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2013年06月なりきりネタ139: 【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン (113)
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【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン
- 1 :2013/03/29 〜 最終レス :2013/06/07
- 統一基準歴355年。
魔法文明は隆盛を極め、あらゆる場所、場面に魔法が活用されていた。
そんな栄華の果てにいつしか異変が起きる。
確認されたのは20年前にもなるだろうか?
ある属性の魔法に異常なまでの適性を示す。
ある魔法を生まれつき能力として有している。
未知なる力に開眼する。
今までは天才と言われて来た種類の子供たちが、続々と生まれ始めたのだ。
このことに世界は大いに恐れ、憂慮した。
なぜならば、本来数十年単位の修行と研究の果てに身につけていく力を僅か数年の学習で身につけてしまうのだ。
あるいは持って生まれてくるのだ。
修行と研究は何も力を得るためだけの時間ではない。
力を振るう為の経験や知識をも身につけるための時間でもあるのだ。
仮に、今は凡人同然であったとしても、何かのきっかけで潜在能力が一気に発現することもある。
大きな力を当たり前のように使える事への危惧は、やがて現実のものとなる。
世界各地で引き起こされる悲劇に、統一魔法評議会は一つの決定をなした。
魔法学園の開設!
魔海域を回遊するとも、海と空の狭間にあるとも言われるフィジル諸島に魔法学園を開校し、子供たちに学ばせるのだ。
己が力を振るう術を。
―――― 【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン ――――
- 2 :
- ■舞台はファンタジー世界。謎多きフィジル諸島にある全寮制の魔法学園です。
フィジル付近は気流や海流が乱れがちなので、島には基本的に、転移装置を使ってくる場合が多いです。
※11thシーズンは学園のあるフィジル本島ではなく、フィジル諸島内のどこかの島に出向いています。(後述)
■学園が舞台だからといって参加資格は学生キャラのみではありません。
参加キャラは生徒でも、学園関係者でも、全く無関係な侵入者でも可。敵役大歓迎。
また、舞台が必ずしも学園の敷地内で起きるとは限りません。
いきなり見知らぬ土地に放り出されても泣かないで下さい。 貴方の傍にはいつも名無しさんと仲間がいます。
■当学園には種族制限はありません。お好きな種族と得意分野でどうぞ。
■オリジナルキャラクターでも版権キャラクターでも参加できます。
完走したスレのキャラを使ってもOKですが、過去の因縁は水に流しておきましょう。
また版権キャラの人は、原作を知らなくても支障が無いような説明をお願いします。
■途中参加、一発ネタ、短期ネタ大大大歓迎。
ネタ投下の場合、テンプレは必ずしも埋める必要はありません。
ただしテンプレが無い場合、受け手が設定をでっち上げたり改変したりする可能性があります。ご了承を。
■名無しでのネタ投下も、もちろん大歓迎!
スレに新風を吹き込み、思いもよらぬ展開のきっかけを作るのは貴方のレスかも!
■(重要)
このスレでは、決定リール、後手キャンセル採用しています。
決定リールとは、他コテに対する自分の行動の結果までを、自分の裁量で決定し書けるというものです。
後手キャンセルとは、決定リールで行動を制限されたキャラが、自分のターンの時に
「前の人に指定された自分の未来」を変えることが出来るというシステムです。
例:AがBに殴りかかった。
その行動の結果(Bに命中・ガード・回避など)をAが書く事が可能です。
これを実行すると、話のテンポが早くなるし、大胆な展開が可能となります。
その反面、相手の行動を制限してしまう事にもなるので、後からレスを書く人は、「前の人に指定された行動結果」
つまり決定リールをキャンセル(後手キャンセル)する事が出来ます。
先の例に当てはめると、
AがBに殴りかかった→Bはまともに喰らって受けては吹き飛んだ。
と決定リールで書いてしまっても、受け手(B)が自分の行動の時に、
「Bはまともに喰らったように見えたが紙一重で避けていた」
と書けば、先に書いたレスの決定書き(BはAの拳をまともに受けては吹き飛んだ。)をキャンセル出来るのです。
ただし、操作する人の存在するキャラを、相手の許可無く決定リールで喋らせるのは歓迎されません。要注意です。
※参加に関して不安があったり、何かわからないことがあったら(説明が下手でごめんね)、どうか避難所にお越しください。
相談、質問、雑談何でもOKです。気軽に遊びに来てね。
- 3 :
- 前回までのあらすじ
魔法学園があるとされるフィジル諸島は、謎に包まれた場所だ。
島の周囲は魔海で危険すぎて船もまともに近寄れない。
空を飛ぼうにも奇怪な暴風や魔法無力帯があったりするので危険だ。
正確な位置は誰にもわからない。
本島への移動は、転移魔法陣を用いて行われているからだ。
学園や商業区が置かれている本島の周囲には、大小さまざまの島が点在している。
それらがどんな場所なのかは、学園生徒も詳しくは知らされていない。
教師の研究島や、問題児への処罰棟、生徒への課題用の島などがある、というのがもっぱらの噂だ。
ある日のこと、一部の学園関係者の自室には、一通の封書が届いていた。
表現や注意事項には多少の差があったが、内容は以下のとおりだった。
・明日、別紙の地図に書かれた転移用ゲートの場所まで赴き、集まった者たちと一緒に転移すること。
・行き先の小島では当日、翌日と「清掃活動」に励むこと
・島内の設備は自由に使ってもいいが、食料などは自前で調達すること
・野外活動(サバイバル)の準備は怠らないこと
・「清掃活動」以外の時間は自由にすごしてもよい
・課題をこなせなかったものには、ペナルティが課せられる
林間学校だと沸き立つ者、危険を感じて準備を怠らない者。偶然に導かれ島にたどり着いたもの。
それぞれの思惑を胸に、彼らは転移ゲートを通過し、課題が待つ小島に降り立つ。
島の名前は「ラクーン島」
丘の上にそびえる古びた洋館を訪ねた彼らの前に、今、何かに操られた学園生徒が立ちはだかる!
友を操り襲わせている彼らの目的は?この島の秘密は?
そして、出された課題の真意とは。
- 4 :
- 【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!10thシーズン(前スレ)
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1350392760
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!9thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1333383614
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!8thシーズン
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1316207939
TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!7thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1302609427
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!6thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1294657842
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!5thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1291300916
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!4thシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1284645469
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!3rdシーズン
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1278699028
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!2ndシーズン
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1273242531
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1270216495
■避難所
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!第二避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/17427/1364028620/
(こちらが本避難所ですが、現在激重のため、臨時として第二避難所がメインになっています)
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1329748719/
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所 (前スレ。板消滅でデータ消失/wikiにログあり)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/42940/1295181582
【TRPG】フィジル魔法学園にようこそ!避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/20066/1270211641
規制の巻き添えで書き込めないときは、上記の避難所に、それが無理なら下記の代理投稿スレで依頼してください。
代理投稿スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/17427/1363875047/
ttp://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1277996017
- 5 :
- ■テンプレ
名前・
性別・
年齢・
髪型・
瞳色・
容姿・
備考・
得意技・
好きなもの・
苦手なもの・
うわさ1・
うわさ2・
【備考】
全部埋める必要はありません。
テンプレはあくまでキャラのイメージを掴みやすくしたりするものです。
また、使える技や魔法も、物語をより楽しむためのエッセンスです。
余り悩まず、気楽に行きましょう。
(外部参考サイト)
TRPに関する用語の確認はこちらでどうぞ
過去ログやテンプレも見やすく纏めて下さっています
(ボランティア編集人様に感謝!)
なな板TRPG広辞苑
http://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/37.html
- 6 :
- テンプレは以上です。
では、引き続きスレをお楽しみください。
- 7 :
- 誰もお楽しみいただけてないようやんね(>_<)
- 8 :
- ……………ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!
少しだけ時間を遡り、ここはフィジルの学園内。
天気は晴れ、窓から日の光が差している廊下に、金属がぶつかり合い、こすれ合っているかの様な独特な音が鳴り響いていた。
「……通達に依ると、我は行かねば成らぬ所が在る様だな……」
その音の主は、漆黒の鎧を身に纏ったフィジルの生徒。
彼は片手に一通の手紙を、もう片手には長い槍を持ち、音を立てつつ足早に廊下、階段、正面玄関、と足を運んでいた。
彼の言葉や一挙手一投足全てからは、かなりの威厳が感じられる。
正面玄関を出、彼が向かったのは敷地内の馬舎。
数々の茶色い馬達が並ぶ中、ただ一頭他の馬とは明らかに違う、漆黒の色をした馬がいた。
それに彼は近付き、流れるような動作で馬の背中に跨う。
「さて、行くと為(す)るか、ツェッペリン。清掃活動とやらにな。」
『はっ。必ずや御主人様のお役に立って見せます。(馬語)』
どうやら馬の名前はツェッペリンと言うらしい。
漆黒の馬ことツェッペリンを巧みに操り、校門を出て森や街を自在に駆け、目的地を目指すその姿はさながら騎士のようだ。
漆黒の鎧を着た彼の名は「ジェイムズ=ジャスティン」
同学年の者からは、「漆黒の騎士」と呼ばれている。
- 9 :
- さて、漆黒の騎士ことジェイムズはかくして、指定場所である灯台……ではなくもう一つの指定場所、風者小屋に着いていた。
どうやら指定場所は複数あるらしい。それはさておき、
ジェイムズは風者小屋内部に設置されていた転移ゲートを難なく見つけ、ツェッペリンをその場に待機させた。
「此れを使うのは入学以来、か……あの頃の事は忘れもせぬ。」
しみじみと、何かを懐かしむ様に独り言を呟いた後、ジェイムズは転移ゲートに乗る。
次の瞬間、ジェイムズはラクーン島の森の中にいた。
ジェイムズは周りを見渡し、森の向こう側にそびえ立つ洋館を見つける。
「ふむ……彼処が通達に有った洋館、か。では早速行って見るとしよう。」
彼は、召喚の魔法を唱える。すると、運良くジェイムズの目の前にツェッペリンが現れた。
「良し。無事、召喚魔法は成功した様だな。では、行くと為るか。」
『御主人様の魔法が成功するのは久方振りですね(馬語)』
森の木々を巧みにかわしつつツェッペリンを走らせ、洋館を目指して進んだ。
- 10 :
- 40 :ジェイムズ ◆nIuIv3TzeE:2013/04/07(日) 00:32:57 ID:???0
そして現時刻、ジェイムズは洋館の前に到着していた。
「此処だな……大方屋敷の清掃活動でも為るのだろう。」
その時。
>「貴様らーっ!この俺に尋問するつもりだなーっ!?エロ絵草紙みたいに!!エロ絵草紙みたいに!!」
ジェイムズは向こうから人の声を聞いた。何やら口論をしている様だ。
「……尋問……?」
どっかの作品で聞いた事あるようなフレーズだったが華麗にスルーし、周りを見渡す。
すると、向こうで何人かの男女、おそらくフィジルの生徒が集まっているのを発見した。
特殊な鎧で子どもレーダーに捕捉されていないため、向こうはこちらに気づいていない。
「……む?彼れは我が校の生徒か?如何やら我よりは下の学年の様だな……少し様子を見よう。」
ジェイムズは、遠目でリリィ達の様子を観察する事にした。
- 11 :
- 「……チッ、目ぼしい物は無いか。当てが外れたな」
埃だらけの薄暗い物置でごそごそと物を漁るテオボルトだが、成果は芳しくない。
強いて言うならば、ランタンらしきマジックアイテムぐらいか。しかしテオボルトには杖があるので意味はない。
隅に置いてあるアイテムボックスも開いてみたは良いが、荷物を取り出せることに気付かずにスルーである。
一度手を止めて一息をつく。テオボルトが物音を立てていた物置部屋が静けさに包まれた、その時だ。
>物置の中ではどこからともなく、ヒタヒタ…ヒタヒタヒタ……という足音が聞こえてくる。
>それはどうやら小型の生物の足音のようだが、暗いこともあり、なかなかその姿は見えない。
「む、もしやネズミか何かか? これだけ手付かずの有様なら居て当然だろうだね」
独りごちながら足音のする方に杖の明かりを向けるが、中々その正体を見つけられない。
そうこうしていると、後ろからガチャンと機械が落ちる音がする。
「ん? ……幻影機」
>見ると、床に幻影機が落ちていた。たまたま棚に置かれていたものが落ちたようである。
思いついたように手に取ってガチャガチャと弄ってみるが、正常に動作しない。
諦めようかと思ったが、ふと考えつく。
「もしかしたら、この幻影機に何か映ってるやも……地下への入り口や、館のあるじとやらの姿が」
しかし、テオボルトのメカの知識はよろしくない。せいぜいが45度チョップ程度。
であるなら、誰かに頼むべきだろう。幻影機の中身を映せるような誰かに。
意気揚々と物置部屋から廊下に飛び出したテオボルトは、丁度フリード達に出くわした。
「応、フリード。丁度いい、あの機械のお嬢さんは……」
そしてエンカの耳を引っ張っているアムリーテ(中身リリィ)を見つけた。
少々の違和感を覚えるも、エンカの時と同様に無視をして声をかける。
「いたいた。ミス・クラスタ、これの修理を頼む。私にはどうすりゃいいかわからんのでな」
そう言うと、物置で見つけた幻影機を無造作に放り投げる。
「私の探した部屋にあったのは、それの他にはガラクタとネズミくらいだった。
地下への入り口は他のところにあるやもしれんな……おや、ミス・クラスタ。どうしたんだ?」
幻影機を受け取ったはずのアムリーテ(リリィ)の様子が流石に変だと気付いたらしい。
テオボルトは眉間に皺を寄せ、訝しむようにその顔を覗き込んだ。
- 12 :
- >>11はテオボルトです、失礼しました
- 13 :
- 前スレ>230>231>232>234
マリアベルの問いに対し、パピスヘテプはまずエンカの体を返してもらうと答えた。
パピスヘテプはエンカの体に荒縄を巻きつけたが、おそらく変態的な縛り方はしていないと思われる。
少し前にその片鱗を見た気がするが、きっと気のせいだ。
荒縄の先端には藁人形が結びつけてある。
> 「肉体は魂を守る砦であり、同時に魂を囲う檻でもあるの。
> 憑きもの祓いの基本は肉体を衰弱させて檻の隙間を広げ、外に引きずり出すのね。
> 今こうやって精気を吸収しているみたいに。
> 肉体と魂の同調率が違う異物は荒縄を伝ってこちらに移動する、という寸法よ」
> パピスヘテプはマリアベルという憑物を藁人形に移し替えようとしているのだ。
「なるほど〜、完璧な作戦っすね〜。不可能ってことに目をつぶればよ〜」
マルアベルは余裕の態度を見せた。どうやら何か対抗策をもっているのだろう。
「パピスヘテプ!エンカがお前の事を知らなかったようによ〜、お前もエンカを知らないことを知るだろうぜーっ!」
そして憑物祓いの呪文が唱えられた。
「うぉおおおおおっ!?」
エンカはそう悲鳴をあげると、ガクリとうなだれた。
もしもパピスヘテプの魔法が成功しているのなら、これでエンカの体は本来の持ち主へ返り、マリアベルは藁人形へと移るだろう。
> 「ねえマリアベルさん?私達を罠にかける事に失敗したのだから、地下のアンチラストさんに叱られに行かなきゃいけないのでしょ?
> でも安心して、テオ君は一足先に言っちゃってるけど、私たちも一緒に行って謝ってあげるから。
> だから案内してちょうだい?」
> 「そうですね。パピチャンは言いことを言いました。お友達になりましょう。つまり、お友達作戦です。
> 私のセンセイも皆仲良しお友達という価値観を私に教えてくださいましたのです」
> 「そうですよ失敗したんだからまだ死んだほうがマシなお仕置きとかされるんでから
> 今は僕らの味方をして案内してくれたほうがお得ですよ
> まあ味方をしてくれても裏切り者だと思われてさらにひどい目に合うでしょうけど
> 今すぐひどい目に合うよりはましでしょう」
各々が藁人形へと話しかけるが、藁人形は何の反応も示さなかった。
死んだふり?だが、試しに攻撃しても反応はないだろう。
いや、そもそも藁人形の持ち主であるパピスヘテプなら間もなく気づくはずである。
藁人形の中身が、“空っぽ”であることを……
ではパピスヘテプの魔法は失敗したのか?
「……お前ら、なんで藁人形に話しかけてんだ?」
目を覚ましたエンカが口を開いた。
彼の目には藁人形に語りかけるパピスヘテプ、リリィ、フリードの姿が映っている。
「その藁人形…確か【入口】を見張らせていたジローだよな?それとも、リリィに付けたイチローの方か?
リリィが無事に戻って来てるってことは、ロゼッタもいるんだろう?
……どこにいるんだ?ちゃんと謝らねぇと…でも……力が入らねぇ……どうなってるんだぁ〜??」
エンカは立ち上がろうとしたが、体に力が入らないせいで、できなかった。
まもなく皆理解するだろう。エンカの体をエンカに返すことはできた。
しかし、マリアベルは消息がわからなくなってしまったと。
「なんだこの縄はーっ!?まさかお前ら、この俺に乱暴するつもりなのかーっ!?
エロ絵草紙みたいに!!エロ絵草紙みたいに!!」
エンカは自分が荒縄で縛られている事に気づいてそう叫んだ。
同じセリフを言うところから察するに、どうやらマリアベルに操られていた間の記憶は無いようだ。
エンカの体が突然浮き上がった。
> 「ちょっとマリアベルとかいう人!よくも私のそっくりさんを勝手に作ったわね!
> でもあいにくね、私はもっと発育がいいんだから!皆だって、すぐに偽者って分かっちゃうんだから!
> さあ、何もかもあなたの仕業ってことは分かってるわ!おとなしく親玉のところに連れて行きなさい!
> ・・・・・・で、親玉はどこだっけ?・・・・・・地下?じゃあ地下にレッツゴー!」
「うわあああっ!?じょ、冗談じゃねーっすよーっ!?」
エンカはわけがわからないまま、なし崩し的にアムリーテ(リリィ)に引っ張られ地下へと連れて行かれた。
- 14 :
- 如何に強力な攻撃であっても対処さえ取れるのであれば効果は半減。
逆に言えば何の対処もとらせなければ弱い攻撃であっても大きな効果をあげられる。
つまるところ、トリッキーな術というものは術そのものの威力ではなく、対処させない事こそが真髄と言える。
対処させない事に重きを置く術は威力そのものは大きくなく、また種さえわかってしまえば十分に対処されてしまうのだから。
パピスヘテプのテーベ流影術はまさにそのものである。
直接的な打撃力は殆どなく、対処させず相手は衰弱させていく。
そしてそれはマリアベルにも言えたようだった。
>「パピスヘテプ!エンカがお前の事を知らなかったようによ〜、お前もエンカを知らないことを知るだろうぜーっ!」
憑物祓い発動直前に残したマリアベルの意味深なる言葉。
マリアベルが入るはずだった藁人形を摘まみ上げながら首を傾げていた。
藁人形にさえ入れてしまえば交渉するなり、そのまま冥府へ送るなりどうにでもできたのだが。
「うーん、逃げられちゃったのかな?ゆっくりお話ししたかったのに」
術に抵抗した、途中で逃げた、術そのものが失敗だったのかもなどなど、様々な可能性に頭を巡らせる。
様々な可能性を考えながらそっとエンカの影にパピスヘテプは影を重ねた。
意識を取り戻したとはいえ、精力を吸われて立ち上がれないエンカは今までの記憶がないようだった。
これが本心なのか芝居なのかはわからない。
が、様々な可能性の中にはマリアベルが憑依体でない、という事も含まれているのだから。
念の為に監視用にエンカの影に藁人形を入れて呪いをかけておこうとした時。
アムリーテが再び動き出したのだ。
しかもその言動からするとその中身はリリィである、と。
とするならば、ヨガのポーズをとっているリリィの中身は?
アムリーテに入っていた疑似人格は?
「あ、あれ?もしかして術の暴走?えぇ?そんな感じはしなかったのに」
この状態の原因の一番高い可能性は自分なのだから。
状況整理に頭の回転が追いついていない状況で、アムリーテ(inリリィ)は衰弱して立てないエンカを引っ張って地下へと向かいだす。
「ちょ、まって!影縫い!」
慌てて取り出した五寸釘を投げつけた。
が、もちろんパピスヘテプは投擲の能力などありはしない。が、外しはしない。
百発百中とは命中精度の事ではなく、外さない状況を作り出す能力の事なのだから。
パピスヘテプが投げつけた先は自分の足元の影。
影は亜空間になっており、アムリーテ(inリリィ)の影まで伸びた先に繋がっているのだ。
すなわちパピスヘテプの足元に投げつけられた影はアムリーテ(inリリィ)の足元の影に繋がっている訳だ。
これならば外しようがないというもの。
五寸釘はアムリーテ(inリリィ)の影に打ちこまれ、その呪いの効果を発揮する。
影を縫い付けられた者は実体も縫い付けられたように動けなくなる。
影術では最もメジャーな術であろう。
アムリーテ(inリリィ)は一瞬動きが止まったのだが、恐るべきは10万馬力!
僅かな足止めをしたのが背一杯で釘は弾き飛ばされて飛んでいく。
弾き飛ばされた五寸釘が遠目で様子を観察しているジェイムズに向かっていったのだが、パピスヘテプは気づいていない。
「う、うそぉ〜ん!力づくで呪いを弾き飛ばしたぁ?こうなったら……!」
五寸釘を左右に三本ずつ、合計六本で動きを封じようとしたのだが、それを止めた。
中身がリリィあるとわかっている以上、後回しにしても対処のしようがあるが、そうでない者がいるのだから。
アムリーテにリリィが入り、エンカの意識が戻る。
そうするとリリィの中身がマリアベルという可能性が高い。
とはいえ、ヨガのエビゾリポーズで涙する姿からマリアベルは連想しにくいの。
念の為、密かにリリィ(inアムリーテ)の影に影を重ねて藁人形を沈めて術をかけておき
「なにやっているの?早く地下に行きましょう」
そう声をかけて地下へと進んでいった。
気付かないふりをしてリリィ(inアムリーテ)の動向を探ろうというのだ。
- 15 :
- 地下に入ると、フリードが先行して一面に氷を張っていく。
これで罠の類を無効化しているのだ。
「フリード君えげつない事ばかり考えているかと思ったけど、器用な事もできるのね」
力づく罠も敵も味方も全てを破壊して一直線に進んでいくと噂の某氷雪の女王
その弟とは思えぬほどスマートかつ完璧な侵攻思わず感嘆の声を漏らすパピスヘテプ。
先ほどの氷のレンズによる集光もそうだが、イメージが大きく修正されていく。
それほどまでに某氷結の女王のイメージは大きかったのだった。
しばらく進みテオボルトと合流。
地下を色々と探った結果、入口は見つからず。
収穫と言えば幻灯機があったとの事だった。
しかも壊れている。
そうなれば自然と流れ的にアムリーテ(inリリィ)にお鉢が回るのだが、中身はあくまでリリィである。
特に機械に強いという事も聞いたことないし、丁度頃合いだろうとパピスヘテプは影に沈めた荷物の中から手鏡を取り出した。
「あー、えーと、リリィ?まずこの光と香を嗅いで落ち着いてね?」
ゴーレムにどれだけの効果があるかはわからないが、中身がリリィであるならば精神に効果が現れるかもしれない。
鎮静結界を展開しながら手鏡を手渡した。
影縫いの呪いを弾き飛ばす力でパニックを起こされては大変だからだ。
「今あなたの魂はそのゴーレムの中に入っているの。
で、さっき見た『おかしなポーズをとっていた発育の悪いそっくりさん』あれがリリィの肉体よ」
残酷な事実をはっきりとストレートにアムリーテ(inリリィ)に告げるのであった。
「びっくりしただろうけど大丈夫よ、戻す術は心得ているから」
これは気休めになるのだろうか?
救いのない、救いようのない霊との対話ばかりしていたせいか、生きている人間に配慮したり慰めるのはどうにもぎこちなくなってしまうのであった。
- 16 :
- 一行が地下を探索していると、どこからか足音が聞こえてくる。
エンカはその足音が、意識を失う前に聞いたものと同じだと気づく。
違うのは足音が徐々に大きくなってきた事……足音の主が
一向に近づいているに違いない。同時にうっすらと、細い煙が漂ってくる。
その煙は『タバコ』のもので、それもある人物が吸っていたのと同一だと
ごく一部の人物は分かるだろう。では誰なのか?
謎を解き明かすべく足音の主を待ってもいいし、自分から向かっていくのもいい。
- 17 :
- 偽リリィ(inアムリーテ)は自分の身体を動かしながら、
滑らかに動く部分とそうでもない部分の差異に驚きながら
これが生きているということなのだと感じていた。
>「なにやっているの?早く地下に行きましょう」
「はいです」
パピに誘われて地下へむかう。視線の先の偽アムリーテ(inリリィ)はというと
偽リリィ(inアムリーテ)を偽者と勘違いしたままエンカを引っ張ってゆく。
先行しているテオボルトのことを少しだけ心配していた偽リリィ(inアムリーテ)だったけど、
それは取り越し苦労だった。
彼は偶然にも幻灯機を見つけており、フリードと何やら会話している。
>「だれか機械に強い人は・・・・・・リリィさん・・・もといアムリーテさんとかどうですか」
とフリード。
「えっと…、本体自体を修復することは無理でしょうけど、おそらくメモリーカードから情報を抜き出すことは可です」
>「いたいた。ミス・クラスタ、これの修理を頼む。私にはどうすりゃいいかわからんのでな」
テオボルトの問いに、おそらくあわあわしているであろう偽アムリーテ(inリリィ)
「私の身体で子どもに乱暴はやめてください」
エンカを引っ張っている偽アムリーテ(inリリィ)を一喝し、偽リリィは幻灯機を受け取るとそれを胸の前で構えた。
しかし何も起こらない。起こるわけがない。
なぜなら今のアムリーテの意識はリリィの身体に入っているから。
本来なら胸の宝石、エンジェルハートから極細のレーザーを放出して幻灯機をスキャン。
内部の信号起伏を読み取って電脳内部で映像に変換する。そのつもりだった。
(あむぅ…、ボケていたです。にしてもチョッとだけ会話をするつもりでリリィの身体を借りたつもりが
チャッカリと私の身体と入れ替わってしまっているなんて。理由はわかりませんがあの子はとても恐ろしい子です)
でもドキドキしている自分もいた。
地下での恐怖感は、生きていることをアムリーテに伝えてくれていた。
(この身体から出て行きたくないかもです…)
そんなふうに思う自分に罪悪感を感じる。
アムリーテの機能はアムリーテが一番良く知っているから、元に戻らなければならないのに。
- 18 :
- それ故に、偽リリィ(アムリーテ)は何か硬そうなものを探し始める。
何でもいいから頭をぶつけて気絶して、幽体離脱をしなければ。
あとは偽アムリーテ(リリィ)が機能停止状態なら文句なしなのだが
そこは気合でリリ魂を体から押し出そう。
そう誓って、偽リリィ(アムリーテ)は壁にガンガンと頭を打ち付ける。
でも痛いだけで中々気絶出来ないでいた。
ぷるぷると震えながら床に蹲ると、
先ほど壁に体当たりをしたリリィの決死の行動を思い起こし唖然。
友達を救うために気絶するほど壁に激突するなど正気の沙汰ではない。
こんなのは痛すぎるしオデコがいくらあっても足らない。
こうなったら何とかリリィに幻灯機の情報を抜き出してもらう他ない。
偽リリィ(アムリーテ)は偽アムリーテ(リリィ)に情報の抜き取り方を説明するとその手を握る。
それはアムリーテの体で読み取った情報を、リリィのテレパシーで音と映像で皆に伝えるため。
でも結構無造作に置かれていた壊れた幻灯機に極秘情報みたいのが収まっていると考えるのもおかしなこと。
しかしダムもヒビで決壊するというし、試してみる価値はあるのだ。
そうこうして、テレパシーが渦となって幻灯機の情報を一行の脳内へと映し出す。
胸の宝石、エンジェルハートから放出されるレーザーは極細微に、絶妙なさじ加減で放射されているようだ。
幻灯機は古かったために所々読み取れない映像もあり、おまけに途中で重ね録りされた部分があった。
その重ね録りされた部分には何も無かったはずの現フロアの地下室の一室が映し出されている。
石像の口の中に隠されたスイッチを押す何者かの手。きっと撮影者の手だろう。
その次に煌煌と煌く天井。良く見ると輝くそれは円陣のようだ。そして降りてくる吊り天井。
この館の主は、よほど吊り天井が好きなのだろう。
天井が迫り、撮影者が光に飲み込まれてゆくところで映像は不本意に終わってしまう。
なぜなら足音が近づいてくる。
その音は何かしら一度聞いたら忘れられないような特徴のある足音のようでもあった。
しかし地下にはさらに地下に続く入り口など見つからなかったはず。
それなら足音の主は一体どこから来たのだろう?まさか幻覚ではあるまい。
ということは探せば絶対にあるのだ。地下への入り口は!
その不気味な足音に、偽リリィ(inアムリーテ)の集中が乱れてしまったから、
偽アムリーテ(inリリィ)が読み取った映像は完全には皆に伝えられずに終了してしまったのであった。
だが、偽アムリーテ(inリリィ)の記憶にはその全容が保存されているかも知れないしそうでもないかも知れない。
それか映像自体が意味の無い物なのかもしれない。
- 19 :
- 「……誰か来ます。ということはこの地下フロアにも入り口か出口はあるはずです。
ボウフラのように沸いて出てきたのでなければの話ですが。
しかし何者なのでしょう?人間嫌いのアンチラストの使いでしょうか?
こっちから赴くと決めいたのにむこうから来てくださるなんて好都合です」
そう言いながらドキドキしている偽リリィ(アムリーテ)。
とりあえずはここから移動する理由もなく、近づいてくるのならば向かう理由も無い。
ただもくもくと漂ってくるタバコの煙だけは不快だった。
「あの…タバコを消しなさいです。タバコの煙は子どもに悪影響を及ぼすです」
無意識にキーっと体が動く。リリィの体は感情が昂ぶるとキーっとなるらしい。
でも足音も近づいてくるし、細い煙もどんどんと漂いはじめている。
だから偽リリィ(アムリーテ)はパニック。
グレンを嫌々抱っこして持ち上げると、偽アムリーテ(リリィ)の眼前に突き出した。
そうするときっと偽アムリーテは特大のクシャミをするはず。それでタバコの煙も吹き飛ぶはず。
【幻灯機の情報の読み取り方法をリリィに伝達】
【テレパシー能力を用いて皆と情報の共有を試みるも途中で終了】
【漂ってくる煙を吹き飛ばすべくアムリーテ(inリリィ)にグレンを近づける(クシャミ砲)】
- 20 :
- 前スレ>230、>231、>234、本スレ>13、14、15
一方、物陰からリリィ達の動向を探っていたジェイムズ。
>「おおさすがはパピちゃんさんそこにしびれる特に憧れない!」
>『shauwã:2-&sn/2dhj;@hejûæ^$jhm(ジェイムズには動物語が理解できない)』
「あの乙女と黒猫は何処かで………武芸の合同授業の時か……?」
どうやらジェイムズは、フリードと授業で面識があるようだ。何気にフリードを「乙女」だと思っているのは仕方無いだろう。
しばらくすると、尋問されていた人(エンカinマリアベル)が呪文をかけられ、うなだれる。
どうしたのかと心配していたが、即効で尋問されていた者の意識は回復した。一先ずは一安心である。
しかし、妙な事に気づく。他の者が、藁人形に話し掛けているのだ。
>「ねえマリアベルさん?私達を罠にかける事に失敗したのだから、地下のアンチラストさんに叱られに行かなきゃいけないのでしょ?
>でも安心して、テオ君は一足先に言っちゃってるけど、私たちも一緒に行って謝ってあげるから。
>だから案内してちょうだい?」
>「そうですね。パピチャンは言いことを言いました。お友達になりましょう。つまり、お友達作戦です。
>私のセンセイも皆仲良しお友達という価値観を私に教えてくださいましたのです」
「……何だ彼奴ら……気でも狂って居るのか?」
まだパピスヘテプの魔法に気づいていない彼は、藁人形に話しているのが狂っていると思うのも仕方が無いだろう。
そうこうしていると、その中の一人(アムリーテinリリィ)が尋問されていた者の胸ぐらを掴み、
>「さあ、何もかもあなたの仕業ってことは分かってるわ!おとなしく親玉の所へ連れて行きなさい!
>……で、親玉はどこだっけ……。地下?それじゃあ地下にレッツゴー!」
男をズルズルとひっぱりつつ、地下へと向かっていく女の姿は、機から見るととてもシュールだ。
…………………地下?
「もしや………奴等、此の課題の本意を忘れた訳では……」
>「なにやっているの?早く行きましょう」
………………忘れてやがる。
そう、あくまで課題は「清掃」のみ。だが彼等は、恐らく清掃とは関係ないであろう地下へと足を進めているのだ。
フリーの時間もあるにはあるが、そんな所を冒険していては、日が暮れて彼等にペナルティが課せられてしまうだろう。
「……青少年の強い好奇心も判ら無いでも無いが……寄りに寄って課題を忘れるとは、ペナルティを忘れたと言うのか?」
「仕方が無い。此処は上級生として、下級生に注意を施して遣らねば。可愛い下級生にペナルティが課せられるのも気分の良い物では無いしな。」
そう言って、彼は音を立てつつ地下へと足を運ぶ。
これから起こる騒動に、自分が巻き込まれるとも知らずに………
…………ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン…………
- 21 :
- かくして、地下に着いたジェイムズ。しかし、妙な事に廊下がすべて凍り付いている。
「……此れは……?すべてトラップのスイッチが凍り付いているとはな。全く、魔法使い様様、と言う事か……」
氷のお陰でトラップを踏まずに済んだジェイムズ。向こうで話し声がするのを聞く、どうやら先程の下級生の様だ。
ジェイムズはそれを見つけると、注意を施すべく下級生達の背後に、ガシャーン!と音を立てて立つ。
そして、彼等に向かって優しく、かつオブラートに包んで注意を促した。
「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
……言い方はアレだが、これでも彼にとっては「優しい」、「オブラートに包んだ」注意だ。
ちなみにジェイムズは、2mを優に越す大巨漢に漆黒の鎧装備という、
バケモノと見られてもおかしくない姿なので、リリィ達がコレをどう取るかはわからない。
フリードが彼を覚えていれば、どうにかなるかもしれないが。
- 22 :
- >前234 >11
自分の身に起きた異変と、その巻き添えをもろに食らって愕然としている本物のアムリーテ。
それらにまだ気づいていない偽アムリーテ(inリリィ)は、皆と一緒に地下へと移動する。
>「うわあああっ!?じょ、冗談じゃねーっすよーっ!?」
「何を今更。マリアベルのくせに生意気よ!さっ、行くわよー!」
>「ちょ、まって!影縫い!」
「・・・・・・ん?」
一瞬足が何かに引っかかったような気がしたのだが、足元は特に変化がない気のせいだろうか?
術を破ったなどという自覚がない偽アムリーテ(inリリィ)は、マリアベル・・・否、エンカを引っ張って地下へと急いだ。
グレンの言うとおりダンジョンという規模ではないが、それなりに仕掛けがあるらしい地下。
>「で、ダンジョンに入ったわけですからマッピングを忘れないようにしてくださいね」
>『ダンジョンってほどじゃなくね?』(猫語)
>「でもここに落とし穴とかありますし」
「うわ、危なかったぁ!」
フリードが床に氷を張り、トラップを無効化してくれた。
>「フリード君えげつない事ばかり考えているかと思ったけど、器用な事もできるのね」
「何言ってるのハピちゃん。毒舌なのはグレンだし、フリード君はいつでも紳士だよ!」
ただしゴブリンを除く。
さて。フリードの魔法で、落とし穴や仕掛けには一切引っかからない・・・・・はずだったのだが。
「うわっ?!氷がめり込んだ?!」
>おっと壁から槍を発射するスイッチだ
「わーん!ごめん!!」
誰も槍が当たっていない事に一安心。
その後、はっと我に返り慌てて反論を始める。
「べ、別に私が太ってるってわけじゃないんだからね!た、たまたま足元の氷が薄かっただけなんだから!」
フリードの作る氷が、たかが人間一人支えられないわけがないのだが・・・・・その異常事態に、またしても偽アムリーテ(inリリィ)は気づかなかった。
>「総帥の屋敷の地下ダンジョンに比べて結構罠が多いみたいですよね
> もしかして総帥が集めている遺物とかいう物がここにもあったりして・・・・おや行き止まり!?」
『あっちに物置があるよ』(猫語)
>11
物置らしき部屋から出てきたのは、別行動だったテオボルトだった。
>「いたいた。ミス・クラスタ、これの修理を頼む。私にはどうすりゃいいかわからんのでな」
偽アムリーテ(inリリィ)は、わたわたしながら何とか幻灯機を受け取ろうとする。
頭、手、腕、手、膝と何度もお手玉とバウンドをさせながらも、幸い床に落ちるギリギリでキャッチ出来た。
>「だれか機械に強い人は・・・・・・リリィさん・・・もといアムリーテさんとかどうですか」
「え?えええ?!」
話を振られ、リリィは困惑した。
「修理って・・・・・・私だってこんなのわからないよー。
・・・・・あれ?もしかしてこの幻灯機、小人さん入ってないカラクリタイプ?へー!すごい!
うーん・・・・・・だとしたら、こういうカラクリはエンカのほうが得意なんじゃないかなぁ?自力でジドウシャ作っちゃうくらいだし。
エンカ、どう?直せそう?・・・・・・って!しまった、今はマリアベルだった! 」
おおう、と頭を抱える偽アムリーテ(リリィ)
>「私の探した部屋にあったのは、それの他にはガラクタとネズミくらいだった。
> 地下への入り口は他のところにあるやもしれんな……おや、ミス・クラスタ。どうしたんだ?」
「やだなぁ、何言ってるのテオ君、私はリリィだよぅ。
いくらうす暗いからって、他の女子と間違えないでよねー。うーん、でも、困ったなぁ」
- 23 :
- 機械など良くわからないが、頼りにされた(・・・?)以上、最善を尽くさなくては!
一瞬の沈黙の後、ぱっと顔を輝かせたリリィはぽん!と手を叩いた。
「そうだ!聞いたことがあるよ!からくりは、叩けば治る事があるって!」
ぐるぐると右腕を振り回した。
「待っててね!今試してみるから!・・・・・・せーの!」
偽アムリーテ(リリィ)は受け取った幻灯機を床に置くと、その拳を振り下ろした。
だが力みすぎてしまったのか、手元が狂い幻灯機のすぐ脇の床を叩いてしまう。
ボゴオッ!という異音とともに、氷にめり込んだ拳から亀裂が走った。
「やだー、失敗失敗。・・・・・・・・・あれ?」
さすがにリリィも、そろそろ異常事態に気づいたようだ。
>13-19
>「あー、えーと、リリィ?まずこの光と香を嗅いで落ち着いてね?」
パピスヘテプ に勧められるまま、光と香を受け入れる。
そしてその直後、手鏡を手渡された彼女は、残酷な現実に直面する!
>「今あなたの魂はそのゴーレムの中に入っているの。
>で、さっき見た『おかしなポーズをとっていた発育の悪いそっくりさん』あれがリリィの肉体よ」
ワナワナと震え、金魚のように口をパクパクさせているリリィだったが、幸い暴れだすようなことはなかった。
パピスヘテプの鎮静結界と香や光は、スパシーボ効果なのか、多少は効果あったようだ。
>「びっくりしただろうけど大丈夫よ、戻す術は心得ているから」
「ハピちゃあああん!!うわああん、良かった!戻せるのね!
じゃあ、今すぐ私を元に戻してよー!!」
・・・・・・・これでも効果はあったに違いない。
わんわん泣き声をあげた偽アムリーテ(リリィ)は、パピスヘテプにしがみ付いた。
さて、では本物のリリィの身体に入り込んでしまった被害者はどうしているのかというと・・・・・・。
>「私の身体で子どもに乱暴はやめてください」
「あっ、ごめん!ついしがみ付いちゃって」
叱られたリリィは、反射的にパピスヘテプから離れた。
そして偽アムリーテ(inリリィ)を一喝した偽リリィ(inアムリーテ)は、幻灯機を胸の前で構えていた。
>しかし何も起こらない。起こるわけがない。
「・・・・・・・・?」
相手は困惑顔だが、こちらも意味が分からず首をかしげることになる。
そして偽リリィ(アムリーテ)は、突然壁にガンガンと頭を打ち付けはじめた。
「わーっやめて!そんなにぶつけたら馬鹿になっちゃう!!
っていうか、私がリリィなら、私の身体に入ってる貴方は誰?」
偽リリィは自分がアムリーテだと名乗り、リリィにからくり幻灯機の情報を抜き出すように指示した。
「こ、こうですか?」
教わったとおりに情報の抜き取り方を試してみると、映像が現れた。
>そうこうして、テレパシーが渦となって幻灯機の情報を一行の脳内へと映し出す。
「わーっ?!胸から変な光が出てる!!」
一応情報は抜き出されたが、それがどんなものかはリリィにも良く分からなかった。
「えーと、つまり、これを撮った人も例の仕掛けで押しつぶされちゃったって事?
じゃあこの幻灯械が壊れたのもそのせいなのかな?でもこれ、ぺしゃんこになってないよね?」
- 24 :
- 偽アムリーテ(inリリィ)は幻灯機を持ったまま、矯めつ眇めつしている。
「・・・・・・・あれ?なんかまだ映像が残ってるかも・・・・・・?もうちょっとだけ読み取りを試してみるね」
偽アムリーテ(inリリィ)は再び幻灯機に意識を集中し始めた。
運がよければ、今までとは違う映像が見られるかもしれない。
近づいてくる足音に、偽リリィ(アムリーテ)ははっと身構えた。
リリィが読み取ろうとしていた別の映像も、残念ながらここまでで途切れてしまうだろう。
>その音は何かしら一度聞いたら忘れられないような特徴のある足音のようでもあった。
(・・・・・・まさか、ね)
それには確かに聞き覚えがあったが、偽アムリーテ(inリリィ)は即座に否定した。
なぜなら、その足音の持ち主がこの場に現れるはずがないからだ。
本物か、それとも、これも屋敷の主が作り出した幻か?
>「……誰か来ます。ということはこの地下フロアにも入り口か出口はあるはずです。
>ボウフラのように沸いて出てきたのでなければの話ですが。
「アムちゃん言葉は丁寧なのに、意外と毒舌よね・・・・・・・」
>「しかし何者なのでしょう?人間嫌いのアンチラストの使いでしょうか?
>こっちから赴くと決めいたのにむこうから来てくださるなんて好都合です」
「え?何する気?ちょっと、その身体私のだから!普通の人間だから!弱いから!
ていうか、さっきぶつけたオデコ、こぶが出来てるじゃないのよやだぁ!」
>「あの…タバコを消しなさいです。タバコの煙は子どもに悪影響を及ぼすです」
大事なのはそこかよ!と、おそらく誰もが思っただろう。
偽リリィ(アムリーテ)は恐ろしくすばやく動いたかと思うと、問答無用でグレンを捕獲。
そして偽アムリーテ(inリリィ)の眼前に突き出した。
「・・・・・・・??」
意図が分からず困惑していた偽アムリーテ(inリリィ)だったが、その顔がふわあ、と大きく間延びする。
「ふえ、ふぇ、ふぇっくしゅん!」
マナーとして咄嗟に顔を背けてしまったものの、ここは地下である。
クシャミ砲は地下通路を巡り、タバコの煙くらいは簡単に吹き消すだろう。
>21
>「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?
館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
よくもさっきは天井を落として私達をつぶそうとしたわね!お返しよ!えいっ!!」
堂々たる鎧姿のジェームズだったが、この場合声をかけるタイミングがあまりに悪すぎた。
偽アムリーテ(リリィ)は、先ほど壊した床の破片を手に取り黒い鎧めがけて投げつけた。
だが狙いは無常にも逸れ、彼が従えている馬のほうに飛んでいく。
「・・・・・・・あれ?今、鎧の人、下級生って言った?」
はっと気づき慌てるが、もう手遅れである。
投げたものはただの石つぶてだが、アムリーテの怪力で放たれたものだ。
ツェッペリンに当たってしまえば、それなりの被害が出るかもしれない。
- 25 :
- >8-24
>グレンを嫌々抱っこして持ち上げると、偽アムリーテ(リリィ)の眼前に突き出した。
『やめろぉ何をする』(猫語)
嫌がって暴れるグレン
「ちょっとリリィ・・・・もといアムリーテさん・・・ややこしいなぁ
グレンが嫌がってるじゃないですか」
>「ふえ、ふぇ、ふぇっくしゅん!」
>「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
『ヒャッハー汚物は消毒だぁ』(猫語)
ジェイムズにはニャァニャァ泣いているようにしか聞こえないだろうが
その通りだという意味の言葉を喋るグレン
「ええ一番地下に居る僕らをぶっ殺そうとした悪い親玉を死なない程度にぶちのめして
生き地獄を味あわせてやるところです
それに学園の言う清掃が言葉どおりの意味とはどうしても思えません
たぶんあなたの言う通り人類および人類の友の敵を掃除しろというのが今回の課題の本当の意味でしょう」
思想が世紀末な魔法使いと使い魔
>「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
よくもさっきは天井を落として私達をつぶそうとしたわね!お返しよ!えいっ!!」
>「・・・・・・・あれ?今、鎧の人、下級生って言った?」
「そうですよこの人は僕たちの先輩で・・・・・・・」
と彼が何者であるかを説明しだすフリードリッヒ
そしていままであったことをジェームズに説明するフリードリッヒ
いわゆるかくかくしかじかである
「僕としてはこんな物騒な屋敷は見なかったことにしてテントでも立ててキャンプしたほうがいいと思うんですが
大切な友人の体を乗っ取らせ僕らをつり天井で殺そうとしたこの館の主人に落とし前をつけなくては気が収まらない方がいるので」
「まあとにかくこの部屋を出て石像を探さなければ話にならないみたいですね」
『わざわざ仕掛けなんて探さないで地下に居るってわかってるなら穴掘りの呪文で床に穴開けてショートカットすればよくね?』(猫語)
「僕には穴掘りの呪文なんて使えませんので」
さあ探索の再開だ
- 26 :
- >16
謎のカラクリ少女に引っ張られて行くエンカにとって、謎は深まるばかりであった。
地下のトラップ、様子のおかしいリリィ、そしてしきりに自分の事をマリアベルと呼ぶ仲間達……
ここでエンカは謎の足音を再び耳にした。
そう言えば自分はこの足音を追って館の“上の階”へ移動したのであった。
エンカは館の上の階でその後に見たモノを思い出そうとしたが思い出せない。
だが、その何かには近づかない方が良い事だけは印象として残っていた。
エンカは、荒縄で縛られているということもあるが、自分から足音の主を追いかけたいとは思わない。
しかし、だからと言って何故みんなは館の地下へ行こうというのか?
「なにがなんだかわかんねぇけどよ〜!?この館はなんかヤバい臭いがプンプンするぜ!?早く外に出た方がいいんじゃねぇか〜!?」
>24
> 「・・・・・・・あれ?なんかまだ映像が残ってるかも・・・・・・?もうちょっとだけ読み取りを試してみるね」
幻影機が新たな映像の投影を始めた。
そこに映ったのは白衣を着た若い女性だった。
彼女の手にはクリップで挟まれた分厚い資料、そして緑色の液体が入った注射器が握られていた。
『…こんにちは、私は(ピー!ガガガッ)す。これより研究成果の発表を行います。私の(ザザーッ)』
映像にはところどころ頻繁に激しいノイズが入り、その度に場面が大きく飛んだ。
次のシーンでは、白衣の女性の前に一匹のネズミが入れられたケージが置かれていた。
『…私の娘の話はこれくらいにして、早速研究しているハイブリット生物の成果をご覧にいれましょう。
前述の通り、これはキメラ理論と形態こそ似ていますが、まったく異質のものです。
ではここで優秀な助手を紹介しましょう。ダンシャリ・ネズミのイレブン君です』
白衣の女性がケージのネズミを取り出した。よく見ると、ネズミの左手が欠損しているようだ。
『イレブン君は不幸にも左手を事故で失いました。これからそんな彼に希望を与えましょう。これがその希望です』
白衣の女性が持つ注射器がアップになった。
『これはボンノウ・トカゲのエッセンスを特殊な魔法で抽出したものです。
トカゲの尻尾切りは有名ですが、ご存知の通り切れた尻尾はまたいくらでも再生します。
このエッセンスをイレブン君に注入するとどうなるでしょう?』
ネズミのイレブン君に注射器が打たれた。するとイレブン君の左手がみるみる再生を始め、
ついに彼の左手がかつてそうだった通りに戻った。白衣の女性は言葉は不用とばかりに胸をはる。
『以上で私の発表を終わります。
この研究が、私の娘のためだけでなく、広く世界で難病に苦しむ子供達の助けとならんことを…(ガーーーー)』
映像はそこで完全に途絶えた。
>21
> 「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
「あ、あんたは……!」
エンカにはわからないことだらけだったが、暗い地下室に溶け込むような、
いや、地下の闇よりさらに黒く浮き上がるようなそのシルエットに見覚えがあった。
「ジェイムズ・ジャスティン先輩!『漆黒の騎士』ジェイムズ・ジャスティン先輩じゃないっすか!?」
エンカは憧れの先輩の一人であるジェイムズに会えて感激している様子だった。
なぜなら、エンカもまた魔術の素質のない生徒の一人である。
だからこそ、エンカはジェイムズにシンパシーを感じずにはいられないのだ。
「こいつらさっきからおかしな事ばっかり言ってるっすよ〜!
先輩の御威光でよ〜、何とかしてくださいっすよ〜!」
エンカはそう言ってジェイムズに助けを求めた。
ところで、ジェイムズが立っているすぐ横の壁に、何かの魔法装置が取り付けられていた。
パピスヘテプなら心当たりがあるだろう。室内に照明をもたらす魔法装置である。
薄暗いこの物置も、明るくなれば何か新しい発見があるかもしれない。
- 27 :
- >「ハピちゃあああん!!うわああん、良かった!戻せるのね!
> じゃあ、今すぐ私を元に戻してよー!!」
「え、ええ……おびゅふぅ〜〜〜〜!!」
過酷な事実を告げられたアムリーテ(inリリィ)は不安と安堵からか大泣きしながらしがみ付いてきた。
もちろんこれがただのリリィであればパピスヘテプもその頭の一つでも撫でながら安心させてやったであろう。
だが今のリリィは身体が10万馬力を誇るアムリーテである。
自分の身体でないのであるからして、扱い自体も不慣れであり微妙な力加減など不可能だというもの。
ただの抱きつきも全身の骨を砕かんばかりの強力プレス機も同然。
パピスヘテプの纏うケロべロスの毛皮のコートが大きく膨らみその力に抗しようとするが、変な悲鳴が出てしまうほど力差は大きいようだった。
幸いな事にリリィ(inアムリーテ)の一喝によって離されたのであるが、立っているのが精一杯……
いや、影によって支えられていなければ立っていられないほどのダメージを負ってしまったのであった。
そのダメージを回復させるために骨付き肉二本と映像が流れ終わるまでの時間を要することになる。
幻灯機に映し出されたのは石像の口の隠しスイッチ、吊天井、だけに思えたのだがそのあとに更なる映像が流れ出た。
研究者の記録映像。
それはキメラ理論による欠損四肢再生術と思われる映像。
様々な映像が流れた後、ふと気づく。
地下室にタバコの臭いが流れ込んできていることに。
そして近づいてくる足音。
>「あの…タバコを消しなさいです。タバコの煙は子どもに悪影響を及ぼすです」
「はいはい、わかったわ。でもちょっと待って頂戴ね、リリィ?いえ、中身はアムリーテね。
どうして入れ替わったかはわからないけど、自分の身体があるのに他人様の身体に入るのはいけない事よ。
特に扱いもできない身体と入れ替わるのはお互いの害になるだけ。
だから強制的にでも戻ってもらうわよ。」
グレンを抱きかかえて突き付けるその手に荒縄を撒きつけ、片方を突き付けられたアムリーテ(リリィ)に巻きつける。
お互いの元の身体が荒縄で繋がるほど近くにいればこれで魂を元に戻すことができるだろう、と。
しかし術が行使されるより先にくしゃみ砲が炸裂してしまった!
ただくしゃみしただけならばまだ問題はなかったかもしれない。
が、反射的に顔をそむけてくしゃみをしたアムリーテ(inリリィ)のエチケットが災いした。
先ほどのダメージから回復して間もなかったこと。
更には術の行使の為に集中していたため、くしゃみ砲の余波をまともに喰らって吹き飛ばされてしまったのだ。
もちろんリリィとアムリーテを繋いでいた荒縄もほどけてしまっている。
「ゴーレムの機体としては凄まじい性能みたいだけど、疑似人格としてはお粗末極まりないわね!
こんな地下の密閉空間でこんなことするだなんて!」
基本的に大らかなパピスヘテプだが、この暴挙には声を上げた。
たぶん同じことを霊魂がしたとしても声を上げることはなくただただ許したであろう。
が、アムリーテは生きており、自分の肉体を持っているのだ。
そしてアムリーテはゴーレムであり、その意識、魂は疑似的に作られたものにすぎない。
この差が、空回り続けるアムリーテへのパピスヘテプの印象の悪化に起因するのかもしれない。
- 28 :
- 抗議の声をあげながら起き上がったパピスヘテプの目に映ったのは突如として現れた黒甲冑。
黒甲冑の隣の馬に恐ろしい勢いで瓦礫を投げつけるアムリーテ(inリリィ)
その姿を見てパピスヘテプの血の気が引いた。
パピスヘテプはこの黒甲冑が何者か知っている。
学園に魔法の素養の少ない者、ない者はそれなりにいる。
だが、『魔法』学園にあってここまでコテコテの騎士をしている人間はそうそういはしない。
しかも本人そのものよりも物理攻撃無効、魔法半減という恐るべき鎧が有名なのだ。
もしかしたら鎧そのものが本体なのではないかと囁かれる程に。
好奇心旺盛で物見高いパピスヘテプがそんな面白い存在を見逃すだろうか?
いいや見逃しはしない。
とはいえ学園の違う先輩である。
接点もないため話したこともなく、ただ遠目で観察する程度ではあったが。
顔見知りであるフリードのエンカが事情を説明しているのを見て、パピスヘテプも歩き出す。
「あんたたち二人は慣れない身体で下手に動くと危ないから、ちょっとじっとしてて。
先輩に事情説明したら戻すから!」
リリィとアムリーテに言い置くと、ジェイムズの元へ。
「黒要塞せんぱ……いえ、黒騎士先輩。死霊科のパピスヘテプです。初めまして。
フリード君とエンカ君の説明に補足をさせてくださいな。
後エンカ君にも説明するから、これ食べながら聞いて頂戴」
エンカにヤモリの黒焼きと赤まむしドリンクを差し出しながらフリードの説明に付け加える。
エンカがマリアベルと名乗るものに憑依されていた事。
藁人形に移し替えようとしたが逃げられたこと。
憑依解除の為にエンカの精気を吸って衰弱させたことも。
「まあ、そういうわけで、フリード君も言うように館の主人であるアンチラストという人とお話もしたいところですし。
そもそも課題の清掃作業が文字通りの清掃作業とは思えなくなっていることもありますの。
あ、それから黒騎士先輩って鎧の力でテレパシー受信できないのですよね。
この藁人形で中継しますから持っていてください」
影から新たな藁人形を取り出し、ジェイムズに手渡した。
藁人形はジェイムズの身体をよじ登り、肩まで着くとそのヘルメットに手をかけそっと耳打ちをする。
『説明した通りエンカ君はつい先ほどまで憑依されていました。
解除を試みたのですけど失敗。
マリアベルがエンカ君から離れたのであれば問題ないのですけど、更に奥底に潜んでいる可能性も……
だから衰弱したエンカ君を回復させなかったのですけど、黒騎士先輩が来てくれたので回復させました。
念の為にエンカ君に注意を払っておいてくれませんか?』
ちなみに黒要塞先輩とはジェイムズの鎧の性能と見た目からパピスヘテプが密かに読んでいる名前であったりする。
「あ、そういえば、黒騎士先輩ってタバコ吸いました?」
色々な事が一気に起こって忘れそうになっていたが、ジェイムズが現れる直前確かにタバコの臭いが流れてきていたのだ。
だが足音はペタペタと鎧を着こむジェイムズにはあり得ぬ音。
くしゃみ砲で驚いて退散したのであればそれに越したことはないのだが。
気がかりではあるが、とりあえずはリリィとアムリーテを元に戻してややこしい状態を元に戻さねばと二人の方へと振り返るのであった。
- 29 :
- 幻影機に映されていたのは鼠の左手の再生治療。
>『以上で私の発表を終わります。
この研究が、私の娘のためだけでなく、広く世界で難病に苦しむ子供達の助けとならんことを…(ガーーーー)』
(子どもたちのために誰かがどこかで研究をしていたみたいです。
おそらくはこの洋館の地下と考えるのが妥当でしょう。
ですが彼女の行為は私たちを殺そうとしたアンチラストとは真逆の行為みたいです。
彼女の身に、何事も起こっていなければよいのですが……)
謎の女の再生術の映像に、アムリーテは行方不明となったセンセイのことを思い出す。
錬金術師であり冒険家でもあったククレーニュという名の男のことを。
綺麗な女ならいつまでも綺麗なままでいたいと思考することだろうし、
石だってずっと石のままでいたいと思っているはず、とアムリーテは思う。
そう思っていなければ石は石であり続けない。この世に石など存在しないはずなのだ。
それと同じで機械人形に造られた自分も、機能を正常に果たしていたいと心のどこかで思っている。
とある古代遺跡で、長い眠りから覚めたアムリーテ・クラスタ。
ククレーニュに再び命の火を灯され、彼女は嬉しく思った。
と同時に疑問が浮かび上がりこう問うたのだ。
「なぜ貴方は、私を目覚めさせてくれたのですか?」
静かに問いかけるアムリーテに、男はこう答えた。
「俺が死に掛けていた時、助けてくれた人がいた。
その行為が俺には何よりも嬉しかった。きっと、今の君以上にね」
自分が助けられて嬉しかったから、自分も誰かを助ける。
男の答えは、単純と言われれば単純なことだった。
この幻影機の映像によって、アムリーテの予測は少しずつではあるが現実のものへと移行し始めている。
本来機械にあるべきはずでないもの「第六感」のようなものでアムリーテは導かれている。
信頼するククレーニュ先生の元へと。ただ、そう信じていたかっただけでもあったのだが…。
- 30 :
- アムリーテ(リリィ)が氷の床に亀裂を入れ、
クシャミ砲を飛ばし パピステヘプに振り向かれた瞬間。
それはリリ魂を串刺しにした。
それとは得体の知れない者たちの眼差しだ。
パピステヘプの視線とは明らかに違う内面から来る禍々しい視線。
ざわざわ…とアムリーテの肉体の奥、エンジェルハートの最奥から迫る波動。
ほの暗い無意識の深海から迫る影の群れ。
『アナタは、ダレ?アノ子はどこへいったの?』
リリィに問いかけるのはアムリーテのものと酷似した意識。
でもそれは氷のように冷たい無機質な印象を与える。
『アノ子がいないのなら、この体をのっとちゃいましょうよ。
姉である私たちすべてのクラスタを破壊した最強のクラスタの体を…。
おぞましき人間の男に誑かされた愚かな妹の体をね…』
「…ふっ、ひひひ」
不気味に笑い始めるアムリーテ。もちろんリリ魂を巻き込んだまま。
でもその前に説明すると、「クラスタ」は塊。群れ。集団という意味。
アムリーテ・クラスタとは、太古の昔にデウス・エクス・マキーナ(機械仕掛けの神)
の一人として、混沌とした世界を終結させるために造られた兵器の集団なのだ。
だが、ククレーニュにより命の大切さを学習したアムリーテは
他のアムリーテたちを破壊した後、彼に四肢の兵装を外す手術をしてもらったのだ。
その時に姉たちのゴースト(怨念)が、胸のエンジェルハートに侵入したことも気付かずに。
>「あんたたち二人は慣れない身体で下手に動くと危ないから、ちょっとじっとしてて。
先輩に事情説明したら戻すから!」
じっとしてて、絶対動くなよ。は鬼ブリの証。
なのでアムリーテの両眼が怪しく点滅を開始する。
- 31 :
- >「こいつらさっきからおかしな事ばっかり言ってるっすよ〜!
先輩の御威光でよ〜、何とかしてくださいっすよ〜!」
「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
それは昇ってきた階段を破壊して地上への最短の逃走経路を寸断する。
「はい。で、どうするですか子どもたち。エンカさんでしたっけ?
今ので蒸発しちゃったかもですね。ふひひ…。
残骸から何か出てきましたか?皆で仲良くさがしてみましょうです」
アムリーテは鼻で笑いながら、パピスヘテプをねめつける。
そしてフリードへ向かって両手で握り拳固。
「あなたの墓穴、掘ってあげますです!」
両手を振り下ろしフリードごと床を叩きつける。後手キャンとかなんとかしなければ
フリードは地殻を越えてマントルまで減り込んでしまうかもしれない。
そして、今だアムリーテの意識にへばりついているリリィにむかい――
「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
暴言を吐いたあと大暴れを始めるアムリーテ。
それをリリィの中のアムリーテは震えながら見ている。
オデコのコブもじんじんして痛む。
それに無敵の体で子どもを守るとか言っていた自分を恥ずかしく思う。
「あむむぅ。こ、こわい、こわいですぅ。
私ってあんなに怖かったですか…。マジキチロールですぅ……」
よたよたと壁伝いに進むと隠れようとして扉をあける。すると映像に出ていた石像があった。
だからって光る吊り天井を作動させる理由もアムリーテには見当たらない。
だが天井で光る魔法陣に見覚えのある者もここにはいるはずだ。それは一体何だったのか。
思い当たることがあれば進路は開かれることだろう。
【鬼ぶり>無茶ぶり】
- 32 :
- >「やだなぁ、何言ってるのテオ君、私はリリィだよぅ。
> いくらうす暗いからって、他の女子と間違えないでよねー。うーん、でも、困ったなぁ」
「何だって……? どう見ても、ミス・クラスタ、君にしか見えないが……」
ぼそぼそとしたテオボルトの呟きは聞き届けられず、自称リリィのアムリータは幻灯機を床に置く。
そして拳を振り下ろした。幸い狙いの甘さで幻灯機には当たらなかったが、床に亀裂を入れるこの威力。
この奇行には、あっけにとられるしかなかった。
ポカーンとしていると、自称リリィにパピスヘテプから説明が入る。
曰く、アムリーテとリリィの魂が入れ替わっている、とのこと。元に戻せるらしいが、ややこしい事この上ない。
重なるハプニングに、大きくため息を吐いた。
「清掃活動に来たら島が突っ込んできて、館じゃハプニングが続々と……!
ええい、さっさと事を終わらせねば延々とトラブルが続発するんじゃないか!? 片っ端からどんどん片付けるぞ!」
と、苛立ちをあらわにするテオボルト。しかし現状彼に出来ることはない。
>そうこうして、テレパシーが渦となって幻灯機の情報を一行の脳内へと映し出す。
>幻灯機に映し出されたのは石像の口の隠しスイッチ、吊天井、だけに思えたのだがそのあとに更なる映像が流れ出た。
>研究者の記録映像。
>それはキメラ理論による欠損四肢再生術と思われる映像。
映像を終えたのち、金属がぶつかる音をさせて、ある人物が登場する。
> 「…………おい、貴様等。……見た所下級生か。こんな所で何をして居る?館の清掃では無く魔物でも掃除為るつもりか?」
>「あ、あんたは……!」
>「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
> よくもさっきは天井を落として私達をつぶそうとしたわね!お返しよ!えいっ!!」
「チッ、今度はなんだ?」
また面倒事かと思い、そちらを向けば……生徒たちの前には、黒く大きな金属の塊が!
>「ジェイムズ・ジャスティン先輩!『漆黒の騎士』ジェイムズ・ジャスティン先輩じゃないっすか!?」
>「黒要塞せんぱ……いえ、黒騎士先輩。死霊科のパピスヘテプです。初めまして。
>フリード君とエンカ君の説明に補足をさせてくださいな」
フリードやエンカ、パピスヘテプの様子からしてそれなりに有名な生徒らしい。
ちなみに、テオボルトは彼と一切の面識はない。それ故、このタイミングで出てきた彼を存分に怪しむ。
こんなのが魔法学校に……と、自分の格好の怪しさを棚に置いてじろじろとジェイムズに訝しみの視線を浴びせる。
一応今はフードを脱いでいるため、テオボルトの顔は見えている。
しかし、一度フードを被ってしまえば、殆ど肌の露出がないという点で共通してしまうことだろう。
- 33 :
- 「あ、そういえば、黒騎士先輩ってタバコ吸いました?」
パピスヘテプが質問すると、テオボルトがクンと鼻を利かせ、横で否定の声を挟む。
「違う。この先輩サンからはタバコの臭いがしない……先程の足音の正体ではない事は確かだな。
代わりに、ちょっと嫌な臭いが染みついているが。君、ガーリックか何かが好きだろう?」
顔をしかめ、じろりに睨みを利かせる。ニンニクの臭いは少々嫌いなのだ。
「そら、さっさと石像の間を探しに行くとしよう……ん? また様子が、」
せかせかと行動に移ろうとしたが、再び様子のおかしいアムリーテボディに気付いた。
怪しく点滅する両目に、嫌な予感を覚える。
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
>ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
「んなっ!? 階段を……退路を断っただと!」
階段に直撃した光線は、見事に対象を瓦礫へと変えて道をふさいでいた。
最早リリィではない、そのアムリーテはフリードへと攻撃をしかけ、更に
>「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
と、中にいるだろうリリィの精神に悪態をつく。
独り大暴れをしているアムリーテボディだが、見かねたテオボルトは片手を向ける。
瞬時に溜まる魔力が、バチリと火花を散らす。
「このまま暴れられると鬱陶しい! いい加減大人しくしていろ……『サンダー・ランス』ッ!!」
狭い空間内に、バリバリと引き裂くような音と共に稲妻が迸る。
当然ながら、その電圧は機械をショートさせるには十二分すぎる。
空中の埃を焼いた焦げ臭い臭いが漂う中、ハッとあることに気がつく。
「……中身(リリィ)の事を忘れていた」
完全に後の祭りである。
- 34 :
- >「よーっ!お前らやっと来たのかよ!あんまり人を待たせんなよなーっ!」
「すみません、途中ではぐれてしまいまして」
青葉がそう答えた
>「さぁさぁ!こうやってご馳走が用意されてるんだからよーっ!みんなでたらふく食べようぜーっ!」
「どうしたんだい、エンカ君? 何かあったのかい?」
勘のいい言葉は何かに気づいたようだ
>「どうしたんだよーっ!?みんな食べねぇのかぁ?…それとも、何かおかしなところでもあるのかよ?」
「いえ、私は遠慮しておきますわ。お弁当なら持って来ましたもの」
「僕もさっき採ってきたから」
と、蟲野はどろっとしたものを舐めている。樹液である
「僕もいいよ。特に食べる必要もないからねぇ。それに僕にとっては噂と恐怖が何よりのご馳走なんだ」
自らの魔法により都市伝説と化した言葉には食事が必要ない。しかし、噂をされなくなること、忘れられることは即ち死に直結するのだ
>「えーと、蟲野君、だっけ。それからこちらの女の子は、どこかで見たことがあるような?」
「そう、蟲野蝶矢だよ。蟲系魔法なら任せてね」
「ああ、初めまして。私は青葉華菜と申しますわ」
本来『初めまして』ではないのだが、この姿と名前で接するのははじめてである。ゆえに『初めまして』なのだ、というのが青葉の考え方だ
>「そちらは初対面よね。はじめまして、死霊科のパピスヘテプよ。よろしくね。
あとお掃除しているあのゴーレムは二人の内どちらかのなの?」
「死霊科だって? すばらしい! 君とはいい話ができそうだ。僕は言霊科の霊園言葉だよ。霊とか妖怪とかが大好きなんだ…ふふふ」
>「私の影は私の体積と同じだけ亜空間になっていてこうやって荷物入れたりしていられるんだけど、一応空間魔法の一種なのよね」
>「本当だ僕の懐の魔法陣も使えます」
「!! と、いうことは私の空間移動魔法も……
……どうやら私のは使えないみたいですわ。どうやらあながち嘘というわけでもないみたいですわね」
>「あなた、青葉君だったの?どーしてまたそんなに念入りに?
いや、そういう趣味の人はいるのは知ってるけど青葉君ってそうだったんだ」
「おやおや、気づかれてしまいましたの。うふふ、先程新しい魔法薬の開発に成功したものですから…私自身を実験台にしたのですわ
別に女性化願望があるわけではありませんからご安心くださいまし」
>「君たち!食べるのをやめなさい!!
>君たちは食料などは自前で調達しなければならないと伝えられたはずです!」
なんやかんやで料理から蠍が沸いてきた。いや、半身が人間である。女郎蜘蛛やらケンタウロスやらの類であろう
>「その小さいアンドロスコーピオンは虫扱いでいいんでしょうか?
だったら蟲野さんの領域でしょう・・・・ならば僕は!!」
「おーけー蟲のことならお任せだよ! エンマダイオウグモ、マオウグモ! あの蠍たちを捕らえるんだ!」
- 35 :
- >>24
>「わー!出た!これが地下にいる悪の親玉なのね!
よくもさっきは天井を落としてくれたわね!お返しよ!えいっ!!」
ジェイムズは、話し掛けた途端にいきなり石を投げられるも、咄嗟に機転を効かせて飛んで来た石を槍で簡単に弾いた。
>「あれ‥…‥?今、鎧の人、下級生って言った?」
弾いた直後、それが機械(リリィ)の投げた物だとわかった。
その機械(リリィ)は、石を投げてからジェイムズに投げてしまったと気付いたらしく、あたふたとしている。
「……乙女よ、幾ら気が動転して居るとは言え、初対面の人物に石を投げ付けるのは些か目に余るぞ……」
『全くです。私に当たっていたらどうなっていたことやら……(馬語)』
>>25
>『adhesi-3:jw(\2æęx:/skq(理解不能)』
>「ええ一番地下に居る僕らをぶっ殺そうとした悪い親玉を死なない程度にぶちのめ>して
> 生き地獄を味あわせてやるところです
> それに学園の言う清掃が言葉どおりの意味とはどうしても思えません
> たぶんあなたの言う通り人類および人類の友の敵を掃除しろというのが今回の課題の本当の意味でしょう」
「……乙女は確か、武芸の授業で会ったな……然し、物騒な物の言い方だな。其れでも乙女か?」
『……途轍も無く汚い言葉を吐く使い魔ですね……(馬語)』
二人揃って汚い言葉を吐く姿に、ツェッペリンとジェイムズは装甲の下で苦い表情をした。
ちなみにツェッペリンには動物の言葉と人間の言葉、両方がわかっている。
>>26
その後、フリードに今までの事を説明されたジェイムズ。
「……フム……話は分かった。友の為に危険も省みぬ其の姿勢、気に入ったぞ。」
「良かろう。我も汝等に同行為るとしようか……」
「(何年振りかな……人の為に武器を振るうのは……)」
『御主人様が行くとおっしゃるのでしたら、何処までも付いて行きます。(馬語)』
未だにジェイムズはフリードを女だと思っているらしい。
すると突然、その場にいたうちの一人が声を上げた。
>「あ、あんたは……!」
「……ん?」
>「ジェイムズ・ジャスティン先輩!『漆黒の騎士』ジェイムズ・ジャスティン先輩じゃないっすか!?」
「……如何にも。ジャスティンは姓では無く、名前だがな。我が姓はゼ……」
>「こいつらさっきからおかしな事ばっかり言ってるっすよ〜!
>「先輩の御威光でよ〜何とかしてくださいっすよ〜!」
色々とまくし立てるエンカに、ジェイムズは少し押され気味になる。
「う、うむ……(何だ此奴は……)」
『御主人様、いつの間にか有名人になってますね……(馬語)』
ジェイムズとしては、目立つのはあまり好みでは無いのだが。
- 36 :
- >>28>>33>>31
そのうち、一人の少女が声を上げた。
>「黒要塞せんぱ……いえ、黒騎士先輩。死霊科のパピスヘテプです。初めまして。
>フリード君とエンカ君の説明に補足をさせてくださいな。
>後エンカ君にも説明するから、これ食べながら聞いて頂戴」
>エンカにヤモリの黒焼きと赤まむしドリンクを差し出しながらフリードの説明に付>け加える。
>
>エンカがマリアベルと名乗るものに憑依されていた事。
>藁人形に移し替えようとしたが逃げられたこと。
>憑依解除の為にエンカの精気を吸って衰弱させたことも。
「フム……中々に深き事情が有る様だな……」
>「まあ、そういうわけで、フリード君も言うように館の主人であるアンチラストと>いう人とお話もしたいところですし。
>そもそも課題の清掃作業が文字通りの清掃作業とは思えなくなっていることもあり>ますの。
>あ、それから黒騎士先輩って鎧の力でテレパシー受信できないのですよね。
>この藁人形で中継しますから持っていてください。」
「……ム。何だ此れは……」
すると突然、藁人形が動き出しジェイムズの身体をよじ登り始める。
ジェイムズは鎧の中で嫌そうな顔をした。藁人形が虫っぽい動きをしていたからだ。
ジェイムズは虫がとても嫌いだ。見つけたら速攻で殲滅させるほどに。これは藁人形だったため踏まずには済んだが。
そのうち藁人形がジェイムズの耳元まで近づき、話し出した。
>『説明した通りエンカ君はつい先ほどまで憑依されていました。
>解除を試みたのですけど失敗。
>マリアベルがエンカ君から離れたのであれば問題ないのですけど、更に奥底に潜んでいる可能性も……
>だから衰弱したエンカ君を回復させなかったのですけど、黒騎士先輩が来てくれた>ので回復させました。
>念の為にエンカ君に注意を払っておいてくれませんか?』
「まあ、そういうなら仕方が無いが……」
そして、パピスヘテプが口を開く。
>「あ、そういえば、黒騎士先輩ってタバコ吸いました?」
「……私はこう見えても未成年だぞ……そして、我の事はジェイムズと呼んで貰って結構だ。」
すると、その場にいた男が声を挟む。
>「違う。この先輩サンからはタバコの臭いがしない……先程の足音の正体ではない>事は確かだな。
> 代わりに、ちょっと嫌な臭いが染みついているが。君、ガーリックか何かが好きだろう?」
少年は、ジェイムズに向かって苦い表情をしながら鋭い目で睨んでいる。
「我が好みがガーリックパンと言う事に良く気が付いたな。しかし……」
「(日中だと言うのにこの厚着、ガーリックが嫌い、そしてこの目つきの悪さに口調……………もしや………)」
「(…………いや、それは無い。我ながら考え過ぎ、か。)……何でも無い。気に為るな。」
『年上には敬語ぐらい使いましょうよ………(馬語)』
日中だというのに厚着なのは人に言えた事では無い。
そのうち、先程自分に石を投げた少女が喋り始めた。
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
「……R?貴様何を……」
>ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
>それは昇ってきた階段を破壊して地上への最短の逃走経路を寸断する。
- 37 :
- 「なッ!!貴様、血迷ったか!」
>「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
「貴様、少し黙れ……」
暴言を吐いたあと大暴れを始めた少女を止めようと、身を乗り出したその時。
「このまま暴れられると鬱陶しい!いい加減大人しくしていろ……『サンダー・ランス!』ッ!!」
先程の少年の手から閃光が迸り、雷撃が放たれる。
そして、その電撃は対象の暴走を止めるまでに至った。
「よし。少し冷静に成るが良い。」
その隙を突き、ジェイムズは暴走が止まった機械(リリィ)の腕を掴み、動きを完全に封じる。
「今のが魔術か。良くやったぞ、少年!……だが、サンダーランス(雷の槍)というには少し威力が低いし形も違うのでは無いか?サンダーパイル(雷の杭)に改名を勧めるぞ。」
『あの方の雷の槍が弱く見えるのは御主人様の槍術が強すぎるからでは……(馬語)』
ともあれ、機械(リリィ)の暴走は止まっただろう。
- 38 :
- >『アナタは、ダレ?アノ子はどこへいったの?』
「え?何か言った?」
偽アムリーテ(inリリィ)に誰かが問いかけた。だがそれは無機質な上に聞き覚えのない声だ。
>『アノ子がいないのなら、この体をのっとちゃいましょうよ。
>姉である私たちすべてのクラスタを破壊した最強のクラスタの体を…。
>おぞましき人間の男に誑かされた愚かな妹の体をね…』
「・・・・・・・・?なんか変な声が聞こえる。愚かな妹って、クラスタを破壊した最強のクラスタって何のこと?」
アムリーテのフルネームを記憶していないリリィは困惑している。
そんな彼女の気持ちとは無関係に、アムリーテの身体は不気味な笑い声を漏らし始めた。
>「あんたたち二人は慣れない身体で下手に動くと危ないから、ちょっとじっとしてて。
> 先輩に事情説明したら戻すから!」
(待って、パピちゃん行かないで!!)
リリィは内心で叫んだ。
しかし、彼女の内面で暴れまくるナニカのせいなのか、はたまた身体が違っているからか、無情にも切なる思いは届かなかった。
言いつけどおりじっとしているアムリーテの身体だが、その瞳は内面の葛藤を写すように、めまぐるしく点滅している。
内面ではリリィと、アムリーテの中にあるナニカとの激しいせめぎあいがあったのだが、外観からはうかがえるはずもない。
それでも、異常事態であることだけは伝わったようだ。
(まあ、ゴーレムのアムリーテとリリィが入れ替わったことが、既に大変な異常事態なのだが)
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
>ぶつぶつとアムリーテは呟きながら胸の宝石、エンジェルハートから圧縮砲を放つ。
>「んなっ!? 階段を……退路を断っただと!」
階段に直撃した光線は、見事に対象を瓦礫へと変えて道をふさいでいた。
最早リリィではない、そのアムリーテはフリードへと攻撃をしかけた。
だが今アムリーテの中にはリリィも混じっている。攻撃は食い止められなくても、意地でも仲間に直撃などさせるはずがない。
>「あむーっ!さっきからこのノイズはなんですか!?小便くさい小娘が!じゃまをするなです!」
「私はリリィよ!あなた達こそ・・・・・・黙れ・・・・・・・!」
アムリーテ(inリリィ)は、自分の身体が忘れていった自分のかばんを掴み上げ、前方の部分を握りつぶした。
ガラス瓶が割れる音がして、かばんから滴る水は、アムリーテの身体に降りかかる。
アムリーテは口を開けてそれを体内に取り込んだ。
ちなみに彼女が握りつぶした部分に入っていた液体は、聖水と毒消し草と薬草のボトルである。
どうやらリリィは、カラクリ『アムリーテ』は、呪われた品だと思ったようだ。
- 39 :
- リリィはナニカの行動をぎりぎりのところで妨害しつつも、破壊行動そのものはあえて遮らなかった。
それは力不足だったという理由もあるが、アムリーテを機能停止させるチャンスを待っていたからだ。
怨霊と化したアムリーテの姉達は知っていただろうか?
先ほどの仕掛け部屋で、アムリーテは動力切れで機能停止したことを。
あの時はフリードの機転で、短時間だが太陽光で充電ができた。
だがここは地下だ。
落ちる天井を支えるだけでエネルギーが切れたアムリーテが、大立ち回りをした挙句圧縮砲を撃って無事ですむわけがない。
>テオボルトはアムリーテの身体めがけて片手を向けた。
>「このまま暴れられると鬱陶しい! いい加減大人しくしていろ……『サンダー・ランス』ッ!!」
>狭い空間内に、バリバリと引き裂くような音と共に稲妻が迸る。
>当然ながら、その電圧は機械をショートさせるには十二分すぎる。
電圧が直撃した衝撃で、アムリーテ(inリリィ)が持っていたカバンが宙を舞う。
それは先ほどジェームズが立っていた壁にぶつかった。何かが作動し、周囲が明るくなった。
>「よし。少し冷静に成るが良い。」
その隙を突き、ジェイムズは暴走が止まった機械(リリィ)の腕を掴み、動きを完全に封じる。
だが、まだ安全ではない。
「お願い・・・・・抜いて・・・・・・・」
ジェームズはともかく、先ほどアムリーテの充電を見ていた者達なら、何のことか分かるだろう。
まあ仮にアムリーテの電池を抜くのが無理でも、凍らせるなどして体内に戻さないという選択肢もあるのだが。
さて、先ほど電池が切れた時、アムリーテはゴーストモードとして身体から抜け出ていた。
アムリーテがいない今回は、一体どうなってしまうのだろうか?
リリィがゴーストモードとして身体からはじき出され、ナニカが体内に残ったまま機能停止するのか?
リリィもナニカも、ゴーストモードとしてゴーレム外にはじき出されてしまうのか?
あるいは、リリィもナニカも閉じ込められたままこの場に残るのか?
それとも、受けた雷撃を力に変え、怯えるアムリーテ(inリリィ)をターミネーターよろしく活動限界まで追い詰めるのか?
魂に詳しいパピスヘテプとはいえ、生霊と怨霊、ゴーレムの擬似魂相手では頭が痛いだろう。
しかもアムリーテの魂は、リリィの身体ごと勝手に先に進んでしまった。
今までの経緯から考えるに、リリィの肉体に入り込んだアムリーテも、敵としか思えない状況になってきている。
無事皆がリリィ(inアムリーテ)に追いつけたとしても、彼女にとっては非常に不利な状況となるだろう。
変にこじれず、うまく誤解が解ければいいのだが。
- 40 :
- エンカはパピスヘテプからヤモリの黒焼きと赤マムシドリンクを受け取った。
今のエンカにとっては唯一心を許せるのはパピスヘテプだけだったが、ヤモリの黒焼きには眉をひそめざるをえなかった。
「パピちゃ〜ん、これって食えるのー?うそ〜?」
しかしヤモリを口にしない限りエンカの体は回復しないらしい。
エンカはヤモリの尻尾の先に恐る恐る鼻を近づけ、少しかじってみた。
「あぁ〜、なんとも芳しいような、う〜ん、ちょっとクセになりそうな……」
エンカはぶつぶつ言いながら少しずつヤモリを口にし始めた。一口かじるごとに、その量が増えていく。そして……
「ンまーーーいっ!!味に目覚めた!!」
どうやら彼も一族の宿命である悪食に目覚めてしまったようだ。
「パピちゃん、ヤモリをもう一匹くれ!」
そうエンカが言ったのはパピスヘテプの説明が終わってからである。既に一匹目のヤモリは完食していた。
「おっと、もちろんパピちゃんの説明は聞いてたぜ〜?丁寧な説明ありがとよ。
おかげでやっと状況が食えた…じゃなくて、飲み込めたってもんよ。
だが、一つだけわからねぇもんがある。それは…」
エンカはそう言ってアムリーテを指さした。
「一体お前は何なんだぁ!見たところ学園の生徒じゃあねぇだろ!その見た目から察するに、ロゼッタを襲ったのもお前だなーっ!?
いくら女の子だからってよ〜、悪い事を企んでたらこのエンカ・ウォンが承知しねぇぜ!」
エンカにとってアムリーテは初対面同然の上に今まで引きずりまわされたわけだから、信用しろと言う方が無理だろう。
その時、アムリーテの目が点滅した。
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
「な、なんだ〜!?やろうってのか〜!?言っとくけど俺にはお前が想像もできねぇような魔法が……!」
エンカはそう言いかけたが次の瞬間にはアムリーテの圧縮砲が放たれていた。
エンカの目前に迫る恐ろしい光線!エンカの運命やいかに!?
@ハンサムなエンカは突如反撃のアイデアを閃く!
A小粋なエンカは華麗に攻撃を回避する!
B一人じゃどうにもできない。現実は女難である。
「じょ、冗談じゃ…!!」
答えはB、B、B……
何かが爆発するような音が一瞬聞こえ、エンカの姿が圧縮砲の光に包まれて見えなくなった。
>「はい。で、どうするですか子どもたち。エンカさんでしたっけ?
>今ので蒸発しちゃったかもですね。ふひひ…。
>残骸から何か出てきましたか?皆で仲良くさがしてみましょうです」
今は誰が見るのだろうか?子供レーダーのエンカの反応も消えている。
燃える学ランの上着だけがその場に残った……
子供レーダーは新たにもう一つの反応を補足していた。
>>「……はぁ、あんまり来たくなかったけれど」
ロゼッタである。彼女は今やっと洋館の扉をくぐったのだ。
洋館に入ってから広いエントランスを一通り見てまわった。が、誰も見えない。
>>「!?」
一瞬の爆発音がロゼッタの耳に入った。
それは(ロゼッタは知るよしもないが)地下室へと続く扉の方からだった。
>>「熱っ……」
ドアノブに手をかけようとしたがすぐに手を引っ込めるロゼッタ。
扉の向こう側にある階段はアムリーテの圧縮砲でグチャグチャだ。
その瞬間、ロゼッタは“何か”を敏感に感じとり震えた。彼女はポツリと呟いた。
>>「………たった一人なのね?」
ロゼッタの目から涙がこぼれた。
- 41 :
- >26-40
>「あなたの墓穴、掘ってあげますです!」
床を突き抜けて下の方へ落ちていくフリードリッヒ
「やべぇフィー坊が死んだ!戦争や!ジルベリアとの戦争や!!」
あまりの出来事に思わず人間の言葉を喋ってしまうグレン
まあみんな気がついているだろうけどグレンの本当の種族名はケットシーであり
ケットシーの種族としての特徴は二本足で歩き人語を喋ることである
今まで猫語を喋っていたのは種族としてのプライドであり
実際は人間語を喋れるのだ
>「じょ、冗談じゃ…!!」
>エンカの姿が圧縮砲の光に包まれて見えなくなった
「げぇエンカさんも死んだ!?」
動揺しまくるグレン
『あれ・・・・ラインが切れてない良かったフィー坊生きてる』(猫語)
落ち着いたグレンは再びケットシー語を喋りだす
床の穴から勢い良く吹っ飛んで戻ってくるフリードリッヒ
「あ、危なかった偶然床に穴が開いて偶然下が逆落とし穴のあるフロアじゃなかったら
今頃死んでたかもしれません」
なんという都合のいい偶然
「って天井が近づいてきてウボァー!!」
だがそのまま天井に激突してダメージを食らうフリードリッヒ
そもそも逆落とし穴とは強力なバネを用いり被害者を天井にぶつけてダメージを食らわせるものなのだ
当然天井の耐久力は罠が発動するたびに減る
下のフロアの天井=上のフロアの床である
故に急に床に穴が開いたのだ・・・・・・いやんなわけがないだろう
もしかしたら姉であるフリージアの都合のいい偶然を引き起こす程度の能力(無意識)が
フリードリッヒを守ってくれたのかもしれない
(例:洗脳されそうになった時たまたま足を引っ掛けて転び頭を打って洗脳が解ける等)
まあそれがなくてもリリィの意志のおかげで直撃は避けられただろうが
「いけないこのまま落下したら無限ドリブルされてしまいます!!」
と無限ドリブルされてはかなわないので下に開いた穴を氷の魔法で閉じるフリードリッヒ
「ウボァー!!」
なんとか追突ダメージと落下ダメージで済んだようだ
「ああ・・・・悲劇のブレストアーマーが使い物にならなくなってしまいました」
とボコボコになったアーマーを脱ぎ捨てるフリードリッヒ
耐久力が無くなったのは天井兼床だけではなくフリードのアーマーもであったようだ
呪いが解けてよかったのか強力な防具がお釈迦になってしまって悲しいのか
>「お願い・・・・・抜いて・・・・・・・」
「あれを引きぬくんですね!わかりました!!」
と多少よろつきながら何とか電池を引きぬくフリードリッヒ
「ところでエンカさんはどちらに?」
エンカが消えた瞬間をフリードは見ていないその頃は床の下にいたからだ」
- 42 :
- ガーリックの臭いに敏感に反応するテオボルトに苦笑しつつ、エンカに二本目のヤモリの黒焼きを差し出した。
そこに弛緩した空気というものが生まれていたのかもしれない。
振り返るまでアムリーテ(inリリィ)の異変に気づけないでいたのだから。
振り返ればそこには目を赤く光らせたアムリーテ(inリリィ)
「リリィ?いえ、違うわね。あなたは誰?」
尋常ならざる雰囲気に息をのみながら感覚を研ぎ澄ます。
>「アナタを殺して分解してみたらちょっとは何かがわかるかもです。
>少なくともマリアベルってものが何なのかとか。でも、何にも出てこなかったらごめんなさいです」
支離滅裂、意図不明な言葉にパピスヘテプは戦慄する。
それは会話の成り立たない、怨霊と成り果ててしまった霊に通じるものがある感覚であったからだ。
パピスヘテプは知らぬことではあるが、その直感は当たっていた。
兵器として造られた疑似人格にあってアムリーテシリーズの怨霊はあまりにも通俗的に狂っているからだ。
必要のない感情や主体性を持ってしまっている時点で兵器としてはもはや使い物にならないのだから。
そして放たれる圧縮砲。
階段が崩壊し、そしてエンカは燃える学ランを残し消え去ってしまった。
だがそれをパピスヘテプは見ていない。
なぜならば、その余波によって吹き飛ばされ、崩れ落ちてきた瓦礫に埋もれてしまったからである。
リリィとアムリーテシリーズの怨霊が鬩ぎ合う中、フリードに拳が叩きつけられる。
その恐るべき威力は床を突き破るほどに!
瓦礫から漆黒の巨大なケロべロスが這い出てきたところで、アムリーテの暴走は鎮圧されていた。
コートとして纏っていた影獣が本来の姿を現しパピスヘテプを生き埋めの危機から守ったのである。
テオボルトの雷がアムリーテの機体を貫きショートさせる。
その隙にジェイムズが腕を掴み動きを封じたのであった。
なぜか地中に埋もれたはずのフリードが天井から降りてきたのは謎だったが、それを気にする余裕はない。
下の買いが逆落としの罠が仕掛けられていたとは神ならぬパピスヘテプは知りはしないのだから。
とりあえずはアムリーテの暴走は抑えられたのだが、パピスヘテプはそれを見ても安心はできなかった。
ジェイムズの怪力無双には定評がある。
が、影縫いを無自覚に破るほどの10万馬力を誇るアムリーテの機体。
油断はできない。
とはいえ、先ほど壁に小さく穴をあけるだけでエネルギー切れを起こしたアムリーテである。
フリードの氷のレンズによる集光による充電がなされたとはいえ、それほど多くはないはずだ。
これほどの大暴れができた事すら驚きであるほどに。
アムリーテの機体を完全停止させるために近寄った時、自分と同じ思いの人間がもう一人いた事に気が付いた。
それはアムリーテの中にいるリリィである。
>「お願い・・・・・抜いて・・・・・・・」
連続ドリブル地獄を危機一髪で脱したフリードがそれに応え電池を引き抜いた。
これで機体の方は大丈夫であろうが、パピスヘテプはさらに踏み込み対処を決意していた。
「ごめんなさいねリリィ、気づいてあげられなくて。
先にあなたをその物騒な体から移すわ。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢して。
肉体の方もすぐに取り戻すから」
自分の感知能力の未熟さを呪いながら押さえつけられているアムリーテ(inリリィ)の頭に荒縄を巻きつける。
反対側には藁人形が。
こうしてリリィはアムリーテの機体から抜け、藁人形へと移ったのだった。
- 43 :
- 「ハァ……雷を使えるテオボルト君とアムリーテを抑えられるジェイムズ先輩がいて助かったわ。
二人ともありがとう。
それにしても、この中にいるのはマリアベル?別の怨霊?
どちらにしても会話が成立しなさそうだし、残念だわ」
基本的に霊とは対話を通じてその残念を解消して昇天させたいと願うパピスヘテプ。
だがもちろん世の中そんなに都合よくは回ってはくれない。
そもそもが昇天を拒み無理やり現世にしがみついているのであるから、むしろ話が通じる方が珍しいのだ。
それでもはやり、こういう時にはパピスヘテプの胸は痛む。
「ジェイムズ先輩、そのまま押さえつけておいてくださいね。テオ君は少し離れていて」
少し沈んだ声でジェイムズにお願いすると、パピスヘテプの両袖とフードの犬の顔から咆哮が放たれる。
三つの咆哮は絡み合い、一つの巨大な方向となってアムリーテの機体を貫いた。
ケロべロスの咆哮。
生者にとってはただの咆哮にすぎないが、死者の魂、霊体に直接打撃を与え、肉体から弾き飛ばす力を持つ。
咆哮により消滅もしくはアムリーテの身体から飛ばされるアムリーテシリーズの怨霊たち。
「鬼籍に降りている以上、この咆哮に、そしてこの光に抗えはしないわ。
さあ、あなたたちのいるべき世界はもうここではないの。
ここからお逝きなさい」
高々と掲げられるカンテラ。
しゃれこうべを模したカンテラにともる紫の炎は冥炎であり、彼岸への入り口でもある。
ケロべロスの咆哮に追い立てられたアムリーテシリーズの怨霊はその吸引力に引かれ次々に炎に吸い込まれていった。
「ああ、またやっちゃった。ごめんね……
さ、次はリリィの肉体と、そこに入っている最後の怨霊の始末ね」
強引に昇天させたことへの脱力感と自分の力なさへの失望と共に、まだ事態が終わってない事を自分に言い聞かせる。
フードを一旦脱いで戦闘モードを解き、一息入れた。
そしてリリィの入った藁人形を持ち上げ振り返ると……
>「ところでエンカさんはどちらに?」
「あ、あ……!?エンカ君??」
フリードの質問の答えは振り向いた先にあった。
燃え盛る学ラン。それは紛れもなくエンカのものである。
それが何を意味するかは否が応でも最悪のイメージが叩きつけられる。
パクパクとした口に震える手で香木を当て大きく深呼吸。
「す〜〜〜〜〜〜はぁ〜〜〜〜〜〜〜。す〜〜〜〜〜ぅ〜〜〜〜はぁ〜〜〜〜〜〜〜。
大丈夫、大丈夫よ。そう、燃えた学ランがあるだけ、そうなんだから」
鎮静効果のある香木を口に当て深呼吸し、ぶつぶつと呟いた後ようやく落ち着きを取り戻したように影から取り出した。
それはヤモリの黒焼き。
エンカがその味に目覚めた事を思い出しながら、パピスヘテプはそれに齧りつく。
ただでさえ燃費が悪いのに、先ほどから術を行使したりダメージを受けたりしすぎたのだ。
空腹は思考を鈍化させる。
それを補うために、パピスヘテプはこまめに戦闘状態を解除し、食べるのだ。
「エンカ君は大丈夫。燃えているのは学ランだけだし、体だけ蒸発なんてありえないもの。
とりあえずは先にリリィの身体を取り戻しましょ。
どこにいるかはわかっているから」
そう、リリィの影には藁人形が仕込んであるのだ。
どこにいるか位置くらいは判るというもの。
リリィの身体に憑りついている怨霊を他の怨霊と同じく冥界に送る為に、パピスヘテプは歩き出した。
突如として現れ同行したゴーレム。
マリアベルやアンチラストとは別ではあるが、その手先、もしくは脅威に他ならない。
既にパピスヘテプの中では滅すべき敵としてアムリーテは認識されていた。
- 44 :
- ――映像に映っていた光る吊り天井の部屋で
リリィのなかのアムリーテはぷるぷると震えていた。
きっと自分の体を操っていたのは姉たちのゴースト。
大昔に敗北した腹いせに、アムリーテが好きな子どもたちを
痛めつけようとしたのかもしれないし、もとから狂っていたのかもしれない。
なぜなら彼女たちは人をRために造られた兵器。
殺人に存在意義を感じて大いに殺戮を楽しんでいたのかもしれないのだ。
扉の隙間から聞こえるのは雷撃の音。
その後、静かになったかと思うと犬の遠吠えが微かに響いてくる。
たぶん、アムリーテの体は機能を停止させられた。
それはとても悲しいことだったが当然のことなのだ。
「私の願いが、こんな悲劇に繋がってしまうなんて…」
その時、リリィ(アムリーテ)の両目から涙が零れ落ちる。
多分エンカとフリードリッヒは死んでしまっている。
他の子どもたちにも多大な迷惑をかけてしまっている。
それに姉たちの怒り。
大好きなセンセイのためにやってきた結果がこれなのだと思うと
自分自身を虚しく感じる。
「……うぅ〜〜〜」
リリィの体を使い、アムリーテは涙を流していた。
すると聞こえてくるのはパピスヘテプたちの足音。
姉たちのゴーストはきっと彼女に処理されたのだろう。
今までの彼女の言動でそれは察することができた。
涙を拭って、アムリーテは立ち上がる。
子どもたちに合せる顔はないが、大好きなセンセイを人目みるまではこのままでいたい。
きっとリリィたちはエンカとフリードリッヒを酷い目に合せたアムリーテを許さないだろう。
「ごめんなさいリリィ…。体は絶対に返します」
胸に手を当ててリリィの心臓に願うアムリーテ。でもこの部屋は行き止まり。
なのでアムリーテは強く願った。助けてくださいセンセイと…。
その刹那、記憶の底から蘇るのはセンセイが差し伸べる手。
アムリーテの髪についたゴミを取ってくれた優しい手。
その手は幻影機に収められていた手と同じものだった。
そう、石像の口のなかに手を入れた者とおなじもの。
「……もしかして」
石像の口の中のスイッチを押して、光始めた天井の魔法円を見つめる。
そしてアムリーテは部屋の中に落ちていた石の欠片を天井に投げてみる。
すると石の欠片は落ちてこなかった。
「やっぱりです!この先にセンセイはいます。私はアノ人に会いたい。会えるまでは絶対に諦めません!」
その後、光り輝く吊り天井に押しつぶされるかのようにリリィ(アムリーテ)はその場から消えた。
- 45 :
- リリィ(アムリーテ)がたどり着いた場所は不思議な場所だった。
薄闇のなかで光る魔方陣から出るとそこは洞窟のような迷路のような、
巨大な蟻の巣のような感じもする場所。
キノコや光苔、輝く水晶のようなものが木のように生えていたりもした。
まるで人工物と自然物のカオス。
不思議な気持ちになりながらリリィ(アムリーテ)は
ぺたぺたと坑道のような道を下へ下へと降りてゆく。
それはまさに冥府行。世界各地に伝わる神話のような感じだった。
エウリディケとオルフェウス。イザナミとイザナギ。行き先は亡者の国。
それならばこの先にアンチラストはいるのだろうか?
でもその前に早くセンセイを見つけてリリィの体を返したい。
「はあ…疲れたです」
巨大キノコに腰をかけて休憩をする。
ひとりぽっちは何となく寂しいが特別になれた感じもして何か清清しい。
そんな時、聞こえてきたのは動物の咆哮のような不気味な音。
【謎の地下迷路へ逃げるリリィ(inアムリーテ)】
- 46 :
- >>44
×大昔に敗北
○敗北
大昔じゃありませんでした。
どうでもいいことなんですけどいちおう訂正させてください。
- 47 :
- 魔法装置が作動し、室内が明るくなった。
すると、先ほどの騒ぎのせいでアイテムボックスがひっくり返っているのが見える。
その側に、テオボルトのカバンやリリィの荷物、それにエンカの荷物がぶちまけられていた。
どれもこれもエンカが預かっていた荷物だ。
エンカはそれらを館の一階にある客間にてアイテムボックスに入れていた。
魔法に疎い彼は、そのアイテムボックスが館の各所に置かれている同様のアイテムボックスと
中が繋がっているマジックアイテムだとは知らなかったのだ。
また、ぶちまけられた荷物に混じってタイプライターで打たれた文書が出てきた。
どうやらそれらの文書もアイテムボックスに入れられていたようだ。
それには次のような事が書かれていた。
『2月12日 記:マリアベル・ホワイト
外は生憎の雨。私の心も晴れない。
なぜなら私は今日、とても重い決断を下さなければならないからだ。
アンチラストを廃棄物として処分する。
研究にはいつも犠牲がつきものだ。私は自分にそう言い聞かせる。
例え自分の娘の細胞であろうとも……』
『2月15日 記:マリアベル・ホワイト
あえて日を一日ずらした。理由は言わずもがな。
正午から館へ来た三人の魔法使いに二人の人造人間の説明をした。
アンチラストとユニソルブル。今回彼らに処分を依頼したのはアンチラストだ。
魔法使いの一人が言った。ユニソルブルも処分するべきではないか?と。
私をイライラさせたその魔法使い―たしかギルハートという名だ―に念を押した。
アンチラストは危険な存在だ。
明日も私をイライラさせたいのなら、地下へ降りる前に十分慎重でありますように!』
『2月16日 記:マリアベル・ホワイト
頭痛がする。とりたてて書くことは無い』
『2月18日 記:マリアベル・ホワイト
雨はかれこれ一週間も降り続き、収まる気配がない。
ギルハート達は気の毒なことをしたが、しかし彼らは私がこれから行う業に十分役にたった。
一つは、アンチラストの能力が“真実への到達を拒む事”であると解き明かした事。
もう一つは、アンチラストを拘束することに成功したことである。
アンチラストの能力が“真実への到達を拒む事”であることから、
殺そうという結果を求める限り彼女は絶対にその真実へと到達しない。
だが必ず果たさなければならない。
そうしなければ、同じ娘のガン細胞から造られたユニソルブルもまた、
完成という真実へと到達しないのだから』
『2月18日 夜
私はついにアンチラストを死に至らしめる方法を悟った。
殺そうという結果を求めてはならない。しかし、過程の中に死が含まれる行為が果たしてあっただろうか?と。
それは拷問である。拷問の目的はRことではないが、時にその過程で人を死に至らしめる。
しかし私は自分の娘と決めたこの生命へそのような陵辱ができるのだろうか?
今まさに覚悟を決めなければならない。
おお、神よ………!』
最後の文書には日付も名前も書かれていなかった。
『どうしてこうなってしまったのだろうカ
私はニンゲンではなくなってしまった
ただ、娘を生き返らせようとしただけなのに
リョウジョクがタリナイのデスカ
タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ タスケテ
ddddddddd オカアサン ダイスキ』
- 48 :
- 謎の地下迷路へと入り込んでしまったリリィ(アムリーテ)の懐から小さな人間サソリが飛び出した。
それはエンカを操るマリアベルと対決した際、リリィの服の中に飛び込んだ一匹だった。
人間サソリはまっすぐとある方向へ向けて歩き出す。
地面にはときどき『オカアサン ダイスキ』という落書きが書かれていた。
人間サソリを追いかければ追いかけるほど、それと同じ落書きをそこかしこで見かけるだろう。
『オカアサン ダイスキ』
『オカアサン ダイスキ』
『オカアサン ddddddddd』
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
もう少し先へ進むと、そんな謎の声が聞こえてくる。
それは少女の声のようだった。
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
さらに先へ進むと、小さな人影が見えてきた。
どうやらその、粗末な布切れをかぶった人物が謎の呪文を唱えているようだ。
その人物はリリィ(アムリーテ)に背中を向け、座ったままずっと呪文を唱え続ける。
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
その人物の前に、三つの骸骨が置かれていた。
もしかしたら、その謎の人物は死者を供養をしようとしているのかもしれない。
「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
呪文が終わった。謎の人物はしばらくうつむいた後、顔をあげた。
背中を向けているので、容姿はよくわからない。
しかし間もなくリリィ(アムリーテ)は悟るだろう。
目の前にいるこの人物こそがアンチラスト・ホワイトであることを……
- 49 :
- どこからか聞こえてくる謎の咆哮のような音に、リリィの体が自然と震える。
すると服の中から飛び出してきたのは一匹の人間蠍。
それはどこかに向かってぞろぞろと歩き出す。
(きっと、主であるアンチラストの元へと向かっているです)
アムリーテはそう思考して蠍について行った。
幻影機には鼠の左腕の再生治療が収められていた。
アムリーテはそれがセンセイと何気に関係があるような気がしていた。
だからこの洋館の謎を解けば、アンチラストの元へと向かえば、
センセイに出会えるかも知れない、と思う。
>地面にはときどき『オカアサン ダイスキ』という落書きが書かれていた。
「オカアサン?」ふと幻影機に映っていた白衣の女が脳裏に浮かぶ。
>『以上で私の発表を終わります。
この研究が、私の娘のためだけでなく、広く世界で難病に苦しむ子供達の助けとならんことを…(ガーーーー)』
「オカアサン、ダイスキ」とは、たぶんその女の娘が書いた落書き。
しばらく進むと謎の人影。三つの骸骨。
>「ブッダム・サラナム・ガッチャーミ
ダンマム・サラナム・ガッチャーミ
サンガム・サラナム・ガッチャーミ」
「あなた、誰ですか?ここで何をしているですか?」
人間蠍を追いかけているうちにここに来てしまった。
ということは謎の人物の正体はアンチラストの可能性が高い。
しかしその小さな容姿に、アムリーテは思わず問うてしまう。
「オカアサン、ダイスキ…と、道に書いたのはアナタですか?」
誰かを好きと思う気持ちはアムリーテも同じ。
そんなアンチラストに同情をするアムリーテ。
「あの落書きを読んだオカアサンは、きっと嬉しいとおもうです。
心は心をスキになります。それはとても不思議なことです」
そう言ってリリィ(inアムリーテ)はアンチラスト・ホワイトを見つめた。
- 50 :
- >「ごめんなさいねリリィ、気づいてあげられなくて。
>先にあなたをその物騒な体から移すわ。ちょっと窮屈かもしれないけど我慢して。
>肉体の方もすぐに取り戻すから」
・・・・・・・いつものリリィなら、たとえ藁人形に魂が移し変えられたとしても、きっとへこたれなかった。
なぜなら彼女の日常は、常にトラブルと隣りあわせだったからだ。
だから本当なら、その場にいる全員に土下座せんばかりの勢いで謝罪とお礼をしたり、
「ありがと、パピちゃん愛してる!」と、藁人形なのにハートマークを飛ばしまくったり、
ジェームズ先輩にテレパシーが通じず困惑したり、
フリードの機転に感謝し、怪我が大したことがなさそうで一安心したり、
グレン、本当は人間語しゃべれたんだぁ、としみじみ驚いたり、
テオボルトに
「助かったけど、感電の衝撃で、私の魂がうっかり死んだらどーするつもりだったのよばかー!」と、噛み付いたり、
パピスヘテプの浄化を目の当たりにして、敬虔な気持ちになったりしただろう。
もしも。
もしもその場に、エンカが存在していたならば。
>「ああ、またやっちゃった。ごめんね……
>さ、次はリリィの肉体と、そこに入っている最後の怨霊の始末ね」
>「ところでエンカさんはどちらに?」
>「あ、あ……!?エンカ君??」
>燃え盛る学ラン。それは紛れもなくエンカのものである。
藁人形リリィが力なくうなだれた。
『私が悪いの。止められなかった。私が殺しちゃった。私がエンカを・・・・・・・』
>「エンカ君は大丈夫。燃えているのは学ランだけだし、体だけ蒸発なんてありえないもの。
>とりあえずは先にリリィの身体を取り戻しましょ。
>どこにいるかはわかっているから」
パピスヘテプがとりなすようにリリィに声をかけた。
『でも、でも!私さっきまでカラクリの中にいたから知ってるの。
私が攻撃した瞬間、エンカの反応が消滅したのよ!』
藁人形リリィは大声で泣きたかったが、体がないためそれは不可能だった。
そして本当はわかっていた。今一番重要なのは、ここで問答することでは無い、ということを。
自分の体はもちろん取り返したい。
そしてエンカの事も知りたい。
この島で起こったさまざまなトラブルや、人間サソリをはじめとするアンチラストなる人物の事も気にかかる。
だが一気に片付けようとするのではなく、目の前の事を一つ一つ確実にこなしていく事が肝要だ。
- 51 :
- 『・・・・・・・・わかった。取り乱してごめん。
そうだね、服だけが燃え残るなんてありえないよね。
そもそもエンカが死んでたら、この場に彼の魂がないとおかしいもの!』
藁人形リリィはそうやって最悪の事態を打ち消しつつも、万が一エンカが死んでいたら、という取り返しのつかない事態のことも考えてはいた。
どれほど悔やんでも、死んで詫びてもとても償い切れない罪だ。
(そうだ。そのときはハピちゃんにお願いして、エンカには私の身体を使ってもらおう。
女の子になっちゃうけれど、死ぬよりはいいよね。お詫びなんて、そのくらいしか出来ないもの・・・・・・・)
藁人形リリィは、パピスヘテプの肩先で手足をぴこぴこさせながら、この場にいる全員にテレパシーで呼びかけた。
『皆、エンカのことも心配だけれど、まずは私の体を取り返したいの。
もしかしたらまた危ない目にあうかもしれないけれど、協力してくれると嬉しいです?』
藁人形リリィは ジェイムズにもおずおずとテレパシーを送った。
『 ジェイムズ 先輩、課題とは無関係なトラブルですが、一緒に来てくださると大変心強いのですが・・・・・・・』
だが反応は薄い。
藁人形リリィは先輩のまとう鎧が、自分の『声』を遮断しているということを知らなかったのだ。
『や、やっぱり石をぶつけたことを、まだ怒っていらっしゃいますか・・・・・・・』
話が大体まとまったところで、藁人形リリィがおずおずと口を開いた。
『あ、それと。えっとね、この先に進む前に、念のためハンカチで口元を覆うか、マスクしてくださいませんか?
実はその、さっきゴーレムの中に入ってたとき、モウソウダケの一種がこの先に生えてるかもって感じたんです』
モウソウダケとは、鎮静剤に使われる薬用キノコだ。
貴重なキノコだが、そうと知らずに近づき大量に胞子を吸い込むと、思考が鈍くなったり、幻覚をみたりするのだ。
『あ、いや、ゴレームと人間の五感って根本的にイロイロ違うんで、絶対にあるのか?って言われると自信ないんですが・・・・・・。
まあ、念のためって事で。
もしマスクが無い方は、かばんの中にあるので使ってくださいね』
先に進むと、目の前に扉があった。
『あーこれ見覚えある。さっきの幻灯機の映像と同じだよね。あ、やっぱり。
確か、石像に手を突っ込むと、光る天井に押しつぶされてあぶないよーって感じだったよね?』
・・・・・・藁人形でなくても、リリィは、謎解きには向いていないようだ。
『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
リリィは短い手足で準備体操をしている。穴に飛び込む気満々のようだ。
- 52 :
- さて、フリードが電池を引き抜き、パピスヘテプがリリィ魂を藁人形に移した後、ジェイムズは状況を整理した。
リリィの魂は、藁人形に。
アムリーテの中身は、リリィに。
機械の中身は未だわからない。
そんなカオスな状況の中、ジェイムズは平静さを取り戻していた。
そして、今までエンカがいたところを振り向く。
「あれは………」
そこに落ちていた学ランが、静かに燃えるさまが何を意味しているかは明らかだ。
だが、今は自分がなすべき事を考えなければ。そして、まだ彼が死んだとは言い切れない。
が、もし死んでいたなら、ここの者たちはどんな心境か。
>『私が悪いの。止められなかった。私が殺しちゃった。私がエンカを……』
「……………」
藁人形(リリィ)が発した言葉が、ジェイムズの心に重くのしかかる。
なぜなら彼もまた、過去に眼前で仲間を失っているのだからーーーーーーーー
「………………ジークフリート……………」
そして彼は静かに、かつて護れなかった仲間の名を呟くのだった。
- 53 :
- すると突然、肩に乗せた藁人形が喋り出す。
『……リリィさんが、ついて来てください、とテレパシーで言っています。』
「む………そうか。ならば行かねば成るまい。此処まで付いて来て断る理由など有る物か。」
>『あ、それと。えっとね、この先に進む前に、念のためハンカチで口元を覆うか、マスクしてくださいませんか?
> 実はその、さっきゴーレムの中に入ってたとき、モウソウダケの一種がこの先に生えてるかもって感じたんです』
「モウソウダケ……?幻覚作用が有ると言うキノコか。我は鎧が有るから心配は要らん。」
そう話しつつ扉の前に着く。そこには、石像があった。
>『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
そう言いつつ、ジェイムズはノリノリなリリィに思わず嘆息するのだった。
- 54 :
- >「よし。少し冷静に成るが良い。」
動きの止まったアムリーテボディをジェイムズが捕まえる。
ほう、と感心したようにテオボルトが息をつく。
彼は魔法を撃った後のフォローを考えていなかったが、ジェイムズが上手い事やってくれたのだ。
テオボルトの中でジェイムズの評価が多少上方修正された。
>「今のが魔術か。良くやったぞ、少年!……だが、サンダーランス(雷の槍)というには少し威力が低いし形も違うのでは無いか?サンダーパイル(雷の杭)に改名を勧めるぞ。」
などという無駄口さえ叩かなければ。
ジェイムズの言を鼻で笑い、先程まで明かりをつけていた杖をしまう。
「ハッ、所詮『槍』なんてこの程度だろう? 黒い鎧の少年。……ま、君が幾つかは知らんがな」
その後、リリィのだろう言葉に従いアムリーテボディの電池をフリードが引き抜いた。
そしてパピスヘテプがリリィの魂を移し、ボディにしがみつく怨霊の対処を行う。
彼女の服の犬の顔から咆哮が放たれ、狭い空間内の空気をビリビリ振るわせていく
生者には問題ない筈である――が、咆哮の余波の影響か、テオボルトは妙な寒気を覚えながら処理を見ていた。
果たして作業は終えられ、フリードが一言疑問を投げかけた。
>「ところでエンカさんはどちらに?」
「……えっ?」
>「あ、あ……!?エンカ君??」
>「あれは………」
テオボルト、パピスヘテプ、ジェイムズが三者三様の反応を見せる。
かつてエンカのいた場所にあったのは、燃え盛る学ランだけ。
エンカの姿はなかった。
「死んでしまったのかな……? ……ああ、そうか、流石に学ランだけ残るのも不自然か」
割と冷静、というよりはドライな反応を示すテオボルト。どうやら死生観は大分渇いたものらしい。
うろたえそうなパピスヘテプ、うなだれる藁人形リリィ、落ち込むジェイムズをスルーして周りを見渡す。
何か手がかりらしき物はないかと思ったのだが、それらしきものはない。
しかし、発見はあった。明るくなった室内で見つけたのはひっくり返ったアイテムボックス。そして自身のカバンだった。
つかつかとカバンに歩み寄り、埃を払って中身を見る。中にあったのは当然の如く、彼の持ち物である。
「ふむ……エンカがこんな所に荷物を入れるとも思えない。とすると、中がつながっているマジックアイテムかな?」
ちらと辺りを見ると、どこかで見たようなもの(リリィやエンカの荷物)も散らばっている。
見た事のない文書も落ちていた。
好奇心から拾って読んでみると、マリアベルの日記らしい。
ざっと読んでいくうちに色々なことがわかっていく。
アンチラストはマリアベルの娘のガン細胞からの創造物であること、その創造物はもう一体存在すること。
マリアベルは元は人間であったこと、アンチラストの能力の事、マリアベルの狂気――――。
- 55 :
- >『皆、エンカのことも心配だけれど、まずは私の体を取り返したいの。
> もしかしたらまた危ない目にあうかもしれないけれど、協力してくれると嬉しいです?』
そこにテレパシーが届く。リリィからだ。一度目線を上げて、また文書に落としながら片手を上げる。
「ん……了解だ。ミス・クラスタの事も気になるしな」
リリィからモウソウダケの説明を聞きながら、テオボルトは考える。
アンチラストとはいったいどのような人物なのか?
マリアベルからは「危険」と評されていたし、その能力の全貌はつかめない。
油断できない相手ではあるだろうが。
「……今はミス・クラスタについてが先か」
アンチラストと相見えるよりも、アムリーテを捕まえる方が早い筈だ。
目の前の事を片付けてからでも遅くはない。
「フリード、マリアベルの日記だ。目を通しておくといい」
書類を渡すと、首に巻いていたスカーフで口元をしっかり覆う。
そして、カバンから水筒を出し、残りの荷物をまたアイテムボックスに入れた。
>先に進むと、目の前に扉があった。
>『あーこれ見覚えある。さっきの幻灯機の映像と同じだよね。あ、やっぱり。
> 確か、石像に手を突っ込むと、光る天井に押しつぶされてあぶないよーって感じだったよね?』
>『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
>「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
「二人して無茶というか、無謀というか、考えなしというか」
ノリノリなリリィと、それに嘆息するジェイムズに呆れたような皮肉を漏らす。
カツカツと自然な動きで石像の前に立ったテオボルト。
「まぁ、それもまた一興というものかな。そら、起動、っとな」
躊躇いなく石像に手を突っ込み、スイッチを押した。
天井に光で円陣が描かれ、そのまま降りてくる。
「そもそも、天井が落ちてきたはずなのに幻灯機は無事だったんだ。それが回答のヒントだと私は思うね」
落ちてきた天井の円陣が体に触れた瞬間、テオボルトの体は転移した。
「……ふぅ。いやはや、無差別転移だったか。とにかく無事でよかった、アレが対象を選別する物じゃなくて」
辿り着いたのは、人工物と自然物がごちゃ混ぜになった不思議な道。
苔生した空間は下へと降りていくらしい。我先にとテオボルトは歩みを始める。
「この先には何かありそうだな? さて、何があるやら……アンチラストでなければいいが」
多分そうだろうな、と思いつつ、水筒を開けて中身を飲み歩く。
- 56 :
- >『んーと。では、私が石像の穴に入って作動させてみる?藁人形なら、ちょっとくらい潰れても大丈夫だろうし』
吊天井の部屋で藁の身体だからと穴に飛び込む気満々のリリィをパピスヘテプはため息をつきながらつまみ上げた。
「あのねリリィ?あなたは今藁人形、ストローゴーレムの身体だけど、物理的なダメージには弱い代物なのよ?
身体というのは魂を縛る檻であると同時に魂を守る砦でもあるの。
身体を失えば魂はよりどころをなくし、迷う事になるわよ」
仮宿の身体の様な藁の体の機能を知らぬのは当たり前だが、それにしてもその無謀さにため息を隠せない。
とはいえ、身体を失った魂は迷うと言ったのはエンカの件での配慮だった。
死者の魂は大抵の場合迷うことなく昇天し、次なる生へと旅立つのだ。
迷えるのは迷えるだけの強い残念を持って死した死者だけである。
心残りや悔いなどというレベルで迷えるのならばこの世は死者の魂でイモ洗い状態だ。
意志も感情も全てを凌駕する妄執だけがそれを可能にする。
だからこそ、話の通じる霊は珍しく、「それのみ」の為に存在する怨霊となるのだ。
だがそれを言うわけにはいかない。
先ほどリリィは「死んだのなら魂が〜」と一つの拠り所にしていたのだ。
それを崩すわけにはいかない。
そんな考えを表情から読まれてはいないだろうか?
隠し事は人を不安にさせ、それを塗り潰す様に言葉を綴ってしまうものだ。
「あ〜、そういえばちょっと考えていたんだけど、エンカ君って東方出身だよね?
東方のニンジュツには金蝉脱殻の術ってあるんだってのを思い出したのね。
攻撃を受ける時に服からすり抜けて躱す術で、攻撃した方は服があるから気づかないって術。
状況的にみてその術を使ったのね」
躱していたのならどうしていなくなっちゃったの?
なんて問われれば言葉に窮するような仮説だが、誤魔化しの為に絞り出した言葉など往々にしてその程度のものだ。
>「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
そんな事を話しているとジェイムズが自分が吊天井にかかってみるのに適任だと言い出している。
その言葉を聞いてパピスヘテプは苦笑を漏らした。
ジェイムズは強い。
おそらくこのメンバーの中で戦闘力でいえば一番強いだろう。
だが、だからこそ、頼れぬこともある。
一匹の猫。
ネズミにとっては恐るべき捕食者であり、最大限に危機感を抱く相手である。
しかし人間にとっては愛玩動物であり、危機感を抱く事すら難しい。
極端な例ではあるが、ジェイムズを頼れぬ理由がこれである、
強いが故に危機感に対するギャップが激しく、同じレベルで行動すればとてもついていけない。
逆にこちらのレベルに合わせてもらうとすれば強力な戦力が低下してしまう事になる。
「あ、そうそう、ジェイムズ先輩の肩に乗った藁人形、リリィのテレパシーを自動で受信して囁くようにしておきました」
これでパピスヘテプが中継しなくともコミュニケーションに支障が出ることはないだろう。
次に視線を巡らせたのはテオボルト。
目先が効き先ほどもマリアベルの日記を見つけ重要な情報を得た。
頭の回転が速く戦力的にも申し分ないのだが……
皮肉屋で行動が早すぎる。
そう、今も確認もせずに吊天井のゲートに飛び込んでしまうほどに。
確たる推理から導き出された行動なのだろうが、守るタイプには思えない。
ここに至りてパピスヘテプの視線が行き着く先はフリードであった。
フリードもシルベリアの逸般人である。
ジェイムズと同じ理由が適用されそうなものなのだが、他の二人があまりにも濃すぎて感覚的に近しく感じてしまうから困る。
もちろんそれだけでなく、紳士的でフェミニスト。
更には氷の術を使えるので万が一藁人形が破損したとしても凍らせることで応急処置ができるのも大きかった。
戦力的にも思考的にも一番バランスが取れている。
- 57 :
- 「それじゃあフリード君、リリィが無茶しないように預かってもらえる?」
リリィの入った藁人形を渡して、自分は後から行く旨を伝える。
燃費が悪く体力的にも貧弱なパピしヘテプ。
島についてからここまでに術と体力をあまりにも消耗しすぎたのだ。
アムリーテシリーズの怨霊を無理やり冥界送りにした事に対する精神的な消耗もある。
「このまま強行軍しても肝心な時に倒れても困るし、この先休める場所があるかもわからないし。
私ここで食事してから行くから先に行ってて。
大丈夫、リリィの影にも、ジェイムズ先輩の肩にも、リリィ自身も私の藁人形なんだから迷う事はないわ」
そして術をかけ、リリィにもリリィの身体の影に入った藁人形がどこにあるか感じられるようにした。
これでお互いが迷うことなくリリィ(inアムリーテ)を確実に追跡できるであろう。
「上級生二人が同行する課題、食堂で見たサソリ小人、幻灯機で語られたキメラウィルス、そしてマリアベルの日記。
並べてみると悪い予感以外しない状況だし、急いで。
中身が何であれ、慣れない、しかもリリィの身体なら大した抵抗もできないでしょうから取り押さえちゃっておいて
お腹いっぱいになって追いついたらすぐに元に戻すから、ね」
必要性を並べ立てて先に行かせると、パピスヘテプはその場に座り込んだ。
体力的にもはや限界だったのだ。
座り込むパピスヘテプの影から壺がいくつも浮かび上がり、ゆっくりとそれに手をかける。
壺の中身はワイン、肉、パン、その他滋養効果の高い食べ物だ。
それらをパピスヘテプは貪るように食べる、飲む。
獰猛なほどの食事の勢いのなか、その表情には顔には、歓喜の色が見えていた。
「リリィ、エンカ君、ゴーレム、マリアベル、アンチラスト、ユニソルブル!ああ……凄いわ!」
この危機的な状況を、冒険活劇の登場人物になれた事に、喜びを感じているのだから。
【男子三人見比べてフリード君に藁人形(inリリィ)を託す】
【ジェイムズの肩の藁人形に自動通訳機能付与】
【リリィに他の藁人形察知能力付与】
【お腹がすいたので休憩してむしゃむしゃお食事】
【大変な状況なのにワクワクしすぎて御免】
- 58 :
- >49
> 「あなた、誰ですか?ここで何をしているですか?」
小さな人影はリリィ(アムリーテ)に背中を向けたまま答えた。
「ワタシの名前はアンチラスト。このモノ達のクヨウをしていたところダ。
カレラとワタシはイノチをバカリの打ち合いをした間柄だが、Rばミナ、ホトケゆえ……」
“このモノ達”とはどうやらアンチラストの前に置いてある三体の骸骨を意味しているようだ。
ちなみに、『命をばかりの打ち合い』とは真剣勝負を意味する古い言い回しである。
> 「オカアサン、ダイスキ…と、道に書いたのはアナタですか?」
アンチラストは答えるかわりに、立ち上がり、くるりと振り向いた。
座った状態から立ち上がっても、とても小さいことに変わりはなかった。
粗末なボロ布をまとっているように見えていたが、それは劣化した子供用のパーカーだった。
そのパーカーはアンチラストが着るには丈が長いらしく、腕も足も隠れてしまって見えない。
フードをまとっているため顔は見えないが、一瞬だけ光の加減で見えた肌の色は人間と同じだった。
> 「あの落書きを読んだオカアサンは、きっと嬉しいとおもうです。
> 心は心をスキになります。それはとても不思議なことです」
「それはフシギなことでも、ナンでもないのだ。
ダレにもココロがあり、ココロはシュウチャクを生む。
シュウチャクはそのうち失うことへのオソレとなり、
オソレはイカリへと変わる。
イカリはモウシュウを生み、やがて訪れるのはハカイ。
そして無……」
アンチラストはまるで鞠が弾むように、ポーンポーンと飛び跳ねると、ふっと姿が消えた。
そして次の瞬間、リリィ(アムリーテ)の背中にアンチラストが張り付いていた!
アンチラストは大きな声で叫んだ。
「ネー!アソンデー!アソンデー!おネエちゃん、名前はナンてーの!?
ツオイー!?ツオイー!?(強いー!?強いー!?)」
リリィ(アムリーテ)がとっさにアンチラストを剥がそうとしても、簡単には剥がれないだろう。
よく見えないが、アンチラストの手に、カブトムシの足の先にあるような細かいトゲがあるらしく、
それがリリィの服に引っかかっているようだ。
と言っても、痛くはないだろう。
「おヌシ!?チチが無いではないか!?オンナのくせに!オンナのくせに!」
アンチラストはぴょんとリリィ(アムリーテ)の背中から飛び降りると、自分にはあるぞとばかりに胸をはった。
たしかにアンチラストの胸には膨らみがあったが、本当はパーカーの布が余っているだけである。
「よーし、おネエちゃんのおチチを探しにイコー!」
アンチラストは地面に落ちていた木の棒を拾うと、それをふりまわしながらテテテテとどこかへ走りだした。
- 59 :
- >42-58
>「あ、あ……!?エンカ君??」
>「あれは………」
>『私が悪いの。止められなかった。私が殺しちゃった。私がエンカを……』
「また・・・・また僕の前から大切な人がいなくなってしまいました」
だがその大切な人・・・・ゴブリンにチェンジリングされたフリードの従妹は
ゴブリンの女王として君臨し暴虐の限りを尽くしている
まあ困っているのはゴブリンだけなので人間には全くどうでもいい話であるが
>「エンカ君は大丈夫。燃えているのは学ランだけだし、体だけ蒸発なんてありえないもの。
>とりあえずは先にリリィの身体を取り戻しましょ。
>どこにいるかはわかっているから」
「ええエンカさんは生きています!特に証拠はないですけど絶対です!!」
『でも次に再会したとき洗脳とかされて敵になってたり
異世界に飛ばされて一人だけ年取ってたりしたら嫌だよね』(猫語)
と意味不明の言動をするグレン
「大丈夫です!きっと僕らがピンチに陥った時に颯爽と助けに来てくれますよ」
それはピンチになること前提なのか?
>『あ、それと。えっとね、この先に進む前に、念のためハンカチで口元を覆うか、マスクしてくださいませんか?
> 実はその、さっきゴーレムの中に入ってたとき、モウソウダケの一種がこの先に生えてるかもって感じたんです』
「大丈夫です!妄想は姉さんので慣れてますから!!」
それは全然大丈夫じゃないだろう
『いや素直に口をふさごうよ』(猫語)
グレンに言われしぶしぶと口をハンカチで覆うフリードリッヒ
そのころ姉であるフリージアさんは保険医のフィジルR化計画を阻止するために一人頑張っていた
>「フリード、マリアベルの日記だ。目を通しておくといい」
「わかりました・・・・・これは!?」
その日記の内容を見て驚愕するフリードリッヒ
「死んだ人間の複製を作ったってそれは単なる別人にしかならないというのに・・・・・」
と別の平行世界では生まれることも出来なかった少年はそう呟く
『死んだ人間は死んだ人間で魂として別に存在するんだよね
でも複製した体に死んだ人間の魂を定着させれば・・・・・』(猫語)
と外道な発想をするグレン
「たとえ出来てもやっちゃいけないことです!
それは複製人間の魂を追い出し肉体を奪う行為です
人を生き返らす為にほかの誰かをRなんて・・・・・偽善者的に許せません!!」
なぜ偽善者的にはなのか…それは自分が生きるためにほかの何かの命を奪っているからだ
『わかってるよ死んだ本人も生き返りたがってるかどうかもわからないしね』(猫語)
世の中には自分が生き返るために自分の子孫や複製体の体を乗っ取る外道もいるが
まあそれは今は関係ないことだ
>「それじゃあフリード君、リリィが無茶しないように預かってもらえる?」
「わかりましたこの僕が命に代えない程度に守ります」
とフリードリッヒ
どうやらフリード自身が無茶しやがってと言われない程度に守るつもりのようだ
「さあ行きますよこのつり天井にしか見えないワープゲートの先に居るアムリーテさんを追いかけに!!」
- 60 :
- >「ワタシの名前はアンチラスト。このモノ達のクヨウをしていたところダ。
カレラとワタシはイノチをバカリの打ち合いをした間柄だが、Rばミナ、ホトケゆえ……」
「Rばミナ、ホトケ?それはロボットもですか?
いえ、そもそもロボットは生きていると言えるのでしょうか…」
と、問いかけると同時に、アムリーテはこの少女をアンチラストと認識する。
目の前にある骸骨は多分人間のもの。
アンチラストは真剣勝負をして、命を奪ったものの魂を供養しているらしい。
しかし、マリアベルに命じて、子どもたちを襲った理由は不明。
それにはいったい何の目的があったというのか?
>アンチラストは答えるかわりに、立ち上がり、くるりと振り向いた。
>「それはフシギなことでも、ナンでもないのだ。
ダレにもココロがあり、ココロはシュウチャクを生む。
シュウチャクはそのうち失うことへのオソレとなり、
オソレはイカリへと変わる。
イカリはモウシュウを生み、やがて訪れるのはハカイ。
そして無……」
アンチラストの言葉にアムリーテは沈思。
センセイに対してのアムリーテの思い。それは執着。
と同時に失うことへの恐怖がアムリーテを狂わせているのかも知れない。
勿論、アムリーテがそれを自覚しているということはないのだが…。
>アンチラストはまるで鞠が弾むように、ポーンポーンと飛び跳ねると、ふっと姿が消えた。
>そして次の瞬間、リリィ(アムリーテ)の背中にアンチラストが張り付いていた!
>アンチラストは大きな声で叫んだ。
>「ネー!アソンデー!アソンデー!おネエちゃん、名前はナンてーの!?
ツオイー!?ツオイー!?(強いー!?強いー!?)」
「私の名前は…アムリーテ。残念ですが、強くはありません」
背中にアンチラストの重さを感じつつ、アムリーテはそう呟いた。
彼女の言動は、決してリリィの体について言っているのではなく、自分の魂についての発言であり
アムリーテは他の子どもたちのように情け深く、痛みを知っているからこそ他人を助けるわけではなかった。
結局はセンセイの言いつけを守っている自分を嬉しく思っていただけ。
自分も他人も助けられたら嬉しく思うという単純な気持ちを抱いていただけ。
でもリリィの肉体を得たアムリーテは痛みを知った。
それは単に破損した部分の情報ではなく生きるための痛みでありとてつもない激痛だった。
しかし、そんな痛みを味わってもまだリリィという少女は友達のために献身的に尽くしてゆく。
アムリーテは、リリィにもう一度会えたならその理由を聞いてみたいと思っていた。
- 61 :
- そんな折、アンチラストはとあるリリィの体の特徴に気がついてしまう。
それは服が後ろに引っ張られていたため、胸の薄さがあらわになってしまっていたのだった。
>「おヌシ!?チチが無いではないか!?オンナのくせに!オンナのくせに!」
「……!!」
頬を朱で染めあげるアムリーテ。
>アンチラストはぴょんとリリィ(アムリーテ)の背中から飛び降りると、自分にはあるぞとばかりに胸をはった。
>たしかにアンチラストの胸には膨らみがあったが、本当はパーカーの布が余っているだけである。
>「よーし、おネエちゃんのおチチを探しにイコー!」
>アンチラストは地面に落ちていた木の棒を拾うと、それをふりまわしながらテテテテとどこかへ走りだした。
それをアムリーテは怪訝に思う。
今のアンチラストの言動は、さきほどのアンチラストとはまるで別人。
それにおRを探しにゆくことなど現実的に可能なことなのだろうか。まるで不可思議な言動。
しかし借りたものには利子をつけて返すべきとも思う。
きっと増量していればリリィに対する償いのようなものにもなると考える。
「では、参るです。リリィの胸を求めて…参るです」
が、しばらく地下を進むと謎の影に遭遇する。
その男は半獣人だった。それも豚の。
彼はモウソウダケを貪りながら二人を見つめていたが
アンチラストに気がつくと唸り吠えた。
「ふごおおおおおおおおおお!!」
巨体の肉を揺らしながらのしのしと近づいてくる豚男。
そう、彼はアムリーテの捜していたククレーニュ先生だった。
だが今の彼の見た目はゴブリンかオーク。
アムリーテはがくがくと震えながら絹を裂くような悲鳴をあげる。
「きゃああああああああああ!!アンチラスト、あなたは私をだましたですか?
そうです。あなたはマリアベルに命令して子供たちを襲いました。こ、これも…罠だったのですね!?」
こうしてリリィの胸を求めたアムリーテは、豚の半獣人の姿のククレーニュと再会することとなった。
そして豚男は、腰の抜けたリリィ(アムリーテ)を左腕の脇に抱えると通路に仁王立ち。
その状態のアムリーテはハミ出た肉に顔を挟まれて失神寸前。
「やっと会えたな…アンチラスト……」
豚男の鋭い眼光がアンチラストを射抜く。
- 62 :
- >52-61
「いや、潰れても大丈夫と言うなら我の方が適任だろう。鎧が有るしな。……最も乙女は、止めても飛び込みそうだが」
『天井が落ちてきても潰れないってすごくないですか?!
・・・・・・あっ、そういえばさっき、モウソウダケの効果も鎧があるから平気って言ってましたよね?』
鎧ってすごい!と思う反面、ずっと鎧着たままで重くないのかな?などと、つまらない考えがちらりと脳裏をよぎった。
もちろん口に出したりはしないが。
>そんなリリィを、ため息をつきながらパピスヘテプが摘み上げた。
>「あのねリリィ?あなたは今藁人形、ストローゴーレムの身体だけど、物理的なダメージには弱い代物なのよ?
>身体というのは魂を縛る檻であると同時に魂を守る砦でもあるの。
>身体を失えば魂はよりどころをなくし、迷う事になるわよ」
彼女の気持ちを代弁するように、恐怖で縮み上がった藁人形は、
『はい・・・・・すみませんでした』と、しょんぼりうな垂れた。
ゴーレムの知識があまり無いリリィには、どの程度変形したらアウトなのかよく分からない。
ならば、藁人形というかりそめの姿のうちは、おとなしくしているべきだろう。
>「二人して無茶というか、無謀というか、考えなしというか」
呆れたような様子のテオボルトは、自然体で石像の前に立ち、流れるような動きで
>「まぁ、それもまた一興というものかな。そら、起動、っとな」
と、スイッチを押してしまった。
『わーーーーーーっ!!誰が無茶よ無謀よ考えなしよ!危ないよ何してるのよテオ君逃げてー!』
そう叫んでいる間にも光る天井は無常にも降りて・・・・・・・。
『テオ君も消えた!やだあ!テオ君までエンカみたいに消えちゃったあああ!!』
そして、パニックを起こして、奇妙な動きをする藁人形が残された。
まあちょっと頭が冷えれば、これは消滅ではなく転移ゲートやワープゲートの一種だったと分かりそうなものだが。
>「あ〜、(略)東方のニンジュツには金蝉脱殻の術ってあるんだってのを思い出したのね。 (略)
>状況的にみてその術を使ったのね」
「じゃあ、フリード君の言うとおり、ピンチになったら颯爽と助けに来てくれるかもしれないね。
エンカってそういうおいしい登場好きそうだし」
テオボルトが転移して消えたショックから立ち直ったリリィは、パピスヘテプの気遣いを感じつつも、そうだったらいいなと思っていた。
とはいえ、実のところリリィは、ニンジャに、さほどいい印象を持っていない。
なぜなら過日、ニンジャとなのるミヤモトという者に襲撃され、友人達が傷ついたからだ。
・・・・・・リリィは、エンカが暗褐色の服を着て、面頬で顔を覆い、ニンジャブレートを構えながら
「ハイクを読め。 我が妖刀ヘイボンでカイシャクしてやる」 などとミヤモトよろしく見得を切っている想像してみた。
(・・・・・・・・どちらかっていうと、ニンジャよりネズミコゾー?っていう怪盗のほうが向いてそう)
怪盗も金蝉脱殻の術を使うかどうかは知らないが、頬被りというスタイルは、なぜかエンカに似合いそうな気がした。
(本当にどこかに隠れてるなら、早く出てきてくれたらいいのに)
リリィは、なるべく他愛も無いことを考えることで、最悪の事態を考えないよう努力していた。
たとえ逃避と言われようとも、今ここで動けなくなるよりはずっとマシだと思うからだ。
- 63 :
- >「それじゃあフリード君、リリィが無茶しないように預かってもらえる?」
>「わかりましたこの僕が命に代えない程度に守ります」
それはフリードにとっては、最上級の意味だとリリィは知っている。
『うん。フリード君、どうかよろしくお願いします』
パピスヘテプは、一休みして後から合流するらしい。
『パピちゃん、そんなに疲れるのに、一人きりになって大丈夫なの?
ゴーレムのアムリーテだけじゃなくて、アンチラスト?ってのも、人面サソリもいるんでしょ?危なくない?』
リリィは心配したが、かといって今の自分では、手助けどころか足手まといにしかならないことも知っている。
だから、それ以上強くは言えなかった。
『フリード君、私のカバンを、フリード君の荷物と一緒にしてもらっても大丈夫?
簡単だけど、解毒剤とか傷薬とか入ってるから、できれば持っていきたいの。
ただ、さっきの騒動で中の薬ビンが割れたから、ちょっと水漏れしてるんだけど・・・・・・・。
それと、さっきテオ君があけていた箱に、私の荷物も入ってたみたいなの。
浮き輪とかは要らないから、箒だけでも持ってきてくれないかなー?』
厚かましいことこの上ないが、紳士なフリードのことだ、多少のわがままは笑って許してくれる・・・・・と思いたい。
「さあ行きますよこのつり天井にしか見えないワープゲートの先に居るアムリーテさんを追いかけに!!」
『テオ君、ちゃんとゲート出口で待っててくれてるかなぁ?』
そしてリリィ達も、光るゲートでテオボルトの後を追った。
『一人で行くなんて!テオ君ったら!もーっ、単独行動したら危ないのに!!』
フリードの肩の上でプンプン怒ってみても、いまさらどうしようもない話である。
テオボルトとアムリーテの後を追う道中、リリィはあれに言うでもなく話し出した。
『テオ君いないし、ここ暗いし薄気味悪いから、何か話そうよ。
あ、そうだ。さっきテオ君が見つけた書類の話と、幻灯機の情報を整理してみよう。変だったら訂正してね。
幻灯機に映っていた博士には娘さんがいて、娘さんの病気を治すために博士は研究していた。
その研究っていうのは、体の不具合を補うためのもので、人間以外の生き物の力を利用するものだった。
多分その博士の名前は、マリアベル・ホワイト。
でもマリアベルの娘さんは、その研究を利用した治療を行なっても、亡くなってしまった。
マリアベル博士は、残された娘さんの体の一部を使って、娘さん自身を生き返らせようとした。
その結果生まれたのは、アンチラストとユニソルブルっていう人造人間・・・・・・うわっ、なにこの床!!』
地面には『オカアサン ダイスキ』という落書きが書かれていた。
目を凝らすと、それはまるで道しるべのように、奥へ奥へと続いている。
『つ、続けるよ・・・・・。
アンチラストは何か問題があって、ギルハートを始めとする魔法使い3人に依頼して処分しようとしたけれど、できなかった。
目下の敵であるアンチラストの能力は、真実への到達を拒む事ってこと。
殺したければ、殺そうと思ってもだめで、別の目的で行動を起こさなきゃならない、と。
・・・・・っていうか、拷問が目的で、結果として死なせるって、さらっと恐ろしいこと書いてあったわよね・・・。
最後のほう、日記書いてる人の人格が、博士から娘さんに変わってる気がしたんだけど・・・・・・。
あれは、娘さんから作った人造人間を拷問して神経を病んだせいなのかな?それとも・・・・・・。 あ!』
リリィは食堂で会ったエンカの変貌ぶりを思い出していた。
『そう言えばさ、さっき食堂で会った時のエンカも、人間サソリをポリポリしたりして、別人みたいに人が変わってたよね?
あの時のエンカは、自分のことをマリアベルって名乗って無かった?
エンカの名乗った名前と、博士の日記のおかしな記述って、何か関係ってあるのかな?』
むーん、とリリィは考え込むが、藁人形の考えるポーズというのは、今ひとつ緊張感が無かった。
だが彼女の脳裏を、一瞬、ぞっとする閃きが過ぎった。
それは、マリアベルと、エンカと、死んだ三人の魔法使い全てが、アンチラストの
『無い無い!無い!!考えすぎ!こーゆー難しい話は、もっと頭のいい人に考えてもらうのが一番だよー!!』
リリィは頭といわず手といわずをぶんぶん振りまわし、勢いあまってフリードから転落しそうになった。
- 64 :
- 『ってことはつまり、私達もアンチラストを探したければ、ほかに目的を見つけなきゃ難しいってことかぁ。
まあ、今はまず、アンチラストよりも私の身体を捜すのが先決なんだけど・・・・・・うわ。』
巨大キノコを見つけたリリィは、嫌そうな声を上げた。
『やっぱりモウソウダケだ。こんなに大きい・・・・・・・。
まずいよ、私・・・・じゃなくて私の身体は、これの耐性持ってないの。
アムリーテが何の準備もなくずっと吸い込み続けていたら、今頃倒れてるか、さもなくば、幻覚見ておかしくなってるかも!』
リリィは急いで急いでー!とばかりに、フリードの耳をぴこぴこ引っ張った。
どこからか、軽い足音がする。まだ遠いが、子供のもののようだ。
もしもテオボルトが、リリィ達より先に進んでたならば、きっと今頃、足音の主と接触しているかもしれない。
- 65 :
- >「ハッ、所詮『槍』なんてこの程度だろう? 黒い鎧の少年。……ま、君が幾つかは知らんがな」
「……………」
ジェイムズは、自分よりもみるからに年下の者に「少年」と呼ばれて憤りを感じる。
だが少し思い当たる節があり、考え事をしていた。
「(……此奴が「アレ」ならば我より年上の可能性も無くは無い、か……)」
「(先程迄の言動からして奴が「アレ」の確率は高いと言えるが……)」
「(まぁ、其れは結果に依るな。今度槍を新調為るか……)」
と、色々と考え事をしていた。すると、
>「あ、そうそう、ジェイムズ先輩の肩に乗った藁人形、リリィのテレパシーを自動で受信して囁くようにしておきました」
「む、色々と世話を焼かせたな。然し便利な魔術よ……」
『ご主人様は魔術が不慣れですからね……(馬語)』
素直に感心しているジェイムズであった。
「ん?ツェッペリン、そう言えば未だ居たのか。今日は下がれ。」
『……言葉が分からないとは言え気付かないのは酷いかと……(馬語)』
まだ引っ込めて居なかったツェッペリンに今頃気付いて、送還魔法を唱える。
「sending-callback」
だが。
「………失敗か。」
その後、三回ほど唱えてやっと成功したが、その頃にはバテバテになっていた。
「………………ハァ、やはり、我には、魔術は、似合わん……」
思ったより消耗が激しかったらしく、息が荒くなっていた。
そんな事をしているうちに、
>「さあ行きますよこのつり天井にしか見えないワープゲートの先に居るアムリーテさんを追いかけに!!」
>『テオ君、ちゃんとゲート出口で待っててくれてるかなぁ?』
皆先にワープゲートで行ってしまった。
「む……」
残されたのは自分と、がっついて飯を食べているパピスヘテプのみ。
とりあえず体力を回復しておきたいし、昼食も食べていなかったのでとりあえず飯を分けてもらう事にした。
「パピスヘテプとやら。済まぬが、我に其の食物の一部を分けて貰えぬだろうか?」
夢中で飯を食べ続けているパピスヘテプが、果たして飯を分けてくれるだろうか。
- 66 :
- 「……む、紅茶も切れたか。まだ喉が渇いてるというのに」
中身のない水筒をしまい、テオボルトは妙な光景の中を歩く。
幾度かの分かれ道もあったが、おそらくはこれだろうと思われる道を来ていた。
>47-48
「しかし、オカアサンか……はて、さて」
おもむろに呟き、地面の落書きに触れる。
その落書きは、『オカアサン ダイスキ』という文字。
時々見るその文字に覚える印象は、拙いというよりも、おぞましい。
何処となく狂気を思わせる落書きに顔をしかめながら、テオボルトは再び歩き出す。
「この文字は、人間から外れたマリアベルが書いたのかな? それともアンチラストか?」
思い出すのは先程の書類。
マリアベルの日記の最後に記された一文が『オカアサン ダイスキ』であった。
ともすればマリアベルの文字とも推察できなくもないが。
「マリアベルの妻、アンチラストの――でなくて、元となった娘の母の記述はなかったしな。
もしかしたらそちらの可能性も……一応疑念は考えておくべきか」
アンチラストの(遺伝子的な)『母』のことは一切わかっていないのだから、可能性としては消しきれない。
そもそもの話、『オカアサン』が『母』の事であるとは限らない。
色々考える余地はあるが、もし疑念が晴れるとしたら、それは本人らに遭った後だろう。
と、考えを浮かばせていると、テオボルトが異変に気付く。
「……おや。頭が……くらくらするような……まさか!」
ちらとそこらじゅうに生えているキノコ、モウソウダケを見やる。
「キノコにやられたか? ……今見えてるのも幻覚かもしれないとか、ぞっとしないッ」
今、彼の呼吸はスカーフ越しなだけである。スカーフの下から胞子が入ってくるのも有り得る。
いつ幻覚を見始めるか、どころか今の視界が幻覚かもしれないのだ。
精神的な恐怖で悪寒を感じつつも、奥へと進む足を速める。
>58>64
>どこからか、軽い足音がする。まだ遠いが、子供のもののようだ。
リリィ達の位置であれば遠いが、テオボルトからすればもう近い。
普段ならもっと早くに気付くはずだが、思考が鈍くなり始めたテオボルトは今更になって気が付いた。
早足で足音に近づくと、古ぼけたパーカー姿の子供を見つける。
どう見てもマリアベルとは思えない。彼の実態は知らないが、なんとなくそうではないと思った。
「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
頭を振りながら、普段よりも支離滅裂な言葉を発する。おまけに、アンチラスト以外が視界に入っていない。
思考どころか、かなり視界も狭くなっているようだ。
- 67 :
- 次々とゲートに消えていく背中を見ながら食事を始めるパピスヘテプ。
その横でジェイムズがツェッペリンの送還魔法にてこずっていた。
無双の槍使いにして物理攻撃無効、魔法半減の鎧を身に着けても天は二物を与えずを体現しているなと、その姿を横目で見る。
ようやく送還を成功させたジェイムズだが、息が荒く体力の消耗が激しそうだ。
無尽蔵の体力を持っているようなイメージをしていたが、魔法に関する体力消費は別物らしい。
消耗の呪いなどが弱点となるのかもしれない。
もともとジェイムズには興味があったパピスヘテプである。
横目で見ながら情報収集と分析に余念がないのだが、流石にまじまじと見られるほどには度胸はない。
上級生が魔法に失敗しつづける姿を見ていたというのもバツが悪い。
ジェイムズが送還魔法を成功させてこちらに向かってくるとさっと視線をそらせて一心不乱に食べる姿勢に戻す。
>「パピスヘテプとやら。済まぬが、我に其の食物の一部を分けて貰えぬだろうか?」
近づいてきたジェイムズからの言葉にパピスヘテプの思考は一瞬白くなった。
死と影を司る魔術師と武に生きる騎士。
あまりにも違いすぎて共通の話題もなく、実質初対面で緊張もしていたのだが、急に近親感がわくというか。
意外な人間味のある一言に思考の不意を突かれたのだった。
「あ、あぁ!それはもう、お口に合うかどうかわかりませんけど。
こっちの壺は普通のホットドッグ、骨付き肉、これはワイン。あとこっちからは精力増強用のヤモリの黒焼き、赤まむしドリンク。
更には砂ウナギのロイヤルゼリー漬け、などなど、順に味の方は好みが分かれるものになっていますけど、回復力もそれに比例しますわ。
いくらでも好きなものを食べてくださいな」
大歓迎と言わんばかりにパピスヘテプの影からいくつもの壺が溢れ出てきた。
一般的な食べ物から、口に入れるのを憚られるような姿と味のものまで。
にこやかに進めながらも、パピスヘテプの視線は一身にジェイムズに、いや、その兜に注がれている。
常時フルプレートアーマーに身を包んでいるのでその素顔を見たことがない。
すなわち、食事の瞬間はまだ見ぬ素顔を垣間見るチャンスなのだから。
回復食を一緒に食べながら話しかける。
「興味本位の質問で失礼かもしれないですけど、ジェイムズ先輩って何歳なんですか?
武術の技術はフィジルの生徒だし、天才だからで済むでしょうけど、なんというか……
技術だけではなりえない熟練度とか喋り方や騎士としての立ち振る舞い見ていると、歴戦の戦士?
修羅場をいくつも潜り抜けただけでなく、もう何年も戦場に身を置いているような40歳くらいの大人に見えちゃうので」
興味本位とはいえ17歳のジェイムズにかなり失礼な問いかけである。
だがそれだけでは飽き足らず、ジェイムズに対する興味は更に膨れ上がる。
食べながら喋り、喋りながら食べる。
にも拘らず口から食べ物がこぼれるどころか口の中は見せないのは女の嗜みである。
質実剛健を絵にかいたようなジェイムズは、女のランチタイムばりのお喋りに対応できるのであろうか?
一通り食べ終わるまでに、鎧はどういう経緯で手に入れたのか、鎧は重くないのか、テレパシーを遮断するのであれば気配は感じられるのか?
視覚情報に大半を頼るのであれば視界を確保できるのか?槍はどんなギミックがあるのか、それ以外の武器はあるのか?
まくしたてられるような勢いはないのだが、途切れることのない質問が続くのであった。
「さあ、お腹いっぱい、元気一杯になった事だし、私たちもいきましょうか。
この先は迷路みたいな通路が続くようだけど、影をトレースできるから安心してください。
あ、でも先輩の槍は振り回すのに不便かもですよー」
フードを目部下に被り、襟を撒きつけ口と鼻を覆異ながらゲートの前に立つ。
先行されてはいるが、今のリリィ同様にリリィ(inアムリーテ)の位置も軌跡も把握できるので迷う事はないだろう。
テレポートアウト先の状況も把握しており、ジェイムズに伝えてゲートをくぐるのであった。
- 68 :
- >60-67
>『まあ、今はまず、アンチラストよりも私の身体を捜すのが先決なんだけど・・・・・・うわ。』
「とりあえず優先事項はリリィさんの本来の肉体を返してもらうことですね・・・・うわ?」
>『やっぱりモウソウダケだ。こんなに大きい・・・・・・・。
まずいよ、私・・・・じゃなくて私の身体は、これの耐性持ってないの。
アムリーテが何の準備もなくずっと吸い込み続けていたら、今頃倒れてるか、さもなくば、幻覚見ておかしくなってるかも!』
「なぜあなたがここに居るんですか!
僕の前から消えてくださいこの信号機野郎!!」
『駄目だフィー坊までモウソウダケの毒胞子にやられてる』(猫語)
妄想は慣れてるとか言いつつすっかりモウソウダケにやられているフリード
彼の目の前にはここに居るはずのない赤青のオッドアイで金髪をした
従兄弟であるジルベリア皇国の王子が見えているらしい
『はいはいサニティ、サニティ』(猫語)
グレンは落ち着き払って正気化の呪文を唱える
腐っても神官の息子であるのだろう
「大丈夫です僕は正気に戻った」
すごく不安なセリフだがどうやら正気に戻ったらしい
「そうですよねこんな所にあいつがいるわけが無いですよね
ここにいる奴もモウソウダケの幻にすぎません」
だがまだ幻は見えているようである
- 69 :
- 「どうやらこの先に子供がいるみたいですが・・・・・・こんなところに子供?」
『フィー坊だって子供じゃない』(猫語)
「という事は僕らとは別のルートから来たフィジルの生徒でしょうか?」
>「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
「あれがアンチラスト・・・・・なんというか保険医のエサみたいな感じですね」
ガチレズロリコンの保険医は見た目さえかわいければ種族も実年齢も問わない変態であり
自分だけの思い通りになる美少女を人工的に作り出そうと企んでいる外道である
「・・・・うん?まさか保険医の技術ってこれの・・・・いやまさかあんなギャグ属性の人が」
ロゼッタをRに変化させたりした保険医の謎技術のルーツがまさかこれじゃないかと嫌な予感でいっぱいになるフリードリッヒ
そういえばフリードは保険医を保険医としか知らない
いやむしろ誰か保険医の名前を知っている者はいるのだろうか?
『人格度外視で能力で人を選んだ弊害だね』(猫語)
「ところでさっきからあの小さい子を見つめている人(?)は何でしょうか?
保険医と同じロリコンさんでしょうか?」
『あのバッチはフィジルの教員バッチ!?ロリコンとかおかまとか畜生この学園の教師は変態しかいないのか』(猫語)
豚のような男が身に着けている布きれらしきものに教員バッチを見止めるグレン
「氷結科の水鏡先生はまともですってば!・・・・それにしてもオークの教員ですかフィジルは広いですね」
はたしてこの謎の人物は本当に教員なのか?もしかしたら殺して奪った布入れを纏っているだけではないのか?
そして小脇に抱えられているリリィの体について突っ込み入れないのか?
「アムリーテさんあなたを抱きかかえているその方はいったい?」
とりあえず何故か小脇に抱えられているリリィの体=アムリーテに問いかけるフリードリッヒ
『そんな悠長なこと言ってるとリリィお姉ちゃんの体が窒息死しちゃうよ!!」
「どこの誰かは知りませんが今すぐその方を離してください!そうじゃなければリリィさんの体が死んでしまいます!!」
- 70 :
- >61>66
アンチラストとリリィ(アムリーテ)が一緒に地下を進んでいると、
とつぜんゴブリンらしきものがリリィ(アムリーテ)に襲いかかった。
> 「きゃああああああああああ!!アンチラスト、あなたは私をだましたですか?
> そうです。あなたはマリアベルに命令して子供たちを襲いました。こ、これも…罠だったのですね!?」
ゴブリンらしき豚男に抱えられたリリィ(アムリーテ)がそう叫ぶ。
「マリアベルにワタシが命令をした…だと……?」
アンチラストの口調が、最初に会った時と同じ口調になった。
しかしすぐに子供っぽい口調に戻った。
> 「やっと会えたな…アンチラスト……」
「あんたダレー!?」
豚男にそう尋ねた。
その時テオボルトが胞子の霧を抜け姿を現せた。
アンチラストは「あんたもダレー!?」とテオボルトを注視した。
> 「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
> ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
「クラスタってダレー!?知らなーイ!」
アンチラストは闇に自分がアンチラストであると応えるかのように、
興味深そうにテオボルトに近づく。
「クラスタは知らないけれどアムリーテ姉ちゃんならいるよ!」
アンチラストは手に持った棒で豚男に囚われたリリィ(アムリーテ)を指し示した。
見るとフリードが豚男と何やら問答をしている。
「あー、またヒトが増えてるー!ウワー!」
ちなみにアムリーテはクラスタとは名乗っていないが、何故か真実へと到達してしまったようだ。
「………」
それは突然のことだった。
テオボルトの側にいたアンチラストが急に体からバリバリと、
粘着物が引き剥がされるような音を発し始めた。
アンチラストの着ていたパーカーは袖も裾も布が余っていてアンチラストの腕と足を隠していたが、
そこから木でも生えるかのように長い腕と長い足が生えてきたのだ。
不気味な程ひょろりと長い腕と足であった。
アンチラストの背丈が、生えてきた足に押される格好となり、人間の大人よりもずっと高くなった。
その手足は人間とよく似た格好をしていたが、まるで昆虫か甲殻生物のように黒い殻に覆われている。
魔法のスパイスがなければ、例え保険医だろうと美味しく召し上がれないだろうその怪物は、
その長い腕を振り回してテオボルトに平手打ちをお見舞いし、怒りをあらわにした口調で叫んだ。
「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
なぜ突然アンチラストの逆鱗に触れることになったのか?
それにはある理由があった。
ある種類の蜂は死亡した際に仲間の蜂を凶暴化させるホルモンを周りに発散するという。
そういうホルモンがテオボルトの体についていたのだ。
ではそのホルモンを発散したのは?…小さな人間サソリであった。
そう、釣天井の部屋でマリアベルは、全て承知の上で人間サソリをけしかけたのだ。
マリアベルの狙い通り、テオボルトの体についた死の匂いはアンチラストを凶暴化させた。
ある意味知的な会話をしてみせたアムリーテ以外の者からは、ただの凶暴な化物にしか見えないだろう。
そして、マリアベルが人間サソリを殺させたのには他にも理由があった。
「いざ、ナムサン!!」
アンチラストが持っていた棒は、いつのまにか金色の剣になっていた。
まるで地面ごと打つかのようにアンチラストはテオボルトに剣を振り下ろしたが、しかしテオボルトに当たることは無いだろう。
ここにきてテオボルトの視界は鮮明となり、思考も理路整然としてくる。
テオボルトの足元を人間サソリが足早に横切っていくのが見えるだろう。
このサソリ達はなぜキノコの胞子に毒されないのか?
それは彼女達の体に抗体となるエキスが含まれているからである。
それが今になって効果を発揮してきたのだ。
- 71 :
- オークに抱き抱えられたリリイ。
このオークの正体は野良犬ならぬ野良オーク。
つまりアムリーテが聞いた先生の声はすべてキノコによる幻聴。
そんな野良オークにフリードが問いかける。
が、リリイの体を安否するフリードの必死さに
愚かな野良オークは釣られて興奮。
リリイを抱いた腕に自然と力がこもる。
すると完全に気絶して意識を失ったリリイの体からアムリーテが剥離。
その後、怒るフリードの様相に臆したオークは
空になったリリイの体をフリードにおもいっきり投げつける。
しかし、その太い腕は最大の力を発揮することはない。
なぜならアムリーテのゴーストが再びオークにトリツキその動きを遅くしたからだった。
これならフリードもリリイを優しく受け止めることができるはず。
「生きていてよかったです。フリードリッヒ。リリイをお願いします」
そういうオークの体は本の少し小さくなっているようだった。
アムリーテは覚悟していた。もう誰にも許されることはないと。
自分はエンカを消して、課題を邪魔するただの生徒たちの敵と認識されていることだろう。
「パピちゃん。私を消してください。
私は兵器でもない人でもない、ただの狂った存在でした。
私が消えてしまえばあの体も二度と稼働することはないでしょう。
みなさん。すいませんでした。さよならです」
野良オークのアムリーテは、目を閉じて最期の時を待った。
先生に会えなかったことは名残惜しかったが
アムリーテのこれ以上の行動は子供たちを危険にさらしてしまうし
ただ混乱を与えてしまうだけと直感したのだ。
せめて最期に結果はどうあれ、先生の言い付けだけは守って
消えたい。それがゴーレムの最期の願いだった。
- 72 :
- なんの気無しに食べ物を求めたジェイムズだったが。
>「あ、あぁ!それはもう、お口に合うかどうかわかりませんけど。
こっちの壺は普通のホットドッグ、骨付き肉、これはワイン。あとこっちからは精力増強用のヤモリの黒焼き………(以下略)」
「此れはまた………凄いな。取り敢えずは此れと此れを貰おうか。」
と言って、骨付き肉とホットドッグ、赤まむしドリンクを取ってパピスヘテプの近くに腰を下ろす。
パピスヘテプは自分がどうやって物を食べるのかに興味しんしんだったようだが、ジェイムズはそれに気づかずに、ホットドッグを持ったーーーー
すると。なんと、兜を外さずにそのままホットドッグを兜の下のほうに持って行ったではないか!
唖然としているパピスヘテプを他所に、どうやって食べているのかわからないが、兜越しにホットドッグを食べるジェイムズ。
ホットドッグを食べ終わってから、やっとパピスヘテプの唖然とした表情に気づいたようで、
「嗚呼、我が如何やって物を食べて居るのか知りたいのか?」
フフフ、と兜の下で笑い、
「『転移の粉』の技術を使えば造作も無い事よ。」
「転移の粉」とは、テレポートなどに使用する消耗品であるが、どうやらそれを応用して食べ物を口の中に直接運んでいるらしい。手間のかかる事をする物だ。
「ハッハッハッ、何。兜を外したら真面(まとも)に人と口が聞けなく成るのでな。喋れないよりはずっと良い。」
>「興味本位の質問で失礼かもしれないですけど、ジェイムズ先輩って何歳なんですか?(以下略)」
「……40歳とは心外だな。我は未だ17歳だぞ。」
その後も、かなりの量の質問が続く。
鎧はどういう経緯で手に入れたのか?
「……話せば長くなる。此れはかつての親友が身に付けていた物だ。今はもう、死んでしまった……いや、殺された。我の目の前でな。」
- 73 :
- 鎧は重くないのか?
「確かに重いが、我は此れを付けてもう何年にも成るのでな。大分慣れた。」
テレパシーを遮断するのであれば気配は感じられるのか?
「物質的な気配なら感じられるが、魔力的な気配は遮断してしまうから無理だ。」
視覚情報に大半を頼るのであれば視界を確保できるのか?
「視覚は確かに普通よりは狭いが、今はもう慣れてしまった。寧ろ此れがデフォルトと化して仕舞って居る。外すと広くなって逆に面食らう。」
槍はどんなギミックがあるのか?
「槍自体に特殊な仕掛けは特に無いが、槍に魔法を掛ければその魔法が付与される、と言う技を前試した事が有る。」
それ以外の武器はあるのか?
「一応剣も使えるが、我は剣は其処迄得意では無い。」
と、それぞれの質問に次々と答えていくジェイムズ。
冷静沈着だが、無口と言う訳では無いようだ。
さて、そうこうして昼食も終わり、パピスヘテプに説明を聞く。
「今日は何かとワープゲートの使用が多い気が為るが……気の所為か?」
「……まあ良い、頼むぞ、パピスヘテプ!」
そう言って、ワープゲートを潜りパピスヘテプについて行ったのだった。
- 74 :
- >66 >>68-73
>グレンは落ち着き払って正気化の呪文を唱える
>「大丈夫です僕は正気に戻った」
『ええっ!!何それ解毒魔法?グレンかっこいい!』
ちなみに、グレンの親は猫神殿(※リリィ視点)の神官である。
>「そうですよねこんな所にあいつがいるわけが無いですよね
> ここにいる奴もモウソウダケの幻にすぎません」
『・・・・・・そ、それって正気に戻っても、幻覚見ててるって事に変わりは無いんじゃあ・・・・・・。
ね、ねえ、毒消しの薬飲まない?私の鞄に、まだ残ってると思うんだけど・・・・・・』
だがフリードは紳士である。
リリィが許可しても、女性の鞄を開けるのには抵抗があるかもしれない。
>「アンチラストか……? こんなキノコだらけのところで、よくそんな姿でいられるな。
> ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
『あ、テオ君の声だよ!』
>「きゃああああああああああ!!アンチラスト、あなたは私をだましたですか?
>そうです。あなたはマリアベルに命令して子供たちを襲いました。こ、これも…罠だったのですね!?」
『ちょ、私の悲鳴が聞こえてきた!!なんかピンチかも?急いで急いで!』
程なく、リリィ達はテオボルトに合流を果たした。
>「 ……ああ、くそっ、めまいがする。喉も渇いた! さっさとミス・クラスタを回収したいんだが、何処だ?」
『私の体なら目と鼻の先にいるよ!オークに捕まって窒息寸前だよ!も、もしかして見えてないの?!』
テオボルトは非常に具合が悪そうだ。
『フリード君、私の鞄下ろしてくれる?テオ君、私の鞄の中に、解毒剤が入ってるよ!』
もっとも、聖水やオレンジ水など、余計なものがいろいろ入っているのだが。
>「クラスタってダレー!?知らなーイ!」
『えっ?あの子、何でこんなところに?』
外見は普通の小さな女の子にしか見えない。
>「あれがアンチラスト・・・・・なんというか保険医のエサみたいな感じですね」
『』
あんまりなつぶやきに、リリィも言葉が出ない。と同時に、保険医に愛されているフリードの苦労が偲ばれ涙が出そうになった。
>「・・・・うん?まさか保険医の技術ってこれの・・・・いやまさかあんなギャグ属性の人が」
>ロゼッタをRに変化させたりした保険医の謎技術のルーツがまさかこれじゃないかと嫌な予感でいっぱいになるフリードリッヒ
>『人格度外視で能力で人を選んだ弊害だね』(猫語)
『そうだった。そう言えば前に先生、切断した腕も即再生出来るって言ってたよね。・・・・・・副作用で皮膚が緑色になるらしいけど』
>「あー、またヒトが増えてるー!ウワー!」
アンチラストらしきRは棒切れを振り振り、屈託の無い様子で、とててと近寄ってきた。
- 75 :
- >「ところでさっきからあの小さい子を見つめている人(?)は何でしょうか?
> 保険医と同じロリコンさんでしょうか?」
『あっ!オークだ!やだ何で私の体、オークに捕まってるの?!』
>『あのバッチはフィジルの教員バッチ!?ロリコンとかおかまとか畜生この学園の教師は変態しかいないのか』(猫語)
『いやピザ好きのイケメン先生や、ロマンスグレーの熱血先生だっているじゃない!
それにあれ、単に、その辺に落ちてたぼろ布が引っかかってるって感じじゃない?
っていうか、ちょ、私の体、肉に埋もれて息出来てないっぽいんだけど!』
>「どこの誰かは知りませんが今すぐその方を離してください!そうじゃなければリリィさんの体が死んでしまいます!!」
『お願いだから早く助けてよ、オークのお嫁さんなんか死んでもごめんだよ!!』
わたわた、とフリードの肩であわてるリリィ。
周りの状況に臆したのか、それともフリードの方がおいしそうに見えたのか。
オークは大きく振りかぶると、リリィをフリードに投げつけてきた。
だが、その動作が途中から、何かに妨害されたように緩慢になるのを、人形のリリィは見逃さなかった。
思い切り叩きつけられるはずだったリリィの体は、受け止められる程度のゆるさで放り投げられた。
>「生きていてよかったです。フリードリッヒ。リリイをお願いします」
『オークがしゃべった?!っていうか、もしかしてアムリーテなの?!』
リリィは藁の両手を振り回している。人間なら、頭から湯気が出ていそうな勢いだ。
『いいわ、その場を絶対動かないでねアムリーテ!
フリード君、アムリーテごとオーク倒しちゃって。
どうせ憑依してるだけなんだから、フリード君の攻撃方法じゃダメージ受けようがないでしょ。平気よ』
藁人形のリリィは容赦ない。
戦闘力が無いかわりに、いつに無くきつい言葉を浴びせかけていた。
『あなたにはいいたいことが山ほどあるわ!よくも私の体を奪ってくれたわね?
貴方の体に入っていた悪霊のせいで、エンカもフリード君もひどい目にあったのよ!
子供好きが聞いて呆れるわ!
本当はあなた、人間の体を手に入れたくて、センセイを探してるなんて嘘ついて接近してきたんじゃないの?!』
オークが傷ついた顔をするなんてありえない。
第一、表情などわかるわけが無い。
錯覚だ。
『私の体を手に入れたとたん・・・・・一人でさっさと逃げたくせに。・・・・・逃げた、くせに・・・・・』
それでも、リリィの言葉は次第に尻すぼみになった。
>「パピちゃん。私を消してください。
>私は兵器でもない人でもない、ただの狂った存在でした。
>私が消えてしまえばあの体も二度と稼働することはないでしょう。
>みなさん。すいませんでした。さよならです」
『・・・・・・パピちゃん。
私が自分の体に戻ったら、魂の無い空っぽの藁人形ゴーレムが1体出来る計算になるよね?』
リリィは、あえて何がしたいのかを明言しなかった。
『大丈夫よ。本体は電池まで抜いてる。その上ここは地下だもの。
再起動なんて、出来ないに決まってる。
除霊って魔力消費半端ないんでしょ?せっかく回復したのに、こんな所で無駄遣いすることは無いわよ』
>テオボルトの側にいたアンチラストが急に体からバリバリと、
>粘着物が引き剥がされるような音を発し始めた。
『こ、今度は何?!』
アンチラストの背丈が、生えてきた昆虫のように黒い殻に覆われた手足によって、人間の大人よりもずっと高くなった。
>「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
『大変!テオ君が!!体に戻らなきゃ・・・・・って!戻ったら戻ったで、私、幻覚見て変な行動取っちゃうかも!!』
どうしようどうしよう、と言いながら、リリィは自分の体の前で右往左往した。
- 76 :
- 腹が減っては戦ができぬ。
危険な館の中とはいえ、これから更に危険なところに飛び込もうというのだ。
体力回復は欠かせぬ儀式ともいえるべき行為……。
と大げさな言い方とは裏腹に、ジェイムズとのランチタイムをパピスヘテプは楽しんでいた。
兜を取らずにそのまま転移させて食するジェイムズ。
確かにそれも驚くべき事だったが、その理由がさらに驚愕させることだったのは秘密だ。
騎士然として華やかな舞踏会にでもいられそうな勝手なイメージを持っていただけに尚更に。
その後も矢継ぎ早に繰り出される質問に対してジェイムズは面倒くさからずに丁寧に答えていった。
鎧の本来の持ち主、亡くなった友人に冥福の祈りを捧げながら感謝する。
それぞれの理由に大きく頷き、得心できたものの、だからこそ疑問にも思うのだった。
兜を取るとまともに話せなくなるという事が。
昼食も終わり体力が回復した二人が転移した先は、仲間たちの通った場所である。
影に仕込んだ藁人形とリリィの入っている藁人形を通じてあらかたの様子は把握していたが、それでも実際に見てみると驚きは隠せない。
異様な風景とも感じてしまうほどの回廊。
巨大なモウソウダケ。
「これほどとは……ちょっとごめんなさい。私の防護では心もとないから術をかけていきます」
ケロべロスの毛皮のフードを被り、襟の部分も顔に巻きつけて防護していたが、そこに群生するモウソウダケはパピスヘテプの想定を超えていた。
これではタオルで口を覆った程度の先に行った面々はモウソウダケの胞子に犯されているかもしれない。
そんな事を考えながら藁人形を影から取り出した。
余裕をもって持ってきた藁人形もこれで最後である。
藁人形を打つことによって対象者に影響を与える呪いがあるように、その逆の術もある。
呪文を唱え自分へのモウソウダケの影響を藁人形に移す術をかけると歩き出した。
>「……まあ良い、頼むぞ、パピスヘテプ!」
「はいはい。リリィの身体とリリィの位置は把握できているし、通った道もトレースできるから安心してくださいな」
ジェイムズに応えると直立不動のまま滑るように進んでいった。
足元に広がる影を移動させることで重心移動を必要としない高速移動を可能としているのだ。
進むにつれて壁に見られる文字の数々。
リリィの身体を取り戻し、次にエンカの捜索といきたいところだが、そうは事は運ばない。
そんな予感をひしひしと感じさせる文字群だった。
「あ、いまリリィ(肉体)とリリィ(藁人形)が接触したわね。中継します。」
リリィとアムリーテの接触を感知するパピスヘテプ。
音声だけだが、リリィが聞いた、そして話した言葉はジェイムズの肩の藁人形を介して聞こえるだろう。
>「パピちゃん。私を消してください。
>私は兵器でもない人でもない、ただの狂った存在でした。
>私が消えてしまえばあの体も二度と稼働することはないでしょう。
>みなさん。すいませんでした。さよならです」
>『・・・・・・パピちゃん。
> 私が自分の体に戻ったら、魂の無い空っぽの藁人形ゴーレムが1体出来る計算になるよね?』
『リリィ、そちらの大凡の状況は把握してる』
リリィの言葉に短く、だが明確な返答はせずに応えた。
進みながらパピスヘテプは考える。
話し合い、解決点を探り、残念を解消することで昇天させる。
それがパピスヘテプの基本スタンスだ。
だがそれはあくまで理想であり、現実は話が通じる事の方が少ない。
そんな中、どこまで話し合いを続けるのか、どこで決断するのか。
いつも悩ませ、どういった決着であっても自己嫌悪に落ち込む種でもある。
そしていま、アムリーテとの話はもう終わっているのだ。
先ほどアムリーテシリーズを昇天させると結論を出した時に。
- 77 :
- 『リリィ。除霊は確かに消耗が大きいけど、死して迷っている魂を昇天させるのは私の第一義よ。
だからこそ、冥炎のカンテラは私の元にあり、死霊術、影術の全ての起点になっているの。
使命でも義務感でもない。
あなたが怪我人を助けることを第一義としているのと同じようにね』
リリィの及び腰な説得を一蹴するが、それでも結論は出さない。
これは生者を助けるリリィと死者を昇天させるパピスヘテプの立場の違いでもあるのだろう。
リリィはあくまで助けたい。
それは生かす事であり、どのような形でも、再出発させようとさせる。
対してパピスヘテプは死者の願いを尊重し、安らかな死を受け入れさせることが救済であるとしている。
すなわち、消してくださいと願われたのであれば、そのまま昇天させる。
それがパピスヘテプ取る選択肢なのだ。
どちらが正しい、どちらがより良いという問題ではない。
にも拘らず迷っているのは、身体を乗っ取られた張本人であるリリィが助けたいと願っている事。
何より、アムリーテシリーズを強引に昇天させてしまった自己嫌悪を少しでも軽くしたい。
道理ではなく、パピスヘテプ自身の利己的な考えなのだ。
それがわかっているからこそ、リリィの言葉の意図を汲んでいても明確な回答ができぬ理由であった。
だが何事も十分な思考時間は与えられず、決断はいつだって準備不足で迫られる。
>「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
>『大変!テオ君が!!体に戻らなきゃ・・・・・って!戻ったら戻ったで、私、幻覚見て変な行動取っちゃうかも!!』
ジェイムズの肩の藁人形から流れ響くバリバリと粘着物が引きはがされるような音。
続いてアンチラストの怒声とリリィの悲鳴。
尋常でない様子はジェイムズも察しているだろう。
「ジェイムズ先輩、そこの十字路を右に曲がれば合流です!」
急ぎジェイムズに行き先を告げる。
合流さえすれば咄嗟であっても状況判断してジェイムズは何とかするだろう。
そんな確信を持っての声だった。
それと同じくしてテレパシーを飛ばす。
『もうすぐそばまで来てるから。すぐに魂を映すから自分の身体を確保しておいて。
肉体はモウソウダケに犯されているでしょうけど、空になった藁人形に状態異常を移す術を打つから安心して。
でもその場合、もう私にも藁人形のストックはないわ』
卑怯で残酷だと思いながらも自分では下せぬ決断を突き付けた。
危険な状況で幻覚に犯されている場合ではない。
見も知らぬ身体を乗っ取った危険なゴーレムの為に一つしか残っていない藁人形を使える状況ではない。
ましてやアムリーテが消えることを望んでいるのだ。
どういった結論を出すかは火を見るよりも明らかである。
が、それでもパピスヘテプはリリィの決断に従おうと決めていた。
迷える時間は僅か。
ジェイムズに少し遅れ、パピスヘテプも合流を果たすのだ。
- 78 :
- >69-77
>「クラスタは知らないけれどアムリーテ姉ちゃんならいるよ!」
「ほう? ……ああ、あれか? あの豚男の……いや、豚男なんてこんなところに……幻覚か……?」
虚ろな目をしたテオボルトが視線を向けると、オークに抱えられたアムリーテinリリィがいた。
しかし、鈍化した思考がこれも幻覚かと考え始める。
何時の間にやらフリード達もいるが、右から左へと声は通り抜ける。
認識能力がかなり怪しい。
ぼんやりし続けていると、急にテオボルトの頬に痛みが走った。
思わず尻餅を付き、揺れる瞳でその原因を視認する。
昆虫のような甲殻を纏った長い手足。それはアンチラストの体から伸びていた。
どうやらその長い腕の先の手で、平手打ちをされたらしい。
>「ノドが渇いたのなら、オマエの血をマツゴの水にしてやろウ!!」
「ぐ……」
僅かに呻き、よろよろと立ちあがるテオボルト。視界の不明瞭さで、動きが鈍い。
>「いざ、ナムサン!!」
>アンチラストが持っていた棒は、いつのまにか金色の剣になっていた。
振りかぶられた剣を見て、なんとか回避しなければと思いテオボルトが身構える。
そして振り下ろされると同時に、後ろに飛び退いた。いつものような動きで。
「……ん!? 思考がクリアだと?」
何時の間にか、テオボルトの視界も思考も明瞭、調子は十分であった。
この場面で人間サソリの抗体エキスが効いてきたのだが、流石に彼に知る由もない。
突然の変化に首を傾げながらも、改めてアンチラストと相対するテオボルト。
「ふむ、昆虫人間か。それだけなら……魔法使いの敵じゃあないな。だろう?」
さて、テオボルトは素早く状況を再確認。
といっても、幻覚の脅威が取り除かれた今、注意すべきことは周りにフリード達がいる事ぐらいだ。
指を弾き、溜められた雷の魔力が火花を散らす。
「それじゃあ一つ! ご覧あれ、『サンダー・スパイク!』」
今度はテオボルトが片手を振りかぶり、雷をアンチラストの足元に叩き付ける!
パァン!!と大きな破裂音と、一瞬の閃光が走る。
直接的な攻撃力はないが、目くらましと怯ませるには十分だろう。
「そら、大人しくするんだな、っとぉ!」
怯んだだろうその瞬間に、テオボルトはアンチラストに飛びかかり、地面に引き倒して手足を押さえつけた。
構図的に危険であるかもしれないが、一応無力化をしたことだろう。
「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
アンチラストを組み伏せたまま、視線を近づいてくる足音へと向けた。
遅れてきたジェイムズとパピスヘテプがやってきている。
- 79 :
- アンチラストは昆虫のような光沢をもつ手足をはやした姿に変身した
『変身するとはまさかラスボス!?』(グレン)
「あっちが変身ならこっちは合体です!行きますよグレン、ソウルユニオンです!!」
『マジで久々だよね・・・・・行くよソウルユニオン!!』(猫語)
ソウル・ユニオン……それは使い魔と合体してパワーアップするという
とてもわかりやすい能力である
ただし欠点として
@合体後の姿が必ずしも格好良いものではない
A長時間やるとお腹が空く
B合体する相手と自分の性別が違えば男でも女でも無いおか以下略になる
C合体相手によって人間の言葉が喋れなくなる
D格好良くなれても聖●士みたいで著作権が心配等があり
決してノーリスクではない、またこの解説は過去の使い回しである
「これが絆の力だ! ソウル・ユニオン!フリード・SU・グレン!!」
グレンと合体し猫耳が生えて手が猫手になり猫尻尾が生えたフリード
ケモノの力を加えることにより大幅にパワーアップすることが出来るのだ
そして以前と違ってちゃんと人間の言葉がしゃべれさらにフリージングサーベルまで使える
今までの経験知によるレベルアップは無駄では無かったようだ
「最初に言っておきます!僕は微妙に弱い!!」
いいえ周りがおかしいだけです
『さらに覚醒して倍率ドーンだ』(猫語)
「いえそれをするにはまだ経験値が足りませんので」
どうやら併用はまだ難しいようである
>「生きていてよかったです。フリードリッヒ。リリイをお願いします」
>『オークがしゃべった?!っていうか、もしかしてアムリーテなの?!』
放り投げられたリリィの体を柔らか肉球ハンドで受け止めるフリード・SU・グレン
>『大変!テオ君が!!体に戻らなきゃ・・・・・って!戻ったら戻ったで、私、幻覚見て変な行動取っちゃうかも!!』
『大丈夫僕が正気に戻すよ』(猫語)
猫語が分かるならいいがわからない人からは猫のコスプレしたフリードがニャアニャア言っているようにしか見えないだろう
>「いざ、ナムサン!!」
「テオボルトさん!?」
『無茶しやがって』(猫語)
変なフラグ建てるなグレン
>「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
だがあっという間に組み伏せるテオボルト
「やったか?」
大体こういう場合はやってないに決まっているのだが・・・・・
『油断大敵火がボウボウだよ』(猫語)
そうあまりにもあっさり過ぎる何かあるに違いない
- 80 :
- 日常の隣に身を潜める非日常、その只中にあって
概念的な存在である『正気』を保っている者は一人もいなかった。
冷静である事と正気である事は違う、されど気づく者もいるだろう。
細く、しかし途切れないタバコの煙が漂っている事。
その煙が先程アムリーテが消したのと同一である事。
煙を発するタバコの持ち主が、10歳前後の少女である事が……
- 81 :
- >78
> 「そら、大人しくするんだな、っとぉ!」
テオボルトは雷の魔法でアンチラストを牽制し、ひるんだ彼女を組み伏せた。
> 「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
テオボルトが遅れて来たジェイムズ達を確認し、視線を元に戻したならギョッとするモノを目にするだろう。
至近距離で組み伏せるテオボルトからは、フードに隠れたアンチラストの顔を見ることができるからだ。
しかし、それは厳密にはアンチラストの素顔ではなかった。
人間の、女性の顔が、鋭利な刃物で削ぎ落とされたようなそれが、
アンチラストの顔にお面のように張り付いていたのだ。
テオボルトはその顔に見覚えがあるはずである。
それは物置で見つけた幻影機に登場した若い女性研究者、
娘を蘇らせるために狂気の研究を続けた母、
マリアベル・ホワイトその人の顔であった。
アンチラストの体が、それを抑えつけるテオボルトの体ごとググッと上に押し上げられた。
再びバリバリと粘着物を引き剥がすような音がして、アンチラストの背中から4本の腕が生えたのだ。
背中から現れた4本の腕は、ひょろりと長いのは同じだが、
黒い攻殻には覆われておらず、より人間のそれに酷似していた。
背中の腕が二人の体を持ち上げ、ひっくり返した。
今度はテオボルトが下になり、アンチラストが上になる格好である。
「オマエの名前を言え!!」
アンチラストは黄金の剣を逆手に握り、テオボルトに突き下ろす構えをとった。
「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」
テオボルトが何かを仕掛ければ背中の腕で妨害するだろう。
このまま近接戦闘を続けるのは危険である。
- 82 :
- >76-81
「・・・・・・・・パピちゃんは、自分に負い目がある時でも、相手に本当の気持ちやわがままを言える?」
リリィは躊躇いがちに、そんな言葉をテレパシーで送った。
「初対面のとき、アムリーテは言ってたの。
センセイにもう一度お会いするまで破壊されるわけにはいかないって。
それが本当かどうか私にはわからないけれど、・・・・・その言葉だけは多分、嘘じゃないと思う」
>『もうすぐそばまで来てるから。すぐに魂を映すから自分の身体を確保しておいて。
>肉体はモウソウダケに犯されているでしょうけど、空になった藁人形に状態異常を移す術を打つから安心して。
>でもその場合、もう私にも藁人形のストックはないわ』
パピスヘテプの言葉にうんうんと頷いていたわら人形の頭が、ぴたりと止まった。
それはつまり、「リリィは、自分の体を奪ったアムリーテのために、どこまで周りを危険にさらせるか?」という問いかけでもあった。
目の前には戦っているアンチラストとテオボルト。
フリード&グレンと、後から合流するであろうジェイムズと頼もしい仲間はいるが、不測の事態がおきないとも限らない。
アムリーテがこの後どう行動するかも読めない。
自分は戦力としては数に入らないが、幻覚を見て暴れて、皆の足を引っ張る可能性は非常に高かった。
『大丈夫僕が正気に戻すよ』(猫語)
リリィの迷いを吹き消すように、フリード・SU・グレンは、そう請け負った。
『そうか・・・・・うん!その手があった!』
わら人形がパアァっと元気になった。
フリードはまったく気負うことも無く、リリィの我侭を受け入れ、事後のフォローを申し出てくれたのだ。
そんな男前なフリードの姿は、猫耳猫尻尾で、両手には肉球という、夢のような獣系美少女・・・
否、美少年である。
女のリリィから見ても惚れ惚れしそうな可愛さだ。
その戦闘力を知っている者としては頼もしいことこの上ないが、あまりにも可憐である。
ジェイムズ先輩の誤解が、更に深まらなければいいのだが。
(はっ!そんなこと考えてる場合じゃない!)
見とれていたことに気づいたリリィは、我に返るなり、わらの頭をぽかぽか叩いた。
『ありがとう、グレンにフリード君。うん、二人のこと、信じてる。
・・・・・・・はっ!で、でも、正気に戻すときは、普通の女の子が死なないやり方でお願い』
リリィが発した懇願は、冗談のようだが本気である。
なぜなら、フリードの大丈夫レベルとリリィのそれとは、雲泥の差があるからだ。
その証拠に、ソウル・ユニオンした直後、フリード達はこう叫んでいたではないか。
「最初に言っておきます!僕は微妙に弱い!!」 ・・・・・・・と。
>「よし、よし。無理に傷つける必要もないしな。……そろそろ事も片付きそうだ」
アンチラストは意外にも弱く、あっという間にテオボルトが組み伏せてしまった。
>「やったか?」
『フリード君もグレンも、せっかくソウルユニオンしたのに出番なしだったね』
>『油断大敵火がボウボウだよ』(猫語)
『さすがに無いでしょ?』
すっかり安心したリリィは、余裕を持ってパピスヘテプにテレパシーを送る。
今のリリィは自分達のことで頭がいっぱいで、微かな匂いにまではとても気づけなかった。
『パピちゃん、最後のわら人形を使い切っても大丈夫だよ。
私は今、本体と一緒にいます。
回復したばかりなのに悪いけれど、到着次第、私が元の体に元に戻るための魔法をかけてください。
我侭言ってごめんね。でも私は、一人じゃないから。だから、大丈夫。
どうかよろしくお願いし・・・・・・きゃああ!大変!アンチラストの腕が増えたぁあ!!
やだ、テオ君が!フリード君早く助太刀してあげて!』
- 83 :
- >「オマエの名前を言え!!」
リリィの目と鼻の先で、アンチラストは黄金の剣を逆手に握り、テオボルトに突き下ろす構えをとった。
リリィが叫ぶようなテレパシーを送り終えたと同時に、遅れてきたパピスヘテプとジェイムズがこの場に現れた。
>「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」
『わー!待って待って!名前言うよ!言うから!私の名前はリリィです!』
わら人形はぴこぴこ両手を振って飛び跳ねているが、今は戦闘中である。テレパシーが届いているかは疑問だ。
リリィが叫ぶようなテレパシーを送り終えたと同時に、遅れてきたパピスヘテプとジェイムズが現れた。
『パピちゃん早く!ジェイムズ先輩、お願い、テオ君を助けて!』
- 84 :
- >81−83
バリバリという音を立て4本の腕を増やすアンチラスト
「腕が6本!?ずるいですよ!僕の友達には腕が一本しかない子がいるっていうのに!!」
『あの子はその代り翼が生えてるからいいじゃない』(猫語)
>『きゃああ!大変!アンチラストの腕が増えたぁあ!!
やだ、テオ君が!フリード君早く助太刀してあげて!』
「わかりました腕が6本なら3人いるも同然ならばこちらも3人がかりまでなら卑怯じゃないはずです」
『友達の命がかかってるのに卑怯もラッキョウもないと思うよ』(猫語)
訳の分からない理屈で助太刀を容認するフリード
「あなたが明らかに人間じゃないとか腕が6本あるとか
そんなことはどうでもいいですが僕の友達をやらせはしません!」
『明らかに人間じゃない種族の友達も多いもんね』(猫語)
「飛ばせ氷拳!フリージングナックル!!」
フリードは目の前に氷の拳を生み出しそのまま発射する
これって合体した意味とかあるのだろうかと激しく疑問に思う攻撃だが
こまけえ事はいいんだよの精神で乗り越えるべきだろう
「連射!連射!連射!連射!!」
フリージングナックルを連射するフリードリッヒ
『尖った氷柱とかのほうが良くない?』(猫語)
「そんなことしたら返り血で服が汚れるじゃないですか!
それに相手を殺してしまうかもしれませんし」
『でも殺そうとすれば殺せないってあれには書いてあったよ?
殺さないつもりで攻撃したら殺しちゃうんじゃない?』(猫語)
「じゃあこれじゃ逆に殺してしまうかもしれないんですね
僕はR覚悟という言葉が人殺しの言訳みたいで嫌いなんですが
R覚悟を持った攻撃をしないと相手が死んでしまうかもしれないとは・・・・厄介極まりないです」
『逆に言えばどんだけ全力で攻撃しても相手は死なないからやりたい放題出来るってことじゃね?』(猫語)
勝手な解釈で物事を進めようとする一人と一匹
「なら!フリージングサーベルいちご味!!」
腰の刃のない剣を抜きピンク色の氷の刃を生み出すフリードリッヒ
「発射!!」
そのままアンチラストを狙い氷の刃を発射する
『いや斬れよ魔法剣士』(猫語)
「だって腕6本ですよ!明らかに接近戦得意ですよ!捕まってなんとかバスターとかされたら大変じゃないですか!!』
別名恥ずかし固めである
「何とか距離を取って猫の俊敏さで攻撃を避けつつ射撃戦です!・・・・・これ本来接近戦のほうが向いた合体なんですけどねえ」
- 85 :
- 「………此れは何とも……」
ジェイムズとパピスヘテプが進んだ先には、溢れんばかりの茸、茸、茸………
どうやらこれらがモウソウダケのようだ。
「……予想外の量だな。まさか此処までとは……」
と、直立不動のまま動いているパピスヘテプに着いて行きつつ呟いたのだった。
ガシャンガシャンと音を立てながら進んでいると、ふと壁の文字群に気が付く。
「む……何だこの文字群は……『オカアサンダイスキ』………か……」
その文字を見て、ジェイムズはかつて失った家族の事を思い出し、何とも言えない気分になった。
だが、今はそんな事を考えている暇は無い。
そうこうしていると突如、アンチラストの怒声とリリィの悲鳴が静かな地下通路に鳴り響いた。
「!今のは何処からだ?」
>「ジェイムズ先輩、そこの十字路を右に曲がれば合流です!」
「分かった、直ぐに向かう!」
ガシャガシャと音を立てて走っていき、十字路に到達。
「此処を右だな……」
>「それじゃあ一つ! ご覧あれ、『サンダー・スパイク!』」
「むッ!?」
パァン!という破裂音と閃光が炸裂し、ジェイムズは一瞬怯んでしまう。
- 86 :
- 「くっ……無茶な事を……」
大勢を立て直して走り、開けた所に出る。
そこには、
>『kxüz-71küqæu/:)h(理解不能)』
「………何をしている……」
猫のコスプレをしたフリードがニャーニャー言っていた……
な、何を言ってるのか(ry
「(……まさかあの乙女、そう言う趣味なのか……?)」
ジェイムズはフリードに対して変な印象を受けてしまったようだ。
まだ女と勘違いしているのは別として。というか普通分からない。
そして、ふとテオボルトの方を見る。そこにはとんでもない光景があった。
>「オマエの名前を言え!!」
>「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」
体から幾本かの腕が生えた子供が、テオボルトを押さえ付けて黄金の剣を突き落とそうとしているではないか!
「不味い!」
>『パピちゃん早く!ジェイムズ先輩、お願い、テオ君を助けて!』
「……言われずとも……」
咄嗟に槍を構え、精神を集中させる。
「(………間に合うかは分からんが……)」
精神を集中させ、力を溜める。狙いはアンチラストの持つ黄金の剣。
「………「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーー『月光』」
ジェイムズの槍技が放たれた。槍先が光を放ち、唸りを上げて、吸い込まれるかの様にアンチラストが構えている黄金剣に向かって行く。
いくら腕が複数本あって力が強いとしても、これが当たれば黄金剣はアンチラストの手から弾かれるだろう。
- 87 :
- 自分の問いかけにリリィが答えるまでの間、パピスヘテプは考えていた。
なぜ兵器たるアムリーテに魂や人格が必要だったのか?と。
兵器に人格があるメリットが見当たらないのだ。
人格により生まれる個の判断は指揮系統を外れた個人的な交渉の余地を生んでしまう。
また感情はアムリーテシリーズの怨霊のような暴走を招きかねない。
このようなデメリットがあるのも関わらず、わざわざ技術的にも難しい人造霊魂や疑似人格を仕込んだのはなぜか?
考えの先に一つの仮定が生まれる。
本来の兵器アムリーテには人格など必要もなく、ありもしなかった。
疑似人格はアムリーテを暴走、自滅させるために仕込まれたウィルスに値するものではないかと。
そうであれば、機体の性能に比べ余りにも稚拙で浅薄な疑似人格も合点がいく。
自身の肉体であるはずの機体の制御やエネルギー管理すらもできていないほどの。
また、リリィの肉体に憑りついた事も意味不明だが、どうやら今はオークに憑りついているようだ。
そこから憑りつく事への抵抗の低さ。
疑似人格の自己と他者の境界認識が極めて低いのか、兵器アムリーテへと憑りつく手法の名残なのか。
リリィはアムリーテの「先生にもう一度会うまでは」という言葉を信じているようだが、パピスヘテプにはそれすら何らかの意図された符牒にも思えてしまう。
そこまで言っておきながら突如として消してくださいと言い出す不安定さを露わにしているのだから。
全ては仮定の上の想像で成り立つものではあるが、あらゆる状況がアムリーテの危険性を現している。
それは判断を行う上では重要な基準となるはずだ。
答えは考えるまでもなく、一つでしかあり得ない。
影を滑らしながら移動するパピスヘテプの手にはいつの間にか二本の荒縄が握られていた。
>『パピちゃん、最後のわら人形を使い切っても大丈夫だよ。
『そう言うと思ってた』
クスリと笑いながら短く応える。
どれだけ危険性を客観的な証拠と共に並べようとも。
それをリリィ自身が身をもって味わっていようとも。
長い付き合いというわけではないが、リリィがどう応えるかなど、わかっていたのだ。
最後のキーはリリィの身の安全ではなく、周囲へ迷惑かけるかどうか、だけであるという事も。
ジェイムズに続きモウソウダケの胞子の霧から飛び出すと、そこに広がっていたのはカオスな光景であった。
テオボルトに襲い掛からんとする異形の化け物。
手に握られた黄金の剣を突き立てようとしている!
それを阻止せんと槍撃を放つジェイムズの黒い甲冑の肩越しに見えるのは……
フリード・SU・グレン!
美少女と言っても本人以外誰も文句を言わぬその姿!
猫耳猫手に猫のしっぽ。
そんな半人半猫の姿にパピスヘテプの目が釘付けになってしまうのだった。
- 88 :
- 「う、うぃえあ〜!?バストテ女神!???」
意味不明な驚きの言葉のあとに出た名前、バステト女神とは!
パピスヘテプの出身地である南方域であがめられる猫の女神である。
本来人類抹殺の為に最高神が作り出した最強最凶の女神セクメトだったのだが、人類抹殺計画中止に伴い凶暴性を取り除いた結果、バストテ女神となったという。
明るく日の下で音楽と豊穣を司り、貧Rから豊Rまであらゆるバスト守護する。
冥府の管理者であり、お尻好きなオシリス神とは色んな意味で対照的な女神なのだ。
舞うようにピンク色の氷の刃を生み出し乱れ放つその姿に目を奪われていたが、
「……はっ!ちがう、あれはフリード君!でもそれはそれでまた美味……」
判っていても女神と見間違えたその姿だが、フリードである事を再確認し、パピスヘテプの鼻から地下噴出した。
猫や美少年に色々とコンプレクスもあるのだが、それとは別に鼻血が噴出する何かを思い浮かべてしまったようだ。
我に返ったパピスヘテプは割って入るには命がいくつあっても足りなさそうなそれから急いで離れ、本来の目的へと急ぐ。
金縛りにあって動けないオーク(inアムリーテ)とリリィの肉体、そして藁人形(inリリィ)に荒縄を投げつける。
一本はリリィの肉体と藁人形(inリリィ)を結び、もう一本はアムリーテにより金縛り状態のオーク(inアムリーテ)と藁人形(inリリィ)を結ぶ。
「これ以上面倒事が起きないうちにややこしい事解消よ!」
高らかに唱える呪文と共に、リリィとアムリーテの魂は強力な吸引力を感じるだろう。
リリィの魂は藁人形からリリィの肉体に。
アムリーテの魂はオークから藁人形に。
それぞれが移ると共に荒縄は解かれる。
更に続けて印を結ぶと、藁人形の胸を貫く五寸釘の頭の部分に呪いの文字が刻み込まれた。
「消してほしいというのはあなたの都合。消さないのはこちらの都合。
それだけの事よ。
あなたが何者で何が目的だったかは問う暇もないから聞かないけど、こちらからは教えておいてあげる。
肉体は魂の砦であると同時に枷でもあるのよ。
今のあなたの肉体はこの藁人形。
釘の部分に呪いをかけてあなたの魂を縫い付けたわ。
この藁人形が破損したり、無理やり抜けようとしたら魂が傷つき消滅するから気を付ける事ね。
センセイとやらを探しているのであれば急いで探しに行きなさい。機体と違いその藁人形は結構脆いのよ」
藁人形の使い方には霊体を閉じ込め、そのまま冥炎で焼いてしまうための檻としての役割も持つ。
故にこのように、魂を縫い付け無力な藁人形に閉じ込めることもできるのだ。
リリィはもはや気にもしていないだろうし、状況が許せば和解すら望むだろう。
その決定には従うが、危険なアムリーテを野放しにするほどパピスヘテプは寛容ではなかった。
無力な藁人形の身体では何もできないだろうし、消えたいのであれば自殺も容易だろう、という事も言には含まれている。
「さて、こっちはこれでいいけど、リリィ、自分の身体に戻った感想は……
その前に、モウソウダケの胞子の幻覚からどうやって回復するつもりなのかしら」
アムリーテは警告を済ました後、大きく息を吐き片膝をつくパピスヘテプ。
魂の二重移動の術の消耗は確かにあったが、それ以上に鼻から流れ出した血が馬鹿にならない体力を流出させていたのだ。
「あ〜〜、リリィを戻したらエンカ君を探しに行けると思ってたのに、どういう状況なのかしらね」
異形の化け物と化したアンチラストの戦いを見ながら影から特性の肉の塊を取り出すパピスヘテプ。
消耗した今、思考は、そして注意は回っていない。
憑依状態が解かれたオークが正気を取り戻しパピスヘテプに影を落としている事すら気づかぬほどに。
- 89 :
- >86>84
怒りに我を忘れているアンチラストは、自分の周りに、
自分を狙う者たちが集まってきたことに気づいていなかった。
それはアンチラストがテオボルトに剣を突き刺そうとした瞬間だった。
> 「………「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーー『月光』」
「アー!?」
> ジェイムズの槍技が放たれた。槍先が光を放ち、唸りを上げて、吸い込まれるかの様にアンチラストが構えている黄金剣に向かって行く。
アンチラストの剣が彼女の手から弾かれて飛んでいった。
その時ようやく、アンチラストはジェイムズとリリィ達、そしてフリードの存在に気づく。
> 「飛ばせ氷拳!フリージングナックル!!」
> フリードは目の前に氷の拳を生み出しそのまま発射する
> 「連射!連射!連射!連射!!」
> フリージングナックルを連射するフリードリッヒ
アンチラストは何発かの氷の拳は叩き落としたが、
無数に飛んでくるそれらに対処しきれずテオボルトの体の上から降りた。
「ア、ウ、アー!?」
アンチラストは回避もまじえながら氷の拳に応戦したが、とうとう何発かの氷の拳がまとめてヒットし、
吹き飛んだアンチラストは地面から隆起していた水晶の壁に叩きつけられた。
とたんに地面に堆積していたモウソウダケの胞子がもうもうと宙に舞い上がり、アンチラストの姿が見えなくなる。
思わず「やったか!?」と言いたくなるような状況になった。
> 「なら!フリージングサーベルいちご味!!」
> 腰の刃のない剣を抜きピンク色の氷の刃を生み出すフリードリッヒ
> 「発射!!」
氷の刃はアンチラストがいるだろうモウソウダケの胞子の煙に吸い込まれて行った。
フリードの狙いは申し分無かった。しかし……
「ガッチャーミ!!」
煙の中から金属同士がぶつかったかのような甲高い音が響いた。
モウソウダケの胞子の煙が晴れると、全ての腕に金色の武器を持ったアンチラストがそこに立っていた。
彼女の足元には、叩き落とされたのであろうフリージングサーベルの刃が地面に突き刺さっている。
彼女の背中からはえる四本の腕のうち、右手側の二本の腕には金色の弓と矢が握られていた。
反対側にあたる左手側の二本の腕にはやはり金色の杖と剣が握られている。
そして両肩からはえた二本の腕に握られているのは、先端が十文字となっている長い槍だ。
さながら阿修羅のごときこのような姿を一度目にしたならば、フリードは自分の判断が正しかったと改めてうなずくことだろう。
「パンニャー!!」
もはや人の言葉さえ口にしなくなったアンチラストは、背中の腕に握る弓に三本まとめて弓をつがえ、放った。
最初は間違いなく三本しか放たれなかった矢ではあるが、宙を進むうちに分裂してその数を増やし、
最後には百八本もの弾幕となってその場にいるメンバー全員に襲いかかった。
- 90 :
- >81-89
事が順調に進みつつあることに安心して、視線を落とすテオボルト。
次に視線を戻した瞬間、驚きで目を剥いた。
>人間の、女性の顔が、鋭利な刃物で削ぎ落とされたようなそれが、
>アンチラストの顔にお面のように張り付いていたのだ。
その顔は、幻影機の映像で出てきた女性研究者の顔である。
そして、雷に打たれたようにある事実に気が付いた。
「そうか……! 口調が男だからと、見かけがエンカだからと、男だと思い込んでいたが……!!
『母』とは、『オカアサン』とは、マリアベルのことだったのか……!?」
力が緩んでいたか、はたまたテオボルトの力を上回ったか。
>アンチラストの体が、それを抑えつけるテオボルトの体ごとググッと上に押し上げられた。
>再びバリバリと粘着物を引き剥がすような音がして、アンチラストの背中から4本の腕が生えたのだ。
「う、おおおおッ!? アンチラスト、お前は一体……!」
>今度はテオボルトが下になり、アンチラストが上になる格好である。
>「オマエの名前を言え!!」
>アンチラストは黄金の剣を逆手に握り、テオボルトに突き下ろす構えをとった。
>「我が名はアンチラスト!このイカリ、収まるところをシらずとも、必ずやオマエをクヨウせん(供養をする)!!」
万事休す、と思われたその瞬間。
> 「………「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーー『月光』」
>「アー!?」
鎧の中からのくぐもった声と共に、アンチラストの頭上から金属音を出して剣が弾かれる。
アンチラストの情けない声も付いてきた。
続いてフリードの氷の拳連打でアンチラストがテオボルトの上からどく。
「よくやってくれた! 感謝する……が、間違っても私には当てるんじゃないぞ! 聞いてるかフリード!?」
が、未だに頭上を飛ぶ氷にはどうしようもなく、時折飛んでくる氷の欠片に顔を顰めながら地面に退避しているのだった。
>「ア、ウ、アー!?」
> 「なら!フリージングサーベルいちご味!!」
> 「発射!!」
>「ガッチャーミ!!」
氷の拳連弾を食らい、更には氷の刃をも食らうアンチラスト。
漸く攻撃の嵐が止んだところで、仰向けのテオボルトが後転からのバク転!
華麗に無駄な行動をとりながら、皆のところへと下がる。
「ああ、くそ、危ない所だった! しかしアンチラストめ、何がどうして襲ってきたのやら」
まだウロチョロしてる人間サソリを足で追い払いながら、ブツクサ文句を垂れる。
- 91 :
- ふと、別の対処に追われていた筈のパピスヘテプを見やる。
片膝を付き、肉を持って休憩しており、リリィの方も多少なりとも動きを見せている。
一応終わったかのような様子ではある、が。
「……おーい、そこのオークは何だ? 何処かから迷い込んででも来たか……なぁ、おい?」
正気に戻ったらしいオークを見ながら、顔を引きつらせる。
モウソウダケのせいか、目も血走っている鼻息荒いケダモノが、腕のリリィを取りこぼす。
>「ブルルル……ブオォォォォォ―――ッ!!!!」
>「パンニャー!!」
オークとアンチラストが同時に吠えた。
巨体の迫力をドラミング(手で胸を叩く行為。ゴリラなどが行うアレ)で見せつけるオーク。
素早く振り向けば、阿修羅の如き姿のアンチラスト。
まさしく前門の虎、後門の狼というべき状況であろう。
「おいおい、ピンチはまだ続くか……!? フリード、それとジェイムズとかいうの! アンチラストを頼む!」
弓をつがえるパピスヘテプを見て、素早く指示を出す。
テオボルトの使う魔法の多くが雷。実体を持たない現象であり、防御手段としてはあまり役に立たない。
故にこの状況ではアンチラストとは相性が悪く、対処の仕様がないのだ。
しかし、
「オークなら、私が何とかできる!」
肉体だけが取り柄であり武器である相手、すなわちオークに対してはとても相性が良い。
「出し惜しみは無しだ、離れてろ! 以前の馬と同じ目に遭わせてやろう……!!」
フリード達を背中に置きながら、今にも近くの二人に手を出さんとするオークに手を翳す。
掌でバチッと放電。照準を定め、溜められた魔力に指向性を与える。
「洞窟で落雷を食らうんだな、『サンダー・ボルト』!!」
テオボルトの手から、館の地下で見せたサンダー・ランスよりも太い稲妻が迸る!
直撃すればほぼ確実にオークも仕留められるだろう。
ただ、巻き込まれてしまえばその人物もただでは済まないだろう。
- 92 :
- スーッと煙を吸い込み、そしてむせる。
喫煙に慣れてない新参者が最初に通る道だが……
「けほっけほっ……うぇー、なにこれぇ。
こんな物が嗜好品だなんて、認めたくないなぁ」
嫌そうに、火のついたタバコを少女は投げ捨てた。
……床に落ちた瞬間、大量の煙が空間全体を覆う。
その煙は異常だった。聴覚以外の五感、そして魔力による感知も
使えなくなってしまったのだから。
折り悪く、放たれた雷撃の余波が少女を襲う。
しかし、煙で情報が遮断されていた為それに気づいた者はいない。
- 93 :
- 遅れて合流したパピスヘテプとジェイムズ。
ジェイムズの方は即テオボルトとフリードへと助力に向かっている。
予告どおりリリィの体を戻そうとしていたパピスヘテプだったが、フリード&グレンに見とれて女神と呟いていた。
>「……はっ!ちがう、あれはフリード君!でもそれはそれでまた美味……」
しかもフリードである事を再確認した上で、鼻血を噴出している。
『わああっ?!とりあえず鼻押さえて、鼻!』
(そういえば、暴走ジドウシャの中で、お尻がどうとか言ってたような・・・・・・?)
日常的に霊と接しているせいか、彼女は大人びて達観しているイメージだったのだが・・・・・・。
幸いパピスヘテプは、本来の目的をすぐに思い出してくれた。
>金縛りにあって動けないオーク(inアムリーテ)とリリィの肉体、そして藁人形(inリリィ)に荒縄を投げつける。
>「これ以上面倒事が起きないうちにややこしい事解消よ!」
本来の肉体と仮のわら人形の体を結び付けられ、呪文が始まったとたん、リリィは強烈な吸引力を感じ始めた。
まるで眠りに落ちる直前のような、強引ではないのに抗いがたい力。
(・・・・・・これでやっと、私の体に戻れるのね)
最初に気づいたのは、音の変化だった。
アムリーテの体にいたときや、藁人形のときに感じていた違和感が消える。
次に襲ってきたのは、魔法の箒で急旋回と急上昇を繰り返した後のような浮遊感と不快感だった。
目を閉じて何とか吐き気をやり過ごしていると、パピスヘテプがアムリーテに説明しているのが聞こえた。
>「さて、こっちはこれでいいけど、リリィ、自分の身体に戻った感想は……
>その前に、モウソウダケの胞子の幻覚からどうやって回復するつもりなのかしら」
「うえっぷ、酷い気分だけど大丈夫・・・・・う・・・・・こ、こりぇはひどいかも」
リリィはハンカチで口を押さえながら、どうにかそれだけ口にした。
「私のカバン、その辺にあるはずなんだけど・・・・・・よく見えない。でもいいの。後でグレンに治してもらうから。
たとえ私が元気でも、あの戦いに割り込めるほどの力はないから」
リリィは、アムリーテがいるであろう場所に顔を向けた。
だが目は閉じたままである。
「センセイを探しにいくのもいいけど、その体で、あの光る天井の仕掛けに手が届くの?
しばらく、物陰に隠れていたら?藁の体は脆いよ?」
>「あ〜〜、リリィを戻したらエンカ君を探しに行けると思ってたのに、どういう状況なのかしらね」
「アンチラストを倒したらわかるかも」
視界を閉ざしたリリィの鼻腔を、肉のいい匂いが擽った。
どうやら消耗した魔力を補うため、再び食事を始めるらしい。
「あれ?ねえ、そういえばアムリーテが入っていたオークは?」
リリィが目を開けると、肉をほお張るパピスヘテプの背後に、巨大な影が見えた・・・気がした。
>「……おーい、そこのオークは何だ? 何処かから迷い込んででも来たか……なぁ、おい?」
リリィは目を開けた。
だが幻覚を見ているリリィには、オークではなく、背が高く、派手な化粧をした大柄の男として捕らえていた。
それでも、リリィの反応は尋常ではなかった。
「きゃあああああああ!いやああ!!」
リリィは傍らで食事をしているパピスヘテプの体を、大柄の男から距離をとらせようと突き飛ばす。
逃げ遅れて腕を取られたリリィは、
「ブレ先生、離して!」
と叫ぶなり、全身で拒否し腕を振り払う。
>「オークなら、私が何とかできる!」
>「出し惜しみは無しだ、離れてろ! 以前の馬と同じ目に遭わせてやろう……!!」
リリィも何とか距離をとろうとしているようだが、足がうまく動かないようだ。
テオボルトの魔法の威力は、過去に目撃している。
まともに食らえば、こちらもただではすまない。
少しでも距離をとろうと、リリィは洞窟の床を転がり、わずかながら距離を稼いだ。
>「洞窟で落雷を食らうんだな、『サンダー・ボルト』!!」
- 94 :
- オークに絶大な効果をもたらしたテオボルトの魔法。
だが、隠れていた少女に余波が当たったのだ。至近距離にいたリリィに多少なりとも影響がないはずがない。
「・・・・・・・・・・」
リリィは感電し、白目を剥いて倒れてしまった。
>「パンニャー!!」
>アンチラストは、背中の腕に握る弓に三本まとめて弓をつがえ、放った。
>最初は間違いなく三本しか放たれなかった矢ではあるが、宙を進むうちに分裂してその数を増やし、
>最後には百八本もの弾幕となってその場にいるメンバー全員に襲いかかった。
倒れているリリィには、当然攻撃を防ぐ方法はなかった。
- 95 :
- >「アー!?」
間抜けな声を上げ、手から黄金剣を手放すアンチラスト。
そのままフリードの猛攻を喰らい、壁まで吹っ飛んで言った。
「フン、他愛の無い……」
「…………!」
茸の巻き起こす粉煙の中、まだ立ち上がる影。
やがて煙は晴れ、金色の六本の腕が生えた怪物が姿を現した。
「タフな奴だ……」
>「ガッチャーミ!」
突然、アンチラストが弓を構え、三本の矢を放った。
>最初は間違いなく三本しか放たれなかった矢ではあるが、宙を進むうちに分裂してその数を増やし、
>最終的には百八本もの弾幕となってその場にいるメンバー全員に襲いかかった。
矢は攻撃を行ったばかりで大きな隙が出来ているフリードやテオボルトはともかく、
戦闘員ではないリリィやパピスヘテプに対しても例外なく襲って行った。
「如何!!」
咄嗟に走り、アンチラストとメンバーの間に立ちはだかるジェイムズ。
依然として矢は向かって来ているが、彼は少しもその場から動かない。
そして、キキキキィン!という軽い金属音を立てて、矢が鎧に着弾して地に落ち、メンバーは守られた。
そしてジェイムズはというと………
「………貧弱、貧弱…………此の程度か?」
百八本もの矢が命中したにも関わらず、なんとも無いと言った風にその場に仁王立ちをしていた。
彼の身体は強大な威圧感を放っていたが、何処か優しげなオーラに包まれていた。
その後彼はすぐに反撃の態勢に移る。投擲槍を取り出して、狙いを定めた。
「「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーーー『疾風』」
投擲槍を放つ。
槍は高速でアンチラストに向かい、アンチラストを追尾しているかのごとく正確に空を切って進んで行く。
「食らうが良い。一時的とは言え我が仲間に対し、傷を付け様とした罪は重い……」
- 96 :
- リリィとアムリーテの入れ替えに成功したパピスヘテプは
先生でも探しに行けばいいと言う。
いっぽうで、妄想ダケにやられたリリィは
アムリーテのほうを見つめ(適当にいるっぽいところ)
>「センセイを探しにいくのもいいけど、その体で、 あの光る天井の仕掛けに手が届くの? しばらく、物陰に隠れていたら?藁の体は脆い よ?」
というからアムリーテは
「ごめんなさいリリィ」
そう言って物陰に隠れた。そして隠れながら
パピスヘテプを突き飛ばして感電するリリィや
百八本の矢を一身に受け止めるジェームズをみる。
彼らの目的は課題を果たすこと。
でもそれ以上に感じるのは子供たち同士の絆。
なぜかそれを羨ましくも思うアムリーテ。
(せんせいとわたしのあいだには、あのようなものが欲しかったのです。
あのようなものがあると、わたしは信じていたかったのです)
でも、今は何もない。
子供は可愛いもの、愛でるもの、と先生に教えられたアムリーテだったが
子供たちとの関係はマイナス。というかわけのわからない不気味なものとして
彼らはとらえていることだろう。
しかしそれがいったいなんなのだろう。
大好きなせんせいの言っていたことと、自分が思ったこと。
それは違っていた。見てくれがかわいらしくても
美しくてもその価値観が機械のアムリーテに
何をもたらすというのか。そう、これは先ほどパピスヘテプが
言っていたことと似ている。消えたいのはそちらの都合、
消さないのはこちらの都合。せんせいの思っていることと、
アムリーテの思っていることは違うのだ。
「わたしは、わたしは…アムリーテ」
つぶやいたあと、気絶しているリリィの頬を叩く。
この娘は自分の体を奪ったアムリーテに対して
物陰に隠れたほうがいいと気遣ってくれた。
ここでアムリーテは、初めてリリィや他の子供たちの姿を見たような気がした。
このままリリィが気絶してしまっていてはアンチラストの次の攻撃で
どうなるのかわからない。リリィは助けたい。
恩返しとか、そんないいものでもなくてチャラにしたいきもち。
そして、できたらあの悲しい怪物のアンチラストを…。
「おきるですリリィ、誰かにお姫様抱っことかしてもらおうなんて
甘えた考えは許しません。う、うう〜、え〜い」
自らの藁を引き抜き、リリィの鼻の穴をこちょこちょするアムリーテ。
自業自得とは言え、アムリーテにはもう、こんなことしかできなかった。
- 97 :
- >「う、うぃえあ〜!?バストテ女神!???」
『うちの神様がどうしたって?』(猫語)
グレンの信仰対象も彼女である・・・・だって猫だもの
天井があるにもかかわらず上のほうから紙切れが降ってきた
そこに書いてある『改宗するなら猫缶寄越せ』というありがたいお言葉を確認したフリード
「グレンの所の神様地上に介入し過ぎじゃないですか?」
『そのうちほかの神様にぼこぼこにされるよね多分』(猫語)
神様は信者を甘やかしすぎるとなんでも神任せにして努力しなくなるという理由で
めったに力を貸さないそのはずなのにグレンの所の神様ときたら・・・・・
>「……はっ!ちがう、あれはフリード君!でもそれはそれでまた美味……」
「突然血を吹きだした!?」
『おのれアンチラスト!念力のたぐいか!?』(猫語)
一人と一匹はアンチラストの見えない攻撃かと勘違いした
>「如何!!」
そういってメンバーの盾になるジェイムズ
『メイン盾着たこれで勝てる』(猫語)
「なるほどこれが騎士のスキル仁王立ちですか・・・」
いいえ彼は魔法使いです
>「「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーーー『疾風』」
「サポートなら任せろぉフリージングスネア!!」
フリードリッヒは床を殴りつける
するとどうだろうアンチラスト付近の床から氷で出来た腕が飛び出しその足を攫もうとする
「これがほんとの足を引っ張るってやつです」
『避けられたら間抜けだよね』(猫語)
「それはそれで隙が出来るだろうし問題ありません」
- 98 :
- >95>97
> 「………貧弱、貧弱…………此の程度か?」
飛翔する矢は全て、文字通りジェイムズが盾となったことでその意味を無くした。
ところで細い矢も百八本ともなると凄まじい量となるが、
幸いにも地面に落ちた矢はまるで最初から無かったかのように消えてしまう。
アンチラストはジェイムズのかけるプレッシャーを意に介さずズンズンと歩みを進め彼に近づいていった。
> 「「ゼルベルク家直伝 閃矛槍葬」ーーーーーーー『疾風』」
ジェイムズは投擲槍を放ったが金属同士がぶつかる甲高い音と共に、
アンチラストは手に持っていた十文字槍で叩き落とした。
おそらくさっきフリードが氷の刃を放った時も同様にして叩き落としたのであろう、
一度通じなかった攻撃法が今になって通じる道理はなかった。
しかし、先ほどとは違って今回はサポート要員がいた。
他ならぬフリードである。
> 「これがほんとの足を引っ張るってやつです」
フリージングスネアだ。
床から伸びた氷の腕がアンチラストの足を掴んだ。
アンチラストの動きが止まる。
「ンウェー!!」
アンチラストは足を止められながらも怒りくるって六本の腕にある武器を振り回したが、届くはずもなかった。
やがて、ハッと我にかえったアンチラストは武器を持った手を降ろし、あたりを見回した。
まずは先ほどまで戦っていたテオボルト、ジェイムズ、フリードの姿を見た。
こうやって見てアンチラストは、初めて自分が戦っていたのは一人ではなく三人の魔法使いであったことに気づいた。
次にアンチラストは、肉にかじりついているパピスヘテプを見た。別に、どうということはなかった。
最後に倒れているリリィとオークを見た。
リリィの周りで何かしている藁人形が見えたが、アンチラストには理解不能な存在だった。
「……あの二人は死んでいるのか?ならば、クヨウしなければなるまい」
アンチラストはジェイムズに言った。
「ナカマを傷つけようとした……さっきそう行ったな?
ナカマとはあの男(テオボルト)のコトか?
そのイカリならワタシにもわかるぞ。
なぜなら、あの男もまたワタシのナカマを傷つけているからだ。
だが、このイカリは今にいたり克服できそうだ。
…オマエ達の中にも、ワタシに対するイカリが見えるゾ?
オマエはどうする?イカリを克服できるか?
もしそうでないのなら、もう少しつきあってヤらないコトもない」
アンチラストは、さもそれが慈悲であるかのごとき態度でそう言い切る。
両足が固定され、明らかに不利な状況であるのにも関わらずである。
「それとも、誰かにワタシを討つように頼まれたのか?」
- 99 :
- 一仕事を終えて疲労回復&血液補充の為に肉を頬張ろうとするパピスヘテプ。
一口目を齧りついた途端に突き飛ばされた。
突き飛ばしたのはリリィ。
一瞬幻覚の為か?と考えが過ったが、すぐ後ろに迫っていたオークの姿にその考えが吹き飛んでしまった。
オークに腕を掴まれ悲鳴を上げたリリィは続いて
>「ブレ先生、離して!」
と声を上げた。
どうやらリリィにはブレに見えているようだが、状況は切迫している。
急いで口の中の肉を飲み込み術をかけようとした時に後ろからテオボルトの声が響く!
>「洞窟で落雷を食らうんだな、『サンダー・ボルト』!!」
「いやいや、出し惜しみしてよ!てーかテオ君、後ろー!」
それなりに開けた場所ではあっても洞窟内である。
強大な魔法を撃たれては余波でどうなるか分かった物ではない。
それどころか呪文を唱えるテオボルトの後ろには無数の矢が迫っているのだから。
結論としてはオークは雷に打たれて黒こげに。
無数の矢はジャイムズが一身に受けて事なきを得た。
のだが、雷の余波でリリィは感電して白目をむいている。
パピスヘテプは突き飛ばされたおかげで感電こそしなかったものの衝撃でさらに飛ばされテオボルト付近まで転がる事になったのだった。
「テオ君助けてくれてありがと。でもちょっとやりすぎよ。
それで、あれはなんなの?
リリィは幻覚症状の上に感電で白目向いちゃっているし。
エンカ君も気になるから不要な戦いならさっさと切り上げていきたいんだけど」
ジェイムズとフリードと戦う異形のアンチラストを見ながら尋ねる。
フリード、テオボルト、そしてジェイムズが戦闘において引けを取るとは思っていない。
だが先ほどの矢を見る限り相手は遠距離かつ広範囲への攻撃手段を持っているのだ。
気絶者と行方不明者がいる状況である。
避けられる闘いならば避けたいというのがパピスヘテプの本音であった。
もちろん始まってしまった戦いを収めるのは容易ではないので逃走という手段しかないのであるが。
>「それとも、誰かにワタシを討つように頼まれたのか?」
「え?それって……」
リリィの介抱に向かおうとした時に聞こえてきたアンチラストの言葉に振り返った瞬間。
当たりは何処からか湧いた煙に覆われた。
藁人形に身代わりの呪いをかけているおかげで咳き込むことはなかったが、視界はほぼゼロ。
目の前にいるはずのテオボルトすらうっすらとしか見えないほどに。
「まずいわ、気配も魔力感知も使えない。
止まっていたらまずいわ、テオ君!」
いきなり立ち込めた煙は魔法の煙幕である事は明白。
パピスヘテプはこれをアンチラストの攻撃だと思い、あわてて回避行動を取る。
この煙幕の中、先ほどの矢の攻撃をされては防ぎようがない。
だがパピスヘテプにとって煙幕はそれ以上に危険な意味を持つ。
パピスヘテプの死霊術も影術も冥炎の光が起点になっている。
即ち、光が遮られる煙の中ではほとんどの術が使えないし、射程を失うのだ。
影を滑らせてリリィの下へと急ぐが煙幕の中では方向も定まらず、立ったまま黒焦げていたオークにぶつかってしまった。
「う、ぐぇ〜、お、おもい〜」
煙の中にパピスヘテプの苦しげな声が漏れ聞こえるかもしれない。
ぶつかった拍子に倒れてきた黒焦げオークの下敷きになったようだった。
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