1read 100read
2013年06月なりきりネタ309: 【TRPG】ミノタウロス【ロボット物】 (126)
TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼 ▼
【TRP】フィジル魔法学園にようこそ!11thシーズン (113)
とある科学のTRPG (116)
俺がイクシオンサーガのコンだ (176)
黒子のバスケなりきり総合スレッド 第4Q (292)
リトルバスターズ! ミッションスタートだ! (103)
ギャグマンガ日和 (118)
【TRPG】ミノタウロス【ロボット物】
- 1 :2012/12/27 〜 最終レス :2013/05/28
- 22世紀━━━━それは、ありとあらゆる格闘技が狂ったように暴力を始めた求めた時代
ありとらゆるルールが過激になり、輝かしい舞台に立っていた有名ファイター達は血で血を洗う残虐ファイトに明け暮れ
そして、人は貪欲にさらなる刺激を求めた。
求めに求めた末に…求められた刺激は人間の限界を超えてしまった。
その時である。何者かが言った
「アンドロイド達にやらせよう」
人工物である彼らならば、客の求めた刺激以上の暴力に耐えられる。
これが、今日世界中を熱狂させるスポーツ「ミノタウロス」の始まりでだった。
ダンジョンアンドロイドデスゲームTRPG ミノタウロス
ジャンル:近未来ロボットファイトTRPG
コンセプト:参加者はアンドロイド(AIつき)となり、残虐ロボットファイト「ミノタウロス」に参加し戦う
期間:GMしだい
最低参加人数:二人
GM:立候補
決定リール:GMしだい
○日ルール:GMしだい
版権・越境:なし
敵役参加:GMしだい
避難所の有無:GMしだい
- 2 :
- ミノタウロスとは…ギリシャ神話に出てくる迷宮に住む化物になぞらえたRF(ロボットファイト)
参加機体はダンジョンの中にあるモニュメントを持ち帰るか
最後の一体になるまで生き残る、ダンジョンボスである「ミノタウロス」を倒すことが勝利条件
ミノタウロスは試合ごとに形態が違い、パワー重視、スピード重視と様々
武装は一体につき二つまで、ダンジョン内には協力なボーナス武器(使い捨て)がある
- 3 :
- ミノタウロス基本ルール
1、以下の条件のどれかを満たせば勝利とする。(括弧内は賞金の配分)
Aダンジョン内のモニュメントを取得し脱出する(勝利者のみ)
B最後の一人になるまで生き残る(勝利者のみ)
Cダンジョンボス「ミノタウロス」を撃破する(その時に生き残った物全員)
尚、賞金はどの勝利条件でも同額である。
2、ダンジョンは試合ごとにフィールドが変更される。
この情報は事前に掲示される。
3、参加機体は以下の規格を満たさなければならない
a全高1〜2m以内であること
b全長1〜2m以内であること
c思考性AIを搭載していること
d人型をベースにした機体であること
e飛行能力を有していないこと
4、試合中に破壊されたとしても開催者は責任を持たない
名前:
所属:
参加理由:
性別型:
容姿:
性格:
武装:(最大2つまで)
概要:(キャラクターの簡単な解説。1行からOK)
基本戦術:(どんな戦い方をするか簡単に。例:近接格闘に持ち込む、距離を保ちつつ後ろをとる等)
ここまでやっとけよwww
- 4 :
- 名前:ラクシャーサ
所属:ハールート・マールート
イスラム系の過激派宗教団体。ラクシャーサは活動費用を稼ぐための道具扱い。アンドロイドの人格を認めていない。
参加理由:「俺より強い奴に会いに行く」
性別型:男性系
容姿:
鳥型の頭部を持った亞人系のロボ。カラーリングは赤を基調とし、ところどころに黒いラインが入る。
長髪を模した放熱ケーブルが頭から腰まで伸びている。太い尾がついている。全長約1.6メートル。
性格:バトルマニア
武装:
・黙熾 火炎放射器及び排熱再利用機関。口から炎を吐きだすというシンプルな攻撃。生じた熱をエネルギーに転化するシステムがついており、使い続けることで火力・本体性能が上がる。
起動から発射までのラグがほとんど無い分、初期火力はあまり高くは無く、並の装甲を溶かすにもしばらく炎を当て続ける必要がある。名前のわりに貧乏くさい武装。
・葬聖 尻尾。自由自在に動く強靭な尾。先端は刃になっている。全長が低めなのは、直立した際に尻尾の長さが考慮されていないため。
自分の意思で取り外すことができ、ある程度の距離なら遠隔操作可能。小型のカメラを内蔵しており、偵察に使える。名前のわりに姑息な武装。
概要:戦えれば何でもいいタイプ。製作元が当時資金難だったこともあり、その知識・思考能力は戦闘に偏っている。ミノタウロスへは初参加だが、ロボットファイト自体は経験済み。
基本戦術:近接では格闘戦・中距離では火炎放射、距離を取られれば手を地面につけての高速走行で追う。黙熾のブーストが威力を発揮してからが本番。
参加してみたいです
- 5 :
- 名前:娯楽用機械人形96号(愛称:クロ)
所属:財団法人アリアドネ
法人とあるが、実態は嗜虐趣味の金持ち達が運営するアングラ企業
参加理由:「観戦者を満足させる為」
性別型:男性系
容姿: 12才前後の人間の男性を模して製作されており、その為体格は華奢
人口皮膚のカラーは白。毛髪は黒で、髪型は人形の様な「おかっぱ」
背中に短い羽根を模した装置が付いているが、機能していない
人間でないという事を証明する為に、関節部の人口皮膚が薄く、薄らと機械部分が見えている
性格:小心者
武装:
・自己修復用ナノマシン 機能停止しなければ徐々に自己修復していく。修復速度はエネルギー残量次第
・単分子ナイフ 並みの金属であれば容易く切り裂くナイフ
概要:元々、航空産業のマスコットとして製作されていたが、製作途中で会社が倒産
現企業に引き取られ、壊され傷つけられるのを前提とした戦闘用の調整を受け今に至る
ミノタウロスに参加するのは、96号が苦しむ様子を観戦したがるアングラの金持ちが多い為
基本戦術:近距離はナイフでの攻撃が可能だが、中、遠距離での攻撃手段は持ち合わせていない
参加希望です
- 6 :
- 武装ではないですが、オプションパーツとして
・疑似痛覚 熱さ、寒さ、痛み、それらの感覚を疑似的に得ることが出来る装置
これにより、アンドロイドであるにも関わらず破損に対して相応の苦痛がAIに与えられる。娯楽用
も搭載したいです
- 7 :
- ○参加人数は4〜6人(不足分はGMまたはNPCを投下)。
○“非”小説形式推奨。
○進行は主に質雑及び類型化されたアクションよって構成させること。
○PC&NPCの武装及び機体性能の限界はGMによって規定される。
○展開によってPCが無慈悲に破壊されてしまっても泣かない。
○GMに対する質問は避難所で。
STAGE1:Sacrifice of under ground
制限時間 60分【30ターン】
エリア数 100【A〜J×1〜10】※1エリアの広さは約25m四方
ミノタウロス 1体【タイプα】
優勝賞金 500万円
勝利条件
@【モニュメント】を取得後【ゲート】から脱出
A他の参加者全てが脱落
Bミノタウロスの撃破
- 8 :
- 『ターンの進行について』
GM →【Script】→ PC → ミノタウロス → GM → ……以下繰り返し
『PC/NPCのアクション』
【移動】【攻撃】【探索】【会話】の全てを好きな順番で行うことが出来る。
・【移動】
縦横に5マスまでエリアを移動できる。
表記の例……例えば初期位置がA1でB5に行きたいときは A2→A3→A4→A5→B5 と書き込む。
壁(太線)は通過できない。
・【攻撃】
武装レンジ内にいるPC及びNPCに対して攻撃することができる。お互いに回避不可。
PC同士の場合、判定は【同時に行われる】ので相討ちの危険性もある。
・【探索】
止まったエリアで探索をすることでアイテムやモニュメントを拾得することができる。
この表記が無かった場合、その参加者は【素通りした】とみなされるので注意。
・【会話】
ダンジョン内にいる参加者は自身が内蔵している通信機でお互いに通話やメール送信が出来る。
『ミノタウロス』
起動後、ダンジョン内を徘徊して参加者を追跡する。毎ターン4マス移動する。
【その所在はGMにしかわからない】が【3マス以内に近づくと物音が聞こえてくる】ようだ。
今回のSTAGEは1体だけだが【イベントによって追加される】場合もある。
- 9 :
- 今回参加する機体のデータ(暫定)
名前:ミノタウロス Type-α
HP:??
武装:
・ヒートアックス レンジ0 4点
・休眠 レンジ0 10点回復(3ターン行動不可)
名前:ラクシャーサ
HP:10
武装:
・黙熾 レンジ1 1点(使用する事に1点追加。最大5点まで)
・葬聖 レンジ0 1点
名前:娯楽用機械人形96号(愛称:クロ)
HP:8
武装:
・自己修復用ナノマシン レンジ0 毎ターン1点回復
・単分子ナイフ レンジ0 2点
- 10 :
- スレ立人乙
楽でも黒でも両方でもいいから酉出してやってくれ
避難所はどこ?
それからマップでも用意しているのか?
点数は勝手に決められるものでいいのか?
考えて練り込んでいるようだけど先走り感がある
- 11 :
- http://www43.atwiki.jp/narikiriitatrpg/pages/800.html
>>10
スレ立て人ではないんだがな
避難所は作ってない
点数に関してはバランスが難しい
ミノタウロスのイメージは某テレビ番組のハンター的なものを考えていたのでPCより圧倒的な数値にした
面白そうではあるけどリアル事情的に自分がGMを務めるのは現実的ではない
確かに先走り過ぎたようだ。取り合えずこの程度のお膳立てはしといたから後はよろしくたのむwwwww
- 12 :
- あ?設定だけ書いて放置だ?
温い事言ってねぇで参加しろやヴォケ
- 13 :
- お、GMさんきたー!? っと思ったら設定だけか 乙
自分としては小説形式でやりたい >>7でGMやる人がいないなら、GM引き受けてもいい
GMっていっても導入だけで、あとはボスキャラ動かす程度だけど
- 14 :
- 私はどんな形式でもいいですよ!
ただ、技能の問題でGMとしてやるのは難しいかもしれないです……
- 15 :
- 流石に二人でTRPGは難しい 人呼びたいしageた方がいいかな?
あともう二人くらいきて、他にGMやってくれる人がいなかったらやってみよう
- 16 :
- >>12
そういう事言うから人が寄り付かなくなるんだ
みんなで投げっぱなしで設定書いて、主要メンバーが取捨選択するという雰囲気があってもいいじゃないか
ただ点数はやりすぎだと思うけどな
- 17 :
- またシェアワールドの>>1か
- 18 :
- あけましておめでとうございます 参加者もGMも募集中です
- 19 :
- 21世紀の繁栄と裏腹に、退廃を極めた22世紀。
三途の川を往復するがごとく乱闘と治療が繰り返され、闘争心と医療技術だけが歪に発達した時代。
そして22世紀の良い側面であったはずの医療技術すらも、人体メカニズムの解体を経てアンドロイドの改良に繋がり、そしてついには闘争心と結びついた。
ミノタウロス。それは22世紀の象徴といってもいいかもしれない。それは原始的な戦乱と、文明的な技量とを混ぜ合わせた地獄。
島一つを丸ごと使って作られた超大なドームは、表向きはアンドロイドの研究施設となっている。
娯楽用の剣闘アンドロイドと実用向きの兵士アンドロイドとが、もっとも需要の高いアンドロイドである今、ミノタウロスは確かに研究に役だっているのかもしれない。
勝者予想によるギャンブルは一回ごとに盛り上がりを増し、それに伴って戦闘シミュレーションが発達していく。
後ろ暗い共犯関係は、時として友情や愛情よりも強く。格界の大物の間に出来たコネクションが、意外なところで経済発展に寄与したりもした。
――戦いほど科学の進歩に貢献するものはない。もっともそれが人類の進歩とイコールになるとは限らないのだが。
見物客を乗せた飛行艇が島の上空に至る。
高級客船は海の開拓で珍しさを失っていき、二番煎じ的に生まれた高級飛行艇は不思議と富豪層の間に広まった。
艇内での秘密保持性の高さが買われたのか、あるいは単に物珍しさに惹かれただけか。ともかくこの飛行艇もまた、贅の限りを尽くしたものだ。
光学迷彩装備の内側にはプールさえある。力場の操作によって波紋一つさえ立たない静かな水面に眼をくれる者は、今は一人もいない。
迷宮内の全域をカバーするカメラと同期した無数のディスプレイにスイッチが入った。客たちの視線はディスプレイに集中していた。
アンドロイドの流す黒いオイルの代わりだとでも言うのか、血のように赤い赤いワインが賓客に配られる。
乾杯はもうすぐだ。ミノタウロスは、今にも始まろうとしている。
ここは22世紀をもっとも如実に表す場所であり、言い換えれば地獄である。
文明の袋小路、機械迷宮にようこそ。
- 20 :
- 飛行艇の中、スーツ姿の紳士たちとは一風変わった姿の一行がいた。長い袖の民族風の衣装に、白いターバン。
ただ見て楽しむだけに参加したのとは違う、機体を送り出した参戦チーム。過激派の宗教団体、ハールート・マールート。
彼らの主張からすれば、この飛行艇そのものが破壊すべきものであるにも関わらず、彼らはここにいた。
金が無ければ何もできない。単純明快で背徳的な真理に行きついた彼らを見る周りの客達は、どこか満足げで。
そんな視線が気に入らず、ターバンの男達は周りにくってかかる。
曰く、戒律でアルコールが禁じられているが、この飛行艇にアルコールを用いたバイオ燃料は使われていないだろうか、と。
曰く、戒律で豚の脂は禁じられているため、私達の料理を作る際は万が一にも豚に触れたものを使わないように、と。
それらを初めから予想していたように唯々諾々と受け入れる主催側に、彼らは段々を機嫌を悪くしていった。
酒を断り、ドレス姿の女との相席を拒否し、個室の中にディスプレイを用意させ、彼らは聖戦の開幕を待つ。
わざわざ少しでも聖地に近い個室を用意させておきながら、聖地を拝するのは一人だけ。
残りは落ち着かなげに聖典をめくるもの者と、料理に舌鼓を打つ者を除き、皆迷宮内を映したディスプレイに集中していた。
ラクシャーサ。鳥型の頭部から排熱ケーブルの髪を伸ばす異形。
長い黒髪と細身の身体だけを見れば女性型に見えるかもしれないが、部分部分に逞しい人工筋肉を隠し持つ身体を近くで見ればはっきりと男性型なのが分かるだろう。
小柄に作ったのは財政面だけの都合ではない。短距離走者が走りに不要な筋肉を削ぎ落すのと同じ。瞬発力のための構造。
教団内で集めた金属類を溶かして作った外装は意外にも高い耐衝撃性を有し、表層の赤いコーティングが熱を反射する。
低予算で組まれた機体ながら、その性能は十分。少なくとも送り出した側は十分だと考えている。
初期位置は鉄骨で組まれた、施工直後の仮組みのビルのような場所。
今はまだゲームは始まっておらず、したがってその機体に電源も入っていない。
眠る鳥は、籠の中。
- 21 :
- 迷宮の中は、道の幅は勿論のこと、そのフィールドさえも場所ごとに大きく異なる。
ある場所ではツルツルの氷面が広がり、ある場所では鬱蒼と茂った木々が道を遮る。
水場に浮く浮き木の道、アンドロイドの稼働限界ギリギリまでの高温に保たれた灼熱地帯、不規則に突風の吹く場所。
開催の度に特殊地形の種類は増えていき、今では20種類以上。どの場所で対峙するかもまた、重要なファクター。
一方で、どの場所でも共通しているのは特殊合金の壁だ。ドームの天井まで伸びた光沢の少ない壁は、少なく見積もっても200m以上の高さがある。
脱走などという選択肢を許さないためにひたすら強靭に作られた壁。
銃器の類を考えなしにつかえば、壁で跳ね返って思わぬ方向に跳ぶことになるかもしれない。
初期位置は、ある程度ランダムながら、観戦者を退屈させないために何組かが意図的に近い位置に配置されるのが常。
参加機体は、起動時にすぐ横に敵がいる可能性も考慮しなければならない。
またモニュメントやボーナス武装を探す際にも、地形に仕掛けられた罠や敵機の奇襲を警戒する必要がある。
この迷宮の中、心の休まる場所など無く、ましては動力炉を見てくれる整備屋など一人もいない。
常にそばに聳え立つ巨大な壁と、生気の無い色の天井。いくら広くとも、ここは密室であり牢獄であり、何より戦場だ。
入った以上は、神経回路を焼き切る勢いで集中し、ただ戦う他ない。
- 22 :
- ラクシャーサの起動場所は、鉄骨で足場の組まれた高低差のあるフィールド。コンクリで固めたらしき地面の上に、鉄骨で組まれた迷路がそびえ立つ。
視界の果てには曲がり角があり、その角の部分に木の枝葉が覗いている。もう片方の側は鉄骨に遮られて見通すことができない。
左右の幅は10メートル弱。その両側を高い高い壁が塞いでいる。
「メンドーだなぁ。俺としチャ、すぐ横に相手がいて悩むことナシに戦闘開始、ッテーのが理想だったんダガ」
首を回し、尻尾を振り回して愚痴ると、その尾の先が鉄骨を切り落とした。
狙ってやったわけではない。その証拠にラクシャーサは崩れ始めた足場からあわてて飛び退き、鉄骨の一つに掴まって別の足場によじ登った。
「アア、あの物騒な壁以外は別に壊しちまっテモ構わないってわけか。そりゃソウだよなー。
俺が迷路の中のみみっちい迷路進んデモ見る側はつまんねえだろうシ? いいぜ、豪快にぶっ壊して進んデやるよ」
鳥型の頭部は発声面での調整などされてはおらず、その声は聞き取りづらい。
人の耳に優しい擬似声帯などよりも優先して、クチバシを持って相手を穿つことを考えた造形。
戦うために造られた、ミノタウロスの場に相応しい一機。
傍らの鉄骨を捩じり切り、足元に叩き付けて棒高跳びの要領で跳ぶ。障害物は尻尾で切り落とし、間に合わなければ体当たりで壊す。
手の凝った立体迷路を破壊しながら、ラクシャーサが進んでいく。
人間規格に作られた迷路は、アンドロイドの身では不足もいいところ。道から道へ飛び移るのも、迷路自体を壊すのも、簡単なこと。
もしかすると、初めから壊されることを前提に作られていたのかもしれない。
切り崩し、捩じり、凹ませ、ふっ飛ばして。鉄骨の舞台を壊して一直線に、緑の見える方向へと進んでいく。
- 23 :
- ジャンル:近未来ロボットファイトTRPG
コンセプト:参加者はアンドロイド(AIつき)となり、残虐ロボットファイト「ミノタウロス」に参加し戦う
期間:1、2ヶ月程度で勝者が決まるといいなー
最低参加人数:ミノタウロス含めて三機以上
GM:ラクの人
決定リール:可。ただし問題がある場合はGMから注意。R頭に瞬殺とかやらなければ基本自由。
○日ルール:一週間。
版権・越境:なし
敵役参加:そもそも全員敵。希望するのであればボスキャラのミノタウロスをロールするのも可。
基本の流れは
(送り出した側の反応) → 機体の起動 → 勝手に誰かに絡むなり、その場で探索するなり
参加者が全員レスを書き終えた後でGMがまとめて返して、状況の説明・まとめやら何やらやる感じでいく予定
人が少ないので、一人で二機以上送り出すのも推奨。GMもGM自身としての役目に加え、ラクシャーサ及びミノタウロスを動かす予定。
- 24 :
- 最初の起動場所は参加者側で決めてもらいます
探索する場合は何か後付けでこっちが仕掛けを決めて対応 ボーナス武装の隠し場所のヒントが見つかったりとか、仕込みマシンガン飛んできたりとか
世界観や迷宮内の構造なんかについては、既存設定と矛盾で出ない範囲で自由に設定していっておk
あとは避難所ですが、人がいないのに建ててレス総数1のまま残る、みたいなことになると申し訳ないので人が来てから建てた方がいいかな?
GMどころかTRPG自体初心者 物語を始めるために何か足りないところがあったら言ってください
- 25 :
- >ラクの人
地図を書いた名無しだ。参加はできんがROMらせてもらうぜ。
とりあえず、導入乙!
避難所は取り合えず建てといたら?
例えレス1で残っても千夜万夜の管理人さんはそーゆーの気にしない人みたいだし。
今のとこ反応ないけど、みんなあんた(暫定スレ主)がどの程度本気なのかを試してるのさ。
>足りないところがあったら言ってください
シナリオを落としてくれた時点でもう俺がとやかく言える資格も決定権も無くなったわけだが、
結局>>1-11まで出たアイデアと世界観の何を採用して何を使わないことにしたのか……スレ主権限でラクの人が一度まとめておいたほうがいい
特に【劇中の制限時間(過ぎちゃったら全員自爆とか)】や【ダンジョンの地形】、【戦おうとしない者への処置】【モニュメント取得のみによる脱出の可否】【ミノタウロスの性能】
これらはPCの思考にとってゲーム進行の重要なファクターだから
- 26 :
- >>25
アドバイスありがとう。できれば参加してほしいけど、まあそこはリアルの事情とかもあるよね。
とりあえず設定まとめてみる。
っと、制限時間なんて設定あったっけ、と思ったら>>7に制限時間だけ書いてあるのかー。
これまでの設定と混ざって混乱するのが怖いので、設定についてはこれから書く分を公式とし、これ以前に書かれたものは無効ということを明記しておきます。
- 27 :
- ジャンル:近未来ロボットファイトTRPG
コンセプト:参加者はアンドロイド(AIつき)となり、残虐ロボットファイト「ミノタウロス」に参加し戦う
期間:1、2ヶ月程度で勝者が決まるといいなー
最低参加人数:ミノタウロス含めて三機以上
GM:ラクの人
決定リール:可。ただし問題がある場合はGMから注意。R頭に瞬殺とかやらなければ基本自由。
○日ルール:一週間。
版権・越境:なし
敵役参加:そもそも全員敵。希望するのであればボスキャラのミノタウロスをロールするのも可。
ただし初回はGMがミノタウロスを動かす予定です。
- 28 :
- ・開始までの流れ
(送り出した側の反応。別に書かなくてもおk)
↓
機体の起動(機体の起動場所に関しては自由に設定しておk)
↓
勝手に誰かに絡むなり、その場で探索するなり
参加者が全員レスを書き終えた後でGMがまとめて返して、状況の説明・まとめやら何やらやる感じでいく予定
人が少ないので、一人で二機以上送り出すのも推奨。GMもGM自身としての役目に加え、ラクシャーサ及びミノタウロスを動かす。
・ミノタウロス基本ルール
1、以下の条件のどれかを満たせば勝利とする。BかCの条件が満たされた時、ゲームが終了となる。
Aダンジョン内のモニュメントを取得し脱出する(そのままゲームは続行される)
B最後の一人になるまで生き残る(ミノタウロスが生き残っていても、参加者が一人となった瞬間にゲームは終了し、勝利となる)
Cダンジョンボス「ミノタウロス」を撃破する(その時に生き残っていた機体全員が勝者)
尚、賞金は一定の額を勝者数で割ったものとする。
2、ダンジョンはゲーム開催毎にフィールドが変更される。この地理情報は基本的には機体には公示されない。
3、参加機体は以下の規格を満たさなければならない
a全高1〜2m以内であること
b全長1〜2m以内であること
c思考性AIを搭載していること
d人型をベースにした機体であること
e特別武装が二種類以下であること
4、試合中に破壊されたとしても開催者は責任を持たない
・ダンジョン情報
地形に関しては勝手に決めていっておk。参加者もGMに自由に設定を決めていきます。
詳しい地図は作らず、感覚で。その方が都合よく他の参加者と遭遇できそうですし。
ただしモニュメントの取得・ボーナス武器の発見は探索行動によってGMが示さない限り行えません。
例
【参加者:周囲は木々に囲まれたフィールド。まずは周囲を調べてみる】
→【GM:木々の中に、五芒星が彫りこまれたものが一本見つかった。より詳しく探せば、同じものがあと4本ほど見つかるだろう】
→【参加者:探索の結果、何か意味深な木が見つかった。五芒星が五本というあたりに何かありそうだ。位置関係を確認してみる】
→【GM:五本の樹は、それぞれが等間隔に並び、五芒星の頂点に当たる位置にあることが分かる。】
→【参加者:五本の木の中心地点を調べてみる】
→【GM:五本の樹の中心にある太い木を切り倒すと、中から黒い箱が見つかった。中にはボーナスアイテムの〜〜があり性能は〜〜】
ただ正直言って謎解き要素考えるのは難しいし、難易度調整にも自信が無いので参加者同士で殴り合ってくれた方がラク。
・モニュメント
いわゆる鍵。ただし鍵の形をしているとは限らない。対となる鍵穴にあたる場所にもっていくことで脱出ルートが開ける。
入手した時点でダンジョン内の地形情報が公示され、脱出のための鍵穴にあたる場所が分かる。
なおモニュメントはゲーム毎に個数・形状などが異なる。
・主な変更事項
飛行機体の容認。ただし飛行するための機構をアンドロイドの武装の一つに数え、これが飛行以外の能力を持つことを禁ずる。
ダンジョン情報。アンドロイドは参加時に地形情報を持つことはできない。ただし地形情報を得る武装(レーダーとか)を使うことは可能。
勝利条件の変更。脱出者が出ても、迷宮内に二人以上の参加者とミノタウロスがいる限りゲームは終わらない。
制限時間の廃止。勝利条件BC以外での終了は無い。
- 29 :
- ・武装の剥ぎ取り
敵アンドロイドの武装の奪取が認められています。
ただし特別な知識・技能が無い限り、機体と独立して存在する武装しか奪えません。
たとえば96号の単分子ナイフは問題無く奪って使用できますが、自己修復用ナノマシンは機体そのものの機能なので基本的には奪えません。
ラクシャーサの葬聖を奪い取って刃付きの鞭のような武器として使うことは可能ですが、カメラ機能や遠隔操作などは基本的にできません。
黙熾は体内のエネルギー機関に繋がっているため取り外し不能で、これまた奪い取ることは基本的にできません。
なおハッキング能力をもった武装を持ちこむことや、機械の解体・改造に長けたアンドロイドを参戦させることは可能です。
この場合、上記の一体化型武装などの奪取が行えるかもしれません。
Q&A
Q:戦おうとしない奴はどうするんの?
A:ルール上、特にペナルティはありません。ただし賞金の配分上、一人勝ちを狙った方がリターンは大きくなります。
また平和主義なキャラを扱う場合は送り出した団体側が何故そんなアンドロイドを容認しているのかの設定が必要になります。
参戦機体のオーナーは高い金をつぎ込んで機体を組み上げているのです。普通は勝ちを望みます。
勝利を望む団体側がアンドロイドの平和思想に気付けば、思考AIの書き換えなどを行うことでしょう。
ミノタウロス自体に嫌悪感を抱いている団体が意図的に全員脱出を狙って送る、なんかも面白いですが、
そもモニュメント一つで複数人脱出できるのか、モニュメントがいくつあるのか、一つの鍵穴が複数回使えるか、さえも毎回変わります。
また延々と探索にはしられるとGMが疲れそう&他キャラとの絡みが薄くなるため、ミノタウロスの攻撃対象になりやすいかも。
Q:ミノタウロスの性能ってどんなもん?
A:基本的にタイマンで通常機体に負けることはありません。
地形を良く利用し、ボーナス武器を用い、罠を事前発見してミノタウロスをはめる、などしてもなお一対一では厳しいレベル。
三対一でようやく勝機が見える、ってな具合を想定しています。作戦も連携も無しに突っ込めばまず負けます。
またミノタウロスには通常機体と違って制限が一切ありません。武装が7つくらいあるかもしれませんし、全長5mくらいあるかもしれません。
Q:モニュメントだけで勝ちでいいの?
A:モニュメントを取得して脱出ルートを見つけて脱出できれば勝利扱い。ただしゲームは終わらない。
難易度は機体によって左右されるが、ミノタウロス撃破と同じかそれ以上に困難であることが多い。
また一つのモニュメントで複数人が脱出できるとは限らず、モニュメント取得について協力を求めるのは難しい。
できるだけ探索より戦闘をメインにしたいので、その方向で整備。
バランスとしてはミノタウロスを倒すよりモニュメントを見つけるより、参加者同士で潰しあうのが得にしたつもりです。
あ、でも協力してミノタウロスと戦うのは全然問題ないですよ。パーティで大ボスに挑むのはロール的に盛り上がりますし。
テンプレ
名前:
所属:
参加理由:
性別型:
容姿:
性格:
武装:(最大2つまで)
概要:(キャラクターの簡単な解説。1行からOK)
基本戦術:(どんな戦い方をするか簡単に。例:近接格闘に持ち込む、距離を保ちつつ後ろをとる等)
- 30 :
- つかぬ事をお聞きするが、あなたはかつてパー速でロボットなりきりをやっていたかい?
- 31 :
- 千夜万夜にスレ建てようとしてみたんだけどなんか上手くいかない。誰か代わりに建ててもらえますかー?
>>30
やってました。
- 32 :
- >>31
そうですか、いや、だから何という訳ではございませんが
唯なる叡智を仰ぐ月、あなたの活躍に期待していますよ。
- 33 :
- 誰かが勝利条件Aを満たして脱出したあと
勝利条件Bは自動的に潰れるの?
それとも、未脱出組で最後の一人になればおk?
- 34 :
- >>33
未脱出組の中で最後の一人になれば勝利です。
- 35 :
- 名前:白銀(しろがね)
所属:鞄決沂@甲科学
変態企業で有名なアンドロイド会社
開発、製造のみだったが最近修理、改造のほうにも手を広げ始めたのでその宣伝の為参加
参加理由:自社技術の宣伝
性別型:女性(設定年齢24歳)
容姿:胴体部分はほぼ人間と同じではあるが
四肢は重機のように無骨に仕上がっている。(例えるなら『まどかタイタス』)
戦闘時は銀色のアーマーを纏っている。
頭はショートの赤毛にタレ目と泣きボクロが特徴的
足の裏に自走ホイールがついているので、見かけによらず高速移動ができる
性格:外見とは裏腹に男らしい
武装:斬機刀「大刮裁(だいかっさい)」
日本刀型の大型チェーンソー
刃の部分が超高速で回転しているので一見ただの刀に見えたりする
強奪腕「羅生門」
普段は背中の部分に隠してある腕、主に倒した敵の武器を奪ったり
奪った武器を使うときに用いる。パワー重視の両腕とは違い
細かな作業が可能で、改造することで少しだけではあるが特殊装備に融通が利く
遠距離武器が無い白銀にとって意外と生命線だったりする。
基本戦術:基本的に近接装備による接近戦、勝利よりも生存を優先するのでたまに撤退することがある
概要:
「リユース」をテーマに修繕、改造された機体
AIに使われているのは、往年の兵士アンドロイド
素体に使われているのは大ヒットセクサロイドシリーズの初期型と異色の組み合わせがされている。
名前の由来はAIの元々の名前の「黒金(くろがね)」と素体のシリーズ名「プラチナ(白金)」から
歓迎しよう…盛大にな(他板からの参加だけではなくGMなんて素敵すぎるから参加するお)
テンプレに問題があるなら導入入れる前に修正しますのでチェックお願いします。
- 36 :
- >>35
ありゃ?ハンドルがついてなかった。
あと誰かが千夜に避難所を立ててたみたいなのでどうぞ
つhttp://yy44.60.kg/test/read.cgi/figtree/1357553479/
- 37 :
- >>35
やった! 人がきたよ! ありがとうございます! なな板TRPGのGMは初めてだけど頑張るよ!
設定大丈夫です。導入部分どうぞー。
避難所建ててくれた誰か様もありがとう。これからは避難所の方で話しましょう。
- 38 :
- 白銀という奇妙な機体について語る際、その元になった二機について語る必要があるだろう
まずは往年の名機「黒金」についてだ。
今から三年ほど前、持ち前の機動力で持って接近し一太刀で撃破する独特のスタイルで
黒金は華々しいデビューを飾った。
その後、破竹の快進撃を見せ、タイトルマッチにも顔を見せるほど頭角を現してきたのだが、
異常な速度で技術が発達するこの時代の前には無力だった。
鮮麗された戦略の前には、持ち前の機動力など役に立たず
接近戦に持ち込めども、歯が立たず
もがけどもがけど、圧倒的な性能差で押しつぶされてしまう。
それでも尚、戦いつづけた結果、黒金の最後は凄惨なものになった。
動力を破壊され、敗北が確定したあと、ファンサービスと言わんばかりに相手が黒金を解体を始めたのだ。
もちろんメカニックが行う丁寧なものではない、引き剥がし、握りつぶし、焼き切り
試合後、黒鉄は、いの一番に引きちぎられ投げ飛ばされた頭部とそれに内蔵していたAIを残し
スクラップとして処分された。
頭部パーツだけとなった黒金も、すぐに後を追う形で廃棄されるのかと思いきや
彼の向かった先は、独自の技術で有名な東亜機甲科学だった。
そして、彼はそこで数奇的なRを果たすことになる。
ここで話はもう1つの機体へ変わる。
プラチナシリーズと言われるセクサロイドシリーズをご存知だろうか?
老舗セクサロイドメーカー、イーストコーポレーションが開発したセクサロイドシリーズなのだが
このプラチナは性能も従来のものよりも優れていたが、他のセクサロイドには無い異質な特徴がある。
それは、互換性の異常な高さだ。
AIを始め、各種パーツを他のアンドロイドのものを扱うことが出来、本来の目的以外での活動を可能にするという
セクサロイドの枠をぶち壊すほどの性能に世間からの注目を集めることになった。
こうしてプラチナシリーズは超一流セクサロイドブランドとして確立することになったのだが
いくら飛びぬけた性能があったとしても、型落ちの宿命からは逃れることは出来ない。
古いバージョンのプラチナは、AIだけが新しい素体へ移り、不要となった素体は中古ショップへ払い下げられる。
そして、そこからまた転々と流れ、最後に破棄されるのだが…その中の一体が向かった先は
黒金のいる東亜機甲科学だった。
こうして二体はRを果たし、変態的技術でもって白銀として生まれ変わることになった。
数多の持ち主に奉仕してきた両腕両足は、岩をも砕くほどの豪腕に、華奢な足は、猛スピードで地を駆けることのできる豪脚へ改造され
内部も、戦闘に不要な機能は全てオミットされ、戦う為のものに強化され、兵士アンドロイドと遜色なく戦える仕上がりになってる。
今回がデビュー戦でありカムバック戦の白銀、実力派未知数ではあるが、今回のダークホースになり得る存在かもしれない
(筆、週刊ミノタウロスファン記者)
「まぁまぁの評価か」
飛行艇の片隅にて、絵にかいたようなビジネスマンがタブレット端末で白銀についての記事に目を通していた。
彼は東亜機甲科学の営業担当の人間だ。
白銀の目的は勝利ではなく、新たに設けた修理、改造部門の宣伝の為だ。
中古の機体でも、ウチに任せればここまで性能を上げることが出来るとアピールすることで
大口の契約を取るというのが東亜機甲科学の考えである。
その為に、より現場に近いこの場に営業マンをスタンバイさせいる。
営業マンは次に今回のオッズに目を通す。
「…まぁこっちも順当か」
どうやら、あまり高くなかったようだ。
だが、営業マンは不敵な笑みを浮かべて、ディスプレイに視線を移して試合開始を待つ
- 39 :
- 白銀の機動場所は鬱蒼とした森の中だった。
「久々だな、このヒリついた空気」
起動後、白銀は辺りを見回した後、思わず言葉を漏らした。
ロボットファイトの性質上、カムバックは難しい。それを熟知しているせいか、そんな言葉が出たのかもしれない。
「しっかし、奇襲にはうってつけの環境だな、となると罠もそれだけあるかもな」
周囲を警戒しつつ、白銀はゆっくりと森の中を突き進んでいく
暫く進んだ後、遠くの方で何かが崩れる音を感じ取り、思わず動きを止めた。
「この音だと、恐らく壁の向こう側からか?」
ミノタウロスの起動には時間がある、となると、この音は同じ参加者によるものだと判断できる。
恐らく、もう戦い始めているか…もしくは、誘い出す為に派手に音を出しているのか
「どっちにしろ、突っ込んでいくのは得策じゃねぇな、やるならこっちに逃げ込んできた奴を奇襲するほうがいい」
そう考えをまとめ、再び探索を続ける。
【森エリアで起動、奇襲、罠に警戒しつつ探索 迷路破壊音に警戒、エリア移動してきた奴を奇襲する方針に決めて探索続行】
- 40 :
- >>38
ミノタウロスがビジネスの場としてつかわれることは少なくない。
そこはアンドロイド関連の企業にとって他者の技術を見る絶好の機会であり、自社の技術を見せる最高の舞台だ。
自ら宣伝に力を入れずとも重鎮がこぞって見に来てくれる。一発逆転を狙う企業はいつの時代も一定数存在した。
特に第三回目、無名の小企業が社の命運を賭して送り込んだ機体が単騎でミノタウロスと相打った話は有名だ。
勝利者はその時別の場所で戦っていた他の二機になったのだが、社の技術アピールは十二分に成った。
場のトラップとボーナス武器をフルに使ったテクニカルな戦術が非常に高く評価され、AI方面での名声は他の追随を許さないほどだった。
技術を認められたその企業は多額の融資を受けて再スタートを切り、わずか一年で大企業の仲間入り。
その後はミノタウロスの運営を支援し、後続の夢追い人たちを鼓舞している。
もっとも、そのミノタウロスと相打ったAIは、どこのものとも知れぬジャンク品の再利用であり
あの活躍はほとんどバグに近いものだったのだ、という噂もまた大変有名なものなのだが。
「しかしまあ、東亜機甲科学は考えてきたねえ。修理・改造を特色としてくるとは。面白いよ。ふふ、面白いね」
直接機体を送り出すもの。それらとライバル関係にあり、結果をうかがいに来た者。大御所とのコネを狙いにきたもの。
そして、そういった者を含めて酒の肴にする、もっとも純粋な観劇者。その一人が今ここで愉快気に笑う老人だ。
個室の中、傍らに何人もの側近をはべらせて。その場にあるディスプレイには、迷宮の中だけではなく、飛行艇の中さえも映し出されている。
「元手のコストが安い分、負けても損失分が少ない。機体の組み合わせも話題性十分。したたかな企業戦略だ。
が、このゲームはそんな理屈や理論だけで勝てるほど甘くは無いがね。はっはっはっ」
純粋に楽しみのためだけに来た客は気楽なものだ。笑い声を上げる余裕は彼らだけのもの。
白髪とは裏腹に、皺の無いつるんとした顔面が本当に楽しそうに笑う。
「一応、名前は覚えておいてやろうかの。とりあえずこれくらい賭けておけ」
老人が手の指を一つ立てると、側近の一人が賭けの手続きを始める。
驚くばかりの桁数をもった数字が、打算も何も無くただの遊びで賭けられる。
「さて、次は……」
老人は電子端末を操作し、次の参加機体の情報を見始めた。
- 41 :
- >>39
針葉樹も広葉樹も、高木も低木も、節操なしにさまざまな木が林立する。
木々の種類に明るいのであれば、その違和感に気付けるだろう。
綺麗な緑だが、その美しさこそが異常。葉の一枚も落とさずにいる木など現実の森にはそうありはしない。
計算して作られた緑のグラデーションは確かに見事。しかしその計算性ゆえに完璧ではありえない。
人工樹だ。21世紀に大きく発展した技術をもって作られた人工の木は、触ってみてもなお判別の付かないレベル。
切り倒すことなしに判別しようとすれば、職人芸をもって木の呼吸を確かめるか、あるいは長期間の観察で変化が無いことを確認するか。
森の中には、人工樹が大量に混じっている。
だがその存在に気付くのは難しくない。なにしろ木の方から教えてきてくれる。
木の根の一つに足をかけた瞬間、木の一つが内側から開き、出来た小窓から筒をのぞかせる。無骨な円筒は砲身。
中から飛び出すのは当然弾丸だ。正面に向かって弾丸が飛ぶ。弾速は遅く、視認してからでも回避は可能。
そも大抵の弾丸は白銀とはまったく違う方法に向かって飛んでいくので、回避の必要がいるかは疑問だが。
かわせなければ機体に食い込み、かわせればどこかの木に食い込む。どちらにしても木や金属装甲を貫通するほどの威力は無い。
その本質は、電磁波による妨害。着弾地点から半径5mほどを対象に、アンドロイドの神経信号に似た電波を乱発信する。
範囲内に入れば動きが鈍る。またAIや運動系のセキュリティが甘ければ、意図していない動作を勝手に始めて止められなくなる可能性もある。
同様のトラップは森のいたるところに設置してあり、いずれも人工樹の根に触れるとその木から弾丸が一発放たれる仕組みになっている。
一発撃ったあとはまた窓を閉じ、普通の木に擬態する。以降はもう根を踏んでも反応しなくなる仕組み。
普通に森を突きぬけて進む分には大した問題は無いが、森全体を探索したり、この場を戦場とするのであれば、妨害電波は厄介なものになるだろう。
- 42 :
- >>39 >>41
鉄骨の迷路の破壊速度は、加速的に増していく。
綺麗な断面を残して断ち切られた鉄骨たちが傾き、あるいは落ちて、バランスの崩れた迷宮はやがて自壊を始めたのだ。
一部分の瓦解が他の部分に影響を及ぼし、迷路は瞬く間に崩れ去った。
片手に曲がった鉄骨を一本持って、倒壊する迷路からラクシャーサが飛び出す。
後ろから追いかけるように倒れてきた先の尖った鉄骨を跳ね除けるため、尻尾を大きく振り回す。
長い尻尾は、中枢回路――いわゆる背骨から続くラインの延長上に刃を持つ。尾の上下から飛び出した刃が照明光を照り返して煌めく。
豪快な倒壊音に遅れて、真っ二つに切断された鉄骨が残骸の上に落ち、高温を響かせて迷路の破壊作業が終了した。
迷路を抜けていくルートを絵に書くと、高さごとに文字が現れる、などという凝った仕掛けは完全に無視され、このステージのボーナス武器の所在はもはや分からない。
迷路から空中へ飛び出したラクシャーサは、側面の大壁に手に持っていた方の鉄骨を突き立ててブレーキ代わりにしようと試みる。
壁自体にダメージは無し。鉄骨の方がガリガリと削れていく。釘でガラスをひっかく音の不快度を数レベル上げたような狂音が鳴り響く。
戦闘用に調整された機械の身体が怯むことは無いが、観客の側はたまったものではない。
数秒の狂音を観客の耳に残して。壁に向かって突き立て続けた鉄骨の先は粉となり、ラクシャーサの着地でふわりと広がった。
「じゃ、体も温まってきタところデ、次にいきますカネェ」
わざわざ次のエリアに入る前に声をかけて、ラクシャーサは立体迷路を後にする。
立体迷路区の奥をコの字に曲がり、折り返した先には森林。計算して作られた緑の色彩を楽しむことも無く、進んでいく。
歩く姿は傍から見れば無警戒。罠を探す様子も無く、ただ壁にそって直進するだけ。
だが尾に仕込まれた小型カメラによって背後が見えている彼に、360度どこをとっても死角は無い。
相手が奇襲のつもりで来てくれるなら、その瞬間はラクシャーサにとってもチャンス。
カウンターを決めて戦闘に入ることができれば、心理的にも物理的にも大きなアドバンテージが手に入る。
「あー、つまんネ。罠の一つくらいそろそろ来てモいいんじゃネエノー?」
壁際は木の密集度が低く、したがって人工樹もまた少ないようで。
いまのところラクシャーサは一度も罠を踏まずにいる。
【探索せずに壁際に直進中。敵機には気づいていない。とりあえず戦う相手を探すことを優先する方針】
- 43 :
- 「しっかし、まぁ無節操に作ったというか、なんというか」
探索を続ける白銀は思わず愚痴をこぼした。
「ジャングルとか北欧の森とかもっとこうテーマ性を設けて作りゃいいのに
なんでこうやたらめったらに作ってんだ?」
視界に入る木々の種類の無節操さに嫌気が指しているようだ。
「ただ…まぁ、多分意味があってこう作ってんだろうな…こういう時に飛行ユニットがあればな」
白銀はなんとなくではあるが、このエリアのヒントに気がついたのかも知れない。
愚痴を零しながらも、マッピングと並行して、視界に入った木々の種類別に分け
その位置を記していく、果たしてこの読みは当たっているのだろうか
意気揚々に探索を続けている最中、白銀はなんの気なしに木の根を踏んだ瞬間だった。
「やっべ、罠か!」
すぐさま身を強ばらせ、発動された罠、人工樹の内側から出ていた銃身を睨む
高性能のカメラアイで銃弾の動きを追いながら、白銀は回避行動に移ろうとしたが
「?」
白銀は回避運動を止め、そして、弾丸は白銀とは全く別の方向へ飛び、木にめり込んだ。
「なんだ?当てる気あんのか」
不思議そうな顔をしながら、そう一人ごちる。
「運営は何考えてるか俺にはさっぱりだ」
と一息ついて、また探索を続けようとした瞬間、白銀の動きが止まった。
「なんだこりゃ」
急に何かに引っ張られたように左足の動きが重い、視線をそこへ向けたが、そこには何も無い
「おいおい、まだ何もやってないんだぜ?マシントラブルでリタイアなんか勘弁だっつの」
すぐさま、起動診断プログラムを走らせる。結果はすぐに出た。
「このエラー…電波障害かよ」
白銀は思わず、先ほど発射された銃弾を睨んだ。
「なるほどな、初めから狙いはそっちってことかよ。クッソ早く離れねぇとな」
動きの重い左脚を引きずるように白銀は銃弾がめり込んだ木から離れた。
間もなく、左脚の異常は無くなり、満足に動けるようになる。
「しっかし、あの罠は以外とやべぇな、あえて狙わないことで銃弾に施した仕掛けを破壊させないようにして
んで、近くの木か、間の悪い奴に当てて電磁波を出して、暴走もしくはさっきの俺みたいにすると
中々悪趣味なトラップだな」
白銀は木の根に気をつけながら、次の行動を考える。
「あんなとんでもねぇ罠があるってことは、これから暴走してやべぇ状態になった奴と鉢合う可能性もあるんだよな
ミノタウロスとやり合うならこういう罠があるとこで戦うのもありだが…色々怖いな
とりあえず、トラップに気をつけつつ、他のエリアに逃げ…」
何かが近づくのを察知し白銀は急に声を潜め、姿勢を低くした。
暫くして、能天気に歩いてくる赤い機体、ラクシャーサの姿を捉える。
パッと見、隙だらけではあるが、距離があり、尚且つ、壁際に近い木々密集度も高さも低く、隠れつつ距離を詰めるのは難しい
「…やるか」
ならば、一気に距離をつめてしまえばいい。
覚悟を決め、白銀は武器を抜き、脚部にある高機動用のホイールを出して強襲の用意を済ませる。
次の瞬間、白銀は爆音と共にラクシャーサに急接近する。
「喰らえぇぇぇぇぇ」
間合いに入った瞬間、得物である刀を振るう。
だが、この刀、ただの刀ではない。
これは刃の部分が極小のチェーンソーになっている。下手に受け止めてしまえば
超速回転する刃で削りきられてしまうだろう。
- 44 :
- >>43
白銀が範囲外に出た後も妨害電波の発生が続いている。発生源から円形に、目には見えない電磁波の罠。
木に食い込んだ弾は方向によっては見えず、見つけたとしてもそこから発せられる電波までは見えない。
場所を覚えておいて上手く利用すれば後の戦闘で役立つかもしれない。
森の地形を一度歩いただけで覚えるなど、人の頭では難しいだろう。
だがアンドロイドなら話は別。未だに創造性や対応力の面では人に遅れを取っているが、記憶力においては人を大きく凌駕する。
雑多な木は人が見れば混乱の元になるかもしれないが、機械の脳にとってはむしろ特徴が多く判別しやすい。
さて、おおまかに木に区別をつけてみても、特に規則性は見られない。あえて言えば、風景が美しくまとまるように森を作ってある。
そもそもが木の種類が散らばりすぎている。硬木、軟木。互生葉序に対生、輪生。
熱帯雨林に見られるような飛びぬけて高い木の下で、寒帯にある小径木が密集していたりする。
群生することなく数本だけが聳え立つ竹。その竹に絡みついて天を仰ぐツル植物。どこまでが天然でどこからが人工なのか。
生物学上の違和感に目を瞑ってみることができれば、多様な緑色の織り成す世界はとても幻想的で、見るものを飽きさせない。
自然ではありえない共生状態。意図的に作られた森は放っておけばバランスを崩し、この地に適した木だけが生き残るはずだ。
その異常な森をどうやって作り、保っているのか。それを考えるだけでもミノタウロス運営側の財力の高さが想像できる。
だが木の特徴に着目すること自体は意味がある。
罠の仕掛けられた人工樹に、ある程度の規則性があるのだ。
樹高が高く、幹が太く、大きな根が露出している木。こちらは罠を仕掛けるスペースの面で人工樹に要求される特性。
条件に適合する大きめの木は、ほとんどが常緑の広葉樹。したがってその葉は大きく厚く硬いものが多い。
そして周囲に長い枝を垂らす木が存在しないこと。こちらは弾丸の軌道が乱れないため。
ある程度歩いてみれば分かるが、発射された弾丸は始めから決まった方向へ飛ぶようになっている。いずれも機体に当たることが無ければ、木に食い込んで止まる。
ほど近い場所から、視認できないほど遠くまで。電波が万遍なくフィールドをカバーするように飛んでいく。
反面、人工樹自体は周囲の木々との色合いの調和を守っており、そのために位置に偏りが見られる。
こういった人工樹の特徴を把握していけば、木の外見だけで罠が仕掛けられているかどうか予想がつけられる。
- 45 :
- ええい!組ロボでも能力者でもいいから帰ってきてくれよ!
- 46 :
- >>43
無造作な歩みを続けていたラクシャーサだが、白銀の接近は素早く察知した。
尻尾のレンズが襲い掛かる凶刃を捉える。気付いたことを相手に悟らせないために、意識してそれまでと同じような一歩を踏み出す。
鳥の頭に表情を作る機能などついてはいないが、その興奮を表すように回路が熱を増した。
(どうする。反転して迎え撃つか。いや、相手とて完全に油断しているわけじゃないだろう。
聴覚や振動感知に優れた機体なら、同じフィールドを相手が歩いてるだけでも察知可能。他にもレーダーや熱感知。奇襲に気付く手段はいくらでもある。
この状況を活かすなら、ぎりぎりまで引きつけての反撃しかねえ。)
ラクシャーサの思考AIは戦闘と、そして宗教とに傾倒している。
一般常識の枠を削ることで型の古いAIも十二分な演算領域を確保し、これまでの戦いの経験が取るべき手段を導き出す。
(幸い、後ろを向いたまま迎撃する手段として俺の尻尾はうってつけだ。なるべくこれまで通りに歩きつづけ、そして迎え撃つ。)
私たちの前に置かれている競走を忍耐をもって走り続けようではありませんか。――へブル人への手紙
などという文言が浮かび上がってくる思考をそのまま働かせ続け、一方でそれをおくびにも出さずにもう一歩。
日本刀はすぐ後ろに迫っている。隠密よりも速攻を志した奇襲。猛々しい音が森の四方へと伝わり、わずかな風が葉を揺らしてざわめく。
もはや気付かない方が不自然。その中で自然体を装い続ける。
(尻尾で受け止めて、そのまま尾を支点にバク転、相手の背後でも取るか?
だが射程の長い射撃武器を捨てて近接武器を使ってきてるんだ。何か射程に勝る利点がある。一番簡単な答えは、その威力だ。
あとは接触をトリガーにする敵武装のハックだとか、変形機構による射程のごまかし。こういった類なら素直に受けるのは危険。
逆に俺の尻尾みたいな仕込みカメラなら警戒は不要。遠隔操作の類なら、そもそも本体の姿は隠しとくだろうから無いな。)
思考回路がフルに稼働する。体感時間の圧縮。闘いの空気が心地よい。
(ま、一撃で終わるのはつまらねえ。とりあえず避けて、でもって俺の芸を見せておくか。)
斬機刀「大刮裁」が振るわれる直前、唐突に尻尾が跳ね上がる。
刃が奔る。刃に移り込む周囲の緑が美しい。だがその刃がラクシャーサを切り裂くことは無かった。
尻尾を地面に叩き付けてのジャンプ。踏み込んできた白銀の真上に逃げる形。
「よオ! 結構良い斬り込みだったゼェー? 袈裟切りって言うノ?
斜めにクルと、しゃがんデモ振り返っテモ受け辛い。横は壁だし。でもってスピードも乗ってたシネ。ちょっと困っタぜー?」
話しかける間にラクシャーサの身体はさらに上空へと浮かび、最高点に到達して落下を始めた頃に、一度口を閉じる。
次の瞬間、その口から炎が噴き出す。葬聖。火炎放射器だ。
タイムラグの殆ど無い突然の発射。
聞き取りづらいラクシャーサの言葉を理解するために相手が口元の動きに注目でもしていたのなら、ちょうどその視界が炎で埋まることになる。
だがわざわざ無駄口を叩いて発射を遅らせたため、すぐに反応すれば回避できるだろう。また初動の時点では火力も弱く、かすった程度ではダメージも無い。
(あわてて避けてくれりゃあ、その隙に追撃にいける。火力の弱さに気付いたとしても、このフィールドは森。燃えるって現象自体が無視できないはず。
どちらにしろ十二分に利用できる状況に繋がる。結構なスタートじゃねーの?)
口からは火炎が噴き出し火の粉が飛び散る。煮えたぎる鍋の勢いで鼻からは煙が吹き出る。喉は燃える炭火。口からは炎が吹き出る。――リヴァイアサン。
いちいち不要な知識を零れ落とすAIをさらに加速させて次の手を考える。
- 47 :
- 「(素人にしちゃあ、やけに反応がおせぇな)」
刀を構えながら、白銀はラクシャーサの反応の悪さに疑問を感じた。
今までの戦闘データを振り返ってもラクシャーサの反応の悪さは異常なものだ。
そこから考えられることは…
「(引きつけてからのカウンター…もしくは、ハックか…それとも、罠のせいでイカれたか)」
しかし、白銀は刀を振るう。
「(イカれてただけなら運がいいだけよ、ハックならこの一太刀で仕留める
カウンターなら…望むところだ、背中見せて勝てるほど甘くねぇことを教えてやる)」
その次の瞬間、ラクシャーサは跳ね上がり白銀の剣?を交わす。
「(マズい!見失った)」
次の瞬間、頭上からの声に反応し、視線を向ける。
そこには跳ね上がっているラクシャーサの姿が見える。
「褒めても何もでねぇぞ鳥頭(すぐに攻撃を仕掛けなかったってことは遠距離系の武装は無いってことか)」
相手の様子を伺いつつ、思考を次へ巡らせる。
「(このまま重力に身を任せて突っ込むつもりか、リーチはこっちのほうがあるが…)」
その瞬間だった。ラクシャーサの吐き出した炎が、白銀の視界を覆い尽くす。
「(火炎放射だと!…そこまで熱くないようだが、目くらましのつもりか、なら)」
白銀は即座に愛刀の大刮裁の刃の回転速度を上げる。
「たたっ斬るだけよ!」
炎めがけその刃を振るう。
高速回転する刃は気流を作り、そして、豪腕で振るわれた瞬間、気流は風の刃となり覆い尽くす炎を断ち
切れ目からラクシャーサの姿を覗かせるが、すぐさま、断ち切った炎の切れ目から炎が入りこんでくる
「チッ」
効果が無いと分かった時点で白銀は炎を浴びながらも後方へ飛び退いた。
「(意外と厄介な武器だな、だが、打つ手が無いわけじゃねぇ)」
火炎放射器はその特性上、直線の動きは早いが上下左右の動きが他の遠距離武器よりも遅い。
すぐさま、白銀は疾走した。今度は直線ではなく、曲線の動きで迫る。
- 48 :
- >>47
上空からの火炎放射。赤のグラデーションが視界を埋める。
音波共鳴なんて便利なものは搭載されておらず、熱探知などあったとしても役に立たず。
伝統と信頼のカメラアイ、歩行に必要不可欠の振動感知システム、音波解析及び音声認識機能の三つを主とするのが彼の外界認識。
空中では触覚は意味をなさず、己の吐き出した火炎が視界を遮る。
ゆえに、火炎の波を切り裂いた気流の刃をはっきりと知覚することはできず。
(なんだ、今の相手の反応。足音の位置・時間からして、明らかに一度不自然に足を止めている)
その分を、これまで培った経験と思考とで埋め合わせる。火炎放射を続けたまま、回路をフルに稼働させて考える。
(火力を確かめるために立ち止まったって感じじゃねえな。初撃の時点で俺の炎はクリーンヒットだ。
即座に退避しても外装に残った熱だけでこっちの火吹き芸の威力は分かるはず。外装で熱を測りに来たにしては相手の退避が遅い。
そしてもし外殻が熱量を認識できないなら、こっち火力を知る手段はもう一つ。あえて内部機関まで熱を通すこと。
意図的に熱で処理落ちを起こさせてその度合いで火力を図るって手だが……それにしては相手の退避が早すぎる)
直線の移動速度でも、細かい機動力においても、今のラクシャーサは白銀に後れを取っている。
足りない分を補うのは、戦闘に特化された思考。ほとんど戦闘だけで埋め尽くされた記録が生み出す高速思考が、二機の動きの差を埋める。
情報入力を必要最小限に抑えて作られた機体。代わりに得たのがこの演算速度。
(純粋にあの反応速度が限界、ってのはねェな。戦闘開始直後の俺は正真正銘の最弱仕様だ。
戦闘開始直後の俺より弱いってのはありえない。そんな奴がいるとしたら、初めから負けるために来たに等しい。
そして今の相手は勝ちにきている。俺だけを見て、俺をぶっこわすために全思考を裂いてくれてるんだ。嬉しいねェ)
炎の中から飛び退いた白銀の脚部が床を踏みしめ、そして走り出す。
後を追って炎を吐きだし続ける頭を相手に向ければ、その動きが終わるより早く相手が方向転換を終えている。
結果、炎は相手を掠るだけ。
(相手の言葉からいっても、あの剣が何かしら俺の火吹き芸に対抗しうる機能をもってるってのがシンプルで合理的か。
炎を切るってえとカグツチ切った天羽々斬、プロメテウスを啄んだ禿鷹……って関係ねえあ、ああくそっ。
フツーに考えりゃあ、火の源の空気をかき乱すか、水を使う武器かってとこだな。
見た目的にウォーターカッターってことは無いだろうし、風圧が付随する刃か。チェーンソーよろしく回転式、またはガンソードとか)
後を追う炎を軽やかにかわして距離を詰めてきた白銀に対し、バックステップで距離を取る。
その程度、白銀の速度ならすぐに詰められる。ただ方向転換の回数が一回増えるだけ。
次の瞬間こそ白銀は確実にラクシャーサに肉薄し、相手をその刃の射程内に捉える――はずだった。
着地せずに尻尾で地面を叩いての方向転換。背後に飛び去ったと見せかけて、直後に再接近。
相手の懐に飛び込み、そして火炎放射の勢いを上げる。温度に関しては先ほどとほとんど同じ。
けれど炎の量が段違い。勢いはそのまま反作用となってラクシャーサの首にかかる。
その力に逆らわず、上体を後ろに反らし、そのまま綺麗にバク転を決める。
「ザンネン。俺を過大強化しすぎたな。テメェの速さがあれば、むしろ直線デ速攻決められタ方がきつかっタんダガ」
いくら火の量を増やそうがそもそも温度が不足している。至近距離で当てたところで相手にダメージは無い。
ラクシャーサがやっていることは、ようするに逃げ回って相手の手の内を探るだけのことにすぎないのだ。
尻尾と火炎放射の性質を最大限に利用して、ようやく白銀の攻撃をかわすだけのラクシャーサ。まだ武器の特性を見せず、マシンスペックだけでラクシャーサと対等以上に戦う白銀。
不利なのはラクシャーサの方である。
「あ、モウ一つ、剣圧で炎を吹き飛ばすっテ択もあるナ。俺としテハこれが一番うれしいネェ。
武装の性能じゃなク、使い手の技量で炎を切る。俺達が駆り出されル前、ニンゲンさまが殴り合ってタ頃はそういう達人もいたソウじゃないカ」
それでも、ただ逃げ回るだけの戦術を取るラクシャーサの鳥型の顔は、その無機質な作りに反して不敵に笑っているようで。
(ちったぁ……温まってきたぜ)
バク転の連続で白銀から逃げる先は、森の中。火炎放射がより活きる場所。
- 49 :
- 「ふむぅ……」
観客の中に、妙齢の美女がいた。
「ここのレギュで戦うのに“わたし”ではいささかオーバースペックだが……」
「ならば、“鋼の二挺拳銃”を用意しますか?
まさか“呪象機”を投入するわけにもいきますまい」
「客に受けるという意味では“接続された悪夢”の方が向いていそうだが……」
【参加希望ですが、ちょっと迷っています】
- 50 :
- >>49
わーい新規さんだー。参加してくださるなら避難所の方でテンプレ記入をお願いします。>>4>>5みたいの。
避難所の方で待ってますねー。
http://yy44.kakiko.com/test/read.cgi/figtree/1357553479/
- 51 :
- ぽえぽえ〜
- 52 :
- 【出撃前】
「エギーユ、気分はどう?」
「ミノタウロスに押し込まれる前にしては悪くないな」
ソンブレロを被った無骨な機械仕掛けのガンスリンガーと、黒ゴスに身を固めたイメージCV.坂本真綾な少女。
「あなたはこれより」
「ストライク・バック。分かってるさ、エギーユ・ボナパルトは死んだ方が都合が良い」
「しかも、ここに来るには“呪象機”や“接続された悪夢”は不適格。“わたし”は言うまでもない」
「あんたをわざわざ送り込めるほどうちは暇じゃねェよ」
「……そろそろね……Good Luck!」
斯くして、“鋼の二挺拳銃”ストライク・バック、出撃。
- 53 :
- 飛行船の一室。
どうにも周りの金持ち連中とはそりが合わず、自室に篭っている二つの影。
ヒーローズの社長と、社長秘書のコンビがモニターの前に座っていた。
長身の影はといえば、試合開始前に、既に6杯目の珈琲を飲み干した所で、ぱたぱたと落ち着きなく室内を歩き回っている。
若々しい――事実、若いその男は、ヒーローズの社長、小田典正。
鮮やかなオレンジ色の髪に、ストライプのスーツは洒落者といった言葉が良く似合う。
しかしながら、実用性を重視したメタルフレームの眼鏡がその服装には似合わず、どこと無く技術者然とした印象を与える男だ。
「うっわー、どーすっかな?
やっぱり連れてこないほうが良かったんじゃないか、説得すれば辞めてくれたかもしれないし……。
壊れても、僕達で直すことが出来ればそれに越したことはないんだけど……、どうしようも無くなったらどうしようもないし――。
ヒーローは、お話の中だけって事は、僕は十分知ってたはずなのに、あの子にそんなことは言えなかったし……。
うあー……っ! どーしよどーしよ!? メモリ全破損とかしたら、怒ってフルアーマー僕が参戦しちゃうというか、もう今突撃してきていいか――げはっ」
口から垂れ流されるのは、今回の対戦に出したロボットを心配する言葉。
このミノタウロスという競技に参加する企業の社長としては、まず珍しい言葉だろう。
普通は、壊れようがどうしようがどうでもいいし、破損など気にせず勝てというのが当然というもの。
ヒーローズは、ミノタウロスに参加する他の団体とは、少々カラーを異ならせる団体である事が、そこから分かる。
頭を抱えて、地面に膝をついてのたうち始めていた社長のみぞおちに、パンプスのつま先が突き刺さり、床をごろごろと転がって社長は結局のたうっている。
「全く。負けるはずがない、と信じておきましょうよ。
私達の全力注いであの子が勝てるように準備は整えてきた。
CEOは鎧を作って、私は駆動系を作って、専務は武道を教えて、貴方は夢を与えた。
あの子が此処でヒーローになりたいなら、私達はそれを精々支えましょう。それ以外に出来ることなんて、無いんですから――ね?」
そんな社長を足で踏みながら、嘆息するのは一人の女。
小田と大学の同期であった、現ヒーローズ社長秘書、小田美智。小田の妻だ。
さて、そろそろ出撃が始まる。そのようなアナウンスが、場に流れて。
「――僕らの子供だ。
あの子がヒーローになりたいなら、僕達サポートは全力でバックアップをするのみ、か。 子供の夢を助けるのは、親の仕事だしね。
――――精々気張れ、牛若丸。今回の鎧は、どっちかというと弁慶だけど…………って、あ……、武器忘れた。
どーしよ!? どーしよみっちゃん!?」
「知りませんよ社長! ってみっちゃんいわない!
私はてっきり仕様かとばかり――……、ちょっと待って下さい試算してみます」
余りにもなミス。そう――武器を忘れていたことに出撃直前で気がつく典正。
それに対して、美智は蹴りを入れつつ、PDAを用いて何やら計算をし始めて。
数秒後には顔を上げて、静かにうなずき。
- 54 :
- 「大丈夫です。
装甲の強度は、恐らく現レギュレーション上では間違いなく最高――最硬クラス。
機動力は低いですが、腕部の運動性能は悪くありませんし、社長の盾を全力でぶちかませば十分武器には成るでしょう。
後は――、あの子が他の応用を見つけられれば。十二分に戦える、筈です。
……信じましょう、私達の子供なんだから。心配でも、目は逸らさずに――ね?」
攻撃専用の武装はない。
実質上、単体で使用出来る武装は一種類しかないウシワカ。
だが、その単体の性能が極めて高いため、大抵の状況はなんとかなる――かもしれないと思う。
試算上では、戦闘は問題ないし、勝率も十二分に存在する。だから、数値上の不安はない。
もう戦場に出てしまう息子を思い、ヒーローズの父代表と母代表は両手を組んで何の神かは分からないが、神に祈った。
「……行け、ウシワカ。
勝てる、勝てるよお前なら。
僕らの自慢の子だ――、この胸糞悪いゲーム、お前の手で感動のストーリーに変えてやれ……!」
ウシワカは、出撃する。
この先の戦いに、救いはあるのか、仲間はいるのか、勝利はあるのか、ミノタウロスを倒す℃魔ェできるのか。
それは、誰にもわからない。きっと、ミノタウロスの主催者にすら――。
参加機体名はウシワカ。
フラットな機体にオプションを追加する事で、あらゆる状況に順応する万能特化=B
介護から戦場まで、オプション如何によってはあらゆる事態に順応することが出来る、柔軟性を最大の武器とする機体。
今回のオプションは、特注の防御特化外装――楯無。
アンドロイドにパワードスーツを着せる、という一種変態的な発想で作られた外装は、アンドロイドを人間の様に扱う甘い企業だから出来たのだろう。
なにせ、この異様なまでに職人的技術をつぎ込んだワンオフ武装の作成理由は、愛する息子をあらゆる外敵から守るため、だったのだから。
愛を注がれ、愛で出来た武装を身につけ戦場に出向く、レギュレーションギリギリサイズ、2mの機体は――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――――暗い場所から、引き上げられる感覚が有った。
目覚めだ、メインメモリに起動されたOSが格納され、各種センサー類のドライバを確認。
ウイルスの感染の有無のスキャンを済ませた後に、センサーの起動確認を開始、終了。
拡張武装、楯無は問題なく駆動している事を確認した上で――視覚センサーのカバーを排出、目を開く。
風だ。風を感じた。そして、木々の匂いが鼻孔を擽る。沢山居る母の一人が連れて行ってくれた植物園を思い出した。
熱気がすごい。ここは――密林地帯だろうか、そこかしこに小川が有り、イミテーションの虫が空を飛ぶ。
不気味だった。こんなに沢山自然が有るというのに、そのどれもが生きていない、本能的な恐怖を感じた。
「――ここが、ミノタウロスの舞台。
僕も、頑張らないと。お父さんと、お母さんに恥ずかしい所見せられないし。
……勝って、ヒーローに成るんだ。だから――戦おう、ミノタウロスと」
起動直後、周囲を見回し2mの鎧武者――ただし武器はない――は、そう小さくつぶやいて。
両腕の、2mに僅かに満たない程度、二つ合わせれば前面の前面は防御できるであろう盾、を確認する。
幾度も盾の扱いは訓練していた。だから問題ない、後は覚悟を決めるだけ。
鎧に巡らせるエネルギーを、脚部に多めに裂き、他の機体とは明らかに劣った速度で、ウシワカは歩き出す。
細心の注意を周囲に払い、重心を下に集中し、あらゆる攻撃に即座に防御が出来るようにするのであった。
【ウシワカ:熱帯雨林スタート、注意を払いながら周辺の探索】
- 55 :
- 「(さぁどうする?この距離なら自慢のそれは使えねぇ、お前に出来るのは守るか避けるかの二択!)」
ラクシャーサがここでこの凶刃を受け止めようとしたなら、白銀の愛刀「大刮裁」は守りごと容易く切り裂くことだろう。
仮に躱されたとしても、再度間合いを詰めるのは白銀には容易い。
この袋小路の一歩手前の分かれ道で、ラクシャーサがとった選択は『回避』だった。
「無駄なん…だぁ!?」
白銀は己の目を疑った。確かに今ラクシャーサは回避行動をとった。
だが、ラクシャーサは今、自身の間合いの内側にまで接近している。
「(カウンターだと!)」
接近を許してしまった今、白銀はラクシャーサの攻撃を回避する間は無い。
炎が吐き出される刹那、白銀は頭部パーツを守る為、咄嗟に両腕で顔を隠した。
ラクシャーサの攻撃による被害は白銀が思っていた以上に少なかった。
両腕と鎧に少しだけの焦げ跡と温度上昇の警告だけだった。
「…」
陽気に話すラクシャーサとは対照的に、白銀の表情は怒りに満ち満ちていた。
自身の戦法が通用しないことに怒っている訳ではない。
白銀は自分が嬲られるのが大嫌いなだけなのだ。
それはファンサービスで不名誉な引退を強いられた苦い体験が異常なバグ(感情)を生み出してしまったのかもしれない。
ラクシャーサの低火力による攻撃、最高のチャンスに必死にすがりつかない姿勢
そして、今いかにも戦いを楽しんでいるような発言が、白銀の怒りに火をつけてしまった。
そんなつもりが無いラクシャーサからしてみれば迷惑な勘違いである。
「随分偉そうにリクエストすんじゃねぇか…馬鹿にしてんのか!」
怒りを堪えながら、白銀は身構えた…だが、ラクシャーサはそれさえもあざ笑うように
軽快な動きで森の中へ身を隠した。
「ッ…」
白銀はただ黙ってそれを見ていた。いや、そうではない。
ラクシャーサが逃走しようとした瞬間、白銀はブチ切れ猛然と追撃しようとしていた。
だが、それを白銀のセーフティプログラムがそれを強制的に止めた。
白銀にプログラムされた命令は「生き残り」であり「闘争」ではない。
戦闘も勝利条件を満たし、生き残るための手段なだけであって、感情に身を任せた戦闘はもってのほかだ。
それを抑える手段として、白銀が暴走しようとした瞬間、行動が制限プログラムが施されている。
例えば、今のように挑発に乗って突撃しそうになった瞬間、落ち着くまでそこへ向かわないよう足止めをし(回避行動等は可能)
勝ち目の見えない強敵と相対したなら、攻撃することが出来なくなるという具合に制限される。
- 56 :
- 「クソッ馬鹿にしやがって」
制限プログラムが解除された瞬間、白銀は吐き捨てるようにぼやく。
「(にしても、あの尻尾は厄介だな)」
冷静になった白銀は、ラクシャーサの二度の行動を思い返し考える。
「奴のあの動きの肝はあの尻尾で間違いはない…あれを切っちまえば、あんなフザけた動きは出来ないはずだ」
言うには容易いが、先ほどの戦闘で掠ることさえ出来なかった白銀には難しい話だ。
だが、方法が無いわけではない
「あいつをあの罠に掛ければワンチャンはあるはずだ」
壁際を歩き罠を回避していたラクシャーサと違い、白銀は探索し罠がどういうものか把握している。
白銀はそれを利用し、ラクシャーサを追い詰めることを決めた。
作戦が整った以上、まだ追跡が可能なうちに追うべきなのだが、白銀はまだ動かずにいた。
>「あ、モウ一つ、剣圧で炎を吹き飛ばすっテ択もあるナ。俺としテハこれが一番うれしいネェ。
武装の性能じゃなク、使い手の技量で炎を切る。俺達が駆り出されル前、ニンゲンさまが殴り合ってタ頃はそういう達人もいたソウじゃないカ」
白銀は先ほどのラクシャーサの言葉を思い返していた。 思い返し、怒り、また制限プログラムが発動した訳ではない。
「(人間の技か…)」
徐ろに視線を自身の体に向ける。
銃撃戦に備えてという名目でゴネて後付けした装甲がそこにはあった。
ゴネた理由は1つ、この体が気に入らなかっただけ、白銀いや黒金は未だにこの女の体を恥じていた。
不意に、その時にもっともぶつかり合った開発主任の言葉が過る。
『俺たちは奇をてらっただけで、お前を作り直した訳じゃねぇ。全てに意味があって作ったつもりだ』
その時は生意気に反論して見せたが…今その言葉の意味が理解できたような気がした。
「動きずれぇんだよ!!!」
その言葉と共に、白銀は大刮裁で自身の装甲を斬りつける。
切ったところに手を突っ込み、乱暴に装甲を剥がしていく、装甲の下からは、軽鎧を纏ったセクサロイドの体が顕になる。
黒金は自尊心のための鎧を捨て去り、この瞬間、初めて白銀としてこの場に立った。
「この体の意味はっきりさせてもらうぜ!」
自身の殻を破った白銀は、即座にラクシャーサを追うようにして森の中へ入っていった。
- 57 :
- 飛行艇の観客に比べ、異質な雰囲気を放つ参戦チームの中に、さらに変わった集団がいた。
揺崎機関。
天才科学者、揺崎孝深が立ち上げた組織である。
揺崎孝深は研究のために人をRことも厭わない人間だ。
そんな彼が作り上げた技術は、他の技術者が到底作れないようなものだった。
物理防御ができるエネルギーシールド。
エネルギーと展開装置さえあれば、鉄壁の防御が可能となる。
戦車の砲撃も、ミサイルさえ無傷で受けきれる脅威の技術である。
一時的な戦闘能力超化装置。
一瞬で身体能力を爆発的に飛躍させる。
それは揺崎機関の幹部でさえ、理解できない程の技術だ。
この装置は揺崎孝深にしか作れないものである。
そして今回、ミノタウロスに参加した理由はこれらの兵器の実戦テスト。
テストといってもなるべく装置を起動させずに、というコンセプトだ。
そのため、冷静かつ好戦的ではないAIが搭載された。
というのが表向きの理由である。
本当の理由を知っているのは揺崎孝深、機関の極少数の幹部だけだ。
孝深の夢。
子供の頃から憧れていた夢。
それは、人間を創ることだ。
時代が進み、アンドロイドに高性能なAIが搭載され、人間のようなものができた。
だが孝深はそれに対し、何か足りないと思っていた。
そして寄り道をしてここまで来たのだ。
ミノタウロスといえば、最先端の技術が詰まったアンドロイドが集う戦場である。
そこに自分の作ったAIを投入し、学習させるのが目的だ。
BeastのAIは学習能力が非常に高い。
勿論戦闘に利用できるが、会話や感情。
そういったものを学習するためのものである。
孝深はBeastのAIに、人間から学習させるより同じアンドロイドという存在を学習させることを優先したのだ。
さて、こう語ると勝つことを目的にしていないようである。
しかし、他のアンドロイドに接触する機会を増やすため勝ち残ることも目的にしている。
孝深の目的とは違うが、その強力かつ特殊な兵装により十分勝ちを狙える機体だ。
- 58 :
- 飛行艇の中。
揺崎孝深は、機関の幹部の一人と話していた。
「僕の『人深』もやっと実戦に出るのか…」
孝深は幹部に話しかける訳でもなく、呟いた。
「孝深(たかみ)に人深(ひとみ)…か。なんつーか、お前らしいな」
機関の幹部、辻牧葉次は言った。
「機体名はBeastだが、AIの名前は「人深」、ねぇ…」
「Beastなんてのは器にすぎないよ。重要なのは人深だ」
上司と部下の会話にしては打ち解けた様子である。
事実、孝深と葉次は機関を設立する前からの付き合いだった。
「名前ってのは大事だろう?辻牧」
「俺にはよくわかんねーな」
「…まぁいい。データ転送の準備はできているか?」
孝深と会話しつつ、葉次は色々な機材をいじっている。
その機材にはアンテナ等があり、どうやらデータを送受信するもののようだ。
「万一破壊された時、学習したデータがパーだからな」
「そんな簡単に破壊されちゃたまんねーよ」
軽口を叩く葉次だが、機材を触るその手は流れるようである。
次々とチェックを終わらせてゆく。
「…よし。いいんじゃねーか?」
「ああ。お、人深が起きたかな?」
飛行艇のカメラがBeastを捕捉すると同時に、機材が音を出した。
- 59 :
- 「…俺は」
意識がボーっとしている。
周りは暗く、起動と同時に点いた機体のライトが唯一の明かりだ。
「…」
確か、あいつによると「寝ぼける」というやつらしい。
頭の中で考えがまとまらない。
しばらく時間をかけて、やっと全てを理解した。
「ミノタウロス…だったか」
そうだ。
ここで行われる戦闘。
思い出すとともに、全身をだるさが襲う。
あいつに言わせると「面倒臭い」というものだ。
機械に妙な機能をつけるあの科学者。
ここは洞窟のようだ。
風も感じるし、少し木々の揺られる音も聞こえる。
地上はそう遠いわけでもないらしい。
孝深は成り行きにまかせろ、と言っていたが「人深」いや、Beastはとりあえず行動を開始した。
【Beast、洞窟から脱出し地上の様子を探る】
- 60 :
- ミノタウロス。
本来、その名は迷宮の虜囚の名である。
しかし、この迷宮は主の手足の一部と言っても良い。
故に、迷宮の名でありその主にして虜囚の名である。
「と言う事は、だ。俺たちは世界と戦うのかよ」
改めて考えると絶望的なルールである。
「外部とのデータリンクは出来ないし、地形効果は連中の思うがまま。
参加者同士で潰し合うのが一番確実か」
しかし、敵はいずこにいる者やら……
>57-59
何かが、落ち葉を踏んだ。
音のする方を見れば複合センサーが影を捉える。
それは自分でない、即ち敵だ。
「やれやれ、どんな奴と戦わされるのやら」
腰の銃はまだ抜かない。
遙か過去のガンマンと同様、敵と相対してからでも十分間に合うからだ。
【可能な限り隠密状態を維持しつつ、自身の戦闘距離ギリギリまで移動する】
- 61 :
- 星屑――21世紀中に打ち出され、そして寿命を迎えた人工衛星の残骸――をバックパックに詰めて。
ステーションに帰ってきた男達を出迎えたのは、いつものように申し訳なさそうに俯く施設長と、そしてもう一人。
見慣れない黒服の男だった。
黒い服を着るのは部外者と決まっている。もし万が一宇宙空間の中に放り出された時、黒い服では周りの風景に溶け込んでしまう。
アクシデントの際に少しでも生還率を上げるため、このステーションの作業員はみな白い服を着る。
「初めましてみなさん。私、ロボティクス・チャーターズのサイラス・ヘイルと申します。
今日は皆さんにちょっとしたビジネスの話をしようと思いましてお時間を頂きました。」
労働者たちは大した興味を払うことも無く、半ば聞き流すようにして話が終わるのを待っていた。
普段なら帰って来てから休む間もなく再度の出発を迫られ、定量の星屑を集めた後は機械部品の分別が始まる。
彼らにとっては座っていられる時間が嬉しかった。それ以外はどうでもよかった。
「ご静聴ありがとうございます。宇宙は荒れていると聞いていたのですが……あ、いえ、失礼。
では単刀直入に本体に入らせていただきます」
あえて失言染みたことを言ってみせたのは、興味を惹くための戦略であり、
あえて自らと企業の名前をさらっと流すのは、彼らの記憶にそれらを留める必要がないから。
反応の薄い聴衆に安心と不安と同時に覚えながら、それを顔に出さずに言葉を続ける。
「みなさんはミノタウロスをご存知ですよね? このステーションでの数少ない娯楽の一つだと聞いています。
我が社ではその公認トトカルチョを開催させていただいています。こちらの方はご存知でしょうか?
そう、連勝まで完璧に当てれば倍率は100倍までいくことも珍しくない、あのミノタウロス勝者投票権でございます」
疲れ果てた彼らの反応を引き出しうる数少ない話題の一つが、ミノタウロスだった。
アルコールに逃げることすら許されない星の檻の中、トランプでのせせこましい賭けと、あとは食堂の立体テレビ程度しか娯楽はない。
数少ない娯楽の一つなどという表現では生ぬるい。ミノタウロスは最大の娯楽といってもいい。
トトカルチョで一発当てる妄想をしたことが無いものなど、この場には一人もいなかった。
「みなさん、存在は知っていても購入の機会が無いのではありませんか?
そんなみなさんのために今日は私自らこちらに訪問させていただきました。
みなさん全員の給料の一割を集めて複勝式を当てれば、倍率の低いBeastなどでも約20人は地球に帰るに足る資金が出来ます。
二割集めて三連勝複式で高倍率の96号などを当てれば全員帰還も夢ではありませんよ!」
まして地球への帰還を持ち出されては、興味を抱かない方がおかしい。食堂の中、労働者たちは色めきだった。
黒スーツの男は薄型ディスプレイを取り出して説明を続ける。
前列の数名にしかディスプレイは見えないが、そんなことには構わず話は続く。
「中でも一押しは、このウシワカ。防御力特化は、生き残りさえすればいいミノタウロスにおいては極めて効率の良い戦略です。
一方で攻撃武装が無いためにオッズの方はこの通り。どうですか、お買い得だと思いませんか?
他にも今期のミノタウロスの情報についてはいくらでも提供します。5番作業部屋を開放させてもらいました。
みなさんの御夕食が終わる8時から一時間ほど、5番作業部屋をお借りして追加説明を行います。その後も消灯まで質問を受け付けます」
何一つ光の無い場所で、急に光を当てられれば目が眩むもの。
だから「賭け事というのは胴元が儲かるようにできている」というギャンブルの基本を思い出す者が少ないのも道理で。
「リスクヘッジ、賭け方の相談ならいくらでも無料でやりましょう。個人での購入でも、集団でも購入でも構いません。
私は三日間ここに滞在します。どうかこのチャンス、逃すことのありませんように。では、5番作業部屋!
5番作業部屋で8時から! いいですね! 5番作業部屋でお待ちしています。あ、質問がありましたら今すぐにでも構いませんよ」
労働者たちが発する叫びは、それぞれが混じりあってもはや何一つ聞き取ることができず。
それはどこか、肉食獣に追われる動物の群れを思わせた。
- 62 :
- ――
「ウシワカ……か」
ソ ラ
翌日、労働者が宇宙へ向かったあと、黒スーツの男は一人呟く。
水素電池の副産物として生まれた味気ない水は、喉を潤すには十分でも味わうには足らないようで。
コップは一度口をつけただけでテーブルに置かれてしまった。
「連中が夢を託すにはうってつけだな。愛と勇気だとか、正義だとか、ヒーローズの紹介文は笑わせてくれたよ。
そんなもの、ミノタウロスの運営が求めているわけないってのになあ」
代わりに取り出した煙草は、最近では珍しい天然たばこ葉100%。
「これまでのデータからいって、ああいうのは真っ先にミノタウロスに襲われるものなんだよ。
なにしろ、あの糞ジジイは夢半ばで倒れる若者を見るのが好きだと公言してはばからないしな。
まったく良い趣味してやがるぜ。俺もこんなこと続けてるとああなっちゃうんだろうか。あー、やだやだ」
空気清浄器にガタがきているのか、吐き出されたタバコの煙はいつまでも部屋の中を漂い続けた。
- 63 :
- >>54
ジャングル。奇妙に捻じれた木々は、照明から降り注ぐ光を競い合うようにして枝葉を広げている。
場所によって高低差も大きく、その中には滝すらもある。落ちる水の轟音は木々の中に吸い込まれて遠い。
緑の産む深い香りはまさしく自然の密林そのものでありながら、しかしそれには天然物特有の調和が無い。
確かにそこにある木々の一本一本に、より高く伸びていくイメージが見つからない。
明日には全て腐り落ちていそうな、そんな気味の悪い密林。
道幅は広く、密林自体もかなり大きい。木々に遮られて壁が見えないのもあり、方向感覚が掴みづらいフィールド。
遠距離の相手に対してなら木々が音を吸収してくれるが、中距離では足元の草や石ころを踏む音が相手に居場所に伝えてしまう。
歩き回るにはところどころに現れる小川が邪魔であり、元々スピードで劣るウシワカではなかなか探索が進まない。
特に罠に遭遇することもなく歩き続け、段々と緑に見飽きてきた頃、それは目の前に現れた。
巨大な仏像。全長15m以上。良く言えば勢いがあり、悪く言えば乱雑。
迷宮内の道を隔てる壁と同じ素材、人知の及ばない域の硬さを誇る特殊合金が材料につかわれている。
その堅強さゆえに細かい加工が難しいのか、美術的な価値は認め辛い出来だが、それは確かに仏像だった。
密林の中で急に現れる仏像というとアンコールワットあたりが連想されそうだが、そんな立派なものではまったくなく。
金属光沢を放つキラキラした仏像はただただ異様なばかりであった。
周りをぐるりと回ってみても継ぎ目一つ見つからず。その強度は完全に壁と同じレベル。
密林の中のオーパーツ。周りの景観とまったく合わず、単独でみてもいわゆる神聖さに欠ける。
欠陥品だという点においてのみ、密林と共通点をもつソレ。
- 64 :
- >>55-56
(別に期待してやってるわけじゃねえが、熱くなってくれりゃあこっちの勝率も上がる。
俺の弱さにムカついてるのか、俺の戦い方にムカついてるのかわかんねえが、どっちでもいい)
森の中に逃れてそのまま距離を取る。尻尾のカメラアイと頭部のメインカメラで並行して周囲を警戒。
そして口を開き、傍らの樹に向かって炎を吐き出す。
火力が強すぎれば、吐き出した炎に触れた部分が一瞬で炭化し、上手く炎が広がらないだろう。
逆に弱すぎれば火が燃え移るまでに時間がかかる。
今の火力は、木燃やすにはちょうどいい。一吹きで炎は木にまとまりつき、そのまま上部へと炎が這い上がっていく。
一本に火を点ければまた次の木に移って炎を吐く。ラクシャーサの移動に伴って炎が森を支配していく。
黙熾の連続使用で機体性能が上がっていく途中のラクシャーサは、一本燃やすごとにその熱量と移動速度を上げていく。
下から着いた火は、木全体が燃え尽きる前に木の根元を焼き尽くし、炎をまとったまま木が倒壊する。
倒れた木は他の木に倒れ掛かり、そこから炎が伝染していく。
ラクシャーサの性能アップと、木から木への延焼とで、森の燃焼は加速的に進んでいく。
「ン? なんか燃えねエ木があルナ。こうユーの何て言うンだっけ。俺達と同ジ、作り物」
自然の木が焼けつくされた後で、残るのは人工樹だけ。
そしてラクシャーサはまだ人工樹に触れておらず、罠の存在を知らない。
燃える木と燃えない木がわざわざ同居していることに違和感を覚えたラクシャーサは人工樹に近づくことを避けた。
いつ白銀がやってくるか分からない今、罠かもしれないものにあえて触るのは危険だと判断したのだ。
炎に包まれたフィールドは、その点では耐熱性に優れたラクシャーサに有利だが、
人工樹だけが燃えずに残っている現状は、罠の存在を知らないラクシャーサに不利だ。
だがしかし。
「アンドロイドに神はいねエらしいカラ、お前ら作られタ木にモ祈りゃしねエぜ」
その人工樹の表面すらも、炎の海の中で段々と溶解を始めていた。
ラクシャーサの黙熾の火力が上がっている証拠であり、フィールド全体の熱が高まっている証拠。
あまり温度が上がれば、罠が機能しなくなる。
- 65 :
- (しかし……来ねえな。何か仕掛けてる、って可能性もある。武装はまだ刀しか見てねえし。
だがあの性格、あの戦い方だと仕込み武器はあんま好きじゃなさそうだが。ま、何事も警戒警戒。
燃えた木の倒壊位置を予測して誘い込む作戦が読まれてるってことは無さそうなんだが……。
あらかた燃えちまってもう使えそうにねえなあ)
ラクシャーサ周辺の炎はもう燃やすものを失いつつあり、火勢は衰え始めている。
いくつかの人工樹が内側でバチバチと火花の飛ぶような音をさせているが、
人工樹というものについて知識の薄いラクシャーサは仕込まれた罠には気づいていない。
代わりに炎は森の端の方へと広がっていく。熱せられた空気が光を歪ませ、赤に赤を重ねて捻じ曲げた遠くの風景は破滅的に幻想的。
「ようやク来たか」
その歪んだ空気の向こうから、白銀がやってくる。
「なンか……なんダ?」
炎に阻まれてカメラが白銀を捉えきれず、装甲が外れていることに気付くには少しの時間がかかった。
しばらく後。セクサロイドの身体を視認しても特に反応は無い。
――闘えればどうでもいい。それがラクシャーサの考えの根底だ。
これまでに参加したロボットファイトで、外見と強さが一致しないことは良く知っている。
加えて、セクサロイドというものに関してほとんど何も知らない。
ヤ
「まアいいや。闘ろうゼ」
だから、その返答はとても単純なもので。
白銀が一番欲しかった言葉かもしれなかった。
- 66 :
- >>57-58
揺崎機関に与えられた一室の外。
ドアに背中に預けながら、煙草をふかす黒服の男がいた。
便宜上名乗る名前のうち、知名度の高いものを一つ上げるならサイラス・ヘイル。
ミノタウロスの中枢に携わる一人である。
「こっちの妨害網は、揺崎機関の電波を捉えられていない……。
わざわざ機材運び込んどいて起動すらできてないっていう間抜けな事態でなければ、データ通信に成功してるってことになるな。
流石は揺崎さまだ。噂に聞くだけのことはある」
煙草を咥えたまま、スーツのポケットから電子端末を取り出していくらか操作を続ける。
ひと段落ついたところで、右手で煙草を取り、口から煙を長々と吐き出していく。
「エネルギーシールドは別に良い。あれは今のところ効率面に問題がある。
戦力増強装置とかいうのも別に良い。結局戦場で強いのは素のスペックが高い奴だ。
ミノタウロスならまだしも、戦車並べて打ち合う戦場で出る幕は無いだろう」
21世紀中に大いに発展した環境対策技術が、廊下に立ちこめる煙をまたたくまに浄化していく。
携帯灰皿に押し付けた煙草は青く変色を始める。毒素を分解されているのだ。
「だがこの通信技術は、戦いを変え得る。一つの電子戦は百の陸上戦より重い、とは一世紀以上前の言葉だが……。
こんなもんが単一国家の手に渡れば、戦争が始まりかねん。平和主義の俺としちゃあ、看過できねえ話よ」
揺崎機関のドアの外、男は次の煙草を取り出した。
- 67 :
- >>59-60
林。それは森よりも濃度の低い緑。
人が隠れるのは木々の疎らさがいささか心もとないが、かといって周囲を見通せるわけでもない。
その絶妙さは、ゲリラ戦に適しているといえよう。相手に一撃当てて木々の間に逃げ込めば、相手の反撃を木が遮ってくれる。
疎らに配置された木々は、秋口であるかのように色づいて落葉を始めている。
足元の草は露に濡れて。半面、空気は寂しく渇いていて。
それは極東の小さな大国、揺崎孝深の故郷の秋に似ていた。
あちこちに地下へと続く穴が開いた林。それがこのステージだ。
すぐ配置されたBeastとストライクに周りを伺う暇はほとんど無いが、このフィールドには大量の罠が仕掛けられている。
木葉で隠れた落とし穴。草の間に潜むトラバサミ。触れるとカラカラを音を鳴らして敵に位置をばらすことになる鳴子。
木々の間に張られた細糸に気付かずにその足で糸を切れば、樹上から丸太が落ちてくる。
多様な罠だが、いずれもレトロなトラップ。ダメージはそう大きくは無いだろうが、数が多い。トラップの林である。
洞窟に潜れば罠の類は減るが、入口付近を離れれば光が途絶え、視覚に頼ることができなくなる。
サーモセンサーなどのカメラアイに変わる感覚器官をもっていなければ地下での戦闘は難しいだろう。
- 68 :
- 洞窟を脱出して、開けた視界に見えたのは木々だった。
周りが見えない、という程ではないが戦闘の際間違いなく邪魔になるだろう。
逆に言えば利用もできる。
だがBeastは他とは違う方法でそれを利用できる。
『Burst』によって身体能力を爆発的に上げれば、木を蹴り、また次の木に飛び移り、それを繰り返せば木々の間を跳ねまわることができる。
そんな考えがBeastの頭をよぎったが
「忍者みたいだな…」
闘う気もないためおそらく利用しないだろう、とその考えはひとまずやめた。
周囲をよく見まわすと、いくつか罠が見受けられる。
いずれも中々恐ろしいものばかり。
さらに気付けないような罠が、もっとあるのだろう。
何かの気配を感じた。
それは、音や視覚の情報を気配として受け取ったのか。
孝深がより人間を目指した結果なのか。
「クソ…」
とりあえず気配はいるものとして断定した。
しかし、最悪のスタートだ。
Beastは他機を見つけたら、闘わないために打倒ミノタウロスという協力を申し出ようと思っていた。
だが、そのためには先に相手を捕捉しなければならない。
先に攻撃されては協力も何もない。
相手が射撃兵装を装備しているなら、今すぐにでも撃たれかねないのだ。
「幸いまだ撃たれてはない…、よし」
Beastの頭には、戦闘が始まるまでは攻撃、逃走の選択もない。
しかし、勿論すでに『Field』を張る準備は出来ているのだが。
「そこにいる奴ー!戦意はない、出てきてくれー!」
気配が気のせいだったらいい、と今更思ったりもした。
【近くにいる影に向かい、呼びかけて協力を願う】
- 69 :
- 「よし…、順調かな」
カメラに映されたBeastの姿と、機材に送られてくる人深のデータを見て孝深は言った。
葉次は受信中の機材に張り付きっぱなしだ。
「…ん」
「どうした?」
「辻牧、飲み物をもらってきてくれ」
「水ならそこにあるぞ」
「いや、そうだな…、ワインだ。赤ワインをもらってきてくれ」
「はぁ?」
飛行艇の中にある、簡易的なカウンター。
そこには大抵の飲み物ならあるだろう。
しかし、機材を扱っている葉次に行かせること。
普段たいして飲みもしないのに、この状況でそれを飲もうとすることを葉次は不自然に感じたが、たいして気にもせず了解した。
「ワインでいいんだな?データのチェックは任せたぞ」
「あぁ、なるべく早くな」
葉次は小走りで部屋を出て行った。
- 70 :
- 部屋を出た葉次。
廊下には誰もいない。
しかし、壁に設置された空気清浄機が稼働しているのがわかる。
気にせず葉次はカウンターへと向かう。
部屋の中には孝深一人。
「鼠が…」
どうやら会話を聞いて、盗み聞きをしていた奴も去ったようだ。
「さて、今の鼠が他の参戦チームか運営側か…。それとも本物の侵入者か」
参戦チーム、侵入者の場合は技術を狙われるかもしれない。
しかしここは、ミノタウロスの飛行艇。
警備の強固さは最高レベル。
その手の心配はあまりしなくていいだろう。
仮に強盗まがいのことをされ、自分が殺されても
「バックアップはいくらでもある…」
脳の複製。
人間を創る研究の過程で生まれた技術。
もちろん、それを入れる器もすでに作ってある。
それにしても問題はさっきの奴が運営側だった時だ。
その場合、あちらがどう出るか予測できない。
「持ってきたぞ」
ドアを開いて葉次が入ってきた。
「あぁ、ありがとう」
そう言って受け取ったワインを置く。
「飲まねーのかよ…」
「そういや、なんでBeastに旧式の兵装を積んだんだ?」
「別に。わざわざ僕の最新技術を見せる必要もない」
つまらなげに孝深は言う。
「それに、ちょっとは苦戦させてみたいしね」
「つーか、このミノタウロス。次回も参加するのか?」
「僕が死ぬまでは」
「お前バックアップとかあるんだから事実上死なねーだろ」
「さぁね。いつのまにか僕の器に人深が入ってたりして…」
「笑えねー冗談だ」
「確かに」
そうしてまた二人はBeastへと視線を移す。
- 71 :
- >67
温暖湿潤気候の植生を模した低密度の森、いや、林。
一歩目を踏み出し、降ろすよりも早く、周囲の様々な“罠”に気が付いた。こんな“間抜け罠(ブービートラップ)”に引っかかる間抜けにはなりたくない。
ソンブレラ型複合レードームと、生身だった頃に培ったサバイバル技能を頼りに回避していく。
>68
最悪の気分だった。
まだ生身の人間だった頃に出会った老剣士の姿がフラッシュバックする。
『フム、〈もはや秘剣抜くまでもなし〉だな』
ただその一言でちょっとした紛争を鎮静化させた、戦士としての進化の極み。
「……やな事を思い出させてくれるな……だが、貴様にその台詞は百年早いわっ!!」
戦意を鎮めようとして発した言葉は、逆に敵意を煽る結果となる。
もたついて“ミノタウロス”とかち合う前に終わらせたいから、罠に掛からぬよう注意しつつ間合いを一気に割り込む。
多少ジグザグに動いて視線を揺らし、距離を半分に。その間に二挺拳銃を引き抜き、二発の拳銃用HEAT弾が発射された。
なお、加速装置はまだ使っていない。
- 72 :
- >71
× ソンブレラ
○ ソンブレロ
とにかく、撃った後はすぐに横っ跳びに移動して反撃を避けようとはする。間に合うかどうかはさておき。
- 73 :
- >>64-65
ラクシャーサによる放火によって、青々と生い茂る森林はまるで地獄のように
炎が燃え広がる世界だった。
人間がこの場に居たのなら、忽ち煙と熱と酸素濃度で意識が朦朧としているだろう。
アンドロイドである白銀にも、この状況は好ましいとは言えない。
かろうじて、まだ排熱処理が間に合ってはいるものの、このまま周囲の温度の上昇と共に
機内の温度も上昇してしまったのなら、オーバーヒートによる熱暴走の後、機能停止に陥りかねない。
そんな中、白銀はゆっくりとまるで散歩でもするように追跡する。
理由は二つ、障害物の多い森林の中では白銀の機動性を生かせないので
ある程度、森を焼き、障害物を取り除く為
そして、ラクシャーサの軽業師のような身のこなしをRためだ。
白銀と違い、ラクシャーサにとってこの森林のフィールドは
自身の三次元的な機動性能をフルに活かせる環境だ。
いくら火が燃え広がっているとはいえ、まだ足場となる木々が残っている中、戦いを仕掛けたくはない。
暫くして、白銀はラクシャーサの姿を捉えた。
周りは理想通りの焼け野原、歪に形を歪ませ残っている人工樹が転々とあるが
この環境の中でまともに機能する可能性は低いだろう。
「…やりあう前に1つ言っておきたいことがある」
戦闘態勢をとるラクシャーサに対して、白銀は穏やかな口調で話しかける
「どうも俺は負けが込みすぎて、意固地になっていたらしい
感謝するぜ、お前のその舐めた戦い方のお陰で吹っ切れることが出来た」
(どんな滑稽な格好でも、俺はなんとしてでも勝つ、それが俺のアイデンティティだ)
ラクシャーサに感謝をのべると、白銀は大刮裁に手をかけ、両足を踏みしめる。
「こっからは出し惜しみなしの全力でいかせてもらうぜ!」
轟音と共に白銀は居合切りの構えのまま、ラクシャーサへ突っ込んでいく
装甲を外した分、先ほどよりも速度は増している。
その分、ラクシャーサの反応が遅れると見ていいが、このままでは、火炎放射が直撃してしてしまうだろう。
だが、白銀はそれを承知で間合いを詰めていく!
- 74 :
- 「……うぅ……、怖いな。
でも、大丈夫だ。こんくらい、どうって事……無い!」
関節部には丹念に消音機構が組み込まれているため、このサイズ、この堅牢さに反して出す音は小さい。
超重量の機体は一歩歩くごとに足元の草や石ころを粉砕し、地ならしをしていく。
そう、道の間にある丸太でさえも一歩足を踏み降ろせば、一瞬でスクラップだ。
この機体の異様な重量、堅牢さは並大抵の道ならば整地しながら進めてしまう。
重心の安定に特化している為、速度は遅いもののその移動速度に淀みが見られることはなく、安定した移動速度を維持していた。
そして、そんな色々な意味で安定感を感じさせる機体の中に収まるAIは、大丈夫だ、と自分に言い聞かせていた。
昔読んだ絵本に出てくるような、物陰から化物が出てくるようなそんな不気味な密林。
陽の光すらも入っていかず、異様に湿り気の有る空気の中に居れば、どんな人間だろうとAIだろうと次第に精神の安定を崩していこうというもの。
だがしかし、今のウシワカはそれらを恐れていない。己の親が作ってくれた武装を信じているから、武装と一緒にもらった勇気があるから。
だから、このミノタウロスでウシワカはヒーローになろうと、もう一度決意を新たにした。
皆で争うのではなく、皆で力を合わせて倒す。
父はウシワカに攻撃武装を付け忘れたと思っているが、それは違う。
一切の攻撃武装をオミットしたのは、ウシワカ自身の意向。
当然戦えるようにはなっているが、皆を繋ぐために両手を開けておきたいと、そう思ったから。
だからウシワカが持っているのは、力を与える力と、究極の堅牢のみ。そして、ウシワカにとってはそれで十分だった。
暫く歩いた、歩いて歩いて。
辿り着いたのは不気味な仏像、極めて強力な合金で出来た仏像は、醜いと思う。
己に武道のデータを組み込んでくれた営業主任に連れられて行った奈良の大仏と違って、重みがない。
それは、物理的な重量ではない。歴史の重み、意志の重み。
ただこの場を埋めることだけの為に作られた仏像は、それらの重みを持ち合わせていない。
最初は只の仏像かと思ったが、親の言葉を思い出す。
警戒してしすぎることはない、だから常に最新の注意を払うこと。
故に、ウシワカは武装を発動した。
「R毘古神、出力0.3%起動……半径10m」
半径10mに、極々微弱なエネルギー力場を展開する、ウシワカ。
同時に、両の腕をボクシングのブロッキングのようにガード体勢にし、タワーシールドを展開。
縦長の板めいた盾は、しかしながら両端に突起を持っており、打撃武器としても使用出来るすぐれもの。
それを接続することで、前面に幅2m高さ2m。要するに前面全てをカバーする防壁を展開していく。
(……10m圏内に敵機体が有った場合は、力場内のエネルギー変化でわかる。
この仏像、怪しいし。もしかしたら、コレ――ミノタウロス、かも?)
R毘古神は、エネルギー力場を展開し、力場内の機体にエネルギー供給をする事ができる武装だ。
本来ならば支援に使用する武装なのだが、力場内で他機体にエネルギーが供給される事で、圏内の機体を探査することも出切る。
現在の出力は極めて微弱なため圏内に入ったとしても、敵機体の総エネルギー量には誤差の範疇内での干渉をするのみ。
要するに、本物のレーダー程に高機能ではないが簡易レーダーとして、R毘古神は機能していた。
そして、ウシワカは目の前の仏像に警戒をしていた。
如何にも怪しいこの仏像、もしやミノタウロスではないか、そう思ったのだ。
- 75 :
- ミノーーーーーーーーーーー
- 76 :
- 【一方その頃】
北米東海岸、マサチューセッツ州ボストン。
「聞いたぜ、“コンバスターマンスーツ”が入手出来たそうだな」
「ええ、21世紀初頭に東海岸からフロリダにかけてを荒らし廻ったヴィラン、そのスーツのVer.8に当たります」
「中身諸共焼失した最終モデルには劣るが……スペックとしては安定した方か」
「そうですね、高出力リアクターによる高熱輻射装置に耐エネルギー装甲の施された強化服。
然るべき“中身”に着せれば今でも充分に使えます」
「ふん、では予定通り49号ラボに送ってやれ。
だが、“中身”は自分たちで用意しろともな」
「ですよねぇ、貴重な“ディアマンテフレーム”を二つも回せやしませんもの」
かくして、An.i.e.社では新たなミノタウロス参加機体のための準備が始まっていた……
- 77 :
- >>69-70
「気付かれたか。ま、どうせあとで挨拶にいくんだ。アポ取ったようなもんだろ」
隣の空き部屋に入り込み、相変わらず煙草をふかし続ける。
「結構。結構。頭の良い馬鹿よりは、したたかなリアリストの方が平和に近い。
少なくとも、無駄な争いをするタイプじゃなさそうだ」
男のポケットの中で音を再生している小型機械は盗聴器だ。
――「機体名はBeastだが、AIの名前は「人深」、ねぇ…」
――「Beastなんてのは器にすぎないよ。重要なのは人深だ」
ただし、ただ周囲の音を録音するものではない。
微弱な音波を感知し、その中から人の声だけを選り分けて録音・再生するもの。
多少離れた場所や、壁を隔てた向こう側の音を盗み聞きする盗聴器だ。
――「ほう、白銀に賭けましたか。あれは確かに面白い……」
――「そうでしょうそうでしょう。奪い取った武装を使うことを考えているタイプですから、勝つときはとことん勝ちますよ」
――「待て、切るなッ! おい、おい、もしもーし!?」 ――「名前ってのは大事だろう?辻牧」 ――「俺にはよくわかんねーな」
仕掛ける手間がいらない分、意図したのとは別な音声が混ざってしまうのが欠点。
各界の大物が集まる場所なのだから、個室の防音設備は馬鹿にできないものがあり、
感度を最大限に上げた結果、まったく別の会話が大量に混ざっていた。
――「私はウシワカに2、Beastに8です。高倍率と低倍率。普段の安全策です」 ――「……まぁいい。データ転送の……」
さまざまな会話の入り混じった音声再生を、黒服の男はあろうことか倍速で再生していく。
声と声の境界が重なり合い、何を言っているのか分からない和音は壊れたレコードそのもの。
――「ワインでいいんだな?データのチェックは任せたぞ」 ――「あぁ、なるべく早くな」
それを最後まで再生しきったあと、男はためらいも無くその録音データを消した。
代わりに電子端末を取り出して手早くメールを書きあげる。
「白山羊さんからお手紙ついた〜、っと」
『 拝啓。揺崎機関さま。木々の葉も見事に色づく季節となりました。
四季彩豊かな紅葉の元で口にする赤ワインはより一層の味わいがあるものです。
画廊では東洋の秋をテーマに、水墨画や錦絵などを集めております。機会が
ありましたら、ぜひとも一度ご覧になってください。いずれも名のある名画です。
場当たりな企画、二流の画展とは一線を隔した感動をお約束いたしましょう。
あなたに最上の娯楽を。敬具。』
書いてある内容は嘘ではない。たしかに飛行艇内には画廊があるし、東洋画の展示も行われている。
だがミノタウロスが始まっているのに、そんなことをわざわざ言うはずが無い。
たとえ一流の名画であっても、それはあくまでミノタウロスが開始されるまでの繋ぎにすぎないのだから。
「あー、日本語ってめんどうだな」
赤ワインを盛り込んだのは、話を聞いていたことを暗にほのめかすため。
ただの施設案内ではない、呼び出し状であることを感じ取ってもらうためだ。
ありがちな縦読み。『しがあばあ』……シガーバー。
本当に煙草を愛しているのもあるし、空気清浄器から煙草を連想してもらえれば無視されることも無いだろうという打算もある。
- 78 :
- >>73
「そうカ。全力。そりゃア良い。さっきみてぇナ隙は作らないっテわけだナ?」
走り寄る白銀に怯えることもなく、それまでと同じ口調で話しかける。
そもそも手を抜かれている発声器官では、声色に感情を込めることなどできない。
アクセントや発音の調整が不十分で聞き取りづらいこの話し方。
人工声帯を用いた発声ではなく、合成音声をスピーカーから流すだけ。旧式の音声処理だ。
その声に『馬鹿にしている』『陽気そうだ』といった感想を抱いたのなら、それはきっと口調の問題だけではなく
受け取る側のラクシャーサへのイメージが関わってきているのだろう。
「そーだよナァ。俺達には死後に裁きがねぇわけダシ、いま我慢する理由もねェよナァ!」
無彩色の声は、けれどやはり楽しそうだった。
発声のために開かれた口は、そのまま閉じられることなく火炎放射に繋がる。
会話から続けて攻撃に移ることで、口を開く動作から起動のタイミングを読まれる弱点をカバー。
発射までにラグの少なさを存分に活かし、嘴から炎を吐く。
輪郭の曖昧な赤が幾重にも重なり合う。自然現象の作った染料に一つとして同じ色合いは無く。
十二単など目では無い、色鮮やかな赤のダンス。炎は見る間に広がり、膨らみ、驀進する。
吐き出される炎は、火勢・熱量・射程のどれを取ってもこれまで以上。
至近距離で当てながら表面温度を少し上げるだけだった前回のものとは別物。掠っただけでも熱は内部まで忍び寄る。
まして炎の中で立ち止まれば、耐熱性の弱い装甲など簡単に溶け出してしまうだろう。
フィールド全体がラクシャーサの黙熾をバンプアップする今、その炎は白銀の持つ刃に劣らぬ必殺兵器。
(まだまだこっちは上り調子、最高潮までは5分〜10分ってとこか。でもってそこから先は俺の方も熱でやばい。
目安は5分、それまでに決着をつける! 相手の方も、装甲を捨てたことで速度が上がってる。
見た目のイメージを信用しすぎるのは問題だが……おそらくあの生身に近いボディは耐久値が低いはず。
俺も相手も戦場も短期決戦の流れ。炎のようにアツい数分、たっぷり味あわせてもらおうか!)
白銀が装甲を外したことでスピードが上がった分、ラクシャーサの黙熾も強化を受けている。
反応の遅れをいくらか伸びた射程が補い、白銀の行く手に炎のカーテンが立ちはだかった。
- 79 :
- 娯楽用機械人形96号。略称クロ。
元々廃棄される予定だった彼がこのミノタウロスにいるのは、
簡単に言えば財団法人アリアドネがミノタウロス運営に媚びるためだ。
高い技術力は必要ない。強い武装も、高性能なAIも必要ない。痛覚神経や、人格データこそが彼の価値。
痛み泣き苦しみの果てに死ぬ。その姿が観客に受ければいい。
感覚器官や表情筋系統がそこそこ凝っているのは、リアルに痛みを表現するためだ。
自動修復ナノマシンは、一撃で死なずに長く苦しみ続けるためだ。
他のアンドロイドとは参加目的が違う。ミノタウロスを盛り上げるために導入されたサクラのようなもの。
それがこの娯楽用機械人形96号。
「だんだんわかってきた。もう少しで解けそう……」
彼の不幸は今に始まったことではないが、このエリアで目覚めたのはとびきりの不幸だった。
水面にいくつもの木板が浮かぶエリア。細い板は白黒に塗り分けられている。
一つのまとまりが88個の細い棒で作られていることに気づき、ピアノの鍵盤との対応に思い至った。
接着が甘く水が染み出る地点が押されている鍵盤。いくつもの板を見て回り、それが示す曲を考えた。
「この感じ、全体的に和音が哀しい。レクイエムか何かかな」
最上級の問題の答えにもう少しで辿り着く、そんな瞬間に。
クロの腹に穴が空いた。
背後から超速度で飛んできた何かが、クロの腹を貫通していったのだ。
「あ、がっ……ひ、ああああああああああああああああ!」
痛み苦しむために作られた彼に気絶など許されるはずもなく。
眼下の水へと染み出していく人工血液は、昔ながらの赤色。
酸素補給率を向上させた白い人工血液とは違い、どろりとした質感と黒ずんでいく過程まで再現できている。
「はっ。あっ。あっ。あっ。あ……!」
自分自身の腹を突き破って、そして視界の向こう側に広がるジャングルへと飛んでいく白黒な機体を見つめながら。
「あっ。あっ。が、あああ……」
クロは自分を、壊れたピアノみたいだなと、思った。
綺麗に空いた腹の穴から、罅が全身に広がっていく。
表面の皮膚が無事なのに、部品の破片が体の中に溜まり、ひび割れが皮膚の下から浮き出ている。
流石にこれは自己修復ナノマシンでも手遅れだろうと、思った。
- 80 :
- >>74
仏像は確かにエネルギー反応を返す。
けれどそれは、アンドロイドのような複雑なものではない。
生体パーツを使ったロボ特有の揺らぎのあるパルスも無いし、内側からの熱反応も無い。
この仏像は生きてはいない。ただの機械。
何かの目的をもって作られた機械だ。
そこまで気付いた時、ウシワカの後方から音が近づいてくる。
それは雷の轟く音に似ている。何かが崩れ落ちるような。重い音。
電磁推進型エンジンだ。大電流で高密度のプラズマを作り、電磁エネルギーで飛ぶ推進器。
主として宇宙空間で用いられるものであり、技術的にはそう珍しいものではない。
だがそれはけっして性能が低いことを意味しない。
それに、ここまでの小型化に成功しているのは世界でも他にあるまい。
そう、超速度で飛ぶそれは、小型のペンギンだった。
高速回転するクチバシが木々を貫き、ジャングルの中を一直線に進んでいく。
粉微塵になった木の粉が、ペンギンの巻き起こす風でジャングル中に散らばっていく。
弾丸並みの速度で飛ぶペンギンが目指す先は、ウシワカだ。
木々が障害物となって速度を落とし、また木が穿たれる音から方向を察するのもたやすいが……。
初撃を避けたとしても、この速度で飛ぶペンギンから逃げ切れるのだろうか?
- 81 :
- ヴーン
ポケットに入っている端末が細かく振動する。
孝深は端末を取り出し、受信したメールを見る。
ミノタウロス運営側からのメールだ。
内容は至極どうでもいい。だがすぐに書き手の意図は伝わった。
「…ほう」
「どうした?」
声の主は、孝深が飲まなかった赤ワインをちびちびと飲んでいる葉次。
「いや、なんでもない。
…そうだ辻牧、ローガンに連絡を入れてくれ」
Logan・Thompson。
ローガン・トンプソン。
彼は昔、孝深と同じ研究機関に所属していたアメリカ人の研究者だ。
彼もまた天才で、ある分野においては孝深をも凌駕する程である。
今は米国で『Forefront』という会社を経営している。
「おう。で、何て言えばいい?」
少し笑いながら孝深は答える。
「僕の所に来てくれ。お前の『子供』も忘れずにな。…と」
「…お前性格悪いよな」
「何を今更」
ローガンも暇じゃないだろうに、と葉次は苦笑した。
「それと…」
「まだあるのか?」
「あぁ、『深々』を起こす」
「…ッ!」
葉次は孝深の言葉に戦慄した。
気にせず孝深は続ける。
「まぁ詳しくは話せないんだが。
次のミノタウロスで、本腰を入れないといけないかもしれない。
人深では力不足だろう」
深々(ふかみ)。
出来損ないの人間。
壊れた人間。
人間?
孝深が最初に人間を目指し作ったAI、深々。
だが孝深は失敗し、出来上がったのは
化物か、獣か。
狂った人格のAIだった。
息を吐くように人を殺し、息を吸うように自分をR。
本能で人を殺し、本能で自分を殺そうとした。意味のない殺人。
深々に初めて身体を与えた時、部下が何人も死んだ。
孝深は深々を人間と認めず、AIの思考を停止させ封印した。
そんな深々を起こして何をしようというのか。
葉次は唾を飲む。ゴクリ、とその音は孝深にまで聞こえた。
「何を…する気だ?」
恐る恐る、孝深に問う。
「ミノタウロスに喧嘩を売る」
- 82 :
- >>77
部屋を出た孝深は、まずカウンターへと向かう。
葉次に呼び出しのことは言わず、ただ
「お花を摘みに行ってくる」
と言って出てきた。
女子か!という盛大なツッコミは無視である。
とりあえずあのメールは癪に障った。
皮肉たっぷりで招かれてやろうじゃないか。
カウンターで白ワインをもらう。
赤ワイン、という言葉への抵抗だ。
そして次にガスマスクを装備。煙草への抵抗。
実を言うと嫌いでもない。
たまにハイライトブルーを買ったりもする。
そしてワインを持っていない方の手には、表紙に女の子の絵が描かれたタイトルの長いライトノベル。
絵に興味がなさそうな男を装う。
「…滑稽だな」
孝深は一人で笑った。
かくして
顔にガスマスク。
右手に白ワイン。
左手にライトノベルという明らかな不審者が完成である。
途中警備員に止められたが何とか通してもらえ、孝深は画廊に到着した。
- 83 :
- >>71
「クソッ!撃ってきやがった!」
そう言いつつ、『Field』を展開し防御する。
こちらを狙う弾は、エネルギーの壁に阻まれあらぬ方向へと飛んでゆく。
相手は間合いを詰めてきている。
銃火器を武器とする者は、Beastにとって一番の敵と言っても過言ではない。
飛び道具を持たないBeastが攻撃する手段は、近接攻撃しかない。
それすら『Burst』を発動させないと、たいしたダメージも与えられないのだ。
よって『Burst』を発動したくないBeastがとった行動は、逃走。
「洞窟ならそれなりに入り組んでる…。あそこまで戻るか」
偶然もう一人の敵に会ったりして、ごちゃごちゃになってくれるといいがそんな偶然は起こるまい。
その敵がミノタウロスだった場合は…
案外いいのかもしれない。
こいつとの闘いを有耶無耶にできて、その上ミノタウロスを倒せばクリアときた。
だが、流石にそこまで都合よく展開しないだろう。
とりあえず洞窟で奴をまくことだけ考えることにした。
Beastは『Field』をいつでも展開できるようにしつつ、洞窟へと逃走した。
【洞窟内を調べつつ逃走】
- 84 :
- 「(火力がさっきよか上がってやがる。まとも喰らったマズい)」
ラクシャーサが吐き出した炎の幕を目の当たりにしても、白銀は進むのをやめない。
「(さっきは刃先と腕の振りで斬ろうとして駄目だった…今度は全部使ってやってやる)」
白銀は刀を抜く、体を思いっきり捻り、各関節をフルに使って振りを加速させる
人に奉仕する為に作られたセクサロイドだから出来る人の技と機械の技の融合。
先ほど炎を僅かに分ける程度の風の刃と比較にならない疾風が炎を穿つ。
その狭間から、お互いの姿を確認した瞬間、白銀は刀の振りの勢いを殺さず
トリプルアクセル宜しく、回転しながら飛び上がる。
「(このまま、突撃しても俺よりも奴の炎の方がまだ早い
さっきよりも勢いを増したこれで炎ごとあいつを斬る
………さっきみたいに交わされても俺には手がある)」
白銀は第二刃をラクシャーサの頭上から切り下ろす。
その間、腰に帯びている鞘を取り外し、投げつける用意をする。
仮にラクシャーサが先ほどのように後逸してからの奇襲をしてきたとしても
避けた瞬間に、鞘を口を狙って投げつけ、火炎放射を防ぐことが出来るはずだ。
- 85 :
- (その頃)
白銀がラクシャーサと戦いを繰り広げる中、営業マン(田中英二26歳)は肝を冷やしていた。
それは、決して白銀を心配している訳ではなく、白銀と対峙している機体ラクシャーサのオーナー
ハールート・マールートのことで冷や冷やしているのだ。
「しかし、厄介な奴と戦ってしまったな
…負けて欲しくはないが勝ったら勝ったで変なイチャモンつけられないだろうか
一応本社のほうでも試合を見ている訳だし、警戒して警備ぐらい強化するはずだろうし」
田中とて人の子だ。本社が無事だとしても、自身の身の安全は保証されてはいない。
テロ対策として、この飛行艇内の警備は厳重な方だ。
ハイジャック、自爆テロの心配は無いだろうが、飛行艇から出た瞬間に拉致なんてことがある。
想像力の乏しい田中でもこれぐらい思いつく以上、田中は結構危険なところに立っているのだ。
そんな中、本社から電話が入る。
「田中です、はい…指示通りまだ待機しています。様子を見てヒーローズのほうに営業をk…え
あ、はい…わかりました。はい…はい、わかりました、すぐにハールートの方に営業をかけてきます」
電話を切り、田中は大きくため息をした。
本社からの指示は「今すぐハールート・マールートに営業をかける。その時に、特別割引プランをすすめる」というものだった。
仮に白銀が勝利したとしても、先に話をつけ、良心的価格で修理、改造を請け負うことで
相手方の怒りを収めようとする方向らしい。
田中は指示通り、資料の入ったカバンを片手にハールート・マールートの個室へ向かった。
- 86 :
- >何かの目的をもって作られた機械だ。
「この仏像――なにかの、ギミック?
分かんないけど、弄らな……ッ敵、いや、この速度とか、出力。
どう考えても、間違いない。ミノタウロス……ッ!?」
超高速で接近しつつ有るその機体を、力場の変化が検知して。
そのサイズ、出力までもある程度は看破していく。
社長と一緒に勉強をした時の、大凡ミノタウロス出場ロボの平均的な性能値はインプットしてある。
ミノタウロスと他の機体を見分けるために、性能の差を頭に叩きこんでおいた。
だからこそ、理解できた。性能の機体は、ミノタウロス以外にはあり得ない、と。
そして、また分かった。相手は早い、そして強いという事を、だ。
力場を絞り、耳を澄ませて接近方向を検知、感知。酸素を必要としない機体が、深呼吸の動きを見せる。
「……大丈夫、僕は、できるんだ。
だから心配しないで、覚悟を――決めるんだ。
いけるんだ、戦えるんだ、僕でも、子供の僕でも――何かしてみせるんだ!
来い、ミノタウロス! 倒してやる!」
接近してくるミノタウロスに向けて、堂々とした声で挑発するウシワカ。
同時に、地面を強く蹴り、跳躍。普段の低い姿勢より、なお低く安定した姿勢を維持する。
木々を粉砕しながら現れたペンギンの嘴と、待ち構えていたウシワカのシールドが、衝突した。
- 87 :
- (――ッ、強いッ!?
早いし、ドリルみたいにこっちを削ってくる。
だけど、だけど――防げなくは、無いッ!)
シールドと一瞬の拮抗をするペンギンの軌道がコンマ数秒で斜め右に弾かれる。
二つのシールドを合わせた状態では、シールドはある程度の曲面を持っている。
それをうまく使い、点でぶつかってくるペンギンに対して軸をずらし、ペンギンの一撃を滑らせたのだ。
浅くシールドには一筋の線が引かれるが、その性能にはまだまだ問題はない。
シールドの性能とAIに記録されていた、人間の技術。それらが無ければ、今の一合でウシワカはリタイアしていたろう。
即座に、機体が許しうるだけの最高速機動――要するに他の機体の通常機動並の速度で、ウシワカは駆ける。
森の中に入り込んだウシワカは、レーダーとして力場を展開しながら、出来るだけ木々の密集している隙間を縫うように、移動していった。
無意識に選んだ移動の方向は、ラクシャーサと白銀が戦っている、鉄火場だった。
十分もしない内に、二機の闘う戦場に、新たな音が加わるだろう。何かが衝突する轟音と、木々を吹き飛ばす何かの音が。
- 88 :
- >83
「疾(チ)ッ!?」
物理装甲の向こう側にもダメージを与えられるHEAT弾だが、当たらなければどうという事はない。
しかも、エネルギーフィールドによる防御は射入角にあまり頼らずに跳ね返される。
「それでいて、逃げの一手……やる気、マジでないのか……」
洞窟に逃げ込まれたが慌てず騒がず、コートのポケットからマッチを取り出し、一本火を灯してその入り口に投げ込んだ。
その様子から風の具合や地面の状態など、様々な事が読みとれるのだ。
「爆裂弾や榴弾の用意があれば、入り口を潰してやるんだが」
どこぞのルーデルや迷宮破壊軍団みたいな事を言い出した。
- 89 :
- >>84
「うおッ」
(俺の炎を真っ向から断ち切りやがった。だがこれではっきりした。
奴の武装は、高速回転で気流を生む電動式の刃。……耐熱性に寄せた俺の装甲じゃあ、あれは受けられない。
しかも奴のAIとリンクして回転する類と見た。奪い取っても俺じゃあ回転させられない可能性が高い。
つまり俺の武装を犠牲にして勝ったんじゃあ、この先の戦いが難しくなる。勝つなら完璧に勝つしかない)
「いいねェ! すッげェーいいゼ! 技も武装も超一流ってわけダァ!」
もはやここまで距離を詰められては、炎は吐いた端から刃に散らされて自分の視界を遮るだけ。火炎放射を止めて話す。
すぐ頭上の白銀を睨みつけて、そして前方へ短くジャンプして刃をかわし……きれない。
敵の武器を見極めることに集中し過ぎ、回避に移るのが僅かに遅かったのだ。
背に小さな切り傷が残り、中から配線が一本はみ出る。
戦闘用アンドロイドの類に漏れず、ラクシャーサも外殻装甲の付近には重要な配線を敷かず
またある程度予備のネットワークを用意する設計をされている。
だがダメージはダメージだ。特にこの戦場では、装甲の一部が削れて内部に入る熱が増えることが痛い。
黙熾による性能上昇の限界、内部機関の自壊に陥るまでの時間が短くなるからだ。
振り向いて黙熾で着地前後を襲おうとしたところに、白銀が鞘を投げ飛ばしてくる。
「サンタクロースっテ知ってるカ?」
鞘をクチバシで挟んで止め、手で鞘を掴む。
上手いこと不意をついた動きであったにも関わらず、ラクシャーサは咄嗟に反応してみせた。
強くなっているのは炎だけではない。ラクシャーサの運動性能全体が底上げされている。
「なンでも、物で信仰を買おウとスル大罪人らしいゼ。なんか赤くテ、角のある魔物を従えテルそうダ」
右手で鞘を持って、その先を白銀に向ける。
「プレゼント、ありがとナァ。礼っチャなんだガ、てめェの装甲、サンタみたいに真っ赤に染めてやロウ!」
言い終われば、バックステップで距離を取りながら炎を吐く。
相手の持つ刀で炎が散らされるのは承知の上、手の中の鞘を熱することで得物として威力を高めるのが狙い。
- 90 :
- >>86-87
音速に辿り着いた飛翔は衝撃波を生む。
一秒に300回転、それでなお余力を残す驚異のドリル。前方の空気をかき乱し、機体にぶつかる空気の層を散らす。
ペンギンの周囲の空気は乱気流のツルギであり、大気圧のハンマーである。
このペンギンにドリル以外の兵装は無い。だがその超速度の飛行それ自体が武器。
シールドにクチバシがぶつかる前から、風と衝撃波がウシワカの身体を襲う。
ただシールドが堅強なだけなら、体勢を崩されてドリルの餌食になっていただろう。
使い手がしっかりと体勢を保ったからこそ受けられた。事前の訓練がウシワカを救った。
弾かれたペンギンは即座に加速し直し、進行方向の木々に穴を開けながら大きくターンしてウシワカの上空を取る。
ただ弾いたのでは、速度が残ってしまう。真正面から受け止めてペンギンを完全に停止させでもしない限り、ウシワカに反撃の暇はない。
機体の強さを大雑把に分析すれば、それは速力と火力と防御力で評価できる。
このペンギンは攻撃の威力とスピードが限界まで突っ切っており、さらに通常機体に劣らぬ硬さを持つ。
火力自慢が相手なら、その火力を見せる暇も無く貫く。
速度自慢が相手なら、悠々とその速度の上をいってみせる。
ならば防御自慢は、このペンギンを相手にするには比較的恵まれた部類であり。
けれど同時に、このペンギンを打倒する手段が何も無いわけであり。
ウシワカが走っていく後ろで木々が倒れて轟音を発する。
まず倒れ、擦れ合い、積み重なり、のしかかってきた木の重みに耐えきれずにまた別の木が倒れる。
倒れて倒れて、空を仰ぐ木が無くってしまえば、さらに木の山が崩れて地を削る。
その轟音に紛れて、ペンギンが再度背後から突っ込んでくる。
細かな動きは苦手なのか、それともジャングルの木に阻まれて加速が上手くつかないのか。
ターンからの再接近までには数分かかっている。ここでもう一度弾ければ、次の攻撃が来る前にジャングルを抜けられるだろう。
周りの音が邪魔となり、音を当てにしていてはペンギンの接近に気付くのが遅れる。
超回転するクチバシは逆に止まって見え、周囲に生まれる空気の濃淡が光の屈折を起こして鮮やかな虹の環を作る。
さらに加速で自らが作った虹の環を潜り抜けながら、ペンギンがウシワカに迫る。
- 91 :
- >>88
>>90
暗く入り組んだ洞窟内を走る影。
Beastだ。
ここまで結構な距離を走ったが、奴は追ってくるだろう。
他の敵に遭遇できればいいのだが。
その時、Beastの近くにある入口から木々をなぎ倒すような音がした。
何かいるのは明らかだ。
最初は何かを振り回しているのかと思ったがそうではない。
木々の飛ぶ音、そしてここまで届く風は衝撃波によるものだろう。
おそらく、何かが飛んでいる。
それも音速以上で。
自分を超える速さを持つ機体がいる。
厳密には『Burst』発動時のBeastを超える機体。
その状態のBeastは音速こそ出せないものの、かなりの速度である。
フルパワーで、後先考えず跳躍した時の最高速度でも音速には届かない。
しかし相手がずっと速度を出し続けている、ということは必然的にターンをするはずだ。
その瞬間なら奴の速度を超えられるかもしれない。
そこまで考え、そんな化物はミノタウロス以外には多分いない、という結論に至った。
後ろからはさっきの奴が追ってくるかもしれない。
とりあえず混戦狙いで突っ込もう。
そしてBeastは入口からジャングルに出た。
そこには、音速のペンギンから子供が逃げる、という奇妙な光景があった。
「おいおい…」
子供の姿をした機体は、攻撃方法を持たないのか完璧に逃走をしている。
しかしその眼の光は絶望どころか、少しの諦めも感じさせない。
いいAIだ、とBeastは思う。
丁度いい。あの子供にミノタウロス討伐を手伝ってもらえるといいんだが。
そうすれば、流石に追手の機体もこちらへ無暗な攻撃はしないだろう。
別にそのまま逃走しても構わない。
一人で闘うだけだ。
見るとペンギンが子供の後ろに迫っている。
横合いから最大速で突っ込めば、止められないこともなさそうだ。
勿論その場合は自機に相当なダメージを食らうだろう。
しかし、そのための『Field』だ。
「『Field』起動」
Beastの周囲にエネルギーの壁が張られ、空気が振動する。
「『Burst』起動」
躊躇いはない。
あのペンギンを倒せば終わるのだから。
機体は黒ずんだ赤に染まってゆく。
Beastの内部に狂気があふれる。
だがその狂気はあのペンギンだけに向ける。
『人深』は、そう自分に言い聞かせた。
「ヴァアアアアアアアアあああああああああああああああッ!!」
獣の咆哮がこだまする。
最大速でペンギンの軌道へ、跳躍。
- 92 :
- >91
足音が、というか作動音は遠ざかっていく。
「追うべきか、追わざるべきか。そこが問題だ」
まっしぐらに走っていくくらいだから罠は無いのだろう。
一般的な暗視で事足りる程度の暗さなのだろう。
他の敵を探すのは大変だろう。
条件が三つ揃えば、進んでよかろうと判断した。
複合センサーはパッシブにして赤外線を見ながら。対閃光防御は最大限に上げて目潰しに備える。
「音響爆弾までは防げないからなぁ……」
出来る事をするしかない。とにかく洞窟内に足を踏み入れ、追いかけた。
- 93 :
- >>91
木々を貫通するたびにすこしずつ減速するペンギンと
木々を踏みつけて跳躍を繰り返す度に加速するBeast。
絶対的な最高速・加速度ではペンギンが上だったが、地形の差でBeastがペンギンに追いつく。
衝突はジャングルと人工林のちょうど中間地点あたり。前方では火の手が上がり、後方では瀑布が吼える。
Beastを中心として張られたエネルギーの壁がペンギンの前に立ちはだかり
先行する衝撃波がエネルギーフィールドとぶつかり合って爆ぜる。
爆風がペンギンの体表を撫で上げて、本命のドリルがエネルギー障壁にぶつかり。
ガリガリガリガリギアリィイィィィイィイイ!
――キィイイイイイイイイイイィイィィン――z___________
障壁が削れていく音。人ならば耳を塞がずにはいられない耳障りな高周波音。人では聞き取れないほどの超音波。
音速の世界の攻防が破壊的な狂音を生む。
エネルギー壁を貫通したクチバシがBeastの装甲へと少しずつ迫り。
ここでエネルギー壁によって突進を止められたペンギンの内部から、金属の軋むような音がする。
装甲の隙間から煙が立ち上り、ペンギンの身体が熱を帯びる。
――超速で飛行するペンギンは、そのために多少無茶な設計がされている。
無理に停止させられれば、内燃機関が熱のやり場を失って傷つく。
規格外の大エネルギーを発生させるプラズマエンジンが破損すればどうなるか、あの超速飛行を見れば予想がつくのではないだろうか。
クチバシはBeastへと迫り、けれどペンギンはエネルギー壁に遮られて動きを大きく制限されている。
このまま放っておけばBeastは大ダメージを受けるだろうし、ウシワカが振り返ってペンギンを殴りつければある程度のダメージが見込める。
だが、下手に壊せばどうなるか。Beastが決死の覚悟でペンギンを止めているからこそ、破滅の未来ははっきりと見える。
- 94 :
- >>92
さて、それまでいた罠の林の情景と、洞窟の中の曲りくねった道とを思い浮かべて考えれば
ストライク・バックが今いる場所が、『壁』の下の部分にあたることが分かるだろう。
場所によって狭かったり、広かったり。深さも変われば、天井の高さも変わる。
そして天然の鍾R洞に近いこの場所、やろうと思えば天井を壊すことも可能。
上手くやれば敵を追い詰めて生き埋めにすることもできるだろうし、あるいは――
- 95 :
- >93-94
頭上の高周波音も地下にはそれほど伝わっては来ないが、何か起きているのは何となく分かる。
「……まずい時に来たかっ!?」
うっかりすると他者の戦闘の巻き添えで埋まるかも、という事に気が付いた、が、今更引き返せない。
ペースを落とさず走り抜けようとする。
- 96 :
- (速さがこいつの一番の強み……、あと硬いし!
この硬さが全力で突っ込んでくるんだから、そりゃあ弱いはずがないよ。
だけど……、大丈夫。まだ、何発かなら。……耐えられる、筈。多分)
本当に幸いだった。
あらゆる攻撃武装を持たず、機動力を捨て、防御力のみに注力した甲斐がある。
おそらく、欲張ってどこかの部分にリソースを割いていたのならば間違いなく討ち取られていた。
己を生み出した親の過保護に今ばかりは感謝を覚えている。
全力疾走で駆け抜けるウシワカは、再度力場を展開していた。
故に、音や視界ではなく、エネルギー量の変化で中範囲360度全てを確認できており、ペンギンの軌道も認識できていた。
目の前の丸太を踏み砕き、前傾姿勢となる事で重心を前に崩して加速。
本来のスペックであれば、普通に走っただけでは他の機体の徒歩速度並でしかないウシワカが、通常機動で動けているのは体捌きが有る故だ。
重心を意識し、地面を捉えて進むことで、この超重量が並以下では有るが、致命的ではない遅さで機動する事を可能としていた。
(後で、謝らないと。父さんたちに、母さんたちに。教えてくれたことが、僕を救ってくれたって。
だから、勝つんだ。勝って、僕はヒーローになる!)
背後の力場の変化から、ペンギンの動力炉の消費が強まったことを理解。
加速が来る、止めが来る。そう理解すると同時に、ウシワカは足さばきを駆使して、転身。
地面に片膝を着くと同時にタワーシールドのピックを地面に突き刺して、固定状態を作った。
真っ向から受け止めてペンギンの動作を止めるつもりであったのだ。
- 97 :
- だが、その時展開していた力場に変化を感じた。他の機体だ。
刹那、目の前に現れる虹の光。そして、その虹の光は――他の機体に遮られた。
>「ヴァアアアアアアアアあああああああああああああああッ!!」
「え――――!?」
エネルギーシールドを展開した、人間型機体。
獣のような雄叫びを上げてペンギンの嘴を止め、轟音を響かせた。
まさかだった。ここで己を討ち取られるのを待つものだとばかり思っていたから。
わざわざこの破壊的な戦闘力を持つ機体と真向から立ち向かおうとするものなど、馬鹿な己くらいしか居ないと思っていた。
だが、即座に一瞬の思考のフリーズを、メモリのデフラグをする事で整理し、思考ルーチンを最適化。
この状況で己がどう動くべきかを、己の持ちうる全てのデータとアルゴリズムで考えていく。
「そこの人! 僕があなたにエネルギーを供給します!
5秒、それだけ耐えてください、お願いします!」
あのエネルギーシールド、かなりのエネルギー量を必要としている事が分かる。
だが、ここには歩く燃料タンクが居る。そう、必要なエネルギー量は、ウシワカが提供する。
ウシワカの強みは、大容量のエネルギーを誇る為に、ほぼどんな武装でも接続してしまえば起動できるという拡張性の高さだ。
そして、それは支援に於いても役に立つ。その大容量を以てして、他に燃費が悪かったり消費エネルギー量が多い機体のエネルギー消費を補うことができるのだ。
要するに、Beastの持つ弱点。シールドの展開に多くのエネルギーが必要であるという点を、ウシワカがひっくり返す。
他機体との協力といっても、武力だけという訳ではない。ウシワカができるのは、後方支援だ。
攻撃力は支援できないが、他の機体の可能性を限界以上まで引き出すことができる、戦術の拡張=B
対ミノタウロスの鍵としてヒーローズがウシワカに教えたのは、その役割だった。
- 98 :
- 「――――う、ぉおおおおおおッ!!」
地面を蹴る。可能な限り疾く、ペンギンの横合いに入り込むのに。
掛かった歩数は四歩。横合いにたどり着くまでは、二秒。
あと三秒で、ウシワカが取る行動は――。
右腕を肩ほどの高さにあげて、振り上げるウシワカ。
アーマー腰部の旋回部が唸りを上げて、ウシワカの上半身が急激に加速し、旋回していく。
だが、ペンギンは未だにBeastと喰い合っているであろうこの状況。
体の上部の旋回性能だけは高いウシワカは、全力で上半身を360度回転させ、横合いから固定用ピック≠側面に叩き込もうとした。
硬度はお墨付きのいわば最強の盾を、可能な限りの全力で叩きこむそれは、攻撃方法の少ないウシワカが可能とする最大攻撃力といえよう。
重機のような出力で振るわれる盾の下部の、鋭いピック。当たればその重量と速度により、強烈な衝撃が与えられるはずだ。
目的は、ペンギンの破壊ではない。それが出来れば御の字ではあるが、ペンギンの内燃機関を想定すると、それは自殺行為といえる。
だからこそ、Beastと自機を守るために取った行動は、ペンギンを横に吹き飛ばし、射線からBeastを外すことだ。
高速で動く物体は、銃弾然り横からの干渉に弱い。
機動の真横から衝撃を叩きこむことで、一気にペンギンの軌道を変えるのが、ウシワカの行動。
この行動が、吉と出るか凶と出るかは結果を見なければわからないだろう。
- 99 :
- 大刮裁特有の削るような斬撃音を確認したが、白銀は手応えを感じなかった。
「(あの程度の切り傷じゃダメージには入らねぇな)」
ラクシャーサの背中につけた傷に視線を向けながら白銀は灰を巻き上げながら着地をする。
その最中、ラクシャーサが振り向くのを確認し、即座に準備しておいた鞘を投げつける。
ここでラクシャーサが焔を吐いたなら、その噴出口に鞘が突っ込まれて機能不全を起こすか
もしくは、仮に火が出るのを止められなくても、熱によって融解しかけている鞘が口を塞ぐはずだった。
だが、白銀の予想に反して、ラクシャーサは嘴でそれを受け止めた。
「(コイツ…反応速度があがってやがる)」
白銀は絶句した。
先ほどのスペックでも自身を翻弄できるほどの機体の反応速度がそれ以上に増していることに
脅威を感じているからだ。
「(エンジンがあったまってきたってことか)」
反応速度が上がるということは、それだけ、相手の動きを見ることが出来るということ
そうなれば、避けるだけではなく、即座にカウンターを仕掛け形勢逆転も可能になると言っても過言ではない。
白銀は接近戦向けの機体なので、そこそこに反応速度は高いほうではあるが
…今のラクシャーサの反応速度はそれに近いものだった
ただ、性能が同程度ならば、それでいいが、ラクシャーサのスペックはまだ上昇する可能性がある。
「(短期か逃亡か…だな)」
白銀は体制を整え、身構える。
このまま、ずるずると戦い続ければいずれ、熱暴走を起こしかねないだけではなく、
性能差で押し切られる危険性がある。
白銀が生き残るには、性能が上がりきる前に仕留めるか、それより先に逃げるかの二択だ。
「随分とまぁ偏ったものの味方をする奴だな、普通逆だろ?信仰の礼としてのプレゼントだろうが」
ラクシャーサの独特の見方に笑みを浮かべツッコミを入れつつ、ラクシャーサの動きを警戒する。
「悪いが赤金に名前を変える予定はねぇんだよ」
ラクシャーサの炎を円の動きで避けつつ、反撃に打って出ようとした時、近場からの超高音と余波を感じた瞬間それを止めた。
「なんだ、今の」
音のした方向をチラチラと見ながら、白銀は考える。
罠や何かのギミックの起動音ではなく、恐らく誰かの戦闘音ではないか
仮にこれをスルーしてこのまま戦うとして、決着の前後に、そこでの勝利者が襲ってきた場合
圧倒的に不利なのはこちらだ。だが、目の前のコイツをほうっておくのも問題だ。
「(あっ…こうすりゃいいんだ)」
突如、白銀は何かを閃いたらしく円の動きを止める。
当然、ラクシャーサの炎が白銀を覆う。
「そう何度も同じ手に引っかかるかよ!そうやってまた接近させといてカウンターあたりが狙いだろ!
だがな、そうはいかねぇ…なぜなら俺はこのまま…逃げるからだ!」
白銀は炎を浴びたように見せかけて、猛スピードで後方へ逃げていたのだ。
ラクシャーサが炎を止め、白銀をみやったなら、身をかがめ縮こまりながらバック走行するシュールな姿を見ることになるはずだ。
「(笑いたきゃ笑え、これが俺の策だ…このまま俺は身を眩ませてもらうぜ
仮にお前が追ってきたらはあの音の方向にいる連中がお前の相手になるって寸法よ)」
- 100read 1read
1read 100read
TOP カテ一覧 スレ一覧 2ch元 削除依頼 ▲
【ヤマジュン】道下正樹です (103)
FE聖魔のマリカ (273)
そらのおとしもの なりきりその2 (114)
めるぷりの星名愛理です☆ (194)
リトルバスターズ! ミッションスタートだ! (103)
さとりとお燐の廃獄幻想〜東の方の地霊殿〜 (175)
--log9.info------------------
フリーウェアの予定表ないですか? (107)
桐について語るスレ 3 【サーバー未満 Excel以上】 (158)
■ファイルメーカーProとMS Access(アクセス)■ (117)
縦書きの文書作成ソフト (110)
GnuCash - 個人・小企業向け財務会計ソフト part2 (196)
MP3->WAV (107)
地図ソフト(その8) (103)
【質問不可】Excel総合相談所スレの雑談・議論スレ3 (153)
Officeのバージョンを戻してみました (166)
WordPerfectをいまだに使っています (102)
在庫・出荷管理について語りませんか? (123)
何度も挫折するアクセスの勉強法? (193)
OfficeXPが売れなくて収益減少。 (141)
ビジネスメールの仕分けを考える (100)
■■好きな及び愛してるアプリは?■■ (127)
アドビ、不細工アクティベーションやめろや (113)
--log55.com------------------
無修正流出したAV女優でオススメあらんか?
コロナのおかげで次の総選挙で自民党が負ける可能性
☆牝馬が6歳春で強制引退なのが納得いかない。 昔と違いレース体系も整備されてるのに。
小倉優子と旦那どっちが悪いと思う?
コロナのおかげで外食が空いてて最高。外食控えてる奴ってバカだよな。
遊んでるの俺だけだろうなっていうゲームwwwwww
【高松宮記念】タワーオブロンドンはヒューイットソン騎手、グランアレグリアは池添謙一騎手
ディープインパクトって本当に強かったの?