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2012年3月創作発表23: 主従キャラバトルロワイアル part2 (170)
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主従キャラバトルロワイアル part2
- 1 :
- 当スレッドは、漫画やアニメに登場する主従キャラでリレーSSの形式でバトルロワイアルを進める
「主従キャラバトルロワイアル」という企画の為のスレッドです。
前スレ
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1319289436/
主従キャラバトルロワイアル@wiki (まとめ)
ttp://www38.atwiki.jp/msbr/
主従キャラバトルロワイアル専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15038/
【参加主従一覧】
【Fate/Zero】 衛宮切嗣/セイバー
【Fate/Zero】 ウェイバー・ベルベット/ライダー
【Fate/Zero】 雨生龍之介/キャスター
【コードギアス 反逆のルルーシュ】 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア/ジェレミア・ゴットバルト
【コードギアス 反逆のルルーシュ】 ユーフェミア・リ・ブリタニア/枢木スザク
【コードギアス 反逆のルルーシュ】 天子(蒋麗華)/黎星刻
【東方儚月抄】 レミリア・スカーレット/十六夜咲夜
【東方儚月抄】 西行寺幽々子/魂魄妖夢
【東方儚月抄】 蓬莱山輝夜/八意永琳
【HELLSING】 アーカード/セラス・ヴィクトリア
【HELLSING】 インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング/ウォルター・C・ドルネーズ
【スター・ウォーズ】 ルーク・スカイウォーカー/C-3PO
【スター・ウォーズ】 ダース・シディアス/ダース・ベイダー
【ゾンビ屋れい子】 姫園れい子/百合川サキ
【ゾンビ屋れい子】 雨月竹露/姫園リルカ
【戦国BASARA】 伊達政宗/片倉小十郎
【戦国BASARA】 織田信長/明智光秀
【うたわれるもの】 ハクオロ/トウカ
【おまもりひまり】 天河優人/野井原緋鞠
【ジョジョの奇妙な冒険】 DIO/ヴァニラ・アイス
【そらのおとしもの】 桜井智樹/イカロス
【まよチキ!】 涼月奏/近衛スバル
【北斗の拳】 シン/ハート様
【魔法少女リリカルなのは】 八神はやて/シグナム
【物語シリーズ】 阿良々木暦/忍野忍
25組50人
- 2 :
- 【バトルロワイアルのルール】
1.バトロワイアル
送り込まれた土地を舞台に、主従同士がし合い、最後の一組が残るまでこれを続ける。
2.主従
参加者は主従一組で選ばれ、主には赤の★が、従者には青の★がそれぞれ左手の甲に刻まれる。
バトルロワイアルの優勝は一組の主従であることが条件なので、片方を失えば優勝の権利も失う。
ただし、あぶれた主と従者同士で新しい主従を組むことは可能。
その場合、赤の★と青の★を触れあわせれば新しい主従契約が成立したとみなされる。
3.禁則
これを破ると強制的にその場から退場させられ死を与えられる。
・し合いの舞台となる土地から逃げ出した場合。
・主あるいは従者が死に、一人あぶれた状態で12時間が経った場合。
・後述する「禁止エリア」に進入した場合。
・バトルロワイアルによる死者が出ない状態が24時間続いた場合。(全員に適用される)
・バトルロワイアル開始より72時間が経過しても決着がついていない場合。(全員に適用される)
4.放送と禁止エリア
バトルロワアイアル開始より6時間ごとに、その間に死亡した参加者の名前を読み上げる放送が流れる。
また同時に、禁止エリアの場所と禁止となる時刻も読み上げられる。 ※詳細は実際のSSで決定。
5.支給品
参加主従には、それぞれ一組ごとに背負い袋がひとつ支給される。
中身は、「舞台となる土地の地図」「参加者の連名簿」「筆記具」「明かりとなるもの」。
それと、内容が不明な「し合いに使う道具(不明支給品)」が4つ。
背負い袋の中身は不思議な空間となっており、いくつでも道具を入れられるし重さも一定で変わらない。
6.優勝
最後の一組となり優勝した者らには願いを叶える権利と元の世界への生還が約束されている。
- 3 :
- 【書き手向けのルール】
1.リレーSS企画
当企画はリレーSS企画です。なのでルールを無視した作品の投下は受け付けないのであしからずご了承ください。
2.予約制度
作品を投下するにあたっては、まず該当スレにてその旨を書き込むことをお願いしています。
必要なのは書き込んだ人物の同一性を保証するトリップと、予約するキャラクター(全員分)の名前です。
予約すればそれから5日間(※1)、そのキャラクターの作品を投下する権利を得ることができます。
期間を過ぎれば権利は失効(※2)しますが、失効後続けて予約することは期限が無限に続くことと同じなので禁じます。
※1 作品が3作以上採用されている書き手には+2日。
※2 予約期間を過ぎた後でも、他の人の予約が入っていなければ作品の投下は認められます。
予約スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15038/1319268571/
3.修正/破棄要求
投下された作品内に修正や、部分的もしくは全体として破棄する必要な箇所があると感じられた場合、
該当スレを使用し、それを指摘し改善を求めることができます。(※)
要求が出た場合、該当作品およびそれに関わる部分の進行を凍結し、該当スレで話し合いを行います。
そこで、修正や破棄の要不要が決定すればその通りにし、凍結状態を解除し通常の進行に戻ります。
※単純な誤字や表記ミス等、簡単に修正できるものであればわざわざ修正要求スレを使うことはありません。
修正/破棄要求、議論スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15038/1319268687/
4.自己リレー
リレー企画であることを尊重し、原則として自己リレー(自作の後に自作を続けること)を禁止とします。
ただし、投下以後2週間経っても続きが書かれなかった場合はそれを解禁するとします。
5.登場時期や能力制限等々
バトルロワイアルおよびリレーがつつがなく進行するよう、それを害する能力は制限されているとします。
また参加者が原作のどの時点から登場するかは書く人に委ねられていますが、これもある程度の制限があります。
詳細についてはまとめwikiの該当ページを参照してください。(>ttp://www38.atwiki.jp/msbr/pages/18.html)
- 4 :
- 【状態表のテンプレおよび時間表記について】
作品内の情報を共有するため、それをテンプレートにそって記し作品内に付け加えることを義務とします。
【(エリア名)/(具体的な場所名)/(日数)-(時間帯名)】
【(主従の属性):(キャラクター名)@(登場元となる作品名)】
[主従]:(現在、主従を組んでいる相手の名前)
[状態]:(肉体的、精神的なキャラクターの状態)
[装備]:(キャラクターが携帯している物の名前)
[方針/目的]
基本方針:(基本的な方針、または最終的な目的)
1:(現在、優先したいと思っている方針/目的)
2:(1よりも優先順位の低い方針/目的)
3:(2よりも優先順位の低い方針/目的)
[備考]
※(上記のテンプレには当てはまらない事柄)
例)
【A-1/森の中/1日目-黎明】
【主:衛宮切嗣@Fate/Zero】
[主従]:セイバー
[状態]:魔力消費(小)、令呪(3画)
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、種籾@北斗の拳
背負い袋(基本支給品)、ゼロの衣装@コードギアス 反逆のルルーシュ
[方針/目的]
基本方針:優勝し生還する。
1:土地と建物を把握し、有利な場所を見つける。
2:はぐれた従者を見つけ、利用できるよう言いくるめる。
3:爆弾の材料となるものを調達する。
[備考]
※レイジングハートから一時的なマスターの承認を受けました。
コピペ用)
【-//-】
【:@】
[主従]:
[状態]:
[装備]:
[方針/行動]
基本方針:
1:
2:
3:
[備考]
※
方針/行動の数は不定です。1つでも10まであっても構いません。
備考欄は書くことがなければ省略してください。
時間帯名は、以下のものを参照してそこに当てはめてください。
[00:00-01:59 >深夜] [02:00-03:59 >黎明] [04:00-05:59 >早朝]
[06:00-07:59 >朝] [08:00-09:59 >午前] [10:00-11:59 >昼]
[12:00-13:59 >日中] [14:00-15:59 >午後] [16:00-17:59 >夕方]
[18:00-19:59 >夜] [20:00-21:59 >夜中] [22:00-23:59 >真夜中]
- 5 :
- >>1
新スレ立てお疲れ様です。
改めて最初から投下致します。
- 6 :
-
C‐3西部、市街地の外れの平地で響いていた騎士の歓喜の嗚咽は、たっぷり十五分程続いてようやく収まった。
敬愛する主君に背中を抱かれていた枢木スザクの姿は、ナイトオブゼロと呼ばれ恐れられた騎士の面影など全く感じさせず、寧ろ、歳相応どころかそれよりも幼い、
どこにでもいそうなただの少年のようにしか見えず、そんな彼の初めて見せた姿と、この状況そのものに困惑しながらも、
ユーフェミア・リ・ブリタニアは何も訊かず、ただずっとスザクを優しく抱きしめ、「大丈夫だから」と繰り返し声をかけていた。
満点の月の光に照らされる彼女のその姿は、さながら完成された一つの芸術のように、慈悲と母性に溢れて輝いているように見えた。
「……申し訳ありません、ユーフェミア様。みっともない所を――」
「ユフィ」
「え?」
「今ここにいるのは私とあなただけなんだから、そんな呼び方はしないで、スザク」
「…うん。ごめん、ユフィ」
「いいのよ、スザク。こんな状況じゃ仕方ないものね。でも、私の知らないスザクの一面を見れたのは、ちょっと嬉しかったかも」
ふふっと小さく微笑みながら言われたユーフェミアの言葉に、スザクもつられて表情を綻ばせる。
ブラックリベリオン以降は殆ど見せる事のなかった表情を自分が自然と作っていた事に、スザクはただ純粋に幸せを感じていた。
悲しみ、怒り、裏切り、嘘を吐き、戦い、戦い、また戦い―――ユーフェミアを失ってからのスザクの一年近い時間は、ほとんどそんな感じに過ぎていた。
どれだけ彼女の存在が自分の中で大きな物であったかを、スザクは改めて認識した。
◇◇◇
「でも、本当にいったいどういう事なのかしら? 私は確かル……ゼロをG1ベースの中に招いて、それから……それから……あら……?」
場所を近くの雑居ビルの一室に移してからの話し合いの口火を切ったのは、ユーフェミアのその一言だった。
(そうか、ルルーシュのギアスの影響で…)
ルルーシュの絶対遵守のギアスを受けた者はごく一部の例外――ここにいる二人がまさにその例外だ――を除き自由意志を失い、ギアスをかけられた前後と、
ギアスが発動している時の記憶が欠損する。
死の直前までギアスの影響下にあったユーフェミアの場合は、すなわち死ぬ前のある程度の記憶と、自分が死んだという記憶が欠損していた。
尤も、これは二人にとっては喜ぶべき事でもあったのだが。そんな記憶が残っていたら、今こうして正面から言葉を交わす事などできたかどうか。
兎も角、この島に喚ばれる以前の彼女の最後の記憶は、行政特区日本の会場にてゼロ(ルルーシュ)をG1ベース内に招き入れた時のものだった。
「…たぶん、連れ去られる時に気を失わされたせいで、直前の記憶が曖昧になってるんだよ。僕もそうだし」
「スザクもなの?」
「うん。僕もあの会場でユフィを見送ってからの記憶がはっきりしなくて…」
真実を知ってはいるもののそれを告げれる訳も無く、スザクは話を合わせてそう誤魔化す。
実際、気が付いたら連れ去られていたという部分はまったくその通りなのだから、話の筋を合わせるのは難しくない。
とは言え、この点を深く追求されればすぐにボロが出るのは目に見えているので、即座にスザクは話を切り替える。
- 7 :
-
「そうだ、ユフィ。さっき名簿を見た時に気付いたんだけど、どうやらルルーシュもここに連れて来られてるみたいなんだ」
「ルルーシュも!?」
些か猿芝居の感はあったが、スザクの狙い通り、ユフィの意識は即座にその事実に引っ張られた。
「ああ。この名簿に……あれ?」
背負い袋から参加者名簿を取り出そうとしたスザクだったが、その時、奇妙な事に気が付いた。名簿が二冊あるのだ。
パッと見、表紙や装丁に違いは見られない。厚さも完全に一緒だ。
(二人一組だから二冊支給されているのか?)
そう言えばさっきは最後まで支給品を検めていなかったな、と思いながら、スザクは一冊をユーフェミアに手渡し、自分はもう一冊を開く。
改めて見てみても内容が変わる訳でもなく、ルルーシュの名前はちゃんと始めの方に、ジェレミアの名前と主従セットで明記されていた。
そのすぐ近くに、スザクとユフィの名前、蒋麗華と黎星刻の名前も、それぞれ主従セットとされている。
「あったわ! 本当にルルーシュの名前が、最後の方に」
「え?」
そのユーフェミアの一言にスザクは首を傾げ、彼女の見ていたもう一冊の名簿を横から覗き込む。
果たしてその名簿では確かに、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名前は最後から二番目という位置に明記されていた。
加えて言うなら、その隣にある名前はどちらもジェレミア・ゴットバルトではなく、
手前側の名前はルーク・スカイウォーカー、次の名前はレミリア・スカーレットとなっていた。
(こっちの名簿は日本語での五十音順に…。とすると、僕が見た方の名簿は個別の支給品という事か)
参加者が主従の区別なくただ五十音順に明記された名簿と、それぞれの主従が明記された名簿を比べれば、どちらが情報価値が高いかは明らかに後者となる。
状況によってはこの名簿は重要な役目を果たしうるだろう。
とは言え、それにはまずそれ以外の情報が有り、更にその情報とこの名簿の情報を結びつけて他の情報を導き出せる頭脳を持った人物が持てば、の話でもある。
スザクも軍人としての戦術の心得や、高校生としての最低限の知識は、ユーフェミアも皇族としての教育による知識は有しているが、
そんな知識ではこの名簿を最大限に活かす事はできない。
「…どう考えてもルルーシュ向きの支給品だな、これは」
スザクが自分の見ていた名簿に視線を戻して呟くと、それにユーフェミアが反応して振り向いた。
「そうよスザク、ルルーシュを探しましょう! スザクとルルーシュが力を合わせれば、きっとこの事態も打開できるに違いないわ!」
- 8 :
-
◇◇◇
ユフィのその言葉に俺は一瞬、どう反応していいかを判断しかねた。
さっき「ゼロ」を「ルルーシュ」と言いかけた事からも、ユフィはルルーシュがゼロである事を知っている。おそらく、神根島で二人きりだった時に知ったんだろう。
そしてそれから間を置かずにあったあのキュウシュウ戦役で、俺とルルーシュは共闘して沢崎達の野望を挫いた。ユフィがそう思うのも当たり前の事だ。
確かに、それはそうかも知れない。
八雲紫の超常の力にどこまで対抗できるか判らないが、俺とルルーシュが力を合わせれば、その可能性は随分高くなるだろう。
他の参加者をまるめ込むのはルルーシュにとってはお手の物だろうし、話し合いが通用しない相手ならば、俺が剣となって討ち払えばいい。
そうやって他の参加者を全て味方に付ける事ができれば、或いは八雲紫を倒し、この島から脱出する事もできるかも知れない。
――だが、そうやって無事帰ったとして、そこにユフィの居場所は無い。
ユフィが願う行政特区日本は既に無い。ギアスがそれを壊してしまったから。
ルルーシュやジェレミア卿達は人々を明日へと向かわせるべく、現ブリタニア体制の破壊と、世界征服を進めていくだろう。
俺はナイトオブゼロとして剣を振るって屍山血河を築き、ルルーシュに世界の憎しみが集まるよう動く事になり、最期の戦場で「死ぬ」。
そしてゼロとなりルルーシュをす事で、ゼロ・レクイエムは完遂する。
だけどもしその途中で、もしくはその後で生きたユフィの存在が明らかになったら全てがフイになる。
虐皇女として名を残してしまったユフィの事を、日本人達は決して許さないだろう。
途中であればルルーシュ以外の憎しみの矛先が現れてしまう事になるし、完遂後なら、折角収束した人々の怒りと憎しみは再燃し、最悪、完全にユフィに集中してしまう。
どちらにしても、ゼロ・レクイエムは失敗に終わる。
…そしてそうさせない為にも、ルルーシュはここでもう一度、ユフィをそうとするだろう。
もし、存在を完全に秘匿すると言う条件でルルーシュと共闘できて、八雲紫を打倒して一緒に帰れても、今度は俺がユフィの前からいなくなる。
残る生涯をゼロとなって送る事が決まっている俺がユフィに会える訳もない。おまけにユフィの自由は完全に失われる。
だからその案は、なんらかの理由でどうしても八雲紫に頼る事ができない事が確定した上での――――例えば、
どんな願いでも叶えるという彼女の言葉が完全にウソだと判明した場合等の――次善の…いや、最悪よりはマシという程度の選択だ。
Cの世界ではルルーシュと共にラグナレクの接続を拒否したが、あの時はそもそもユフィがいなかった。今とは前提からして状況が違いすぎる。
そうなるとやはりユフィにとっての最善は、このし合いで俺達が最期の一組になり、八雲紫にユフィの安寧を望む事だろう。
もちろん八雲紫の言葉がウソではないという事が前提になるが、それを判断する材料は今は皆無だ。
誰にも責められず、逃げ隠れする必要も無く、この島での悲劇さえ忘れさせ、ユフィがずっと笑顔でいられる場所と時間を求める。それが最終目的だ。
その為にはルルーシュ。もしどうしても君がユフィをそうとするなら……例え、例え君でも―――
- 9 :
-
◇◇◇
「…そうだね。ルルーシュと合流できれば、きっとみんな無事に帰れる」
「ええ。だから頑張りましょう!」
昏い願いを口にできるはずも無く、スザクは取り繕うように答えてから名簿を仕舞い込み、未確認だった支給品の検分を再開する事にした。
目的がどうあれ、この島で生き延びなければならない事には間違いないので、少しでもそれを有利にできる可能性は確認しておかなければならないからだ。
「えっと…仮面?」
「そうだね…」
魔剣、特別名簿に続いて三つ目にでてきた支給品は、顔半分を覆う白い仮面だった。
白木のような骨のような、なんとも判別のつかない素材で出来たその軽い仮面の頭には、ちょこんと小さな角が付いている。
仮面舞踏会にでも行けば、似たような物はあるかも知れない。
どうあれ、戦いの道具でない事には間違いなく、その軽さから、防具としても期待できそうにはないとスザクは判断した。
だが、まるっきり役に立たないかと言われると、この二人にとってはそうでもない。
「ユフィ。この仮面は君が付けていた方がいい。まだ君の皇位継承権の返上は公になってないんだ。悪目立ちするのは避けた方がいい」
「そうね。この間みたいな事はもうコリゴリだもの」
軽く笑みを浮かべながらユーフェミアはその仮面を受け取り、早速自分の顔に付ける。
先日(彼女にとっては)の学園祭で自分の正体が露見した時の騒動に思う所があったらしく、特に渋る様子は無かった。
傍から見れば些か以上にシュールな出で立ちとなってしまったが、本人はこういった物を付ける事自体が新鮮な体験だからか、どこか嬉しそうでもあった。
「最後の一つは……って、ええっ!?」
「まあ…!」
最後の支給品が取り出された時、スザクは常らしからぬ素っ頓狂な声を漏らし、ユーフェミアもまた、大きく口を開けて驚いていた。
背負い袋に入れられたスザクの手が最後に掴んだのは、マフラーの先端だった。
マフラーといっても防寒具の方ではない。バイクなどに付いている方のアレである。
そしてずっしりと手に伝わる重みから、マフラー単体ではなく、それが付けられている“本体”もあるであろう事が容易に判断でき、
それを破損させぬようにとスザクは背負い袋を僅かに傾けてゆっくりと引っ張り出し―――そして無事、見事な“馬”が現れた。
バイクのハンドルとマフラーが取り付けられた、とても奇妙で、しかし見事な体躯と鮮やかな黒毛を持った馬だった。
鞍が背に乗せられている所を見ると、乗用馬と見て間違いないだろう。
「私、こんな馬を見るのは初めて…。スザクはどう?」
「僕も、こんな馬は初めて見る…」
ある意味、この島に喚ばれた事を遥かに上回る衝撃に、二人ともただただ唖然とするばかり。
それでも、理外の事態への耐性がある程度あったスザクの方が逸早く正気に戻り、馬を背負い袋へと戻した。
- 10 :
-
◇◇◇
「とにかく、まずはルルーシュを探しましょう。ルルーシュが行きそうな所となると…」
「少なくとも、人の集まり難そうな所には行かないと思う。まずは都市部の各施設を―――!」
「どうかしたの?」
「…誰か近付いてくる」
雑居ビルを出た二人が地図をお互いの片手にこれからの行き先を決めようとしていた、その時だった。
スザクの聴覚が僅かに二つの人の足音と、もう少し大きな、金属の擦れ合うような音を捉えた。
それも、意図してか偶然かは判らないが、まっすぐこちらに向かって来ている。
(甲冑か…。足運びも軍人のそれに近い。場合によっては面倒な事になるな…)
「…ユフィ。これを持って、少し離れてて」
「スザク?」
背負い袋から先程の馬と無毀なる湖光を取り出し、スザクは馬と、背負い袋を預けたユーフェミアを共に下がらせる。
馬はよく躾けられているらしく、スザクの意向を組んで暴れず嘶(いなな)かずユーフェミアに寄り添った。
それを確認したスザクは無毀なる湖光を正眼に構え、足音の主達を迎えんとする。
そしてすぐに、別のビルの陰から二つの人影が姿を現した。
◇◇◇
織田信長と明智光秀の主従が最初に向かうべき場所として定めたのは、B−2の市場であった。
いかな第六天魔王とて人の子である。飲まず喰わずで動き続ける事などできようはずも無い。
鍛え抜かれた武人としての肉体は、少々食事を抜いた所で動けなくなるようなヤワなものではないが、最長で三日もの期間をそのままを過ごすには流石に不安がある。
腹が減っては戦は出来ぬと言うが、戦国の世に生きてきた二人にとっては、それは至って当然の理(ことわり)だった。
もし支給品に水か食料があるか、もしくは周囲に戦国の世に生きてきた二人でも一目で分かるような食料品店――例えば八百屋や魚屋やだ――でもあれば、
或いは最初は活動拠点を探すなどしていたかも知れないが、生憎飲食物の類は支給されておらず、またそういった店も無く、
それがまた信長の怒りをいっそう強くしていた。
故に、信長達は目的が一致した本能と理性の赴くまま、食料を求めて北上していた。
つまるところ、今の信長は飢えた獣ならぬ、飢えた悪魔である。知性も理性もちゃんとあるので獣より性質が悪い。
しかもそこに八雲紫への憤怒が加わっているので、一般人からすれば大変近寄りがたい、剥き出しの凶気そのものと言っても差し支えないような状態だった。
ぶっちゃけて言ってしまえば、信長は今、非常に機嫌が悪かった。
だからつまり、そんな状態の信長達と出くわしたスザク達は、あまりに不運であったと言えよう。
- 11 :
-
「ぬぅううううううううんッ!!!」
「ぐう…っ!」
信長自身の膂力とキュプリオトの剣の強靭さが相俟った一撃を、スザクは辛うじて無毀なる湖光で受け流す。
その斬撃はまともに受け止めればそのまま吹き飛ばされてしまいそうな程に重く、それでいて一撃一撃の精密さに乱れも遅れも無い。
接触直後、問答無用で襲撃してきた信長の一撃を皮切りに二人は戦闘状態に突入したが、戦況は明らかにスザクが不利だった。
スザクも何度か攻撃を試みているものの、そのほぼ全てがキュプリオトの剣に受け止められるか、受け流されて頑強な甲冑に小傷を付けるに止まっている。
スピードの差から手数こそスザクの方が多いが、どちらが劣勢であるかは火を見るよりも明らかだった。
決してスザクが弱い訳ではない。
幼少期からの道場での修練に始まり、ブリタニアの軍人として、そしてナイトオブゼロとして積み重ねた戦闘能力。
更には気充分の強敵からの襲撃という切迫感から「生きろ」のギアスも発動しており、平時のスザクを上回る力も発揮されている。
だがそれでも尚、信長の実力がスザクのそれを上回っていた。
戦が常の世で培った経験も、純粋なかつ強大な筋力も、齢二十にも満たぬスザクではどちらも到底及ばぬ物で、凡そスピード以外の全てに於いて大きな開きがあった。
とは言え、スザクが信長相手に善戦している事もまた確かである。
(あの歳で信長公とああまで渡り合えるとは……。ああ、できる事なら私が頂いてしまいたかった…。
毛唐の姫に仕える日の本の若武者…如何な事情があるのかは判りませんが、是非啼かせてみたかったですねぇ…)
信長から距離を置いて戦いの行方を見守る光秀の口元から、チロリと赤い舌が覗く。
この状況で信長の戦いに加勢などしようものなら、彼の逆鱗に触れる事必至なのは当然理解しているので、今はただ黙して動かない。
謀反を成就する前に自分が処断されてしまっては、共に阿鼻に赴かんとする目的が夢幻の如く雲散霧消してしまう。
そんな事態は光秀にとってあまりに願い下げだったので、仕方なく戦闘の様子と、そのどさくさにユーフェミアが逃走しないかを見張っていた。
(おや……?)
だが、そうしてずっと動かずにいたのは彼だけだった。
ユーフェミアも身動きはしていなかったのだが、彼女は初めて直接目の当たりにした“人間同士の戦い”が生む威圧感に、ずっと「動けずにいた」。
しかし、ある程度戦いが長引いた事で少しだけ精神的に余裕が出来たのか、彼女の仮面の下の双眸に凛とした決意が漲ったのを、光秀は見逃さなかった。
そして、彼女は動いた。
「おやめなさい! こんな事をして何になるというのです! この島に閉じ込められた人同士、皆で手を取り合って、このし合いを打破すべきです!
どうして剣を振るうのですか!? どんな理由があろうと、同じテーブルに立って話し合えば分かり合えない事など無いのですから!」
――それも、考えうる限りかなり最悪に近い形で。
- 12 :
-
「…光秀ぇ!」
「はっ」
その一言で主の意向を理解した光秀が、大鎌を振るって戦場に割って入り、信長に向かっていたスザクの無毀なる湖光の一撃を受け止めた。
「くっ!」
二対一かと焦りを浮かべるスザクだったが、その考えが間違いであった事を、すぐに思い知る事になった。
信長はくるりとスザクに背を向けると、しかし気は孕んだまま、憤怒の形相を浮かべて、まっすぐユーフェミアのもとへと歩み寄って行ったのだ。
スザクと光秀は勿論、当のユーフェミアですら、信長が話し合いの呼びかけに応じた訳ではない事がすぐに理解できた。
「我に逆らうというか…毛唐の小娘がぁ」
信長がキュプリオトの剣を大上段に構る。視線の先には勿論、ユーフェミアしかいない。
すぐ隣にいる見覚えのある軍馬は、視界には入っていても意識などまるでしていない。
「あ……っ」
これから起こるであろう事態が容易に脳裏に思い浮かび、ユーフェミアの全身がカタカタと震える。
生存本能のままになんとか逃げようとするも、それ以上の恐怖と威圧感により、足を動かす事もままならない。
瞳に宿っていた決意は、既に殆ど消沈していた。
「我は第六天魔王、織田信長であるぞ。我に逆らおうというのなら、例え女子供と言えど……容赦はせぬわぁ!!」
加減も容赦も一切無い袈裟懸けの斬撃が、ユーフェミアに向かって繰り出された。
「ユフィ!!!」
すかさずスザクが無毀なる湖光を手にしたまま、信長の一撃からユーフェミアの命を守らんと駆け出し、
『生きろ!!』
そして、一瞬足を止めてしまった。
その一瞬はあまりにも大切な時間で、どうしようもない決定打だった。
- 13 :
-
「ユフィいいいいいいいいいいいいいい!!!!! ―――ッぐうっ…!」
ユーフェミアの左肩から右脇腹にかけて凶刃の切っ先が走り、真紅の血液が噴水のように噴き出した。
そのまま彼女は意識を失い、その場にずるりと崩れ落ちる。
そしてそれとほぼ同時にスザクの背中からもごぽりと血液が溢れ出し、彼の両膝が地に落ちた。
「主の危機に恐怖から足を止めてしまうとは……私の目も曇っていたようですね。貴方を嬲ってもあまり面白くなさそうですから、もう楽にして差し上げましょう」
ギアスという超常の呪いの事など知る由も無い光秀の落胆の呟きが、大鎌の刃を突き立てられたスザクの背中にかけられた。
そして次は首を落とさんと光秀は大鎌を横凪ぎに振るい――盛大に空を切った。
「まだ動けるのですか!?」
スザクは地に伏した姿勢のまま、しかしすぐに体勢を整え直し、短距離走のクラウOスタートの要領で、前方に疾走する事で光秀の一撃を回避した。
与えた傷の深さから最早抵抗もできまいと思っていただけに、さしもの光秀も驚きを隠せない。
そしてスザクの向かう先は勿論、信長とユーフェミアの許。無毀なる湖光を右腕一本で振りかぶり――全力で投げ下ろした。
「ぬうっ!?」
斬撃を予想し、キュプリオトの剣で打ち払わんと構えていた信長にとって、武器を捨てる事になるその一撃は、流石に予想外だった。
投擲された無毀なる湖光は信長の具足の表側を貫通し、左足の甲に突き刺さった。
生憎貫通して地に縫い止めるとまではいかなかったが、スザクにとってはこの戦いでの最初で最後となる有効打となった。
そして奇襲が成功した事を確認したスザクは、信長に僅かに生まれた隙を見逃さず、倒れたユーフェミアを背負い袋ごと引っ張り抱え、馬に乗って即座に離脱を図る。
「逃がしませんよ…!」
「小癪なぁ!!」
一瞬遅れて動き出した光秀が大鎌を、足から無毀なる湖光を引き抜いた信長がそのまま無毀なる湖光を振るうが、
刹那の差で二つの斬撃はスザクには届かず、馬の尾の毛を数本散らすにとどまり、スザク達は満身創痍ながらも戦場から森の中へと離脱した。
【C-3/市街地/1日目-黎明】
【主:織田信長@戦国BASARA】
[主従]:明智光秀@戦国BASARA
[状態]:左足甲に軽度の刺し傷。スザクに対する強い怒り。
[装備]:キュプリオトの剣、無毀なる湖光
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を含む全ての敵の抹。
1:感情の赴くまま進む。
2:B−2の市場に向かい食料を確保する。
【従:明智光秀@戦国BASARA】
[主従]:織田信長@戦国BASARA
[状態]:健康
[装備]:小野塚小町の鎌@東方儚月抄、背負い袋(基本支給品、不明支給品×2(飲食物の類ではない))
[方針/行動]
基本方針:栄華を極めた信長に謀反を起こし、共に地獄へ行く。
1:臣下として信長に従う。
- 14 :
-
- 15 :
-
- 16 :
-
◇◇◇
(心臓は、動い、てる…。まだ、ユフィは、生きてる…!)
背負い袋を二人で背負う形でユーフェミアの体を自分の背中に密着させて馬を走らせながら、背中越しに感じる彼女の心臓の鼓動に、スザクは心底安堵した。
スザクが思っているよりもユーフェミアの負った傷は深くなく、早期に止血さえできれば、命に別状は無いものだった。
その幸運の最大の原因は、彼女が付けた仮面にあった。
この仮面はある科学者達がオリジナルとなる仮面をもとに複製したものであり、これを身に付けた者は、身体能力や免疫機能の向上といった恩恵を授かれるのだ。
そしてその身体能力の向上があったからこそ、ユーフェミアは信長に斬られる直前、向上した視力と反射神経を以って、
ほぼ本能的にだが、僅かに身を引いて致命傷を避ける事ができたのだ。
出血が派手だったのは、斬撃の勢いと傷の範囲の広さのせいで、主要な血管や骨、内臓は全て無事だった。
尤も、そんな仮面の効用も、その仮面が決して外せない事も、自分の方が遥かに重傷である事も、未だスザクは気付いていない。
(ともかく、早く、病院、に、行か、ないと…! デパートじゃ、すぐに、追い、着か、れる…!)
自分の背中から溢れ続ける血液と、ユーフェミアの体から流れ出る血液で体の前半分が真っ赤に染まりゆくユーフェミアを背に、
スザクの思考は僅か二つの事柄で塗りつぶされていた。
一つは、一刻も早くユーフェミアを病院に連れて行かなければならないという事。
そしてもう一つは、かつて枢木神社でルルーシュに対して向けた思いと同じで――
(どうして、俺に、こんな、ギアスを、かけ、たんだ、ルルーシュ………!!)
【C-3/北西端森林部/一日目-黎明】
【従:枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[主従]:ユーフェミア・リ・ブリタニア
[状態]:背中に深い刺し傷(放っておくと危険)。
[装備]:伊達政宗の馬@戦国BASARA、背負い袋(基本支給品一式、参加者主従別名簿@主従ロワオリジナル)。
[方針/目的]
基本方針:何があってもユーフェミアを守る。
1:ユーフェミアを病院へ連れて行く。
2:優勝して八雲紫にユーフェミアの安寧を願う。
3:もし八雲紫の言葉が嘘だっ等の理由で優勝を狙う意味が無くなったら、ルルーシュにユフィの存在を完全に秘匿してもらう事を条件に共闘して八雲紫を打倒する。
[備考]
※ユーフェミアのダメージが思っているより浅い事と、複製仮面の効果に気付いていません。
※織田信長、明智光秀を危険人物と認識しました。
【主:ユーフェミア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[主従]:枢木スザク
[状態]:気絶中。左肩から右脇腹にかけて中度の裂傷。早期に止血さえできれば命に別状は無い。
[装備]:複製仮面@うたわれるもの
[方針/目的]
基本方針:ルルーシュと合流したい。
1:???
[備考]
※複製仮面の効果に気付いていません。
※織田信長、明智光秀を危険人物と認識しました。
- 17 :
-
【複製仮面@うたわれるもの】
創世記の科学者達がアイスマン(ハクオロ)の仮面をもとに作り上げた複製品。
身に付けるとn単位の数千本の未知の繊維によって直接脳髄に縫い付けられ死ぬまで外す事ができなくなるが、
代わりその繊維が脳に直接働きかける事によって、身体能力と免疫機能が大きく向上する。
【伊達政宗の馬@戦国BASARA】
バイクのハンドルとマフラーが取り付けられた、伊達政宗の愛馬。
アニメスタッフによって“馬イク”の名称が与えられ、半ば公式化しているが本当の名前は不明。
【参加者主従別名簿@主従ロワオリジナル】
通常の五十音順名簿と違い、参加者の名前が主従別に明記された特別な名簿。
新たな主従関係が発生すると、それに応じて次の放送と同時に主従情報が書き換えられる不思議機能付き。
- 18 :
-
- 19 :
- これにて投下完了です。
ご支援有り難う御座いました。
そして、前スレでの容量確認漏れミスは失礼致しました。
- 20 :
- 思うんだけどさ、ユフィから見たスザクって一年後のスザクだろ?
作画の都合を抜きにしても一年分の変化ってありそうなもんだし、もっとわかりやすい部分で服装の違いもあるはずなのに
そのへんスルーなんだな
つーかスザク、ゼロレクイエムどうでもよすぎだろ
引くわ
まあ、だいたい登場話のせいだけどな
2話目でそれをこじらせただけで
- 21 :
- 新スレ一番槍投下乙です。
正直、予約時点では絶対どっちか死ぬと思ってたがこれは予想外。いや死にそうだけど。
それとハクオロさんの仮面付けたユフィ+馬イクを想像したらシュール過ぎて吹いたwww
>>20
そうか?
俺はこじらせたと言うよりは、登場話の方針覧に肉付けしたって印象を受けたけどな。
服装は俺も言われるまで気付かんかったw
まあ、書き手さんが「あっ」って思ったら加筆か修正するだろ。
- 22 :
- >>20
お前の書いた「ぼくがまんぞくするさいこうのSS」とやらを読んでみたいわ
どうせなんやかんや理由付けて書かないんだろうけどなwww
- 23 :
- 投下乙です
本当、ユフィ組は支給品が幸いしたなー
名簿の支給品もなかなか便利そうだ
…つかあれ?もしかしてユフィがつけた仮面ってもう取れねえの?w
>>20
まあスザクはナナリー生きてて動揺したルルーシュに喝を入れた人とは別人のようだが…あの登場話じゃしゃーない
これ以上フォローのしようがないだろ
- 24 :
- そうだな
議論スレに纏められた指摘に無反応だったくせにしれっと次の予約をして
自分のミスをフォローするために他の書き手が提案した案に調子に乗って注文つけるようなアホ書き手のせいだもんな
この書き手を責めちゃいけないよな、すまんかった
- 25 :
- あの注文にはワロタwww
そしておそらく、あの書き手は15才近辺なんだろうと生暖かく見守ろうと思った
- 26 :
- このスザクは自分がフレイヤでした日本国民のことなんてすっかり忘れてそうだな
- 27 :
- まだ必要ないとは思うけど、一応保守。
- 28 :
- 雑談スレから転載
89 名前: ◆YwLV7iJ2fw[sage] 投稿日:2011/12/01(木) 19:46:52 ID:Gy1twSqI0
本スレが未だに規制中なのでこちらで。
本スレでご指摘ご感想をくださった方々、有り難う御座いました。
恥ずかしながらスザクの服装の件については完全に失念していましたので、
先程wikiの方で加筆保管して参りました。
- 29 :
- そう言えば水と食料が基本支給品に入ってないロワって珍しいよな。
…良かったなセイバー、stay仕様じゃなくってw
- 30 :
- マスター。お腹が空きました(キリッ
- 31 :
- 土曜だけで書けると思ってたら、意外と時間かかった…
投下します
- 32 :
- 少女は、人ではなかった。
頭上には輝く輪を戴き、背中には二枚の翼を持っていた。
自らの存在を誇示するかのように、不可思議に煌めく白銀の翼。
その両翼で周囲の闇を切り裂きながら、シナプス最強の戦略エンジェロイドタイプαイカロスは疾走していた。
白い甲冑に包まれたほっそりとした体躯は、華奢な少女のものである。
だが、その両足がアスファルトを蹴り立てる轟音は、到底ただの少女のものでは有り得ない。
瞬き一つする合間にも、イカロスの身体は瞬間移動でもしたかのように前進し、その後には砕け散ったアスファルトの粉塵がたなびく。
周囲の耳目を大いに惹きつけるであろう、先程の大爆発。
それを我が身に集めるべく、イカロスはこうして囮としての役割を自らに任じていたのである。
周囲は開けた草原だ。
好戦的な人物であれば、こうして目立つイカロスの姿を捉え、狙って来るに違いない。
「こうするしかなかった……こうするしか、なかったんです。マスター……」
しかし、そんな荒々しくも大胆な行動とは裏腹に、イカロスは悲しみに満ちた声を力なく漏らす。
つい先程、イカロスは隠れ潜んでいた人間と、機械仕掛けの従者を害した。
相手の動向を、確かめる事すらせずに。
それは平和を愛し、人を傷付ける兵器を何よりも嫌う智樹の意に反する行為だ。
決して許されるはずもない罪科だ。
それを理解していてなお、イカロスはそうせざるを得なかった。
かつて、己が兵器たる本性を智樹に見せた時、彼はそれを許してくれた。
本当はただの女の子でしかないのに、そんな機能を持たされている事が可哀想だと。
でも、お前のその力のおかげで友達が助けられる――そう、言ってくれた記憶(メモリー)はイカロスの記憶領域の
一番大切な所に保存されている。
嬉しかった。
主の意と共に、空を自由に翔ける喜びを、初めて得た。
だが、今の状況はその時とは違う。
大勢の参加者の中から、マスターだけを生き残らせる。
そんなエゴイスティックな目的の為に、イカロスは自分達と同じ立場の参加者たちを――罪もない彼らを虐する事を決意したのだ。
太古の昔、シナプスの尖兵として地上を焼き払った時のように、無慈悲な空の女王となって。
自分の本性は、やはり兵器でしかなかったのだと、イカロスはマスターに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
他の道をシミュレートしなかったわけではない。
八雲紫なる女性との問答において、まず争いを回避しようとした者がいたように、このし合いを良しとしない者たちは
それなりにいるはずだ。
智樹ならば、そんな彼らと手を取り合い、このし合い自体を打開しようとするだろう。
――だが、それでどうなると言うのだろう。
打開派と手を組めばあの時、し合いの続行を望んだ者たちを排除する所までは可能だろう。
しかし、ここは既にし合いのシステムの中なのだ。
いつまでもし合いが停滞していては《禁則》に触れてしまう。
使える時間は有限。
その中で、あの八雲紫を打倒し、なおかつその間マスターの身の安全を保ち続ける……
そんな奇跡が起きる可能性は、ZEROに近いとイカロスの電子頭脳は算出していた。
なにせ、八雲紫の居場所すらわからないのである。
彼女に拉致された時も、今ここへと送られてきた時も、イカロスのセンサーは何の兆候も捉える事が出来なかった。
ならば、何かの奇跡が起こり八雲紫と対峙出来たとしても、次の瞬間には再びどこかへと落とされてしまうだろう。
そして、そここそが彼女の言うところの、地獄であるかも知れないのだ。
あの見せしめにされた男たちのように、大事なマスターが苦悶の絶叫をあげる様など、シミュレーションすら行いたくなかった。
しかも、それが五千四百万年も続くなどと。
7千万年前に建造されたイカロスには、その途方もない時間が実感出来る。
- 33 :
-
八雲紫との対決の道だけは選べない。
それが、イカロスの電算能力が導き出した結論であった。
その一方で、参加者たちの皆しという道も、実現困難である事は明らかだった。
最初の主従こそ予想外にも難なくせたが、何せし合いと言うほどである。
決して、誰かが一人勝ち出来る様にはなっていない筈だ。
それは、イカロスに施されたデチューンからも判断出来る。
イカロスが本来の能力を発揮すれば、このような会場はAporonの一撃で跡形も無く消し飛んでいる。
それをさせないように制限しているという事は、八雲紫が望むし合いとは対等な力関係を基本としているのであろう。
1組ずつ、確実に。
それがこのし合いの、デフォルトスタイルなのだ。
「でも……それじゃ間に合わないかもしれない」
前述した通り、参加者を皆しにして智樹を救うというプランも、決して成功率が高い訳ではなかった。
時間を経る毎に、マスターが死ぬ確率は高まっていくのだ。
こうしてイカロスが走っている間にも、智樹に魔の手が迫っていないとは言い切れない。
マスターを護りながら、他の参加者たちをしていくプランもあるにはあったが、マスターに静止された時点でイカロスには
行動の自由がなくなってしまう。
エンジェロイドにとって、マスターの命令は絶対なのだから。
故に、イカロスにとってマスターを救う道は『これしかなかった』のである。
だが、そうなると智樹の命運は、まさに運否天賦であった。
智樹は妙なバイタリティに溢れる少年ではあったが、能力的にはただの中学生に過ぎない。
どう見立てても最初の12時間を過ぎる頃には、生存率は半分を切っているだろう。
主の傍にいる事が出来ない以上、イカロスが取れる対策は、より早く他の参加者たちを皆しにする事だけだ。
イカロスが付近の参加者をせばすほど、智樹のエンカウント率は低下して安全となる。
だからこそ、こうして闇夜の中でも目立つ姿を晒しているというのに、一向に害対象を発見出来ない事にイカロスは焦りを覚えた。
「やはり……あの空に還らなければマスターは救えない……」
紅玉(ルビー)を大粒にカットしたかのようなイカロスの両眼が、夜空に輝く満月を捉える。
空の女王の異名通り、本来のイカロスにはマッハ24という高速で空を翔ける機能が備わっている。
それは単独で大気圏を突破し、宇宙空間への飛翔すらも可能とするほどの、驚異的な能力だ。
だが、いつのまにハッキングを受けたのか、現在のイカロスは兵装の展開はおろか、単純に飛ぶ事すら出来ずにいた。
走りながらもイカロスは自らのシステムをハックして、その制限を解除しようと試みていたのだが、電子戦に優れたタイプβニンフなら
いざ知らず、イカロスのハッキングは、遅々として進まない。
「それでも、飛ばなきゃ……マスターを救えないエンジェロイドに価値なんて……ないっ!」
手段は、ある。
絡め手が駄目なら、力押しをすればいいだけだ。
制限で翼への動力供給が絞り込まれているというのなら、そのか細い動脈(パス)に無理矢理高出力の力を供給してやればいいのだ。
イカロスに搭載された動力炉は、シナプス最高の技術の結晶。
可変ウィングの核(コア)。
それはイカロスというフレームに、収まりきらないほどの出力を内在している。
だから、フレームへのダメージを度外視すれば、理論的にはそれは可能なのである。
そう、フレームへのダメージを度外視すれば。
「可変ウィングシステムセーフティ解除、モードウラヌスクィーン――オーバードライブ」
決断を下すや否や、イカロスは自らを律する命令文(コマンド)を唱えた。
そのコマンドに従い、イカロスに内蔵された可変ウィングのコアは無限の力を翼へと流し込む。
それはイカロスの羽根を長く伸ばし、その翼を更に光輝かせる。
- 34 :
- そして。
そして、限界を超えた力の発露は、やはりイカロスの身体を蝕むダメージとなってリバースする。
光り輝く羽根が大量に抜け落ち、全身の骨格が軋み声をあげる。
壊れた先から、自己修復機能で修復していくが、到底間に合うものではない。
「アアッ! ウアアアアアアァァァッ!!」
痛みに強いイカロスでも、思わず悲鳴を漏らすほどの激痛が走る。
痛みとは、身体が発する危険のシグナルだ。
このままでは壊れる。
壊れてしまう。
そんなシステムが発する危険信号を、イカロスは意思の力で無理矢理抑え込む。
壊れてもいいと。
どうせもう、マスターに二度と褒めて貰えないのだ。
二度と叱ってもらう事も、頭を撫でて貰う事もない。
この身はただ、マスターを生還させるためだけのただの道具。
それを達成出来る時間だけ持てば、それでいい。
だいすきなマスターと、ずっといっしょに居たい。
そんな分不相応な望みなど、とうに捨てている。
そうでなくては、成らない。
そうしてすら、事は成らない。
悲壮な覚悟を決めて、エンジェロイドの本分を全うせんとイカロスは飛び立つ。
疾走の勢いを借りて、大空へと一歩踏み出す。
「戦略エンジェロイドタイプαイカロス、出撃します!」
◇ ◇ ◇
そして戦場の空に、空の女王は再び君臨する。
零れ落ちた雫は、そらのおとしもの。
――さようならマスター。どうか生きて――生き延びてください。
【Dー4/空/1日目深夜】
【従:イカロス@そらのおとしもの】
[主従]:桜井智樹@そらのおとしもの
[状態]:オーバードライブ状態(現在『空の女王』になっており身体能力が上がっています)
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:マスター以外の全参加者の皆し。
1:空から害対象をサーチする
2:掛けられた制限をなんとかする。
[備考]
※参戦時期はカオス戦(1回目)終了後です。それ以降の出来事はまだ知りません。
※このままだといずれ、身体が崩壊します。
- 35 :
- 投下終了
- 36 :
- 投下乙です。
確かに翼持ちはある程度の飛行が可能だって制限だったが、この代償は大きいな…!
速度や高度にも制限かかってる可能性は高いし、果たして目的を果たせるのか…?
しかし、なんとも悲痛な覚悟だが、その方向死体しかいないよイカロスさん。
まあ、飛行してる以上次に誰かに遭遇できる可能性はかなり高いけど。
- 37 :
- 投下乙です
ある程度の正気は残してる状態なのか
先走って奉仕マーダーに走ったがそのご主人様はなあ…
しかも皆しより先に崩壊する方の可能性が大きいのが泣ける
さて、何かで方向転換する可能性もあるがどうなるやら
- 38 :
- 死亡フラグ立ってる主が二人いるんだよな……
- 39 :
- テスト
- 40 :
- イカロスのキャラ立て直したな乙
- 41 :
- 投下開始します。
- 42 :
- 【001】
「今度こそ成仏しろよ」
そんなことを言って僕はゴミ捨て場の前でパンパンと手を打った。
別に何かを拝んだりだとか手締めとして拍手を打ったというわけではない。ただ一仕事を終え、手から埃を払っただけだ。
あれから。
人気のない街中へと入り、続けて当て所なくぶらぶらと歩いていた僕たちは住宅街の一角にゴミ捨て場を見つけると
これ幸いにとあのかつては僕の愛車だったマウンテンバイクの残骸をそこに、多少の葛藤はあったものの捨てたのだった。
いやだって、鈍器にするならもうそこらじゅう、例えば交通標識なんかだとかをどこからでも調達できそうではあったし
そうなるとわざわざ自転車の残骸なんて使いづらいものを後生大事に抱えていてもしかたがない。
なにより格好がつかないし、どこか不憫なビジュアルですらある。それにそもそもとして一度は捨てたものなのだ。
そういう訳で、僕は改めてかつては愛車として活躍していたマウンテンバイクと別れを告げたのだ。
もしかすると、じゃあ捨てるんだったらどこでもいいだろう。なんなら海に向かって放り投げればよかったじゃないか。
なんて言う人がいるかもしれないが、しかし僕はそんな考えには断じてノー!だと言わせてもらおう。
そんなことをしては僕のイメージが……ではなく、一般的な常識としてゴミをルールを守らずに遺棄するのは犯罪行為だ。
尤も、その常識というものがここでだとどうなのかは不明なので、あくまでマイルールを暫定的に採用することになるのだが。
ゴミはゴミ箱に、資源ゴミは指定のゴミ捨て場にという訳で、わざわざゴミ捨て場を探してそこに捨てることにしたのである。
おいおい何を言っているんだ、自転車やなんかの大きなものは資源ゴミではなく粗大ゴミとして専用の業者に引き取って
もらうものだろう?とつっこんだ人は中々に鋭い。だがしかし、その点においても僕は抜かりない。
資源ゴミと粗大ゴミとを区別する分け目はそのゴミの大きさ――つまりはサイズによる。ここで素材は考慮されないのだが、
粉砕されたマウンテンバイクはもはや自転車の体をなしてはいなく、無数の細かいゴミでしかないから資源ゴミとして
捨ててもいいのだ。多少、規定のサイズを超えるパーツもあったが、それは吸血鬼の力を駆使して解体した。
ついでに、金属部品とプラスチック、ゴムのパーツも分別しておいた。一分の隙すらないのだ。
「こと、ゴミ捨てにおいてはこの阿良々木暦をあなどらないでいてもらおう!」
「……誰に向かって話しておるんじゃ我があるじ様よ」
忍の視線が冷たい。
「いや、決意をもってスタートしたのはいいけど、何も起きないもんだからちょっと、な」
「まぁ、それはわかるがのう」
あの砂浜から出発し、街中に入るあたりまでは誰かどこかに潜んでいないか、どこからか奇襲されるんじゃないかと
緊張しながら歩いていたものだが、どうやらこの島は思いのほか広いらしく、じゃあ滅多なことでは誰かと出会わないんじゃないか
という疑念を抱き、そしてそれから数時間ほどしてそれを実感してしまえば最初にあった緊張感など維持できるはずもない。
そして、ただ知らない夜の街を徘徊するだけという状況に耐えかねた結果が、僕をゴミ捨て場に駆り立てた……とか、みたいな。
「ミスタードーナツでも見つかればよかったんじゃがのう」
「それだとお前がドーナツ食ってるシーンだけでこの話は終わっちまうよ」
本当はもっと必死にならなくちゃいけないってことは理解してるし、あの決意は決して偽物じゃなかったはずなんだが
なんせ未だに僕らは自分達が島のどこにいるのかすらわかってないんだよな。
島の中にある市街のどこかってのはわかってはいるんだが。
「果報は寝て待てとも言うが?」
「この場合、待ってやってくるのは訃報だよ」
「うまいこと言えてるの」
「シャレにならないけどな」
さて、本当にどうしたものか――。
- 43 :
- 【002】
深く暗い森の奥であどけない少女の悲鳴が響き渡っていた。
「――ねぇ、お姉さんと一緒に遊びましょ? お菓子あげるから、ねぇ、いいでしょう?」
「ひっ! ちょ、ちょっと……嫌です! あひゃ、やめてくださいってば! ゆ、幽々子様! 見てないで助けて――」
いやいやを繰り返しながら助けを求めているのが妖夢で、小さな彼女にしがみついて息を荒げているのは百合川と言う。
二人は足元も覚束ない森の中を器用に、まるで情熱的な南米のダンスのようにつきつ離れつくるくると回っている。
一見喜劇のようではあるが、得体の知れない女に絡まれた妖夢の悲鳴には本物の恐怖が混じっていた。
「あらあら、どうしようかしら」
妖夢の主である幽々子はなにも考えていなさそうな笑みを浮かべ、ただ従者の危機を面白そうに眺めているだけだ。
事態の滑稽さが増し、なおのこと妖夢が不憫という風になってゆく。
「百合川〜〜っ」
翻って、百合川の主であるれい子はという額に青筋を浮かべていた。
従者が命を聞かず足並みを乱していること。そして彼女の趣味趣向があいも変わらずなこと、その両方に対しての怒りだ。
れい子は強く地面を蹴ると奇妙奇天烈な踊りを続ける二人のほうへと突進し――
「このどアホが――――ッ!!」
「ぶべらっ!?」
と、見事なドロップキックを百合川の即頭部に炸裂させた。
その時、れい子の短いスカートが全開で捲れ上がり派手な下着が露になったのだが、それはさておき
れい子の全体重(一応ダイエット中)がのせられたドロップキックを喰らった百合川はおもしろいくらい見事にぶっとび、
地面の上を勢いよくごろごろと転がると木の幹へとぶつかりそのまま動かなくなった。
そして、半泣きになっていた妖夢はというと、その隙に地面を這って幽々子の方へと避難している。
「ハァハァ……。あー、ほんと最悪ね、こいつは」
脳震盪でも起こしたのかぴくりともしない百合川を見下ろし、れい子は大きな溜息をついた。
百合川サキは完全な支配下にさえあれば実に優秀な戦闘力を持ったゾンビだが、こうも本性を曝け出してしまっては
ただのトラブル&キリング発生マシーンでしかない。一蓮托生の身としては気が重く憂鬱になるばかりだ。
「こんなことなら同じ百合川でも妹の方だとよかったんだけど……と、そうだ」
思い出したようにれい子は振り返る。
馬鹿なゾンビのせいで有耶無耶になりかけたが、今はし合いの場において敵と遭遇したという状況なのだ。
もう場が白けきったという感はあるが、それならば――とれい子は考える。
「えーと、その、どうしようかしら?
うちの相棒が失礼を働いたのはあやまるけど、だったらこの際、ここはひとまずこれで手を打つってのはどう?
私としては馬鹿正直にしあうってのもおかしいって思うし、もしあの八雲紫って女を出し抜くアイデアがあるなら――」
その正体はともかくとして相手は一見無害そうな女と子供だ。れい子としてはしあいたくないというのが本音である。
いや、もし相手が女子供でないとしても極悪人でもない人間をすのはれい子のポリシーに反する。
今のところ、していいのは八雲紫という女ただひとりしかいない。だから、れい子は協力しないかと提案しようとしたが、
「――じゃあ、し合いを始めましょうか。尤も、生きているあなたと生きていない私とじゃし合いっこにはならないけど」
しかし亡霊の女は軽い笑みを浮かべたままそれを無視した。
嫌な予感が走る。この時れい子はすでに自然と戦闘体勢を取っていた。
「ちょっと……、何を考えているの? あんたまさかあの八雲紫って女を信用してし合いをおっぱじめる気?」
「それを教える必要が……いえ、今ここであなたが知る必要があるのかしら?」
- 44 :
- 幽々子の周囲になにか淡く光るものがふわふわと浮かび始める。
「蝶……?」
それは蝶――幽々子の霊力から生み出された死霊の化身であった。
「蝶は死の前兆を知らせるもの。あなたはこの死の誘いを抗い続けることができるかしら?」
無数の蝶が森の中を少しずつ淡い光で照らしてゆく。そしてそれは次第にれい子を囲い、死へと誘いはじめた。
【003】
それを避けられたのはれい子がすでに身構えていたことと、これまでに幾度も異常な敵と戦いその経験を有していたからだ。
浮かび上がった死霊の蝶の群れから数羽が飛び出すと、一羽が一つの光弾と変じて音もなくれい子へと到する。
ゆるやかな弧を描いて飛来する光弾を、れい子は持ち前の運動神経を発揮し、飛んで避けた。
一発、二発、三発と、避けられた光弾は直前までれい子がいた場所やその背後に着弾し火薬が炸裂したような音を鳴らす。
「くっ……!」
首だけを振り向かせ、確認した光弾の威力にれい子は冷や汗を垂らした。
地面には小さなクレーターが生まれ、直撃を受けた木は樹皮が捲れ上がり、幹が抉れて生木の部分が覗いている。
爆弾――という程でもないが、少なくとも子供だけで遊んじゃいけない花火くらいの威力はあるらしかった。
「(このままだと、まずい……)」
れい子は光弾へと姿を変えて次々と襲い来る蝶を避けながらこの場を切り抜ける方法を考える。
現状は最悪に近い。百合川のスピードならば弾幕の間を縫って接近しあの幽霊へと一撃を加えることも不可能ではないが、
今は(れい子自身が気絶させたのだから自業自得だが)ゾンビの百合川を使うことができない。
「せめて、(私だけでも)逃げる方法を考えないと……!」
立ち並ぶ木々がれい子に盾とされその身を抉られる。避けに徹するだけならばそれはあまり難しいことではなかった。
だがそれだけでは問題の解決にはならない。これといった打開策も浮かばず、焦燥が募るばかりだ。
今のところ順調に光弾を避けてはいるが、いくら避けても蝶の数が減っている様子は窺えない。
無尽蔵というわけではないだろうが、しかしそれを避け続けるれい子の体力よりかは余裕があるだろうことは確実だ、
その上、森の中というシチュエーションはれい子にとってよい方向にも悪い方向にも同じように働く。
盾となる木は時に行動の邪魔となり、苔に覆われた地面はいつその足を取るとも限らない。
「――あっ!?」
そして危惧した瞬間はすぐに訪れた。
連なって発射された光弾を避けたのはよいが、その際に出っ張っていた木の根に足を取られたのだ。
地面に倒れこむまでの間に受身とそこからの離脱をシミュレートする――が、それよりも早く追撃がれい子の背中を打った。
その瞬間れい子が思い出したのは、もみじなどと言って裸の背中を叩き合う遊びのことだ。
光弾で身体を打たれる感触はあれとよく似ていて、そしてその何十倍も強烈だった。
「…………っ、…………!!」
雷を落とされたような衝撃に悲鳴を上げることすらもできず、れい子は地面へとそのまま倒れこんだ。
激しい痛みに手足は痺れすぐには起き上がれそうにもない。このまま続けて攻撃を受ければもうそこでお終いだ。
だがこの瞬間、無様に土へと顔をつけてその感触を感じ取った時、れい子の頭の中に一つの方法が浮かび上がった。
「(私の……“武器”を使えば……)」
だがしかし、それを実行するにはこの地面に伏せた状況はマズい。これでは“自分が最初の餌食”になってしまう。
すぐさまに立ち上がりあの幽霊女から距離を取らなければならない。しかし、まだダメージが回復するまでには時間がかかる。
故に――れい子は動くことを放棄し、“逆に動かないように努めた”。
- 45 :
- 「(ここは“気絶したフリ”で、少しでも時間を稼ぐ……!)」
無論、ここで相手が無慈悲にも追撃をかければそこまでだ。
だがしかし、れい子はこれまでの態度からあの女がそんなことをせずに“余裕”を見せるだろうと踏んでいた。
「なんてことないのね。それじゃあお遊びはお終いにして、あなたをしてしまいましょうか」
そして、そのれい子の予想は正解だった。
幽々子は蝶を使うのではなく、自ら止めを刺すべく“ゆっくりと歩いて”近づいてくる。
れい子の元へと辿りつくのに要する時間はおよそ20秒ほどだろうか。できればもう10秒は欲しいとれい子は考える。
“30秒あればダメージは回復し、ダッシュで距離を稼ぐ”ことができる。
「(そうだ……もっと近づいてこい。こんな身体だと、近づいてきてもらわないと攻撃を当てることが)――できないからっ!」
地面に顔を伏せたまま足音だけで近づいてくる幽々子への距離を測り、
彼女が3メートルの位置まで来たところでれい子はスカートに挿していた拳銃を早撃ちの要領で抜き、――撃った。
雷鳴の様な耳を劈く音が静寂な森の中に響き渡り、れい子の測っていた通りの位置にいた幽々子が身体をくの字に折る。
「幽々子様ッ!?」
離れた位置で事の成り行きを見守っていた少女が悲鳴を上げる。
だがそんなことはどうでもいい。問題は“後10秒だ”。どうせこの攻撃は――この“幽霊女には通用しない”。
「…………あらいやだ。身体に穴が開いてしまったわ。こんな“弾”を受けるのは初めてよ」
やはりそうだった。幽々子は拳銃で撃たれたにも関わらずなんら痛痒を感じている様子がない。
ソンビと同じなのだ。もう生きてはいない者に、痛みはダメージとならない。
もし有効なダメージを狙うなら刃物や鈍器だ。亡霊だろうとゾンビだろうと動けなくなるまで崩すのが最良の攻略法である。
なので破壊面積の小さな銃弾は有効な攻撃ではない。そう、れい子も理解していた。これはただの時間稼ぎにすぎない。
「あなた、亡霊を前に死んだフリだなんておもしろい子ね」
そして、“やはり”。目の前の幽霊女はれい子の反撃に対しても激昂することなどなく余裕を保ったままだ。
強者であるが故、絶対死なないと確信してるが故に、弱者に興味を持ち、こんなにも簡単に隙を見せる。
拳銃を発射してから10秒、そして余裕を持ってもう1秒。
身体の中の痺れが取れたことを確認したれい子は猫のように素早く立ち上がり、彼女に背を向けて駆け出した。
「あら? 逃げちゃうの?」
それは正解だ。れい子は逃げる為に疾走する。だがしかし、今距離を取っているのは逃げるためではない。
“呪文を唱える時間”を稼ぐ為。そして、なにより――その“攻撃に自分を巻き込まないよう”にする為ッ!
ジャスト3秒で15メートル駆けたれい子はその場で止まり振り返った。距離を取るのは必要。
だが相手に攻撃を再開させるのもまずい。速やかにこちらが相手に“有効な攻撃”を仕掛けなければいけない。
れい子はゾンビ召喚者の印である五芒星(スター)が描かれた右の掌を突き出すと、間髪入れずに“呪文”を唱えた。
「魔王サタンよ――ッ! 我が願いを聞き入れ給え!
この静謐な森に満ちる死せる者共を死の楔から解き放たんが為、そなたの偉大な力を持って今ここに一時の息吹を!」
それは反魂の呪文。魔王サタンと契約した《魔女》のみが行使できる“死者をゾンビとして蘇らせる力”だ!
「なんなの……?」
幽々子と、そして彼女の従者である妖夢が怪訝な顔をする。
彼女達は亡霊と半人半霊である。なので、れい子の呪文が真なる力を持っていようと影響を受けようはずもない。
例え魔王サタンの力を借りているのだとしても、ソンビ使いである以上、その呪文の効果は死体にしか適用されない。
ならば、何故れい子は呪文を唱えたのだろうか?
ここには死体など(すでにれい子のゾンビである百合川を除けば)ありはしないのに。
れい子は幽々子達の正体を見誤ったのだろうか? いや違う。彼女は“ここに死体があること”を知ってる!
- 46 :
- カチ……カチ……、カチカチ……カチカチ…………――
何かを打ち鳴らす不気味な音がどこからともなく聞こえ始めてくる。それは死神の持つ時計の針の音――死への秒読みだ。
カチカチ、カチ、カチ……カチカチカチ、カチカチカチカチ……カチカチカチ……――
「小さい頃、何度も同じ“失敗”を繰り返したわ。ゾンビ召喚術を試そうと公園や山の中で隠れて行使した時にね。
だから“学習”した。どこに“死体があって”どこに“死体がない”のか。
私のゾンビ召喚術は私の声が届く範囲に無差別に作用してしまう。無差別にゾンビ化してしまうッ!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ――!!!
「これは“死番虫”!?」
不気味な音に完全に囲まれるに至ってようやく幽々子はその音の正体に気づいた。
それは“虫”だった。地面を覆いつくす無数の“虫のゾンビ”が頭や牙を打ち鳴らす音だったのだ。
「さっき地面に倒れて土の臭いを嗅いだ時に思い出したのよ!
そして、抉られた木の幹の中に“木の中を住処とする顎の強い虫が住み着いている痕跡”を発見した!」
自然の中にある虫や野生動物の死骸は、人間社会の中にあるものと違ってどこかに片付けられたり処分されるということがない。
故に、自然の地面とは積み上がった死体の層であり、どこにでも死体があるのだとれい子は幼い頃からの経験で知っていた。
「じゃあ私はおさらばさせてもらうわ。身体中が虫食いになるのは御免だからね」
言って、再びれい子は踵を返して走り出す。今度は二人の目の前から姿を消すまで振り返ることすらなかった。
【004】
「やれやれ、死霊魔術師だと思ったら蟲使いだったなんて……逃げられちゃったわね」
れい子が立ち去った後、幽々子と妖夢に襲い掛かってきた虫の大群はあっけなく幽々子の光弾によって打ち払われた。
虫のゾンビとは言っても、自然の中であればすなわちその分解(処分)も早いというわけである。
故に原型を留めているものは少なく、その脅威も見た目ほどではなかった。
そもそもとしてれい子の術で蘇った以上、れい子から離れてしまえばこの手の即席ゾンビは力を長く維持できないのだ。
つまり、虫のゾンビの大群――これすらも、逃げる時間を確保するための時間稼ぎだったという訳である。
「逃げられちゃった……じゃないですよ幽々子様!」
幽々子がくっついた虫を払い、身体に空いた穴を霊体をいじって埋めていると、従者の妖夢が詰め寄ってきた。
頭から虫を被ったのがよほど気持ち悪かったのか半泣きだが、ともかくして珍しい剣幕である。
「あらどうかしたのかしら?」
「いくら紫様の命だからって、見ず知らずの人間達とし合いをするなんて本気なんですか?」
粛々と進めていこうとする幽々子に対し、妖夢はこのし合いに対しては随分と抵抗がある様子だった。
斬ってから考える――が彼女の信条ではあるが、それも幻想郷の中に敷かれた不文律があってのものでしかない。
妖怪が人間をそうと脅かしてもいいが、しはしないししてはいけないのが現在の幻想郷だ。
故に、妖夢は強い人間や妖怪を問答無用で斬ったことはあっても、そうとしたことはない。
それは全て幻想郷(おままごと)の中での話だ。
「勿論、本気よ。それともここで他にすることがあるって言うのかしら?」
「これは紫様が起こした《異変》なんじゃないですか? だったら――」
「だったら、出会った相手を全部のして行けばいいじゃない。ほら、結局することは同じでしょう?」
- 47 :
- 「え、えぇ……? そ、そうなのかなぁ……うーん?」
「いいのよ。ここは幻想郷ではないのだから――」
苦悩する従者を前に幽々子はいつも通りの薄い笑みを浮かべ、枝葉に覆われて漆黒でしかない空を見上げる。
そこに、彼女の目には何が映っているのだろうか?
従者と違い、彼女はこのし合いに対しなんら疑問を抱いてないようであった。
それは彼女の気質なのだろうか、それとも彼女自身がすでに生者ではないからなのか、あるいは――……。
【E-3/山の中/1日目-黎明】
【主:西行寺幽々子@東方儚月抄】
[主従]:魂魄妖夢@東方儚月抄
[状態]:ダメージ(微)
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:不明。
1:???
【従:魂魄妖夢@東方儚月抄】
[主従]:西行寺幽々子@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:背負い袋(基本支給品)、不明支給品x4
[方針/行動]
基本方針:幽々子様に従う。
1:う〜〜ん。
【005】
「ハァハァ…………、もう、限界……くたびれた」
山を駆け下り、鬱蒼と茂った森を抜けてようやく月の光を拝むと、もう限界だとれい子は草原の中に飛び込んだ。
去り際に回収した背負い袋をそこらに放り出し、ごろりと横になって弾んだ息を整える。
逃げている途中、何度も木にぶつかったりこけたりしたので服や髪の毛は滅茶苦茶で、もう「……ぼろ」という風だが、
なんとか五体無事に彼女は逃げ切った。
光弾を受けた背中はどこかで手当てする必要があるが、立って歩けないというほどでもない。
「さて、いつまでも寝ているわけにはいかないわよね。こんな状態で誰かに見つかったら危険だし」
れい子は上半身だけを起こすと、目立たないよう姿勢を低くしたまま辺りを見回した。
「ラッキーね。街が近くにある。まずはこの背中を手当てして、それにもうもう服もボロボロだから調達して――」
再び草の中に身を隠すとれい子は素早くこれからの予定を立てる。
まず最優先は傷の手当てだ。そしてボロボロになった制服の代わりに新しい服が欲しい(かわいいやつという条件がつく)。
長期戦になるなら飲食物の確保もしておきたい(そういえばショートケーキが食べたくなってきた)。
- 48 :
- 「地図にはデパートってあったけど、ここどこかしら? まぁいいか。じゃあ行くわよ。百合か――」
立ち上がり、さぁ出発だ――というところでれい子はそのことにようやく気がついた。
「しまった……完全に忘れてた……」
己の従者を置き去りにしてきてしまっていることに。
これは、確かに不注意だと言われても仕方がないことだが、彼女を擁護する余地もなくはない。
本来、自分のゾンビとして召喚できる存在は召喚術という名前の通り、呼んだり帰したりできるものなのだ。
なのでいつも通りならばここで改めて百合川を召喚すればいいのだが――
「マズった……。実際、あいつがいないとかなり困る」
やはり、ここでは離れたゾンビを呼び戻すことはできないようであった。
これはここに連れて来られてた段階でなんとなしに感覚で理解していたことだが、図らずもそれが実証されたこととなった。
「戻る――ってのはなしよね。(死にたくないし)」
草原の中で立ち尽くし、山のほうを見つめるれい子の身体を夜の海風が静かに撫でる。
「うん」
そして、れい子は決断した。
「さぁ、行こう」
もう、あいつは見捨てようと――。
【E-3/南東・草原/1日目-黎明】
【主:姫園れい子@ゾンビ屋れい子】
[主従]:百合川サキ@ゾンビ屋れい子
[状態]:疲労(中)、背中に大きな傷
[装備]:コルトM1851@現実(弾数x5/6発)、コルトM1851の弾丸@現実(x30発)
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x3
[方針/行動]
基本方針:し合いを勝ち抜く(?)
0:南無。
1:街へ行って、怪我の治療や物資の調達をする。
[備考]
※参加時期はイーヒン編終了後です。(8巻)
【006】
あれからも、僕たちはただ当て所なく歩き回ることを繰り返すだけだった。
なんとかしてこの現状を打開したいと思うのだが、まずはここが島のどこに位置するかを把握しないと何も始まらない。
なので、僕は地図を開き、あっちかこっちかとにらめっこしながらただ歩き回るのである。
- 49 :
- 「って言うか、アバウトすぎるよ! この地図!」
簡単なのはいいけど。びっしり細かく書き込まれた地図ってなんか逆に分かりづらいし読む気が失せてしまうものだから。
まぁ、こう言ってられるのも今のうちだけだろう。僕だって大体の当たりはもうつけているんだ。海の近くだ。とかな。
「はいそこ、残念な目で僕を見ない」
「そうは言うがなお前様よ。何が悲しくてバトルロワイアルの中で道に迷って右往左往しなければいけないのじゃ」
「お前だってわからないんだからお互い様だろ」
「儂らザ・ザンネンズって感じじゃの」
「ザが二つ被って呼びづれーよそのコンビ名」
とまぁ、先ほどからずっとこんな調子である。いつも通りの流れとはいえ我ながら恥ずかしい限りだ。
ほんとはやる男なんだぜ僕は。いや、ほんとに。
「お。お前様やそこに人がおるぞ。あいつに道を聞こうではないか」
「なるほど、それは名案だな。でかしたぞ忍」
あれ?
「なぁ、そこなケバい格好したボインボインのちゃんねーよ。ひとつ道を尋ねたいんだがよいかの?」
「お前はどうしてそう死語ばっかマスターしてんだよ――って、そうじゃなくて」
「死語の世界へようこそ」
「意味がわからねー!」
ほら、僕たちの目の前にふらふらと現れたお姉さんもちょっと引いてるじゃないか。
なんか気持ち顔色も悪いし、こりゃちょっとどころかドン引きってやつだぞ。
しかしまぁ、こんな夜道で会うには随分と扇情的で、忍の言葉を借りればボインボインのお姉さんだ。
大きさで言えば羽川と同じくらいかそれ以上あるかもしれない。僕の見立てだと比較して大よそ±2センチの範囲か。
それがチューブトップによってその天辺を露にしているのだというから、一見のセクシーさは比べるべくもない。
もっとも、僕くらい上級者だとこんなわかりやすいエロっぽさよりも、もっと奥ゆかしい中に秘められたものを求めるんだけどな。
「おい、おぬし大丈夫か?」
「そんなに素直に心配するな。悲しくなるだろう……と、ん?」
忍が大丈夫かと声をかけたのはセクシーパンクお姉さん(仮)の方だった。
よく見れば目つきが怪しく、息が上がっているのか随分とハァハァといっている。それにやっぱり顔色もよくないし。
ひょっとして、悪漢に襲われて逃げてきたのだとも言うのだろうか。
もしそうだとするならようやく僕らの物語も動き出すというわけだ。ギャグパートを終え、シリアスな本編というわけである。
「……あ、道? うん、道ならお姉さんが教えてあげる。だからこっちにおいで」
ようやく口を開いた彼女の声はまじかる☆タルるートくん(アニメ)の河合伊代菜ちゃんみたいな声だった。
まぁ、僕としては断然、伊知川累の方が好みなので特に感じ入るというところはないのだけど、見た目相応のかっこ可愛い声だ。
ともかくとして血も涙もない非情な物語かと思ったら案外親切な人物が出てきて一安心だ。これも普段の行いというやつだろう。
「おお、これは親切にすまんの。おい、あるじ様。この女が案内してくれ――ふにゃっ!?」
こっちを振り返った忍を、セク(略)お姉さんが後ろから抱きかかえるとそのまま向こうへと走り出してしまった。
ちょ……、確かに忍は抱きかかえて誘拐したいくらい可愛いが、だからといってそんな断りもなく抱くのはいけないだろう。
反則だ。とんだ協定違反だ。紳士淑女の風上にも置けない。
「忍を抱いていいのは僕だけだッ!」
「お、お、おお〜攫われる〜……って、何を抜かしやがるんじゃお前様は!?」
つい、誤解を与えてしまう発言をしてしまったような気がするが訂正する間もない。
ドップラー効果よろしく刻一刻と遠ざかる忍の悲鳴を追い、僕もセク姉(省略完了形)の後を追って走り出した。
- 50 :
- 「お姉ちゃん、いっぱい可愛がってあげるからね。最初はおままごとがいい? それとも一緒にお風呂に入ろうか?」
「追いついたら忍の身体を思いっきりぎゅうぎゅうするぞ。鎖骨も肋骨もぷにぷにのお腹も全部僕のものだぁああああ!」
「行くも帰るも地獄じゃああああ〜〜〜〜!」
――もうしばらくは、このノリらしい。
【Fー4/市街/1日目ー黎明】
【主:阿良々木暦@物語シリーズ】
[主従]:忍野忍@物語シリーズ
[状態]:健康(現在吸血鬼の力が高まっています)
[装備]:対怪物戦闘用13mn拳銃ジャッカル(残弾30)@HELLSING
背負い袋(基本支給品)、マスク・ド・のマスク@そらのおとしもの
[方針/行動]
基本方針:ゲームを終わらせて島から脱出し元の日常に戻る。忍と行動を取る。
1:忍を誘拐したセク姉を追う!
2:なるべく戦わない。襲ってくる人間が居ても極力さない。
[備考]
参戦時期は鬼物語終了後です。それ以降の時系列の出来事はまだ知りません。
【従:忍野忍@物語シリーズ】
[主従]:阿良々木暦@物語シリーズ
[状態]:健康
[装備]:
[方針/行動]
基本方針:暦と行動を取る。
1:あ〜れ〜。
[備考]
参戦時期は鬼物語終了後です。それ以降の出来事はまだ知りません。
【従:百合川サキ@ゾンビ屋れい子】
[主従]:姫園れい子@ソンビ屋れい子
[状態]:ダメージ(微)
[装備]:クラブの鉤爪@北斗の拳
[方針/行動]
基本方針:基本的にれい子に従う。
0:アハハハハハハハハハハ!
1:れい子がいないなら自分の好きにする。
2:金髪ロリっ子をお姉ちゃんとして可愛がる。
[備考]
※参加時期はイーヒン編終了後です。(8巻)
【コルトM1851】
姫園れい子&百合川サキに支給。
名前の通り、1851年から生産が開始された古い回転式拳銃。.36口径弾を使用する。
弾丸を装填するシリンダーが簡単に取り外すことができるようになっており、
予備のシリンダーがあれば素早く再装填できるのが特徴。
- 51 :
- 以上で投下終了します。
- 52 :
- 投下乙
前回の引きからバトルに突入するとは
しかし、駄目だこのゾンビ
早くなんとかしないと
- 53 :
- 乙
物語組のギャグパートはいつまで続くのか
このノリ面白いからいいけどw
そしてゆゆこ……他の東方組となぜ差がついた
紫を信じるが故なのだろうか?
- 54 :
- 投下乙です。このゾンビ主従はほんとにもうw
よく考えたらサキ好みのキャラってまだまだいるな。天子とかはやてとかレミリア(危)とかスバル(原作的な意味で)とか。
しかしまあ、原作からしてそうなんだが、やっぱり幽々子は何考えてるか解らん。
ましてや、紫の真意が見えてない現状じゃ、メタ的な意味でも誰にも解らんな…w
- 55 :
- >対怪物戦闘用13mn
m「n」になってるよ
前回からだけど
- 56 :
- 投下乙です
ゆゆこはナチュラルに命を軽視するから…だけなのか?
主催者と親友な件もあるし、独自の概念で動いているみたいだが…
れい子はれい子で原作的にロワの状況が日常生活みたいなもんだからこのままマーダー路線行ってもおかしくはないんだが…
そして物語組と妹萌えのゾンビは何をしているんだ?
真面目にロワ(?)してる奴もいるのにこいつらはwww
- 57 :
- >>56
キャスター・龍「呼んだ?」
- 58 :
- とりあえずマーダーは信長・光秀、龍・キャスター、イカロス、リルカ、ゆゆこ、れい子ってところか?
あと政宗とかもそうか?
- 59 :
- 少し筆休め(?)に一枚。
多分、ロワ中じゃ実現しないと思うドリームタッグ編・その1 「性格豹変コンビ 百合川サキ&ハート様」
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/f5/93dd428b81302e7f11739e2a8130492d.jpg
- 60 :
- >>59
イラストまで描けるとか何処の完璧超人ですか貴方は……本気で尊敬します。
これはwikiにもお絵描き掲示板を作らないといけませんね! …私にはそんな技術も知識もありませんがw
ともあれ、これより投下させて頂きます。
- 61 :
-
草木も眠る丑三つ時。満点の月と立ち並ぶ街灯によって照らされた夜の車道を、奇抜なファッションの二人の偉丈夫が歩いていた。
太陽に拒まれ、人の世の理(ことわり)に逆らいし夜の住人、吸血鬼。
自ら望んでソレになった男の名は、ディオ・ブランドー。通称DIO。
そのDIOの手によってソレになった事に歓喜し、二つの意味で同じ道を歩むのは、彼の忠実な従者、ヴァニラ・アイス。
二人が宿敵を待ち受けていたはずの館から、突然このし合いに参加者として放り込まれてより、約三時間。
宵の内に日の光の射さぬ拠点を求めて孤島の砦跡を後にし、支給されたカヌーで海を渡り、本島に上陸してからは市街地へと歩き続け、
しかし彼等は――他の大多数の参加者にとってもだが――幸運な事にその間誰にも遭遇する事無く、最初の目的地候補の一つと定めていた放送局まで辿り着いていた。
これは彼等が、もう一つの候補であった警察署までの道程は完全に拓けており、他の参加者との接触する可能性が高く、
それによって少しでも拠点到達が遅れる可能性を危惧し回避した事にも起因していた。
彼等の名誉の為に言わせてもらえれば、DIOにしてもヴァニラにしても、そこいらの人間に遅れを取るような事など無いのだが、
その自分達がこうして拉致されて“し合い”などという催しに参加させられている以上、支給された名簿の中に彼等の宿敵たる者達の名前が無くとも、
他の参加者に油断できない実力者ないしはスタンド使いがいないとは限らないと考えるのは当然の事だと言えよう。
まあ実際には、他の参加者にはスタンド使いなど一人もおらず、しかしそれ以外の実力者は何人もいるので、この判断はそこそこに的を射たものだったと言えた。
ともあれ、二人の吸血鬼は無事に当面の拠点となる予定の放送局への進入を果たした。
◇◇◇
「フム。エジプトの屋敷や先の砦跡に比べると、なかなか頑強にできているな」
エントランスの白塗りされただけのセメントの柱をコンコンと叩きながら、DIOが僅かに感心したような声で言う。
100年の時を経て(彼にとっての)現代に復活した彼だが、復活から現在でに至るまでは更に四年もの歳月が流れている。
その間にそれなりに現代の文明に触れ学んではいたものの、こと自分の生活空間に於いては、それに触れるのはこれがほぼ初めての事だった。
エジプトでの拠点たる洋館もかなり前時代の代物だったので、リノリウムの床やセメントの柱は彼にとって些か珍しい物なのだろう。
その傍らではヴァニラが、壁面に貼りだされた放送局の案内図を頭に叩き込んでいた。
「DIO様。二階に仮眠室があるようです。夜明けも近い事ですし、まずはそちらでお休みになられては如何かと」
「うむ」
忠実なる従者の主を慮っての申し出に、DIOもそれを良しとして頷き、二人で二階へと向かった。
ちなみに案内図によると、この放送局はそれほど大きな建物ではなく、総階層は地上四階までしかない。
内訳だが、まず一階は全体の三分の一がエントランスで、残るスペースは大倉庫、食堂、配電室。
二階は会議室、仮眠室、局長室及びそれに併設された局長の私室。
三、四階は完全に同じ構造で、それぞれラジオ用のスタジオ及びスタッフルーム、そして小さな控え室が八部屋ずつとなっていた。
ちなみに、トイレはちゃんと全ての階に男性用女性用があり、エレベーターや階段、非常階段も二つずつ設置されている。
本来この手の施設案内板は関係者しか立ち入れないスペースをここまで詳しく記載はしないものだが、この放送局はし合いの舞台にあるという特性上、
施設を余すところ無く利用させようといった意図があるのか、そういったスペースまで一切の抜かりなく記載されていた。
- 62 :
-
◇◇◇
「このDIOが……こんな寝所で眠れるかッ!!」
「おのれ八雲紫!! またしてもDIO様を侮辱しおって!!!」
二階の仮眠室に到着した二人は室内を一目見るなり、いきなり怒りを爆発させた。
別に、部屋が汚かったりとか、設備が不十分だったとかではない(綺麗でもなかったが)。
彼等の――より正確に言えばDIOの感性とプライドに、部屋の造りそのものと、用意された寝具が相応しくなかったのだ。
その部屋の床には一面ジャパニーズTATAMIが敷き詰められており、その上には何組かの煎餅布団と小さな枕が鎮座ましましていた。
どうせ実際に寝るのは棺の中だからまあいいか、なんて考え方は、残念ながらこの二人にはできなかった。
「DIO様に貴様等薄汚い東洋人のように床に這い蹲って眠れと言うのかあのクサレビッチがァーーーーーーーーッ!!!!」
特に、DIO本人よりも彼を怒らせた事に対するヴァニラの怒りは半端ではなかった。
即座にクリームを喚び出すとその中に入り、仮眠室中を片っ端から暗黒空間に飲み込んでいった。
煎餅布団はもとより、部屋の壁から床、天井に至るまでが次から次へと円形状に削り取られて消滅していく。
勿論、DIOを巻き込まないように予め軌道を考えて動きながらだ。
かくして、ものの一分も過ぎる頃には、仮眠室の八割方が消滅してしまっていた。
部屋の全てが齧りかけのレンコンのようになっており、眼下には一階の倉庫が見え、天井を見上げれば三階のスタジオが、
右を向けば水色のタイルの男性用トイレが、左を向けば――それはそれは豪華なベッドが存在する、一際立派な装飾がなされた部屋が覗いていた。
「フン。ちゃあんとこのDIO様に相応しい寝具があるではないか」
少しだけ口の端を吊り上げ、DIOは満足そうに呟いた。
言うまでも無いがこのベッドのある場所は、案内図にもあった、局長の私室である。
風通しが現在進行形でよくなりつつあるものの、DIOはこの私室を自分の寝室とする事にした。
◇◇◇
ややあって、仮眠室を完全に「仮眠室があった所」にし終えたヴァニラがクリームの中から出てきた後、
結果的にDIOの寝室の壁をも破壊した事になってしまったと知り、どこぞのうっかり侍よろしく、再び首を刎ねて詫びんとしたがDIOに諌められ、
寝室への棺の運び入れと外敵の接近が無いかを見張る役を命じられた為、棺を私室に運んび込んだ後、周囲を見渡せる屋上へと昇って行った。
一方DIOはと言うと、すぐに休みをとる事はせずに、無事だった方の四階のスタジオへと足を運んでいた。
壁に掛けられた時計の示す時間は午前四時前。日が昇るまでにはまだもう少し余裕があるので、休む前にやっておきたい事があったからだ。
「防音設備は問題なく整っているようだな。では、一つ試してみるとするか」
そう言ったDIOの両手には、最初に背負い袋から取り出してヴァニラに献上された、支給品の武器と防具がそれぞれ握られていた。
ヴァニラはスタンドがあるのだから全く必要無いと断じていたが、DIOの方はそう思ってはおらず、
寧ろ、スタンドと組み合わせる事でより自分の力とならないかを模索しようとしていた。
実際――といっても既にほぼ在り得なくなってしまった未来の話ではあるが、DIOは宿敵たるジョースター家の一族、空条承太郎との一戦で、
戦場となった市街の商店で調達したナイフと自分のスタンド能力を組み合わせて、承太郎を窮地に追い詰めた経験が“在り得た”のだ。
もとよりDIOは慎重かつ頭も切れ、利用できる物は利用し尽くすという考え方を持っていた。
故に、これらの武具の使いどころを把握しておこうと考えるのは、彼にとっては至極当然の事なのである。
そういった経緯はさて置き、兎に角DIOはまずスタジオの片隅に、防具である青いドーム状の携行盾を立て掛けると、
少し離れた所からスタジオのマイク等の機材や備品やらを、少しずつ重い物にしながら、少しずつ勢いを増しながら投擲していった。
何をやっているのかと訊かれれば見ての通り、盾の強度テストをしているとしか答えようが無い。
それなりに強度があれば、そのまま普通に盾として使うなり胸元に仕込むなりして、いずれ訪れるであろう戦闘時に役立つやもと考えての事だった。
だが、そんなDIOの考えは、彼にとっていい意味で裏切られた。
- 63 :
-
「む?」
ある程度まで投擲の勢いを増した時、奇妙な現象が起きた。
それまで投げた物を単純に強度と形状で以って弾いていたその盾が、投擲されたマイクスタンドを「止めた」のだ。
まるで慣性を消されたかのようにマイクスタンドはぴたりと盾の表面で止まり、ごとりとその場に落下した。
奇怪な現象には色々と慣れているDIOだったが、無機物が超常の力を発揮するというのは、彼の知る限り『石仮面』と『弓と矢』以外に無く、
些かに彼をも不思議に思わせた。
「フム…それではこれも試してみるか」
謎の盾の性能を更にテストせんと次にDIOが構えた物は、先程から携えていた武器。
アブトマット・カラシニコフ。別名AK-47。制式名称を7.62mmアブトマット・カラシニコバと言う、
世界で最も流通しているとさえ言われる歩兵用アサルトライフルである。
どのみちこの銃も試し撃ちをするつもりだったので丁度良いとばかりに、単射モードに切り替えたその銃口を盾に向け、DIOはトリガーを引いた。
一発、二発、ついでにもう一発と計三発の銃弾が、立て続けに盾へと撃ち込まれた。
勿論スタジオ内には銃声が響いたが、この音を外部に洩らさぬ為に、DIOはここをテストの場に選んだのだ。
果たして結果はと言うと、盾は一切傷付く事無く、着弾の衝撃で倒れる事すら無く、さながら己の力強さと描かれた翼の意匠を誇示せんと、その場に悠然と在り続けた。
撃ち込まれた弾丸は先程のマイクスタンドと同様に、盾の真下の床で転がっていた。
「ほう……見事だ。ではこれならどうかな!? “世界(ザ・ワールド)”! 時よ止まれ!!」
最後のテストとして、DIOは己のスタンド“世界”を喚び出し、その真価たる時間停止の能力を発動させた。
そして、“世界”の両の拳を矢鱈滅多に盾に叩きつける。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」
近距離パワー型であるDIOの“世界”の破壊力は凄まじく、その一撃一撃が人体程度なら容易に貫いてしまえる。
その“世界”の能力である時間停止によって、止まった時の中で突きのラッシュを受け続け、衝撃を蓄積され続けた盾は―――
「そして時は動き出す」
―――それでも尚、ただの一つの傷も生じさせずにその姿を保っていた。
この堅牢無比たる盾の名は『aegis=L(イージス=エル)』。ギリシャ神話に於いて、主神ゼウスが娘アテナに授けたとされる伝説の盾の名を冠されており、
とある世界の局地戦闘用戦略兵器に搭載されている、その名に恥じぬ逸品であった。
「ふ、フフ、フハハハハ!! 素晴らしいぞ! この盾は帝王たるこのDIOに“相応しい”ッ!!
八雲紫よ、なかなか面白い物を献上してくれたじゃあないか。少しだけお前の事を評価してやろう。……だが」
数時間前にヴァニラが思った事とほぼ同様の内容を口にしながら、上機嫌で盾を回収するDIOだったが、すぐにその表情には険しさが走った。
その原因は、先程のラッシュの際に彼が覚えた違和感にあった。
「時を止めれる時間が短くなっていた…。この私のスタンドに干渉したというのか…ッ!!」
この場に喚ばれるまでは確かに5秒ほど止めれた時間が、先のテストの時には2秒半ほどしか止めれなくなっていた。常時の凡そ半分である。
加えて、時を止めた事による体力・精神力の消耗も激しく、連続で時を止める事も難しそうだった。
「あの女……まさかこのDIOより強力なスタンドを持つというのか!?
或いはスタンドへの干渉を得手とするスタンド使いの仲間がいるのか……。ええい、どちらにしても忌々しいッ!」
怒りのままに手近にあった鍵付き棚を思い切り“世界”で殴りつける。
申し訳程度の止め具がひしゃげて外れ、衝撃で中からガチャガチャと音を立てながらカセットテープが雪崩れ落ちた。
「…フン、まあいい。今は判らん事を考えていても始まらんか。どれ、少しリラックスするとしよう」
部屋の隅にあったカセットデッキに目を留めると、DIOは適当にカセットテープをいくつか拾い上げ、デッキと一緒に寝室へと運び込んだ。
どうやら優雅に音楽鑑賞と洒落込むつもりらしい。或いは、現代の音楽に興味を示しただけかも知れないが。
基本的に好奇心旺盛なところのある男なのである。DIOという人物は。
- 64 :
-
◇◇◇
『BEAM my BEAM! わたしのヒカリと♪ BEAM my BEAM! あなたのヒカリ 愛ゆえにとぎすまされる♪―――』
「ほほう…なかなか乗れるリズムの曲ではないか」
『Faiien down♪ BLUE 青い空 どこまでも飛んでゆきたい♪ だけど飛べるのはあなた 私は飛べない――なぜなら―――』
「フフフフハハハハ最高に「ハイ!」やつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!!!」」
『きもちのいいとことび出てる♪ ボクたちキミたちとび出てる♪ 神様が決めたコトなの…? ピクピクふるえて怖いよ…―――』
「ウリイイイイヤアアアッー! ぶっつぶれよォォッ!!!」
ドグシャア――――――z___ッ
【カセットデッキ@現実 再起不能(リタイア)】
【D-2/放送局二階・局長私室/1日目-早朝】
- 65 :
-
【主:DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:ヴァニラ・アイス
[状態]:健康
[装備]:セラスの棺、AK-47(残弾27発)@現実、AK-47のマガジン(7.62×39弾30発入)×3、aegis=L@そらのおとしもの
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者に自分が支配者だと知らしめる。
1:そろそろ休みをとる。
2:他の参加者は倒すか支配する。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後。その為、まだジョナサンの肉体は完全にはなじんでいません。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
※“世界”の時間停止に関する制限に気付きました。
【D-2/放送局屋上/1日目-早朝】
【従:ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:DIO
[状態]:健康・吸血鬼
[装備]:背負い袋(基本支給品、折り畳みカヌー)
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者にDIOが支配者だと知らしめる。
1:外敵の接近が無いかを見張る。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後です。
※自分が吸血鬼になった事に気が付きました。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
[共通備考]
※D−2放送局二階の仮眠室が消滅しました。一階大倉庫、二階男性用トイレ、二階局長私室、三階スタジオの四室が素通しになっています。
【AK-47@現実】
1947年にソ連のミハイル・カラシニコフによって設計された歩兵用アサルトライフル。全長870mm。
セミとフルオートの切替射撃が可能で、発射速度は約600発/分もの連射性を持つ。
【aegis=L(イージス=エル)@そらのおとしもの】
局地戦闘用エンジェロイド、タイプ(デルタ)アストレアに搭載されている携行盾。
長時間の展開や前方以外のカバーが不可能といった欠点も持つが、発生される防御フィールドの強度はイカロスのAegisを上回る。
このロワではアストレアの装備から切り離されており、長時間展開不可の欠点は解消されている。
- 66 :
- これにて投下完了です。
短い割に時間がかかってしまって申し訳ありません。
- 67 :
- >>58
政宗は単にアーカードとの戦いを楽しんでるだけじゃないかな。
方針欄こそ???だったけど、俺はそう解釈した。
マーダーならルルジェレ組と、場合によってはスザクもそうなり得るな。
>>59
即座に保存しました。
新しい予約が無いと思ったら…w
その1って事は続きも期待していいんですね!?
>>66
投下乙です。
DIO様すらハイにさせるイカロスの歌声マジパネェ。
そして一気にマーダーらしい支給品がお披露目。aegis=Lとか最強クラスの防具じゃねぇか。
- 68 :
- アストレアから切り離されているから長時間展開不可の欠点は解消されているという理屈がよくわからん
むしろ逆じゃないの?
- 69 :
- このロワではアストレアの装備から切り離されており、また、長時間展開不可の欠点は解消されている。
こういうことだろう。
欠点を勝手に解消していいのかという疑問はあるが。
- 70 :
- 投下乙です
DIOさまも意外とお茶目というかノリノリだな、おいw
お前もかよw
そしてなんかすごい支給品が来たが序盤でそういうのを出すと誰かに奪われるんだぜw
- 71 :
- >>68-69
ああ、説明不十分ですみません。
私はaegis=Lの原作に於ける「長時間展開できない」というダイダロスの言葉を、
「アストレアは長時間展開させる事ができない」と解釈し、アストレアのいないこのロワでは、
「アストレアの兵装から独立したaegis=L」なら長時間展開可能なのではと考えてああ表記させて頂きました。
…解り難さ極まる解釈と策説明、申し訳ありません。
それで、執筆当時は本来の制限をアストレアのいないこのロワでどう再現するか思い付かなかったのですが、
確かに仰られるとおり、ただでさえ強力な装備の欠点を解消するというのはバランスに欠ける事になってしまいますので、
色々考えた結果、「最初にaegis=Lが攻撃を受けてから15分経過すると、自動的に最も近くにある背負い袋に収納される」
という制限を設けようと思うのですが、いかがでしょうか?
是非がどうあれ、このままでも可というご意見が過半数を占めない限りは、aegis=Lの制限にはなんらかの修正をさせて頂きます。
こちらの勝手でお手数をおかけしますが、どうか皆さんの忌憚無きご意見をお願い致します。
- 72 :
- まずは投下乙。つーかタイトルwww
普通なタイトルの作品が2つ続いたと思ったらこれだよ!w
DIO様がギャグパートを担当するロワなんて他にあったろうか…w
aegis=Lの制限に関しては、したらばの議論スレの方に私見を書いておきます。
- 73 :
- 自分は単純に動力的な問題だと思うけど…
- 74 :
- 二時間に一回だけ起動出来るくらいのシンプルさでいいんじゃない?
- 75 :
- 投下乙です。変なテンションがあって楽しいw
支給品の制限に関しては提案されたもので問題ないと思います。
で、
多分、ロワ中じゃ実現しないと思うドリームタッグ編・その2 「ロリ吸血姫コンビ レミリア・スカーレット&忍野忍」
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/e3/b9240a55883b8aa2259aa20c0261f6f2.jpg
- 76 :
- 世紀末臭全開な前とはエラく違うノリだ
織田信長&アーカードの魔王コンビを希望
- 77 :
- >>75
アニメでしか忍知らないんだけど、ロワだと全然印象違うんだよな
結構可愛いな
- 78 :
- 描いたよー。
多分、ロワ中じゃ実現しないと思うドリームタッグ編・その3 「悪鬼魔王コンビ アーカード&織田信長」
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/2e/35101242b992ca595d4554e5fd445bf1.jpg
- 79 :
- 勝てる気がしねえwwwwwwwwwww
- 80 :
- 乙ですううううううううううううう!!
何このクオリティwww
ってかこのコンビに勝てる気がしないw
- 81 :
- 皆様、こちらとしたらば議論スレでのご意見有り難う御座いました。
各ご意見をもとに改稿版をしたらばの仮投下スレに投下してまいりました。
お手数をおかけしますが、したらばの方までご足労頂ければ幸いです。
- 82 :
- Studio D.IO!の改稿版を投下させて頂きます。
- 83 :
-
草木も眠る丑三つ時。満点の月と立ち並ぶ街灯によって照らされた夜の車道を、奇抜なファッションの二人の偉丈夫が歩いていた。
太陽に拒まれ、人の世の理(ことわり)に逆らいし夜の住人、吸血鬼。
自ら望んでソレになった男の名は、ディオ・ブランドー。通称DIO。
そのDIOの手によってソレになった事に歓喜し、二つの意味で同じ道を歩むのは、彼の忠実な従者、ヴァニラ・アイス。
二人が宿敵を待ち受けていたはずの館から、突然このし合いに参加者として放り込まれてより、約三時間。
宵の内に日の光の射さぬ拠点を求めて孤島の砦跡を後にし、支給されたカヌーで海を渡り、本島に上陸してからは市街地へと歩き続け、
しかし彼等は――他の大多数の参加者にとってもだが――幸運な事にその間誰にも遭遇する事無く、最初の目的地候補の一つと定めていた放送局まで辿り着いていた。
これは彼等が、もう一つの候補であった警察署までの道程は完全に拓けており、他の参加者との接触する可能性が高く、
それによって少しでも拠点到達が遅れる可能性を危惧し回避した事にも起因していた。
彼等の名誉の為に言わせてもらえれば、DIOにしてもヴァニラにしても、そこいらの人間に遅れを取るような事など無いのだが、
その自分達がこうして拉致されて“し合い”などという催しに参加させられている以上、支給された名簿の中に彼等の宿敵たる者達の名前が無くとも、
他の参加者に油断できない実力者ないしはスタンド使いがいないとは限らないと考えるのは当然の事だと言えよう。
まあ実際には、他の参加者にはスタンド使いなど一人もおらず、しかしそれ以外の実力者は何人もいるので、この判断はそこそこに的を射たものだったと言えた。
ともあれ、二人の吸血鬼は無事に当面の拠点となる予定の放送局への進入を果たした。
◇◇◇
「フム。エジプトの屋敷や先の砦跡に比べると、なかなか頑強にできているな」
エントランスの白塗りされただけのセメントの柱をコンコンと叩きながら、DIOが僅かに感心したような声で言う。
100年の時を経て(彼にとっての)現代に復活した彼だが、復活から現在でに至るまでは更に四年もの歳月が流れている。
その間にそれなりに現代の文明に触れ学んではいたものの、こと自分の生活空間に於いては、それに触れるのはこれがほぼ初めての事だった。
エジプトでの拠点たる洋館もかなり前時代の代物だったので、リノリウムの床やセメントの柱は彼にとって些か珍しい物なのだろう。
その傍らではヴァニラが、壁面に貼りだされた放送局の案内図を頭に叩き込んでいた。
「DIO様。二階に仮眠室があるようです。夜明けも近い事ですし、まずはそちらでお休みになられては如何かと」
「うむ」
忠実なる従者の主を慮っての申し出に、DIOもそれを良しとして頷き、二人で二階へと向かった。
ちなみに案内図によると、この放送局はそれほど大きな建物ではなく、総階層は地上四階までしかない。
内訳だが、まず一階は全体の三分の一がエントランスで、残るスペースは大倉庫、食堂、配電室。
二階は会議室、仮眠室、局長室及びそれに併設された局長の私室。
三、四階は完全に同じ構造で、それぞれラジオ用のスタジオ及びスタッフルーム、そして小さな控え室が八部屋ずつとなっていた。
ちなみに、トイレはちゃんと全ての階に男性用女性用があり、エレベーターや階段、非常階段も二つずつ設置されている。
本来この手の施設案内板は関係者しか立ち入れないスペースをここまで詳しく記載はしないものだが、この放送局はし合いの舞台にあるという特性上、
施設を余すところ無く利用させようといった意図があるのか、そういったスペースまで一切の抜かりなく記載されていた。
- 84 :
-
◇◇◇
「このDIOが……こんな寝所で眠れるかッ!!」
「おのれ八雲紫!! またしてもDIO様を侮辱しおって!!!」
二階の仮眠室に到着した二人は室内を一目見るなり、いきなり怒りを爆発させた。
別に、部屋が汚かったりとか、設備が不十分だったとかではない(綺麗でもなかったが)。
彼等の――より正確に言えばDIOの感性とプライドに、部屋の造りそのものと、用意された寝具が相応しくなかったのだ。
その部屋の床には一面ジャパニーズTATAMIが敷き詰められており、その上には何組かの煎餅布団と小さな枕が鎮座ましましていた。
どうせ実際に寝るのは棺の中だからまあいいか、なんて考え方は、残念ながらこの二人にはできなかった。
「DIO様に貴様等薄汚い東洋人のように床に這い蹲って眠れと言うのかあのクサレビッチがァーーーーーーーーッ!!!!」
特に、DIO本人よりも彼を怒らせた事に対するヴァニラの怒りは半端ではなかった。
即座にクリームを喚び出すとその中に入り、仮眠室中を片っ端から暗黒空間に飲み込んでいった。
煎餅布団はもとより、部屋の壁から床、天井に至るまでが次から次へと円形状に削り取られて消滅していく。
勿論、DIOを巻き込まないように予め軌道を考えて動きながらだ。
かくして、ものの一分も過ぎる頃には、仮眠室の八割方が消滅してしまっていた。
部屋の全てが齧りかけのレンコンのようになっており、眼下には一階の倉庫が見え、天井を見上げれば三階のスタジオが、
右を向けば水色のタイルの男性用トイレが、左を向けば――それはそれは豪華なベッドが存在する、一際立派な装飾がなされた部屋が覗いていた。
「フン。ちゃあんとこのDIO様に相応しい部屋があるではないか」
少しだけ口の端を吊り上げ、DIOは満足そうに呟いた。
言うまでも無いがこのベッドのある場所は、案内図にもあった、局長の私室である。
風通しが現在進行形でよくなりつつあるものの、DIOはこの私室を自分の寝室とする事にした。
◇◇◇
ややあって、仮眠室を完全に「仮眠室があった所」にし終えたヴァニラがクリームの中から出てきた後、
結果的にDIOの寝室の壁をも破壊した事になってしまったと知り、どこぞのうっかり侍よろしく、再び首を刎ねて詫びんとしたがDIOに諌められ、
寝室への棺の運び入れと外敵の接近が無いかを見張る役を命じられた為、棺を私室に運んび込んだ後、周囲を見渡せる屋上へと昇って行った。
一方DIOはと言うと、すぐに休みをとる事はせずに、無事だった方の四階のスタジオへと足を運んでいた。
壁に掛けられた時計の示す時間は午前四時前。日が昇るまでにはまだもう少し余裕があるので、休む前にやっておきたい事があったからだ。
「防音設備は問題なく整っているようだな。では、一つ試してみるとするか」
そう言ったDIOの両手には、最初に背負い袋から取り出してヴァニラに献上された、支給品の武器と防具がそれぞれ握られていた。
ヴァニラはスタンドがあるのだから全く必要無いと断じていたが、DIOの方はそう思ってはおらず、
寧ろ、スタンドと組み合わせる事でより自分の力とならないかを模索しようとしていた。
実際――といっても既にほぼ在り得なくなってしまった未来の話ではあるが、DIOは宿敵たるジョースター家の一族、空条承太郎との一戦で、
戦場となった市街の商店で調達したナイフと自分のスタンド能力を組み合わせて、承太郎を窮地に追い詰めた経験が“在り得た”のだ。
もとよりDIOは慎重かつ頭も切れ、利用できる物は利用し尽くすという考え方を持っていた。
故に、これらの武具の使いどころを把握しておこうと考えるのは、彼にとっては至極当然の事なのである。
そういった経緯はさて置き、兎に角DIOはまずスタジオの片隅に、防具である青いドーム状の携行盾を立て掛けると、
少し離れた所からスタジオのマイク等の機材や備品やらを、少しずつ重い物にしながら、少しずつ勢いを増しながら投擲していった。
何をやっているのかと訊かれれば見ての通り、盾の強度テストをしているとしか答えようが無い。
それなりに強度があれば、そのまま普通に盾として使うなり胸元に仕込むなりして、いずれ訪れるであろう戦闘時に役立つやもと考えての事だった。
だが、そんなDIOの考えは、彼にとっていい意味で裏切られた。
- 85 :
-
「む?」
ある程度まで投擲の勢いを増した時、奇妙な現象が起きた。
それまで投げた物を単純に強度と形状で以って弾いていたその盾が、投擲されたマイクスタンドを「止めた」のだ。
まるで慣性を消されたかのようにマイクスタンドはぴたりと盾の表面で止まり、ごとりとその場に落下した。
奇怪な現象には色々と慣れているDIOだったが、無機物が超常の力を発揮するというのは、彼の知る限り『石仮面』と『弓と矢』以外に無く、
些かに彼をも不思議に思わせた。
「フム…それではこれも試してみるか」
謎の盾の性能を更にテストせんと次にDIOが構えた物は、先程から携えていた武器。
アブトマット・カラシニコフ。別名AK-47。制式名称を7.62mmアブトマット・カラシニコバと言う、
世界で最も流通しているとさえ言われる歩兵用アサルトライフルである。
どのみちこの銃も試し撃ちをするつもりだったので丁度良いとばかりに、単射モードに切り替えたその銃口を盾に向け、DIOはトリガーを引いた。
一発、二発、ついでにもう一発と計三発の銃弾が、立て続けに盾へと撃ち込まれた。
勿論スタジオ内には銃声が響いたが、この音を外部に洩らさぬ為に、DIOはここをテストの場に選んだのだ。
果たして結果はと言うと、盾は一切傷付く事無く、着弾の衝撃で倒れる事すら無く、さながら己の力強さと描かれた翼の意匠を誇示せんと、その場に悠然と在り続けた。
撃ち込まれた弾丸は先程のマイクスタンドと同様に、盾の真下の床で転がっていた。
「ほう……見事だ。ではこれならどうかな!? “世界(ザ・ワールド)”! 時よ止まれ!!」
最後のテストとして、DIOは己のスタンド“世界”を喚び出し、その真価たる時間停止の能力を発動させた。
そして、“世界”の両の拳を矢鱈滅多に盾に叩きつける。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」
近距離パワー型であるDIOの“世界”の破壊力は凄まじく、その一撃一撃が人体程度なら容易に貫いてしまえる。
その“世界”の能力である時間停止によって、止まった時の中で突きのラッシュを受け続け、衝撃を蓄積され続けた盾は―――
「そして時は動き出す」
―――それでも尚、ただの一つの傷も生じさせずにその姿を保っていた。
この堅牢無比たる盾の名は『aegis=L(イージス=エル)』。ギリシャ神話に於いて、主神ゼウスが娘アテナに授けたとされる伝説の盾の名を冠されており、
とある世界の局地戦闘用戦略兵器に搭載されている、その名に恥じぬ逸品であった。
「ふ、フフ、フハハハハ!! 素晴らしいぞ! この盾は帝王たるこのDIOに“相応しい”ッ!!
八雲紫よ、なかなか面白い物を献上してくれたじゃあないか。少しだけお前の事を評価してやろう。……だが」
数時間前にヴァニラが思った事とほぼ同様の内容を口にしながら、上機嫌で盾を回収するDIOだったが、すぐにその表情には険しさが走った。
その原因は、先程のラッシュの際に彼が覚えた違和感にあった。
「時を止めれる時間が短くなっていた…。この私のスタンドに干渉したというのか…ッ!!」
この場に喚ばれるまでは確かに5秒ほど止めれた時間が、先のテストの時には2秒半ほどしか止めれなくなっていた。常時の凡そ半分である。
加えて、時を止めた事による体力・精神力の消耗も激しく、連続で時を止める事も難しそうだった。
「あの女……まさかこのDIOより強力なスタンドを持つというのか!?
或いはスタンドへの干渉を得手とするスタンド使いの仲間がいるのか……。ええい、どちらにしても忌々しいッ!」
怒りのままに手近にあった鍵付き棚を思い切り“世界”で殴りつける。
申し訳程度の止め具がひしゃげて外れ、衝撃で中からガチャガチャと音を立てながらカセットテープが雪崩れ落ちた。
「…フン、まあいい。今は判らん事を考えていても始まらんか。どれ、少しリラックスするとしよう」
部屋の隅にあったカセットデッキに目を留めると、DIOは適当にカセットテープをいくつか拾い上げ、デッキと一緒に寝室へと運び込んだ。
どうやら優雅に音楽鑑賞と洒落込むつもりらしい。或いは、現代の音楽に興味を示しただけかも知れないが。
基本的に好奇心旺盛なところのある男なのである。DIOという人物は。
- 86 :
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◇◇◇
『BEAM my BEAM! わたしのヒカリと♪ BEAM my BEAM! あなたのヒカリ 愛ゆえにとぎすまされる♪―――』
「ほほう…なかなか乗れるリズムの曲ではないか」
『Faiien down♪ BLUE 青い空 どこまでも飛んでゆきたい♪ だけど飛べるのはあなた 私は飛べない――なぜなら―――』
「フフフフハハハハ最高に「ハイ!」やつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!!!」」
『きもちのいいとことび出てる♪ ボクたちキミたちとび出てる♪ 神様が決めたコトなの…? ピクピクふるえて怖いよ…―――』
「ウリイイイイヤアアアッー! ぶっつぶれよォォッ!!!」
ドグシャア――――――z___ッ
…全くの余談だがこの直後、DIOの傍らに置いてあったaegis=Lが、課せられた制限によりヴァニラの持っていた背負い袋の中へと戻り、
何があったのかと危惧して屋上から降りてきたヴァニラがDIOから事情を聞き、またしてもDIO様を侮辱したかとまたまたプッツンし、
その現況たるカセットデッキは、破片の一欠片も残さず暗黒空間にバラ撒かれてしまったとか。
【カセットデッキ@現実 再起不能(リタイア)】
【D-2/放送局/1日目-早朝】
- 87 :
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【主:DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:ヴァニラ・アイス
[状態]:健康
[装備]:セラスの棺、AK-47(残弾27発)@現実、AK-47のマガジン(7.62×39弾30発入)×3
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者に自分が支配者だと知らしめる。
1:そろそろ休みをとる。
2:他の参加者は倒すか支配する。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後。その為、まだジョナサンの肉体は完全にはなじんでいません。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
※“世界”の時間停止に関する制限に気付きました。
※aegis=Lの制限には気付いていません。
【従:ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:DIO
[状態]:健康・吸血鬼、八雲紫への更なる怒り
[装備]:背負い袋(基本支給品、折り畳みカヌー、aegis=L@そらのおとしもの(防御フィールド再発動可能まで残り二時間))
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者にDIOが支配者だと知らしめる。
1:外敵の接近が無いかを見張る。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後です。
※自分が吸血鬼になった事に気が付きました。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
※aegis=Lの制限には気付いていません。
[共通備考]
※D−2放送局二階の仮眠室が消滅しました。一階大倉庫、二階男性用トイレ、二階局長私室、三階スタジオの四室が素通しになっています。
【AK-47@現実】
1947年にソ連のミハイル・カラシニコフによって設計された歩兵用アサルトライフル。全長870mm。
セミとフルオートの切替射撃が可能で、約600発/分もの連射性を持つ。
【aegis=L(イージス=エル)@そらのおとしもの】
局地戦闘用エンジェロイド、タイプ(デルタ)アストレアに搭載されている携行盾。
長時間の展開や前方以外のカバーが不可能といった欠点も持つが、発生される防御フィールドの強度はイカロスのAegisを上回る。
このロワでは従来の欠点に加え、以下の仕様・制限が課せられている。
・aegis=L自体が一定以上の衝撃を受けるまで防御フィールドは発生しない。それまではただの頑丈な盾。
・防御フィールドは発生から10分が経過すると一度解除され、一番近くの背負い袋に自動的に収納される。
ただしaegis=Lの装備者が背負い袋を所持していた場合は、その背負い袋は収納対象から除外される。
・一度防御フィールドが発生し終えると、以後二時間が経過するまで防御フィールドを展開する事はできない。
- 88 :
- これにて投下完了です。
今回はご迷惑をおかけしました。
貴重なご意見をくださった皆様に改めて感謝致します。
- 89 :
- 甲じゃなく乙
- 90 :
- 丙じゃなく乙
- 91 :
- こんなのDIOじゃない
- 92 :
- そうなの?
じゃあ、本当はどんな奴なの?
- 93 :
- 小物だったりカリスマだったり天国云々言ったり自分のスタンドが最強と言ってるけどスタンドに強い弱いはないと言ったり
1部3部6部でキャラが安定しないのがDIO様
- 94 :
- 俺の知ってるDIO様は人の家の飼い犬にひざ蹴りかますロックな奴
- 95 :
- そんな酷い奴なのか
このロワに徳川綱吉が参戦してたら間違いなくされるな
- 96 :
- それは1部最初の少年時代の時だが、ただ残忍だからやったってわけじゃなく
頭にガツンとやって「俺が上!お前が下だジョジョォ!」と飼い主である主人公との上下関係を作るって打算あってのことだがね
>無機物が超常の力を発揮するというのは、彼の知る限り『石仮面』と『弓と矢』以外に無く
アヌビスのこと忘れんといてえな
- 97 :
- >>96
うあ、失念してました。ご指摘感謝します。
wiki収録後に修正しておきます。
- 98 :
- アヌビスはスタンドだから微妙なんだよね
『力』や『運命』みたいなタイプに分類していてもおかしくない
- 99 :
- なにをするだー!ってジョジョ言ってたね
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