・ルチア駅に――」
「?……もしかして、ミスタさんアナタやっぱり記憶が」
「ハァ!?何ナメたこと言ってんだ!さっきは平気だと思ったがテメーやっぱ敵だなッ!」
「え、私はただアナタのことを――ゲブッ」
ここで問答無用でケリ入れたとは言っても、流石にミスタを責めることはできないだろうね。
というかこれはミキタカも甘かった。ミスタって男はたとえ同僚にもヤバけりゃ問答無用で皿を投げつけるような奴だってのを彼は身をもって体験済みだったんだから。
「おら!テメェなんか知ってんだな?2秒だけ待ってやるからチャッチャとしゃべりな、知ってること全部なッ」
襟首をひねりあげられたミキタカは必死に頭を巡らせる。
とは言ってもたかだか二秒。今君らに『とはいっても』と言ったのが実際の二秒くらいだ。
こんなんで何をどう説得しろというのだ?砲弾が自分たちのもとに届くまでに巨人になった友人が敵でないことを証明するよりも不可能だろうな。
だから必死にこれだけを叫んだ。
「私はホントーにあなたの敵ではありません!グイード・ミスタさん!」

23 :
本人から聞いていない本名を叫ぶ。が、沈黙……やっちまったか?ミキタカの顔にブアッと脂汗が浮かんだ。
一分とも十分とも受け取れるほどに長い数秒が過ぎた、なんて表現はきっと本人にしか感じられない苦痛だろうね。少なくとも今の俺にはわからん。
と、そんなことを言ってるうちにミスタが反応した。
「俺の名を迷いなく言うか……ケッ、聞いてやろうじゃねぇか。だが少しでも嘘言ってみな、目ん玉の間にもう一つ穴を開けてやるからよ」
そう言ってミスタがゆっくりと手を放す。
だが!ここで!あろうことか!ミキタカは!
「――私の名前はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。ですが私が話すのはあなたが今までどこで何をしていたかを聞いてからです」
逆に思いっきり問い返した!
その理由は!
「……は」
「ハッキリ言いましょう。ワタシはあなたが“『何者かに記憶を奪われてしまった』と疑っています”。
 その疑いが本当か、あるいはワタシの思い違いか。それをハッキリさせたいのです。
 だから聞きます。あなたはついさっきまで、何してました?」
中々に機転の利いたセリフだと思ったね俺は。
記憶を失った人に『アナタ記憶がないんですよ』と言っても普通は混乱するだけだ。
だったらそれを本人自身に『ああ今俺は記憶喪失なのか』と自覚させる方向に持って行ったと。
電波な頭だが決して中身は悪くないと評価できる一瞬だ。

24 :
となったら逆に混乱するのはミスタ。
「え……いや俺はジョルノと一緒に――まあ、ドライブか。ドライブしてヴェネツィアに」
「するとジョルノさんの事はご存じで?」
「ンだおまえジョルノのことまで知ってんのか」
「ええ、ワタシはジョルノさんにお会いして、あなたの名前、そして、ブチャラティさん、アバッキオさん、ナランチャさん、トリッシュさんという方々のお名前をうかがいました」
「じゃ……じゃあてめぇ、ミキタカゾ?っつったな?なんだジョルノの知り合いか何かか」
「――まあそんなところですかね。証拠を見せましょうか。ジョルノさんの外見ですよ。
 私は人の顔真似はできませんが……」
「……ブッ」
「どうです?ジョルノさんによく似てるでしょう?私は彼のことを知ってるんですよ」
「文明の利器ってスゲ――――!!!ぎゃーはっはっはっ」
なるほどなるほど。これはいい証明だ、と俺も吹いた。
ミキタカは自分の能力で――まあいきなり目の前でやると驚かれるからデイパックに手を突っ込み――手の一部をチョココロネみっつに変えて、それを頭の上に乗っけたんだ。
ミスタ、爆笑。ミキタカ、したり顔。コロネ、文明の利器。
しかし、ひとしきり笑った後。
いよいよジョルノとミキタカに明確な関係があったと証明された。そうなってくるとミスタの頭はパンクしそうになる。
お世辞にも良いとは言えない頭なのは彼自身良く知っているんだから。
「や、ウンわかったんだが、いやちょっと待ってくれ……頭ん中整理するからよ……」
そういって顎に手を当て考え込む。そんなミスタの決断をミキタカは待った。かつて仗助が自分のことを理解してくれたように。時間さえかければ理解してもらえるだろう。
――と。

25 :
「――ああ。とにかく俺は、ミキタカゾ曰く『どうやら記憶障害にあったらしい』という状況は理解した。
 認めたくはねーけどな。だったらまだミキタカゾとジョルノがただ俺の知らない友人だっていう方が信じられるぜ」
「ええ――そうおっしゃる気持ちはよくわかります。そして話してくれてありがとうございます。
 そうしたら私からの提案ですが。ともあれどこかにいるジョルノさんと合流するのが第一の目的だと思います。いかがでしょうか」
いよいよ提案。これも無意識かどうか知らないがなかなか良い。
何がって、『今はある男の主催で殺し合いをしてるんですよ僕ら』なんて言ってみろ?
そこでまた一悶着二悶着あるだろう。だからそこはスルーしたわけだ。
『とりあえず共通の友人に会う』という目的があれば今のところは大丈夫だ。
もちろんこれも不安定なロープの上を歩くに等しい行為だ。
「うーん。そうだな。本当に俺が記憶喪失なのかどうかもジョルノに会って聞いてみればいいか。
 ところで、ここはどこだ?確かにヴェネツィアじゃあねーようだけど……」
そう。記憶云々は置いといたとしても、現状を問われた時だ。
しかしここでもなかなかミキタカは冷静だった。
「そうですね、実をいうと私もさっきまで少しパニック状態でして。ここがいったいどこなんだか……
 とにかく、それも踏まえて少し移動しましょうか。さっきみたいに靴になります?」
……訂正。冷静じゃなかったからこそ正直に答えられたんだな。運がいいんだか頭が良いんだか、あるいはその逆か――
「それがオマエのスタンド能力か――でもとりあえずいいだろ。二人で並んで歩こうぜ」
とにかく、そんな綱渡りを二人は歩き出す。
彼らは無事にジョルノに、あるいはブチャラティチームのような信用できる人間に会うことが出来るのだろうか?
そしてミスタの記憶は?その現在の持ち主との遭遇は?
期待する気持ちはわかるが、まあこの辺でやめておこうか。こうご期待、ってね。

26 :
【C-2 南東 / 1日目 午前】
【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:記憶喪失
[装備]:閃光弾×2
[道具]:拡声器
[思考・状況]
基本的思考:なし(現状が全くわからない)
1.とりあえず移動。ジョルノ他俺を(俺の現状を)知ってる人に会いたい
2.どうも俺は記憶喪失になっているらしい。でもあまり信じたくない
3.おいミキタカゾ、そのモノマネは反則だってwww
※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※記憶DISCを抜かれたことによりゲーム開始後の記憶が全て失われています。
※ミスタの記憶はJC55巻ラストからの『ヴェネツィア上陸作戦、ギアッチョ戦の直前』で止まっているようです。

27 :
【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:チョココロネ×3
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.とりあえずミスタの説得に成功して安心。しかし現状はわからぬまま。やや不安
2.ミスタと共通の知り合いであるジョルノと合流したい。まずは移動
3.知り合いがいるならそちらとも合流したい
4.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?
5.顔真似はできないけどこういう方法もあるんだぜ(ドヤ
※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※ジョルノとミスタからブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、トリッシュの名前と容姿を聞きました(スタンド能力は教えられていません)。
※第四部の登場人物について名前やスタンド能力をどの程度知っているかは不明です(ただし原作で直接見聞きした仗助、億泰、玉美については両方知っています)。
[備考]
ミスタとミキタカは自分たちの現在位置がわかっていません。また地図も持っていません。
地図もコンパスもない以上は道沿いに歩くようですが、詳しい方向や目的地は決まっておりません(決められません)以降の書き手さんに一任します。

28 :
以上で投下終了です。
仮投下からの変更点
・本文長さでの規制につき分割箇所変更
・コロネ、文明の利器
ミスタはともかくミキタカも放送の詳細や現在位置を知らない以上は移動させないと何も始まりませんので説得と行動方針の決定のみに終始しました。
とはいえ彼らの時間が朝で止まっていた上に会話と目的の決定だけだと話が(時間の進行度が)進まず申し訳ないorz
ミキタカのコロネ頭ネタはなんだかふと天から降りてきましたwでもイメージの原点はスマイルプリキュアを見てた(キャラの容姿を説明する際にコロネを、というシーンがあった)んですw
鉄塔戦を見るにミキタカは何だかんだで機転がきくタイプだと思うんですよね。
それから、ミスタがミキタカのことを「ミキタカゾ」と呼ぶのは1stでも誰か(ワムウでしたっけ)が同じように言っていたのをオマージュしています。
誤字脱字やその他矛盾がありましたらご一報ください。

29 :
投下乙です
そうかコロネは文明の利器だったのか!(違う)
仗助よりも整ってるらしいジョルノの頭(ASB)だけど一般人から見れば普通にアウトだと思うのです
ミキタカは天然さがいいように作用したなー
一応周りに危ない人はいないはずだしシーザーも向かってるはずだしなんとかなるといいなぁ…

30 :
吉良「せやな」
F・F「せやな」
F・Fは今はよっぽどのことがない限り大丈夫か……?

31 :
ASBに伴う投下&予約ラッシュに興奮
やっぱ新作読めるといいな

32 :
エース書き手氏も復活?したしな。これは期待せざるを得ない

33 :
文明の利器に吹いたwww

34 :
みんな、遊びに来てね♪
http://www.geocities.jp/destiny_br/

35 :
wiki収録しました。作者の両名ではないですが、勝手に収録してよかったんでしょうか。書き手の方は確認をお願いいたします。
それから不足もありましたら指摘してください

36 :
ご無沙汰しています。予約したパート、投下します。

37 :
 ▼

  「ようこそ……男の世界へ…………」     
                            ―――リンゴォ・ロードアゲイン

 ▼


僕らが話を終えてどれぐらいの時間がたっただろう。
真昼だと言うのに北向きのキッチンは薄暗く、僅かに入った日差しもどこか埃っぽい。
向かいに座った千帆さんの頬に長い影が落ちる。彼女が首を傾げるたびに髪の毛が揺れ、衣擦れの音が僕の鼓膜を震わせる。
壁時計が沈黙を破るように時を刻む。チクタク、チクタク……チクタク、チクタク……。
不意に、壁越しに男たちの声が聞こえた。一つはさっき千帆さんと一緒にいた男の声。そしてもう一つは……聞き覚えのある声だった。
椅子を引き、立ち上がる。千帆さんは顔をあげ、何か言いたげな表情で僕を見る。僕も彼女を見返す。沈黙が流れる。
チクタク、チクタク……チクタク、チクタク……。そして僕は扉に向かう。

「ジョニィさん」

僕を引きとめるように、彼女が僕の名を呼んだ。懸命に、何かを訴えるようにその目は僕をまっすぐに射抜いて行く。
僕は立ち止まり、その目を見つめ返す。睨み返す、と言ったほうが正確かもしれない。
たじろく彼女に指を突きつけると、 僕はこう言い放った。

「君の言い分はわかるし、必死だってこともわかる。
 できることなら協力してあげたい、殺さずに済むのであればそれに越したことはない……。
 それは僕が感じていることでもあるからね」
「なら……」
「けどもしも彼が、蓮見琢馬が僕の邪魔をするというのなら僕は手を止めることができない。
 繰り返すことになるけど、これは決定的なんだ。僕の確固たる意志なんだ」

一言一言僕が言葉を吐き出すたびに、彼女の顔は大理石のように固まっていった。
真っ白になった彼女の顔を見て、胸が痛まないと言えばウソになる。
けど、仕方がない。こればかりは避けようもないほどに、僕の中では“絶対的”だった。曲げることのできない、確実なものだった。
もしも蓮実琢馬が僕の行く手に立ちふさがるのなら……僕は宣言通り彼を撃ち抜く。僕のこの手で、容赦なく。
男たちの声が大きくなった。僕は彼女に向かって話を続ける。
弱った動物に止めを刺すかのように、僕は言葉を振りおろす。

38 :
「殺し合いという舞台に立った以上、望むに望まざるに戦いは避けられない。
 僕には叶えたい目的がある。必ず会わなければいけない友達がいる。
 そのためなら……なんだってする。僕にはその覚悟が、ある」
「…………」
「優しさで誰かを救えるなら僕だってそうするさ。だけどそうじゃない……本当に誰かを救うのは強さだ。優しさなんかじゃない。
 今までも……そして、これからも…………ずっと」
扉をあけると暗闇を切り裂くように陽が刺した。眩しさに目を細めながら外に出る。僕は後ろを振り返らなかった。
彼女がどんな顔をしているか、見たくはなかったから。

「夢見る少女じゃ世界を救えない。僕はそう思うよ、双葉千帆さん」

バタン、と扉が閉まる音がする。あの薄暗い部屋に彼女を閉じ込め、僕は光の中を進んでいった。


 ▼

  「その子からさあ、きたない手をはなせよ。どうせ小便してもあらってないんだろ」    
                            
                                    ―――蓮見 琢馬

 ▼


「なるほど、話はわかった」

プロシュートさんの声はどことなく歯切れが悪い。そっとばれないように視線をあげると、彼は何も言わずにコーヒーを一口すすっていた。
キッチンの窓を背にした彼の表情は影になって、よくわからない。
けど、なんとなくだけど……どこか面白可笑しく思っているように、私には見えた。
ジョニィさんとの話し合いに時間はかからなかった。
お互いに出会った人について、知っている人について、危険人物の特徴、支給品の披露などなど……。
けど結局はそこ止まりだった。ジョニィさんは辛抱強くて、気が利いて、冗談を言って私を笑わせてくれたりしたけど一緒にはいられなかった。

39 :
一緒にはいてくれなかった。
話し合いが終わるとジョニィさんは私を置いて出ていってしまった。
少しの間、外ではなしあうような声が聞こえ、入れ替わりにプロシュートさんが部屋に入ってきた。
放送も近いし昼飯でも食べておこう……そう言って私たちはここに留まり、私はプロシュートさんにジョニィさんの話をしていたのだ。
彼の真っすぐな目と、折れることのない硬い、硬い意志について……。

「もしもここがタダの街で、俺とお前が偶然街ですれ違うような関係で、それでもってたまたま何か事件に巻きこまれただけとしたら……俺も同じことを言っていたかもしれない」

コーヒーの香りをぬうように、プロシュートさんの言葉が飛びこんできた。
顔をあげた私を見て、彼は話を続ける。

「俺もジョニィ・ジョースターと一緒だ。
 目的のためならば手段を選ばない。他人を蹴落とす必要があるならそうする。ぶっRと心の中で思った時には既に行動は終わっている。
 心やさしいなんて的外れもいいところだ。そんな人種だ、俺たちはな」

コト……、陶器が触れ合う音が響いた。私は両手の中にあるマグカップを見下ろした。
真黒な液体の中で、白い顔をした私自身が見つめ返している。
どこまでも深く、濃い、真黒な渦の中で。

「だけど、死んだ。そんな人種と呼ばれる俺の仲間たちは六時間も持たずに、死んだ。どいつも俺より凄い奴らばかりだって言うのにな。
 一人は俺以上に強くて、頑固で、厄介な野郎だった。
 一人は俺以上に頭が回って、冷静で、冷酷だった。
 一人は俺以上に意地汚くて、しぶとくて、ぶっ殺しても死なないような奴だった。
 それなのに死んだ。そしてお前は生き残っている」
「プロシュートさん、私……」
「千帆、お前はとびきりの大甘ちゃんだ。 誰かを蹴落とすなんて考えたこともないって面してる。
 誰かを犠牲にするぐらいなら私が犠牲になってもいい、そんな夢みたいなことを大真面目に考えてる。
 実に、馬鹿馬鹿しくなるほどに、世間知らずのお嬢様だ」
言葉とは裏腹に、プロシュートさんの顔には笑顔らしきものが浮かんでいた。
コーヒーから立ち上る湯気越しに、微かに浮かぶ頬笑み。唇をひん曲げただけの不器用な笑顔は、それでも私を励ましてくれた。
これでもいいんだって、そんな気分になった。
女々しいかもしれない。臆病かもしれない。
でもそれはもしかしたら私にしかできないことかもしれないんだ。
私だけが持つ、大切なものなのかもしれないんだ……。

「そんな大甘ちゃんだから、俺はお前に賭けることにしたんだ」

ポケットに入っている歪な形の黒い武器。傍に佇むならず者剥き出しの男の人。
どちらも私からは遠く、遠くのものだった。けど今は、それ全部が大切に思えた。
強くならなきゃいけないと思った。ジョニィさんにああやって言われて、何一つ言い返せなかった事が急に悔しく思えてきた。

40 :
「少し寝ておけ、放送が始まったら起こしてやる」

目を閉じると暗闇が広がる。奥行きのない、どこまでも広がっていく闇。
私は何て言えばいいのだろう。こんな目をした、あのジョニィさんに何て言えば“勝つ”ことができるのだろう。
眼を開けてみれば差し出した腕はどこにも届かず、ただ天井向かって延びただけだった。
私はまだ、答えられない。けどいつかは……“答えられるよう”になりたい。


 ▼

  「来いッ! プッチ神父ッ!」     
                            ―――空条 徐倫

 ▼


「俺はそう思うよ、ジョニィ」
「だったら尚更僕は一緒にいられない」

足を引きずりながら進む俺と、ただ真っすぐに進んでいくジョニィでは彼のほうが歩くペースが速い。
少しだけ前を行くジョニィの後ろ姿を見つめながら俺は見たこともない、その双葉千帆という少女のことを考えた。
何故だか彼女の姿はイメージの中で、俺の愛した少女と重なった。
それは彼女がきっと……双葉千帆が徐倫と同じぐらい優しい子だと俺が思ったからだ。
殺したくない、傷つけたくない。誰だってそう思うだろう。
彼女に足りないものがあるとするならば、それを貫きとおす勇気だ。
武力でもなく、説得力でもなく、ただ自分にそれを課す勇気……いや、勇気と言うより愛、だろうか?
母親が子に授けるような不変の愛、聖母のように慈しみ信頼する心……それを貫き通すのは難しい。
だけど徐倫だって昔は寂しさのあまりメソメソ泣くような女の子だったんだ。
彼女なら、できる。双葉千帆にだって、なれるだろう。俺はそう思いたい。
このジョニィ相手に一歩も引かないような女の子なんだ……あとはきっかけさえあれば、彼女は変わる。俺にはそう思えた。

「彼女のことが心配かい、アナスイ」
「……いいや」

振り向きもせずにジョニィがそうたずねてきた。俺は返事をし、その後ろ姿をじっと見つめる。
ジョニィは変わった。たった数時間ぶりに会っただけだと言うのに……どうしようもなくわかってしまうほど、今のジョニィは剥き出しで鋭い気を放っている。
前に比べてずっと無口で、座った目をしている。ときどき俺がギクリとなるぐらいに。

41 :
会いたい人がいると言っていた。必ず会わなければいけない友人なんだと。
きっとその気持ちがジョニィを変えてしまったんだ。失うことを恐れるあまり、失う怖さを理解しているがゆえに。
俺とジョニィの立場は完全にひっくり返ってしまった。今や俺が下がり、ジョニィが先だ。
しっかりとした足取りで前を行く彼は、頼もしげだけれどもどこか怖さを感じる。そんな風に俺には見えてしまった。

「アナスイ」

ジョニィに呼ばれ、俺は我に返った。
行き過ぎた道を戻ると、曲がり角で元来た道へと戻っていく。待ってくれていたジョニィと肩を並べ、俺たちはまた歩き出す。

―――全てをなぎ払い、踏み倒し……それでも何も手に入らなかったらお前はいったいどうするんだ?

そうジョニィに聞いてみたかった。けれども俺は尋ねない。
俺がその問いに答えることができないならば、それを口にする資格はない。
それになんとなくだが、ジョニィの答えが想像できたのだ。

―――それでも変わらず、歩き続けるだけさ。

俺は、ジョニィがうらやましかった。
こんな抜け殻になった俺なんかとは違う。死んだ女の亡霊に取りつかれるでもない。
ただひたすら道を行く、ジョニィ・ジョースターという男が…………。

「そろそろ放送の時間だ」
「ああ」

短くそう答え、俺は空を見上げる。
底抜けするように青く澄んだ空を、馬鹿みたいにでかい雲が横切っていく。
心地よい、昼下がりのことだった。




42 :
【D-7 南西部 民家/1日目 昼】
【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:全身ダメージ(中)、全身疲労(中)
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 30/60)
[道具]:基本支給品(水×3)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還。
1.暗殺チームを始め、仲間を増やす。
2.この世界について、少しでも情報が欲しい。
3.双葉千帆がついて来るのはかまわないが助ける気はない。

【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:疲労(小)
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、救急用医療品
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く。
1.プロシュートと共に行動する。
2.川尻しのぶに会い、早人の最期を伝える。
3.琢馬兄さんに会いたい。けれど、もしも会えたときどうすればいいのかわからない。
4.露伴の分まで、小説が書きたい。


【D-7 西/1日目 昼】
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
【備考】
※放送で徐倫以降の名と禁止エリアを聞き逃しました。つまり放送の大部分を聞き逃しました。
【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く

43 :
以上です。なにかありましたら指摘ください。
めちゃくちゃ久しぶりだったので、すごい自分自身違和感を感じてます。
ようやく生活が落ち着いてきたので、少しずつまた書ければいいな、と思ってます。

***
代理投下終了です。一部分割箇所ミスってしまって申し訳ないですorz
決意がしっかりと固まっているジョニィに、プロとして誇りのある兄貴、揺らぐアナスイ、決意を見出したい千帆。
氏にしては珍しく(失礼)短い話ではありましたが4人のキャラクターの対比が絶妙でこの先の展開がすごく気になる幕引きでした。
今後も忙しいと思いますがロワを引っ張っていってください。最後になりましたが投下乙でした。

44 :
投下&代理投下乙です
千帆の一般人らしさがいいなぁ
ただ、ここがロワな上彼らが原作でやってきたことを考えるとスタンスが相容れるわけがないんだけども
でもだからこそ兄貴の「賭ける」と言ったかっこよさが光るわけで
それぞれ目的を持っている中意志が定まっていないアナスイが不安だ…

45 :
やはり投下はいいもんだ
これまでにない善人寄りな兄貴の活躍に大期待
最後の仲間ギアッチョももう死んでしまったし、今後の兄貴の運命が気になる
なんせ傍らには死の女神が…

46 :
月報です
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
147話(+3) 56/150(-0) 37.3(-0.0)

47 :
ちょっとずつ投下されてきてるけど他の書き手さんも戻ってきてくれるかな?

48 :
書き手の皆様の復帰も楽しみだが、新規の書き手さんもほしいよな。ASBの影響でジョジョ混部もアイデアが浮かんできそうだし

49 :
623 : ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:07:05 ID:tFZwjNi.
すみせん、遅くなりました。投下します。
624 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:07:38 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

 ぱちぱちぱちぱち……―――(拍手の音)

 ◇ ◇ ◇

50 :
625 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:08:36 ID:tFZwjNi.


「君たちには……人探しをしてもらいたい」
とろけそうになるほど甘い声。その声は一流音楽家が奏でるヴァイオリンよりも美しく響いた。
DIOは目前でうずくまる四人の男たちを眺める。誰もがぼんやりとした顔で、DIOの言葉に聞き惚れている。
「ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、花京院典明、モハメド・アヴドゥル……。
 この四人を、君たちには探してもらいたい。いずれもこの私の野望を邪魔せんとする輩だ。
 君たちには彼らを探し出し、このDIOのもとに連れてきてもらいたい。
 生死は問わない……信頼する君たちなら必ずやり遂げてくれるだろう……。
 さぁ、行くがいい……このDIOの忠実な部下たちよ……」
話が終わったのを合図にDIOは椅子から立ち上がり、男たちは深々と頭を下げる。
薄暗い室内をぼんやり照らすロウソクが、怪しげな影を男たちの頭に落とした。
よく見れば額に小指大の肉片がうごめいていることに気がつくだろう。DIOによる洗脳、”肉の芽”だ。
部屋の奥へとDIOが姿を消し、男たちも立ち上がる。その足取りはどことなくぎこちない。目つきも虚ろだ。
プログラミングが終わったばかりのロボットのような動きで彼らは建物をあとにする準備を始める。
一連の出来事を部屋の隅で眺めていた虹村形兆は、ゾッとしない気分だった。
これがDIO……! これが悪の帝王……ッ!
他人を踏みつけることなんぞなんとも思っていない。
喉が渇いたから喫茶店に入るような気軽な感じで、彼は人を人有らざるモノに変え、己のコマとする。
罪悪感がない……、人としての『タガ』が外れている……。その点では間違いなくDIOは人間を超越しているだろう。
何かをしようとするたびに悩み、苦しむ形兆なんかとは違って。
形兆の指先がビリビリと震えた。『格の違い』に恐怖を覚えたのは初めてのことだった。
震えをごまかすためにもう片方の手でギュッと腕を押さえつける。
隣に立ったヴァニラ・アイスに動揺を知られたくはなかった。
「行くぞ、虹村形兆。奴らに先を越されてはならん」
ヴァニラの声は無機質で、人工的で、カラッカラに乾いてるように聞こえた。
形兆が小さく頷くと、ヴァニラ・アイスは先に立って歩き始めた。
その背中を眺めながら、こいつの首筋に弾丸をブチ込めたらどれだけスカッとするだろう、と形兆は思う。
第五中連隊をそっくりそのまま投入。
三六〇度より一斉一点射撃。首元の爆弾を引火させ、上半身を根こそぎ吹き飛ばす……。
そんな夢みたいなことができたならば……。

51 :
626 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:09:14 ID:tFZwjNi.

「なにをしている、早く行くぞ」
「そう急かすんじゃあない。隊列行動は規律を守ってだ。俺に指図するのはやめてもらいたいね」
表面上は軽口を叩きながらでも、互いに警戒は全くといていない。
ヴァニラは隙あらば形兆を殺そうとしているし、形兆だって素直に殺される気はない。
まだここがDIOの目の届くところだから、ただその一点のみで二人は戦わずに済んでいる。
だが『ここ』からは違う。この扉を開け、GDS刑務所から出ればそこはもはや無法地帯だ……。
最後の扉を開くと強い日差しが差し込んできて、思わず目を瞑りそうになった。
目がなれると辺りの風景が一気に視界に飛び込んでくる。見れば先の四人は四方に散って、それぞれの方向へと向かっている。
同時に甲高い叫び声が聞こえ、つられて上を見上げれば一匹の鳥が上空高く舞っている。
側にも、上にも監視付きってことか。逃げ場なんてものはどこにも見当たらなかった。
ため息をひとつ吐くと、形兆はバッド・カンパニーを広げていく。
遅れないようヴァニラ・アイスについていきながら一人心の中で毒づいた。
(なぁ、億泰……なかなか狂ってやがるだろう? 
 あれだけ嫌ったオヤジなのに、今俺はオヤジの代わりに仕事を引き継いでいるんだ。
 皮肉なもんだ。殺したいほど憎んでいたはずなのに、そのオヤジの跡をそっくりそのままたどってやがる!
 この俺が! この俺がだぞ……!?)
吸い込んだ空気はベタベタと口周りで張り付いて、学ランの下で汗がシャツをぐっしょりと濡らした。
(だがな、俺は忘れてないからな…………!
 諦めたわけでもない。必ず俺とお前の借りは返してやるから!
 だから見とけよ、億泰!)
形兆の足元で何人かの兵士たちが武器を構え直した。
金属がぶつかりあう、特有の重量感を持った音が響いた。それは戦いを予期させるような鈍い音。
兵士たちは知らない。この拳銃をこの先誰に向けることになるか。
ひょっとしたら顔も知らない若者かもしれない。戦いに明け暮れた歴戦の兵士かもしれない。
そしてもしかしたら……。渋い顔で形兆の隣を歩くヴァニラ・アイス。
彼にその武器を向けるときは、そう遠くないのかもしれない。

52 :
627 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:10:02 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

散歩に付き合ってくれないか。そう言ったDIOの提案にヴォルペは黙って頷いた。
別に断る理由もないし、ちょうど暇をしていたところだった。
頷くヴォルペを見てDIOは笑みを深め、彼を地下へと誘った。二人はGDS刑務所内の地下へと続く階段を下っていく。
最初はコンクリートでできていた階段も下るに連れて砂や石が混ざり、ついには壁も足元も未整備のものへと変わっていた。
天井から滴る水滴が水たまりをあたりに作る。ゴツゴツした地面に足元を取られないようヴォルペは慎重に進んでいく。
DIOはどこか上機嫌で鼻歌交じりで先を進んでいた。さっきからやけにハイなようだとヴォルペは思った。
何かいいことでもあったのだろうか。
特別変わったことはなかったと思っていたが、思えばヴォルペはDIOのことをよく知らない。
好きな花も好みの歌も、出身も年齢も血液型も知らない。そもそも自分から誰かに興味を持ったことなんぞなかった。
足元が一段と荒れてきた。天井が低くなり、背が高いヴォルペは身をかがめながら進む。
頭をぶたないようにしながら、水溜りに足を突っ込まないようにするのはなかなか難しい。
進んではかがみ、よれては立ち止まる。DIOはなんでもないようにスイスイと進んでいく。
ヴォルペより一回り大きな体をしているというのに器用なものだった。
「君のスタンドは素晴らしいよ、ヴォルペ」
洞窟に入ってから一言も口を開かなかったDIOが突然そう言った。
返事をするどころでないヴォルペは言い返すこともできず、ただ頷く。この暗闇では頷いたところでわからないだろうけれども。
ともに足を止めることなく、進みながら話は続く。ヴォルペは黙って耳を傾けた。
「先の三人と一匹……チョコラータ、サーレー、スクアーロ、そしてペット・ショップのことだが……。
 君のスタンドは最高だ。ほとんど再起不能当然だった彼らが今ではピンピンしている。
 全くの無傷だ。本当に素晴らしいよ、ヴォルペ……!」
「……それは、どうも」
「確かにただ動けるようにするだけなら、この私にも可能だ。
 首元に指先をつきたて、吸血鬼のエキスを流し込めばいい。そうすれば屍生人として彼らは再び動き出すだろう。
 だがそうなってしまえば二度と陽の光を浴びることはできなくなる。
 この狭い舞台で地下でしか動けない部下なんぞ、扱いづらいことこの上ないよ」
「…………」
「だが君は違う。君の能力は違う。私の真逆の能力そのものであり、だが隣り合わせのようによくなじむ!
 過剰なエネルギーを流し込み、細胞を活性化させる。復元するのではなく、再生させるのだ。
 いうならば体の内部を加速させているわけだ。一日ががりの傷を三秒で、一年がかりの怪我を三分で!
 君は確かに生命を操っているよ、ヴォルペ! なんて素晴らしい! これ以上ないほど素晴らしい!
 君は生命を与え、私は生命を奪う。君は万物を加速させ、私は世界を凍りつかせる。
 コインの裏表のようだ! 素晴らしい引力だ! フフフ……! ヴォルペ、君は素晴らしいぞ! ヴォルペッ!」
DIOの喜びようはヴォルペを戸惑わせた。
話していくうちに喜びが増してきたのだろう。DIOはまるでクリスマスと正月が同時に来たようにはしゃぎだす。
だがヴォルペにはその喜びが理解は出来ても、共感はできなかった。
喜色満面のDIOを見つめながら、ヴォルペは何をそんなに喜ぶのだろうと考えていた。
自分はただ言われたとおり手当をしただけだ。
何も特別なことをしたわけではない。そもそもそんなにすごいというのなら、それは俺ではなくスタンドがすごいだけだ。
すごいのはむしろ君の方だ。そんな類まれなすべてを惹きつける、君の引力がすごいんだ。

53 :
628 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:10:37 ID:tFZwjNi.

だが、それでもヴォルペはかすかにだが、『喜び』というものを感じていた。
だれかの役に立てたという達成感と満足感がヴォルペをすっぽり覆う。
それは初めての経験だった。こんなものが感情だというのなら、それも悪くないなと思える程だった。
「ところで」
ヴォルペの声は相変わらず乾いていたが、どこか和らげな感じだった。
先を進んでいたDIOだったがヴォルペの声に立ち止まると、彼が追いつくのを待った。
二人並ぶとゆっくり進みだす。道はだんだんと平坦になっていき、天井も3、4メートルほど高くなっていった。
「俺たちは今、どこに向かっているんだ?」
DIOはなんでもないといった感じで返事をする。
「どこでもないさ。強いて言うなら君の引力が向くがままにさ」
そしてそれに応えるかのように、前方から物音が響いてきた。
硬い金属をぶつけ合うような音だ。それは戦いの音。
DIOの顔に笑顔が広がる。今までの笑みとは違う、邪悪で凶暴な笑みだ。
ヴォルペはその横顔を黙ってじっと見つめていた。DIOの横顔からなにかをかぎ取るようにじっと……。

54 :
629 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:11:18 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

洞窟。
光が刺さない地下深く、手に持った懐中電灯だけを便りに二人は歩いていく。
空条承太郎と川尻しのぶ、二つの足音がこだまする。天井は低い。承太郎が手を伸ばせば触れられそうなほどだ。
承太郎としのぶはぶどうが丘高校を後にし、空条邸に向かっていった。
承太郎は理由を言わなかった。黙ったまま車を走らせ、門のところで止めると彼はようやく口を開いた。
『アンタ、吸血鬼の存在を信じているか』
突然の質問にしのぶは何も答えられない。承太郎も答えを期待してたわけでなく、淡々と話を続けた。
承太郎が持つ支給品の中の一つに地下地図、というものがあったらしい。
この街全体に張り巡らされたような地下道は交通のためにしては不自然で、下水や浄水のためにしては大規模すぎる。
しかしもしも日中外に出られないようなものたちがいたならば……。吸血鬼と言われる怪物たちが本当に実在するならば……。
そこはこの地で一番の危険地帯に早変わりだ。
学校の周りも駅の周りも人気は少なく、情報捜索は空振りに終わった。
承太郎はこれ以上待つことは不可能と判断し、攻めることにしたのだ。
参加者名簿の中に吸血鬼と呼ばれる人種が何人もいると、承太郎は言った。
そしてそれ以上の怪物、柱の男たちと呼ばれる者もいるといった。
『俺は今から地下に踏み込み、片っ端からそういう奴らをぶちのめすつもりだ』
にわかには信じられない話だ。おとぎ話でももう少し信ぴょう性がある。しのぶは何も言えず黙っている。
だが無言のまま承太郎が車から降りようとしたとき、既にしのぶも助手席の扉を開いていた。
もはやなんでもアリだ。スタンド、人殺し、爆弾首輪。そんなものがあるのであれば吸血鬼だっているだろう。
それになにより、さっき決めたばかりではないか。
空条承太郎を止めてみせる。ならばしのぶには選択肢はない。承太郎が行くところがしのぶの行くところだ。
たとえそこがどれだけ危険な死地であろうとも。
しばらく歩くと天井が高くなり、あたりもうっすらとではあるが明るさを増した。
壁に生えるコケがかすかに光り、ところどころから飛び出た燭台にはロウソクが灯らされている。
薄明かりの中、二人は無言のまま歩く。ただひたすら歩く。
承太郎は憎むべき敵を探し、一切の気配を見逃すまいとして。しのぶはそんな彼の大きな背中を眺め、内なる決断を済ませて。

55 :
630 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:12:07 ID:tFZwjNi.
しのぶは諦める決断をした。
難しい判断だったがそうする勇気を持つことを、彼女は自分に決めた。
この先承太郎は何度も戦うだろう。
望まない相手に拳を振り上げる羽目になるだろう。自分を押し殺し、戦うべきでない相手と戦うことになるだろう。
しのぶにできることは『なにもない』。
なにもないとわかり、でもなにかせずにはいられない。そのためにまずは自分の身は自分で守ろうと思った。
戦う相手を救うことを、しのぶは諦めたのだ。今の彼女に、それはあまりに大きすぎたものだった。
彼女に救えるとしたらせいぜい一人ぐらいだろう。救えてたったひとり……承太郎、その人ぐらいなものだ。
だから承太郎が戦い始めたら彼女は逃げるつもりだ。
戦いを止めることは不可能だし、承太郎のそばにいたところで負担がますだけだ。
悲劇のヒロイン気取りでもうやめて、なんていうこともしない。
彼がどれだけ思いつめて、苦闘しているかはわかっているつもりだから。

大きく息を吸い込むと、砂の臭いに混じってタバコの匂いがした。
空条さんはいったい何を考えているのだろうか。一体彼には何が見えているのだろうか。
隣を歩いているというのにしのぶには承太郎の何もが、わからなかった。
頑張ったところで空回り。ただ励ましたいのに、力になりたいのに。
それなのにどうやったら力になれるかがわからない。
だけど、これ以外に、そしてこれ以上にできることは何もない。
それすらも欺瞞で、傲慢で、押し付けがましいおせっかいだ。
だから一緒にいたい。だけどそばにいたい。脇で立っていたい、寄り添っていたい。
何か一つだけでも秀でたものになりたかった。
しのぶは、心の底から『必要』とされたかったのだ。
今は無理でも……いつかはかならず……―――


―――そう、思っていた。

56 :
631 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:13:04 ID:tFZwjNi.
「柱の男、カーズ……か」
「え?」
「アンタは逃げろ」
突然立ち止まった承太郎がポツリとつぶやいた。しのぶには何が何だかわからなかった。
次の瞬間、承太郎の姿が消え、凄まじい轟音が響いた。
しのぶは音にたじろぎながらも反射的にその場に伏せる。ぱらぱらと音を立て、頭上から崩れた砂が落ちてきた。
衝撃が収まるのを待ち、こわごわと顔を上げる。
目を凝らすと十数メートル先に承太郎の背中が見えた。そしてその脇に立つスタンドと……さらに奥に男の影が一つ。
その男は怪我でもしているのか、しのぶと同じように地面にうずくまっていた。背は高く、肩幅も大きい大柄な男だ。
黒いターバンのようなものを頭に巻き、冒険家風にマントを身につけている。
近くにはついさっきまでかぶっていたと思われる山高帽が転がっていた。
状況から察するに、承太郎がその男に攻撃を仕掛けたらしい。突然姿が消えたように見えたのは、彼のスタンド能力だろう。
「川尻さん、もう一度言う。死にたくなかったら逃げろ」
しのぶのほうを振り返りもせず、承太郎は今度ははっきりとした声でそう言った。
承太郎のもとへ駆け寄ろとしかけたしのぶはその言葉に足を止める。
それは拒否の言葉ではあったが、拒絶ではない。
承太郎がほんとうにしのぶのことを思ってなかったら何も言わず、そのまま戦い続けていただろう。
しのぶの脳裏に学校での出来事が古い映画を観るように、思い出される。
駆け寄るしのぶ、突き立てられたナイフ。薄笑いを浮かべた髭面の男。ガラス玉のような承太郎の目……。
ここで彼の言葉を無視するのは簡単だ。近くに駆け寄って、手を広げてもう戦うのはよして、と叫べばいい。
だがそれで何になるというのだ? しのぶは悩んだ末に、逃げることにした。
それは承太郎を困らせることになっても、改心させることにはならないだろう。
本当に承太郎を止めたいのであれば今は動く時でない。自分勝手な馬鹿なことをすべきでないと、しのぶは学んだのだ。
だがそれでも……やはり胸が痛んだ。
承太郎に独り戦いを任せること苦しさ、戦う相手にも家族がいるのではという哀れみ。
それでもそれらすべてを飲み込むと、しのぶは元来た道を走り出す。最後に承太郎にむかって、大声で言葉を残しながら。
「空条邸で待ってますからッ! 二時間でも、三時間でも……どれだけ待たされようとも待ってますからッ!」

636 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:18:10 ID:tFZwjNi.
すみません、抜けがありました。
>>631>>632の間です。

承太郎は動かない。返事もせず、頷きもしなかった。
足早に去る音を背にしながら、ただ目の前の男をにらみ続ける。
しのぶの足音がすっかり消え去った頃になって、ようやく地に伏せていた男が立ち上がった。
直角に曲がっていた足首も。あらぬ方向にひん曲がっていた首も。
一向に気にする様子もなく淡々と立ち上がると、服の埃を払ってみせた。

57 :
632 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:14:11 ID:tFZwjNi.

そして…………―――また、轟音。

カーズの体が車にはねられたように吹き飛び、何度も洞窟の壁に叩きつけられる。
バウンドを繰り返し、天井まで達し……放り投げられたおもちゃのように落ちてくる。
当然のように位置を変えた承太郎はそれを黙って見ていた。今まで違ったのはその腕に真っ赤な線が走っていること。
時を止め終えたほんのゼロコンマの瞬間に、カーズの指先が承太郎の腕の肉をえぐり飛ばしたのだ。
音を立てて、承太郎の腕から血が滴り落ちる。傷は深くもないが、浅くもない。

二度の衝撃を終えて、両者はにらみ合う。
ゆらりと立ち上がったカーズの顔には憤怒の表情が張り付いている。承太郎は変わらず、機械のように無表情だ。
泥だらけになった自分の姿を一瞥し、カーズは苦々しく言った。

「貴様、何者だ……」
「てめェには関係ないことだ。これから俺にぶちのめされる、お前にはな……」

―――……殺してやる
これほどの屈辱は未だかつて味わったことがなかった。
ダメージはない。が、餌の餌、家畜当然かそれ以下の存在である人間にこうも弄ばされいいようにやられて、カーズのプライドはズタズタだった。
スラァァァ……と薄い氷をひっかくような音を立て、カーズの腕から刃が飛び出した。承太郎もスタンドを構え直し、戦いに備える。
最初から全力全開……最強のスタンド使いと最強の究極生命体のぶつかり合い。この戦いは長くは続かないだろう。

薄暗がりの中、影が動いた。そして……三度轟音が、そして今までよりさらに凄まじい轟音が、洞窟を震わせるように響いた。

58 :
633 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:14:47 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

「スター・プラチナッ!」
「KWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
カーズが感じたのは強烈な違和感だった。
目の前の男は自分を知っている。柱の男の性質を、光の流法を……波紋使いでもないのに、完璧に対応しカーズの攻撃をさばいていく。
カーズの体に直接触れることは決してしない。輝彩滑刀に対しては刃をはねのけるように側面をたたいている。
数度の交戦を経て、大きく距離を取る。承太郎も無理には追わず、一度互いに呼吸を整える。
気に入らないな、とカーズは思った。その余裕が、強さが、すべてを見透かしたようなスカした視線が!
全てがッ! 気に食わんッ!!
大地を強く蹴りあげ、跳躍。狭い洞窟であることを最大限に利用する。
天井まで上昇、今度は天井を蹴り加速。壁を蹴り、進路を変更。また床に戻り、そして上昇……。
人間には決してできない、超三次元的な動き! あまりのスピードにカーズの影がぶれてみえるほどだ!
「刻まれて、Rェェェエエ―――ッ!」
「オラオラオラオラオラオラッ!」
だが、やはりだ。それでも承太郎は完璧に対応してみせた。
上から切りかかっても、下から切り上げても、右から真っ二つにしてやらんと振り上げても、左からます切りにしようと振り下ろしても。
スピードと破壊力では間違いなくカーズが上だ。体力も、耐久力も、地の利もカーズが上。
だがしかし精密性という一点のみで! 悔しいが認めるしかない……ッ!
承太郎の体に細い切り傷が無数に広がっていく。その先の一歩が踏み込めない。
承太郎の超人的な集中力と、スター・プラチナの能力がそれをさせない。
カーズの刃を揺らし、折らんばかりに振り下ろされるスター・プラチナの攻撃に柱の男は認識を改める。
こいつは……強い。波紋使いとは違った次元でコイツは……このカーズの脅威となる男だ、と。
そしてなにより……ッ!

「……スター・プラチナ・ザ・ワールド」

そう承太郎がつぶやき、カーズの世界が一変する。
つい今の今まで、目の前にいたはずの影が消える。と同時に、ほんのゼロコンマ秒のズレもなく、体の側面に強い衝撃。
きりもみ回転をしながら洞窟の壁に叩きつけられる。
あまりの衝撃にそれだけでは収まらず、バウンドを繰り返し、何度か壁と床を揺らしてやっとカーズの体は止まった。

59 :
634 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:15:50 ID:tFZwjNi.

そう、この謎の能力……。
人形使いに会うのは初めてではない。この舞台ではじめにあった人間もそれらしき能力をもっていた。
が、コイツはタダの人形使いではない……ッ! なにかそれ以上の恐ろしい……凄まじいなにかを、秘めているッ!

(そうでなければこのカーズが、こうまでも苦戦するはずがなかろうが……ッ! たかが人間相手に……忌々しいッ!)

体についた砂埃を払い落とし、立ち上がる。形としてはこればかりを繰り返している。
攻めるカーズ、迎え撃つ承太郎。互いにダメージはほとんどない。
なんどもカウンターをくらっているカーズだが、柱の男の耐久力、回復力がそれを補ってくれている。
承太郎も決して無理をしない慎重な立ち回りだ。じっと隙を伺い、待ち続けている。
互いを牽制しあうような時間が続き、小競り合いが二度三度。
焦れるような戦いが何度も続いた。このままでは決定打にかけ、いつまでたっても戦いは終わらないだろう。
二人にできることといえば待ち続けることだけだった。
集中力を途切らせることなく、何かこの状況を打破してくれるような「何か」をひたすら待つことだけ……!
「オラァ!」
「ふんッ!」
長い交戦の終わり際、二人はここぞとばかりに踏み込んだ。だがそれも有効打にはならない。
キィィン……と甲高い金属音が響き、カーズの刃をスター・プラチナが蹴り飛ばす。
よろめき体制が崩れたところを追撃するも、柱の男特有の柔軟さがそれをなんなく躱しきる。
顎先をかすめた蹴りをさけ、カーズは大きく飛び下がる。承太郎はスタンドを呼び戻し、また戦いに備える。
その時だった。
その金属音が止まないうちに、近づく一つの足音。そしてその場にそぐわぬ、乾いた拍手の音。
パチパチパチパチ…………。承太郎の動きが思わず止まる。一歩踏み出したところでカーズは何事かとあたりを見渡した。
二人の視線が向いた先から人影が浮かび上がってくる。
薄明かりの中出てきたのは……黄金に輝くド派手な衣装、筋骨隆々のたくましい肉体、傍らに立つスタンド。
張り詰めていた空気がさらに殺伐としたものに変わる。
承太郎の体から目には見えない、だが強烈な怒りの感情が熱となって一斉に吹き出した。
「…………DIOッ!」
「ンン〜〜、ご機嫌じゃないかァ、承・太・郎ォォ………? ンン?
 しばらく見ないあいだに随分と老け込んだじゃないかァ……。
 それともこのDIOに会うのは『数年』ぶりかな?」

60 :
635 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:16:45 ID:tFZwjNi.
返事はなく、代わりに拳が飛んできた。いくつにも増え重なった拳が、壁のようにDIOめがけて迫ってくる。
手洗い歓迎というわけだ……ッ! DIOは軽いウォーミングアップだとつぶやくと、自らもスタンドを出現させた。
「ザ・ワールド!」
その音は拳と拳がぶつかり合う音にしてはあまりに殺気立ったものだった。
刃物と刃物をぶつけ合うように鋭く、甲高い音が洞窟中に響く。それも無数に……そして同時と聞き間違うほど素早い間隔で!
承太郎とDIOはスタンド越しに火花を散らす。
パワーA、スピードAのスタンドのぶつかり合いは凄まじく、衝撃で洞窟全体がビリビリと震えた。
突きが徐々に早くなっていく……。DIOの顔から余裕の笑みが消えた。承太郎は奥歯を噛み、鼓舞するように叫びを上げる。
だが!

「KUWAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

この時を待っていた……ッ! そう言わんばかりの迅速な行動だった。
屈辱ではある。たかが人間相手に苦戦し、突然現れた邪魔者に助けられた形で隙を付くことになった。
だがカーズにとってもはやそんなことはどうでもいいことだった!
プライド、過程、こだわり……そんなもののために勝利を犠牲にするほどカーズは甘くないッ!
目的を遂行し、そのためにはどんな手であろうと迷わず実行するッ! そう、これが真の戦闘だ!
カーズにとってはそれがなによりもの真理ッ!
「その命、刈り取ってくれよォォオ―――――ッ!! KUWAAAAAAAAA!」
正面から真っ向勝負の二人に対し、真横から超速で接近。
狭い洞窟内に逃げ場はない。上下、左右。いずれに避けようとも、カーズのスピードを持ってすれば腕か足、あるいは両方共もっていかれる……ッ!
魚を下ろすかの如くッ! ただ包丁を振るうようにッ! カーズの鋭い刃が承太郎とDIOに襲いかかるッ!

   ―――その瞬間!  ……またも世界が止まった。

「「スター・プラチナ・『ザ・ワールド』ッ!」」

二人は迫り来る刃を前に、示し合わせたように同時に動いた。
ともに止まった時の世界で、DIOは左に、承太郎は右に。
たとえ柱の男といえど、止まった時の世界では『喰らう』ことは不可能だ。
DIOはそうとは知らず、承太郎はそれを知っていて。ともに最大速度でカーズめがけて拳を振るう。

61 :
637 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:18:37 ID:tFZwjNi.
右からザ・ワールド、左からスター・プラチナ。左右からのすさまじい衝撃が一秒の狂いもなく、カーズの体内に圧縮されていく。
すべてが止まった世界でなお、その凄まじいエネルギーは暴走し、カーズの体を変形させていく。
極限までしなやかな骨は折れ、ゴムのように柔軟な皮膚ですら突き破られる。空気配給菅に押し込まれたわけでもないのにカーズの体はぺちゃんこに変わっていく。
「承太郎、貴様ッ!」
「オラオラオラオラオラオラァ!」
そして、ともに対処しなければならない共通の敵がいたとしても。
この二人が手を組むことは不可能だ。たとえそれが一時、一秒であったとしても。
時が動き出すほんのコンマゼロ秒前、体制を立て直した二人が激突する。
拳の嵐、蹴りの応酬。DIOの右肩が大きく裂ける。承太郎の腕の傷がぱっくり開き、天井に血のシミを作った。

「「そして時は動き出す……」」

「BAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

吹き飛ぶカーズとその叫びを耳にしながら、最後に拳を放つ二人。
凄まじいエネルギーがぶつかり合い……衝撃波が洞窟を通り抜けていった。
弾き飛ばされるようにDIOも承太郎も、大きく飛び下がった。
天井と壁が割れ、パラパラと小石が落ちてくる。砂埃が舞い、足元を舐めるように通り過ぎていく。
「やはり止まった時の世界で動けるか、承太郎……! このDIOにだけ許された世界にッ! 貴様はやはり入り込んできていたのか!」
「答える必要はない」
会話の終わりに二人の傷口が大きく開いた。カーズとてただ闇雲に突っ込んだわけではない。
承太郎との戦いの中でその不思議な能力は曖昧ながらも把握していた。
たとえと時間が止められようと、吹き飛ばされる直前にDIOと承太郎の体に『憎き肉片』を飛ばす。
カーズは倒れふしながらもそれでも意地を見せた。しかし屈辱には変わらない。
あの柱の男の一族が、人間と吸血鬼相手に劣勢であることは変わらない事実なのだから。
「よかろう……例え貴様が時に侵入してこようとも、このDIOが貴様をたたきつぶしてやるッ!」
「……貴様らはR。肉片一つ残らずR。バラバラのブロックに切り裂きR。死体も残さずこの体に取り込みR。
 このカーズ自らの手で! 直々に! 殺し尽くしてやるッ!」

62 :
638 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:19:06 ID:tFZwjNi.

激高するカーズの叫びと、DIOの高笑いがあたり一面にこだました。
増幅された怒りと憎しみの感情が霧のように承太郎を包んだ。しかし承太郎は怯まない。
その霧を弾き飛ばさんばかりのエネルギーが承太郎の体から立ち上った。
思い出せ、23年前のあの日のことを。怒りのままにDIOをぶっ飛ばしたあの日。
母を人質に取られ、友を殺され、祖父を侮辱され、プッツンしたあの日の怒りを……―――俺はッ!
洞窟内に見えるはずのない陽炎が立ち上っているかのようだった。
三人に増えたことで状況はより複雑なものになった。
誰かが動けば誰かが相手しなければならない。その隙に完全に自由な一人が生まれる。
ひりつくような状況で、いたずらに感情だけがそれぞれの中で昂ぶっていく。
コップいっぱいに水を注いでいくよう緊張感。火蓋が切られるギリギリまで一滴、また一滴……。
そして―――!

「お取り込み中申し訳ないのだが……君たち、泥のスーツをまとった奇妙な男を知らないか?」

辺りを漂っていた霧が散っていく。
戦いに水を差すようにひとつの影が姿を現すと、冷め切った調子で三人そう尋ねる。
見た目はただのサラリーマン以外の何でもない。きちっとしたスーツ、曲がっていないネクタイ、ピカピカに磨かれた革靴。
だがその奇妙な質問が何よりも知らしめていた。
この極限状況で、この殺気立った異様な空間で。こうまでも冷静に問を述べることができる。
カーズもDIOも理解し、承太郎は101%の確信をした。
この男もまた異形……・。絶対に始末すべき相手であると……。

63 :
639 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:19:49 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

たっぷり一分は待っても返事がないことを確かめ、吉良吉影は残念そうに首を振った。
「どうやら誰も心当たりがないようだな。すまない、邪魔をした」
「待ちな、吉良吉影」
唐突に名前を呼ばれ、立ち去りかけた男は振り返った。
彼の名前を読んだ男は視線を上げることなく、斜めに構えたままだ。
吉良はその生意気な横顔に生理的嫌悪感を抱きながらも、丁寧な物腰を崩さない。
「ええと、すまない。仕事柄人と沢山合うので名前を忘れてしまったようだ。どちら様で?」
問いかけられた承太郎は長いこと無言のままだった。
ロウソクの先から雫が垂れさがるほどの沈黙の後、承太郎はポケットから右手を出すとカーズを指差しこう言った。
「カーズ、柱の男と呼ばれる一族の中で天才と言われた男。
 太陽を克服したいという目的の元、石仮面を開発。さらなる進化を遂げるべくエイジャの赤石を求めた。
 1941年イタリアで目覚めたのち赤石を求めヨーロッパを放浪。のちにジョセフ・ジョースターの手によって始末される」
カーズの驚いたよう表情を無視し、承太郎は続いてDIO指し示す。
「DIO、本名ディオ・ブランドー。
 1860年代に生まれジョースター一族を乗っ取るべく、石仮面をかぶり吸血鬼となる。
 ジョナサン・ジョースターの手によって一度は殺されたと思われたが、100年の時を経て再び野望を達成すべく蘇る。
 1987年、エジプトにて空条承太郎の手によって殺される」
DIOはカーズとは対照的に驚きを一切示すことなく、承太郎の言葉を鼻で笑って見せた。
だがその目は怒りに染まっている。承太郎を睨み殺さんとばかりにその視線は赤く、燃え滾っている。
承太郎はそれを無視して吉良を指差す。あらかじめセリフ考えていたごとく、スラスラと言葉が飛び出てきた。
「吉良吉影、1966年生まれ。
 18歳のとき初めて殺人を犯す。それを皮切りに手の綺麗な女性をターゲットとした殺人を繰り返す。
 最終的には48人もの女性を殺害、二次被害を考えれば殺害数はそれ以上と推測できる。
 1999年、M県S市杜王町の郊外で自動車事故に遭い死亡する」
言葉はなかったが空気が揺らぐような感覚が辺りを走った。
いきなり死を宣言される戸惑い、自分の領域に勝手に土足で踏み上がられた気味の悪さ。
しかし稀代の極悪集である三人はそれ以上に怒りを感じた。屈辱を味わった。
時代のズレについては理解している。なるほど、自分はそうやって死ぬの『かもしれない』。
だがそれがどうしたというのだッ! それは『貴様』の世界でおきた出来事に過ぎないッ!
自らの終りの決めるのは自分自身の行いだ。自分自身の信念だ。
この私が! そうも無様な終わりを迎えるだと? 野望を叶えることなく、惨めに地に伏すことになるだと……?

64 :
支援

65 :
支援ッ! せずにはいられないッ!

66 :


67 :


68 :
支援

69 :
640 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:20:27 ID:tFZwjNi.
吉良の登場で冷え切った空間が急速に熱せられていく。
爆発直前のエンジン中のように、三人の怒りがあたりの空気を変えていく。
承太郎とて同じことだった。彼は怒っている。どうしよもなく、こらえる必要もなく怒っている。
ここにいる三人は間違いなく性根の腐りきった「悪」だ。
川尻しのぶの放った言葉が上滑りしそうなほどの悪。彼らを悼む家族などいない。彼らが突然良心に目覚めることもない。
殺し合いに巻き込まれたから仕方なくRのでない。
彼らは殺し合いが起きなかったとしても、自ら殺しあいを仕掛けるような人種なのだから!

怒りに震える三人を眺めると、承太郎はポケットからタバコを取り出し一服する。
全員から立ち上る殺気をそよ風のように受け止めながら独りごちる。
「三人同時は『少しだけ』骨が折れそうだな……やれやれだぜ」
余裕の笑みを崩すことなく、しかし内心は怒り狂いながらDIOはザ・ワールドを傍らに呼び出す。
もはや遊びはおしまいだ。死よりも残酷な結末を……ここに描いてみせるッ!
「どんな未来に生きていようとも……どんな過去を辿っていこうとも……! 『世界』を支配するのはこのDIOだッ!」
吉良吉影は己の半生を思い返す。
どんな困難であろうと切り抜けてきた。どんなピンチもチャンスへと変え、この生活を守ってきた。
譲りはしない……! びくびく怯えながら過ごす日は『今日』だけだ。
私は帰るんだ。元の世界に帰って、必ずあの平穏な日々を……!
「私の正体を知られてしまった以上、誰であろうと生かしてはおけない。全員まとめて……始末させてもらおうか」
パキパキ……と音を立てながら体が修復をはじめる。しかし木っ端微塵に砕かれたプライドまでは決して治すことはできない。
突き出た刃物越しにカーズは三人の顔を眺めた。
どいつもこいつもアホヅラを下げてやがる。このカーズの足元にも及ばぬ程の、原始人どもが……ッ!
「簡単には殺しはしないぞ、人間。このカーズを踏みにじったその行い……泣き喚き、許しを乞うほどの後悔を与えてやるッ!」

そこは既にただの洞窟ではなくなっていた。
四人の超人たちによる生き残りデスマッチ。時間無制限。ギブアップなしの一本勝負。
先の戦いの余波で、天井からゆっくりと小石が落ちてくる。そしてそれが地面に落ちたその瞬間!

―――四人の戦いが始まった。

70 :
641 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:21:20 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

一番に動いたのはDIOだった。
承太郎目指し、真っすぐに向かっていく。が、左方向から迫る影を察知し、急停止。
スタンドを構え直したと同時に、上から振り下ろされた刃から身をかわす。
カーズの動きは早い。DIOが足を止めた一瞬の隙に二手、三手と攻撃を畳み掛けてくる。
小刻みに距離を取りながらDIOは考える。カーズは接近戦を仕掛けようとしている。スタンドを持たず、飛び道具もないようだ。
ならば距離を取るのが定石。スタンドがある分、距離を広げれば有利になる。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ! ……なに?!」
「無駄、と言ったか……? 『無駄』と言ったのかァ、DIOォォ〜〜?」
が、しかしDIOは見誤っていた。相手を大きく吹き飛ばそうと放ったカウンター。
巨大なゴムをたたいているような違和感のなさ。見れば叩き込んだ拳にべったりと蠢く肉片が付着していた。
強力な酸を浴びせ掛けられたような熱さを感じ、DIOは歯を食いしばる。
嘲るカーズの追撃を間一髪でさけ、足元に転がっていた岩を放り投げ牽制する。
ようやく距離をとった頃には指先の皮膚は全て喰らい尽されたあとだった。
余裕の表情を見せるカーズ。強敵の出現に表情を険しくするDIO。
「フン、たかが吸血鬼がこのカーズに楯突こうとはなァ……。やめるなら今のうちだぞ、吸血鬼よ」
「柱の男だがなんだか知らんが……頂点に経つのはこのDIOだ。その言葉、そっくり返してやるぞ、カーズ!」

「…………」
「タバコ、やめてくれないか。そもそも吸うのであれば周りの人に一声かけるのが常識だろう」
人有らざる者たちの戦いの脇で、人同士の戦いも始まろうとしていた。
カーズとDIOの戦いを眺めていた承太郎は吉良の言葉に振り向く。
気だるげにこちらを眺める吉良の姿を確認すると、承太郎は黙って二本目のタバコに火を付けた。
吉良はイラついたような表情を浮かべたが、諦めたのか言葉を繰り返すようなことはしなかった。
代わりにキラー・クイーンを傍らに呼び出し、戦いの構えを取る。
ポケットに隠し持っていた小石を爆弾に変えようと手を伸ばす……―――。
「―――!」
「スター・プラチナ」
その一瞬の隙を付き、承太郎が仕掛けた。
時をゼロコンマ止め、一気に吉良の懐に潜り込む。吉良は突然の接近に慌てて後退するが、二人の距離は3メートルもない。
吉良は一瞬ためらい、距離をとることを諦めた。
キラー・クイーンは接近戦を得意としているわけではない。爆発の能力をフルに発揮できない分、戦いにくさは否めない。
「しばッ」
「オラァ!」

71 :
642 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:21:50 ID:tFZwjNi.
連戦と負傷で満足には動けないといえど、それでもやはりスター・プラチナが上をいっている。
キラー・クイーンが振り下ろした手刀を拳で跳ね除ける。続けて放った連撃に、キラー・クイーンは対処しきれない。
二発、三発が入り、キラー・クイーンの体が衝撃に揺れる。吉良の口から苦しげな呻きが漏れた。承太郎は手を緩めない。
だが、キラー・クイーンは吹き飛ばされた衝撃を利用して、逆に後ろに飛び跳ねた。
さらに追ってくるスター・プラチナに対し、無造作に小石を投げつけていく。
どれが爆弾化されたかわからない承太郎は闇雲に突っ込むわけにも行かず、スタンドを止める。
急停止、急後退。承太郎は追撃を取りやめ、カウンターを恐れた。
接近戦ではかなわないと悟っていた吉良は、下がった承太郎に対しむやみに仕掛けない。
そのまま距離をとり続け、爆弾が届く距離で止まった。
再び両者の距離は広まり、承太郎と吉良の間には二十メートル強の間合いが生まれる。
勝負はこの間合いにかかっている。この間合いをいかに保つか。この間合いをいかに詰めるか。
吉良は口元からたれた血をハンカチで拭う。
ポケット内で染みがうつることのないよう、折り目を逆にしてしまいなおす。
一つ一つの動作は冷静だったが、その表情は屈辱に燃えていた。苦々しげにつぶやく。
「なるほど、全てお見通しというわけか……! 私の正体のみならず、キラー・クイーンの能力までもお前は知っていると!」
「どうした、俺を吹き飛ばすんじゃなかったのか……? そんなに離れてちゃ、爆弾どころか煙すら届かないぜ」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
「KUWAAAAAAAAAAAA――――ッ!」
両者の戦いは熾烈を極めていた。互いに吸血鬼、柱の男の再生能力頼みの荒っぽい真っ向勝負。
DIOはカーズの『憎き肉片』に対処するため、ザ・ワールドに二本の斧を持たせていた。
自身もいやいやではあるが拳銃を手にする。直接手を触れずに、確実に息を止めるため。
カーズは既に纏っていたコートを脱ぎ捨て、帽子も放り捨てていた。
肉体を120%フルに活動させ、己の体でDIOをR。体面などを気にしている暇もなかった。
まるでおもちゃを扱うように、ザ・ワールドが斧を振り回す。カーズの刃をはじき飛ばし、首もとめがけ豪快に振り下ろす。
カーズは時に迎え撃ち、時に関節を捻じ曲げ、スタンドの攻撃をいなしていく。同時にDIOへの対処も怠っていない。
DIOも最初の数発でただいたずらに弾丸を打ち込むだけでは無駄と悟り、今では首輪のみを狙った射撃を心がけている。
もちろん隙あらば自身もザ・ワールドに混じり、カーズの体に攻撃を叩き込んでいる。
血が天井までとび赤いシミを作り出す。細かくちぎれた肉片が壁一面にべたりと張り付いていく。
そしてしばらくすると……パキパキパキ、と背筋が凍るような音が洞窟に響いた。
カーズの傷が癒えていく。DIOから流れ出ていた血が止まり、傷口がふさがっていく。
まさに化物どうしの戦いだった。凄まじい轟音を立てながら二人は洞窟内をめちゃくちゃに飛び回り、互いの刃を真っ赤に染めていた。

72 :
643 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:22:18 ID:tFZwjNi.
「『シアー・ハート・アタック』!」
「スター・プラチナ!」
一方人間たちの戦いに動きは少なかった。すり足で間合いを詰める。牽制を細かくいれつつ、後退する。
飛び交う爆弾、立ち込める砂埃で視界は悪い。どちらも強力なスタンドを持ってるが故に不用意に攻撃を仕掛けるわけには行かない。
人間同士だからこその堅実で、しかし息詰まるような戦いは、吉良の仕掛けで崩れた。
左腕から飛び出た不気味なスタンド。
それを見ると承太郎は即座に詰めていた間合いを放棄し、後ろ後ろへ下がっていく。
シアー・ハート・アタックの後を追うようなかたちで吉良も走る。
二つのスタンドによる波状攻撃。ここで一気に仕留める……!
承太郎はさらに後退する。時折、姿が消えたようなあの不思議な能力を発動しながら、彼は逃げていく。
ついには四人が顔を見合わせた天井の高い洞窟を離れ、狭く暗い横穴に消えていく。
吉良にとっては好都合だった。承太郎の攻撃方向を前方のみに限定できる。
間合いを見誤らなければ今までよりもう一歩踏み込んで攻撃できるだろう。
『コッチヲミロォォォォオ――――ッ!』
シアー・ハート・アタックがついに承太郎に追いつく。合わせて吉良も足をはやめる。
たとえスタンド能力を使ってシアー・ハート・アタックをかわしたとしても、必ず隙は生まれる。
承太郎のスタンド能力は連発が効かない。ならばそこをキラー・クイーンで仕留める!
狭い横道に逃げ場所はなかった。承太郎は息を切らせながら後退する。
もう少し……、もう少しでシアー・ハート・アタックが追いつく……!
「今だ、殺れ! 『シアー・ハート・アタック』!」
爆発とともに舞い上がった煙を見て、『殺った!』と吉良は思った。逃げ場などはなく決定的だと彼には思えた。
しかし次の瞬間、吉良はものすごい衝撃を喰らい、ロケットのように吹き飛んだ。
今走ってきたばかりの洞窟を逆戻りし、地面を何度も跳ねながらようやく止まる。
同時に凄まじい痛みが全身を貫いた。腹部、左腕、左手、背中、後頭部……。
フライパンで思い切り殴られたかのような痛みに、情けないうめき声が漏れた。
爆破の余波で舞い上がった煙に紛れ横道から一つの影が浮かび上がる。
のたうつ吉良の視界に移ったのは、殺ったと確信したはずの男の姿だった。
承太郎の左半身はシアー・ハート・アタックの爆破でズタズタに引き裂かれている。
だが、足も腕も、頭も無事だ。ピンピンしている。
それどころかさらに怒りを滾らせ、吉良を始末しようと迫ってくる……!
両者のダメージで言えば承太郎のほうがひどい。吉良は軽傷、承太郎は重症だ。
だがスタンドは精神力だ。心と心のぶつかり合いだ。その点で、吉良にもう勝ち目はもうなかった。
彼の心は完全に折れていた。自分の能力を完全に把握し、秘密を知っている男に吉良は不気味さと恐怖を覚えていた。
戦いは一転、弱腰の吉良を承太郎が追い詰めていく形になる。
吉良はもう攻めていかない。彼の頭にあるのはいかにこの場を切り抜けるかだけだ。

73 :
644 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:22:54 ID:tFZwjNi.
四人は戦った。時折相手を入れ替えて、一瞬のつばぜり合いをし、また戦う。
死力を尽くし、自らを鼓舞しながら戦い続ける。
終りの見えない、嫌な戦いだった。もしも誰かひとりでも倒れれば、四人のバランスは大きく傾き、戦いは終局に向かっていっただろう。
だが終わりは唐突にやってきた。誰ひとり倒れることなく、突然に。そして、唐突に。

「捉えたぞ、カーズ! 『ザ・ワールド』! 時よ、止まれッ!」
幾度の交戦を経て、DIOはフルパワーで時を止め、勝負を仕掛けた。
停止時間五秒をすべて攻撃に回しカタを付ける。
今までほんの一瞬時を止めてもフルパワーで時を止めるようなことはしなかった。
それはDIOならば承太郎の存在が、承太郎にとってDIOの存在が。
互いに時を止め終えた瞬間に時を止め返されたら大きな隙ができるとわかっていたからだ。
しかし長く待ちわびた状況がついに訪れた。
DIOとカーズ、承太郎と吉良。二組は洞窟内の端と端に分かれ、その間は優に三十メートルは離れているだろう。
たとえ時が動き出した瞬間に承太郎が時を止めても距離が大きく離れた今、十分に対処できる範囲内だ。
DIOは時を止めた瞬間、一瞬だけ承太郎の姿を確認する。いける……、今ならば間に合わない!

五秒前 ――― 戦いの余波で崩れ落ちてきた岩石をさけ、カーズのもとへ向かうDIO。
四秒前 ――― 十分間に合う。カーズまでの距離、残り十メートル。
三秒前 ――― DIOの顔に邪悪な笑みが広がった。哀れなり、カーズ……! こいつは自分が死んだことも知覚できない!
二秒前 ――― ザ・ワールドが構えた斧を振り上げる。死刑囚の首筋に叩き込むように斧が迫る!

「な、何ィィィ―――?!」
しかし直前でDIOは二つの違和感に気がついた。馬鹿な、とそう叫びたくなった。
まだまだ時間停止の世界は続くはずだった。途中で途切れたならば自身の消耗が激しかったからと納得も行きよう。
DIOにとって予想外だったのは自身も動けなくなっていたからだ。
斧が振り下ろされたその瞬間に、凍りついたようにすべてが止まったのだ!
「俺が時を止めた。カーズを始末したいのは俺とて一緒だが、お前を好きにはしておけないんでな……」
「承太郎、貴様ァ!」
そして二つ目の予想外は承太郎の行動であった。
大きく離れた位置から彼がしたことは間合いを詰めるでもなく、拳銃をぶっぱなすでもなく……。
なんと承太郎は『放り投げた』のだッ!
今しがたまで相手をしていた吉良のスタンド、『シアー・ハート・アタック』を掴むとDIOの目前めがけ放り投げたッ!
狙いすましたように斧の切っ先で停止した自動爆弾。
たとえDIOが振り下ろすのを止めたとしても、熱源に反応したスタンドは爆発するだろう。

―――そして時は動き出す

74 :
645 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:23:19 ID:tFZwjNi.

そして……直後、凄まじい音と光を発しながらシアー・ハート・アタックが爆発した。
その衝撃は凄まじく、近くにいたカーズとDIOは爆風に吹き飛ばされる。
遠く離れた位置にいた承太郎と吉良も、巻き上げられた砂埃に視界を奪われた。
轟音がとどろきあたりは一面何も見えなくなる。爆破音はいつまでもこだまするかのように、洞窟中を揺らしていた。
いや、違う……! 本当に洞窟が揺れているのだ!
ミシリ、ピシリ……と音を立てて洞窟全体が揺れ始める!
四人の戦いの余波で崩れかけていた洞窟が限界を迎え、今の一撃で完全に崩壊しようとしていた!
すさまじい音を立てて天井が崩れはじめた。次から次へと巨大な岩が、雨あられと降り注ぐ。
戦いを続けることは不可能だった。承太郎はそれでも逃がすものかと、懸命に三人の姿を追ったが後の祭りだった。
影がひとつ、ふたつと横穴に消えていく。承太郎が落ちてくる岩を壊し、かわし進むスピードより、三人の逃げ足の方が上だった。
そして四人の戦いは終わった。
あとに残されたのは手持ち無沙汰の怒りをぶら下げた承太郎と、天井まで積み上がった行き止まりの洞窟のみ……。
誰も死なず、誰も殺さず。痛み分けの、後味の悪い戦いだった。

75 :
646 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:23:49 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

ずるずる…………ずるずる…………―――
洞窟の壁にもたれかかるように進む影がひとつ。体を引きずる音に紛れ聞こえるのは荒い呼吸音、ぴちゃんと液体が滴り落ちる音。
何も知らない人が彼を見たらぎょっとするに違いない。
吉良吉影は満身創痍で息絶え絶え、動いているのが不思議なほどにボロボロの姿をしていた。
何より目に付くのが血だらけの左腕。
手の甲は蜘蛛の巣のように裂傷が走り、上腕部は出血箇所がわからなくなるほどに真っ赤に染められている。
自慢のスーツも台無しだ。泥まみれ、血まみれ、埃まるけ……。時間をかけてセットした髪も、今はだらしなく垂れ下がっている。
ずりずり、と弱々しく進む。目に力はなく、もはや自分の容姿を気にかける余裕すらない。
「この吉良吉影が、なぜこんな目に…………どうして……」
闘争を嫌っていても劣っていると思ったことは一度もなかった。自分の能力をフルに発揮すればいつだって勝利できると、そう思っていた。
だが……見よ、この有様を! どうだ、この現実は!
惨めだった。情けなかった。誰ひとりとして敵う相手などいなかった。
黄金の吸血鬼、刃物を操る超人、最強のスタンド使い……どいつもこいつもこの吉良吉影よりも巨大な力を持っていた。
「くっ……なんでこんなことに……」
ぽたり、ぽたり……。
腕からの出血が止まらない。止血のため乱暴にまいたネクタイは既にたっぷりと血を吸って重くなっている。
滴る血に紛れて、頬を伝う涙が音を立てて落ちた。今、吉良は初めての敗北に打ちひしがれている。
何事も切り抜けられると思っていた。幸運は常に自分に味方してくれると、そう根拠もなく信じていた。
だが違ったのだ……! ここではそんな盲信は通用しない!
植物のような平穏な生活を送っていた彼にとって、まさにここは真逆の世界。
奪い合い! 殺し合い! 吉良は悟った。この期に及んでようやく、自分がどんな状況にいるのかが理解できたのだ……!
「私は、死なないぞ……ッ! 死んでたまるものかッ! 必ずあの平穏な生活を取り戻して……ッ!」
だがそう理解していても、吉良はどこか無用心だった。
怪我を負っているとはいえ、初めて敗北を知ったといえ、だれかの接近に気づかないほどに今の彼には余裕がなかった。
ころころと音を立て、小石が転がってくる。視線を上げ、すぐ目の前までに人影が迫っていることにようやく気がつく。
「空条……さん、じゃないですよね」
噛み殺したような声と共に懐中電灯が吉良の顔を照らす。顔を上げた吉良の視界に映ったのは川尻しのぶの姿だった…………。

76 :
647 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:24:29 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

「…………」
目の前高く埋まった石を見て、承太郎は元来た道を引き返す。もうかれこれ地下道を歩いて十数分はたっている。
承太郎が思った以上に先の戦いの影響は大きかったようだ。行く先行く先で天井が崩れ、元来た道も引き返せなくなっていた。
頼りになるのはコンパス一つのみ。地下地図はしのぶに渡してしまったため、方角のみを頼りに地上に向かうしかない。
走るほど焦ってはいないが、のんびり歩いているほどのんきでもない。
早歩きで分かれ道に向かい、左へ曲がる。ずんずんと道を進み、僅かな物音も聞き逃さないと耳を澄ませる。
まだ体の中で熱は残っていた。それは、確固たる怒り。
カーズ……、DIO……、そして吉良吉影……。
いずれも裁くべき邪悪だ。容赦なく拳を振り上げれる存在だ。改めて問いかける必要もない、完璧な悪。
承太郎はどこかで彼らを求めていた。
徐倫を失った悲しみを思う存分ぶつけられる相手を。自分の不甲斐なさを怒りに変え、躊躇なくぶつけられる悪を。
歩けば歩くほどに、少しずつその事実が承太郎を蝕んでいく。
娘の死にやけっぱちになっている自分。罪滅ぼしのために無謀な何かをしてみたいと思ってる自分。
わかっている……、わかっているとも……ッ!

『徐倫は……そんなことを望んではいやしないッ!』
『わたしは、ひどい母親でした』

頭の中でナルシソ・アナスイの言葉がガンガンと鳴り響いた。川尻しのぶの戒めるような視線が承太郎の体を貫いた。
そうだ、承太郎だってわかっている。とっくに知っていたんだ、こんなことをしてどうなるかなんて。
でも、それでもどうしようもないほどに、承太郎は自分が許せないのだ。
何か目的をもたなければ体がバラバラになって二度と立ち上がれないように思えるのだ。
その場に崩れ落ちて、ズブズブと地面に溶けさってしまいたい気持ちになってしまうのだ。
誰かを断罪せずにはいられない……そして、誰よりも罪を贖うべきなのは…………罪を償うべきなのは…………。

77 :
648 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:24:59 ID:tFZwjNi.

―――娘をこんなことに巻き込んだ、俺自身だ

はたり、と承太郎の足が止まる。どうやら考え事に集中しすぎていたようだ。
気づいた頃には、迫り来る足音がもうそこまでやってきていた。
誰かがそこにいる……。スター・プラチナを呼び出し、戦いの構えを取る。
今は考えている場合ではない。今やるべきことは、とにかく空条邸まで戻り、川尻しのぶと合流すること。
「……川尻さん?」
ぴたりと相手が止まった気配がする。川尻しのぶでは、ない。
痛む左腕をそっと抱きながら、承太郎は一歩、二歩と足をすすめる。
スター・プラチナの驚異的視力をもってしても、この暗闇では相手が誰なのかわからなかった。
しのぶでないしても無害な存在なら一応保護しなくてはならない。
この殺し合いに反している正義のものなら、もしかしたら協力できるかもしれない。
そうでない奴らであるならば…………容赦はしない。たとえ手負いであろうと全力を尽くして……ぶっ潰す。
承太郎の目が妖しく光る。無言のまま、さらに近づいていく。相手が動く気配はしない。さらに一歩……さらに一歩。
そうして懐中電灯が届くであろう距離まで近づいて……

「そこにいるのは誰だ……答えな」

―――相手の顔を照らすように光を掲げ、次の瞬間、承太郎の息が止まった。

手から滑り落ちた懐中電灯が地面で跳ね上がり、何もない空間を照らす。
ジジジ、ジジジと熱線がこげるような音が聞こえ、当たり所が悪かったのか、懐中電灯が消える。
暗闇に包まれる洞窟の中、見えるのはぼんやりと浮かんだお互いの影だった。
視界が遮られ、不自然にお互いの呼吸だけが鼓膜を揺らす。
ドクンドクンと異常な速さで心臓が早鐘を打った。
尋常でないスピードで、体の隅々めがけ血流が回っているのが承太郎にはわかった。
懐中電灯を取り上げようとする手は震えていた。
承太郎は懐中電灯が壊れてないことを確かめるともう一度目の前の影に光を向ける。

―――……徐倫

そこにいたのは空条徐倫だった。
青ざめた顔、震える両の肩、ほどけた髪の毛。自分に似た目の色をもった……まぎれもない空条徐倫が自分を見つめていた。

承太郎の中で時が止まる。何も考えられない。目の前の光景が信じられない。

チクタクチクタク……デイパックの中で動き続ける時計の音があたりに響いた。
どちらも動かなかった。誰も動けなかった。
二人はバカみたいな格好のまま、それでも互の姿を目に焼き付けるようにいつまでも見つめ合っていた……。

78 :
649 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:25:23 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

―――空条徐倫は死んでいる。それは紛れもない事実だ。だとしたら考えられるのは……スタンド能力、か。

マッシモ・ヴォルペは冷静にそう結論づける。
放送で読み上げられたならそれは動かしようもない、確固たる事実のはずだ。
ならば承太郎がどれだけ望もうと、どれだけ願おうと、今彼が目にしている少女は少なくとも彼が望む『空条徐倫』ではない。
もちろん承太郎とてそんなことは分かっているはずだろう。だからこそ、ヴォルペは次の反応を息を潜めて待った。
ヴォルペはずっと見ていたのだ。
DIOに連れられてこの地下に入り、DIOが承太郎と戦うところを見ていた。鬼気迫る表情で怒りの拳を振るう承太郎を見た。
戦いが終わり、腕をかばいながら歩く承太郎を追った。瓦礫で先がふさがっていても、冷静に対処するその姿も見てきた。
―――だが……この状況でどうする……? お前は今何を考えている、空条承太郎……?
ヴォルペは気づいていなかった。目の前の現象に『夢中』になるあまり自分自身の大きすぎる変化に、彼はまだ気づいていなかった。
ヴォルペは自分に感情なんてないと思っていた。感情がないならば執着もない。感情がなければ冷静さを失うこともない。
だが今や彼は承太郎の一挙一動に『夢中』であった。
彼の苦痛に歪む表情が、怒りに染まった瞳が、血だらけになった両の拳が……その全てから目が離せなくなっていた。
ヴォルペは開花しつつある……。
その魂の奥底に撒かれた邪悪の花は、DIOの手に掛かり、承太郎という餌を喰らい、今おおきく花開かんとしている。
ヴォルペの右肩に乗った『マニック・デプレッション』が怪しげな笑い声を漏らした。
誰に聞かれるでもないその邪悪な声はヴォルペ自身をも通り抜け、洞窟の暗闇の中、木霊し続けていく……。
ヴォルペは学んでいる。憎しみという感情を。嫉妬という感情を。
そして……誰かを『壊してみたい』という邪悪な想いを……。

79 :
650 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:26:06 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

愚痴の一つも言いたくなるもんだ、とホル・ホースは小さな声で毒づいた。
だらだらと冷汗が流れ、シャツをぐっしょりと濡らしていく。さっきシャワーを浴びたばかりだというのにこのざまだ。
慎重に、相手に悟られることのないよう、ホル・ホースはもう一度身を乗り出す。
はるか遠く、視線の先にいたのは学生風の東洋人と……あの『ヴァニラ・アイス』だった。
(どうしてこんなんになっちまったんだよ、まったくよォ……)
徐倫を追って教会を飛び出したものの、既に彼女の姿は見えず手当たり次第あたりを駆け回った。
どこをどう探しても見つからず、諦めようかと思っていた頃に人影を見つけた。
しめた! と思ったものの見つけたのは最悪も最悪、『あの』ヴァニラ・アイスだ。
能面のように固い横顔を見つめながら、ホル・ホースは震え上がる。
(DIOに首ったけのあのヴァニラ・アイスのことだ……見つかったらただじゃすまないに決まってる!
 そのうも、お供もついてるってもんだ。一対一ならまだしも二対一じゃ多勢に無勢だぜ……。
 ああ、クソ……徐倫のやろう、見つけたらただじゃおかないぜ……あんちくしょう〜〜〜!)
物音を立てないよう、もう一度木の陰に隠れなおす。
このままやり過ごすべきか。そもそもやり過ごせるのだろうか。
仕掛けるとしたらもう少し引きつけてか? いやいや、これ以上近づかれたらまずい。この距離なら『エンペラー』でやつのどたまを……
だが待て、逆方向から弾丸をぶち込めばそっちに向かってくれるのでは? 無理に戦う必要なんてない。
ここをやりすごせれば俺としては……―――
しかし、ホル・ホースの思考は突然そこで破られた。
ウニョン、と嫌な感触を足元に感じる。生暖かい息遣いと対照的に湿った手触り。
見下ろしてみれば泥のスーツをまとった男がホル・ホースの足首を掴んでいた。
二人の視線がぶつかりあう。突然のことに、ホル・ホースの思考が止まる。
泥の男としても掴んだものがホル・ホースであったことが予想外だったのか、固まっている。
二人とも動くに動けない、奇妙な沈黙が漂う。
そして―――
「うぉおおおおおおおおおお―――ッ!?」
立て続けに銃声が三発、叫び声が二つ。それを聞いた遥か遠くの二つの影が止まる。
ヴァニラ・アイスは立ち止まると形兆に合図を送った。バッド・カンパニーが一斉に動き出す。
ホル・ホースの不幸はまだまだ続きそうだった。

80 :
651 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:26:37 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇

 ぱちぱちぱちぱち……―――(拍手の音)

 ◇ ◇ ◇

81 :
652 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:27:04 ID:tFZwjNi.


 ぱちぱちぱちぱち……―――乾いた拍手の音が洞窟内に反響する。
「ご苦労、戻ってこい、『オール・アロング・ウォッチタワー』」
働き蜂が巣に戻ってくるように、どこからともなく一枚、また一枚とトランプのカードたちが姿を現す。
小言や愚痴を吐きながら、ムーロロの持つ帽子の中へと飛び込んでいくスタンドたち。
はるか遠くまで飛ばしていたカードもあって、完全撤退には時間がかかった。
ハートのクイーン、クローバの8、ダイヤの10……そうして、よろよろと最後の三枚が帽子の中に入っていった。
それでもムーロロは微動打にせず数十秒待った。が、それきり帰ってくるカードはいなかった。
ムーロロは眉をひそめる。足りない。スペードのキングがまだ帰ってきていない。
「ひょっとして君が探しているのは……コレのことかな?」
即座に振り返る。と、同時にものすごい速さで一枚のトランプカードがムーロロの足元に突き刺さった。
地面に突き刺さったまま、スペードのキングが弱々しく呻く。
ムーロロはちらりとそれを眺めると、目の前に立つ男に向き直った。
DIO。本名はディオ・ブランドー。
ジョナサン・ジョースター、空条承太郎を尾行させていてた時に仕入れた情報を思い出す。
相手に悟られない程度に舌打ちをした。考えうる中で最悪最強のやつと、よりにもよってこのタイミングで会ってしまうとは……。
ムーロロは後ずさりたくなる衝動をこらえて目の前の敵をじっくりと眺めた。
王者の風格、強者としての自信……なるほど、凄まじいわけだ。先の激戦を思わせるものは何もない。
疲弊をものともせず、堂々とした態度に気負いそうになる。だが、ムーロロは呼吸を繰り返すと冷静に頭を働かせ始めた。
決して敵わない相手ではない。
ムーロロが事前に調べ上げた情報と、この『オール・アロング・ウォッチタワー』があれば勝てる。
そう、ムーロロは確信した。そして、確信した同時に奇妙な虚しさがどこかから湧き上がってきたのを感じた。
「血肉湧き踊る戦いだったろう……楽しんでもらえたかな、『カンノーロ・ムーロロ』君?」
「…………!」
「おいおい、そんな驚くなよ……そんな難しいことじゃあない。ヴォルぺを知っているだろう?
 彼が教えてくれたんだ。当然君も知っているはずだ。
 なんせ私たちを、この六時間、それ以前から監視していたんだからなァ」
手負いだというのにDIOはそんなことを気にかけず、無用心にムーロロに近づいてくる。
ムーロロは背中に手を回し、集めたばかりのスタンドたちをふるい落とした。同時にポケットに『亀』がいることを確認する。
DIOは気がついているのだろうか。それともあえてムーロロの好きなようにやらせているのだろうか。
だとしたら舐められたものだ。もっと俺のことを見下すがいいさ、と内心で毒づく。
DIOが油断すれば油断するほど勝機は増える。生き残る確率は高まっていく。
「彼が君のことを教えてくれたよ。君自身のこと、君のスタンド能力について……。
 ありとあらゆる知っている限りのことを洗いざらいね」

82 :
653 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:27:30 ID:tFZwjNi.
二人の距離が縮まっていく。闇に紛れて何枚かのスタンドたちがDIOの背後に回る。
それ以外はムーロロの足元で待機。急襲時に壁になり、迎撃にも備えさせる。勝負は一瞬だ。
DIOが『時を止める』にはどうしたって一呼吸が必要なのだ。戦いの中でその「くせ」は見抜いている。
その瞬間にムーロロは自らを囮にし隙を生み出す。そして……喉元をかっきり、腕を切断し、バラバラに引き裂いてやるッ!

「どうだい、カンノーロ・ムーロロ……ひとつ、提案なんだが……」

もう少し……もう少し……―――今!
DIOが間合いに踏み込んだ完璧のタイミングで、四方八方から51枚のスタンドカードが襲いかかった。
ザ・ワールドの精密性とスピードをもってしてもすべてをはじき飛ばすことはできない。
DIOはあまりにたやすくムーロロの間合いに踏み込みすぎた。ムーロロはやった、と思った。
拍子抜けるほど簡単だ、とムーロロはその瞬間に違和感を覚えた。
達成感と同時にどこか虚しさすら覚えるほどだった。またこうやって俺は殺しを重ねるのかとがっかりしたほどだった。

だが……―――

「私と友達になってみないかい……?」

ムーロロが予想した以上に、DIOの時を止める能力は優れていた。
もう一秒、早ければ殺ったとは言わずとも両腕を吹き飛ばすぐらいは出来たかもしれない。
気がつけばトランプたちに埋もれるはずだったDIOの姿は掻き消え、ムーロロの目の前にその姿はあった。
ほんの一メートルもない距離に、その黄金の姿を見せつけるように彼は立っていた。その顔に満面の笑みを貼り付けて。
DIOは焦るふうでもなく、なんでもない感じでムーロロの肩に手を置く。
お気に入りの甥っ子をながめるように少しだけ目線を下げるとまっすぐムーロロと目線を合わせる。
いつのまにかのびた腕はがっちりと両肩をつかみ、例え殺されようと離さないにと言わんばかりの意志の強さが腕から伝わってきた。
ムーロロはDIOを見る。DIOはムーロロを見た。
考えてみれば二人共、直接こうやって互の姿を見ることは初めてのことだった。
真紅で縦長の切れ目はまるでオパールのように美しい。
瞳に反射した自分の顔が写り、ムーロロは『無様に狼狽している自分』をそこに見た。
沈黙が辺りを覆った。たっぷり三十秒はそのまま二人は向かい合い、DIOは手を離した。
そうして彼は満足げに頷きを繰り返すと、囁くようにこういった。

83 :
654 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:28:00 ID:tFZwjNi.
「なんて『恥知らず』なんだ、君は」

それは『未来から』の伝言であり、『送られる』はずの言葉だった。
ジョルノ・ジョバァーナがカンノーロ・ムーロロに宛て、贈るはずだった言葉だ。
ムーロロの底知れない闇と、虚しさを知り、そこから救い出すべく差し出した言葉。
だが時をこえ、因果を超え……・今、その言葉が新たなものから彼に送られようとしている。
ムーロロは動けない。雷に打たれたかのように、彼はその場に凍りついたままだ。

(見破られた、この男に。自分のこのうっすぺらな根性が……! 全て! 包み隠さず!)

時が止まった空間を切り裂くよう、スティーブン・スティールの声が聞こえた気がした。
だがそんなことすらムーロロにはどうでもいいように思えた。
今はただ息を潜めて待つだけだ。自分の目の前に立つ男が何を言うか。
DIOは放心するるムーロロを眺め、笑みを深めた。
子供をあやすような優しい声音で彼は今言ったばかりの言葉をもう一度繰り返す。
「友達になろうじゃあないか……、カンノーロ・ムーロロ君……?」

84 :
655 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:28:26 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇



【D-4とD-5の境目 地下/一日目 昼】
【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:服一式
[道具]:基本支給品×5、サヴェージガーデン一匹、首輪×4(億泰、SPW、J・ガイル、由花子)
    ランダム支給品3〜7(億泰+由花子+アクセル・RO:1〜2/カーズ:0〜1)
    工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.首輪解析に取り掛かるべきか、洞窟探索を続けるか。
1.柱の男と合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。
3.自分に屈辱を味わせたものたちを許しはしない。

85 :
656 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:30:56 ID:tFZwjNi.
【D-4中央部 地下/一日目 昼】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:左半身火傷、左腕大ダメージ、全身ダメージ(中)、疲労(大)
[装備]:煙草、ライター、家出少女のジャックナイフ
    ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
658 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:32:11 ID:tFZwjNi.
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3
    ランダム支給品3〜6(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸で川尻しのぶと合流する?
[備考]
※ドルチの支給品は地下地図のみでした。現在は川尻しのぶが所持しています。
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.混乱
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者はR? とりあえず今はホル・ホースについて行く。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
※少しずつ記憶に整理ができてきました。

【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:空条承太郎に対して嫉妬と憎しみ?、DIOに対して親愛と尊敬?
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい。
0.DIOと共に行動。
1.空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい 。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。

86 :
659 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:32:29 ID:tFZwjNi.
【D-5 南部 地下/1日目 昼】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左腕より出血、左手首負傷(極大)、全身ダメージ(極大)疲労(大)
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.けがの治療のため、地上を目指す。
1.優勝を目指し、行動する。
2.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中)、疲労(小)すっぴん
[装備]:地下地図
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
0.地下道を抜け、空条邸で承太郎を待つ。
1.どうにかして承太郎を止める。
2.吉良吉影にも会ってみたい。

87 :
660 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:33:14 ID:tFZwjNi.

【E-2 GDS刑務所付近/1日目 昼】
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:健康
[装備]:タバコ、ライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
0.なんとかしてこの場を切り抜ける
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.オブジェを壊された恨み。吉良をR。
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。  
※それぞれの死体の脇にそれぞれの道具が放置されています。
 ストレイツォ:基本支給品×2(水ボトル1本消費)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
 リキエル:基本支給品×2
【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
0.虹村形兆と合流、ジョースター一行を捜索、殺害する。
1.DIO様の名を名乗る『ディエゴ・ブランドー』は必ず始末する。
【虹村形兆】
[スタンド]:『バッド・カンパニー』
[時間軸]:レッド・ホット・チリ・ペッパーに引きずり込まれた直後
[状態]:悲しみ
[装備]:ダイナマイト6本
[道具]:基本支給品一式×2、モデルガン、コーヒーガム
[思考・状況]
基本行動方針:親父を『R』か『治す』方法を探し、脱出する?
1.隙を見せるまではDIOに従うふりをする。とりあえずはヴァニラと行動。
2.情報収集兼協力者探しのため、施設を回っていく?
3.ヴァニラと共に脱出、あるいは主催者を打倒し、親父を『殺して』もらう?

88 :
661 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:33:39 ID:tFZwjNi.
【ペット・ショップ】
[スタンド]:『ホルス神』
[時間軸]:本編で登場する前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーチ&デストロイ
0.???
1.DIOとその側近以外の参加者を襲う
【サーレー】
[スタンド]:『クラフト・ワーク』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
【チョコラータ】
[スタンド]:『グリーン・デイ』
[時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:健康
[装備]:アヌビス神
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ティッツァーノを殺したやつをぶっ殺した、と言い切れるまで戦う
0:???
【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
[備考]
※肉の芽を埋め込まれました。制限は次以降の書き手さんにお任せします。
※ジョースター家についての情報がどの程度渡されたかもお任せします。

89 :
662 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:34:49 ID:tFZwjNi.

【E-3とD-3の境目 地下/1日目 昼】
【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、『ジョースター家とそのルーツ』
    川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5〜15)
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.???
1.情報収集を続ける。
2.誘導した琢馬への対応を考える。
[備考]
※回収した不明支給品は、
 A-2 ジュゼッペ・マッジーニ通りの遊歩道から、アンジェリカ・アッタナシオ(1〜2)、マーチン(1〜2)、大女ローパー(1〜2)
 C-3 サンタンジェロ橋の近くから、ペット・ショップ(1〜2)
 E-7 杜王町住宅街北西部、コンテナ付近から、エシディシ、ペッシ、ホルマジオ(3〜6)
 F-2 エンヤ・ガイル(1〜2)
 F-5 南東部路上、サンタナ(1〜2)、ドゥービー(1〜2)
 の、合計、10〜20。
 そのうちの5つはそれぞれ
 『地下地図』→マーチン
 『図画工作セット』→アンジェリカ・アッタナシオ
 『サンジェルマンのサンドイッチ』→ホルマジオ
 『かじりかけではない鎌倉カスター』『川尻家のコーヒーメーカーセット』→エシディシ
 のものでした。
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
0.???

[備考]
※地下道D-4付近一帯が崩壊しました。ひょっとしたら横道を使って通り抜けれるし、通り抜けれないかもしれません。
663 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:36:22 ID:tFZwjNi.

90 :
投下乙でした。
したらばで指摘があったので止まっていたようですが、あと少しだったのと、私にも多少質問があったので代理投下しきってしまいました。
吉良VSセッコの件と同様に物語の根幹に関わる指摘で申し訳ないのですが、そもそもDIOはどうやってD-4まで行ったのでしょうか?
GDS刑務所から中央の洞窟へのルートはありませんし、下水道を使ったとしても川を越えられません。
だからこその状態表の「セッコが戻り次第、地下を移動して行動開始」だと思うのですが・・・
他にも、チョコラータと合流したい、という状態表もあったのですが、何の説明もないままチョコラータに肉の芽だけ植えて別れてしまっているのも、些細ですが気になりました。
あと最後のムーロロの場所についてですが、前話で「C-4 川沿い『亀』の中」にいたにもかかわらず、今回は「E-3とD-3の境目 地下」まで移動し、描写を見るに亀から出ています。
前話で「C-4」へ琢馬を誘導しておきながら、特に意味もなく移動するのは不自然に思えます・・・
リレー前のDIOと承太郎の位置もかなり離れていましたし、書きたいが先行して少し無理のあるリレーになっているのではないかという印象を受けました。
話自体は抜群に面白いので、前向きに検討願います。

91 :
乙です
いや・・・圧倒されました。マジおもしろかったです
いろいろと話が動きましたが、吉良としのぶの今後が気になりますね

92 :
乙です。
すごい…面白かった…つ続きお待ちしてます

93 :
遅れてしまい申し訳ありません。
タルカス、イギー、ジョルノ 投下します

94 :
 影が二つあった。一つはとても巨大な壁で、どんな大男が並んでも小さく見える程だったが、その頭は下を俯いていた。彼の名はタルカス。歴戦の勇士だ。
 もう一つはとても小さな影で、遠くから見渡すと見えなくなる程小さいが、大男とは対照的に不適な眼差しは前を見続けている。彼(犬)の名はイギー、自由気ままに生きる砂の愚者だ。
 あらゆる意味で対照的で、とてつもなくアンバランスな組み合わせに見える二人は、ひたすら歩き続けていた。同時刻に行われている幾つかの激しい闘争に遭遇する事もなく、またそれを避けるかの様に、当てのない足は北へと進んでいた。
その理由は、タルカスが大事そうに抱えているもの。ほんの少し前までは生命の音を振動させ続けていた亡骸に答えがあった。
「人のこないところに埋葬をしたい……戦いに巻き込まれない様なところに……いや、殺し合いの舞台で、そんな場所などないのかもしれないが」
 
一度、シンガポールホテルの周辺に安置し、そのまま行こうと考えていたのだが、タルカスにはそれができなかった。
殺戮者が集まるかもしれないこの周辺で、スミレが傷つくのを見たくなかった。
 重荷である事を承知し、スミレの遺体を抱え、人が少ないであろう北端への移動を決めた。
 問題があるとすれば、彼が重傷であることだ。常人ならばまともに歩く事が出来ない程の怪我を負っていることだ。
大砲の様な豪腕は片方が使い物にならなくなり、大樹の様な足は部分的に肉や骨が削げて落ちている。
第三者が見たら『再帰不能』と言うかもしれない。立っているのが奇跡ではないか、そう思えるくらいに。
(ケッ、わかんねーおっさんだぜ。そいつを守れなかった事がそんなに悔しいのか?
過ぎたモンを気にしたって何の特にもなりゃしねーのによ。
自分の身体を客観的に見れねーのか?そのガキを抱えるだけでも辛い筈だぜ)
彼(犬)のいう事は正しい。全く持ってその通りなのだ。それでもタルカスは歩みを止めない。
不意に、タルカスが姿勢を崩した。巨大な体の歩行による衝撃を、負傷した足が支えきれなくなったのだ。

95 :
(そら見た事か、今までそうならなかったのがおかしいくらいだぜ。どれ、ご機嫌伺いに顔を見に行って……!?)
転倒したタルカスに近づき、顔を覗き込んだイギーは、思わず飛び退いてしまった。理由はシンプルである。
(こいつ、なんて顔してやがる!)
タルカスの顔は、戦闘による負傷もあったが、それだけに留まらなかった。
眼は血液と涙が混ざり、なんとも形容し難い色となっていた。唇は裂けんばかりの力で噛み続け、奥から除く歯は絶え間なく軋み続ける。噛み切った唇からこちらも血液と唾液が流れ続け、力を入れすぎた首の筋肉は異様に盛り上がっている。
鬼神か悪魔か、人間とは一線を隠した様な何かが、そこにはあったのだ。
立ち上がる。タルカスが立ち上がる。負傷を意に介する事なく立ち上がる!
「スミレの体は必ず故郷に連れて帰る! 俺に人の心を思い出させてくれたお前を、決して他の者達に穢させはしない!」
 混じり気のない、とても悲痛な叫びだった。せめてもの願いだった。
女王を奪われ、少女を奪われ、誇り高き戦友を失った。なにもかもを取り上げられた彼の、正に執念であった。
「俺は決して許さん!無垢なるスミレを命奪った奴をッ!スミレを巻きこんだ主催者をッ!
そしてブラフォード!魔道に落ちた貴様を!必ず殺してやるッ 一片も残らず殺し尽くしてやるッ その全てを成し遂げるまで、この足を止める訳にはいかんのだ!」
大切な者を奪った者への殺意。奪い返す為の闘争。ベクトルは異なるものの、『復讐』という一点でのみ、彼は盟友であるブラフォードと並び立った。
(ク、クレイジーな野郎だぜ……動かねえ自分の右腕にパンチを入れて、無理矢理動かしてやがる。それにあのツラだ。ニューヨークにいる野良犬共の方がまだ『人間』らしい顔ができるってもんだぜ)
イギーはタルカスから離れる事を考えたが、自分を庇護し、使い捨ての盾となる人間から離れたら楽が出来ないという日和見的思考により、結局はタルカスについていく事にした。先ほどよりも数メートル程距離を放した状態ではあるが。
それから数時間タルカスの顔は歪んだまま動かず、2人、正確には1人と1匹は一言も言葉を発する事はなかった。
◆◆◆

96 :
(双首竜の間……地図を見たときは我が眼を疑ったが、俺のよく知るあの双首竜の間であるならば、一時的にスミレを埋葬しておくにはよいかもしれん)
血腥い場所ではあるがな、と自嘲的に付け足した。
 彼等の現在地は、地図で指し示す所のB-2にあたる。
スミレを人気のないところに埋葬するために北上したタルカスは、地図からの情報でA-2にあたるエリアに双首竜の間があることを知る。
どこに行っても争いが起こるなら、血に飢えた参加者が多くこないであろう北端で、自分がよく見知った双首竜の間に埋めた方が気休め程度にはなる。
距離は離れてはいたが、その想いがタルカスの足を進めた
「犬公よ、礼を言うぞ。文句の一つも言わず、よくここまでついてきてくれた。元の場所に帰れるかどうかはまだわからんが、それまでは俺がお前を守ろう」
数時間ぶりにでた言葉は労いの言葉だった。晴れやかとは言い難いし、まだ表情に深い影が残ってはいるが、先ほどに比べれば幾分かはマシなものだった。
 頼るものができて安心した。そんな顔を見せたイギーは、無骨な腕に頭を撫でられる。
人懐っこい(様に見せている)その顔に、タルカスはほんの少しだけ安堵する。ふと思い浮かんだ事を口にする程、気持ちが緩まった。
「そういえば犬公、お前の名はなんという?」
言った後に彼は気づく、言葉が通じる訳ではないのだ。名前もない犬公呼ばわりでは良い気持ちはしないだろう、という彼なりの気遣いではあったが、その気持ちは、彼からそんな簡単な事実も忘れさせていた。
(何言ってんだこの野郎は、犬の俺に話が出来る訳ねーだろこのマヌケッ!)
それに対するイギーの感想は、砂の様に乾いていた。無論表情は取り繕っている。
(テメーみたいなおっさんの感謝なんかいらねーよ。イイ女連れてこいってんだ。それに名前を教えろだあ?図々しいんだよ!)
言葉を発せないイギーでも、名前を伝える方法はある。その特徴的な鳴き声は相手に人名を連想させる事だろう。しかし、イギーはそれをしない。
(出会ってまだちょっとのおっさんにそう簡単に名前を教えられるか。いいからテメーは黙ってそのでかい体で俺を守ってくれりゃいいんだよ!)
以上は、イギーが頭を撫でられている間の数秒の思考である。
◆◆◆

97 :
そうこうしているうちに、双首竜の間、騎士達の修練場が見渡せる場所が見えてきた。背の高い建物は、来訪者の目に嫌でも焼き付く。
名前を見ただけでは半信半疑だったものの、その外観はタルカスの記憶と寸分も違わない。
タルカスは、まるで昔に戻った様な錯覚を感じていた。
処刑される遥か前、主君と認めた女王が健在で、戦友と共に修練を繰り返した青春の日々を。
『そら見ろブラフォード、やはり小手先の技だけでは限界があるのだ!』
『抜かせタルカス、力押しだけの貴様に我が剣技が見切れるか!』

それは、とても遠い昔の日々。
天涯孤独だった二人の騎士は、ようやく築く事ができた生きる意味の為に、技を磨き続けた。
「ブラフォードよ……もうあの頃には戻れんのだな……」
この数時間。顔に出さない様努めてはいたが、やはり彼は悲しんでいた。変わり果て、悪魔もぶっ飛ぶ復讐鬼と化したブラフォード。
呪縛から解放する為に手をかけなければならないことに、深い悲しみを感じていた。一度違えた道は、もう元には戻らないのだと。
それでも彼は顔を上げた。沈みきった心が晴れないまでも、せめて逃げる事はしないようにと、真っすぐ前を見ることにした。
嘗ての威光や誇りはもうない。守るべき者も失った。それでも、戦う理由だけは残されていた。
「犬公よ、もう暫しだけ付き合ってくれるか?」
黙って後ろについてくるその行動を、肯定のサインだと解釈し、建物へ向かった直後、イギーが吠えだした。お利口で無害な犬の振りを続け、沈黙を保ってきただけに、その声はタルカスに嫌な予感を抱いた。
何事かと思い、振り返ったタルカスの目に、人影が躍り出た。もしもこれが知らない顔であったなら、敵であれ味方であれ、冷静さを保ったうえで対応が出来た事だろう。しかしそうはならなかった。
「僕の姿に疑問を抱いていると思います。しかしまずは話を聞いて欲しい」
 そこにあった顔が、参加者全員が見守る目の前で爆裂死した筈のものだからである。
◆◆◆

98 :
支援

99 :
数時間程時間を遡り、視点を変える事にする。
ウェザーに別れを告げたジョルノは、ミスタ達との合流場所であるダービーズカフェへと引き返していた。
指定した時間はとっくに過ぎているが、他に目処が立っている訳でもなく、合流する機会を失いたくなかったがゆえの選択である。
僅かな期待を持ちながらカフェへ戻ったジョルノだが、当然のようにもぬけの殻であり、少し前にカフェを後にした状況と変わりはなかった。
別れてからの時間経過から考えて、何者かに襲われた可能性が高いと判断し、ジョルノの思考はその回転速度を上げる。
あせってパニックになってはいけないが、のんびりしているわけにもいかない。ウェザーと誓った約束。それを守る為に、一つの場所に留まるという事があってはならないのだ。
 思案した末、確実性は低いが、メッセージを記す事にした。文面はこう記されている。
『第3回放送 ボートに乗った場所』
『第4回放送 鏡の男』
ミスタとの情報交換による時間のズレを考慮した結果の文面である。
『ボートに乗った場所』とは、ブチャラティがディアボロを裏切り、チームのメンバーにボートに乗るか否かの問いを行った場所、すなわちD-2に位置するサン・ジョルジョ・マジョーレ教会を意味する。
『鏡の男』とは、鏡を使うスタンド使い=イルーゾォとの戦闘があった場所、F-6に位置する悲劇詩人の家を指す。ミスタはこの戦闘に直接参加した訳では無いが、チームの間で情報が共有されている事は言うまでもない。
つまり、第3回放送と第4回放送時に上記の場所に集まる、といい事だ。
このメッセージの意味はこの2つを経験しているチームのメンバー以外に知り得る事はなく、他の人物には意味のわからないメモとなる。
同行しているミキタカを考慮に入れていない内容だが、今もミスタと共に行動していることを祈るしかない。
(後は『これ』を使う。使う事によって、メッセージの伝達をより確実にする)
 
ジョルノは何かの切れ端を掴み、『ゴールド・エクスペリエンス』を発現。右の拳で軽く触る。
 切れ端の正体は、情報交換の際、ミスタのブーツの一部分を拝借したものである。(話をした時、かなり嫌がられた)
 蠅へと姿を変えた切れ端に、先程書いたメモと同じ内容の紙切れを蠅の体に目立たない様に巻き付ける。切れ端は持ち主であるミスタの元へ向かい、メモを持ったメッセンジャーとして機能する。
(これでカフェにミスタがこなくても、時間差で伝わるようになる。ゴールド・エクスペリエンスの習性から蠅は一直線にミスタに向かい、他者に発見されるリスクもほぼゼロになる)
しかし、これでも確実とは言い難い。他の参加者に潰される可能性も、僅かながら存在する。そうなったら、短時間での合流は諦めるしかないだろう。 
テーブルへの書き置きと、メッセンジャーの蠅。二重の網を編み終えた。後は行動行動するしかないといわないばかりに、ジョルノは歩き出そうとする。

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