米国のデジタルマーケティングの第一人者デイビッド・ミーマン・スコット。 彼のブログで、世界でもっとも酷いウェブサイトとして、東京オリンピック招致の英語サイトが 紹介されてしまっている。彼は、なぜ世界最悪と評価しているのだろうか?本人の翻訳許可を もらったので、紹介したい。 ■世界最悪の英語ウェブサイト 2020東京招致の英語のサイトがひどい。あまりにひどいので、世界最悪の英語ウェブサイトとして ノミネートしたいと思う。さてどこからいこうか。とにかく全部ひどいからどこから始めてもいい けれど。まずは、コンテンツを見てみよう。 ●http://innova-jp.com/blog/wp-content/uploads/2013/05/130529tokyo2020.jpg ■東京2020のビジョンを見てみよう 「東京2020は、ダイナミックなイノベーションとグローバルなインスピレーションを共に実現 します。日本人のユニークな価値観やグローバルなトレンドを発信する都市の躍動を試合の力と 一体化します。次の世代のために、オリンピックの価値を強化し、磨きをかけるユニークな祝福 の式典となるでしょう。そして、多くの世界の若者達に貢献し、夢と希望を与え、スポーツの 利点を伝えるのです。」 【原文】 “Tokyo 2020 will bring together dynamic innovation and global inspiration. It will unite the power of the Games with the unique values of the Japanese people and the excitement of a city that sets global trends. It will be a unique celebration that will help reinforce and renew the Olympic Values for the new generation. And will contribute to more young people, worldwide, sharing the dreams, hopes and benefits of sport.” 一体これはどういう意味だ? これほど意味不明な文章は、正直未だかつて読んだ事がない。陳腐で意味不明なフレーズの羅列だ。 イノベーション、グローバル・インスピレーション、ユニークなバリューなどなど。これらは、 英語のマーケティングの文章などで、あまりにも使われすぎて、言葉が安っぽくなりもはや何の 意味も持たなくなっている言葉だ。 競合都市と入れ替えてみると、そのひどさが良くわかる。例えば、この文章の、「東京」という 都市名を、ライバル都市である、「イスタンブール」とか、「マドリード」に入れ替えてみたら どうなるだろう?都市名を入れ替えても、文章の意味が変わらないとしたら、それはユニークな ビジョンとは言えないのではないだろうか? ■顧客像(バイヤーペルソナ)を考えているのか? このサイトの問題点は他にも沢山ある。しかし、問題の本質は、顧客像を理解していないという事だ。 私は、東京に7年間住んでいたし妻も日本人だ。我々が見聞きしたことから感じるのは、日本企業は、 海外進出する時に、日本向けのコンテンツをただ単純に外国語に翻訳すれば、海外に進出できると 思い込んでいる。そのような例を沢山見てきた。そして、今回もまさに同じ問題が起きている。 これは本当に残念なことだ。なぜなら、東京はオリンピックの開催国として素晴らしい都市である に違いないからだ。しかし、このようなイマイチなサイトを作っているようでは、開催国に選ばれる 可能性は低いだろうと思う。(※続く) ◎http://innova-jp.com/blog/website-design/tokyo-olympic-website/
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>>1の続き ターゲット顧客を理解していない事の例を一つあげてみよう。このサイトでは、日本で人気の アニメキャラクター「ドラえもん」が使われている。このサイトを作った人は、世界中の誰もが アニメ好きだと勘違いしているらしい。11才の子供ならともかく、英語圏の大人全員がアニメ好き ではない。 このサイトのバイヤーペルソナは誰だろうか?それは、2020年のオリンピックの開催都市を 決定する国際オリンピック委員会の115人の委員ではないのだろうか?少なくとも、このサイトは、 彼らに訴求するようには作られていない。 ■組織がグローバル化するときに気をつけるべき事 このサイトを批判するのは簡単だ。しかし、これは誰にでも起こりうる事だ。あなたが海外の 市場に参入しようとした時に、国内向けのコンテンツを単純に翻訳して出したとしたら、何が 起きるだろうか?今回のオリンピック招致サイトと同じ事が起き、現地の人には理解されない サイトが出来上がるのではないだろうか? 本当にグローバル化するためには、ローカルのバイヤーペルソナを理解し、そのペルソナに向けた コンテンツを作る必要がある。そのためには、ローカルのコンテンツ制作者を確保し、コンテンツ をその地に合わせてカスタマイズする事が必要だ。 オリンピック開催都市の投票は、2013年9月7日に実施される。まだ4ヶ月先だ。時間はあるので、 このサイトを修正して、東京が選ばれるチャンスを増やしてほしいと思う。 ■まとめ この文章を読んでどう思っただろうか?みなさん、かなりショックを受けたのではないだろうか? デービット・ミーマン・スコットは、米国のデジタルマーケティングの第一人者だ。”The New Rules of Marketing and PR”(邦題:マーケティングとPRの実践ネット戦略)、”Marketing Lessons from the Grateful Dead”(邦題:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ)、 ”Real-time Marketing and PR”(邦題:リアルタイム・マーケティング)など、時代を先読みする 名著を出版している人だ。 彼は、日本が嫌いだからこのような文章を書いている訳ではない。むしろ、日本経験が長く、 日本びいきだと言える。そのような日本びいきの彼があえて苦言を呈しているという事実を、 僕らは彼の指摘を日本人として重く受け止めるべきだと思う。 ■コミュニケーションを軽視する日本企業 僕自身、日本企業で働いてきた経験から、彼の言う通り、「日本語コンテンツを外国語化するだけ」 という事が数多く行われている事を目にしてきた。これはコミュニケーション軽視以外の何者でも ないだろう。言葉は相手に伝えてこそ意味がある。ただ、英語に翻訳すればいいという事ではない のだ。 文中に引用されている英語の文章は、私も、原文を読んでみたが、正直これでは伝わらないだろうな と思った。と同時に、日本語を英語に翻訳したら、こういう英語になるだろうなという事も容易に 想像出来た。(※もう少し続く)