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2013年02月創作発表250: ジャスティスバトルロワイアル Part3 (513)
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ジャスティスバトルロワイアル Part3
1 :2010/11/23 〜 最終レス :2013/01/06 1 名前:創る名無しに見る名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 19:25:00 ID:uDrCIUCg [1/6] 「正義と悪はどちらが強いのか」 そんな単純かつ深淵なテーマを元にバトルロワイヤルを行うリレー小説企画です。 この企画は性質上、版権キャラの残酷描写や死亡描写が登場する可能性があります。 苦手な人は注意してください。 したらば ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14034/ まとめwiki ttp://www35.atwiki.jp/justicerowa/pages/1.html 前スレ ジャスティスバトルロワイアル Part2 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283595900/
2 : ★参戦作品別名簿 【Fate/stay night】5/5 ○衛宮士郎/○アーチャー/○言峰綺礼/○藤村大河/○間桐慎二 【MONSTER】4/5 ○天馬賢三/○ヨハン・リーベルト/○ハインリッヒ・ルンゲ/○ニナ・フォルトナー/●ヴォルフガング・グリマー 【DEATH NOTE】3/5 ○L/○夜神月/●メロ/○松田桃太/●夜神粧裕 【未来日記】4/4 ○天野雪輝/○我妻由乃/○平坂黄泉/○雨流みねね 【ジョジョの奇妙な冒険】3/4 ●東方仗助/○空条承太郎/○吉良吉影/○DIO 【金田一少年の事件簿】3/4 ○金田一一/○高遠遙一/●七瀬美雪/○剣持勇 【バットマン】2/4 ○バットマン/○ジョーカー/●ポイズン・アイビー/●ジェームズ・ゴードン 【武装錬金】3/3 ○武藤カズキ/○蝶野攻爵/○武藤まひろ 【聖闘士星矢 冥王神話】3/3 ○テンマ/○杳馬/○パンドラ 【魔法少女リリカルなのはシリーズ】2/3 ○高町なのは/●アリサ・バニングス/○月村すずか 【天体戦士サンレッド】2/3 ○サンレッド/●内田かよ子/○ヴァンプ将軍 【侵略!イカ娘】2/3 ○イカ娘/●相沢栄子/○相沢たける 【MW】2/2 ○結城美知夫/○賀来巌 【仮面ライダークウガ】2/2 ○五代雄介/○ン・ダグバ・ゼバ 【デュラララ!!】2/2 ○竜ヶ峰帝人/○折原臨也 【キン肉マン】2/2 ○ロビンマスク/○悪魔将軍 【めだかボックス】1/2 ○黒神めだか/●人吉善吉 【仮面ライダーSPIRITS】1/1 ○本郷猛 【ウォッチメン】1/1 ○ロールシャッハ 【Yes! プリキュア5】1/1 ○夢原のぞみ 【Vフォー・ヴェンデッタ】1/1 ○V 49/60
3 : ★分類別名簿 【正義】15/17 ○アーチャー@Fateシリーズ ○衛宮士郎@Fateシリーズ ○L@DEATH NOTE ○金田一一@金田一少年の事件簿 ○空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 ○黒神めだか@めだかボックス ○五代雄介@仮面ライダークウガ ○高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ ○テンマ@聖闘士星矢 冥王神話 ○天馬賢三@MONSTER ○バットマン@バットマン ●東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 ○本郷猛@仮面ライダーSPIRITS ○武藤カズキ@武装錬金 ●夢原のぞみ@Yes! プリキュア5 ○ロビンマスク@キン肉マン ○ロールシャッハ@ウォッチメン 【悪役】16/17 ○悪魔将軍@キン肉マン ○雨流みねね@未来日記 ○折原臨也@デュラララ!! ○吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 ○言峰綺礼@Fateシリーズ ○ジョーカー@バットマン ○高遠遙一@金田一少年の事件簿 ○蝶野攻爵@武装錬金 ○DIO@ジョジョの奇妙な冒険 ○パンドラ@聖闘士星矢 冥王神話 ○V@Vフォー・ヴェンデッタ ●ポイズン・アイビー@バットマン ○結城美知夫@MW ○夜神月@DEATH NOTE ○ヨハン・リーベルト@MONSTER ○杳馬@聖闘士星矢 冥王神話 ○ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ
4 : 【一般】17/26 ●相沢栄子@侵略!イカ娘 ○相沢たける@侵略!イカ娘 ○天野雪輝@未来日記 ●アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのはシリーズ ○イカ娘@侵略!イカ娘 ○ヴァンプ将軍@天体戦士サンレッド ●ヴォルフガング・グリマー@MONSTER ●内田かよ子@天体戦士サンレッド ○我妻由乃@未来日記 ○賀来巌@MW ○剣持勇@金田一少年の事件簿 ○サンレッド@天体戦士サンレッド ●ジェームズ・ゴードン@バットマン ○月村すずか@魔法少女リリカルなのはシリーズ ●七瀬美雪@金田一少年の事件簿 ○ニナ・フォルトナー@MONSTER ○ハインリッヒ・ルンゲ@MONSTER ●人吉善吉@めだかボックス ○平坂黄泉@未来日記 ○藤村大河@Fateシリーズ ○松田桃太@DEATH NOTE ○間桐慎二@Fateシリーズ ○武藤まひろ@武装錬金 ●メロ@DEATH NOTE ●夜神粧裕@DEATH NOTE ○竜ヶ峰帝人@デュラララ!! 48/60
5 : 【実験のルール】 1、【基本ルール】 実験のため強制的に集められた参加者達は、3つのグループに振り分けられ、各々異なる勝利条件を目指し、48時間を過ごす。 ・Hor(正義)グループは、Set(悪役)を全てRか、Isi(一般)を助け、ロワ終了時まで一人でも生かしておくこと ・Set(悪役)グループは、Hor(正義)に属する者を皆殺しにすること ・Isi(一般)グループは、ただ時間内生き残ること 実験開始時に、これらグループに誰が属しているかは明かされない。 優勝者(たち)には主催の出来る範囲で願いが叶えられる。 2、【首輪】 参加者の首には首輪が装着され、首輪は以下の条件で爆発し、首輪が爆発したプレイヤーは例外なく死亡する。 ・首輪を無理やり外そうとした場合 ・禁止区域エリアに入った場合 ・ロワ会場から逃走しようとした場合 3、【放送について】 制限時間は48時間。 6時間毎に途中経過がアナウンスされる。 4、【スタート時の持ち物】 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は一部を除き没収。 支給品として、2日分の食べ物、水に、地図、名簿、メモ用の紙数枚、小さな方位磁針と時計と鉛筆付きのマニュアル手帳がある。 その他、各作品や現実からランダムに選ばれたもの1〜3個が渡される。 5、【特殊ルール】 ・参加者は三人の参加者を排除した場合、特別な報酬を得る権利を与えられる。 ・特別報酬は、怪我の治療、物資の補給等の他、他の参加者に危害を加えたり、ロワを棄権する以外の事が出来る。 ・詳細は、達成した後に首輪の前の部分を触って確認できる。
6 : 【書き手参加ルール】 1.【書き手参加の基本】 ・書き手参加をする場合、トリップを使い識別できるようにする。 2.【予約、及び延長期限】 ・現時点で予約されていないキャラクター、修正提案期間を過ぎたキャラクターを、SSを書くのに使用したい場合、「予約スレ」にて予約をすることが出来る。 ・予約されているキャラクターは、期限内において、予約をした書き手に優先使用権があり、他の書き手がSSに使用したり予約したりすることは出来ない。 ・予約期限は 5日間 とする。 ・予約期限内に、やむなくSSを完成し投下することが出来ない場合、延長を申請できる。 ・延長期限は、2日間 とする。 ・予約期限内に延長申請がなかった場合、又、延長期限内にSSを投下できなかった場合、予約されていたキャラクターの予約は解かれる。 3.【修正、修正議論に関して】 ・投下されたSSには、24時間の間に、「修正提案」をする事が出来る。内容の不備、矛盾等がある場合、書き手はそれを受けて修正を申請する事が出来る。 ・「修正提案期間」の投下後24時間以内は、他の書き手は投下されたSSのキャラクター、展開を引き継いだSSの投下、予約は行えない。 ・「修正提案」 が逢った場合、そのSSについて、専用JBBSの「議論スレ」にて、議論を行う。 ・「修正議論」は2日間を期限とし、その間に結論が出なかった場合、24時間以内の期限で「トリ出しの書き手による評決」を行う。 4.【その他の留意点】 ・序盤など、特に自己リレーは控えるよう気を付ける。 ・キャラクターの能力、アイテムなどの制限は、投下されたSS、又はそれらを元にした議論などで決まったものを基準にする。 ・みんなで仲良く殺りましょう。 5.【作中での時間表記】 深夜:0〜2 黎明:2〜4 早朝:4〜6 朝:6〜8 午前:8〜10 昼:10〜12 日中:12〜14 午後:14〜16 夕方:16〜18 夜:18〜20 夜中:20〜22 >>2 参戦作品別名簿でミス 【Yes! プリキュア5】1/1 ○夢原のぞみ 49/60 ↓ 【Yes! プリキュア5】0/1 ●夢原のぞみ 48/60
7 : 395 :ミッドナイトホラースクール ◆3VRdoXFH4I :2010/11/23(火) 17:55:33 ID:90qctut+ 「この事態においてもそんな足手纏いを連れてのうのうと歩いている。相も変わらずの偽善者振りだな」 夜が明ける。 帳は上がり、人の世界に光が満ちる。 1日の始まり。爽やかな陽光が差し込む街中にはしかし、人の姿はなかった。 生の気配がない、沈殿した空間。 それも当然、ここは「実験場」であるからだ。 正しい結果を計るため、確かな成果を得るためには余計な要素は不要だ。 原料と触媒、それにより生ずる化合物こそが研究者の望みなのだから。 正義と悪の正体を。優劣を。是非を問うための試験管。 「――――――蝶野」 フラスコに投げ込まれた素材は、触媒を交えて反応を見せる。 殺し合いという実験場に集められた六〇の生命が、会場のそこかしこに置かれた幾多の施設に引き込まれていく。 そこで起きるのは調和か混沌か。融和か殺戮か。 それを知るのも、また実験の意味。 「……場所を変えよう。言いたいこと、聞きたいことは後で聞く」 「ほう、貴様らしくもない合理的な判断だ。―――まあその顔を見るに酷く頭を冷やされた後のようだが、いいだろう」 では、四人の参加者が集ったこの学校で起きる反応は如何様か。 経過はどうか、その眼で御覧になるといい。
8 : 396 :ミッドナイトホラースクール ◆3VRdoXFH4I :2010/11/23(火) 17:57:02 ID:90qctut+ +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 休憩を終え民家を出たカズキとすずかはC-1と2の境界にある学校へと向かっている。 カズキの妹であるまひろ、なのはの友人であるなのはとアリサ。 学校という施設は自分達学生にとっては一番馴染みの深い場所だろう。 安全、安心を求めるのならここに向かっているかもしれない。 あまり聡いとは言えない頭なりに考えたカズキの提案にすずかもまた異論もなく進んでいた。 肌を刺すような冷えた―――気温よりも空気そのものが鋭く鋭利な刃物ようだ―――黎明の町は静かに二人を包んでいる。 その足取りは襲撃者を警戒していることを含めても遅いペースだった。その理由は語るまでもなく、月村すずかという少女である。 殺し合いという常に気を張り詰めながらの時間は小学生のすずかには想像だにしない疲労、心労を覚えさせた。 本来なら既に暖かい布団で夢を見ている時分。このまま家で休みつつ歩いていては日が出る頃でも目的地には辿り着けなかっただろう。 「……あの、武藤さん」 だが今はその足取りも軽快だ。その理由もまた、明確。 「どうかした、すずかちゃん?」 すずかは今、カズキに背負われていた。いわゆるオンブというやつである。 見た目よりもずっと大きく感じるカズキの背中にしがみついている姿は身長差もあって旅行用のリュックサックを思わせる。 半身不随なのをいいことに白昼堂々、満員電車、大通り、繁華街をずっとオンブしっぱなしという恥辱でRる程の公開処刑を 自分より1つ年上の少女に味あわせた前科のあるカズキだが 幸運というべきか、二回り程年の離れたすずかはそういった念を抱く羽目にはならなかった。 せいぜい見知らぬ人の背中に体を預ける気恥しさと申し訳なさがあるくらいだ。 カズキも、同じように背に負ったかの少女よりもなお軽いすずかの命の重さを噛み締めていた。 「その……大丈夫ですか?武藤さんも疲れて……」 「なんてことないよ。これくらい慣れてるし、すずかちゃん軽いし」 「そう、ですか」 その言葉にすずかは僅かに息を詰まらせる。 慣れている。夜ふかしに対してのではない。それくらいはいずれ誰でも経験することだろう。 傷を負う事、殺し合いという人の命が計りにかけられている状況を経験しているということ。 日常の感覚が麻痺してるわけではなく、なんとなくに出た言葉なのだろう。事実カズキはなにもない日常の世界にいることに幸福を感じている。 自分の知らない裏の世界。知ってはいけない深淵の住人。カズキもまぎれもなくその一面を担っている。 それがカズキを拒絶する理由にはならない。そんな事情を抜きにしてもすずかはカズキの人柄を好いている。 心をざわつかせる場において、初対面でここまで好印象を持たせられる少年というのは人生経験の浅いすずかでも珍しいと思う。 だからこそ、その笑顔に似つかわしくない剣呑な世界に身を置いているカズキが心配だった。 他人のために自分をRという意味をすずかは分からない。 分からないが、戦うカズキの姿を想像する時、頼もしさの中に一抹の不安が浮かんでいた。
9 : 支援
10 : 397 :ミッドナイトホラースクール ◆3VRdoXFH4I :2010/11/23(火) 17:58:51 ID:90qctut+ そうして互いに思うものを秘したまま、二人は『反応』を求められる。 住宅地を抜け山林地帯に差し掛かった所で、カズキの動きが止まる。 「―――ゴメン、すずかちゃん。ちょっと降ろしてもいいかな」 「え?あ、ハイ」 すずかを降ろして正面を見据えるカズキ。 何をしてるか最初は分からなかったすずかだが、自然にその意味が理解できた。 少しずつ耳に伝わっていく足音。露わになってくる輪郭。 前から、誰か来る。 それだけで、すずかの小さな全身が震える。 始めに会ったカズキは優しい人だった。次に会ったのは恐怖が形になったような怪人だった。 前者であるのなら安心できる。だが後者だった場合は……その時の惨状が甦る。 分からないということは、それだけで人を恐怖させる。 同時に、正体が自分を襲うモノだと分かるのが恐ろしいという矛盾。その矛盾にすずかの胸中は苦しめられる。 カズキもまた、身を強張らせている。 それは怯えではなく、戦う意思の備え。 後ろにいるすずかからは見えないが、その顔はまぎれもない戦士の顔をしている。 顔も見えない初対面の人を疑う真似など普段のカズキはしたくない。 だが不幸にも―――あるいは幸運にも―――実験開始間もなく会った男の、あまりの邪悪さがカズキの心を離さない。 誰かを傷付ける相手ならカズキには戦う覚悟がある。 今目の前から来る参加者がそうであるのなら、カズキは前に出なければならない。 どれだけ自分の心身が傷付こうとも、それで誰かを助けられるのなら耐える甲斐があると信じてる。 これから会う人を殺人者と疑う良心の圧責も押し殺し、カズキは左胸に収められた核鉄を握るように拳を固める。 朧げだった輪郭は確かな象を持ちながら近づいてくる。 僅かに昇る太陽が、暗闇に包まれた貌を暴く。 その顔に、カズキとすずかは、お互いに異なる意味で釘付けにされた。 「あ、ようやく誰かがいたよパピヨン君!」 「わめくなヴァンプ、そんなことはさっきから分かってる。ああ、分かってるとも……」 現れた姿は、奇しくもカズキ達同様に二人組みだった。 その内の一人は――――――。 「おーい、ちょっといいですかそこの人〜。あ、安心して下さい。僕たちは怪しい者じゃありませんよ。 ヴァンプっていうんですけど川崎で悪の組織をやっていて……」 創作物染みた造形の頭部。 これもまた一般とはかけ離れた瞳。 ひげ。 たらこくちびる。 どれをどうみても「奇妙」な外見だが、それに反して嫌悪や恐怖の類といった感情は全く湧いてこない。 むしろ親しみすら感じられる、不思議な造形だ。 そしてもう一人は――――――。
11 : 支援
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13 : 558 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:02:27 ID:NnZIJi/c 「黙ってろといったろう。そもそも自分で悪の組織を名乗る意味が分からん。 これは俺の見込み違いだったか?……さて、」 前に分けられた黒髪。 色白、というよりも蒼白に近い肌。 だがそんな特徴(パーツ)は全て後回しにするほどに大き過ぎる象徴(シンボル)の、紫色の蝶々仮面(パピヨンマスク)。 そこから覗く眼は、ドブ川が腐ったように、濁った色。 それにつられた、全身像も明らかになっていく。 指先に至るまで引き締まったエレガントボディ。 その彫像の如き肉体に相応しい、セクシャルバイオレットな一張羅。 そしてはちきれんばかりの胸筋と、ビン☆ビンなゴッサムタワー建設地(仮)。 「―――!?!?!?!?!?!」 確認したか否かの前に、反射的にすずかはすぐさま目を覆った。 思春期すら突入しておらず父親と一緒に入浴していてもおかしくはない年齢であるが、 清純お嬢様なすずかにとっては視覚的に衝撃過ぎる光景だった。 乙女の純潔の守護に腐心しているすずかを尻目に、四人の間の空気は未だ張り付いている。 正確に述べるなら、そのうちの二名のみの間でぶつかる視線が火花を散らしている。 「この事態においてもそんな足手纏いを連れてのうのうと歩いている。相も変わらずの偽善者振りだな」 散歩中に曲がり角で顔を合わせたような自然さで、「宿敵」は相まみえる。 それは偶然と呼ぶべき唐突さであり、それでいて何者かの作意―――運命的な邂逅を感じさせる。 真実そうなのか否かは、ここにいる誰もが知り得ないことであるが。 そんな真偽はよそにして、武藤カズキと蝶野攻爵は早過ぎる邂逅を迎えた。
14 : 559 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:03:03 ID:NnZIJi/c ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― この実験場の西エリアを占める住宅地で僅かに孤立した施設がある。 森に囲まれたその施設は、地図上では「学校」と銘打たれている。 この実験の参加者には比較的学生が多く、カズキの考えもあながち間違いともいえるものではない。 特に、カズキ当人にとってもそこは重要な意味合いのある場所であった。 私立銀成学園高校。 カズキの帰る場所であり、守る場所。 友達が、妹が、多くの人がいる場所。 そこに迫る危険から皆を守るため仲間と突入した矢先にカズキはここに連れて来られた。 細部はともかく、大まかな造りはカズキの記憶と相違ない形状をしている。 最も大きな違いといえば、そこに溢れてる筈の生徒、教師は一人もいないことだ。 夜の学校。肝試しの代名詞。ここにそんな仕掛け(フィクション)はない。 あるのは純粋な恐怖のみ。ただ空気が違うと言うだけで、馴染みのある建物が悪魔の巣窟かというほどの異彩を放っていた。 その屋上に、錬金の戦士とホムンクルスは向かい合っている。 共に不倶戴天の天敵。個人同士にも因縁が生じている間柄。 蝶野攻爵。有数の資産家蝶野家の嫡子にして稀代の天才児。 将来を嘱望され生まれながら、生来の病魔が彼の人生を蝕んだ。 医者に、クラスメイトに、教師に、実の親すらからも見捨てられた「透明な存在」。それがかつての蝶野攻爵という男の立場だった。 地を這う芋虫の如き運命を脱却し華麗なる蝶への進化を夢見て、男は禁断の秘術を学んだ。 曾祖父が残した錬金術の知識。限りない不老不死、人喰いの化物、ホムンクルス。 ほぼ独学でそれを実戦し得たことは、よほど彼の才覚と、生への執着が強かったことが窺える。 武藤カズキ。何の変哲もない高校生として生を受けた男。 攻爵が産み出したホムンクルスと、それを追いに現れた錬金の戦士、津村斗貴子とのRが、彼を戦いの世界へと巻き込んだ。 潰された心臓の代用に錬金術の粋を集めた超常の合金、核鉄を埋め込まれて新しい命と、新しい力を手にした。 世界の闇を知った彼は、それにも関わらず少女の助けになることを決めた。 誰かを助ける為に体を張れる。力がない頃から武藤カズキはそういう男だった。 新しい命を得る為に他人を犠牲にした男。 新しい命を得た為に他人を守ろうとする男。 二人の奇妙な因縁は、そこから繋がっていくことになる。
15 : 支援
16 : 560 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:04:26 ID:NnZIJi/c 「何の感慨も沸かない場所だと思っていたが―――」 手すりに腕をかけ、蝶野―――今は既にその名は捨てたが―――は口を開く。 休み時間の雑談のような気軽さで、何の気もなしに。 「中々いい見晴らしじゃないか。目に障る蟲も、煩わしい雑音もない。」 爽やかな口調の底には、どす黒い感情が煮えたぎり、渦巻いている。 無人の校庭を見下ろす眼の濁りが、一段と強みを増す。 「人のいない学校というものが、これほど心地よいとは思わなかった」 蝶野攻爵だった男は「透明な存在」、誰からも、世界からも必要とされない存在だった。 同様に、蝶野もまた他人を、世界を必要としていない。 ホムンクルス「蝶人・パピヨン」として新生を遂げた彼にとっては、もはや人間にも人間社会にも一切の執着を捨てている。 そんな何の意味も世界、全てまとめて燃やし尽くしてもいいと本気で思っている。 「無人の街に君臨する超人……中々オシャレな響きだな。だがやはりここは―――」 「蝶野」 沈黙していたカズキが声を出す。 その面持ちは神妙にして複雑。 「協力してくれ」 「断る」 即答であった。シークタイムゼロセカンド、脊髄反射の返答だった。 「念のために聞くが、それは単なる意思確認だよな?まさかお前俺が手を取り合って協力しようと頷くと本気で思っていたのか?」 嘲るように、問い詰めるように睨みつける蝶野。 心底見下し、けどそれでいてその言葉に満足してるような表情だ。 「確かに俺を実験体扱いしこんな辛気臭い場所に放り込み、あまつさえ首に鈴まで付けるような奴に尻尾を振る気はない。 主催者とやらの戯言に付き合ってやる義務もなければ義理もない。そして何より俺自身が気に食わない。 ああ実験を壊すという点においては頷いてやる。そう言う意味では他の参加者と協力関係を結ぶこともできよう」 蝶野自身この実験に協力、即ち殺し合いに乗るという発想はない。 自分を虚仮にした相手には相応の報復をするのが彼の信条だ。 今言ったように、他の参加者を従え(あくまで自分が上、という解釈だ)主催に反抗するという意思がある。 「だが、だ。ソレとコレとでは話は全くの別。貴様の慈善事業に付き合う気もまた毛頭ない。 手を取り合う?よりにもよって俺と貴様が?ハッ、そこまでにしておけよ武藤。 いつから俺と貴様はそんな仲良しな関係になったんだ?」 結末においてこの二人のものは同一ではない。 人を守る、という信念の元に動くカズキと違い蝶野が動く理由は主催をR、という点。 守る為と、R為。 結果として殺し合いを止めることになるかもしれないが、過程においてこれらは相容れない。 「それに……ある意味ではこの状況は俺にとって都合がいい。 ここならあのブチマケ女の横槍が入ってくることもない。『決着』の場としてはおあつらえ向けな場所だ」 そして、蝶野にはもう一つ目的がある。ここに来るよりも前に決めていたカズキとの決着。 超人と化した自分を一度殺し、唯一自分を「蝶野攻爵」と呼ぶことを許した男、それが武藤カズキだ。 その時の敗北が、人を越えた彼の心を縛っている。カズキとの決着を付けてこそ、蝶野の心は羽撃たけるのだ。
17 : 支援
18 : 561 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:05:46 ID:NnZIJi/c 「蝶野、お前との勝負はちゃんと受ける。けど、それは今じゃない」 それは、カズキもとうに承知している。 自分が切り捨てた命。「偽善者」という名を刻んだ戦いの相手。それが蝶野攻爵だ。 どういう形であれ蝶野との決着を付けるとは既に決めている。 けれどこんな場所で、こうしてる今でも誰かが傷付いてるかもしれないような場所でそちらを先に回すことはできない。 「最後まで他の人には手は出させない。それからこの実験を止めさせる。そして最後に全部終わった後、お前と戦う。 ―――決着は、後回しだ」 これは、決して譲らない。カズキの根幹たる信念だ。 どれほど強大な力で打ちのめされようとも、身を裂く思いになろうとも、この心だけは砕けない。 「……ハッ。まあいい。どの道今の俺は核鉄を没収された身だ。取り戻すまではお預けにしといてやる」 厳重に保管していたというのに手癖の悪い奴らだ、と残念そうに股間をモゾモゾとまさぐりながら愚痴る蝶野。 一般人が見れば卒倒ものだが、感性という点でカズキも普通ではなかった。 カズキの言葉に、蝶野は破顔する。 全身に行き渡る感情は不快感、蝶野の一番嫌う綺麗事だ。 それなのに、目の前の男が言ったということだけで胸中に満足感のようなものが宿る。 「さあて、と。協力しないと言ったが今は情報が何より惜しい。ここは情報交換といこうじゃないか」 眼の輝きを収め、先のRモーションが一変し理知的な一面を見せる。 ここでは情報が単純な能力よりも重要となることをいち早く理解している。カズキもそれには同意だった。 「ではまず貴様からだ。ここまでに見たもの、聞いたもの、その肌で直接体感したことを包み隠さず話せ。 特に、貴様に余計な影を落とさせた奴の事をな」 わざわざ強調させて言ったのはどういう意図だったのか。 本人ですら分からない疑問は、カズキの証言への計算で忘却の彼方へと消えていった。 ××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
19 : 支援
20 : 562 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:06:56 ID:NnZIJi/c ×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××× 「武藤さん……!」 教室に入って来たカズキに気付いたすずかが駆けよってくる。 その顔には心からの喜びと安心が浮かんでいる。それだけでも、カズキは幾分救われた気になった。 「遅かったねパピヨン君。ところでカズキ君とは決着が着いたのかい?」 「今はNGだ。なあに、そう遠い日ではない。じきにカタがつく」 それに続いて顔を出したのは蝶野攻爵ことパピヨン。 一般人の趣向とはかけ離れたエレガント(本人談)なスーツをすずかはまだ直視できず、カズキの背に隠れるように歩いている。 逆に全く物怖じせず実にフレンドリーに話しかけてくるのはフロシャイム幹部ヴァンプ将軍。 悪の組織の幹部という肩書きにカズキ達は面喰ったが、それと全く釣り合わない人のよさにすぐに毒気を抜かれた。 こちらを油断させる演技かと邪推もしたが、そんな考えが馬鹿らしくなるほどにいい人過ぎたのだ。 元々お人好しと言われるカズキは彼を信じ、すずかも僅かな会話でヴァンプに心を開いていた。 「ありがとうヴァンプさん。すずかちゃんと一緒にいてくれて」 蝶野との「話し合い」のためにすずかはヴァンプに一時預け下の教室に待機してもらっていた。 これは自分と蝶野の問題であり、他の人に聞かせることもないだろうという配慮からだっだ。 「いやあそんな大したことはしてないよ。近所の子供ともよく遊んでるし」 「ヴァンプさん、すごくいい人でした……色んな話を聞かせてくれて、すっごく面白かったです」 「ただの世間話だったのに、いやあ照れるなあ」 はっはっはと朗らかな笑顔(?)を見せるヴァンプ。 すずかを落ちつかせ、安心させようと話しかけるその姿勢はまさに主夫の鏡であった。 ヴァンプとしてはサンレッドとフロシャイムとの激闘の記録を語ったつもりでもすずかは漫才のような感覚で聞いていたのだが、 楽しそうに笑ってるしまいっか!ということで納得していた。 本当に、どうしてこの人は悪の組織に入ってるのだろうか。 カズキとすずかの疑問は尽きなかった。
21 : 「放送ではここで待つとして、それ以降の行動を俺と武藤で決めておいた」 からあげのオーロラあえをパクつきながら蝶野はこれからの事を説明する。 カズキと蝶野で決めた今後の行動、結論でいえばやはり別行動だ。 お互いのこれまでの履歴を照らし合わせると、この周囲には他に参加者がいない、ないし少ない可能性が高い。 このまま数を無暗に増やしてフットワークを鈍くするのは下策といえた。 ならば従来通りのペアで別方向に進み情報と仲間を集めた方が効率がいい。 カズキとすずかは南の施設群へ、蝶野とヴァンプは東のコロッセオへ向かう。 合流する時間は三回目の放送前、場所はコロッセオを指定した。 集まる場としても、決着を着ける場としても相応しいと、蝶野は口元を歪める。 「蝶野。約束、ちゃんと守れよ」 「その台詞。一言一句違わず返そう。ただし向こうの方から仕掛けてきたら俺は容赦せんぞ」 先に決めた補足として、二人の間に結んだ決まりがある。 カズキは核鉄を入手し、それを蝶野へ返して決着を着ける。 蝶野はなるべく人を害する真似をせず、戦えない者は保護する。 お互いに納得がいかない部分があるからこその平等な協定だ。 最後に全員の支給品を確認し、あるいは交換し合って、放送までの間は各自自由に動く流れになった。 ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷
22 : 563 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:07:59 ID:NnZIJi/c ÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷ カズキは考える。蝶野から伝えられたこの実験における仮説を。 正義と悪の戦い。この実験はその縮図。 まだ少ない情報をやりくりしてでの拙い説だが、カズキの周りの人達から考えてみる。 カズキは正義の味方を自称したことなどないが、人々をホムンクルスから守る錬金の戦士という立ち位置は見る人から見れば正義の味方に見えなくもないだろう。 パピヨン―――蝶野は結果的として自分の目的のために大勢の人を犠牲にしてきた。その点でなら社会的には悪とみられてもおかしくはない。 すずかはその中で守られる側の人だ。一応の辻褄は合っている。 けど、それだけだ。 HorやSetやIsiなんて関係ない。救える命は救い、戦わざるをえない時は自分が戦う。それでよかった。 蝶野にある点を指摘されるまでは。 『崇高な偽善者振り結構。その精神に免じて俺からひとつ有難い講座をしてやろうじゃないか』 これは実験だ。正義と悪の真偽はどうあれ主催者本人がそう称した以上何かの結果を求めてのこの行動だ。 それぞれの陣営に定められたルールを見れば己ずとその性質も見えてくる。 ・Horは、Setを全てRか、Isiを助け、実験終了時まで一人でも生かしておくこと ・Setは、Horに属する者を皆殺しにすること ・Isiは、ただ時間内生き残ること 中でもSet、不特定多数の陣営の者を殺せなど実質皆殺しに近い。 見境なく襲いかかるような危険人物もいるかもしれない。そしてカズキは既に「それ」と会っている。 「究極の闇」は、誰に命じられるでもなく目に付く人を滅ぼすだろう。 だが、Setに類するとされる参加者が全員そのような化物だとはいえない。 かつての蝶野攻爵のような、生身の人でありながら容赦なく他人を犠牲にする人が潜んでいる恐れもあるのだ。 その時、武藤カズキはどうするのか。 当然、カズキは助けるつもりだ。カズキは人を殺めることを自分にも他人にも許さない。 命の取捨選択、切り捨てるという行為を忌避している。 「化物」であるが故に、カズキはホムンクルスと戦う覚悟が持てている。 人を逸し、人に戻れず、人を喰う魔物であるからこそその槍を貫くことに躊躇しない。 それも、力のなさで一度蝶野を殺したことにも起因しているのかもしれない。 L.X.Eの信奉者早坂姉弟もその輪から抜けださせることができた。 誰かを助けることを最後まで決してあきらめはしない。 それでも、誰かの命が天秤にかけられた時。そうしようもなくその秤の重りを除かなければいけない時。 その相手が人間でも自分は……………………
23 : 「はいどーぞ、カズキ君」 思考に割り込んでくる声で視界を前に戻される。 目の前には、濃厚なソースのかかったからあげ。 「腹が減っては戦はできぬっていうしね。今のうちにお腹を膨らませておかないとね」 目を上にあげればそこにはヴァンプ将軍の顔。 確かにここに来てから六時間、食事らしきものをしていない。 好意に甘えてタッパーから肉をつまみあげる。 「じゃあ、いただきます」 口を開け咀嚼する。 肉のうまみ、衣の食感、ソースがそれを引き立てる。 「……うん、おいしい!」 その味に素直に感想を述べる。 口を動かしている内に嫌な考えも吹き飛んでいた。 そんな最悪の状況にならないように自分が頑張ればいい。 結果自分がどれだけ傷付こうとも、それが誰かを助けることになるなら耐えられる。 隣で微笑む小さな命を見て、そう決めた。 ************************************************
24 : 支援
25 : 支援
26 : 564 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:09:04 ID:NnZIJi/c 無人の校舎。その屋上。さらにそこで一番高い給水塔の上。そこに妖精は立っていた。 花「蝶」風月。世の美しいものの例え。この光景はそれを全て満たしているといっていいだろう。 ―――対象は酷く限定されるかもしれないが。 そんな美の象徴たるパピヨン―――蝶野は静かにもの思いにふける。 彼は天才だ。自負もあるし他者も昔はそう評していた。 誰からも見捨てられ、人を越えた今でもその頭脳は健在だ。 そもそもそれだけの頭脳がなければ独学でホムンクルスの研究を修めることもできはしなかっただろう。 今もこうしてこの実験に関する情報、仮説、対策を幾つも構築している。 他の三人はどれも頭が足りない。ならば一人でいたほうが煩わしさを感じずに思考に没頭できる。 その中で、今彼の興味を持つものがひとつある。 「究極の闇、ね」 カズキから聞いたある怪人が名乗った言葉。 その男は章印もなく、人と動物を融合させた姿に変身したという。 その上で、武装錬金をこともなげに受け止めカズキは完敗に追い込んだ力。 明らかに、一般のホムンクルスとは格が違う。 「……第三の存在、か」 それは、己の曾祖父が遺した「友」の称号。 人ともホムンクルスとも異なる上位の種族。 それに蝶野は興味があった。 カズキと別行動を取るのもひいてはその存在に会う機会があると踏んでのため。 己の宿敵を完膚無く打ちのめした力をこの眼で確かめるのも一興だ。 蝶野攻爵の信念は「不可能を可能とすること」。一人でもより高く、より遠くへと飛び立つことこそを掲げる。 この不完全な超人(ホムンクルス)の体を脱ぎ捨て、更なる高みを目指して翔ぶ。 時を知らせる鐘を待ちつつ、蝶はその時を待ちわびていた。
27 : 565 : ◆3VRdoXFH4I:2010/11/23(火) 18:10:56 ID:NnZIJi/c 【C-1、2/私立銀成学園高校:早朝】 【武藤カズキ@武装錬金】 [属性]:正義(Hor) [状態]:右頬に腫れ [装備]:すずかのハンカチ [道具]:基本支給品一式、不明支給品1?(確認) [思考・状況] 基本行動方針:救える命は一つでも拾う 0:放送を待つ 1:南に向かい、仲間を集める 2:すずかを守る 3:ダグバを倒す 4:まひろのことが心配 5:setが人間でも誰かを傷つけるなら……? [備考] ※参戦時期は原作五巻、私立銀成学園高校突入直後。 ※蝶野と『第三放送前にコロッセオで合流』、『核鉄を入手して蝶野の譲渡する』約束をしました。 【月村すずか@魔法少女リリカルなのはシリーズ】 [属性]:その他(Isi) [状態]:健康 [装備]: [持物]:基本支給品一式、不明支給品1?(確認) [方針/目的] 基本方針:アリサとなのはと会う 0:放送を待つ 1:カズキについていく 2:置いていかれるのが怖い [備考] ※参戦時期は未定。 【蝶野攻爵(パピヨン)@武装錬金】 [属性]:Set(悪) [状態]:満腹 [装備]:蝶々のマスク、蝶ステキな一張羅 [道具]:基本支給品、不明支給品1〜3 [思考・状況] 基本行動方針:主催者打倒。その為の仲間集め 0:放送を待つ 1:仲間を集めて主催者の打倒 2:コロッセオへ向かう 3:武藤カズキとは殺し合いで決着をつける 4:主催者や自衛の為強力な支給品を探す。核鉄優先 5:「究極の闇」(ダグバ)に興味 [備考] ※参戦時期はヴィクター戦前くらいで ※カズキと『第三放送前にコロッセオで合流する』、『仕掛けられない限りは無害な参加者は襲わない』約束をしました。 【ヴァンプ将軍@天体戦士サンレッド】 [属性]:その他(Isi) [状態]:満腹、少し胸焼け [装備]:なし [道具]:基本支給品、から揚げの入ったタッパー×2、不明支給品2〜3 [思考・状況] 基本行動方針:主催者打倒の仲間集め 0:放送を待つ 1:仲間を集めて主催者打倒。サンレッド、かよ子優先 2:サンレッドと遭遇しだい対決。殺し合いはNG [備考]から揚げはすべてオーロラ和えにしました [全体の備考] 全員の支給品を何個か交換しました。具体的な内訳は後の書き手のご自由に。
28 : 以上、代理投下終了です。支援感謝します。 改行多すぎのエラーが出たレスでは、こちらの判断で改行詰めたりレスを分けたりしています。
29 : 支援
30 : 投下&代理投下乙! 一気に時間が進んだなぁ! パピヨンとカズキの情報交換により、ダグバに興味をしめしたか。 ヴァンプ様の子供好きスキルがここで発動!さすが町内会活動全出席しているだけのことはありますな。 あと、すずかにパピヨンの格好は刺激が強すぎですww もしかして放送目前なんじゃなイカ?
31 : 予約来たな
32 : 期待
33 : おいおい 本誌の方で杳馬の正体が悪魔将軍並みの大物になっちまったぞw どうすんだこれww
34 : これまでの原作での杳馬の言動とどうにも齟齬があるから、今後依代になってただけとかあるかもしれないけどね。
35 : まぁバカチョンカメラは朝鮮人を指してなくても問題のある名称だったと思うがw
36 : >>35 誤爆失礼
37 : イカ娘、高遠遙一、高町なのは、夜神月を投下します。
38 : 高町なのはと言う魔導師を知る、しかし彼女自身には親しくない者が居るとするならば その人物は高町なのはに対してどんな心象を持つだろうか? それはきっとフィクションに出て来るヒーロー、あるいはそれに敵対する怪物のごときイメージだろう。 その絶大な力と強靭な意思で、如何なる困難も克服する無敵のエースオブエース。 天災のごとき圧倒的な魔力で並み居る敵を制圧する、戦場に君臨せし覇王。 そんな所だろうか。 管理局の白い悪魔。魔王。冥王。 現在も、そして彼女が未だ迎えていない未来においても なのははその強大な力と苛烈な戦い振りに、様々な揶揄をされたりしてきた。 あるいは現在の彼女から10年は管理局の執務を積み重ねて、心身ともに成長しきったなのはなら そんな 通り名ですら、決して誇大とは言えないのかもしれない。 しかし今の彼女は、まだ魔導師となって1年も経っていない9歳の子供だ。 この時点でのなのはは、魔法の存在も知ってまだ間もない。 実戦経験といえばPT事件や闇の書事件での数回のみ。 しかもそれらの実戦経験も実のところ、非殺傷設定で守られた生命や肉体の危険の無い戦いがほとんどなのだ。 それらの戦いは字義通りの意味で世界の命運を賭けたものだったが 今の実験ほど、自身の生命の危機に切迫して感じ取れる物ではなかった。 絶大な魔法の才と、年齢に比して強靭な精神力で何とか乗り切ってきたが それですら友人や家族による有形無形の支えが無ければ、到底為し遂げられなかっただろう。 そう、なのははただ必死だっただけだし、なのは1人の力で問題を解決したわけでもない。 ただただ懸命に目の前の状況を乗り越えようとしていただけ。 そこに無敵のヒーローも強大無比な怪物も居なかった。 そこに大局的な正義も高邁な理想も無かった。 いつも大切な何かを守るためだけの戦いだった。 そうでなければ戦うことは出来なかったであろう。 彼女は魔法を使えるだけの、平凡な9歳の子供なのだから。 友人や家族による支えを無くし、管理局の白い悪魔の虚飾をはがせば そこには1人膝を抱えて蹲る子供が居るだけなのだ。 それはこの実験が始まってすぐに露呈する。 残虐超人『マキリシンジ』の襲撃を受けた際、なのはは何の抵抗もできなかった。 なのははデバイスが無くとも、魔法弾を撃つこともシールドを張ることもできる。 しかしそれらを使うことをしなかった。と言うよりできなかった。 何故か? 天才的な魔導師と思われているなのはだが、その実危急の事態に対して 敏速かつ的確な判断と対応をとることを、決して得手としていない。 魔導師となったばかりの頃も、ジュエルシードの起こす事件に上手く対処できない場面は多々あった。 フェイト・テスタロッサとの戦いも、最初はまるで歯が立たなかった。 ヴィータとの最初の戦闘時も、反撃することさえできなかった。 これらはなのはが未熟だった所為もあるが、それ以上に不意に敵に襲われるような突発的な事態では 動揺してしまい、沈着な判断が出来ないからである。 なのはがその真価を発揮するには、事態を正確に把握し 自分が何をなすべきかを考え答えを出し覚悟を決める時間が必要なのだ しかし、すでに実験は始まってしまった。 何をなすべきかも分からないまま。 何の覚悟も決められるぬまま。
39 : たしかに当面の危機は回避できた。 しかしそれは自分の力によるものではない。全てはVの力の賜物だ。 自ら乗り越えていないのだから、なのはの心にあの時の恐怖は残っている。 絶大な魔の力を有しながら、その心は未だ恐怖に捕らえられた子供のまま。 それらがどこに向かうべきなのか、未だ定められていない。 なのははただ殺し合いの暗黒の中を歩いていた――――。 ◇ 夜はその瞬間を悟られぬ間にすでに明けていた。 木々が生い茂る森の中にも、日の光と温もりは届いて来ていた。 その日の光と遊ぶように白い布が1つ、いや2つゆれる。 スラリと伸びた細い脚が土の上を跳ねるように歩むたび、白いスカートの先が軽やかに翻る。 「なのはー! こっちにもあったでゲソ!!」 白いスカートの主、イカ娘は木陰に駆け寄り 拾った木の果実を天に掲げ、満悦な様子だ。 その手にはもう何個もの同じ果実、どんぐりが握られていた。 「待ってよイカ娘ちゃん。1人になったら危ないってば」 もう1人の白いスカートの主は高町なのは。 私立聖祥大付属小学校の3年生にして歴とした魔導師。本人の言葉を借りれば魔法少女である。 弾んだ足取りでイカ娘の後を追うなのは。咎める言葉とは裏腹に、顔には笑みを浮かべている。 イカ娘と合流した当初のなのはは、それまでの経緯や最初の同行者であるVとの突然の別離などからその様子には陰りが見られた。 それでも今は子供らしい快活さを見せている。 それにはやはりイカ娘の影響が大きかったのだろう。 2人はまだ出会って間もないにも関わらず、イカ娘はすぐになのはに屈託無く接していった。 なのはも最初はイカ娘が、海棲生物の侵略者であることに面食らっていたが すぐにそんなことも気にしない様子で打ち解けている。 どうもイカ娘が侵略者だと言うことに、あまり実感が沸いていないらしい。 もっとも今の2人の役割は言わば前衛。進行方向に危険が無いか、注意を巡らす役割なのだが しかしイカ娘の方は見慣れない森の環境で色々物珍しいらしく、フラフラと遊び回っている。 それに注意を促しているなのはも、イカ娘につられてかどこか楽しげだ。 顔を合わせ笑い合う2人からは、今が殺し合いの渦中であることすら忘れていそうだ。 「やれやれ……あんなことがあったんだから、イカ娘ももう少し落ち着いてくれると思ったんだが……」 その2人の後を追うように歩いているのは、整った容姿を持つ長身の青年。 名は夜神月。大学生にしてその知力を買われ、キラ事件の捜査にも協力しているしている人物。 しかし他ならぬ月自身こそが、新世界の創造を志し、その過程で数多くの人間を殺したキラそのものである。 月は和気藹々としたイカ娘となのはの様子を、微笑ましそうに目を細めて見守っていた。
40 : 月が求める物、それは自らが認めた真面目で心の優しい人間だけが存在する理想の新世界。 イカ娘の純粋さとなのはの優しさは、月の判断基準において来るべき新世界にふさわしい物と思えた。 全ての邪魔者が排除され新世界が到来した暁には、2人のような人たちが 犯罪に怯えることも無く、幸せに暮らしていけるのだろう。もっとも当の2人の戦力なら、最初からそんな心配は薄いかもしれないが。 だからイカ娘となのはが仲良く笑いあうさまが、月にはまるで新世界のイメージが形象化されたように映った。 取りとめもない感傷だと、冷めて考える部分もどこかにあるが 気の置けない殺し合いの中で2人を、特にイカ娘を見ていると心が安らいでいくのは事実である。 今は殺し合いの最中だというのに、自分まで自然と笑みが零れる。 デスノートを拾って以来学校であろうと、捜査本部であろうと、家族の前であろうと どこかで偽りの自分を演じ、気の置けない生活を送ってきた月には こんな穏やかな気持ちになるのは久しぶりのように思えた。 「フフ、しかしなのは君もそれほど気落ちしていないようで何よりです。 これもイカ娘君のお陰と言ったところでしょうか」 横合いから男の声が聞こえてきたので、月は視線だけをそちらに向ける。 そこにはずっと月の隣を歩いていた細面の男、高遠遙一が居た。 高遠もイカ娘となのはを見ながら、穏やかな笑みを浮かべているが それを観察する月の顔には、僅かに険しさが戻る。 「……高遠さん、もう銃を返してもらっていいですか?」 「ああ、これは失礼」 高遠は素直にニューナンブM60を月に手渡す。 得体の知れない部分もある高遠だが、彼が極めて優れた知性を持つことを疑う余地は無い。 危急の事態にも冷静さを失わず、適切な判断力を示すことが出来る高遠は 月にとっても頼りになる存在と言えるだろう。 少なくとも表面上は……。 月、イカ娘、なのは、高遠の4人が現在向かっているのはエリアで言えばH-4にあるテレビ局である。 元々月たちは、なのはが合流する前からその辺りの施設を見て回る予定だった。 そしてなのはが集団に加わったことによって、さらに戦力が充実した形になった。 テレビ局はその施設の性質から、かなり通信設備が整っていると推測出来る。 さすがに実験の外部と通信を出来るとは考えられないが、実験内なら他の参加者と連絡を取れる可能性は有る。 一方的な放送しか出来なくても、何らかの利用方法は考えられるだろう。 それに同じようなことを考えた参加者が集まる可能性も有る。 無論、危険人物が居る可能性も有るのだが。 現状でイカ娘となのはを擁している月たちの集団は この実験の中では、戦力的に見てかなり高い位置に居ると推測される。 だからかなり大胆な行動も取れるようになっていた。 仮にテレビ局に危険人物が居たとしても、現有戦力なら制圧することも可能だ。 それでもリスクは有る。しかし危険を恐れていては何も出来ない。 月としては戦力が揃っている今の内に、可能な限り動いておきたかった。 ちなみに後から合流したなのはは、特に異論も無く月たちの行動方針に付いて来てくれている。 「これはなんでゲソ?」 そのなのはは今、イカ娘に自分の支給品を見せているようだ。
41 : なのははイカ娘に、自分の支給品を1つ譲る約束をしていたが イカ娘が落ち着いたので、やっとその話題に入れたらしい。 なのはが見せている物は、六角形の金属である。 「えっとね……核金って言って、怪我や体力を回復したり武装錬金っていう武器に変形したりできるんだって」 「武装錬金!!」 核金を手渡されたイカ娘は、さっそく掛け声と共に 核金を掲げて、謎のポージングを決める。 しかし核金には、何の反応も起きない。 「変形しないじゃなイカ……」 「えっと…………武装錬金に変形させられるのは、決まった人だけみたい……」 「それじゃ意味ないじゃなイカ!」 頭の頭巾(?)から湯気を出して憤慨するイカ娘に、なのはは説明書を読みながらあははと苦笑いを返す。 そこに後で話を聞いていた月が口を挟んだ。 「それは参加者の中の誰か特定の人物だけが、武装錬金に変形させられるってことかな?」 「参加者の中に居るかどうかはわかんないですけど、私とイカ娘ちゃんにはできないみたいです」 月と高遠も核金を手にとって弄んでみたが、変形が行われる様子は無い。 少なくともこの4人では、核金を武器として使用出来ないらしい。 他に無いでゲソー!? と騒ぐイカ娘に、核金を返されたなのはが差し出したのは 表にサンジェルマンと書かれてある紙袋だった。 中に何かが入っているのは、膨らみ方や重量感から見て取れる。 「これは中に何が入っているんでゲソ? 食べ物でゲソ? エビでゲソ!?」 「説明書が見つからなくてわかんないの……でも香水の匂いがするから、食べ物じゃないと思うよ」 「開けて見た方が早いでゲソ!」 紙袋を開けて中の物を取り出すイカ娘。 出てきた物は、ちょうどイカ娘の手より一回りほど大きいくらいの物だった。 それどころか肌色で先の方が5本に枝分かれしてあり、その1つには指輪まで嵌っている。 しかしそれの根元は誰の身体とも繋がっていない。 つまりそれは、切り取られた人間の手だった。 これはなんでゲソーーー!!? と言う叫び声と共に、紙袋を落としたイカ娘が飛び退く。 なのはは息が詰まり声も上げられないと言った様子で後ずさった。 その足が地面から浮き出た木の根に引っ掛かり、なのはの身体が宙を舞う。 「……っ!」 背後に居た月が、転びそうになったなのはを背中から支えたのは 何の思考も作為も無い、ただ反射的な行動だった。 瞬間。光が生まれた。 なのはの服装が先ほどまでと違い、頭のリボンは白く服のラインが青い物に変化し 持っていたS2Uが杖の状態に変わってそれを自分に向けて構えていることに月が気付いたのは、さらにその次の瞬間。 なのはの突然の変身。それは事前の情報交換で聞いていた、バリアジャケットと呼ばれる防護服だろう。 この場合注目すべき点は、それの展開とS2Uを構える速さであろう。 月自身や高遠だけでなく、イカ娘ですら意表を衝かれたと言う表情をしている。 その反応の早さに、嫌でも確信させられる。 なのはは絶大な魔法の力を持っていると言うだけに尽きない。 その力を戦闘と言う状況で十全に活かせるだけの才能も、センスも、技術も併せ持つ WARRIOR(戦士)だと言う事実を。 しかし、月が現に注視したのは別の点だった。 その戦闘の才気の片鱗を見せた当のなのはが、顔面蒼白になりながら大きな瞳を震わせている。 そこに宿る色は純粋な恐怖。
42 : 不意に多くのことが重なりすぎて、月もなのはも呆然としたまま見つめあう形になった。 気まずい沈黙が流れる。 「…………ご、ごめんなさい……」 「いや、良いんだけど…………確認のために聞くけど、この手は君の支給品なんだよね?」 「……はい」 「誰の手か、心当たりは?」 「ないです……」 気を取り直して、紙袋の中に入っていた手の話題に移る。 なのはは本当に何も知らないようだ。 実際にその手は体温が低下し、切断面の血も乾燥で凝固していた。 医学的な専門知識が無くとも、切断されてからかなりの時間が経過していることが分かる。 強い香水の匂いは、おそらく腐臭をごまかすための物だろう。 「たしかに手の状態から見ても、実験が始まる前に切断された物だと思われますし なのは君が切断したのなら、あのタイミングで紙袋を出して我々に見せるのも不自然です。 なのは君とは無関係と見て間違いないでしょう」 高遠も瞬時に月と同じ見解に達したらしい。 なのははあらぬ誤解を受けずに済んで、胸を撫で下ろしている。 「ところでイカ娘君は、こちらの手を御所望ではないようですが……」 「そんな物、要らないでゲソ!!」 「なのはさんもあまり御気に召さないようですし、この手は私が預かってもよろしいでしょうか?」 「いいですけど……それ、持っていくんですか?」 「ええ。これが支給品なら、参加者の誰かと関係が有る蓋然性が高い。 ならば念のために持っていれば、何かの役に立つかもしれません」 説明しながら高遠は、なのはから貰った紙袋に拾った手を入れる。 「なんで、誰かと関係あるってわかるでゲソ?」 「あくまで“蓋然性が高い”だけですが、それは他の支給品を見ていれば分かります」 「?」 「イカ娘の支給品のS2Uやなのはちゃんの核金は、支給された当人ではなく、他の限られた者にのみ意味のある物だっただろ? そのことから支給品は、個々の参加者に関係があった物を、あえてランダムに支給している公算が高いんだ」 意味の分からないらしいイカ娘となのはに高遠が説明を始め、月がそれを引き継ぐ。 同じ推測でも、1人より2人で話した方が説得力を持つ。 大して必要性のあることでもないが、これも集団を円滑に動かすためだ。 「従ってこの紙袋と中身も、他の参加者にとっては我々には分からない意味を持つ可能性もあります。 そちらの公算は、極めて小さいですが」 「なんだかよく分からないけど、とにかくそれは遙一が貰って良いでゲソ……。 なのは、他に何かなイカ?」 「えーっとね……有った! ん…………しょっ、と!」 なのはが如何にも重そうに、バックパックから取り出したのは 左腕に風紀と書かれた腕章のある白い長袖の上着だった。 重そうな取り扱いに反して、イカ娘が着るににちょうどいいサイズだ。 「これ、箱庭学園風紀委員会特服『白虎(スノーホワイト)』のSサイズなの。 1本で5トンの重量を吊り下げられる対圧繊維で縫製されてて、ダンプに刎ねられても平気なんだって」 「ぼ、帽子より立派な防具じゃなイカ……」 「帽子……? でもこれ……ちょっと重いかも」 なるほど。帽子と比較する意味は分からないが、説明書通りの性能なら極めて強力な防具と言える。
43 : イカ娘は説明を聞いて服を気に入ったようだ。 しかし着ている服の上から袖を通すと、重いでゲソーと消沈する。 「そうだ! 私が体重を軽くすればいいじゃなイカ!」 「……え?」 そう言って腕輪を弄った途端、イカ娘は軽やかにはしゃぎ出した。 「これなら、ちょうどいいでゲソ!」 「……体重を変えられるって…………」 「月君……イカ娘君の身体の構造に関しては、もう気にしないことにしましょう」 イカ娘が常識から外れた存在で有ることを、改めて思い知らされた月と高遠。 なのはだけは、イカ娘ちゃんすごーいと素直に賞賛していた。 子供の順応性は侮れない。いや魔砲……魔法少女もまた、規格外の存在ゆえか。 「なのは、この服をもらうでゲソ」 「うん。私には重くて着れないからね。バリアジャケットがあるし」 「あ、何か大きい建物が見えてきたじゃなイカ!? あれが『テレビきょく』でゲソね!」 歩いているうちにすでに森を抜け、市街地に出ていた月たちの前に 外壁がコンクリート製の、一際巨大な建造物が現れた。 「あれはさくらテレビ……」 「月君は、あの建物を御存知なんですか?」 「ええ。……さくらテレビを知らないんですか?」 「いえ」 「……私も知らないです」 「そうですか…………」 月は顎に手を当て、訝しげに立ち止まった。 それに合わせるように、集団全員の足が止まる。 しかしイカ娘は構わず進む。 「何をしているでゲソか、早く行くでゲソ」 「もう、だから1人で行ったら危ない……わ!」 追いかけようとしたなのはが、道路の僅かな段差に転んだ。 転び方から見て大した問題は無いと踏んだが、なのはは辛そうに膝を抱えている。 顔色も心なしか、精彩に欠けていた。 「膝を怪我されたんですか?」 「こ、これは劇場で襲われた時の怪我で……でも、これくらい平気! ですから……」 「君はさっきも転びそうになってたよね? 少し疲れてるんじゃないか?」 言われたなのはは意外そうにしている。 どうやら自分の疲労に気付いていなかったらしい。 誰かとはしゃいでいる時は自覚は無くても、ふとした拍子に疲労が表に出るなどいかにも子供らしい。 しっかりしているようで、まだこんな側面もあるということか。 まだ9歳の子供がこんな殺し合いの中で、山道を歩いてきたんだ。 無理もない話なのかもしれない。 なのはは申し訳無さそうに疲労を認めたため、月たちはテレビ局を目前に休むことになった。
44 : 手近なファーストフード店に4人で入る。 イカ娘となのはと高遠が奥のテーブル席に座る。 そこからならガラス張りの正面から外の様子がよく分かり、かつ外からは見え難い位置である。 「月君はお掛けにならないんですか?」 「それですが……イカ娘、僕と来てくれないか?」 「どうしてでゲソ」 「僕とイカ娘で、先にテレビ局やその周辺を見ておきたいんだ」 月が提案してきたこと、それはテレビ局を事前に偵察すること。 4人全員でテレビ局に入る前に、予め月とイカ娘で周辺のを見て回り テレビ局に人が居るかどうか、危険が無いかどうかを調査したいと言うのだ。 戦力分担としては偵察組にイカ娘、居残り組になのはが居るのでちょうどいい。 イカ娘は待つだけなのは退屈だからと快諾。高遠も特に反対はしなかった。 なのはは2人だけで先行するのが心配そうだったが 危ないことはしないと約束すると、一応納得はしてくれたようだ。 「じゃあ、いってくるでゲソ!」 「いってらっしゃい。気を付けてね」 「高遠さんとなのはちゃんも気を付けて」 「GoodLuck、月君にイカ娘君!」 月はテレビ局までの道のりを、足早に進んでいく。 先ほどまで進んでいた森の中と比べることによって、市街地の舗装された道路が如何に歩き易いか痛感してきた。 多少足早に進んでも、まったく負担にならない。 「ライトー、待つでゲソー! ハァハァ……まったく、何をそんなに急いでいるでゲソか?」 森と違い今度はイカ娘が置いて行かれそうになる。 テレビ局の建物の目前に立ち、やっと月の足が止まった。 手帳の方位磁石で確認してみたところ、月が居るのは建物の南側だと分かる。 月が面しているのは雰囲気からして、テレビ局の裏側に当たるのだろう。 ならば正面は北側と言うことだ。 これまでの道のりにもテレビ局も、人の居る気配も危険性も見受けられない。 「ごめんイカ娘。なるべく偵察は早めに済ませて、高遠さんのところに帰りたいんだ」 「ハァハァ……ライト、人生は急いでばかりいてもどうにもならないでゲソ。 それにこの服は、ちょっとゴワゴワして急いで動きにくいでゲソ……」
45 : 「……その服が嫌なら、脱げば良いんじゃないか?」 「何を言っているのでゲソ! 私はライトや遙一を守るんだから、ちゃんと防具を着込んでないといけないでゲソ!」 どうやらイカ娘はイカ娘なりに、自分の使命に対する自覚を持っていたらしい。 そして、やはり彼女はどこでも純粋だ。 その“純粋”がどれほど染まり易いかも、先刻の拷問で確認した。 (第一義に考えるべきは、僕の生還だ。それを見失うわけにはいかない……) 先刻と同じく無意味な感傷に浸りそうになる自分に、自戒を促す。 新世界において最も重要なピースは、そこに神として君臨する月。 それを見失って行動の優先順位を違えるなど、愚か者のすることだ。 もっとも、それと危険人物を排除することは別の問題である―――― 「それじゃあ局の正面に回るよ。でも正面の様子は向こうから見えないように、遠くから隠れて見ることにしよう」 「でも、それでは中に人がいるか分からないんじゃなイカ?」 「中まで見る必要は無いよ。今回の偵察はあくまで安全に、テレビ局周辺の様子を探るだけが目的だからね」 月はちょうどテレビ局の正面にある民家の陰から、ガラス張りの正面入り口を観察した。 その光景はまさに、かつてテレビ中継で見たさくらテレビそのものだ。 さくらテレビのレプリカまで用意できる主催者の力に、月は改めて警戒の気持ちを強める。 そして高遠やなのはが、さくらテレビの存在を知らなかったことを思い出す。 (さくらテレビは全国ネットの放送局だ。日本で生活していてそれを知らないと言うのは、さすがにおかしい。 そして2人とも“キラ”を知らなかった。2人ともが同じ嘘をついているとは考え辛い……) なのはとは出会ってすぐに、簡単な情報交換をした。 その中で月は『キラ』を知っているか、さりげなく探りを入れてみた。 結果は高遠と同じく“否”。 さらに2人ともが一般常識レベルのテレビ局を知らなかった。 これは最早、偶然で片付けて良い問題ではない。 (何故、知らなかった? …………あるいは知らないのではなく――――無かった) 月は死神界と言う、自分の知る世界とは別の世界の存在を知っている。 ゆえにその可能性に思い当たることが出来た。 『実験の参加者は、それぞれ別世界から召集されている』可能性に。 ならば2人の無知にも説明がつく。と言うより、現状で他に筋道立った仮説が思いつかない。 彼らは月と同じように日本に住んでいるが、細部の違う異世界の住人であると。 もし本当に異世界が存在するのなら、現状の問題はさらに深刻化する。 実験から脱出し、さらに元の世界に戻る必要があるからだ。 (…………さすがに突飛な発想か……) しかし無視できる問題ではない。 主催者の見せる超常的な手段や道具の数々。 不可解な実験会場の様相。 参加者同士における“世界観”の相違。 それらについてさらに詳しい検証が必要になるだろう。 「ライトー、何か分かったでゲソか?」 「うん、ああ……」 後から退屈した様子のイカ娘に声を掛けられ、月の意識は現実に戻る。
46 : 今は世界全体の考察より、目前のテレビ局に対する考察が先だろう。 もっとも、それは見たままの結論しか得れない物だったが。 「あのテレビ局には誰か立ち寄ったな。今も居るかどうかは、分からないが」」 「なんでゲソ?」 「いや……単純に局内を見たら奥のドアが開いているし、中から明かりが漏れてるからね……」 ガラス張りの正面から見える局内の雰囲気から推して、来訪者は未だ留まっている公算が高い。 危険人物であるかどうかの判別は付かない。 いずれにしろ当初の予定通り、一旦帰って4人で再び訪れるしか無いだろう。 それにここに来た、と言うより高遠となのはから離れた目的は 偵察だけでは無いのだ。 「……帰ろう、イカ娘」 「もう、いいでゲソ?」 「ああ。それに……早く帰った方が良い」 ◇ 照明も付いていないファーストフード店の中は薄暗く それはなのはの気持ちまで暗くするようだった。 なのははテーブル席に腰掛け、長いスカートを捲くり怪我をしている膝に核金を押し当てる。 こうすることで怪我が治り、体力まで回復するそうだ 実際怪我の痛みが薄れ、疲労も取れていっているのが分かる。 逆に言えば、なのははそれだけ疲れていたということ。 なのはは小学3年生の標準から見ても、体力に劣る。 それだけに森の中を歩いたのは、今にして思えば負担があった。 しかし意外だったのは、そんな中でも自分を支えようとしてくれた月に対しての行動。 セットアップの掛け声すらなく、瞬時にデバイスを起動してバリアジャケットを展開した。 運動が苦手なはずの自分が、年長の人が驚くほど素早く構えを取った。 超音速の領域で繰り広げられる魔導師の戦いを潜り抜けてきたことで なのはには異能とさえ言えるレベルでの戦闘技能が身に付いていたのだ。 そしてとっさにそんな行動を取った自分は 根底では殺し合いの危険性を自覚し、必要以上に恐怖さえしていたことも。 核金の効果は予想以上で、いつの間にか怪我は完全に癒え、疲労もほとんど抜けていた。 まるで治癒魔法のようだ。 こうしてS2Uを持ちながら片手間に回復をしていると、ユーノやクロノを思い出さずには居られない。 (ユーノくん……クロノくん……リンディさん……エイミィさん…………フェイトちゃん………… みんな心配してるかな…………) なのはのこれまでの激闘は、多くの者の協力無しではありえない。 魔法による援護や情報解析などの、様々なバックアップ。 そして応援や助言による心理的なケア。 それら有形無形の支えがあればこそ、なのはは戦えて来たのだ。 しかしこの実験では、なのはを支えてくれた人々はどこにも居ない。 実験が始まった当初は眼中に無かった事実が 実験の恐ろしさを身を持って知った今となっては、大きく圧し掛かる。 いや、それだけではない。今はこの事件の中で出会った心強い味方、Vもイカ娘も居ない。 もし誰かに襲われでもしたら、なのは1人の力で対処しなければならない。
47 : 劇場で間桐慎二に襲われたときのことを思い出す。 それだけで身体が震えそうだが、今はデバイスがあると自分を鼓舞する。 今はなのは1人だけでなく、高遠の命も預かっているのだ。 その高遠はなのはとテーブルを挟んで席に座り、何やら思案げな表情で手帳を読んでいる。 なのはの高遠に対する印象は“非常に落ち着いていて頭も良い人”と言ったところ。 頭脳労働に関しては頼りになるかもしれないが、戦闘となれば当てにはできないだろう。 自分が守らなくてはならないのだ。 (…………すずかちゃんとアリサちゃんはどうしてるんだろ…………) そしてここには居ない、しかし守らなくてはならない相手も思い出す。 2人はなのはにとって小学校に上がる前からの友人だった。 何度か衝突したこともあったが、それらを乗り越えて友情を育んできた。 その2人もまた、この実験に連れられてきている。 2人は魔法を使うことはできない、普通の小学生だ。 殺し合いの中では、自分の身を守ることさえ難しい。 もし危険人物に襲われたらと想像しただけで、自分が襲われた時を思い出す以上にぞっとする。 一刻も早く合流したいと願うが、それは叶いそうにない。 せめて頼りになる人と一緒であれば良いのだけど。 早く2人に会いたい。 早く皆の所に帰りたい。 昨日までもそんな風に思ったことは、何度もあった。 しかし今は切迫感がまるで違う。 ここは殺し合い。 今まで自分が経験してきたことのない、決定的な別れが訪れるかもしれないのだから……。 (……また会えるよね…………) なのはは自分の中で押しRように、その可能性を否定する。 可能性が存在することは理解できていた。 しかし近しい人や自分自身の死の可能性を完全に割り切って、それでも前に進むには幼すぎた。 なのはにできるのは、まるでその可能性に気付いていないふりを自分にするだけだ。 「なのは君、ちょっとよろしいでしょうか?」 「……ふぇ!?」 不意に高遠から声を掛けられ、思わず返事に詰まる。 一体何事かと、緊張に身を固くする。 「実は今から貴女にいくつか質疑したいと思うのです。……我々の相互理解のために」 「相互理解……ですか?」 高遠の言葉が上手く飲み込めず、さらに緊張感が強まる。 しかし高遠はそんななのはの様子を見て、柔和な笑顔を浮かべた。 「フフフ。そう、大袈裟に受け取らなくても結構ですよ。ただ貴女は我々3人の集団に、後から頼み込んで入ってきましたよね。 そのことに不満は無いのですが、我々は貴女がどういった人物で何を目的としているのかよく知らないわけです。 そこで私としては貴女をより深く理解するために、いくつか質問をしたいのです」
48 : 「……わ、私のことがちゃんと分かってもらってないんですか?」 「端的に言えばそうなります。……質問に答えていただけるでしょうか?」 「……あ、はい」 了承すると、高遠が僅かに口角を釣り上げた。 なぜかその笑みに、言いようのない不穏な物を感じる。 危害を加えられる。と言うことではない。 もっと得体の知れない奈落を覗いた気分だった。 「では、まず確認の方から。貴女のお友達がこの実験に参加していると?」 「はい……」 よく理解していたはずのことだが、人の口から確認すると その事実がまた重みを増す。 「そして貴女はそのお友達を捜していらっしゃる」 「はい」 「何故です?」 「……え?」 「貴女にどのような理由があって、お友達を捜していらっしゃるのでしょうか?」 質問の意味が分からなくて、思わず聞き返してしまった。 いや、意味は分かる。 でもこの人は、なんでそんな分かりきったことを聞くんだろう? 「そ、それは心配だから……」 「お友達の身、生命に危険が及ぶことがですか?」 「そうです」 「つまり貴女はそれほどまでに、お友達に死んで欲しくないと仰るわけですね?」 「あ、当たり前……だと思います」 相手が年長の人だということも忘れて、激昂しそうになる。 こんなことも、言わなければ理解して貰えてなかったなんて。 「しかし、そうなると不可解です……」 「……何かおかしいんですか?」 まだ疑問の余地があるらしい。 当たり前のことのはずが、世界の共通了解とならない。 それだけで、なのはの心で不安が大きくなる。 「ええ、非常におかしいですね。 貴女がそれほど強くお友達を案じていらっしゃるのなら――――何故、私たちは貴女に殺されていないんでしょうか?」 「え……!?」 今度は純粋に意味が分からない。 そして、戸惑いの気持ちが大きい。 どうしたら自分が人をRなんて、とんでもない話が出て来るのだろう。 まるで世界が少しずつ歪んでいくようだ。 「支給された手帳は御覧になりましたよね?」 「……はい」
49 : 「この中で“三人の被験者を排除した場合に、特別な報酬を得る権利を与えられる”とありますね。 “報酬には、怪我の治療、物資の補給等の他、他の被験者に危害を加えたり、実験を棄権したりする以外の事が出来る”とも。 こういった報酬の場合、他の参加者の位置や状態などの情報は、かなり需要が大きいと考えられます。 実際、貴女も他の参加者を捜していますしね。では当然報酬として、主催者もそれを提供する公算が大きい」 「…………だ、だから私が高遠さんたちを……Rって言うんですか!?」 「貴女の目的から推測していけば、自然に到達する結論だと思いますが」 「そんなこと、考えもしなかったです!」 まさかそんなことを疑われているなんて、想像もしていなかった。 なのはにとって、すずかとアリサは何としても助けたい。 しかしそのために他の人を犠牲にすることがゆるされるわけではない。 「考えもしなかったと……フフフ、なるほど。それでは私たち3人……私と月君とイカ娘君ですが 一体、貴女に何を協力すればよろしいのでしょうか?」 「…………えーっ、と……」 「貴女は『一緒に、友達を探してくれませんか?』と、私たちに協力を要請してきました。 しかし貴女は魔法を使える。私たちが居なくても自分の身は自分で守る力がお有りになる。 しかも貴女自身から聞いた話によれば、空を飛べるそうじゃありませんか。 ではデバイス、ですか? それを手に入れた以上、貴女に我々と同行するメリットは無い。 さっさと飛んで、お友達を捜しに行けば良いでしょう?」 「そ、それは……そうかも知れないけど…………」 高遠の疑問に答えを見出せない。 たしかになのはなら集団で歩くより、1人で捜索した方が効率的だろう。 戦力の低い高遠と月が居るため、手分けして捜すというわけにも行かない。 今は一刻も早く、友達に会いに行きたい。 そのはずなのに――――何故、自分はこの集団に居るのだろう? 「それは、貴女がお友達を本気で捜すつもりが無いからですよ」 なのはに分からなかった、答えが返ってきた。 それを問うたはずの高遠から。 しかしなのはの意識が奪われたのはその理不尽より、答え自体の不条理。 世界の足場が崩れていく。 「な、私は本気で捜すつもりです!」 「それならさっきも説明したとおり、こんな所でのんびりとしているはずが無いんですよ。 貴女に本当に友を想い、それを助けたい気持ちがあるのなら 1人で空を飛んで捜して回っている……いえ、私たちを殺して、お友達の居場所を聞いているはずです」 「だけど……そんなこと絶対できません!! 私が誰かを殺してでも助けるなんてすずかちゃんもアリサちゃんも……」 「望んでいないと? これは驚いた! 貴女は強い人だ。そしてそれゆえに、残酷だ」 「……残酷……?」 なのはは高遠の言いたいことが、未だに分からない。 だが、今行われていることは漠然とだが察知していた。 これは裁判だ。世界が自分の罪と業を明らかにするための。 「貴女はこの実験が始まってすぐに、あの間桐慎二に襲われた。彼の悪意に、欲望に晒され、命の危険すら感じ取っていた。 そしてそこをVに助けられた。彼が現れなければ、貴女がどんな恐ろしい目にあったか想像もできない。 しかし、もしその時Vが貴女を助けるためにその手を汚したとしたら、それを絶対に許さない、認めないと仰る?」
50 : 「……そ、そんなこと言ってない…………」 「間桐慎二の欲望によってどれほど汚され、蹂躙され、殺されたとしても。 あの仮面の騎士の手が汚れていたとしたら、その助けを拒絶できたと仰るわけですね? なんと言う高潔で強靭な精神でしょう! 私は貴女に敬意を覚えます」 なのはは間桐慎二に襲われた時のことを思い出していた。 得体の知れない欲望に晒され、未知の恐怖のあまり抵抗すらできなかった時のことを。 もしVが助けに来なければと思うと、未だに身震いする。 しかしそれが、Vが誰かをRことによって為したとしたら? あるいはその時、Vが間桐慎二を殺していたら? それは過ちだと言えるだろうか? 自問する。答えは否定的だった。 「……」 「まさか貴女は自分が助けられる場合は良しとして、友を助ける場合は罪とするのですか? 貴女は殺し合いの中で何の力も無い少女が、友にどんな手段を使っても良いから助けて欲しいと ただ、そう心の中で願うことさえ許さないと仰るわけですね? それは非常に興味深い考え方です」 そこでなのはは、すずかとアリサは自分と違い 魔法の力を持っているわけでも、修羅場を潜ったわけでも無い 平凡な小学生であるという意味を、失念していたのに気付いた。 全く何の力も無い女の子が、殺し合いに置き去りにされる。それはどれほどの恐怖だろう。 でも、だからといって、誰かを殺してまで捜すなんて…… 「…………それでも誰かを殺してまで、捜しに行くなんて……絶対に間違っていると思います!」 それでもなのはは強く言い切る。 本当はそこまで強い確信なんて、何も無くても。 しかし世界の追求は止まらない。 「では、仮に貴女がお友達と上手く合流できたとしましょう。その後、どうなさるおつもりなんですか?」 「…………」 「実験のルールはご存知ですよね。それが完遂されれば、少なくとも1つ以上のグループは全滅する。 そして実験が終わらない限り殺し合い、多くの犠牲が出るでしょう。 貴女はそれらを無視して、ただ友を守ることに執心されるおつもりですか? たとえそれが上手く果たせたとしても、グループによっては結局お友達は亡くなられるのですよ?」 知っていたことだった。 すずかとアリサにあったところで問題が解決しないことは。 そして無意識に避けていた問題。 それでも、人は答えを出して進まなければならない。 「……みんなと力を合わせてここを脱出します」
51 : 「具体的には、どうやって?」 「…………」 「どうしました? 『みんなと力を合わせてここを脱出』、そう提案したのは貴女です。 ならば貴女に具体的な方策を示して頂かないと困ります」 無意識に避けていたというのは、本当は答えなんて存在しないから。 そして何より、そこには恐るべき淵があるから。 脱出する具体的な方法は無い。 すなわちそれは、殺し合いを完遂しなければ実験からは抜け出せないということ。 殺し合いを完遂しても、グループによっては すずかもアリサもなのは自身も死ぬということ。 「どうしました? 質問に答えて頂かないと困りますね。 まさか無いんですか? これはこれは……失望しましたよ、なのは君。 貴女が出来もしない夢想で偽りの希望を持たせて、人の心を弄ぶような人物だったとは」 「…………ご……ごめんなさい……」 いつの間にかなのはは俯き、肩が震えていた。 忘れていた。否、忘れた振りをしていた恐怖と絶望が顔を見せる。 世界の足場が崩れ、底の無い深淵が口を開ける。 「……では、私がご教授しましょうか? 貴女と貴女のお友達を――――この実験から救い出す方策を」 「……?」 逃れられない暗黒へ足を踏み入れようとしていたなのはに、突如希望の光が差し込んだ。 この実験から抜け出せる? しかもなのはだけではなく、すずかもアリサも一緒に? そんな物が本当にあるのだろうか? 「ほ、本当にそんな方法があるんですか!?」 「ええ。と言っても、簡単な話ですが。 先ほど説明しましたよね。3人の参加者を排除した場合の報酬。 それで他の参加者の情報が得られる公算が極めて大きいと?」 話がまた不穏な方向に向かっている。 それでもなのはは、話の続きを聞きたいという欲求を抑えることができない。 暗黒に溺れる者は、罠と分かっていても 救いの糸に縋るしかないのだ。 「後は本当に簡単です。3人を殺した報酬で、自分とお友達の所属するグループを知り もしHorが居なければ、他の参加者を手当たり次第に殺して実験を終わらせれば良いんですよ」 それきり2人の間には長い沈黙が流れる。
52 : なのはは、何かを言わなければならないと思う。 そんな方法は認められないと、否定の言葉を。 しかし、それはどうしても口をついて出てこない。 何故ならそれは、やっと掴んだ希望を自らR行為だから。 「……………………た、高遠さんは私にそうして欲しいんですか?」 消え入りそうな声でやっと口に出たのが、そんな言葉。 それを聞いて、高遠は優しく微笑む。 本当に優しい微笑みだとなのはは思った。 「貴女がそれを望むのなら、私はこの命を差し上げましょう」 高遠は立ち上がってなのはに近寄り、待機状態のS2Uをもつなのはの右手を握って 自分の首輪に当てた。 なのははやっと、顔を上げる。 核金で体力は回復したはずなのに、青ざめた顔を。 「……な、何をしてるんですか?」 「さあ。これで報酬に、実験の終わりに一歩近付く」 「そ、そんなことできないよ!」 「何故です? 貴女の魔法なら、私をRことは容易いはずだ」 「だ、だって…………私の魔法には……非殺傷設定が掛かってて……」 なのはは最早、自分が何を言いたいのかよく分かっていない。 自分が本当は何を望んでいるのかも。 「非殺傷設定? それはそれは……しかしそれは貴女の任意で解除できるんじゃないですか?」 「……………………」 「そうなんですね? さあ――――貴女の望みを阻む物はもう有りませんよ?」 ずっと望んでいた。 大切な友達に会いたいと。 生きて帰りたいと。 そして今、そのための道は開かれた。 いや、本当は最初から開かれていた。 ずっとそれが見えない振りをしていただけなのだ。 しかしもう、見ない振りはできない。 友を救済するため、修羅の道を行くか否か? 選択の時を迎え―――― ――――そして終わりを迎えた。
53 : 「2人とも、一体何をやっているでゲソー!?」 いつの間にか店内に入っていたイカ娘の声が鳴り響いた。 その後に居る月も、険しい表情をしている。 「これはこれは、予想外に早く帰ってきましたね。2人とも、ご無事なようで何よりです」 高遠はなのはの右手を離し、何事も無かったかのように振り返る。 なのはの手が力なく落ちた。 「ええ、お陰さまで。……それで、何をしていたんです?」 月は冷たい視線を向けるが、高遠は意の介した様子もない。 「実はなのは君が“悪いイカ”である可能性を考慮して、ぶしつけながらその人格を少しだけテストしたいと思いましてね。 2人が不在の間になのは君が私に殺意を向けるかどうか、色々試したのですよ。 で、その結果……」 高遠はなのはの肩に手を置いた。 「合格です。大変失礼しました。今度こそ貴女を心から歓迎しますよ、なのは君」 なのはは俯いたままだ。 「はっはっは! 遙一もまだまだでゲソ! なのはが悪いイカのわけ無いでゲソ!」 「フフフ。まったく、今にして思えば愚かな懸念でした」 なのはの隣に座って、胸を張り豪快に笑うイカ娘は なのはを露ほども疑っていない様子だった。 「分かりました。そういう事情でしたか。……じゃあ、偵察で得た情報を報告します」 「ええ、よろしくお願いします」
54 : 月、高遠、イカ娘、なのはの4人は現在同じテーブルを囲むように座っていた。 高遠と話しながら、月はなのはの様子を見る。 自分が偵察に行く前とは、明らかに気配が違う。 (『少しだけテストした』? “テスト”以上のこと、なのはちゃんに仕掛けたのは明らかだ。 ……まあ良い。これで高遠の尻尾は掴むことができた) 月は高遠を最初から信用に足る人物だとは考えては居なかったが ワカメ海人……慎二に対する拷問の時から、より明確な不審感を抱いていた。 高遠は単純に殺し合いに乗っているわけではないだろう。 しかし高遠には何か人の精神に働きかける、しかも不穏な方向に向かわせる志向があるのではないかと考えていた。 そしてそのことを確認するため、故意になのはと2人きりになるよう仕向けたのだ。 狙い通り、月は高遠の本性を確認できた。 慎二に対する拷問自体は、必要なことかも知れない。 だからそれを行うこと自体に異論は無い。 しかしイカ娘やなのはの純粋さを汚そうとするのなら それは新世界という理想を志す月と、真っ向から対立する志向だ。 そして同時に、そんな人物は殺し合いを生き残るさいの不穏分子でもある。 (『我々は自分と、仲間の安全を守る義務がある』とか言っていたか、高遠? まったくその通りだよ。 そしてそのためには、獅子身中の毒虫は排除するのは当然だな) 月が高遠に向ける視線には、確かな敵意がこもっていた。
55 : 高遠は月の話を聞いて、それを分析していた。 テレビ局には、人の立ち寄った形跡があったそうだ。 ならば中に人が居ると想定して、テレビ局に入るべきだろう。 特別な準備はできないが、予めその蓋然性が高いと知っているのは大きい。 偵察の意味もあったということだ。 もっとも、月の目的はそれだけでは無かったであろうが。 (早い段階から感づかれていたと見るべきでしょうね…………私の本性に) それならばそれで構わない。 誰に感づかれてどれほどの邪魔が存在しようが、自分は自分であるしかないのだ。 人の悪意を嗅ぎ付け、増幅し、殺人へと促す ――――地獄の傀儡師であることしか。 たしかに地獄の傀儡師の眼鏡にかなう者は少ない。 間桐慎二はその選別からもれた。 Vはその悪意の高を計る間も与えられなかった。 高遠の求めに応じられるほど悪意を抱えながら 高遠の人形になれるほど都合の良い人間などほとんど居ない。 しかし殺人者として産まれついた者も居なければ 絶対に悪意を持たない人間も居ないのだ。 これまで高遠の人形になった者も、何らかの事情があればこそ殺人という方法を選んだのだ。 ならば作り出すこともできるはずだ。 充分な悪意を持ち、高遠の良いように操れる殺人人形を。 だがそれも手近な人間から、吟味して選ぶ必要がある。 月はその内に闇を抱えている節はあるが、知略に長けすぎている。 高遠の操り人形とするのは至難。 イカ娘は純粋だが、殺し合いの状況にも危機感が薄く 悪意を植えつけるのには、時間が掛かりそうだ。 しかし、なのはならどうか。 彼女は、たしかに人をRことを良しとする人間ではない。 だが、それ以上に恐怖と言う闇を抱え そして魔法と言う、強大な力を持っている。 本人の話と些細な挙動から伺えるに、戦闘に関しても類稀な才能を持っていることも見て取れた。 しかしその精神は、普通の小学生からかけ離れたものでは無い。 試しに少し揺さぶりを掛けただけで、あっさり動揺を見せた。 なのは小学生としては、強い意志を持っているだろう。 だがその思考や判断には、一貫性や論理性が薄いのだ。 自分の倫理や行動模範を論理的に反省したような形跡は欠片も見受けられない。 あるのはただ感情に基づいた恣意的な判断。 そこにあるのは“子供じみた正義”ですらない、“子供の正義感”なのだ。 それを正義と呼ぶなど、かの名探偵に失礼なほどだ。 彼女の心から闇を暴き、引きずり出し、そして壊してしまえば あるいはかつてないほど面白い殺人人形、いや殺戮人形が産まれるかもしれない。 高遠はなのはに向ける視線には、深い闇があった。
56 : なのはは月が帰って来て以来、俯いて黙ったままだ。 その眼に何を映しているのか その心は何を思っているのか 外面からは推し量ることはできない。 強大な力を秘めた魔法少女は、ただ沈黙を守っている。 余談となるが、なのははある事実の誤認をしていた。 なのはの使うミッドチルダ式の魔法は、肉体的な損傷は伴わず 魔力ダメージのみを敵に与える、非殺傷設定が可能なのだ。 当然なのははこの実験の中でも、その非殺傷設定で魔法を行使するつもりだった。 しかし主催者は、それがどういった意図に基づくものかは不明だが ある能力制限を、なのはに課していた。 それは『非殺傷設定の不可』。 なのはの扱う魔法はいかなる方法でも、非殺傷設定が掛けられない。 すなわち、なのはの放つほとんどの魔法は 容易に人の身を引き裂き、肉を焼き、骨を砕き、内臓を潰す 強大な兵器としかなり得ないのだ。 しかしなのはは、その事実を知らない。 ストレージデバイスであるS2Uもまた、ただ沈黙を守っている。 そしてもし、なのはが自分の愛用していたデバイス『レイジングハート』を入手したら あるいはその時こそ、この実験の中でもっとも恐るべき怪物の産まれる瞬間かも知れない。 なのはの友、アリサ・バニングスの死が告げられる放送の時は近い。
57 : 【H−4/ファーストフード店内 早朝】 【イカ娘@侵略!イカ娘】 [属性]:その他(Isi) [状態]:健康 [装備]:風紀委員会特服『白虎』Sサイズ@めだかボックス [道具]:基本支給品一式、海の家グルメセット@侵略!イカ娘 [思考・状況] 1:とりあえず月と高遠に付いていく 2:栄子、タケルがなにをしているのか気になる 【夜神月@DEATH NOTE】 [属性]:悪(set) [状態]:健康 [装備]:ニューナンブM60(残弾1/5、予備弾数30) [道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1 [思考・状況] 1:イカ娘を利用した、スタンス判別方の模索と情報収集のための集団の結成 2:「悪意」を持った者が取る行動とは……? 3:自身の関係者との接触 4:高遠に警戒 5:イカ娘の純粋さを気に入っています [備考] ※参戦時期は第一部。Lと共にキラ対策本部で活動している間。 【高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ】 [属性]:正義(Hor) [状態]:健康 [装備]:聖祥大附属小学校制服、S2U@魔法少女リリカルなのはシリーズ、核金(シリアルナンバーLXI)@武装錬金 [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 基本行動方針:アリサ、すずかとの合流と、この場所からの脱出 1:?????。 【備考】 ※「魔法少女リリカルなのはA's」、あるいはその前後の時期からの参戦。 ※魔法の非殺傷設定はできません。 ※核金@武装錬金は武藤カズキと蝶野攻爵しか武装錬金にできません。 【高遠遙一@金田一少年の事件簿】 [属性]:悪(set) [状態]:健康 [装備]:カリバーン@Fate/stay night [道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1、サンジェルマンの紙袋@ジョジョの奇妙な冒険 [思考・状況] 今まで通りの「高遠遥一」として、芸術犯罪を行う。 1:なのはを人形に仕立てる。 2:「人形」を作るのであれば人選、状況は慎重に選ぶ。 3:Vに多大な興味
58 : 投下乙! 高遠お前ってヤツは……! しっかりしてるし強大な魔力持ちとは言っても9歳の女の子にそんなことするなんてドS野郎め!(褒め言葉) というかイカちゃんの帽子に体重ってここ二週間の本編ネタ混ぜてくる速さにワロタw
59 : 投下乙! 高遠……いらんこと吹きこみよって……w 外道四天王になるなら結城かこいつだな ジョーカー? ほら、奴は「外道」じゃない、「道化」だ
60 : 投下乙です! いやあ、ロリショタといい何でなのはさんTUEEEE展開になっちゃうのかなあ? どっかの動画を思い出すわ
61 : 投下乙! 高遠が遂に動き出したなあ、さあ何をやらかしてくれるか なのはもイカ娘も放送で大打撃を受ける訳だが…嫌な予感しかしねぇ そんな中、月は一端に主人公っぽく動いてるwこいつがそんな風に動くと妙に違和感がwww
62 : 投下乙 このロワでもなのは無双が始まるんですね解かります
63 : 投下乙です! うわぁ、高遠さんマジ地獄の傀儡師
64 : 投下乙! 高遠のやり方はアニロワ2NDとかわんねえ アニロワ2NDは闇メイドで今回の人形はなんだろう
65 : 投下乙です 高遠UZEEEEEEE! でも、それでこそ『地獄の傀儡師』。 何となく綺麗なライト君と良い感じに対比ができてますね。 そしてなのはが爆弾になりそうだ…これは要注意だ それとイカちゃんカワイイ
66 : 投下乙 高遠は策動し出すし、月は月なりに…イカ娘に心を傾ける月とか新鮮だな なのはは思考が???とかこええええええええっ! そろそろ放送だが…どうなるんだ?
67 : 投下乙 原作の月は女性を見下してるところがあるから、 イカ娘を認める月は好感度が上がるな (高遠は元々月の世界ではノートに名前書かれる側だったとはいえ) かつて月にこんなに危険人物をとめてくれと期待したことがあっただろうか そして高遠はどこでもやること同じだなw 殺し合いの場で殺し合いを誘発する一般人とか 高遠以外がやったら自殺行為以外の何物でもないw
68 : 代理投下します
69 : 背後で発生している火災やら、アイビーが遺した変な植物やらは、当然無視した。 松田は、森を出るべく急ぎ走り出す。 ――早く、たけるくんの元へ! 殺人を犯した興奮もあってか、急がなければ、という焦りはかなり強い。 巴が守っているとは言え、たけるくんから長く離れることが許されるわけがない。 何しろ、此処はいつ悪人と遭遇してもおかしくない場所なのだ。 ……だが、何しろここは森である。 ポイズン・アイビーが死んだため、松田が植物に囚われるようなことは無いものの、 十分に明るいとまでは言えない時間帯で、しかも革靴を履いているから、走るにしては足元の状況は悪かった。 躓いたり滑ったりを幾度か繰り返しつつ、しかし焦る松田は減速することなく森を走る。 そんな風に走っていたから、幾度目かの躓きの際に、彼は本格的に転んでしまった。 しかも転んだ拍子に、右足のすねを木の根にしこたま打ちつけてしまう。 「った! ……クソ!」 思わず悪態をつきつつ、彼は立ち上がる。 ……出血は無いようだし、軽い打撲で済んでいる、と信じたい。 たけるくんが待っているのに、ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。 そうして、立ち上がった松田は再度走り始める。 また何度か躓きつつも、彼はどうにかこうにか森を抜けた。 南東方向に建物を認めてからは、脇目も振らずそこに向かった。 誰にも出会うことなく走り続け、E-10の511キンダーハイムに到着。 そこで待っているはずの巴とたけるくんに合流するため、建物の中に入り、 そこで松田は絶句した。 ――――――――――――――――――――――――
70 : 「……巴! これは……! いったい何があったんだ!?」 巴のもとにやってきた松田は、かなり興奮した様子で問いを発した。 驚きを帯びた問いかけを受けた巴は、しかし無言のまま答えない。 主人の命令は絶対だが、問いかけに答えて出来事を説明するだけの口は、犬にはない。 ただ、巴は松田の足元に移動してお座りの姿勢をとった。主人の次の指示を待つためである。 だが巴の視線の先、彼は、アタフタとした様子だ。 軽くパニック状態の主人は、しばらくして再度言葉をひねり出し…… 「巴、たけるくんはどこに……、 あ、イヤ!!」 何かを思いついたらしい主人は、小さく声を上げた。 少し思考が落ち着いたのか、彼は、その場に軽くしゃがみ込み、そのまま巴の目を見つめる。 「巴。今からお前にいくつか質問する。 質問の、お前の答えが『はい』なら、短く1回吠えてくれ。 ……逆に、『いいえ』なら、吠えずに黙っていてくれ」 そんな命令を巴に下した彼は、念を押すように質問した。 「……今の命令の内容、理解できてるな?」 もちろん、巴は理解できている。 「ガウッ!」 ――――――――――――――――――――――――
71 : 我ながら良い方法を思いついたな、と松田は思う。 この方法ならば、犬の巴にも答えられるだろうから。 ここ、511キンダーハイムにいるはずのたけるくんは、しかし何故か消えていた。 土まみれの若い女の子の死体と共に、巴がいるだけの状態。 松田がいない間、ここで何かがあったのだ。 松田は、目の前の女の子の死体を見やる。 まさか巴がこの子を殺したのかとも思ったが、それは多分ないだろうとも思う。 パッと見た感じ自殺のようで、しかも、すぐ傍の地面の穴から引きずり出されたようだから。 この子は自殺し、その死体は一旦埋められた。その後、この子は掘り出された。 誰がそうしたのかは、もちろん分からないけども。 ――まさか、たけるくんはこの死体を見て、……怖くなって逃げた? 松田の頭の中で、そんな物語が思い浮かぶ。 「巴。この女の子は、お前がここに来た時には、……もう亡くなっていたのか?」 「ガウッ!」 「お前はこの子を埋めたのか?」 「……」 「じゃあ、掘り出したのはお前か?」 「ガウッ!」 なるほど、と松田は考える。 誰かがこの子の死体を埋め、それを巴が掘り出した。 犬の嗅覚は人のそれよりもかなり鋭い。きっと死体の発する臭いなり何なりに気づき、この子を掘り当てたのだろう。
72 : 「……たけるくんは、この死体を見てパニックになったのか?」 「ガウッ!」 松田の想像通りの、巴の返答。 やはりたけるくんはこの死体を見てパニックになり、そして怖くなってここを去ったのだ。 「お前なぁ……」 巴を思わず責めたくなるが、今は何も言うまいと逆に思い直す。 たけるくんに死体を見せるな、なんて命令は出していないし、そもそも巴は犬だ。そんな気遣いは期待できないだろう。 ……この時、松田がもし『たけるくんは死体におびえてここを去ったのか?』等と聞いていれば、その後の展開は違っていただろう。 だが、松田は早合点するというミスを犯した。 自分の想像通りのことが起こったと思い込んだから、たけるくんと巴が誰かに襲われたなどと考えもしなかった。 ここは、悪人といつ何時出くわしても不思議でない環境なのだと、自覚しているにも関わらず。 「……たけるくんが、どこに行ったか分かるか?」 「ガウッ!」 「本当に分かるんだな?」 「ガウッ!!」 「じゃあ、たけるくんの所へ案内してくれ。たけるくんを保護しに行くんだ」 そう命令し、松田は腰を上げる。 巴は、地面の匂いを嗅ぎながら進み始めていた。
73 : 【E-10 511キンダーハイム 庭/一日目・早朝】 【松田桃太@DEATH NOTE】 [属性]:その他(Isi) [状態]:健康、右足のすねに軽い打撲 [装備]:背広と革靴、コルト・ニューサービス(弾数2/6)@バットマン [道具]:基本支給品一式*2、ジョーカーベノムガス噴霧器@バットマン、巴の笛@MW、松田桃太の遺言書、不明支給品1〜3 [思考・状況] 基本行動方針: 謎を解き、実験を辞めさせ、犯人を捕まえる。 1:キラのような悪は殺害する。 2:巴についていき、たけるくんを保護する。 3:弱者を守る。 [備考] おそらく、月がキラの捜査に加わってから、監禁されていた時期を除く、ヨツバキラとの対決時期までの何れかより参戦。 たけるが、相沢栄子の死体におびえて511キンダーハイムを去ったと思い込んでいます。 ※巴が、命令者の質問に答えるようになりました。 質問の答えが『はい』なら一回吠えます。『いいえ』なら吠えません。 代理投下終了です 巴は賢いな。もしかしたら松田より賢いかもw このままだとパンドラと遭遇か。いやな予感しかしねえw 題名は『早合点』です。 あ、最初に書き手本人が本投下は明日午後になると書いてたのに今気が付いた。ごめんw;
74 : タイトル通りの早合点乙w今日からお前松田なw それはともかく。 火事が、火事がぁっ! このままではヤバイw やるときゃやるかと思ったがやっぱり……w 巴かわいいよ巴。
75 : 投下ありがとうございます。 修正すべき点もないようですから、 本投下は>>73 で完了したものとしてください。
76 : 投下と代理投下乙! 巴とコミュニケーションとる方法思いついたまではよかったんだけど…… 詰めが甘い所はやっぱり松田ァ!w 巴は賢いなァ、こりゃ結城が可愛がりまくるわけだ
77 : このロワの三大癒し イカ娘 ヴァンプ将軍 巴 三人(二人と一匹)とも素晴らしい安定感
78 : 全うな萌え?がイカちゃんしかいない!
79 : 投下乙。 ところで、原作未読で511キンダーハイムの構造を知らないんで質問なんだけどさ、 『相沢栄子の死体があった場所=巴がいた場所=511キンダーハイムの庭=511キンダーハイムの入り口』 で、いいのかな? Forest Of The Redの最後の文で、巴は511キンダーハイムの入り口で松田を待っていたように読めるんだけど。
80 : >>78 よし、貴様にはフェイトそんのRを穿いたパンドラ様をやろう
81 : ヴァンプ将軍は… 登場話の描写とか読んだらパピヨンとある程度打ち解けてるなぁ パピヨン、けっこう気難しい、いや持ち上げるとけっこう鷹揚になるタイプでもあるか ただ、今の所は問題無いが根本な部分で揉めたら… いや、役に立つ内はまだ大丈夫…か?
82 : >>79 言われて初めて気づきました。確かに、少し違和感がありますね。 お恥ずかしながら、私も原作未把握のため511キンダーハイムの構造を知りません。 修正を入れた方がよろしいでしょうか?
83 : ヴァンプ将軍はごはん担当という重要な役割が(ry
84 : ところでヴァンプ将軍の戦闘力はどうなってるんだろう アニメでヴァンプ将軍が他勢力の組織に襲われた回では アーマータイガー君が助けに来てフルボッコにしてたけど… そのアーマータイガー君の上司だし、ああ見えて案外強かったりするのか? サンレッドも「自分が強すぎるだけでフロシャイムの怪人は強い」発言してるし
85 : ヴァンプは将軍とはいえ本部付きじゃなくて支部の指揮官だから、戦闘力は怪人に劣る(戦闘員二人>ヴァンプ>戦闘員一人)くらい 多分このロワで言うと設定的には松田以上バットマン以下、あるいはルンゲ以上ロールシャッハ以下くらいじゃないかな まあ原作で戦闘描写がないから、どういう扱いでも構わないんだけどもね
86 : ルンゲはロベルトと戦って勝ってた位に強いから、一般人以上なのは間違いないよな。 それでヴァンプと比較できるってもんでも無いけど。
87 : >>84 アニメ版DVDの封入特典にキャラの戦闘力が記載されてるサンレッドカードというのがあってな……。 ヴァンプ将軍の戦闘力はサンレッド(ノーマル時)と大差なく、戦闘員よりはるかに強い。 それを抜きにしてもアニメ版ではアーマータイガーと同等以上の実力を持っている。
88 : 問題はどういう風に強いか、描写が一切ないからわからないってことだな 筋力や瞬発力が強いのか、超能力的なものが使えるのか、はたまた耐久力が高いのか デルズの箱をタイガーに運んでもらってたり草むしりで結構疲れてるところを見るに、身体能力はさほどでもなさそうだが
89 : >>88 草むしりとかのくだりはギャグ描写だしねw アニメ版ではアーマータイガーが止めるまでもなく、 ドッズのパンチを余裕で避けれたような感じで描かれていたよ。 漫画版で今の所判明してるのは大半の怪人よりは耐久力があることぐらいかな。
90 : そんなに強かったのかヴァンプ将軍… てっきり一般人よりは強いぐらい?としか思ってなかったわ
91 : でも二時間正座したら足がしびれるんだぜ?
92 : >>91 ヴァンプ将軍が戦闘能力を発揮する場面はないけど 他作品の強豪たちが二時間正座をする描写もない、と考えたい。 シャッハさんやバットマンも二時間正座すりゃ痺れるかもしれん。
93 : チキチキ正座耐久レースを開いちゃうオジマンディアスという電波を受信した
94 : カードに準拠だとかよ子さんの戦闘力はウサコッツと同程度……。
95 : そこはむしろ「ウサコッツの戦闘力はかよ子さんと同じくらい」って表現すべきだろw
96 : あの数値は精神力も加味されているに違いない
97 : ウサコッツは子供には危害を加えることが出来ないんだっけ ロワにいたら辛い特性だよなw
98 : 怪人なのに戦闘員より弱いんだぜ。
99 : もしこの先ヴァンプ将軍が無双する話があったらシュールすぎるなw
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