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あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part312


1 :12/06/15 〜 最終レス :12/06/29
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part311
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1337584697/l50
まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/

     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!


     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。


.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。


2 :
今週は以上です。
人間とエルフvs超獣軍団の決戦。どんでん返しの連続ですが、たのしんでいただけているでしょうか。
さて、大いなる使命を持ってやってきた新東方号の冒険もそろそろ要点に差し掛かってまいりました。
冒頭、ティファニアの言葉にありましたが、争いの原因とは相手の立場に立って考えられないことに大きな原因があると筆者は思います。
実はこの言葉、ウルトラシリーズのある方がおっしゃっていたことで、筆者としてはウルトラシリーズで一番好きな言葉であるので
筆者なりの解釈と意味を持たせてテファに言わせてみました。
ですがヤプールも黙っているわけもなく、そろそろ本気でアディールを滅ぼしにきました。エースはパワーアップした超獣軍団に勝てるのか?
そして、新たに現れた怪獣とはなにか。クライマックスは近いです。
追伸:あと、たびたびですみませんが来週も休みます。モチベーションは回復して、大筋は整っているのですが、なにせ二部の締めですから
最高の出来にしたく、書いては納得いかなくて書き直しを繰り返しているうちにあっというまにストックがなくなってしまいました。
楽しみにしてくださる方には大変申し訳なく思いますが、投稿速度のために内容を妥協しては本末転倒です。また、読み物は
どんなものであっても質がすべてであり、小細工をもちいてのごまかしは絶対にやりたくないので、再来週の進み具合によっては
隔週にすることもあるかもしれません。
やっと代理完了。 次スレ建てる前に容量オーバーさせてしまい申し訳ありませんでした。

3 :
ウルトラさん、代理&スレ立てさん乙
読むの久しぶりでもなんとなく分かるってのはウルトラマンぽくていいな

4 :
ゴモラや、ゴモラが来たで

5 :
サボテンダーがマザリュースに改造されるのにはついニヤリとした。
>>4
まさかエースと他の怪獣たちに“ウルトラリンチ”されたりして・・・?

6 :
ルイズ〜

7 :
>>5
ウルトラシリーズの黒歴史のことは言うな

8 :
皆さんこんばんわです。誰もいないようでしたら、
これから十時に投稿したいと思います

9 :
どうぞ

10 :
それでは、始めたいと思います。
 ここ最近、トリステインの貴族の間では『ある問題』を抱えていた。
『土くれのフーケ』と呼ばれる、神出鬼没な盗賊のことだ。
 性別年齢出身、その全てが謎に包まれているその盗人は、高価な宝石や陶芸があるところ必ず現れ、その巧みなテクニックで華麗に盗み出している。
 分かっていることは、そのフーケが、かなりレベルの高い『土』系統のメイジであることだけ。時に堅固な壁を文字通り『土くれ』に変えて侵入したり、
巨大なゴーレムを使役して力任せに強行突破したりと、その時その時で応変に対応して攻めてくるのだ。
 おかげで、今のトリステインの噂ではフーケで持ち切りとなり、貴族達は下僕に剣を持たせてみたり、『固定化』などの防御魔法で対策を立てたりするものの、
未だにフーケを捕えるどころか、その正体すら掴めないでいた。
 そして今、フーケはあるマジックアイテムの所在を突き止め、それが保管されている場所、トリステイン魔法学院へと忍び込んでいた。
     第七幕 『土くれの盗賊』
「さすがは魔法学院本塔の壁ね……物理攻撃が弱点? こんなに厚かったら、ちょっとやそっとの魔法じゃどうしようもないじゃないの!」
 時刻はもはや夕暮れ。大きい月が二つ重なる夜の中、塔の壁に垂直に立つ人物が一人。
五階の宝物庫の丁度外壁に立ち、足で壁の厚さを測っていたフーケが、やり切れなさそうに呟いた。
 『錬金』で穴を開けようにも、強力な『固定化』の呪文のおかげで思うようにいかず、唯一頼りにしていた情報『強力な衝撃には脆い』も、
この厚さでは容易に突破できない。
 まず十中八九、見つかってしまうだろう。やるにはあまりにリスクが高すぎる。
 どうしたものか…と考え込むフーケの耳に、何やら話し声が聞こえてきた。
 そちらに視線を移すと、ルイズ・キュルケ・タバサの三人がいがみ合いながら中庭へとやって来た。
正確には、ルイズとキュルケの後をタバサが追っている形なのだが。
 ここにいては見つかる。そう思ったフーケは、とりあえず身を隠し、彼女達の成り行きを見張ることにした。

「ケンシンに相手にしてもらえないなんて、ツェルプストー家の名折れねぇ、キュルケ」
 ルイズが、ここ一番というばかりにしたり顔でキュルケを見た。
ルイズからしてみれば、実力容姿ともに勝ちの目が薄い(負けてるとは絶対に思っていない)
キュルケに対して、今だけ唯一反撃できるこの状況は楽しいことこの上ない。
「あらあら、ちょっと上に立てたからってまあそんな大はしゃぎしちゃって、相変わらずヴァリエール家は単純ねぇ、ルイズ」
 キュルケも、負けじにそう言い返す。その口調に焦りや怒りなどはない。むしろルイズと比べてもまだまだ余裕そうな雰囲気を漂わせている。

 二人がこんな風に睨み合っているのには、当然ながらワケがある。
武器の購入も終わって、あの後部屋でしばらくしていると、急にキュルケ達がやってきた。
何でも、剣心のためにと、ルイズ達が訪れたのと同じ武器屋に行って、そこでゲルマニア産の高級な大剣を仕入れてきたのだという。
 一瞬、旗色が悪そうに顔をしかめたルイズだったが、剣心は感謝の意を感じながらも、それを丁重に断った。
「ルイズ殿にも言ったけど、拙者には逆刃刀がある。この剣以外の武器を扱うつもりはござらんよ」
「オイ相棒、ってぇことは俺も使ってはくれねえってことか?」
 不満げに漏らすデルフを、剣心は担ぎ上げると、鞘から取り出して刀身を見た。
斬れるのか、と思うくらいに錆び付いた状態だったが、特に剣心は気にしなかった。
「喋る剣なんて、拙者のいた場所だったら想像もできなかったから、それだけで充分興味を引いただけでござるよ」
 それに聞きたいこともある、と剣心はデルフにそう呟くと、今度は少し一人にして欲しい、とルイズ達に告げた。

11 :
支援でござる

12 :
「だから、その剣は拙者なんかにではなく、将来本当に自分を大切にしてくれる殿方のために、取っておくでござるよ」
 優しい笑顔でそう返されると、キュルケも何も言えなくなり、剣心がデルフを持ってドアを閉めるまでただ目を丸くして呆然と立っているだけだった。
 次の瞬間聞こえたのは、ルイズの高笑いだった。
「――あっはっはっはははぁ!! ねえ今どんな気持ちよキュルケ? ねえねぇ!!」
 正直、デルフより高級そうな大剣を見たとき、どうしようと本気で悩んでいたルイズだったが、それをあっさりと断られたときのキュルケのあの表情。
 それを思い出して、久々に腹を抱えて、涙まで流して笑い転げるルイズに対し、キュルケはピクリと眉を釣り上げてルイズを睨んだ。
 その後の展開は、最早推して知るべし。当然のことながら口論ではとても解決できず、熱も上がってやがて決闘にまで発展していった。
「あたしね、あんたの事、大っ嫌いなのよ」
「気が合うわね、あたしもよ」
 二人の間には、かつてないほどの緊張感が漂っていた。
 こうなった以上、剣心だろうとタバサだろうと止められない。
 やがて、真っ赤な髪をかきあげながら、キュルケがせせら笑うように言った。
「確かに、プレゼント勝負では負けを認めるけど、あたしはあんたと違って攻める手段を沢山持っているのよ」
 嘘ではない、言葉の端々からそう感じるルイズは、平常心を保ちつつも反撃した。
「フンだ、色仕掛けやプレゼントなんかしても、あんたのなんてケンシンは受け取らないわよ」
「あらぁ、あんたにどうしてそんなことが言えるのかしらぁ?」
 ここぞとばかりに、顎に手の甲を添えてキュルケは高笑いする。
「別にケンシンは、今回が『剣』だったから拒否されただけであって、それ以外を受け取らない保証なんて無いじゃないの!!」
 うっ、とルイズは言葉を失う。確かに、たまたま買うものが被っただけだったから良かったものの、もし別の物だったら、
剣心の性格だ、喜んで受け取っていたことだろう。
 平常心平常心…と心の中で呟くルイズに対し、キュルケの口撃は続く。
「ケンシンは確かに、他の男と違って難攻不落だけど、それはあたしとて望むところ。恋は燃えれば燃えるほど強く舞い上がるものよ」
 キュルケは未だに剣心を諦めてはいない。むしろ、中々射止められないことに対して、やる気で満ち溢れているようだった。
 先程の余裕もどこへやら。完全にキュルケのペースにはまってしまったルイズは、ギリと歯を食いしばって耐えるしかなかった。
「ま、あたしが何もしなくても、いずれあんたに愛想を尽かしてケンシンもあたしの元へ来るでしょ。
ゼロのルイズの使い魔なんて、彼もさぞかし不憫でしょうからね!!」
 この発言が、ルイズの『平常心』という紐を断つ、止めの一言となった。
ただ、怒りに身を任せて杖を引き抜くと、なんの躊躇いも見せずキュルケの顔面に向けて『ファイアー・ボール』の魔法を放った。
 一瞬ギョッとしたキュルケだったが、間一髪スレスレのところを何とか回避した。ルイズの魔法はそのまま、本塔のあらぬ壁へと激突し、爆発を起こした。
「…まったくもう、危ないじゃないの。顔に傷が付いたらどうするつもりよ」
 キュルケはそう言うと、さっきまでの余裕な笑みを消し、鋭い眼でルイズを睨みつけ、胸から杖を取り出した。
ルイズも、それに答えるように杖を前に構える。
 この一触即発の空気の中、どうやって二人の仲を取り持とうかと思案するタバサの目にふと巨大な影が目に写った。
 やがてルイズとキュルケにも、その存在に気づき、そして目を疑った。
 夜の闇に紛れて、そこには巨大なゴーレムが佇んでいたのだ。

13 :
―――そんな事態が起こる、少し前のこと。
「…で、聞きたいことってぇのは何でぇ?」
 あの後剣心は、どこか人目につかない、廊下の突き当りくらいの所まで来て、誰も見ていないことを確認すると、
ゆっくりとデルフの柄を手にとった。
鍔を浮き出し、カチカチ鳴らせながらデルフは聞いた。
「まぁ、そうでござるな…」
 しばらく考え込んでから、デルフが出し抜けに言った『使い手』という言葉を使ったのを思い出し、まずそれを聞くことにした。
単純に、自分の実力を見抜いての発言かもしれなかったが、それでも何故そうもハッキリと言い切れるのか、それはそれで腑に落ちないからだ。
 しかし、デルフの答えは、そんな剣心の予想の、斜め下をいった。
「うーん、勘」
「か、勘って……」
「わかんねえよ、俺も。ただお前さんに握られたとき、ビビッときたんだ。コイツなら俺を使いこなせるってな」
 その後も、剣心は出来る限りの思いついた質問をぶつけてみた。
 どこから作られたのか、この世界についてとか、左手のルーンについても聞いてみた。
しかしデルフの答えは、「知らない」「忘れた」「思い出せねぇ」の三つしか言わず、何とも要領の得ない回答ばかり。
 流石の剣心も、これには落ち込んだ。
「買った意味がないでござる……」
「まあまあ、そう落ち込むな。その分ちゃんと働くからよ!!」
「いや、だから拙者はこれ以外に使わないって…―――」
 がっくりと肩を落とす剣心の前に、ふと大きな影が覆いかぶさった。窓の外には、石で出来た巨人が立っていた。
 フーケは、ゴーレムの上でルイズ達を見下ろしながら、薄ら笑いをしていた。
 先程飛んでいった魔法は、偶然か否か、丁度宝物庫を納めている壁に当たった。
 強力な『固定化』をかけているにも関わらずその壁には、爆発音と吹き上げる煙の向こうに、大きなヒビを残していった。
 まさに思わぬ僥倖。フーケはそう思うと、そのヒビ割れた壁に向かってゴーレムの巨腕を叩きつけた。
 その瞬間、ガラガラと大きな音を立てて壁が崩れ落ち、ポッカリと大きな穴があいた。
 その中に侵入したフーケは、多々ある秘宝の中から、一つの黒い箱に手をかけ、蓋を開けてその中身を確認した。
 あった…。フーケはニヤリと口元を歪ませると、杖を振って壁にこう刻んだ。
 『破壊の剣と英雄の外套、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
 そう書き込むと、用済みとばかりにゴーレムの肩に乗り、そのまま闇へと消えていった。
 その場に残ったのは、呆気にとられたルイズ、キュルケ、タバサの三人と、慌てて駆けつけた剣心だけだった。

 その次の朝、学院は慌ただしい騒がしさで包まれていた。
 優れた実力を持つ教師の目を掻い潜り、堅牢な城塞を突破して、秘宝を奪われたのだ。
 当然、その喧騒は留まることを知らず、教師たちは互いの責任の擦り合いをしていた。
 やがて、機を見てオスマンが騒ぎを治めると、コルベールに尋ねた。
「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この三人です」
 コルベールがそう言って、後ろに控えているルイズ達を差した。その中に剣心もいたが、平民で使い魔のためか数には入れなかった。
「ふむ、君たちか…詳しく説明してくれるかね?」
 ルイズ達は、昨夜の起こった事態をありのままに説明した。
 一通り聞き終えたあと、今度は今まで不在だった秘書のミス・ロングビルが、興奮した様子で現れた。
 何でも、逃走中のフーケを見たという農民がいたらしく、そのことについて詳しく調査したところ、
森の近くの廃屋に黒いローブを羽織った人間が入っていったという情報を掴んで来たようだ。
 早速、フーケ捜索を名乗る同志を、オスマンは募り出したが、案の定誰も名乗りを上げない。王室へ報告しよう、という案も出たが、
それをしている間にフーケは逃げてしまうだろうということ、みすみす侵入された魔法学院の沽券にも関わるということで却下された。

14 :
(沽券とか、今はそういう問題なのでござるか…?)
 心中で呟く剣心の前で、ふとルイズが杖をあげた。その光景に、一瞬誰もが驚いた。
「ミス・ヴァリエール! 何をしているのです? あなたは生徒ではないですか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか!」
 ルイズがキッとなって叫んだ。確かにそうだ、皆が皆、『誰かがなんとかしてくれる、だから自分はやらなくていい』
そんな安堵と不安の入り交じった表情をしている。
 だからルイズが杖を上げても、一斉に反対したりせずにガヤガヤと話し込むだけだった。
 どうもここの教師達は、心身共に頼りないなあ…と思う剣心をよそに、今度はキュルケが杖を上げた。
「ヴァリエールには負けられませんわ」
 そして、次に間髪いれずにタバサも掲げた。
「タバサ、あんたはいいのよ。関係ないんだから」
「……心配」
 一言、そう呟くと何故か剣心の方を向いた。興味のあるような瞳で。キュルケは、そんなタバサに抱きついて嬉しそうに言った。
「ありがと、タバサ!」
 そしてそれを見たオスマンが、笑ってルイズ達を見据えた。
「そうか、では頼むとしようか」
「いやいやいや…本気でござるか……?」
 誰よりも先にそう言ったのは、教師ではなく剣心だった。何故自分達ではなく生徒達に、犯罪者の潜む危険なところへ追いやろうとするのか、理解できない。
 ルイズ達の身を案じての発言だったが、それを制してオスマンは言った。
「彼女達は敵を見ている。それに君が言うほど、この子達はヤワじゃない」
 そう言うと、オスマンは深い瞳でタバサの方を見た。
「ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておる。実力もお墨付きじゃろうて」
「えっ? 本当なのタバサ!」
 キュルケやルイズはおろか、教師たちですらその言葉に、驚きでざわついた。
 本人はとぼけた表情をしているが、『シュヴァリエ』の称号は、純粋に行なった偉業の数によって与えられる、いわば実力の証明でもあった。
 最下級とはいえ、それをこんな年端も行かぬ少女が持っているのだから、周囲は驚きを隠せない。
「そして、ミス・ツェルプストーは、ゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、彼女自身の炎の魔法も、かなり強力と聞いているが?」
 次いでそう言うオスマンの言葉に、キュルケも自慢気な表情で『心配無用』とばかりに剣心を見た。
 それを恨めしげな瞳でルイズは睨みながら、次は自分の番とばかりに胸を張った。
 オスマンは、一瞬言葉が詰まった。褒めることが何もないのだ。しばらく心の中でう〜んと唸りながら、言葉を探り探りにして選ぶように言った。
「ミス・ヴァリエールは……その、数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女で、うむ、なんだ……将来有望なメイジで、しかもその使い魔は!」
 何故かさっきより熱っぽく語るように、オスマンは剣心の心配そうな表情を見た。
「平民ながらあのグラモン元帥の息子である、ギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという噂だが」
「そんな、たいしたことはしてないでござるよ」
謙遜しながら、剣心はそう言った。オスマンにもそれが伝わると、キラリと目を光らせてこう言った。
 「彼女達は行く気満々じゃ。さっきの通り、この子らは有能な実力者じゃし、お主も主人と共に搜索に行ってくれるじゃろ?」
「それは…まぁ」
 どこか納得いかないような様子で、剣心は頷いた。
 オスマンは思った。ギーシュとの決闘、あの時見せた実力が本物なら、決してフーケ相手にも遅れをとったりしないだろう。
ましてや、彼があの伝説のガンダールウなら――。
 隣でコルベールが、興奮して何か言いたそうなのを目で制して、改めてオスマンは四人を見つめた。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」
 それに応えるように、三人は直立し、「杖にかけて!」と唱和してスカートの裾をつまみ、恭しく礼をした。剣心も、取り敢えず頭を下げて彼女達にならう。
 こうして、剣心達一行は、フーケ搜索のため目的の廃屋へと出発することとなった。

15 :
さて、今回はここまでです。そして一つお知らせがあります。
実は途中で失踪したりしないよう、予めストックを書き溜めておいたのですが、
それが四十近くを切ったので、(この時点で原作で五巻辺り)投稿スペースを週に二つにしていこうと思います。
なので、明日また次を投稿したいとお思います。本日はどうもありがとうございました。

16 :
乙です!
明日も楽しみにしてます
うーむ…しかしどうなるのか
デルフを使わせるために逆刃刀がフーケの錬金で分解されてしまうとか、
…そんな展開じゃないよなあ…
むしろニュー刀と師匠のマントも来そうだけど

17 :
マントの師匠と聞くと俺はレオを思い出すなあ

18 :
乙でござる
四十ストックとかすごいな
ストックしまくるタイプはちゃんと完結することが多いから安心して読める

19 :
乙でござる
ガトリングガンかアームストロング砲を予想していたよ

20 :
そこまでゴツいのは流石に銃・砲の類いとわかるんじゃね?

21 :
銀魂のキャラを召喚したら宝物庫にネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が置いてあんのかな。
ストーリー展開上そんな形状の物を盗まなきゃならないおマチさんに涙。

22 :
なあに、中にはザクUを盗もうとしたオマチさんだっていたんだ。どうってことない。

23 :
そういやザクバズーカを盗み出したおマチさんもいたなあ…

24 :
テファのためとはいえ、おマチさん少しは仕事選べ

25 :
ピンサロとか?

26 :
>>15
投下乙です

27 :
>>21
蝮Zとかかもしれんぞ?

28 :
才人のジョイスティックは精密ドライバーくらいの価値はあるのかな

29 :
ただまぁ…剣心も鬼じゃないから
デルフにも「ゴーレムを切るだけの簡単なお仕事」くらいはさせてくれるさ!
というか魔法の世界の初見の巨大土ゴーレムに愛用の逆刃刀を仮借なくぶち込めるもんなのかなぁ、と。
地面に叩き付けてるのと大して変わんないだろ。

30 :
>>29
『土竜閃』

31 :
20:58頃から続きの投下を行ないます。

32 :
すみません。ファイルがクラッシュしてしまったので、修復し直します。また後で

33 :
楽しみにしております

34 :
るろ剣こないな・・・

35 :
スパーダの人さん、修復頑張ってください。
さて遅れてすみませんでした。
これから三十分丁度に、予定通り投稿を始めようと思います。

36 :
支援

37 :
それでは、始めたいと思います。
 フーケ搜索の任を、仕方なくも受け入れた剣心は、ルイズ、キュルケ、タバサと案内役のミス・ロングビルと共に馬車に乗り、目的地である廃屋に向かっている最中だった。
 ゆっくりと、しかし確実に進んでいく馬車の中で途中、キュルケが不思議そうな顔でロングビルに聞いた。
 何故面倒な案内役を自らかって出たのか?それを受けて、ロングビルはどこか遠い目をして、こう返した。
「いいのです。私は、貴族の名をなくしたものですから」
 しかし、キュルケはますます不思議そうに首をかしげた。彼女はまがりなりにも学院長オールド・オスマンの秘書役である。貴族でないものを何故雇ったのか。
「…オスマン氏は、貴族とか平民とかに余り拘らない御方なんですよ」
 それに一度は納得したのだろうが、しかしキュルケの好奇心はもう止まらない。今度はどうして貴族の名をなくしたのか聞き始めた。
 それを見とがめたルイズが、キュルケの肩をつかんで押し戻した。
「何よ、ヴァリエール」
「よしなさいよ。昔のことを根掘り葉掘り聞くなんて」
 一瞬、本当に一瞬だが、その言葉を聞いて剣心がピクリと反応した。
ルイズとキュルケ、御者のロングビルは気付かなかったが、本を読みながらも、視線を剣心に向けていたタバサだけは、その仕草を感じ取った。
「暇だからおしゃべりしようと思っただけじゃないの」
「あんたのお国じゃどうか知りませんけど、聞かれたくないことを無理やり聞き出そうとするのは、トリステインじゃ恥ずべきことなのよ」
 そして今度は、フッとにこやかな笑いを見せた。無論タバサ以外はわからない。
次に顔を上げると、相変わらずの飄々とした表情に戻ってから剣心も言った。
「キュルケ殿、人には語りたくないものが、必ず一つや二つあるでござるよ」
「ん〜、ケンシンがそう言うなら」
 と、今度はキュルケは剣心に抱きつき、それを怒りの眼で睨んで叫ぶルイズ。相変わらず本から顔を上げないタバサをよそに、
やがて目の前に鬱蒼とした森が広がってきた。
     第八話 『騒がしき日』
「ここから先は、徒歩でいきましょう」
 森に入ってある程度進んでから、ロングビルが出し抜けにそう言った。
 皆もそれに習い、馬車を降りて小道を歩く。
 しばらくすると、広い空間の中に一件の小屋が見つかった。人気は感じないことからまず間違いなく空家だろう。
「私の聞いた情報だと、あの中にいるという話です」
 ロングビルはそう言いながら、森の中から指差した。
 ふと、何か腑に落ちないような表情で剣心は言った。
「思ったことがあるでござるが…その情報に真偽は確かでござるか?」
「え、ええ。とある情報から得た確かな筋です」
 少し焦ったような顔をするロングビルに対し、剣心はその目に疑問の色を強くする。
キョトンと様子を見ていたキュルケが、覗き込むような感じで聞いた。
「何かおかしいことでも? ケンシン」
「……どうにも、怪しい」
 剣心は顎に手を当て考える。思い返せば返すほど、そう感じるのだ。
まず学院にあっさり侵入した点。確かにザル警備だったとはいえ、それでも過去誰一人侵入を許したはずのない学院の宝物庫になぜ簡単にも入ることができたのか。
 次に、フーケの居場所があっさりバレてしまっている点。今にしても思うが、聞けばフーケは神出鬼没で正体すらつかめない謎の盗賊だという。
そんな大盗賊が、こんなにも容易く居場所を発見されるドジを踏むだろうか?あったとしても十中八九罠に違いない。剣心が、ロングビルに真偽を確かめた理由もこれだった。
最後に、何でわざわざ休息にこんな小屋を選んだのか。まだ中にいるとしてもあまりに無防備だ。昨晩のゴーレムを使えば、追跡や追っ手をいくらでもまけるだろうに、
まさか途中で疲れて休憩が必要になるほど、無計画だったわけでも無いだろう。

38 :
 慎重な盗人ほど、作戦や計画は「あらゆること」を想定して練り込む。当然、「この小屋の中にいては見つかるだろう」という危険も、
正体不明を隠し通してきた盗賊ならば視野に入れるはずなのだ。居場所が漏れる情報の点も踏まえると、ますます怪しい。
 このことから、剣心は一つの答えを導き出した。これまでの事態は、仕組まれている可能性があるということ。そしてもう一つ――。
「拙者の推測では…恐らく学院に潜り込んでいる者がいる」
「それって…内通者がいるってこと!?」
 その言葉に、ルイズとキュルケが息を呑む。そう考えれば、この状況にも納得がいく。
何かを理由に、学院に住み着いていれば、見取り図や侵入に役立つ情報を得るのは造作もない事。おまけに、こうやって誘い込む情報を流して逃亡の手助けをしたり、
何かしらの目的があって、待ち伏せするように仕向けることも容易なはずだ。
 フーケに手引きをしている誰かがいる…。辺りに重い空気が流れた。
「当たらずとも遠からず、とも思うでござるか…どう見るでござる? ロングビル殿」
 剣心は、涼しげな顔をしてロングビルを見つめた。
 ロングビルは、何故か剣心のその眼を逸らせないまま、冷や汗を流してどう言い繕うか考えていた。
やがて、震えているとはっきりわかるような言葉で、ロングビルは言った。
「はい…まあ…そうですね…よくよく考えると…フーケを見たという情報は、確かに自分でも怪しかったような気も――」
「そっちではござらんよ。拙者が聞きたいのは、学院でそういった類の者は居なかったか…そこを聞きたいのでござる」
 可笑しそうに苦笑しながら剣心は言った。別に高圧的ではない。寧ろ親しみを覚えるような笑顔なのに、何故かそれが逆にロングビルにプレッシャーを与えていた。
 実はもう、剣心は気付きかけていたのだ。
 彼女こそが、土くれのフーケ本人、もしくはその内通者なのだろうと。
勘や推測が多くを占めているが、これまでの彼女の行動と言動、それらを踏まえ、そして自身の『読み』に絶対の信頼を置いている剣心は、まず九分九厘そうだろうと読んでいた。
ロングビルも、そういった剣心の雰囲気を察したのだろう。察して、何も言い返せないからこそ、ロングビルは黙って剣心の目を見るしかない。
そしてそれが、剣心の中の確信をより強くしているのだ。
だから、端から見れば何でもないただの質問のはずなのに、ロングビル本人にはまるで問い質すように聞こえるわけなのだ。
 そんな困った様子のロングビルを見かねて、キュルケが助け舟を出した。
「とりあえずさあ、中に入ってみない? それから考えても遅くないと思うけど」
「そ、そうです! 結論を出すにはその後で良いと思います!!」
 ここぞとばかりに、ロングビルが堰を切った。
確かに、ここで机上の空論をしていても埒があかない。むしろ本当は今、偶然に偶然が重なってフーケを本気で追い詰めているのかも知れない。そういう可能性もまたゼロではない。
 ここでその話は、一旦打ち切ることにして、今度はどうやって小屋に潜入するかの作戦を考え始めた。――そして一つの案がタバサから出された。
 作戦の案は、こうである、
まず一人が囮を兼ねた偵察役になり、小屋の周辺を探索する。
フーケが中にいたら、挑発して誘き出す。
囮を追ってフーケが外に出たら、そこを全員で一斉に攻撃する。
 要は奇襲である。何もさせずにとっとと倒す。シンプル故に強力である。
肝心の囮役は満場一致で、本人も含めて剣心に決まった。
「では、行ってくるでござる。そっちは任せたでござるよ」
 行く際、剣心は微笑みながらそう言うと、タバサだけ何故か畏まったように深く頷いた。
つまるところ、その言葉の意味を深く受け止めたのは、タバサ一人だけということだった。
 剣心は、隠れる素振りすら見せずに悠々と小屋に近付いた。
素人が見れば、ただ歩いているようにしか思えないが、戦闘においては、それなりに熟練者であるタバサは、その歩き方一つにも感心を覚えた。
 気配をまるで感じない、足音一つ立てていない。
 仮にあんな風に歩かれたら、目の前から近づいてきても気づくのに時間がかかるだろう。
 そう感じるほど、敵意や殺気を綺麗に消し去っていた。
 ゆっくりと、そして堂々と小屋にやってきた剣心は、窓から部屋を見て中を窺ったが、人気は感じなかった。

39 :
(やはり罠か……仕方ない)
 一回りして部屋を見渡して、やはり誰もいないことに剣心が確認すると、改めて扉の横壁に立ち、――少し腰を落とした。
 横のドアを見据え、ルーンの刻まれた左手で鍔を弾き、右手でゆっくりと柄に手を置く。
静かに流れる時の中、暫くそうして佇んでいた剣心が―――遂に動いた。
カッと眼を見開いてから刹那、右手で逆刃刀を完全に抜き放ち、扉を一閃。斬り裂いた。
それから間を開けず、素早くドアを蹴り飛ばすと、荒々しくも中へと潜入していった。
そして、再び辺り一面が静まり返った。
「………っ……」
 その一連の動作を、端から見ていたルイズ達はポカンと口を開けていた。
殆ど瞬足に近い動きだったが、何よりも驚いたのは、剣を抜く瞬間まで殺気を隠しきっ
ていたことだった。
 腰を落として構えてからは、表情の変化や気配の機微を、少しくらい変えてもいいはず
なのに、扉を斬り飛ばすまで何の気配も悟らせなかった。
そして抜き去ってからは抜き去ったで、とにかく速い。そして流暢で一切の無駄がない。もし今、フーケが仮眠中であれば、この奇襲は一溜りもないことだろう。
こういった経験は、これが初めてでは無いのかもしれない。でなければこうも綺麗に相手の不意を突くことなんてできないはずだ。
――それがタバサの感想だった。
 そしてそれは、ルイズ達にも近い感想を抱かせていた。
「ねぇ、彼……私達の力無しで…自力でフーケを倒してくるんじゃないの……?」
 ポツリと呟くキュルケの言葉が、それを端的に表していた。
その隣で、それを肯定するかのように、ロングビルが真っ青な表情で小屋を見つめてい
た。
 しばらくの沈黙の後、斬られた扉の中から剣心が一人で現れた。
刀を持っていることから、警戒はしているのだろうけど、大きな危険は感じないようだった。
手を大きく振って、ルイズ達に呼び掛けると、彼女達も恐る恐る小屋へと近付いた。
「フーケはいたの?」
「いや…やはりもぬけの殻でござったよ」
 部屋に招き入れながら、剣心は言った。
フーケの気配は勿論、あらゆる罠を想定して潜り込んだが、中身は散らかったあとだけで特に怪しいものはない。
「あの…私、周辺に何かないか偵察してきま―――」
「いや、フーケのいない今、ロングビル殿の情報が唯一の手掛かりでござる。偵察はキュルケ殿に任せて、何か気になることはないか探して欲しいでござるよ」
 相変わらずの喰えない表情で剣心はそう言うと、今度はキュルケの方を向いて頼み込んだ。
案の定、剣心の言うことならと、キュルケはそのまま偵察へと赴いてしまった。
 どうやら、あくまでも手元に置いて監視する腹づもりのようだ。ロングビルはそう感じた。
しかし、これでもう、ここを離れる理由がなくなってしまった。無理を言って現場を離れようとしても、絶対に剣心は納得しないだろう。
 少しでも妙なマネをすれば、さっきから背中を見張っているタバサが勘づくだろう。
今は何とかしてやり過ごすしかない。そう思ったロングビルは、形だけでも探索を始めた。
 やがて、ルイズがチェストの中から、黒い箱を見つけると、それを剣心達に見せた。
「もしかして、これじゃない?」
 期待を込めた口調で、ルイズは箱の中身を見るために蓋を開けた。
 そしてそれを見て、――剣心は驚きで目を見開いた。タバサも、何だろうと視線を箱の方へと移した。
 その後ろで、ロングビルがニヤリと口元を歪ませた。

40 :
(何で……これが、こんなところに…?)
 中に入っていたのは、なんの変哲もない、ただの刀だった。刃の色合いや錆び具合からするに、相当昔の業物のようだ。どうやらこれが『破壊の剣』らしい。
 しかし、剣心が驚いたのは、もう一つの方、『英雄の外套』と呼ばれるマントだった。
 白を基調とした二メイル程もある大きな衣は、ずっしりとした重量感をもって、丁寧に折りたたまれていた。
 剣心は、このマントのことを見たことがあったのだ。しかも幾度となく。珍奇で妙な形のそれは、一度目に入れば忘れるはずがない。これは―――。
「きゃああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
 不意に聞こえたロングビルの叫び声で、剣心は我に帰った。
 後ろを振り向けば、窓の外から巨大なゴーレムが誕生し、その影で剣心達を覆っていた。
 悲鳴の主、ロングビルは慌ててゴーレムから逃げ出そうとするも、その腕に掴まれてしまい、高々と宙に打ち上げられた。
「た、助けてくださぁぁぁぁぁぁ……―――」
 力なく叫ぶ懇願も届かず、そのままロングビルは、思い切りゴーレムに投げられてしまい、森の中へと落ちていった、
「ケ……ケンシン…」
「――御免なさい」
 ルイズが小さく剣心の背中に隠れ、タバサが申し訳なさそうに頭を下げる。
外では、キュルケのファイアーボールがゴーレムに命中しているが、いかんせん大きすぎるだけに効果が薄いようだ。
 何故あのマントがあるのか、ロングビルが本当にフーケなのか、とりあえず今はそんな疑問から頭を離す。
 ひとまず、この状況をどうにかしなければな…そう考えた剣心は、手に持っている逆刃刀を構えた。

41 :
とまあ、ここで終了です。今回は少なめですみません。
取り敢えず、これからはこんな調子で投稿できたらなぁ、と思います。
それではお付き合い頂きどうもありがとうございました。

42 :
乙です!

43 :
破壊の剣とは何なのか
火竜倒せそうなの結構いるしなあ
安慈が遼当てに使ったとみた

44 :
うーん…
実は師匠じゃなくて読みきりの戦国の三日月の方のマントで、
破壊の剣も彼が持っていた刀とか

45 :
修復がようやく終わったので、1:11に投下したいと思います。

46 :
Mission 29 <禁断の魔法薬> 後編
「スパーダはあたしの使い魔よ! だからあたしのものなの! 秘書のおばさんは黙ってて!」
「誰がおばさんだい! 私はまだ23だよ! ガキのくせして、威張るんじゃないよ!」
夕日は徐々に沈み、宵闇が訪れようとしている中、ルイズとロングビルは互いに罵り合いながら激しく取っ組み合いを始めていた。
ロングビルに至っては理知的な秘書の装いをかなぐり捨て、素の状態を晒しだしている。
ルイズは腕っ節は強いもののそれは同世代のひ弱な生徒達に限る。相手は大人であり、かつては土くれ≠フフーケとして修羅場を潜り抜けているロングビルであり、実力差は歴然としていた。
二人とも草地の上を転がり、体を汚しながら自分達が愛したスパーダを巡って争い合う。
(何だこれは)
二人を尻目にスパーダはルイズとロングビルが落として割れていたワイングラスの破片を手にして匂いを嗅いでいる。ルイズ達がおかしくなったのはちょうど、このグラスのワインを飲んでからだ。
そして、ほんの僅かだが破片に残っていたワインの匂いの中に違和感があり、何か別の物が混ざっていることを察していた。
それがグラスに注がれる前から入っていたことはあり得ない。あのグラスおよびワインは元々、モンモランシーが用意したものである。
くるりと、スパーダは座り込んでいるギーシュとモンモランシーの方を振り向いた。
状況が理解できず唖然としているギーシュであったが、モンモランシーはこそこそと地を張ってこの場から離れようとしていた。
「Freeze.(待て)」
スパーダの冷徹な呼びかけに、モンモランシーはびくりと体を竦めて固まった。
まずい、まずい。惚れ薬を作ったことがバレたりしたら……ただではすまない。
モンモランシーの全身からどっと冷や汗が溢れ出る。……恐る恐る、後ろを振り向くと。
「どういうことか、説明してもらおう」
悪魔のように冷徹な視線で見下ろす、スパーダの姿がそこにあった。
視線を浴びせられるだけでも恐ろしい瞳で見つめられ、モンモランシーは震え上がりながらこくりと頷いていた。
本来ならばこの後は夕食の時間であったのだが、スパーダはルイズとロングビルを女子寮のルイズの部屋へと運んでいた。
二人はやたらとスパーダにくっ付いてくる上に「スパーダに触れていいのは自分だけ」などと叫んでは喧嘩を続け、あまりにもやかましいために閻魔刀の鞘と柄による当身で昏倒させることでようやく静かになったのだ。
気絶している二人をベッドの上に預けると、スパーダは腕を組みながらくるりと振り返り、連れてきたモンモランシーを見やる。
「あのワインに何を仕込んだ?」
単刀直入に、スパーダはモンモランシーに問いかける。モンモランシーは青い顔をしながら気まずそうに呟いた。
「ほ、惚れ薬です……」
「惚れ薬って……! モンモランシー! それはご禁制の品じゃないか!」
付いてきていたギーシュが驚き、大声を上げる。

47 :
「そんな大声を出さないでよ! バレたりしたらあたし、タダじゃすまないのよ……」
「だったら、何でそんな物を作ったんだね。君の言うとおり、バレれば莫大な罰金か牢獄行きなんだぞ。もしも君がそんなことにでもなれば、僕は……」
詰め寄ってくるギーシュに対し、俯いていたモンモランシーはいたたまれなくなって突然大声で叫びだす。
「……大体、あなたが悪いのよ! ギーシュ!」
「え、ええ?」
唐突に逆上しだしたモンモランシーに、ギーシュは面食らっていた。
きっとギーシュを睨みつけ指差してくる彼女の目元には薄っすらと、涙が浮かび上がっている。
「あなたがミスタ・スパーダとばかり一緒にいるから! あたしのことなんか放って!」
「な、何を言っているんだね。僕は毎日、君の気を引こうと必死だったじゃないか。それにスパーダ君の稽古を受けていたのは、君を守れるように強くなるためで……」
「だからって! あたしはあなたに変わって欲しくなかったのよ! キザで、ナルシストなのが本当のギーシュなのよ! それがミスタ・スパーダから稽古を受けているうちにすっかり変わって……」
嗚咽を漏らしながら号泣するモンモランシーの悲痛の言葉にギーシュは唖然としていた。
「……それで、僕に惚れ薬を飲ませようと?」
「他の女の子に浮気されるのも……ミスタ・スパーダとばかり一緒にいられるのも嫌よ……。あたしの知らないギーシュに変わってしまうのも……。」
ギーシュはモンモランシーを守れるような強い男になるべく魔剣士スパーダから地獄のような特訓を受け続けていた。
その結果、以前と違って自分の力に自信がついたし、己の力量も見極められるようになった。
思えばアルビオンから戻ってきてから他の女子達と付き合ったことなど一度もない。モンモランシー一筋だった。
スパーダと共にいることで、そして彼の影響を受けることでギーシュは以前とは全く違う存在へと変わりつつあった。
「モンモランシー……そんなに僕のことを」
だが、ギーシュはモンモランシーの本当の気持ちに気づいてあげられなかった。彼女は苦しんでいたのだ。愛する人と共にいられない寂しさと、彼女の知らない存在へと変わってしまうのが。
顔を両手で覆って泣き続けるモンモランシーの体を、ギーシュはがばっと抱き締めた。
「ごめんよ。君の気持ちに気づいてあげられなくて。愛する人を悲しませるなんて、僕は貴族失格だ。……だが、信じてくれ。僕は僕だ。
ギーシュ・ド・グラモンという名の一人の人間だよ。決して、君の知らない男になんかなりはしない」
モンモランシーは涙でぐしゃぐしゃになってしまった顔を上げ、間近でギーシュの顔を見つめていた。
「僕はずっと、君の永遠の奉仕者だよ……」
モンモランシーの顎を持ち上げ、ギーシュはその唇に接吻をしようとする。モンモランシーも目を瞑り、自分の唇を重ねようとした。
「……ふげっ!」
バシッという音と共にギーシュは情けない声を上げていた。
スパーダが閻魔刀の鞘でギーシュの頭を小突いたのだった。
「後にしてもらおう」
「……や、野暮天だなぁ。君は」
頭を擦りながらギーシュは渋い顔でモンモランシーの体を押し出してスパーダを見やる。
せっかく良い所だったのに邪魔されたのが不服だったモンモランシーも彼を恨めしそうに睨みつけていた。

48 :
支援だ

49 :
「それで、あの二人を元に戻せるのか」
顎で未だ目を覚まさぬルイズとロングビルを指すスパーダ。
対するモンモランシーは困ったように顔を曇らせていた。
「うう……一応、解除薬を作れば何とか。でも、惚れ薬を作るのに希少の材料を全部使っちゃって……」
「それは何だ」
「ラグドリアン湖に住んでいる水の精霊の涙、という秘薬なんだけど……。闇屋であたしが買ったのが最後の物だったのよ……。おまけに入荷がもう絶望的らしくて」
「何故だ」
以前、読んだ本にその水の精霊とやらの説明を見たことがある。そいつは人間よりも遥かに長く生きている存在であり、六千年前、始祖ブリミルが生きていた時代から存在していたという。
水の精霊の涙というのはその精霊の体の一部であり、水のメイジが交渉することによって手に入れるものだという。
「話によると、その水の精霊達と連絡が取れなくなってしまったそうで……」
「それじゃあ解除薬は作れないということじゃないか」
ギーシュはどこか他人事のように言う。下手をすれば自分が飲んでいたというのに呑気な発言だった。
「でも、しばらくすれば元に戻るはずだし、ミスタ・スパーダだって、別にあの二人が相手だったら悪くは……」
「まあ、その道をとるのも悪くはないかもしれん。私は待ってやっても良い」
嘆息しながら言ったスパーダに、モンモランシーも安堵の顔を浮かべる。彼が納得さえしてくれればこちらもこれ以上は……。
「だが、あれだけの効き目だ。他の者達、特に教師達が彼女達の状態を見ればその異常に気づかぬはずはない。とりわけ、オスマンなどはな」
淡々と言葉を口にするスパーダに、モンモランシーはうっと唸った。
あまりに豹変した彼女達が目立ちすぎると、その異常を教師達が調べることであろう。そして、惚れ薬を使われたということが分かれば必ず捜査が入る。
……ずっと隠し通せるとは思えない。
「それでバレても私は知らん」
「……分かったわよ! じゃあ、近いうちにギーシュがラグドリアン湖に行って秘薬を直接、取ってくれば良いんでしょう!」
「お、おい! 僕が行くのかい! 第一、水の精霊は水のメイジの交渉が必要なんだろう?」
突然、自分を指名されてしまったためにギーシュは慌てた。
「あたしは嫌ですからね! 水の精霊って滅多に人前に姿を現さないし、ものすごく強いのよ! 怒らせでもしたらたいへ……」
モンモランシーは言葉を止め、絶句していた。
気づけば、スパーダの手にはいつの間にか一丁の短銃が握られており、その銃口をモンモランシーの顔面に突きつけていたのだ。
「お、おい! やめてくれ! 何をするんだね、スパーダ君!」
思わずギーシュはスパーダの腕を掴み懇願する。
「己の責は自分でとれ」
「はい……」
スパーダは別に怒っているわけではないのだが、モンモランシーは異国の貴族としての威圧感に背筋を震わせた。
観念したモンモランシーは、がっくりと肩を落としていた。スパーダも銃を収める。
「では明朝、出発することにする」
「明朝って……学校はどうするのよ!」
「一日休んだくらいでどうにもなりはせん」
冷たく突き放すスパーダに、モンモランシーは大きな溜め息を吐き、頭を押さえていた。

50 :
その時、抱きついていたルイズの腕が突如として離れだし、さらには体もスパーダから引き離されていた。
部屋の中には、コモン・スペルの念力による魔力が感じられるのが分かる。
「きゃああっ! 助けて、スパーダ! 助けて!」
振り向くと、引き離されたルイズは天井付近に浮かばされてじたばたともがいている。
さらに身に着けていたマントがするすると外され、ルイズの体と両手を器用にロープのように縛り付けていた。
「痛いっ!」
「子供はそこで大人しくしてなさい」
いつの間にか目を覚まし、杖を握っていたロングビルが冷たい顔で床に落ちたルイズを睨みつけていた。土くれのフーケとしての本性を現したその表情には秘書としての装いは全くない。
「ふんだ。婚期を逃したおばさんになんてスパーダの相手は勤まらないもん!」
「言ってなさいな。小娘め」
冷笑を浮かべ鼻を鳴らすと、ロングビルはスパーダに近づいていった。
艶かしい顔を浮かべ、そっとスパーダの胸の中に抱きつく。
「さ、あんな子供なんて放っておいて、私達だけで楽しみましょうよ……」
スパーダの頬にロングビルの細い右手が伸び、左手の指先がツツッとスパーダの胸元でなぞられていた。
その姿はさながら妖艶な女悪魔に等しいものであり、並みの男ならばこの誘惑に負けてしまうかもしれない。
同じタイプのキュルケが霞んで見える。
(ネヴァンみたいになってしまったな……)
思わず溜め息を吐くスパーダ。
かつてスパーダが魔界にいた頃、魔帝ムンドゥスの勢力に共に属していた上級悪魔妖雷婦<lヴァン。
スパーダが戦いを終えると毎度のように誘惑をしてきて迫ってきたあの女。娼婦そのものであるあの女は魔界でも珍しい享楽主義者であった。
一時の強い刺激を味わうのが趣味であるネヴァンは幾度となくスパーダに誘惑を繰り返してきたものだ。
彼女にとっては魔界も人間界もあまり関係がなく、ただ自分の楽しみのためだけに生きている。
スパーダが魔界と決別する際も魔界も人間界も関係なく、ただより強い刺激を味わうためにスパーダと戦い、結果として封じられたのだ。
「だめ! だめよ! スパーダはあたしの使い魔なんだから! あたしだけのものなのよ! 他の女の人は近寄っちゃだめぇ!」
後ろ手に縛られているルイズは喚きながらも暴れ、何とかマントを外そうとしていた。
そんなルイズのことを無視し、ロングビルはスパーダの顔を悩ましげに見上げながら彼の顎に手をやった。
「ねぇ……覚えている? あなたが私のゴーレムをそこの破壊の箱やあなたの剣で粉々にした時のこと……。あの時は本当に痺れちゃったんだからぁ……」
本当にどうでも良いことを引き出して、話題を広げようとしている。
「私はもっと刺激を味わいたいのよぉ……。今夜は私の部屋へいらっしゃって。こんな小娘なんかと朝まで過ごすことなんてないわ……」
「断る」
本心ではない中途半端な感情で、そんなことをされてもスパーダには良い迷惑だ。
身も心も、人生さえも捧げる覚悟もなしに悪魔と契約の契りを交わすなど、御免こうむる。
「ほらやっぱり! 23のおばさんなんかにスパーダが振り向くはずないもん!」
未だ縛られた手を何とかしようと躍起になっているルイズが勝ち誇ったように言った。
「ふん。主人と使い魔の関係でしかスパーダと繋がりを持てないくせに、威張るんじゃないよ」
だが、ロングビルも負けずに余裕の表情で言い返す。

51 :
「そんなことないもん! スパーダはあたしのことをちゃんと認めてくれてるもん!」
「あら。何だかうるさい犬がさかり鳴いているようね。……ほら、もう行きましょう。こんなうるさい所にいたって、何にもないわ。今夜は私が付きっきりで相手をしてあげる……」
ルイズを無視しスパーダに寄り添ったままのロングビルは自ら扉を開け、外へと出ていった。
「嫌だぁ! スパーダぁ! そんなおばさんなんかと一緒にいちゃだめぇ!」
その後、女子寮を離れていったスパーダは夕食をルイズの元へと運ぶためにロングビルと共に食堂を訪れていた。
「おいおい……あの秘書さん、ミスタ・スパーダとできてるのか?」
「意外と一緒にいる時が多かったみたいだけど、まさかあそこまで進んでいたのか……」
「あんな大人の女性に寄り添われて……うらやましいなぁ」
普段は決して見せぬ妖艶な大人の魅力を発揮するロングビルがスパーダに寄り添っている姿を、食堂中の人間が唖然としながら見つめていた。
男子達はあんなに美人な大人の女性を傍に置いて引き連れているスパーダをうらやましく思い、スパーダに憧れている女子達はロングビルが殿方に寄り添っているのが悔しくて、嫉妬を露にした表情で睨みつけていた。
そんな様々な思いのこもった視線を受けながらもスパーダは給仕をしている最中のシエスタを見つけて近づく。
「何よぉ。こんな平民の娘なんてどうでも良いじゃない……」
「シエスタ。すまないが、ルイズの元へ食事を運んでやってくれ」
(スパーダさんは……ミス・ロングビルのことが好きなのかな……)
ロングビルを無視して話しかけてきたスパーダを振り向いたシエスタであったが、傍に寄り添っているロングビルを目にすると哀しそうな顔を微かに浮かべていた。
二人とも色々と事情があって正式な貴族ではないのだという。時々、シエスタは二人が一緒にいる所を見届けており、お互いに気が合う様子に悔しさを感じていた。
やはり、元貴族同士の方が良いのだろうか……。シエスタはスパーダがロングビルに惹かれてしまうのではと、いつも不安であった。
そして今、こうして自分の目の前でまるで恋人のような姿を見せつけている……。
「彼女のことは気にするな……」
スパーダはべったりとくっ付いているロングビルに鬱陶しそうな顔で呻いていた。
(あれ? でも、スパーダさんのあの態度じゃ……)
そのスパーダの様子を見て、シエスタはロングビルが一方的に彼にくっ付いているということを察し、安心していた。
自分にもまだまだチャンスはある。
「はい、かしこまりました。スパーダさん達もごゆっくり……」
微かに笑みを浮かべ、シエスタはちらりと冷たい目でロングビルを睨みつけていた。
そしてスパーダに言われたとおりに食事をルイズがいるであろう女子寮へと持っていく。
「わたしも……負けられないっ」
道中、誰ともなく強く意気込むシエスタであった。
ロングビルがこの状況では食堂で夕食をとるわけにもいかないため、教師達のテーブルに用意されていた自分達の食事を持って夜のヴェストリ広場のベンチへと移動していた。
そこでのロングビルは二人分の食事がちゃんとあるというのにスパーダに自分の食事を「ほらぁ。口を開けて。私が食べさせてあげるわ……」などと言って与えようとしたのだ。
スパーダは無視して黙々と自分の食事を口にしていたのだが、ロングビルはあまりにもしつこくスパーダに食いついてきた。
これがもしもネヴァンだったら、容赦なくその身を閻魔刀で貫いて大人しくさせていただろうが、彼女は人間だ。そんなことはできない。
「もぅ……あなたが悪魔だからってそんなに冷たくしないで……。それとも、人間の私なんて興味がないのかしら?」
「さてな」
惚れ薬の効果が出ている状態では何を言っても無駄だ。だからスパーダもよほどのことがなければ生返事しかしないことにした。

52 :
「ああ……。明日はどうしようかしら。テファに会いに行くのもいいけど、それじゃあスパーダがあの子になびきそうだし……」
「悪いが、明日は急用ができてしまった。明後日以降に回してもらう」
「どこへ行こうというの……私を一人にしないで。それだったら、私も一緒に行かせてもらうわ。私はいつまでもスパーダと一緒よ……」
(付き合いきれん……)
黙々と食事を続けつつ、スパーダは娼婦のように様々な誘惑の言葉を囁き続けるロングビルをあしらっていた。
食事を終えたスパーダはそのままルイズの部屋に戻るとまた厄介なことになりそうだったので、このまま外で夜を明かそうとしたのだが、ロングビルが本塔の自分の部屋へと連れ込んでいた。
外で構わない、とスパーダが断っても「あなたが一緒に寝てくれないと、安心して眠れないのよ……」と言って無理矢理引っ張っていったのである。
おまけに扉にはロック≠フ魔法までかけて。
秘書である彼女の自室は平民用の宿舎と似たような質素な部屋であった。小さな机とベッド、そしてチェストがあるのみである。
スパーダはその机に備えられた椅子に腰掛け、閻魔刀を抱えたまま眠りにつこうとしていた。
ロングビルは目の前に男がいるにも関わらず衣服を脱いでいき、やがて生まれたままの姿となった。
「もぅ……そんな所で座ってないで……こちらへいらっしゃいよ……」
ネグリジェに着替えることなく、ベッドの上にしゃがみこむロングビル。胸元をシーツで隠し、まるで焦らすように誘う姿はとても魅力的なのかもしれない。
普通の男ならばこんな状況になりでもしたら、たまらずに抱きついたり押し倒してしまったりするであろうが、そこはスパーダである。
魔界の女悪魔の扱いさえも熟知している彼は相変わらず無視を続けていた。
「ねえったらぁ……」
シーツを体に巻きつけ、スパーダの元へ歩み寄るとロングビルは顔を彼の首筋に近づけ、優しく息を吹きかける。
その時であった。
扉がガチャガチャと乱暴な音を立てて開けられようとしていた。しかし、ロックの魔法がかけられているために力ずくで開けるのは不可能である。
ロングビルは扉の方をちらりと向き、僅かに顔を顰めたがすぐに鼻を鳴らす。
ここはもう二人だけの世界だ。誰にも邪魔はさせない。
「気にしないで……。今夜は私達二人だけで楽しみましょう。そうだわ……ここにいる時は私のこと、マチルダって呼んでちょうだいな……」
無表情のまま瞑目しているスパーダの口元に、ロングビルの唇が触れようとしたその瞬間……。
――ズドンッ!
鋭い炸裂音と共に扉が粉々に吹き飛んだ。
あまりに予想しなかった状況にロングビルは慌てて振り向く。
「スパーダは渡さないわっ!」
杖を構えて立つ、ルイズの姿がそこにあった。
シエスタが夕食を届けに女子寮へ赴いた時、ルイズはようやく縛られていたマントを外すことができた所であった。
現れたシエスタは食事のトレーをルイズに差し出したものの、物凄い剣幕で「スパーダはどこに行ったの!」などと叫んで追求してきたため、思わずシエスタは怯んでしまった。
あの後、スパーダはロングビルと食事を持って食堂とはどこか別の場所へ行ったのだけは確認したがそれ以上は分からなかった。
ルイズは乱暴に食事を奪い取り、部屋に閉じこもると貴族としての慎みなど全くない、やけ食いのような速さと動きで夕食を胃袋につめこみ、スパーダとロングビルを捜し求めて学院中を駆け回っていたのであった。
道中、運悪くルイズと遭遇してしまったギーシュとモンモランシーからもスパーダ達の居場所を聞き出そうとして、杖を突きつけて脅したりもしていた。
その時のルイズの表情は、まるで鬼か悪魔のようなものであったという……。

53 :
「ちっ、まったく無粋な小娘だねぇ! 私達の時間を邪魔するだなんて!」
「スパーダはあたしのものなの! 年増のおばさんは一人で寝ていればいいんだわ!」
椅子に腰掛けているスパーダにルイズも抱きついた。
「スパーダ。ご主人様を一人にしないで。あたしと一緒に眠ってよ。使い魔が一緒じゃないと、安心して眠れない」
「ふざけるんじゃないよ! あんたみたいな小娘にスパーダが振り向くものかい!」
ルイズを突き飛ばしたロングビルはスパーダの体にがしりと強く抱きついた。その拍子にシーツが剥がれ、彼女の細くしなやかな裸体が露となる。
尻餅をついたルイズは顔を顰めてロングビルを睨みつけた。
「やったわね! 許さないんだもん!」
ルイズは杖を振り、シーツを念力で浮かべてロングビルの顔を包み込んだ。
「むぐ! むぐ!」
「ファイヤー・ボール!」
そして、間髪入れずにとても小さな爆発の魔法を叩き込み、ロングビルを吹き飛ばす。
威力が抑えられたその一撃では昏倒することはない。
「この小娘め!」
ロングビルも机の上に置いておいた己の杖を手にし、身構える。
「決闘よ! 決闘! どっちがスパーダといっしょに眠る権利が……」
『Shut up.(黙れ)』
突如、微動だにしなかったスパーダが地の底から響くような恐ろしい声で呟いた。
思わず、二人はその声に身を震わせて振り向く。
見ると、スパーダの全身から赤黒いオーラが煙のように吹き出ている。
『Why you can't even sleep in quiet? Foolish scum.(お前達は静かに眠ることもできんのか? 愚か者が)』
悪魔としての本性を露にしたスパーダは瞑目したまま、腕を組んで喋り続ける。その静かな声は明らかに、怒りが込められている。
下手をすれば、抱えている閻魔刀を抜き出すかもしれない威圧感を発していた。
『For me any more, don't wrath.(私をこれ以上、怒らせるな)』
その一言を最後に、スパーダの全身からオーラが静かに消え失せていた。
ロングビルとルイズはごくりと息を呑み、スパーダを見つめていたがやがて互いに睨み合う。
だが、その口からはもうこれ以上、互いを罵る言葉は出なかった。
「……今夜だけよ。ここにいていいのは」
「明日からは、スパーダには指一本触れさせないもん」
床に座り込んだ二人はスパーダの膝に寄りかかったまま、眠りについていた。他の女がスパーダの近くにいるだけで我慢ならなかったが、これ以上暴れればスパーダが本気で怒るので自重する。
二人が愛する男は静かに眠ることを望んでいる。ならば、その願いを叶えるために二人は今にも互いに魔法をぶつけてどかしてやりたいのを必死に抑えていた。
※今回はこれでおしまいです。ラブコメパートを書くのが苦手なので、あまり長続きしない……。
そして、自分で書いておいてなんですが、スルースキル高すぎただろうか……。

54 :
>>49>>50の間抜けてる?
>>49で未だ目を覚まさぬ〜って書いてあるのに、>>50で唐突にルイズがスパーダに抱き着いてるんだが。

55 :
最近萌え萌えの人来ないなあ、前は毎週投下してくれてたのに

56 :
>>54
確認してみたら何という不覚なり……。
それじゃあ、そこの>>49>>50の間部分追加します……。

57 :
(本当はこれを使っても良いのだがな)
モンモランシー達が去った後、部屋に残っていたスパーダは懐から二つの青く光る星形の石を取り出す。
ちらりと、まだ目を覚まさない二人とその石を交互に見比べていた。
あらゆる毒を浄化し、肉体を正常な状態に戻すという触れ込みのホーリースターだが、別に毒だけを浄化するというわけではない。
肉体を内側から侵食している存在であれば、それが純粋な毒物でなくても構わない。それこそ、彼女達が飲んでしまった惚れ薬とて同じことだ。
心を操作する力のある魔法の薬であろうと、それさえも浄化できるはずである。
これを今すぐこの二人に使ってやっても良いのだが、この世界における適切な解決手段があるのであれば可能な限りそちらに任せるべきである。
それに、その水の精霊とやらを直接目にする良い機会なので、ちょうど良いきっかけができた。
(交渉次第では使わざるをえんが)
もちろん、水の精霊の涙が手に入らなければ即座にこれを使わせてもらおう。
その時まで、スパーダはこの二つの青い霊石を懐に納めることにした。
「ん……んん」
その時、ベッドの上に横たわっていたルイズが目を覚まし始めた。
先ほどスパーダの閻魔刀の一撃がみぞおちに決められたせいでまだ少し痛む。だが、それは自分がいけない子だからということは分かっている。
むくりと体を起こしたルイズは自分が愛するスパーダが部屋から出て行こうとしているのを目にし、思わず声を上げた。
「……いっちゃだめぇ!」
そのままベッドから飛び下り、スパーダの背中に体当たりしながら抱きつく。
……ああ、まるで父様みたいに大きくて逞しい背中。こうしているだけで、不思議とスパーダが父親のように思えてしまう。
ギーシュが厳しい特訓を通して彼を父親のように思うのと同じように、ルイズもスパーダの父親のような包容力をその身に感じ取っていた。
彼が本当は悪魔であることも、忘れてしまいそうだ。
「あたしを置いていかないでっ。もっとあたしのことを見てよぉ!」
スパーダは夕食をシエスタに頼んで持ってこさせようとしていただけなのだが、目を覚ましたのであればこのまま連れて行っても構わないだろう。
「食堂に行くだけだ。君も来ればいい」
「だめっ! 外に出たら他の女の子と仲良くしちゃうわ! そんなの嫌っ! ずっとここにいるの!」
相当、惚れ薬によって心が変異させられてしまっているようだ。普通の惚れ薬ならここまでの効果はないだろう。水の精霊の涙とやらの力が効いているのだ。
「飢え死にしたければそれでも構わんが」
スパーダは冷徹に一蹴しようとするがルイズも諦めない。
「いいもん。スパーダさえいてくれれば、何もいらないもん」
「……とにかくここで待っていろ。シエスタに頼んで食事を持ってきてやる」
「だめっ! あのメイドの所に行って仲良くするつもりなんでしょ? そんなの許さないんだから」
ぷくっと頬を膨らませたルイズはスパーダの体を抱く腕に力を込め、離れようとしない。
「スパーダはあたしの使い魔だもん。だからご主人様のお相手をしなきゃだめなんだもん」
拗ねた子供のように反抗するルイズに、彼女の本心ではないとはいえいい加減スパーダも辟易としてきた。
「他の女の人なんてどうでもいいの。ご主人様のあたしだけを見て?」
これ以上、付き合っていても埒があかない。スパーダは無視を決め込み、ルイズに抱きつかれたまま部屋を出ようとした。
>>49>>50間、不足分。1レスのみ。不覚でした……。

58 :
乙です

59 :
パパーダ乙です。

60 :
ザボーガーの人や三重の異界の人もできれば生存報告してほしい

61 :
ルイズタンぼくのおよめさん

62 :
誰かゲートキーパー召喚しないかな

63 :
ウルトラマンゼロ召喚はもう他所であったから、ウルトラマンジャンヌがハルケにやってこないかな
ルイズ「サイト!わたしウルトラマンになっちゃった!」
才人「いや、お前女だから『マン』じゃないだろ!」

64 :
>>62
主人公なのに続編ではヒロインと結ばれず非業の死を遂げていた浮矢俊とか?

65 :
ニャル子さんのアニメから見て原作よんだら、何故かゼロのミーディアム思い出した。なんかノリってかパロやシリアスの方向が似かよってなーって
帰ってきてくれないかなぁ銀様
ニャル子から召喚するならニャル自身は召喚されてもアレすぎてヤバそうだから、ハス太なら相性良さそうだな。中の人的にも

66 :
むしろルイズの中にイースの偉大な種族が押しかけてくる、と

67 :
イース……果てしない冒険の旅に出るのか。
そして最後はかぶと虫になってコロニー落としされる……

68 :
>>66
つまり、魂魄とはイースの偉大なる種族のことだったんだよ!
な、なんだってー!(MMR)

69 :
九時からデュープリズムゼロ第二十五話投稿します。
長い事不在にしてましたが…

70 :
第二十五話 『閃光』
「フム…圧倒的ですな陛下。」
眼前にて繰り広げられるトリステイン軍と神聖アルビオン王国軍の戦闘を見やり裏切りの子爵ワルドは冷酷な笑いを浮かべて同じく戦場を見つめるクロムウェルへと声をかけた。
「あぁ、だが予想よりもトリステイン軍は健闘しておるようだな。どうやら王女自ら前線に立っている事が奴らの士気を高めておるのが大きいか。」
「ですが既にレキシントンある限り制空権は絶対的に我等の物です。それに…ククク…私よりも腕の立つ幻獣のりはトリステインには居りませんからな。」
「ハハハ、頼もしいな子爵。」
ワルドの言にクロムウェルは上機嫌に笑う。神職に就いていたこの男には戦の事はよく分からない部分であったが自軍が圧倒的に有利なのは素人目から見ても理解が出来る。
もはや制空権を奪われたトリステインはそれを覆さぬ限りどれだけ勇猛果敢に奮戦しようと勝てる見込みはあろう筈も無い…
「フム…しかし子爵、君はどこか退屈そうに見えるな。」
「はい、恥ずかしながら私はどこまで行っても所詮戦士ですからこれ程までに一方的な戦は些かに退屈でして…」
「ハハハ、勇ましい事だな。」
曖昧な取り繕った笑顔でクロムウェルにそう言ったワルドは義手で強く拳を握ると視線は遠く、地平線に隠れそうな魔法学園を恋い焦がれるような思いで見つめていた…
(どうしたガンダールブ、ルイズ生きているのならば私の前に現れて見せろ!!)
「『ハッ……クシュンッ!!!』……う゛〜…誰かあたしの噂でもしてんのかしら…」
盛大なクシャミを一つしてミントは高高度の冷えた風を浴びて思いの外冷えた自分の身体を抱くようにして前方の船団を睨みながらヘクサゴンを飛ばす。
「それもこれも全部あいつ等のせいよ…ボコボコの地獄巡り決定ね。」
ミントの乗るヘクサゴンは魔法学園からこの戦場へと直行してきた為、偶然とは言え丁度トリステイン軍と真正面から戦闘を行っているアルビオン軍の柔らかい横腹をつくような形で戦域へと進入している。

71 :
当然とも言えるが真っ赤に塗装されたヘクサゴン(スカーレットタイフーンエクセレントガンマ)の姿は晴れ渡った青空に良く映え、アルビオン艦隊の一隻が自分達に結構なスピードで接近するミントは捉えて迎撃態勢へと移行する。
「未確認飛行体本艦へと接近!!」
「伏兵か!?少なくとも味方では無い、カノン砲発射、用意急げよ、打ち漏らした場合は速やかに火龍隊で迎撃に当たれ!!」
見張りの報に艦長は素早く判断を下すと適切と思われる指示を風の魔法に乗せて全乗組員へと伝える。
「アイサー!!」
統率の取れた動きでカノン砲が接近する目立ってしょうが無い目標へと向けられると接近するヘクサゴンが射程範囲に収まるのを船員達は今か今かと待ち構えるのだった。
「よぉ嬢ちゃん、やっこさんこっちに気が付いたみたいだぜぇ。」
ミントの背中で暗にこのまま行くのか?とでも言いたげにデルフが鍔を鳴らす。勿論目の前の軍艦が側面にずらりと並んだ砲塔をこちらに向けている事などミントも判っている。
だが、高度を上げるのも下げるのもまして転身後退などという選択肢はミントは持ち合わせてはいない。前進突破あるのみ、立ちふさがる物は撃滅必至!!いつだって多少の狡猾な打算と共にミントはそうしてきた。
軍艦から轟音と共に吐き出された鋼鉄の砲弾は何かしらの魔法の補助なのか、はたまた砲兵の練度の高さ故なのか幾つかの砲弾がミントへの直撃の軌跡を描いて飛来する。
「ヘクサゴン!!」
ミントの声紋に反応してヘクサゴンはその一対の蛇腹の豪腕を振り上げミントの乗る背中を守るように交差させる。
『ズドォォォ〜〜ンッ!!!!!!!』
という轟音と共に揺さぶられた足下にミントはぐらついた足を踏み込んで体勢を整える。
「危ない危ない、結構揺れるもんね…」
事も無げに言ってミントは前方の軍艦を睨む。直撃を受けたヘクサゴンの腕部といえば…


72 :
「命中、直撃です!!」
ヘクサゴンへの砲撃の着弾を確認した観測主が喜色入り交じった声を上げる。すると軍艦の内部で、歓声と口笛が沸き上がり、隣に立つ戦友とハイタッチを交わす砲兵達。
「良くやった!!だが警戒を怠るな!!」
その様子を満足げに見つめていた艦長はだが一度声を張り上げると各船員達へ檄を飛ばす。
有能な軍人である彼の言葉に喜びもつかの間、船内に再び程よい緊張と覇気が満たされ各員が再びそれぞれの軍務へと戻る…そして…
「艦長!!未確認飛行物体、尚も接近中です!!………しかも……ダメージ、ありません!!!!」
「何だとぉっ!!!」
観測主の報告に艦長は驚愕を隠す事も無く声を上げた…
ミントは砕け散った砲弾から発生した独特の匂いのする煙を突き抜け、一気に自分の魔法の射程距離まで軍艦へと接近する事が出来た。最早射角の都合上カノン砲は役には立たない。
「相変わらずこいつは頑丈ね。」
ミントはデュアルハーロウを構えながら足下を、つまりはヘクサゴンの背中をみやり呟いた。
かつて何度かベルが自分にヘクサゴンを差し向けてきた時も全力の蹴りをぶちかまそうが強烈な魔法をぶち込もうが結局ヘクサゴンにはダメージらしいダメージを与える事すら出来なかった。
そんなヘクサゴンが唯の砲弾の直撃ごときでどうにかなろう筈も無い。『ヘクサゴンに弱点は無いよっ!』とはベルの言葉だったが結局の所ヘクサゴンを止めるには背に陣取った操者を倒すしか無いのだ。
「嬢ちゃん上だっ!!」
デルフの声に従ってミントは魔力の螺旋を頭上に掲げる…そこには目の前の軍艦から出てきたのであろう火龍に乗ったメイジが二組急速接近していた。
「上等よ!!」


73 :
火龍の口から放たれた灼熱の吐息…それを容易く霧散させ、ミントの放った『緑』の魔法タイプ『サークル』『サイクロン』は火龍の巨体二体を纏めて錐揉み状に吹き飛ばし、その意識を刈り取った。
___トリステイン軍 本隊
「このままじゃ…」
ルイズは戦装束を身に纏ったアンリエッタの直ぐ側で歯痒そうに上空を見上げて言葉を漏らしていた。
『このままじゃ負けちゃうわ。』そう最後まで言葉にはしなかった物のルイズの…否、アンリエッタにも慌てて戦列に加わったマザリーニ卿にも戦場に居る誰もがその事を悟り始めている…
太陽を遮り、影を大地に落とす軍艦の群れ…陸上では何とか均衡を保てているようでも砲撃と火龍等の航空戦力の前では碌な準備も出来ていないトリステイン軍には些かに厳しい闘いであった。
前線は後退し、国内に残されていた魔法衛士隊の幻獣達も傷つき戦列を離れていく…
それを認め、アンリエッタも無論マザリーニを始め各将校達の表情は苦い…
ルイズはその戦場という物を恐怖と共に体感しながら少しでも強く始祖への祈りが届くようにと水のルビーを身につけ、始祖の祈祷書を抱いて瞳を閉じると祈りを捧げる…
『おぉぉっっ!!!』
と、突然兵士達の間に歓声に近いような響めきが響いたことでルイズは目を開く…周囲の人達の視線は一様に上空、ルイズ達から見て左舷の方向へと向けられていた。
「あれ…は?」
ルイズの目に映ったのは燃え上がるメインマストに、まるでゴーレムの豪腕で抉られたように傷ついた船体が徐々に高度を下げながら積載していた火薬類に火が回ったのか派手に爆散していく光景だった。
その光景によって火が付いたように兵達の歓声が沸き上がる。
アンリエッタも少しの困惑と大きな安堵に絶望に打ちひしがれそうだった気持ちを何とか繋ぎ止めた。
全員の視線は自然、何があのアルビオン艦に起きたのかを確認しようとその周囲の空を注視するがそんな中、誰よりも早くその姿を発見したのはルイズだった。
空を行く赤い巨体は接近する火龍や風龍を叩き落とし、あるいは握りつぶし。迫る砲弾さえ意に介さずひたすらに敵陣中央を突破していく。

74 :
「ヘク…サゴン…」
ルイズはそれが先日までミントが自分を置いて冒険した末に何処かから拾ってきたガラクタだと認識するとその名を口にする。
(でも何で赤いのかしら…?)
そしてルイズの呟き、それを耳ざとく聞いていたのはマザリーニだ…
「諸君聞け!!空を行くあの紅の暴風こそかつてエルフすら震撼させたブリミルの遺産『ヘクサゴン』だ。我がトリステインの危機にブリミルが答えたのだ!!この戦勝てるぞ、各々今一度奮い立て!!」
無論マザリーニはそもそもヘクサゴンが何なのか知りもしない。口から出たのは戦意を高揚させる為だけの出任せである。
『ウオオオォォォォォ〜〜〜〜〜〜!!!!!』
士気が低下していた兵士達に再び闘志が宿る。
「マザリーニ様、あれは「ヴァリエール嬢、アレが例え何であれ今は関係ないのですよ。」」
マザリーニはそう言ってルイズの言葉を遮ってまるで誤魔化すように気恥ずかしそうに軽く笑った。ルイズは何とも言えぬ思いを抱きながらも高揚する兵士達に気圧されて呆れた様な苦笑いを浮かべるしか無い。
「ルイズ、もしやアレは?」
「はい。恐らくミントです姫様。」
ユニコーンの背から馬上のルイズの耳元に口を寄せたアンリエッタの問い。それは答えに半ば確信めいた物を持っていた。
そしてルイズもそれが他の兵達に伝搬しないよう小さな声で、しかし力強くアンリエッタに答えると上空を見上げる。また一隻、アルビオンの軍艦の船底にヘクサゴンの豪腕が突き入れられた…
「やはりそうですか……」
「姫様…わたくし…」
ルイズはアンリエッタを真っ直ぐに見つめ、アンリエッタもまたルイズのその真っ直ぐな瞳から何を伝えたいのかを何となく理解していた。
「えぇ、ここまでわたくしに付き添ってくれてありがとうルイズ。行って下さい、メイジと使い魔は一心同体。いえそれ以上にわたくし達の友人の為に…わたくしはここまでに貴女達に十二分に勇気を分けて頂きましたから。」
「はっ!!ありがとうございます!……行ってきます姫様。」

75 :
戦場に似つかわしくない柔らかで暖かい笑顔でルイズを促すアンリエッタ。それにルイズは臣下の礼と友人としての態度を持って答えると意を決し、馬の腹を蹴る。
手綱をグイと力を込めて引いた。ルイズを背に乗せた馬は前脚を擡げて嘶くと引き絞られた矢のように戦場へと駆けだしたのだった。
___レキシントン甲板
ワルドは伝令より伝えられたその情報に両の手を握りしめ微かに震えていた…怒りでも恐怖でも無く、無論歓喜でも無く…もしかするとその全てであったのかも知れないがとにかくわるどの身体は闘いを前に溢れ出る感情に打ち震えていた…
伝令の報告は__曰く、空を飛ぶ赤いゴーレムの進撃を受けている。
曰く、物理攻撃は一切通用せず、さりとて魔法を放てども魔法は何故か何かに吸い込まれるように掻き消されてしまいその勢いは留まる事を知らないと。
曰く、ゴーレムの背では剣を背負い、一対の金環を手にした少女があり得ぬ魔法を行使して艦を落としていると…
ワルドは己の心の赴くままに足を運び始める。その先はレキシントンの甲板後部、火龍や風龍を係留しているエリアである。
報告と予想だにしていなかった緊急自体に狼狽えるクロムウェルが何か訴えるように声をかけてくるがもはやワルドの耳には夜耳元で飛ぶ蚊の羽音並みに鬱陶しいだけであった。
臣下の礼はとっているもののワルドはクロムウェルを皇帝の器と認めてはいなかった…
「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド!風龍で出るぞ!!」
勇ましく出陣の名乗りを上げてワルドは風龍の手綱を引いた。ハルケギニア最速の飛行生物はその翼を広げて真っ直ぐ情報へと飛翔する…
「フハハハハハッ待っていろ…ガンダールブッ!!!」
アルビオンで切断された右腕…本来痛みなど最早感じぬ義手となった筈の右腕に走る確かな痛みに口元を歪ませてワルドは笑いながら戦場へと飛翔した。


76 :
水蒸気の塊である雲の中、ミントは濡れた髪が頬に張り付いてくる事を煩わしく感じながらもアルビオン艦隊の中央を唯々強引に圧し進む!!
「見つけた、あれが本命ね!?」
幾つかの軍艦を墜として雲を抜けたミントはようやくレキシントン号のその巨大な姿をはっきりと視界に捉えた。
しかしミントとて流石にずらりと並ぶ砲門からの斉射は怖いのでレキシントンよりも高い高度を維持する。もっとも恐れるべきは振動故のヘクサゴンからの落下なのだから。
「見つけたぞ、ガンダールブ!!!」
と、レキシントンを見下ろす形を取っていたミントの更に上空から何者かの怒声と共に凄まじい速度で風龍がミントの視界を横切った。
「あんたは…ワルドッ!?」
一瞬とは言えミントははっきりとそれが誰で在るかを確認していた。自然と表情は不機嫌な物になる、生きているとは思っていたが出来れば二度とたくは無かった男だからだ。
「嬉しいぞガンダールブ、再び相まみえる事が出来るとは!!」
「しつこいわよ!!」
ワルドが放ったエアカッターをミントはデルフで吸収するとヘクサゴンのソーサルドライブを全開にしてワルドの駆る風龍を追う…現状、ミントの魔法の射程範囲には若干遠いし追尾性の高い魔法でも風龍相手では分が悪い…
しかしハルケギニア最速は伊達では無い…ヘクサゴンではスピードにおいて風龍との間に埋まりそうに無い差が存在していた。
そしてさらにミントにとって喜ばしくない事態が迫る。
「ワルド殿!!助太刀します!」
ワルドの後を追って出て来たのであろう如何にも練度の高そうなメイジがそれぞれ飛龍に乗って四人ワルドの援護に現れたのだ…
ミントはこの厄介な状況に内心歯がみした…
しかしここでミントの予想だにしない事態が続けて起きる事となった…

77 :
「邪魔を…するなっ!!!」
ワルドは自分に追従する編隊を組む為に近づいてきた部下に当たる筈のメイジ達をあろう事か、一瞬の内に発生させた偏在達でそれぞれ首を撥ね、心臓を貫き、その飛龍達を強奪したのだった。
まさか味方に攻撃されるなどとは思っていなかったメイジ達は「何故?」等という言葉を残す間もなく眼下に広がる緑の大地へと落下していく。
「あんた相変わらずね…」
ワルドの外道な行いに憤りを隠せずミントは避けられる事を承知で魔法を放つ。
「フン、どうせ奴らはクロムウェルの虚無で人形として蘇る!!死ぬ事で私の役に立てるのだ…哀れに思うなら素直に首を差し出せガンダールブ!!」
「ふざけた事いってんじゃないわよっ!!」
魔法による五方向からの同時攻撃、ヘクサゴンのボディがワルドのエアハンマーとウインドブレイクで大きく揺れる…
ミントも自身に襲いかかるエアカッターをデルフで凌ぐがここまで統率が取れた連携を相手にするのは骨が折れるであろう事は容易く察する事が出来た。
「ガンダールブ、貴様がフライを使えぬ事を私は知っているぞ!!そんな貴様が空で私に勝てる通りは無い!このまま奴らのように地面に叩き付けてくれる!!」
「くそっ…一対一で戦いなさいよ!!この卑怯者!!」
四方向からの同時攻撃を何とか凌ぐミント…だが
「嬢ちゃん、上だ!!」
ミントの認識の外からの攻撃にデルフの注意が響く。
「とったぞっ!!!」
詠唱しながら飛龍の背から飛び降り、自由落下を駆使した偏在ワルドの上空からの特攻…
ミントは咄嗟にデルフリンガーを振るったがワルドが唱えていた魔法は『エアニードル』唯一デルフの魔法吸収を凌ぐ魔法…
刹那の交差…

78 :
ワルドの偏在は霞に消えた…
そして…
「げげっ!」
「あ〜れ〜〜〜。」
一度高く舞い上がった後で空を切り裂くように真っ逆さまに落下していくデルフリンガーの間抜けな声が戦場に響いた。
「ここまでだなガンダールブ。」「切り札を失った貴様はもう終わりだ。」「まずは腕を切り落とす。次は足だ。」「散々なぶった後で一思いに地面に叩き付けてやろう。」
四人となったものの勝利を確信したワルドが口々にそんな下卑た言葉をミントに向けてイヤらしく笑う。その姿はもはや貴族では無く唯の外道だ。
「何言ってんの…切り札?デルフが?」
「何?」
とさっきまで少なくともワルドから見ても狼狽えたような調子だったミントが再び冷静な様子を取り戻す…否、それは闘いの中でする賭けに対し腹を括った様に見て取れた。
ミントは素早くデュアルハーロウを構えるとそのままいつでも魔法が放てる体勢に移行する。
「ライトニングクラウド…討ってきなさい。あたしの魔法とあんたの魔法どっちが早いか勝負しようじゃない…」
「…良かろう、この『閃光』に早さで挑むか…おもしろいではないか。」
ワルドは知らず感じた圧力と精神の高ぶりにに思わず唾を飲み込むと、本体含め全員でライトニングクラウドの詠唱を行う。幸いと言うべきかミントの真正面のワルドは偏在なのだ…

次の瞬間、トリステインの上空には轟音と共に以降、『裁きの雷』と評され伝説とされる小さな紫電を伴った『眩き閃光』が走った。  

79 :
以上で二十五話投稿完了です。ドラゴンズドグマクリアしたのでまた少しずつ書きためていきますので良かったら呼んでやって下さい。
なんだかデュープリのどこかのどかな雰囲気から離れつつあるな〜。

80 :
乙!

81 :
デュープリ乙です!

82 :


83 :
ゲームやった事無いからスカタン号の腕は
ツインビーみたいな感じだと脳内変換してるw

84 :
予想どうりワルドは「眩き閃光」で仕留めたか
ワルド……あれが本当の「閃光」だ!

85 :
デュープリの人、乙でございました。
夜分遅くになりますが、続きが書けましたので0:45頃に投下したいと思います。

86 :
Mission 30 <ラグドリアンを侵す者> 前編
「スパーダはあたしのものなの! おばさんはもう近づかないでって言ったじゃない!」
「朝っぱらからうるさいわねぇ。静かにできない小娘がスパーダに近づく権利なんてないよ」
翌日の早朝、誰よりも早く起きたはずのスパーダであったが、ルイズとロングビルはスパーダの起床に合わせて起きだしたのだった。
そして、再び始まる口論と喧嘩。スパーダは頭を抱えたくなった。
(まだネヴァンの方がマシだ)
そう心の底で呟くと、自分から離れない二人を引き連れてまずは女子寮のモンモランシーを起こしに行く。
「スパーダ! モンモランシーなんかに何の用があるの!? あたしだけを見てって言ったじゃない!」
ノックをしてモンモランシーが出てくるなり喚きだすルイズ。ロングビルは無言でモンモランシーを睨みつけ、威嚇していた。
「……相変わらず苦労しているのね」
「すぐに用意しろ。出発する」
他人事のように呟くモンモランシーであるが、スパーダは用件だけを伝えて促す。
「それと、眠りのポーションか何かはあるか」
嫌々そうに制服に着替えたモンモランシーに、さらにスパーダは要求した。
「一応あるけど、どうしてよ? ……まさか、二人とも着いてくるって言うんじゃ」
「あたしはスパーダから離れないわ! ずっと一緒にいるの!」
「こら! 離れなさい! 小娘め! 傍にいていいのは私だけだよ!」
がしりと抱きつくルイズをロングビルが引き剥がそうとする。
それを見たモンモランシーは納得したようにうな垂れると、自室の棚の中から不眠用に作っておいた眠りのポーションの瓶をポケットに押し込んでいた。
「一応、持っていくか……」
スパーダはついでにルイズの部屋へ戻ると、愛剣リベリオンと共に破壊の箱こと――災厄兵器パンドラも持っていくことにする。
次にギーシュを起こしに本塔の男子寮へ向かう……ことはなかった。
ドッペルゲンガーをスパーダの体から分離させて眠っているギーシュを正門前に連れ出すように命じており、既にその命令は果たされていた。
そして、ひっそりとスパーダの元へ戻っていったのである。
「ちょっと、ギーシュ。何でこんな所に寝ているのよ?」
「う〜ん……むにゃむにゃ。モンモランシー……だめだよ。……こんな所で」
一体、どんな夢を見ているのか。寝言を口にするギーシュに顔を羞恥に紅潮させたモンモランシーはギーシュの体を蹴りつけた。
「ぐはっ! な、な、な、何だい!?」
「さっさと起きなさいよ!」
寝ぼけ眼で飛び起きたギーシュに、モンモランシーが話しかける。
「あ、あれ? どうしてこんな所に……」
状況が理解できないギーシュはきょろきょろと辺りを見回すが、大柄なトランクを担ぐ師匠のスパーダとそして惚れ薬を飲んでしまった二人の女性の姿を目にすることでようやく覚醒した。
もっとも、ルイズとロングビルはつい先ほどモンモランシーの眠りのポーション……正確にはお香のようなものだが、それを使うことで眠らせており、草地の上で再び熟睡していた。
「起きたな。では、出発する」
「出発って……馬はどうするのよ? ここから歩いてなんて何日もかかっちゃうわよ。馬でさえ半日はかかるのに」
ギーシュを一瞥したスパーダが言うと、モンモランシーは彼に食ってかかる。
だが、スパーダは右手を前に突き出すと掌から現れた蒼ざめた光球を浮かべだした。

87 :
その光球はゆっくりとスパーダ達の目の前で浮遊している。まるでおとぎ話にでも出てきそうな精霊のように幻想的な姿に思わず、モンモランシーとギーシュは溜め息を吐く。
だが、次に二人は腰を抜かすことになる。
――ヒヒィーーーンッ!
「うひゃあっ!」
「きゃあっ! 何ぃーーー!?」
ゆらゆらと浮かんでいた光球がたちまち大きくなり、やがて巨大な蒼ざめた馬へと変わってしまったのだ。
二人は先日、ゲリュオンが暴れる所を目撃していなかったため、初めて目にする威圧感溢れる巨体の幻獣の姿に唖然とした。
「モ、モンモランシー! 僕の後ろに下がるんだ!」
即座に立ち上がったギーシュは蹄を鳴らしているゲリュオンの前に立つと、造花の杖を振り上げた。
「あだっ!」
「落ち着け。害はない」
スパーダの閻魔刀の鞘がギーシュの頭を小突く。
既にスパーダを主としてゲリュオンは、自らの意思で暴れるようなことはない。
ゲリュオンの足はそこらの馬よりも速いので、より早くラグドリアン湖に到着するはずだ。
スパーダはゲリュオンが引いている馬車に飛び乗ると、パンドラを置いて腰を下ろした。
「お前達も早く乗れ。二人も一緒にな」
「……い、一体何なのよ。あなたの師匠は……」
「はは……か、彼はとても偉大な男なのさ」
乾いた笑みでモンモランシーの言葉を受け流すギーシュ。スパーダが悪魔であると、正直にいうわけにもいくまい。
二人は眠っているルイズとロングビルをレビテーションで馬車の上に乗せ、自分達も同じように乗り込んでいた。
――ヒヒィーーーンッ!
高く嘶いたゲリュオンは、一行を乗せた馬車を引いて駆け出した。
「きゃああっ!」
「うわっはぁ! すごいな! これは!」
朝の草原を力強く駆ける妖蒼馬<Qリュオンの上でギーシュとモンモランシーは歓声を上げた。
こんな大きな馬車を引きずっているというのに、その速さは馬などとは比べ物にならない。それどころか魔法衛士隊が乗っている幻獣さえも凌ぐ。
あまりの爽快さに思わず二人は楽しくなってしまっていた。

88 :
馬で約半日という距離を、ゲリュオンはその約3/4の時間で到着することに成功した。
ただ速いだけでなく、ゲリュオンの空間干渉能力によって本来ならば自由に走れないはずの鬱蒼と茂った森の中であろうと、存在次元がずらされている一行は何の苦もなく走り続けたのだ。
トリステインの南方、大国ガリアとで挟まれている場所に位置するラグドリアン湖は六百万平方キロメイルにもなる巨大な湖である。
比較的高地に位置するこの場所は周囲が緑豊かな森に囲まれ、さらに澄んだ湖水が織り成すコントラストによってまるで絵画のように美しい光景であった。
昼過ぎの陽光を受け、宝石のように輝く湖の少し手前の丘の上で一行を乗せたゲリュオンは停止していた。
何故なら、既に目の前は湖の岸辺であったからである。
ゲリュオンの馬車から降りたモンモランシーは怪訝な表情でじっと湖面を見つめていた。
スパーダはゲリュオンを魂に変えて体内に戻すと、周囲を注視するように見回している。
「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやぁ、なんとも綺麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか! 感激だ!」
一人、旅行気分のギーシュは初めて目にするラグドリアン湖を前に浮かれ、はしゃぎ回っていた。
「変ね……水位が上がっているわ。ラグドリアン湖の岸辺はもっと向こうのはずなのに……」
「村も水没しているらしいな」
スパーダが顎で指した先、湖面にはここら一帯の村のものであろう藁葺きの屋根が見えた。
立ち上がったモンモランシーは困ったように首を傾げる。
「どうやら水の精霊はお怒りのご様子ね」
「そうか。君は水のメイジだったな」
「そ、我がモンモランシ家は代々トリステイン王家とここに住む水の精霊とを旧い盟約で結びつける交渉役を務めていたんだから」
腰に両手を当て、どこか得意げに語るモンモランシー。そこにスパーダから厳しい一言が突き刺さる。
「だが、今は他の貴族がその任を預かっているらしいな」
その言葉にがっくりと力なくうな垂れるモンモランシー。
「……そ、あたしが小さい頃、父上が領地の干拓を行なう時にここの精霊に協力を仰いでもらったわ。でも、父上ったら失礼な態度を取ってしまって、精霊を怒らせてしまったのよ。
おかげで我が家は干拓事業に失敗して、今じゃ領地の経営が苦しいのよ。……だから水の精霊は怒らせるとただじゃすまないわ」
「それで交渉はできるのか」
「うん。ちょっと待って、って……何をやっているのギーシュは」
見ると、はしゃいでいるうちに足を滑らせ湖の中に落ちて溺れかけているギーシュの姿がそこにあった。
「た、助けて! 僕は泳げないんだよ! モンモランシー! スパーダ君! 助けて!」
ばしゃばしゃともがきながら必死に助けを求めていた。
その情けない様を目にし、モンモランシーは頭を抱えた。
「……付き合いを変えた方がいいかしら」
「君の自由だ」

89 :
湖から何とか這い上がってきたギーシュを無視し、モンモランシーは腰に下げていた袋から何かを取り出す。
それは鮮やかな黄色い体に黒い斑点がいくつも散っている一匹の小さなカエルであった。
モンモランシーが従える忠実な使い魔、ロビンである。
「いいこと、ロビン? あなた達の旧いお友達と連絡がとりたいの」
掌の上に乗るロビンにそう命じ、モンモランシーはポケットから針を取り出すとそれで自らの指先を突いた。
赤い血の玉が膨れ上がり、その血をロビンの体に一滴垂らす。
「血による契約か。中々高等なものを使うのだな」
「そ、これで相手はあたしのことが分かるはずだわ。覚えてればだけど」
指先の傷を魔法で治療し、モンモランシーはロビンに再び顔を近づけた。
「それじゃあロビン、お願いね。この湖に住まう旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだい」
ロビンは小さく頷き、ぴょんと跳ねて水の中へと消えていく。
「でも、そう簡単に水の精霊が交渉に応じてくれるかしら」
「それは君次第だ。クビになったとはいえ代々、水の精霊との交渉役を務めていた一族だ。しっかりやれ」
モンモランシーの肩をポン、と叩くスパーダの注意は湖などではなく、周囲へと向けられていた。
この場に僅かに残されている魔力の残滓……そして、異様な禍々しい気配。
どうやら、これから一悶着がありそうだ。
「あーっ!」
突然、後ろの方から叫び声が響いた。
眠り薬の効き目が切れたルイズがめを覚ましたのだった。
そして、スパーダとその傍にいるモンモランシーを指差すなり、ずんずんと近づいてくる。
「他の女の子と一緒になっちゃだめって言ったじゃない! 離れてよ! モンモランシー!」
「え? ちょっと! きゃあ!」
ドン、とモンモランシーを突き飛ばされて湖の中に落とされてしまった。
「ああっ! モンモランシー!」
ずぶ濡れになった服ちマントの水を搾り出していたギーシュが再び飛び込み、モンモランシーを救おうとするが……。
「うがばぁ! 助けてぇ! ガボガボ……」
「泳げないくせして何やってるのよ!」
逆に水泳が得意なモンモランシーに助けられ、岸に上がった二人はびしょ濡れになってしまった服の水を搾り出していた。

90 :
そんな二人を尻目にルイズはスパーダに縋るように抱きつき顔を見上げていた。
「ねぇ、スパーダ。あたしとこのラグドリアン湖とどっちが綺麗?」
「分からん」
少なくとも、今の状態のルイズとを比べた所で何の意味もないのだ。
にべもない返答にルイズは拗ねたようにむくれる。
「はっきり言ってよ。……じゃあ、あたしとそこのおばさんと、どっちが好き?」
「どちらでもない」
まだ眠りについているロングビルを指差し尋ねるが、スパーダは冷たい反応しか返してこなかった。
「うぅ〜っ……やっぱり、あたしのこと嫌いなの? だからそんな風に冷たくするの?」
「当たり前じゃない。誰があんたみたいな小娘なんか綺麗って言うのさ」
と、ここでロングビルまでもが目を覚まし、ルイズを冷笑しだした。
「少なくとも、あんたは私以下でしょうよ」
「むぅ〜っ! そんなことないもん! おばさんなんて、せいぜいラグドリアン湖と比べたらミジンコと白鳥、ヤモリとサラマンダーよ!」
「モンモランシー」
またしても不毛な争いを始めようとしたため、スパーダはルイズ達を顎でしゃくった。
「まったくもう……貴重な秘薬をこんなことに使う破目になるだなんて」
嫌々とモンモランシーはポケットから取り出した眠り薬の瓶を開け、その口を二人の鼻先に突きつけた。
「ふにゃ……」
「ん……」
地面の上に崩れ落ち、ルイズとロングビルは再びまどろみの中へと落ちていく。
そして、ここにいては邪魔になるのでパンドラを置いたスパーダは二人を少し離れた林の中の木陰へと運んでいった。

91 :
と、その直後に岸辺より三十メイルほど離れた水面の下から眩い光が溢れ始めていた。
「あっ、来たわ!」
モンモランシーが声を上げる。
水面がごぼごぼと音を立てながら蠢き、徐々に膨れ上がるようにして盛り上がると、巨大な水柱が飛沫を上げながら立ち上った。
そして、ぐねぐねとまるで意思を持つスライムのように形を変え始めた。
湖からモンモランシーの使い魔のロビンが上がってきて、ぴょこぴょこと跳ねながら主人の元に戻ってくる。
「ありがとう。きちんと連れてきてくれたのね」
屈みこんだモンモランシーは己の使い魔を迎えると、指でその小さな頭を撫でると立ち上がり、水の精霊に語りかけた。
「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系よ。カエルにつけた血に覚えはおありかしら。
覚えていたら、わたしたちに分かるやり方と言葉で返事をしてちょうだい」
その言葉に反応し、水の精霊らしき水の塊は大きく蠢き、形を変え始める。やがて、その水の塊は不定形なものから人間……モンモランシーを模した姿へと変わっていた。
(ちょっと恥ずかしいわね……)
モンモランシーは自分より一回りほど大きい、透明な裸の己の姿にちょっと恥ずかしくなった。
ギーシュも初めて目にする精霊の姿に呆気に取られているみたいだ。
水の精霊はさらに蠢き、笑顔、怒り、泣き顔と様々な表情に変わっていく。
『覚えている。単なる者よ。貴様の身体を流れる液体を、我は覚えている。貴様に最後に会ってから、月が五十二回交差した』
どこから喋っているのかは全く分からないが、水の精霊は透き通った女の声で言葉を発する。
「良かった。水の精霊よ、お願いがあるの。あつかましいとは思うけど、あなたの一部を分けて欲しいの」
モンモランシーからの願いに対して水の精霊は沈黙する。
これですんなり交渉が成立すれば良いのだが。

92 :
しばしの沈黙、未だ答えが返ってこない中、スパーダが林から戻ってきた。
(ほう。これが水の精霊か)
初めて目にする精霊とやらの姿にスパーダは感嘆と頷く。メイジ達とは全く性質の異なる強い魔力をありありと感じ取っていた。
その時、水の精霊の身に異変が起きた。
『――――――――――!!』
「えっ! ちょっと、何よ!」
言葉にならない高い悲鳴を上げだす水の精霊はモンモランシーを模した姿から一変、全方位に弾けるよな不定形の塊と化していた。
「ど、どうしたんだね? 一体」
「あ、あたしに聞かないでよ!」
予想しなかった事態にギーシュとモンモランシーは困惑する。
『――――――――――!!』
未だ悲鳴を上げ続け、その水の塊をあらゆる方向に向かって弾けさせている水の精霊であったが、再びモンモランシーの姿に戻ると突然体の一部を伸ばし、その先を鋭利な槍のような形に変えていた。
そして、その先端をモンモランシー目掛けて突き出してきた。
「危ない! モンモランシー!」
即座にギーシュがモンモランシーに飛びつき、伏せさせると水の精霊の攻撃が頭上をかすめていた。
外れた攻撃は地面に突き刺さるが、やがてするすると収縮して戻っていく。
「な、何をするのよ!」
ギーシュと共に起き上がったモンモランシーが突然の攻撃に文句を言った。
もしかして、怒らせてしまったのか? やっぱり、自分の体を分けてなどと言ったからだろうか?
『断る。単なる者よ』
ようやく先ほどの願いの答えが返されてきた。
やっぱり、そうらしい。これで明確に怒りを表していなければ諦めて大人しく立ち去る所だったが、あまりの恐ろしさに動けないでいた。
こんなことなら、やっぱりついてくるんじゃなかった……。
だが、次に精霊が発した言葉にモンモランシーは不審を抱くことになる。
『貴様は忌まわしき魔の眷族と共に我が元に現れた。我は魔の眷族と契約する者を許すわけにはいかぬ』
「ま、魔の眷族ってどういうことよ?」
いきなりそんなことを言われたって何のことだか分からない。

93 :
困惑するモンモランシーとは逆にギーシュはちらりと、平然と水の精霊を見上げているスパーダを見やった。
(ま、まさかスパーダが悪魔だって分かるのか?)
(ほう。私が分かるのか)
スパーダは顎に手をやり、水の精霊を睨みつけた。
『貴様もこの地を脅かす奴らと同じ魔の眷族。我が守りし秘宝を盗みし、忌まわしき者。これ以上、この地を汚させるわけにはいかん』
「性急なことだ」
ふむと唸ると水の精霊は問答無用と言わんばかりに無数の触手を槍のように伸ばしてきた。
だが、そこには既にスパーダの姿はなく、空しくも大地に突き刺さるのみである。
連続で空間転移を行い、モンモランシーとギーシュを岸から離れた場所に運んでいた。
「お前達はここにいろ。決して動くな」
そう告げ、パンドラを預けるとスパーダは再び空間転移で水の精霊の前に立つ。
「If you were boring, I'll let's give you play.(退屈なら少し遊んでやろう)」
水の精霊は沈黙したままさらに己の体から次々と鋭い触手を伸ばし、スパーダに突き出していった。
背中のリベリオンを抜いたスパーダは軽々と両手で力強く振り回し、水の精霊の攻撃を捌いていく。
騎兵槍のごとき太い槍のように突き出された攻撃を身を翻してかわすと、そのままリベリオンを大上段から振り下ろして水の精霊の触手を叩き斬っていた。
だが、水の精霊に単純な物理的攻撃を加えようと、元々形を持たぬ水であるためすぐに再生してしまう。
変幻自在な水は時にあらゆる攻撃を防ぎきる無敵の盾となり、あらゆる鎧をも貫く強靭な矛となるのである。
スパーダは容赦なく繰り出される水の精霊の攻撃をかわし、リベリオンでいなし続けていた。
「もう! 何でこんなことになるのよぉ!」
離れた位置からスパーダと水の精霊の戦いを見届ける二人であったが、モンモランシーが癇癪を上げていた。
いきなり訳の分からない因縁をつけられて攻撃をされてしまうだなんて、実に不愉快である。
「しかし、スパーダ君も怖いもの知らずだなぁ。……水の精霊に正面から戦いを挑むなんて」
乾いた笑みを浮かべる顔を引き攣らせ、ギーシュは師匠の勇ましい戦い振りに息を呑んだ。
もっとも、彼が悪魔である以上、人間とは思考が違うのかもしれないが。
水の精霊は自らの体を槍だけでなく、無数の水の鞭として振るって四方八方から攻撃を仕掛けている。
手練れのメイジでさえ決して対処できないであろう手数でありながら、それらの攻撃をスパーダは難なくあしらい続けていた。

94 :
水の精霊はそうした直接攻撃だけでなく、大気中の水蒸気を一瞬にして大量の水の塊にして集めると何筋もの高圧の水流として撃ち出したり、スパーダの頭上から巨大な滝を降らせるなどしていた。
それさえもスパーダはよけるなり、頭上でリベリオンを回転させるなりして防ぎきっていた。
「どっちも化け物ね……」
思わずモンモランシーが呟く。強力な水の先住魔法を操る水の精霊を相手に魔法もなしにああまで互角に戦うことができるだなんて、もはや人間の常識を超えている。
「あれがスパーダ君の力なのさ。……僕はそれに惚れこんでしまったんだ」
伝説の悪魔である彼なら、このまま水の精霊を倒してしまいそうでギーシュは思わず武者震いをしてしまった。
突如、水の精霊の攻撃がぴたりと止んだ。一方的な攻撃を全て捌ききったスパーダはリベリオンを肩に乗せたまま静かに佇む。自ら攻撃を仕掛けようとはしない。
どうしたのだろうとギーシュ達は目を見張っていた。
すると、水の精霊が浮かんでいる穏やかな水面の手前に変化が現れる。
水面には徐々に小さな渦が出来上がっていき、みるみるうちにその勢いと大きさが増していく。
そして、ついにはその渦が巨大な水柱となって噴き上がった。
高さはゆうに二十メイルに昇り、しかも竜巻のような渦は未だ巻いたまま、勢いは止まるどころかさらに激しさを増すばかり。
まるで巨大な大津波が押し寄せてくるかのような威圧感であった。
「ちょっ、ちょっと! 何をする気!?」
モンモランシーは水の精霊がとんでもない攻撃を仕掛けようとしているのを目にして肝をつぶしていた。
あんなものが直撃すれば、人間はおろかちょっとした城さえひとたまりもないだろう。
「に、逃げましょうよ! ギーシュ!」
「いや! 僕はスパーダ君を信じる!」
モンモランシーが叫ぶが、ギーシュは決してこの場から動きはしない。
自分の師、スパーダはあんな恐ろしい攻撃を前にしながらも、堂々と佇んだまま微動だにしない。
伝説の魔剣士である彼なら、あの巨大な水の竜巻さえもきっと打ち砕いてくれるに違いない。
彼の弟子である以上、その戦いの場から逃げることは、決して許されないのだ!
(そこまで、彼を信じているんだ)
モンモランシーはギーシュの真剣な顔を目にして、ここまで彼から人望と信頼を得ているスパーダが羨ましかった。
いつものギーシュであれば、恐れをなして逃げ出してしまうというのに、今の彼は違う。尊敬する師匠がこうして目の前で戦っているからこそ、安心できるのだ。
……それに勝る安心を、自分は彼に与えられるのだろうか。
(相当、気が立っているな……)
スパーダは先ほどから肩に乗せているリベリオンに己の魔力を注ぎ込んでいた。
さすがに彼とて、これほどの一撃を食らえばただではすまない。悪魔とて、決して不死身というわけではないのだから。
だからといって、このまま自分を飲み込もうと押し寄せてくるであろうこの竜巻を正面から受け止める気はこれっぽちもない。
不可能ではないが、今のスパーダはそんなつまらないことをしている暇などないのだ。
リベリオンの刀身には徐々に赤いオーラが纏わりつき、さらに濃くなっていき、やがて刀身を完全に包み込む。
その間、バチバチという魔力が弾け散る音と共に、魔力が唸りを響かせていた。
溜めた魔力を全て一度に開放して放ち、竜巻を打ち消すこともできただろうが、今回はそんなことはしない。

95 :
スパーダは膨大な魔力を内包させたリベリオンを、激しく荒れ狂い、渦巻く竜巻に目掛けて投げ放った。
竜巻とは逆の向きに激しく回転するリベリオンは空を切り裂く音を響かせながら飛んでいき、竜巻の中へと潜り込んだ。
その直後、より巨大となった竜巻は動き出し、スパーダ目掛けて殺到した。
「「危ない!」」
後方で見守ることしかできなかった二人は一斉に声を上げる。
だが、それでもスパーダは臆することなく水の竜巻を睨んだまま腕を組み、動かない。
そして、スパーダを飲み込んでしまうと思われた竜巻は急激にその激しさと勢い、回転力が衰えていき、最後にはただの水の塊と化し、滝のようにばしゃんと湖と陸の間で崩れ落ちた。
未だ全く衰えない激しい回転を続けながら留まっていたリベリオンは、役目を終えたと言わんばかりに主の手元へと戻っていく。
スパーダは掴み取ったリベリオンを、静かに背中へ戻すと、再び目の前に現れた水の精霊を見上げていた。
水の精霊は攻撃をすることもなく沈黙している。先ほどまでの殺気は感じられない。
「ほら、僕の言った通りだろう」
「……もう常識外ね。あなたの師匠は」
師を信じた甲斐があったと言わんばかりの笑みを浮かべるギーシュはモンモランシーを連れ、スパーダのパンドラを運びながら傍へと近づいた。
とんでもない光景を見せられて、モンモランシーは唖然とするしかなかった。
『……貴様、あの魔の眷族の者共とは違うのか』
ようやく水の精霊が発した言葉は、困惑と驚愕であった。
『貴様の体、そして貴様の振るいし剣からは邪まな気配が、我への敵意は感じられぬ。何者だ』
「さてな。どう思うかはお前次第だ」
腕を組むスパーダは冷徹にその問いを一蹴する。
『……何にせよ、貴様達が忌まわしき魔の者達と関わりがないことは明らかだ。我が非礼をここに詫びよう』
と、精霊の姿が再びモンモランシーを模したものへと変化していった。
態度を一変させた精霊にモンモランシーはほっと安心すると同時に、怒らせた精霊をここまで静めてしまったスパーダに驚くばかりだった。
『旧き盟約の一族たる、単なる者よ。貴様は先ほど、我の一部を欲すると言ったな』
「え!? ……え、ええ。そうよ」
いきなり自分に話を振られてしまい、モンモランシーは焦る。
『ならば、貴様と共にする高潔なる魔の眷族の力を見込み、我は願う。我に仇なす貴様達の同胞を、退治してみせよ』
「た、退治?」
突然の精霊からの願いにギーシュが声を上げた。
「さよう。我は今、水を増やすことで精一杯で、襲撃者の対処にまで手が回らぬ。その者どもを退治すれば、望み通り我が一部を進呈しよう」
そのくせに、自分達にはあんなに積極的に攻撃してきたくせに。
モンモランシーとギーシュは目を細めて水の精霊を見つめていた。
「良いだろう」
スパーダが精霊からの願いを聞き入れ、首肯していた。
「ちょっと! 言っておきますけど、あたしはケンカなんて嫌ですからね!」
「大丈夫だよ、モンモランシー。彼の弟子の、僕がいるからにはね」
抗議するモンモランシーの肩に手を回したギーシュはバラの造花を手にし、得意げに笑っていた。
※今回はこれでおしまいです。前回のミスはしていない……はず。

96 :
2人とも乙です

97 :
パパーダ乙

98 :
>>61
ルイズタン 死んだダンプにひかれてルイズタン 死んだ

99 :
死んだダンプってなんだ?トランスフォーマーか?

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